JP7365796B2 - セルロース繊維の成形体及びその製造方法 - Google Patents

セルロース繊維の成形体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セルロース繊維の成形体及びその製造方法に関するものである。
セルロース繊維をナノレベルまで解繊して得られるセルロースナノファイバー(CNF)は、強度、弾性、熱安定性等に優れていることから、各種用途への活用が期待されている。その1つとしては、セルロースナノファイバーのスラリーを乾燥、成形等して得られるセルロースナノファイバーの成形体が存在する。例えば、特許文献1は、セルロースナノファイバーを主成分とする高強度材料(成形体)を提案している。同文献は、セルロースナノファイバーの物性を特定した様々な提案を行っている。
特開2013-11026号公報 特開2018-062727号公報
しかしながら、セルロース繊維を細かく解繊する程、セルロースナノファイバーのスラリーは脱水性が低下し、脱水、乾燥に必要なエネルギーが多大となり、生産性が低下する問題を有する。本発明者等は、現時点においては同文献のようにセルロースナノファイバーの物性を改良するのみでは、適度な引張弾性率と脱水性(生産性)を兼ね備えた成形体を成形するには限界が存在するのではないかと認識している。
したがって、本発明が解決しようとする主たる課題は、適度な引張弾性率と脱水性を兼ね備えることができるセルロース繊維の成形体、又は適度な引張弾性率と脱水性を現実に兼ね備えたセルロース繊維の成形体、及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために種々試験を行った中で、本発明者等は、まず、特定の原料パルプから得られたセルロース繊維で成形された成形体に含まれるリグニンの含有量により、同成形体の物性、具体的には脱水性が変化することを知見した。次に、この特定の原料パルプから得られたセルロース繊維と、これとは別の原料パルプから得られたセルロース繊維とからなる成形体は、脱水性のほかに、別の物性、具体的には強度(引張弾性率)が付与されることを知見した。また、成形体(中間体)を加圧加熱することで得られる最終製品(成形体)は適度な引張弾性率と脱水性を現実に兼ね備えたものとなることを知見した。このような知見に基づいて想到するに至ったのが、次に示す態様である。
(第1の態様)
セルロース繊維を主成分とし、
前記セルロース繊維として、第1セルロースナノファイバーと第2セルロースナノファイバーを含み、
前記第1セルロースナノファイバーは、リグニンを含有する機械パルプが解繊されて得られたものであり、
前記第2セルロースナノファイバーは、化学パルプが解繊されて得られたものである、 ことを特徴とするセルロース繊維の成形体。
セルロース繊維はそれ自体が三次元ネットワーク構造を構築しており、このセルロース繊維の成形体は外力に対する強度(引張弾性力)を発揮する。また、このほか、セルロースナノファイバーの強度は、原料パルプの種類に依存すると推測される。強度が相対的に大きな原料パルプや小さな原料パルプが存在し、成形体の強度を向上させるのであれば、強度の大きな原料パルプを用いるとよい。化学パルプは強度に優れ、この化学パルプが解繊されて得られたセルロースナノファイバー(請求項の第2セルロースナノファイバー)の強度は相対的に大きいものとなる。
一方で、リグニンは疎水性であるベンゼン環を多数含む、三次元立体構造を有することから、リグニンを含有する機械パルプが解繊されて得られたセルロースナノファイバー(請求項の第1セルロースナノファイバー)は疎水性を備える。それゆえ、このセルロースナノファイバーを含むセルロース繊維の成形体は脱水性に富む。
本態様の成形体を成形するセルロース繊維は、リグニンを含有する機械パルプが解繊されて得られたセルロースナノファイバーと、化学パルプが解繊されて得られたセルロースナノファイバーとを含むため、適度な引張弾性率と脱水性を兼ね備えたものとなる、という効果を有する。
(第2の態様)
第1の態様に加え、
前記セルロース繊維に占める、前記第1セルロースナノファイバーと前記第2セルロースナノファイバーとの合計含有率が80質量%以上である、
態様を挙げることができる。
(第3の態様)
第1の態様に加え、
前記第2セルロースナノファイバー100質量部に対する前記第1セルロースナノファイバーが1~9900質量部である、
態様を挙げることができる。
(第4の態様)
第1の態様に加え、
リグニンの含有量が5~30質量%である、
態様を挙げることができる。
(第5の態様)
第1の態様に加え、
セルロース繊維の成形体の引張弾性率が5~25GPaである、
態様を挙げることができる。
(第6の態様)
第1の態様に加え、
前記第1セルロースナノファイバー及び前記第2セルロースナノファイバーの少なくともいずれか一方の平均繊維径が10~500nmである、
態様を挙げることができる。
(第7の態様)
第1の態様に加え、
