JP2020177094A - レンズの絞り装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 大幅な部品点数の削減及び構成の簡略化を可能にするとともに、モード切換における操作性の向上による操作の容易化及び迅速化の実現する。【解決手段】 絞り調整リング3の一端面3fとこの一端面3fに対向する固定筒部2c側の固定面2f間に、所定のクリック絞り調整範囲Zs以上にわたって回動操作可能なモード切換リング4を配設するとともに、絞り調整リング3の一端面3fに有する弾性変位可能に設けた第一クリックボール5b,及び切換リング4の一端面4rにおけるクリック絞り調整範囲Zsにわたって順次形成した複数のクリック溝部5c…を有するクリック機構部5と、固定面2fに有する弾性変位可能に設けた第二クリックボール6b…,及びモード切換リング4の他端面4fにおける切換操作範囲Zcの一端位置Xp…と他端位置Xq…に形成した一対のストッパ溝部6p,6q…を有するモード切換機構部6とを具備する。【選択図】 図1
Description
本発明は、レンズ鏡筒の固定筒部に対して回動操作可能に設けることにより絞りを調整可能な絞り調整リングを備えるレンズの絞り装置に関する。
従来、レンズ鏡筒の固定筒部に対して回動操作可能に装填することにより絞りを調整可能な絞り調整リング及びこの絞り調整リングを複数の絞り値に対応した位置でクリック係合可能なクリック機構を有するレンズの絞り装置は知られている。
しかし、このようなレンズの絞り装置は、カメラの高性能化及び多機能化により、例えば、マニュアル操作可能な絞り調整リングを有する一眼レフタイプのデジタルカメラに、ビデオカメラ機能を内蔵する場合、ビデオカメラ機能による撮影時に絞り調整リングを操作した際に、クリック機構で発生するクリック時の振動やクリック音をマイクロホンが拾ってしまうなど、クリック機構を有する絞り装置が少なからず他の機能に悪影響を及ぼす虞れがある。また、マニュアル操作可能な絞り調整リングのクリック機構は、絞り値の目安になるため、撮影時に所望の絞り値に速やかに設定できるメリットがある反面、絞りを連続して可変する場合やマニアックに操作するなど絞り値に捕らわれない撮影を行う場合等においては、スムースな操作性を確保する観点から必ずしも必要なものではない。したがって、操作性(操作フィーリング)を変えることなくクリック感のみを解消できれば、ユーザの利便性及び快適性をより高めることができるが、従来のレンズでは係る要請に応えることができない問題があった。
そこで、本出願人は、既に、この問題を解消することを目的としたレンズの絞り装置を特許文献1により提案した。同文献1に記載するレンズの絞り装置は、ビデオカメラ機能における撮影品質(集音品質)を高めるなど、必要に応じてクリック機構部の悪影響を排除するとともに、クリックモード又は非クリックモードにおいて絞りリングの操作力が異なることによる操作ミス等の不具合を回避することを目的としたものであり、具体的には、固定筒部又は絞りリングの、一方に、弾性支持された係合体を有する係合部を配設するとともに、他方に、係合体が圧接し、かつ絞りリングを回動させた際に、絞り値に対応した位置で係合体が係合可能な複数の被係合部を形成した被係合面を有する被係合基体部とを設けてなるクリック機構部と、係合部又は被係合基体部の少なくとも一方の位置を変更することにより、係合体と被係合面が圧接するクリックモード,又は係合体と被係合面が離間してクリック機能が解除される非クリックモードに切換可能なモード切換機構部とを設けて構成したものである。
しかし、上述した従来における特許文献1に開示の絞り装置は、次のような解決すべき課題も残されていた。
第一に、具体的な実施形態を考慮した場合、絞りリング,被係合基体部,モード切換リング、更には、ロック機構等を付加した構成を備えるため、全体の部品点数が増加するとともに、構成の煩雑化を生じやすい。この結果、製造時における作業工程の煩雑化及び作業工数の増加、更には、レンズ全体のコストアップを招くとともに、サイズアップを生じやすい難点があった。
第二に、ロック機構等が附属する構成上の課題から、切換操作する際の手順や操作が煩雑化するため、少なからずモードの切換操作に時間がかかる課題も存在した。この結果、撮影チャンスを逃がしてしまうなどの不具合が生じる虞れもあり、操作性をより高める観点からは更なる改善の余地があった。
