JP2020176240A - フェノール樹脂、およびフェノール樹脂の製造方法 - Google Patents

フェノール樹脂、およびフェノール樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ゴムへ配合したときに高弾性と低ヒステリシスロス性が得られるフェノール樹脂を提供する。【解決手段】フェノール樹脂は、ゴム配合用途に供され、不飽和結合を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、フェノール樹脂、およびフェノール樹脂の製造方法に関する。
骨格構造中に二重結合を有するノボラック型フェノール樹脂は、他の配合剤との反応性が良好であるため、こられを含む各種材料の性能向上が期待できる。一方で、二重結合は不安定で重合して消失しやすいため、骨格構造中に二重結合を有するノボラック型フェノール樹脂を工業的に安定して生産することは難しい。例えば、特許文献1には、より優れた耐熱性と強度を有するカシューノボラック樹脂が開示されている。より詳細には、弱酸性触媒存在下、カシューナット殻液とアルデヒド類を逐次的に添加するとともに、系内の水分を除去しつつ反応させることで当該カシューノボラック樹脂が得られることが開示されている。
特開2009−132774号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、骨格構造中に二重結合を有するノボラック型フェノール樹脂をゴム組成物に用いた場合の弾性とヒステリシスロスに着目したものでなく、高弾性化と低ヒステリシスロス性を得る点で具現化されたものではなかった。また、生産安定性の点においても十分ではなかった。
本発明は、高弾性と低ヒステリシスロス性を得る観点から完成されたものである。
本発明は、不飽和結合を有する、ゴム組成物用のフェノール樹脂を提供する。
また、本発明は、上記フェノール樹脂の製造方法であって、フェノール類と、アルデヒド類と、不飽和結合を有する化合物とを、有機酸触媒存在下において反応させる工程を有する、フェノール樹脂の製造方法を提供する。
本発明によれば、ゴムへ配合したときに高弾性と低ヒステリシスロス性が得られるフェノール樹脂を提供できる。
本実施形態のタイヤの断面の一部を模式的に示した図である。 実施例1で得られたフェノール樹脂のNMRチャートである。 実施例2で得られたフェノール樹脂のNMRチャートである。 比較例1で得られたフェノール樹脂のNMRチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、詳細を説明する。
<フェノール樹脂>
本実施形態のフェノール樹脂は、不飽和結合を有するフェノール樹脂(以下、「フェノール樹脂(A)」とも表記する。)である。フェノール樹脂が不飽和結合を有するとは、例えば芳香族環に不飽和結合を有する置換基が結合したものや、水酸基の水素原子の代りに不飽和結合を有する化合物が結合したものや、原料のアルデヒドに由来する置換基に不飽和結合を有するものなどが挙げられる。
フェノール樹脂(A)が不飽和結合を有することにより、例えば、ポリブタジエンや不飽和ポリエステルなどの脂肪族二重結合を含有する樹脂やエラストマーに配合し、硬化させる際、フェノール樹脂(A)の不飽和結合部分がポリブタジエンや不飽和ポリエステルなどの二重結合部分と反応し強固に結合できる。その結果、機械的強度の高い硬化物(成形体)を得ることができる。
また、フェノール樹脂(A)は、好ましくは以下の一般式(1)で表わされる構造単位を、少なくとも1個以上有する。
Figure 2020176240
[式(1)中、Rは不飽和結合を有する置換基を示す。]
式(1)中、Rが有する不飽和結合としては、炭素−炭素不飽和結合(炭素−炭素二重結合、および炭素−炭素三重結合)であることが好ましい。また、Rは、炭素数2〜25の直鎖または分岐状の不飽和結合を有する炭化水素基であることがより好ましく、炭素原子に結合する水素原子の何れかが水素原子以外の原子で置換されていてもよい。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いられてもよい。
また、フェノール樹脂(A)は、好ましくは以下の一般式(2)で表わされる構造単位を、少なくとも1個以上有する。
Figure 2020176240
[式(2)中、Rは不飽和結合を有する置換基を示す。Rは、水素、アルキル基、アリール基、水酸基、エーテル基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、アルデヒド基、スルフィド基、チオール基、またはメチロール基のいずれかを示す。]
式(2)中、Rが有する不飽和結合としては、炭素−炭素不飽和結合(炭素−炭素二重結合、および炭素−炭素三重結合)であることが好ましい。また、Rは、炭素数2〜25の直鎖または分岐状の不飽和結合を有する炭化水素基であることがより好ましく、炭素原子に結合する水素原子の何れかが水素原子以外の原子で置換されていてもよい。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いられてもよい。