請求項1のセルロース繊維の成形体を200℃、2MPaで5分間、加圧加熱処理して得られた処理生成物の引張弾性率が、請求項1のセルロース繊維の成形体の引張弾性率以上である、
態様を挙げることができる。
(第8の態様)
前記第1セルロースナノファイバー及び前記第2セルロースナノファイバーの少なくともいずれか一方の保水度が100%以上である、
態様を挙げることができる。
(第9の態様)
第1の態様に加え、
前記化学パルプは、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ、溶解パルプの中から1種又は2種以上選択したパルプである、
態様を挙げることができる。
(第10の態様)
第1セルロースナノファイバーと第2セルロースナノファイバーとを使用してセルロース繊維のスラリーを調成し、このセルロース繊維のスラリーから湿紙を形成し、この湿紙を脱水及び加圧加熱して成形体を作製し、
前記第1セルロースナノファイバーは、リグニンを含有する機械パルプを解繊して得たものであり、
前記第2セルロースナノファイバーは、化学パルプを解繊して得られたものである、
ことを特徴とするセルロース繊維成形体の製造方法。
本発明によると、適度な引張弾性率と脱水性を兼ね備えることができるセルロース繊維の成形体、又は適度な引張弾性率と脱水性を現実に兼ね備えたセルロース繊維の成形体、及びその製造方法となる。
成形体の製造方法の説明図である。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
本形態のセルロース繊維の成形体には、引張弾性率及び脱水性を向上させることができる中間体としての成形体(以下、単に「中間体」とも言う。)と、現実に引張弾性率及び脱水性が向上した最終製品としての成形体(以下、単に「最終製品」とも言う。)とが存在する。
中間体は、セルロース繊維を主成分とする。このセルロース繊維は、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」ということもある。)を含む。そして、このセルロースナノファイバーは、リグニンを含有する機械パルプが解繊されて得られたセルロースナノファイバー(第1セルロースナノファイバー)と、化学パルプが解繊されて得られたセルロースナノファイバー(第2セルロースナノファイバー)を含むものである。また、機械パルプが解繊されてもリグニンは残存するので中間体には、リグニンが含有されている。なお、本明細書中の記載では、第1セルロースナノファイバーと第2セルロースナノファイバーとをまとめて、セルロースナノファイバーということがある。なお、中間体には公知の樹脂を適宜含めることができ、一例にエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂は耐熱性、耐圧性に優れるため適量含めることができる。
最終製品は、中間体が加圧加熱(好ましくは200℃以上で)されたものである。この最終製品は、例えば、セルロースナノファイバーを使用してセルロース繊維のスラリーを調成し、このセルロース繊維のスラリーから湿紙を形成し、この湿紙を脱水及び加圧加熱することで得られる。以下、順に説明する。
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバーは、セルロース繊維の水素結合点を増やし、もって成形体の強度を向上する役割を有する。セルロースナノファイバーは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。
セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物の状態等であってもよい。
ただし、不純物の混入を可及的に避けるために、木材パルプを使用するのが好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ等(DP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。また、溶解パルプとしては、例えばサルファイト法で製造されたパルプやクラフト法で製造されたものが挙げられ、レーヨンパルプも溶解パルプに含まれる。これら化学パルプに含まれるリグニン含有量は10質量%未満とされている。ここで、リグニン含有量とは、パルプの固形物量に含まれるリグニンの質量をいう。
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。機械パルプはリグニン含有量が10質量%以上とされている。ここで、リグニン含有量とは、パルプの固形物量に占めるリグニンの質量%をいう。
セルロース繊維スラリーの脱水性の観点からは、原料パルプとしてリグニンを含有するパルプを使用するのが好ましく、機械パルプを使用するのがより好ましく、晒機械パルプを使用するのがさらに好ましく、BTMPを使用するのが特に好ましい。セルロース繊維スラリーの脱水が容易であると、その後の乾燥が容易になる。