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したレンズの絞り装置の提供を目的とするものである。
本発明は、上述した課題を解決するため、レンズ鏡筒2の固定筒部2cに対して回動操作可能に設けることにより絞りを調整可能な絞り調整リング3を備えるレンズLの絞り装置1を構成するに際して、絞り調整リング3の一端面3fとこの一端面3fに対向する固定筒部2c側の固定面2f間に、所定のクリック絞り調整範囲Zs以上にわたって回動操作可能なモード切換リング4を配設するとともに、絞り調整リング3の一端面3fに弾性変位可能に設けた第一クリックボール5bを有する第一係合部5f,及び第一クリックボール5bが圧接し、かつモード切換リング4の一端面4rにおけるクリック絞り調整範囲Zsにわたって順次形成した複数のクリック溝部5c…を有するクリック機構部5と、固定面2f又はこの固定面2fに対向するモード切換リング4の他端面4fにおける、一方の面2f(又は4f)に弾性変位可能に設けた第二クリックボール6b…を有する第二係合部6f…,及び第二クリックボール6b…が圧接する他方の面4f(又は2f)における切換操作範囲Zcの一端位置Xp…と他端位置Xq…に形成した、第二クリックボール6b…が係合する一対のストッパ溝部6p,6q…を有し、第二クリックボール6b…が、一方のストッパ溝部6p(又は6q)…に係合してクリック機構部5を有効にし、かつ他方のストッパ溝部6q(又は6p)…に係合してクリック機構部5を無効にするモード切換機構部6とを備えてなることを特徴とする。
この場合、発明の好適な態様により、第二係合部6f…の弾発力は、第一係合部5fの弾発力よりも大きく設定することができる。このため、モード切換機構部6を構成するに際しては、光軸方向Fsへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6b…を有する第二係合部6f…,及び光軸方向Fsに対する直角方向Fdに形成したストッパ溝部6p…,並びに/又は,光軸方向Fsに対する直角方向Fdへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6bi…を有する第二係合部6fi…,及び光軸方向Fsに形成したストッパ溝部6pi…を設けて構成できる。また、モード切換機構部6は、略180〔°〕,又は180〔°〕以下となる所定の切換操作範囲Zcに設定することができる。さらに、モード切換機構部6は、周方向Ffにおける所定の位置Xp…に一組又は二組以上設けることができる。他方、モード切換リング4は、クリック絞り調整範囲Zs以外の面範囲Zfを平坦面又は非平坦面に形成することができる。
このような構成を有する本発明に係るレンズの絞り装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
(1) モード切換機構部6により、絞り調整時における、クリック機構部5を機能させるクリックモード,又はクリック機構部5を解除する非クリックモードに切換可能な絞り装置1を構成する場合であっても、絞り調整リング3に対し、基本的な部品として、モード切換リング4を追加すれば足りるため、従来技術における被係合基体部やロック機構等を不要にすることができる。したがって、大幅な部品点数の削減及び構成の簡略化が可能となり、製造時における作業工程の簡略化及び作業工数の低減、更には、レンズ全体のコストダウンを図れるとともに、レンズLのサイズダウンにも寄与できる。
(2) モード切換機構部6におけるロック機構を排して、クリック方式によるモード切換機構を構成したため、切換操作する際における操作上の煩雑化を排除できる。この結果、モード切換における操作性の向上による操作の容易化及び迅速化を実現できるため、撮影チャンスを逃がすなどの不具合を排除できるとともに、一眼レフ等によるカメラ撮影及び動画に対するビデオ撮影の双方にとって最適なレンズLを提供できる。
(3) 好適な態様により、第二係合部6f…の弾発力を、第一係合部5fの弾発力よりも大きく設定すれば、クリック機構部5の操作時、即ち、第一係合部5fの移動時であっても、第二係合部6f…を有するモード切換機構部6への影響を阻止できるため、誤ってクリック機構部5の位置がズレてしまうなどの弊害を確実に回避できる。