また、R中のアルキル基としては、炭素数2〜25の直鎖または分岐状の炭化水素基が好ましく挙げられる。
フェノール樹脂(A)は、フェノール類とアルデヒド類との縮合物であり、不飽和結合を有するフェノール樹脂を得る方法としては例えば、不飽和結合を有するフェノール類、あるいは不飽和結合を有するアルデヒド類とを反応させたり、不飽和結合を有しないフェノール樹脂に対し、不飽和結合を有する化合物を反応せしめ、不飽和結合を導入することにより得てもよい。これらの方法は単独ないしは組み合わせて用いても構わない。
不飽和結合を有するフェノール類としては、側鎖に不飽和結合を有するものなどが挙げられる。例えばビニルフェノール、アリルフェノール、オイゲノール、クルクミン、クマル酸、ヒドロキシケイ皮酸とその誘導体、カルダノールとその未精製物であるカシューナッツ殻液、ウルシオールとその未精製物である漆、チチオール、ラッコール等が挙げられる。好ましくはビニルフェノール、アリルフェノール、カルダノール、カシューナッツ殻液であり、特に好ましくはカルダノール、カシューナッツ殻液である。これらは単独あるいは組み合わせて用いてもよいし、さらに不飽和結合を含まないフェノール類とを組み合わせて用いてもよい。不飽和結合を含まないフェノール類としては、特に限定されるものではないが例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ジヒドロキシベンゼン、ナフトールや、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等の飽和アルキルフェノール類、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)プロピルベンゼン、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン等のビスフェノール類などが挙げられる。また、他の方法によって不飽和結合を含むフェノール樹脂を得る場合は、不飽和結合を含まないフェノール類のみを用いても構わない。不飽和結合を含まないフェノール類としては好ましくはフェノール、クレゾール、キシレノール、ジヒドロキシベンゼン、ナフトール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンである。これらは単独あるいは組み合わせて用いてもよい。
不飽和結合を有するアルデヒド類としては例えばアクロレイン、アリルアルデヒド、クロトンアルデヒド等が挙げられる。これらは単独あるいは組み合わせて用いてもよいし、さらに不飽和結合を含まないアルデヒド類とを組み合わせて用いてもよい。不飽和結合を含まないアルデヒド類としては、特に限定されないが例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、テトラオキシメチレン、ポリオキシメチレン、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、オクチルアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。あるいは、アルデヒド類と同様にフェノール類と反応するパラキシリレンジクロライド、パラキシリレンジメチルエーテル、フルフリルアルコールを用いてもよい。また、他の方法によって不飽和結合を含むフェノール樹脂を得る場合は、不飽和結合を含まないアルデヒド類のみを用いても構わない。不飽和結合を含まないアルデヒド類としては、好ましくはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、フルフリルアルコール、パラキシリレンジクロライド、パラキシリレンジメチルエーテルであり、特に好ましくはホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミンである。これらは単独あるいは組み合わせて用いてもよい。
フェノール樹脂(A)を得るためにフェノール類とアルデヒド類を反応させる条件としては、特に限定されないが、上記フェノール類とアルデヒド類とを、50℃〜200℃で加熱する方法などが挙げられる。フェノール類とアルデヒド類のモル比(F/Pモル比)は、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール類1モルに対しアルデヒド類を0.1モル〜4.0モルとしてもよく、好ましくは0.2モル〜2.0モル、より好ましくは0.3モル〜1.0モルとすることができる。また、触媒としては有機酸やリン酸、有機ホスホン酸類、遷移金属塩、塩基性触媒下で反応させることが好ましい。有機酸としては、例えば酢酸、シュウ酸、ギ酸、乳酸、リンゴ酸が挙げられる。