セルロース繊維の成形体が適度な引張弾性率を有するものとする観点からは、原料パルプとして強度が大きいパルプを使用するのが好ましく、化学パルプを使用するのがより好ましく、LBKPを使用するのが特に好ましい。化学パルプは機械パルプに比べ強度がはるかに大きい。また、引張弾性率で比較すると、一例としてLBKPを主成分とするセルロース繊維の成形体が18~19GPa程度であるのに対し、BTMPを主成分とするセルロース繊維の成形体が11~13GPa程度である。
セルロースナノファイバーの解繊に先立っては、化学的手法によって前処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)、TEMPO触媒による酸化(酸化処理)、リン酸エステル化(化学的処理)等を例示することができる。しかしながら、脱水性の観点から、前述の前処理のうち水を使用するものは、第1セルロースナノファイバーの解繊に先立って行わなくてもよい。
解繊に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、解繊におけるセルロース繊維の分散が促進される。
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を使用することができる。ただし、製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
解繊に先立って酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、セルロースナノファイバーの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。この点、セルロースナノファイバーの保水度が高過ぎると脱水しにくくなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が低下する。
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、成形体の均質性向上に資する。ただし、前処理は、セルロースナノファイバーのアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
原料パルプの解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用して原料パルプを叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
原料パルプの解繊について、機械パルプは化学パルプよりも解繊しにくく、機械パルプの中でもリグニンの含有量が多いパルプほど解繊しにくいことを発明者等は知見している。
原料パルプの解繊は、得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長、保水度、結晶化度、擬似粒度分布のピーク値、パルプ粘度、分散液のB型粘度が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
第1セルロースナノファイバー及び第2セルロースナノファイバーの少なくともいずれか一方の平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10~500nm、より好ましくは15~450nm、特に好ましくは20~400nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径が10nmを下回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化するおそれがある。また、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造する場合においては、当該成形体が緻密になり過ぎ、乾燥性が悪化するおそれがある。
他方、セルロースナノファイバーの平均繊維径が500nmを上回ると、水素結合点の増加効果が得られないおそれがある。
特に、機械パルプから得られるセルロースナノファイバーや、リグニンを含有する(好ましくはリグニンが10質量%以上含有する)セルロースナノファイバーの平均繊維径は10~500nm、より好ましくは150~450nm、さらに好ましくは20~400nmとすると、脱水性に優れ好適である。また化学パルプから得られるセルロースナノファイバーやリグニン含有量が10質量%未満であるセルロースナノファイバーの平均繊維径は10~100nm、より好ましくは、15~90nm、さらに好ましくは20~80nmとすると分散性に優れ好適である。
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ)は、好ましくは0.3~2000μm、より好ましくは0.4~200μm、特に好ましくは0.5~20μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長が0.3μmを下回ると、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造する場合において、脱水の過程で流出する繊維の割合が多くなり、また、成形体等の強度を担保することができなくなるおそれがある。