(4) 好適な態様により、モード切換機構部6を構成するに際し、光軸方向Fsへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6b…を有する第二係合部6f,及び光軸方向Fsに対する直角方向Fdに形成したストッパ溝部6p…,並びに/又は,光軸方向Fsに対する直角方向Fdへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6bi…を有する第二係合部6fi,及び光軸方向Fsに形成したストッパ溝部6pi…を設けて構成すれば、光軸方向Fs側の弾発力と、光軸方向Fsに対する直角方向Fd側の弾発力とを、選択又は組合わせができるため、第二係合部6f…における係止力の設定範囲を広げることができ、特に、組合わせることにより、係止力を大きくする際の十分な設定範囲を確保することができる。
(5) 好適な態様により、モード切換機構部6を構成するに際し、略180〔°〕,又は180〔°〕以下の所定の切換操作範囲Zcに設定すれば、基本的に、切換操作範囲Zcの長さを任意に選定できる。したがって、操作性や操作時間に影響する切換操作範囲Zcの長さについて、レンズLの種類(構成,グレード等)等に応じた最適な選定を行うことができる。
(6) 好適な態様により、モード切換機構部6を構成するに際し、周方向Ffにおける所定の位置Xp…に一組又は二組以上設ければ、切換操作範囲Zcの選定に加えて、モード切換機構部6の組数を、レンズLの種類に応じて選定できるとともに、特に、二組以上設ければ、第二係合部6fとストッパ溝部6p(6q)の係合部位を、異なる位置に多点設定できるため、係合時の剛性及び保持強度をより高めることが可能となり、安定性及び信頼性をより高めることができる。
(7) 好適な態様により、モード切換機構部6を構成するに際し、クリック絞り調整範囲Zs以外の面範囲Zfを平坦面又は非平坦面に形成したモード切換リング4を設ければ、クリック絞り調整範囲Zs以外の面範囲Zfは平坦面のみならず非平坦面も選定できる。したがって、非平坦面として、例えば、平坦面とクリック機構部5間における中間の操作感を得るモードも設定可能になるなど、多様性及び発展性を高めることができる。
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る絞り装置1を備えるレンズLの概略構成について、図3を参照して説明する。
図3のレンズLは、例えば、一眼レフカメラ等のデジタルカメラに用いることができる交換レンズを示す。また、想定するデジタルカメラには、一眼レフカメラ機能に加えてビデオカメラ機能を備えている。
レンズLにおいて、2はレンズ鏡筒を示す。このレンズ鏡筒2は、固定筒部2cを備え、この固定筒部2cには、前端に取付けたフィルタ枠21を備えるとともに、固定筒部2cの内面に配したレンズ支持枠22を備える。フィルタ枠21の先端にはフィルタを着脱できるとともに、レンズ支持枠22の内周面には複数のレンズ体La,Lb,Lc…が支持される。なお、この種の交換レンズは、通常、マニュアル又はオートのフォーカシング機構及びズーミング機構を備えているが本実施形態では図示を省略した。
一方、固定筒部2cの外周面には、絞り調整リング3を回動操作可能に装填する。絞り調整リング3は固定筒部2cに対して前後方向(軸方向Fs)の変位が規制され、周方向Ff(図4参照)にのみ回動操作することができる。この絞り調整リング3の回動変位は、公知の構造により構成される所定のリンク機構を介して図示を省略した絞り機構に伝達される。これにより、絞り調整リング3を回動操作すれば、絞り(絞り値)の大きさを任意に調整することができる。
次に、このようなレンズLに備える本実施形態に係る絞り装置1の構成について、図1〜図6を参照して具体的に説明する。
まず、実施形態では、固定筒部2c上に固定ベース2csを配設した。なお、この固定ベース2csは本発明上、必須の構成要素となるものではないが、本実施形態では、製造性を考慮して、二部品を組合わせた固定ベース2csを設けた。したがって、この固定ベース2csは固定筒部2cに一体形成することも可能である。
そして、この固定ベース2csの外面に、周方向Ffに沿ったリング凹溝状のリング収容部11を設け、このリング収容部11の後側に絞り調整リング3を配した。これにより、図3に示すように、絞り調整リング3の前端面となる一端面3fとこの一端面3fに対向するリング収容部11を形成する前壁面の間に、モード切換リング4を収容可能な隙間が設けられるため、この隙間に、モード切換リング4を配設した。したがって、リング収容部11を形成する前壁面は、固定筒部2c側における実質的な固定面2fとなる。