有機ホスホン酸としては、例えばアミノポリホスホン酸類であるエチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、β−アミノエチルホスホン酸N,N−ジ酢酸、アミノメチルホスホン酸N,N−ジ酢酸や、1−ヒドロキシエチリデン−1,1'−ジホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等が挙げられる。遷移金属触媒としては、例えば、チタン、鉄、亜鉛、ニッケル、コバルト、銅、クロム、マンガン等の遷移金属の無機塩、有機酸塩を用いることができる。塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、炭酸ナトリウム、ヘキサメチレンテトラミンなどのアルカリ性物質を用いることができる。不飽和結合を有するフェノール樹脂を製造する装置は特に限定されないが、例えば加熱器、冷却器と撹拌器を備えた反応釜のような容器で反応させたり、連続ミキサー等で連続的に反応を行ってもかまわない。
不飽和結合を有しないフェノール樹脂に対し、不飽和結合を有する化合物を反応させてフェノール樹脂(A)を得る場合の不飽和結合を有する化合物としては、例えば不飽和結合を有するエポキシ化合物、塩化物、イソシアネート化合物や、乾性油等が挙げられる。不飽和結合を有するエポキシ化合物としては、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等、不飽和結合を有する塩化物としては、例えば塩化ビニル、アリルクロライド等、不飽和結合を有するイソシアネート化合物としては、例えばメタクリロイルイソシアナート、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、イソシアナートエチルメタクリレート、イソシアナートエチルアクリレート等、乾性油としては、亜麻仁油、桐油、芥子油、紫蘇油、胡桃油、荏油、紅花油、向日葵油等が挙げられる。これらは単独あるいは組み合わせて用いてもよい。
また、フェノール樹脂(A)は、さらにオイルによって変性されたものも用いることができる。変性に用いられるオイルとしては、ロジン油、トール油、等が挙げられる。
フェノール樹脂(A)のH−NMRスペクトルにおける不飽和結合に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合は、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の0.5%以上、20%以下であることが好ましく、0.7%以上、15%以下であることがより好ましく、1%以上、10%以下であることがさらに好ましい。
当該数値を、上記下限値以上とすることにより反応性が良好になり、上記上限値以下とすることにより、良好な取扱い性を保持できる。
フェノール樹脂(A)の数平均分子量は400〜3000が好ましく、500〜2000がより好ましく、1100〜1800がさらに好ましい。これにより、取扱い性の良好な樹脂が安定的に得られる。
フェノール樹脂(A)の数平均分子量を上記下限値以上とすることにより、他の配合剤との相溶性を良好にし、良好な取扱い性を保持できる。一方、フェノール樹脂(A)の数平均分子量を上記上限値以下とすることにより、粘性が高くなりすぎることを抑制し、溶剤への良好な溶解性が得られやすくなる。
上記数平均分子量は、液体クロマトグラフィー法は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、所定の条件で、示差屈折計を検出器として測定したのちに、標準ポリスチレンにより換算することに算出される。
<フェノール樹脂(A)の製造方法>
フェノール樹脂(A)の製造方法は、フェノール類と、アルデヒド類と、不飽和結合を有する化合物とを、有機酸触媒存在下において反応させる工程を有する。これにより生産安定性を向上できる。無機酸の場合はpKaが低いため、二重結合の分極が強くなり、フェノール核に反応し、高分子量化、ゲル化するため良好な生産安定性が得られないのに対し、本実施形態のフェノール樹脂の製造方法によれば、有機酸触媒を用いているため、良好な生産安定性が得られる。
有機酸触媒としては、特に限定されないが、pKaが0以上5以下の有機酸が好ましい。pKaが0以上5以下の有機酸としては、例えば、酢酸、酪酸、プロピオン酸、乳酸、ギ酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、サリチル酸、および有機ホスホン酸等が挙げられる。これらを1種または2種以上組合せて使用することができる。
上記の有機酸触媒の添加量は、特に限定されないが、フェノール類100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