他方、セルロースナノファイバーの平均繊維長が2000μmを上回ると、繊維同士が絡み易くなり、また、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造する場合において、当該成形体の表面性が悪化するおそれがある。
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
第1セルロースナノファイバー及び第2セルロースナノファイバーの少なくともいずれか一方の保水度は、例えば100%以上とするとよく、好ましくは100~600%、より好ましくは150~500%、さらに好ましくは240~460%である。セルロースナノファイバーの保水度が100%を下回ると、セルロースナノファイバーの分散性が悪化し、第1セルロースナノファイバーと第2セルロースナノファイバーとを均一に混合することができなくなるおそれがある。
他方、セルロースナノファイバーの保水度が600%を上回ると、セルロースナノファイバー自体の保水力が高くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化するおそれがある。
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
セルロースナノファイバー結晶化度は、好ましくは45~90%、より好ましくは50~75%、特に好ましくは60~70%である。セルロースナノファイバーの結晶化度が以上の範囲内であれば、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造する場合等において、当該成形体等の強度を担保することができる。
セルロースナノファイバーの結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整することができる。
第1セルロースナノファイバー又は第2セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、同一のパルプから解繊されたセルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、セルロース繊維スラリーの物性(例えば、第1セルロースナノファイバーであれば脱水性、第2セルロースナノファイバーであれば引張破壊ひずみや引張弾性率等の強度)に優れる。
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば1~100μm、好ましくは3~80μm、より好ましくは5~60μmである。
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
セルロースナノファイバーのピーク値は、ISO-13320(2009)に準拠して測定した値である。より詳細には、まず、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用してセルロースナノファイバーの水分散液の体積基準粒度分布を調べる。次に、この分布からセルロースナノファイバーの中位径を測定する。この中位径をピーク値とする。
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、好ましくは1~10cps、より好ましくは1~9cps、特に好ましくは1~8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示している。パルプ粘度が以上の範囲内であれば、スラリーに脱水性を付与しつつ、成形体としたときの機械的物性を保持できる。
解繊して得られた第1セルロースナノファイバー及び第2セルロースナノファイバーは、必要により、相互に混合するのに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
セルロースナノファイバーの分散液(濃度1%)のB型粘度は、好ましくは10~4000cps、より好ましくは15~400cps、特に好ましくは20~300cpsである。分散液のB型粘度を以上の範囲内にすると、第1セルロースナノファイバーと第2セルロースナノファイバーとの混合が容易になり、また、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
セルロースナノファイバーの分散液のB型粘度(固形分濃度1%)は、JIS-Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
セルロース繊維にはセルロースナノファイバーのほか、後述するようにパルプを含めてもよい。この場合、セルロース繊維に占める、第1セルロースナノファイバーと第2セルロースナノファイバーとの合計含有率は80質量%以上、好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上とするとよい。同合計含有率が80質量%を下回ると、成形体に要求される引張弾性率や引張強度が達成できなくなるおそれがある。