この場合、モード切換リング4は、所定のクリック絞り調整範囲Zs以上にわたって回動操作可能に設ける。例示の場合、クリック絞り調整範囲Zsは、図5に示すように、概ね90〔゜〕となるため、実施形態におけるモード切換リング4は、図4に示すように、回動操作範囲Zcを180〔゜〕の操作角度に設定した。このモード切換リング4は、図2及び図6に示すように、軸方向(光軸方向)Fsに所定の幅を有するリング状に形成するとともに、前端から前方へ延出して外径を大径に形成したハンドル部4hを一体に備えている。
一方、モード切換リング4と絞り調整リング3間にはクリック機構部5を設ける。このクリック機構部5は、絞り調整リング3の一端面(前端面)3fに設けた第一係合部5fと、モード切換リング4の一端面(後端面)4rに設けた複数のクリック溝部5c…を備える。第一係合部5fは、図1に示すように、絞り調整リング3の一端面3fに形成した断面円形の収容穴部12に、コイルスプリング13を収容した後、第一クリックボール5bを収容して構成する。これにより、絞り調整リング3及びモード切換リング4をリング収容部11に組付けた際に、第一クリックボール5bは、圧縮したコイルスプリング13により付勢され、弾性変位可能となってモード切換リング4の一端面4rに圧接する。
さらに、モード切換リング4の一端面4rには、上述したクリック絞り調整範囲Zsにわたって、複数のクリック溝部5c…を周方向Ffに沿って順次形成する。例示の場合、図6に示すように、断面がV形状となり、かつ図5に示すように、径方向Fdに形成した計十八のクリック溝部5c…を、周方向Ffに沿って所定の間隔置きに設けた。
また、モード切換リング4の一端面4rにおけるクリック絞り調整範囲Zs以外の面範囲Zfは平坦面に形成する。この場合、平坦面に形成することにより、クリック機構部5が無効となる面範囲Zfとして形成される。なお、この面範囲Zfは、必要により非平坦面として形成することも可能である。例えば、クリック溝部5c…の数量(間隔密度)を増やすとともに、クリック溝部5c…の深さを浅く形成すれば、平坦面とクリック機構部5間における中間の操作感を得るモードを設定可能になるなど、多様性及び発展性を高めることができる。
他方、固定筒部2c側となる固定ベース2csの固定面2fとモード切換リング4間にはモード切換機構部6を設ける。モード切換機構部6は、固定面2fに設けた第二係合部6fと、モード切換リング4の他端面(前端面)4fに設けた一対のストッパ溝部6p,6qを備える。第二係合部6fは、図1に示すように、固定面2fに形成した断面円形の収容穴部14に、コイルスプリング15を収容した後、第二クリックボール6bを収容して構成する。これにより、絞り調整リング3及びモード切換リング4をリング収容部11に組付けた際に、第二クリックボール6bは、圧縮したコイルスプリング15により付勢され、弾性変位可能となってモード切換リング4の他端面4fに圧接する。
この場合、第二係合部6fの弾発力は、第一係合部5fの弾発力よりも大きく設定する。即ち、コイルスプリング15の弾発力を、コイルスプリング13の弾発力に対して、より強く設定する。このように設定すれば、クリック機構部5の操作時、即ち、第一係合部5fの移動時であっても、第二係合部6fを有するモード切換機構部6への影響を阻止できるため、誤ってクリック機構部5の位置がズレてしまうなどの弊害を確実に回避することができる。
さらに、第二クリックボール6bが圧接するモード切換リング4の他端面4fには、図4に示すように、切換操作範囲Zcの一端位置Xpと他端位置Xqに、第二クリックボール6bが係合する一対のストッパ溝部6p,6qを形成する。例示の場合、図4に示すように、切換操作範囲Zcを180〔゜〕に設定するため、切換操作範囲Zcの一端位置Xpは、モード切換リング4の一端面4rにおけるクリック機構部5の中央位置に対応する位置に形成するとともに、切換操作範囲Zcの他端位置Xqは、一端位置Xpに対して、周方向Ffへ180〔゜〕変位した位置に形成した。各ストッパ溝部6p,6qは、図6に示すように、断面がV形状となり、かつ図5に示すように、径方向Fdに形成する。
次に、本実施形態に係る絞り装置1の機能及び使用方法について、図1〜図6を参照して説明する。
本実施形態に係る絞り装置1は、モード切換リング4を回動操作することにより、クリック機構部5を有効にする図1に示すクリックモードMcと、クリック機構部5を無効にする図2に示す非クリックモードMnに選択的に切換えることができる。