有機酸触媒の添加量を、上記下限値以上とすることにより、反応性が良好になる。一方、有機酸触媒の添加量を、上記上限値以下とすることにより、異常反応を抑制し、ゲル化物の生成を抑制できる。
また、必要に応じてフェノール類とアルデヒド類の反応後に、中和剤を添加し酸成分の活性を下げたり、蒸留除去や、水や有機溶剤で抽出除去しても構わない。中和剤としては特に限定されないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、弱酸塩、無機アミン類、有機アミン類、アルカノールアミン類などを用いることができる。蒸留除去する方法としては、特に限定されないが、減圧下で加熱しながら酸成分を蒸留除去する方法などが挙げられる。水や有機溶剤で抽出除去する方法としては、特に限定されないが、水や有機溶剤を添加し、混合後静置したり遠心分離などを行い、樹脂相と抽出液相に分離させて酸が移行した抽出液相を除去する方法などが挙げられる。
上記の工程においては、反応溶媒を用いてもよい。反応溶媒としては、特に限定されないが、例えば水、有機溶媒を用いることができ、通常は、水が用いられる。また、アルデヒド類としてパラホルムアルデヒドを用いた場合は、反応溶媒を用いなくてもよい。
上記の有機溶媒としては、特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、1,4−ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族類などが挙げられる。これらを1種または2種類以上組合せて使用することができる。これらの中で、溶剤可溶タイプの生成物を得るためには、アセトン、DMF等の極性溶剤を用いることが好ましい。
フェノール類とアルデヒド類とを効率よく反応させるための反応条件としては、例えば、pH0〜4の酸性下において、200℃以下が好ましく、130〜180℃がより好ましい。これにより、本実施形態のフェノール樹脂(A)を効率よく安定的に生産することができる。
<ゴム組成物>
本実施形態のゴム組成物は、上記のフェノール樹脂(A)と、ゴム成分と、を含む。
[ゴム成分]
ゴム成分としては、天然ゴム(NR)、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPM)、アクリルゴム(ACM)、塩素化ポリエチレン(CM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、およびジエン系ゴムが挙げられる。
上記のジエン系ゴムとしては、ゴムを構成するモノマーの少なくとも一部としてジエンモノマーを含有するゴムであればよい。具体的には、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ポリイソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム{塩素化ブチルゴム(CI−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)等}、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム(EBR)、プロピレン−ブタジエン共重合体ゴム(PBR)等を用いることができる。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いられてもよい。
なかでも、天然ゴム、IR、SBR、BRまたはこれらから選ばれる2種以上の混合物であることが好ましい。
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、フェノール樹脂(A)を0.1〜30質量部含むことが好ましく、0.5〜20質量部含むことがより好ましく、1〜10質量部含むことがさらに好ましい。
本実施形態のゴム組成物は、さらに以下の成分を含んでもよい。
[無機フィラー]
無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、クレー、およびマイカなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、弾性率を高める観点から、カーボンブラック、およびシリカが好ましい。
無機フィラーの含有量は、ゴム組成物100質量部に対し、20〜100質量部が好ましく、40〜80質量部がより好ましい。
無機フィラーの含有量を、上記下限値以上とすることにより、ゴムの硬度を高くすることができ、上記上限値以下とすることにより、流動性が得られやすくなる。
[硬化剤]
硬化剤は、フェノール樹脂(A)を加硫させるために用いられる。硬化剤としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ベンゾオキサジン、レゾール型フェノール樹脂、およびメラミン・ホルムアルデヒドの初期縮合物、及びメラミン・ホルムアルデヒド初期縮合物のメチルエーテル化物、例えばヘキサメトキシメチルメラミン、ペンタメトキシメチルメラミン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いられてもよい。