また、第2セルロースナノファイバー100質量部に対して第1セルロースナノファイバーが1~9900質量部、より好ましくは5~1900質量部であるとよい。この範囲を逸脱すると、成形体の引張弾性率と脱水性のいずれか一方が損なわれるおそれがある。
(パルプ)
本形態においてはセルロース繊維に、セルロースナノファイバーの他に、パルプを含めてもよいし、含めなくてもよい。パルプは、セルロース繊維スラリーの脱水性を向上する役割を有する。ただし、パルプは、セルロース繊維スラリーの保水度及び脱水性が所定の範囲内になるように含ませるのが好ましい。このような限定を加えることで、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造した場合において、当該成形体等の強度を担保することができる。なお、保水度及び脱水性の詳細については、後述する。
セルロース繊維にパルプを含める場合は、セルロース繊維に占めるセルロースナノファイバーの含有率を80質量%以上とし、セルロース繊維に占めるパルプの含有率を20質量%未満にして、セルロース繊維に占めるセルロースナノファイバー含有率とセルロース繊維に占めるパルプ含有率との合計含有率を100質量%とするとよい。パルプの含有率が20質量%以上だと、脱水性の向上は図られるものの、引張物性の低下につながるおそれがある(特許文献2)。
パルプとしては、セルロースナノファイバーの原料パルプと同様のものを使用することができる。ただし、パルプとしては、セルロースナノファイバーの原料パルプと同じものを使用するのが好ましい。パルプとしてセルロースナノファイバーの原料パルプと同じものを使用すると、両者の親和性が向上し、結果、セルロース繊維スラリーや成形体等の均質性が向上する。
また、パルプとしては、セルロースナノファイバーの場合と同様に、機械パルプや化学パルプを使用するのが好ましく、BTMPやLBKPを使用するのが特に好ましい。これらのパルプを使用すると、セルロース繊維スラリーの脱水性や引張弾性率がより向上する。また、成形体の脱水性や引張弾性率が向上する。
パルプの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10~100μm、より好ましくは10~80μm、特に好ましくは10~60μmである。パルプの平均繊維径が以上の範囲内であれば、パルプの含有率を前述した範囲内とすることで、セルロース繊維スラリーの脱水性や引張弾性率がより向上する。
パルプの平均繊維径は、例えば、パルプの選定、軽い解繊等によって調整することができる。
パルプの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のパルプの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて100倍~1000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
パルプのフリーネスは、例えば800ml以下とすることができ、750ml以下であってよく、700ml以下であってもよい。またパルプのフリーネスの下限は特に限定されないが例えば10ml、より好ましくは20ml、さらに好ましくは30ml、特に好ましくは100mlとすることができる。パルプのフリーネスが800mlを上回ると、水素結合点が少なくなり、引張強度が低下するおそれがある。
他方、パルプのフリーネスが10mlを下回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性が十分に向上しないおそれがあることと、パルプ繊維自体の剛直性が低下し、成形体を支持する繊維として機能しなくなるおそれがある。
パルプのフリーネスは、JIS P8121-2(2012)に準拠して測定した値である。
(リグニン)
本形態の成形体は、リグニンを含有する。本形態においてリグニンは、セルロース繊維スラリーの脱水性を向上させる役割を有する。この観点から、セルロース繊維の成形体におけるリグニンの含有量(率)は、好ましくは5~30質量%、より好ましくは6~29質量%、特に好ましくは7~28質量%である。リグニンの含有量が5質量%を下回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性が十分に向上しないおそれがある。この点、セルロースナノファイバーは180℃(特に200℃)程度の高い温度領域下で加圧を受けると引張物性が低下する。しかしながら、リグニンを含有すると、当該リグニンの熱可塑性により、高温度に晒されてリグニンが成形体中に均一に拡がるため、引張物性が向上するものと考えられる。他方、リグニンの含有量が30質量%を上回ると、セルロースナノファイバー相互の水素結合を阻害し、例えば、成形体等の物性等を低下させるおそれがある。