まず、クリックモードMcに切換える際には、モード切換リング4のハンドル部4hを手で回動操作することにより、一端位置Xpにおける一方のストッパ溝部6pを、第二クリックボール6bの位置まで相対変位させる。これにより、第二クリックボール6bと一方のストッパ溝部6pが係合するクリックモードMcに切換えることができる。
クリックモードMcでは、図1及び図6に示すように、コイルスプリング15に付勢された第二クリックボール6bがストッパ溝部6pに対してクリック係合により圧接するため、絞り調整リング3の回動操作により絞り調整を行なうことができる。この際、図6に示すように、第一クリックボール13はクリック溝部5c…上を相対的に滑動するため、各クリック溝部5c…の位置においてクリック係合し、絞り調整リング3を一時停止させることができる。
他方、クリックモードMcから非クリックモードMnに切換える際には、ユーザはモード切換リング4のハンドル部4hを手でそのまま回動操作することが可能である。これにより、モード切換リング4を、第二クリックボール6bとストッパ溝部6p間のクリック係合(弾性)に抗して回動させることができる。そして、モード切換リング4を回動操作し、他端位置Xqにおけるストッパ溝部6qを、第二クリックボール6bの位置まで、180〔゜〕にわたり相対変位させれば、第二クリックボール6bとストッパ溝部6qが係合する非クリックモードMnに切換えることができる。
非クリックモードMnでは、図6に示すように、コイルスプリング15に付勢された第二クリックボール6bが他方のストッパ溝部6qに対してクリック係合により圧接するとともに、図5に示すように、モード切換リング4におけるクリック機構部5(クリック溝部5c…)が180〔゜〕回動変位し、クリック絞り調整範囲Zs以外の面範囲Zfにおける平坦面の中央位置と第一クリックボール13が圧接する。これにより、絞り調整リング3を回動操作し、絞り調整を行えば、第一クリックボール13がクリック絞り調整範囲Zs以外の面範囲Zfにおける平坦面上を摺動して移動するため、クリック感の生じない連続した操作感により絞り調整を行うことができる。なお、図2の他端面4fは、ストッパ溝部6pと6qにおける中間位置の断面を示している。
また、この非クリックモードMnからクリックモードMcに切換える場合には、同様の操作により、モード切換リング4を反対方向に回動操作すればよく、これにより、上述したクリックモードMcに切換えることができる。
したがって、この絞り装置1によれば、基本的な効果として、非クリックモードMnに切換えれば、例えば、ビデオカメラ機能による撮影時に、クリック時の振動やクリック音をマイクロホンが拾ってしまう不具合を解消できる。この結果、ビデオカメラ機能における撮影品質(集音品質)を高めることができるなど、必要に応じてクリック機構部5の悪影響を排除できる。しかも、クリックモードMcと非クリックモードMnを任意に選択できるため、両モードMc,Mnのメリットを使い分けることができ、ユーザの利便性及び快適性を高めることができる。具体的には、クリックモードMcを選択すれば、絞り値の目安にできるため、マニュアル操作時に所望の絞り値を速やかに設定できるとともに、非クリックモードMnを選択すれば、絞りを連続して可変する場合或いは絞り調整リング3をマニアックに操作するなど絞り値に捕らわれない撮影を行う場合等にスムースな操作を確保できる。加えて、クリック感のみを解消し、いずれのモードMc,Mnにおいても操作性(操作フィーリング)を変えないため、操作力が異なることによる操作ミス等の不具合を回避できる。
さらに、これらの基本効果に加え、本実施形態に係る絞り装置1では、絞り調整リング3の一端面3fとこの一端面3fに対向する固定筒部2c側の固定面2f間に、所定のクリック絞り調整範囲Zs以上にわたって回動操作可能なモード切換リング4を配設するとともに、絞り調整リング3の一端面3fに弾性変位可能に設けた第一クリックボール5bを有する第一係合部5f,及び第一クリックボール5bが圧接し、かつモード切換リング4の一端面4rにおけるクリック絞り調整範囲Zsにわたって順次形成した複数のクリック溝部5c…を有するクリック機構部5と、固定面2fに弾性変位可能に設けた第二クリックボール6bを有する第二係合部6f,及び第二クリックボール6bが圧接するモード切換リング4の他端面4fにおける切換操作範囲Zcの一端位置Xpと他端位置Xqに形成した一対のストッパ溝部6p,6qを有し、第二クリックボール6bが、一方のストッパ溝部6p又は6qに係合してクリック機構部5を有効にし、かつ他方のストッパ溝部6q又は6pに係合してクリック機構部5を無効にするモード切換機構部6とを備えるため、モード切換機構部6により、絞り調整時における、クリック機構部5を機能させるクリックモード,又はクリック機構部5を解除する非クリックモードに切換可能な絞り装置1を構成する場合であっても、絞り調整リング3に対し、基本的な部品として、モード切換リング4を追加すれば足りるため、従来技術における被係合基体部やロック機構等を不要にすることができる。したがって、大幅な部品点数の削減及び構成の簡略化が可能となり、製造時における作業工程の簡略化及び作業工数の低減、更には、レンズ全体のコストダウンを図れるとともに、レンズLのサイズダウンにも寄与できる。
加えて、モード切換機構部6におけるロック機構を排して、クリック方式によるモード切換機構を構成したため、切換操作する際における操作上の煩雑化を排除できる。この結果、モード切換における操作性の向上による操作の容易化及び迅速化を実現できるため、撮影チャンスを逃がすなどの不具合を排除できるとともに、一眼レフ等によるカメラ撮影及び動画に対するビデオ撮影の双方にとって最適なレンズLを提供できる。
次に、本実施形態に係る絞り装置1の各部における変更例について、図7〜図11を参照して説明する。
図7は、固定筒部2cの変更例を示す。図3に示した固定筒部2c、特に、モード切換リング4よりも前方における固定筒部2cの外周面は、軸方向Fsに沿って平坦に形成した。したがって、モード切換リング4のハンドル部4hの前後の面は、ハンドル部4hの最外郭部よりも低い位置にあるため、ハンドル部4hをより確実に操作できる利点がある。しかし、反面、外部から物が当たり易くなるため、図7に示す変更例は、モード切換リング4のハンドル部4hの前方における固定筒部2cの外周面に、ハンドル部4hの最外郭部とほぼ同じ高さとなる堤状のプロテクタ部31を設けたものである。これにより、ハンドル部4hに対して外部から物が当たり、誤ってモード切換リング4が動いてしまう不具合を回避できるとともに、デザイン設計上の自由度を確保できる。
図8及び図9は、モード切換機構部6を構成するに際し、図1〜図6に示した実施形態、即ち、光軸方向Fsへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6b…を有する第二係合部6f,及び光軸方向Fsに対する直角方向Fdに形成したストッパ溝部6p…を有するモード切換機構部6に加えて、光軸方向Fsに対する直角方向Fdへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6bi,6bjを有する第二係合部6fi,6fj,及び光軸方向Fsに形成したストッパ溝部6pi,6pjを追加して構成したものである。
具体的には、図8及び図9に示すように、固定ベース2csの外周面に設けたリング収容部11の周面に、光軸方向Fsに対する直角方向Fdへ弾性変位可能な第二クリックボール6bi,6bjを有する一対の第二係合部6fi,6fjを設け、このリング収容部11に面接触するモード切換リング4の内周面に、光軸方向Fsとなるストッパ溝部6pi,6pjを形成したものである。この場合、ストッパ溝部6pi,6pjを形成する位置は、ストッパ溝部6p,6qを設けた一端位置Xpと他端位置Xq間における中央の位置を追加する一端位置Xiと他端位置Xj(図9)に選定した。なお、第二係合部6fi,6fjにおける、14i,14jは収容穴部を示すとともに、15i,15jはコイルスプリングを示す。
図8及び図9の変更例によれば、光軸方向Fs側の弾発力と、光軸方向Fsに対する直角方向Fd側の弾発力とを、選択又は組合わせができるため、第二係合部6f…における係止力の設定範囲を広げることができ、特に、組合わせることにより、係止力を大きくする際の十分な設定範囲を確保することができる。
なお、例示する形態は、光軸方向Fsへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6b…を有する第二係合部6f及び光軸方向Fsに対する直角方向Fdに形成したストッパ溝部6p…と、光軸方向Fsに対する直角方向Fdへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6bi,6bjを有する第二係合部6fi,6fj,及び光軸方向Fsに形成したストッパ溝部6pi,6pjとの双方を設ける形態、即ち、両者を組合わせる形態を示したが、図1〜図7に示したように、光軸方向Fsへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6b…を有する第二係合部6f及び光軸方向Fsに対する直角方向Fdに形成したストッパ溝部6p…を設けて構成した形態のみにより実施してもよいし、図8及び図9の変更例により示した光軸方向Fsに対する直角方向Fdへ弾性変位可能に設けた第二クリックボール6bi,6bjを有する第二係合部6fi,6fj及び光軸方向Fsに形成したストッパ溝部6pi,6pjを設けて構成した形態のみにより実施してもよい。