リグニンの含有量は、(リグニンの質量/セルロース繊維スラリー中の固形物(リグニンも含む)の質量)×100(%)を意味する。
リグニンは、リグニンをセルロースナノファイバーに別途添加し、混合することで上記含有量にすることも、セルロースナノファイバーの原料パルプやパルプとしてリグニン含有パルプを使用することで上記含有量にすることも、これら両者によることもできる。ただし、セルロースナノファイバーの原料パルプやパルプとしてリグニン含有パルプを使用する方が好ましい。リグニン含有パルプを使用すると、セルロース繊維の吸水性が低下し、もってセルロース繊維スラリーの脱水性が向上するものと考えられる。しかも、リグニン含有パルプにおいてはセルロース繊維自体とリグニンとが化学結合及び/または物理的吸着を介して繋がっているため、成形体等とした場合に高い機械的物性が得られる。さらには、リグニンを別途添加する場合に比べて、工程数を減らせることからコストを抑えることができる。
リグニンを別途添加する場合、リグニンとしては、例えば、クラフトリグニン、サルファイトリグニン、ソーダリグニン、Klasonリグニン、酸可溶性リグニン、ミルドウッドリグニン等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、元々植物繊維に存在しているリグニンと形態や化学構造等がもっとも近いと言われるミルドウッドリグニンを使用するのが好ましい。
リグニンの含有量は、リグニン含有率試験方法(JAPAN TAPPI No.61(2000))に準拠して行うことで測定した値である。なお、カッパー価試験方法(JIS P 8211(2011))に準拠した方法でもリグニン含有量を測定することができる。
なお、リグニンは熱可塑性を有することが知られており(例えば、特開2012-236811号公報参照。)、融点(当該文献では融点160~174℃とされている。)以上の温度で成形加工すると、溶融したリグニンが成形体等に行き渡ることで均質化し、全体としての機械的物性が向上するものと考えられる。
(スラリーの調成)
図1に示すように、第1セルロースナノファイバーC1及び第2セルロースナノファイバーC2は、所定の割合で混合し、もってセルロース繊維のスラリーSを調成する(スラリー調成工程10)。第1セルロースナノファイバーC1及び第2セルロースナノファイバーC2は、それぞれを分散液の状態で混合することもできる。
第1セルロースナノファイバーC1及び第2セルロースナノファイバーC2の混合に際しては、水等の媒体Wを加える等して、セルロース繊維スラリーS中におけるセルロース繊維の固形分濃度を調節すると好適である。セルロース繊維の固形分濃度は、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1.2~10質量%、特に好ましくは1.4~8.0質量%である。セルロース繊維の固形分濃度が1質量%を下回ると、流動性が高く、脱水工程30においてセルロース繊維が流出してしまうおそれが高くなる。
他方、セルロース繊維の固形分濃度が15質量%を上回ると、流動性が著しく低下し、加工性が悪化するため、例えば、成形体を製造する工程において厚みのむらが発生し易くなり、均質な成形体を得ることが困難になるおそれがある。
水等の媒体(水系媒体)Wは、全量が水であるのが好ましい。ただし、水系媒体Wは、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類や、炭素数5以下のケトン類等を使用することができる。
セルロース繊維のスラリーにパルプを含める場合は、パルプの含有率を適宜調節することで、保水度比が0.50~0.99となるようにするのが好ましく、0.55~0.98となるようにするのがより好ましく、0.60~0.97となるようにするのが特に好ましい。
セルロース繊維スラリーSの保水度比0.50以上にすることで、最終的に得られる成形体(最終製品)Xの強度を担保することができる。
セルロース繊維スラリーSの保水度は、以下の方法によって測定した値である。
まず、セルロース繊維のスラリー(濃度2質量%)を遠心分離機(条件:3000G、15分)によって脱水し、得られた脱水物の質量を測定する。次に、当該脱水物を完全に乾燥し、得られた乾燥物の質量を測定する。そして、保水度(%)=(脱水物の質量-乾燥物の質量)/セルロース繊維スラリーの質量×100とする。
保水度は一定の遠心力をかけた後にスラリーに残存する水量のことであり、保水度が低いほど脱水性が良好であることを示す。また、保水度比が低いほど、元々のセルロースナノファイバースラリーから保水度が減少したことを示し、脱水性が増加したことを示す。
(成形体)
以上のようにして得たスラリーは、適宜、湿紙形成20、脱水30及び加圧加熱40等することで中間体としての成形体X、あるいは最終製品としての成形体Xを得ることができる。スラリーSから成形体Xを製造する方法は様々存在するが、例えば、特開2018-62727号公報(セルロースナノファイバー成形体)に記載の方法によると好適である。なお、湿紙の形成方法について、前述したのは好適な例であり、本形態の製造方法をこれに限定する趣旨ではない。
なお、加熱に関して、当該加熱の温度は、製造コスト低減という点で高温である方が好ましい。しかしながら、原料パルプとしてリグニン含有率の低いもの、例えばLBKP由来のパルプを用いた場合は、加熱温度を200℃程度まで上げると、引張物性が低下する。このことは、加熱温度の制限になり、例えば、展開される用途が限られるという問題がある。もちろん、加熱温度を上げることができないと、乾燥に時間を要し、製造コストが高くなるという問題もある。
以上のようにして得られた成形体Xは、 密度が、好ましくは0.8~1.5g/m3、より好ましくは0.9~1.4g/m3、特に好ましくは1.0~1.3g/m3である。成形体Xの密度が0.8g/m3を下回ると、水素結合点の減少を原因として強度が十分であるとされるおそれがある。
成形体Xの密度は、JIS-P-8118:1998に準拠して測定した値である。
加圧加熱する前、好ましくは加圧加熱する前及び加圧加熱した後の成形体Xの引張弾性率の大きさは、5~25GPaがよく、好ましくは10~20GPaがよく、より好ましくは12~19GPaであるとよい。この範囲未満だと引張弾性率が小さ過ぎ、剛直性に優れるといい難い。また、この範囲を超える成形体Xの製造は困難である。
また、後述する再度の加圧加熱(5分間、200℃、2MPaの状態下に置く)をする前の引張弾性率に比べ、同再度の加圧加熱をした後の引張弾性率が向上する成形体の方が、汎用的な用途に使用でき好ましい。
成形体Xの引張破壊ひずみ及び引張弾性率及び引張強度は、JIS K7127:1999に準拠し、温度23℃の環境下、試験片をJIS-K6251で定める引張2号型ダンベル状とし、試験速度を10mm/分として測定した値である。
成形体Xのセルロース繊維の含有量の下限は、固形分換算で90質量%が好ましく、99質量%がより好ましく、99.9質量%が特に好ましい。この範囲とされていることで、セルロース繊維間の強い水素結合等によって成形体の強度をより高めることができる。また、熱安定性も高く、環境への負荷の低減等も図ることができる。
(その他)
セルロース繊維のスラリーSには、必要により、例えば、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、分散剤、消泡剤、スライムコントロール剤、防腐剤等の添加剤を添加することができる。
本発明の実施例について説明する。
(1)まず、セルロース繊維としてセルロースナノファイバー及びパルプを含むセルロース繊維のスラリーを作製し、脱水性及び引張弾性率を調べる試験を行った。セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、紙パルプであるLBKP及びBTMPを使用した。セルロースナノファイバーは、LBKP(水分率98質量%)及びBTMP(水分率98質量%)のそれぞれをリファイナーで予備叩解し、次いで高圧ホモジナイザーで解繊して得た。これらのセルロースナノファイバーのそれぞれは、濃度2質量%の水分散液であった。LBKPを用いて得られたセルロースナノファイバーは、平均繊維径30nm、保水度348%、結晶化度75%であった。BTMPを用いて得られたセルロースナノファイバーは、平均繊維径60nm、保水度270%、結晶化度66%であった。LBKPを用いて得られたセルロースナノファイバー及びBTMPを用いて得られたセルロースナノファイバーは、表1中に示す配合割合(乾燥重量)で混合して混合物を得た。
(2)得られた混合物を遠心分離機で遠心濃縮して脱水し、得られた濃縮物に水を添加して5質量%のセルロース繊維のスラリーを得た。
(3)得られたセルロース繊維のスラリーを金網(300メッシュ、幅10cm×長さ10cm)上に塗工して塗工物とした。塗工は10cm角、塗工時の厚みで2mm厚、乾燥後の成形体の厚さが100μmとなるように行った。塗工物を吸水材で挟んで自動プレス機により圧力0.41MPaで5分間搾水し、湿紙を得た。
(4)この湿紙を熱プレス機で120℃、2MPaで5分間乾燥し、含水率10質量%以下のセルロース繊維の成形体を得た。
(5)この成形体を熱プレス機で200℃、2MPaで5分間、再度加圧加熱した。
(脱水性の評価)
上記(2)で得られたスラリーを水で希釈し2質量%になるようにメスアップした。メスアップされたスラリーを8500rpm、15℃、10分の条件で遠心分離した。遠心分離後、上澄み液を捨て、残分の固形物濃度(脱水性)(%)を測定し、脱水性の評価とした。
結果を表1に示した。引張弾性率及び引張強度の測定方法は、次のとおりである。
引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(シート)は、JIS-K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
引張強度は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(シート)は、JIS-K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