図10及び図11は、モード切換機構部6を構成するに際しての切換操作範囲Zcの変更例を示す。図4及び図5に示した切換操作範囲Zcは、180〔°〕(略180〔°〕)に設定した場合を示したが、図10及び図11に示す変更例は、180〔°〕以下の所定の切換操作範囲Zc、例示は、90〔°〕(略90〔°〕)に設定した場合を示す。この場合、クリック絞り調整範囲Zsは、90〔°〕に設定されているため、この90〔°〕におけるクリック絞り調整範囲ZsをクリックモードMcの調整範囲として使用するとともに、このクリック絞り調整範囲Zsに隣接した90〔°〕の面範囲Zfにおける平坦面を非クリックモードMnの調整範囲として使用するようにした。これにより、基本的には、切換操作範囲Zcの長さを任意に選定できるため、操作性や操作時間に影響する切換操作範囲Zcの長さについて、レンズLの種類(構成,グレード等)等に応じた最適な選定を行うことができる。
また、図10及び図11には、モード切換機構部6を設ける際の数量の変更例が含まれる。図4及び図5に示すモード切換機構部6は、一組だけ設けた場合、即ち、第二係合部6fを一個所にだけ設けた場合を示したが、図10及び図11に示す変更例は、モード切換機構部6を構成するに際し、周方向Ffにおける所定の位置Xp…に二組設けた場合を示す。具体的には、図10において、第二係合部6fの図示は省略したが、図10における位置Xp及びこの位置Xpに対して90〔°〕の角度となる位置Xpfに、それぞれ第二係合部6f,6fを配した。これにより、この位置にあるモード切換リング4を90〔°〕だけ回動操作すれば、位置Xpfにある第二係合部6fは位置Xpへ移動し、位置Xpにある第二係合部6fは位置Xqへ移動する。これにより、切換操作範囲Zcの選定に加えて、モード切換機構部6の組数を、レンズLの種類に応じて選定できるため、特に、二組以上設ければ、第二係合部6fとストッパ溝部6p(6q)の係合部位を、異なる位置に多点設定でき、係合時の剛性及び保持強度をより高めることができるなど、安定性及び信頼性をより高めることができる。
以上、変更例を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、モード切換機構部6を構成するに際し、固定面2fに、弾性変位可能に設けた第二クリックボール6bを有する第二係合部6fを配し、かつ第二クリックボール6bが圧接するモード切換リング4の他端面4fにおける切換操作範囲Zcの一端位置Xpと他端位置Xqに、一対のストッパ溝部6p,6qを配した場合を示したが、モード切換リング4の他端面4fに、弾性変位可能に設けた第二クリックボール6bを有する第二係合部6fを配し、かつ第二クリックボール6bが圧接する固定面2fにおける切換操作範囲Zcの一端位置Xpと他端位置Xqに、一対のストッパ溝部6p,6qを配してもよい。また、モード切換機構部6における切換操作範囲Zcとして、略180〔°〕と90〔°〕の範囲を例示したが、180〔°〕以下となる任意の切換操作範囲Zcを設定することができる。さらに、モード切換機構部6の組数として、周方向Ffにおける所定の位置Xp…に一組設ける場合と二組設ける場合を示したが、その他、四組設けるなど、例示の組数に限定されるものではない。
本発明に係る絞り装置1は、デジタルカメラやビデオカメラ等の各種光学機器のレンズに利用することができる。この際、レンズは交換レンズ等の単品であってもよいし、非交換式のレンズとして光学機器に一体化されたレンズであってもよい。
1:絞り装置,2:レンズ鏡筒,2c:固定筒部,2f:固定筒部側の固定面,3:絞り調整リング,3f:絞り調整リングの一端面,4:モード切換リング,4r:モード切換リングの一端面,4f:モード切換リングの他端面,5:クリック機構部,5b:第一クリックボール,5f:第一係合部,5c…:クリック溝部,6:モード切換機構部,6b…:第二クリックボール,6f…:第二係合部,6p…:ストッパ溝部,6q…:ストッパ溝部,6bi…:第二クリックボール,6fi…:第二係合部,6pi…:ストッパ溝部,L:レンズ,Zs:クリック絞り調整範囲,Zc:切換操作範囲,Zf:クリック絞り調整範囲以外の面範囲,Xp…:切換操作範囲の一端位置,Xq…:切換操作範囲の他端位置,Ff:周方向,Fs:光軸方向,Fd:光軸方向に対する直角方向