Figure 0007365796000001
表中、引張弾性率比(対加圧加熱無)は、実施例及び比較例のそれぞれについての(再度の加圧加熱後の引張弾性率)/(再度の加圧加熱前の引張弾性率)をいう。引張強度比(対加圧加熱無)は、実施例及び比較例のそれぞれについての(再度の加圧加熱後の引張強度)/(再度の加圧加熱前の引張強度)をいう。
(考察)
脱水性について、比較例1に示すようにセルロース繊維の成形体に第2セルロースナノファイバー(一例として、LBKPCNF)のほか、パルプが含まれていると、脱水性を有する。実施例1では、同成形体にLBKPCNFのほか、第1セルロースナノファイバー(一例として、BTMPCNF)が含まれ、比較例1に近似する脱水性を有することがわかった。
また、BTMPCNFの配合割合を増加させるほど、脱水性が向上することが分かった。
再加圧加熱による引張弾性率の向上効果について、比較例1では再加圧加熱した結果、引張弾性率が低下、すなわち、引張弾性率比が低下した。比較例2についても同様の結果となった。
また、実施例1~実施例3に示すように同成形体にLBKPCNFのほか、BTMPCNFが含まれていると、再加圧加熱により引張弾性率が向上することが分かった。
(その他)
遠心分離機は、HITATHI冷却遠心分離機CR22Nを使用した。
本発明は、セルロース繊維の成形体及びその製造方法として利用可能である。
10 スラリー調成工程
20 湿紙形成工程
30 脱水工程
40 加圧加熱工程
C1 第1セルロースナノファイバー
C2 第2セルロースナノファイバー
W 水等の媒体
X 成形体

Claims (9)

  1. セルロース繊維を主成分とする成形体であり
    前記セルロース繊維として、第1セルロースナノファイバーと第2セルロースナノファイバーを含み、
    前記第1セルロースナノファイバーは、リグニンを含有する機械パルプが解繊されて得られたものであり、
    前記第2セルロースナノファイバーは、化学パルプが解繊されて得られたものであ
    前記成形体の引張弾性率が5~25GPaである、
    ことを特徴とするセルロース繊維の成形体。
  2. 前記セルロース繊維に占める、前記第1セルロースナノファイバーと前記第2セルロースナノファイバーとの合計含有率が80質量%以上である、
    請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
  3. 前記第2セルロースナノファイバー100質量部に対する前記第1セルロースナノファイバーが1~9900質量部である、
    請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
  4. リグニンの含有量が5~30質量%である、
    請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
  5. 前記第1セルロースナノファイバー及び前記第2セルロースナノファイバーの少なくともいずれか一方の平均繊維径が10~500nmである、
    請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
  6. 請求項1のセルロース繊維の成形体を200℃、2MPaで5分間、加圧加熱処理して得られた処理生成物の引張弾性率が、請求項1のセルロース繊維の成形体の引張弾性率以上である、
    請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
  7. 前記第1セルロースナノファイバー及び前記第2セルロースナノファイバーの少なくともいずれか一方の保水度が100%以上である、
    請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
  8. 前記化学パルプは、広葉樹クラフトパルプ、針葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ、溶解パルプの中から1種又は2種以上選択されたパルプである、
    請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
  9. 第1セルロースナノファイバーと第2セルロースナノファイバーとを使用してセルロース繊維のスラリーを調成し、このセルロース繊維のスラリーから湿紙を形成し、この湿紙を脱水及び加圧加熱して成形体を作製し、
    前記第1セルロースナノファイバーは、リグニンを含有する機械パルプを解繊して得られたものであり、
    前記第2セルロースナノファイバーは、化学パルプを解繊して得られたものであ
    前記成形体の引張弾性率が5~25GPaである、
    ことを特徴とするセルロース繊維成形体の製造方法。
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