Claims (6)
- レンズ鏡筒の固定筒部に対して回動操作可能に設けることにより絞りを調整可能な絞り調整リングを備えるレンズの絞り装置において、前記絞り調整リングの一端面とこの一端面に対向する前記固定筒部側の固定面間に、所定のクリック絞り調整範囲以上にわたって回動操作可能なモード切換リングを配設するとともに、前記絞り調整リングの一端面に弾性変位可能に設けた第一クリックボールを有する第一係合部,及び前記第一クリックボールが圧接し、かつ前記モード切換リングの一端面における前記クリック絞り調整範囲にわたって順次形成した複数のクリック溝部を有するクリック機構部と、前記固定面又はこの固定面に対向する前記モード切換リングの他端面における、一方の面に弾性変位可能に設けた第二クリックボールを有する第二係合部,及び前記第二クリックボールが圧接する他方の面における切換操作範囲の一端位置と他端位置に形成した、前記第二クリックボールが係合する一対のストッパ溝部を有し、前記第二クリックボールが、一方の前記ストッパ溝部に係合して前記クリック機構部を有効にし、かつ他方のストッパ溝部に係合して前記クリック機構部を無効にするモード切換機構部とを備えることを特徴とするレンズの絞り装置。
- 前記第二係合部の弾発力は、前記第一係合部の弾発力よりも大きく設定することを特徴とする請求項1記載のレンズの絞り装置。
- 前記モード切換機構部は、光軸方向へ弾性変位可能に設けた前記第二クリックボールを有する前記第二係合部,及び光軸方向に対する直角方向に形成した前記ストッパ溝部,並びに/又は,光軸方向に対する直角方向へ弾性変位可能に設けた前記第二クリックボールを有する前記第二係合部,及び光軸方向に形成した前記ストッパ溝部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のレンズの絞り装置。
- 前記モード切換機構部は、略180〔°〕,又は180〔°〕以下となる所定の切換操作範囲を設定することを特徴とする請求項1,2又は3記載のレンズの絞り装置。
- 前記モード切換機構部は、周方向における所定の位置に一組又は二組以上設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレンズの絞り装置。
- 前記モード切換機構部は、前記クリック絞り調整範囲以外の面範囲を平坦面又は非平坦面に形成した前記モード切換リングを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のレンズの絞り装置。
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Applications Claiming Priority (1)
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JP2020177094A true JP2020177094A (ja) | 2020-10-29 |
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ID=72935887
Family Applications (1)
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JP2019078223A Pending JP2020177094A (ja) | 2019-04-17 | 2019-04-17 | レンズの絞り装置 |
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JP (1) | JP2020177094A (ja) |
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2019
- 2019-04-17 JP JP2019078223A patent/JP2020177094A/ja active Pending
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