硬化剤の含有量は、フェノール樹脂(A)100質量部に対して、1〜60質量部が好ましく、3〜50質量部がより好ましい。
硬化剤の含有量を、上記下限値以上とすることにより、フェノール樹脂(A)及びゴム成分の加硫効率が良好になる。一方、硬化剤の含有量を、上記上限値以下とすることにより、未反応の硬化剤が残存することを抑制し、高弾性率を維持できる。
本実施形態のゴム組成物は、その他任意成分として、ゴム工業界において通常使用される配合剤、例えば、軟化剤、老化防止剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、及びカップリング剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。
本実施形態のゴム組成物の製造方法は、公知の方法を用いることができる。すなわち、上述したフェノール樹脂(A)、ゴム成分およびその他の任意成分を混合して素練したのち、硫黄などの加硫剤を配合し、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、または二軸押出機等を用いて、混練、熱入れ、押出等の本練を行うことにより得られる。
<ゴム製品>
本実施形態のゴム組成物を加硫したゴム製品は、例えば、半導体部品、航空機部品、自動車部品、鋳物、産業用機械部品、電子部品、電気部品、および機構部品等の用途に適用される。ゴム製品の成形方法は、特に限定されず、例えば、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、キャスト成形法等の公知の方法が挙げられる。ゴム製品の形態は、どのような形態であってもよく、中間成形品であっても、最終成形品であってもよい。なかでも、高弾性率およびヒステリシスロス両立の効果を発揮させる観点から、ゴム製品は、自動車部品に適用されることが好ましく、タイヤ用部材であることがより好ましい。
[タイヤ]
本実施形態において、タイヤとは、空気入りタイヤのことであり、乗用車、トラック、バス、重機等に使用することができる。
図1は、タイヤの断面を模式的に示した断面図である。図1に示すように、タイヤ100は、走行時に路面と直接接するトレッド部11と、タイヤ100の肩部分となりカーカス15を保護するショルダー部12と、タイヤ100の側面となりカーカス15を保護するサイドウォール部13と、タイヤ100をホイールに備わるリム部に固定するとともにカーカス15の両端を固定するためのビート部14と、タイヤ100の骨格を形成するカーカス15と、ベルト部16と、を有する。またタイヤ100の内側にはインナーライナー18が配置されている。また、ベルト部16は、トレッド部11と、カーカス16との間に配置され、トレッド部11を補強するために用いられる。具体的には、ベルト部16は、カーカス15のクラウン部外側に配置され、トレッド部11の剛性を高める役割を果たす。さらに、タイヤ100におけるビート部14には、カーカス15の端部を折り返すように係止し、かつ走行時にカーカス15の引っ張りを受け止めてリム部に固定するためのビートコア17が配されている。タイヤ100をホイールのリム部に固定し、タイヤ100とホイールとの間に空気を保持させることで空気入りタイヤとなる。
本実施形態のゴム組成物を用いたタイヤ用部材として具体的には、トレッド部材、サイドウォール部材、カーカス部材、ベルト部材、ビード部材、ショルダー部材、タイヤ補強層、リムクッション部、ランフラット補強ライナー部およびその他の補強ゴム部の少なくとも一つの部材を挙げることができる。
本実施形態のゴム製品を、例えば、タイヤのトレッド部材に用いる場合は、本実施形態のゴム組成物を未加硫の段階でタイヤのトレッド部の形状に押出し加工し、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り合わせて未加硫タイヤを成形する。その後、未加硫タイヤを加硫機中で加熱・加圧してタイヤを得ることができる。成形の温度は、100〜220℃程度であるのが好ましく、120〜200℃程度であるのがより好ましく、130〜190℃程度であるのがさらに好ましい。成形の温度が190℃を超える場合、ゴムの劣化の恐れがあり、また100℃未満の場合は成形が出来ない恐れがある。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
<実施例1>
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた反応器に、フェノール1000部、カシューナッツ殻液430部(CNSL、東北化工株式会社製)、シュウ酸二水和物20部、37%ホルマリン水溶液820部を100℃にて3時間反応させた。さらに水酸化カルシウムを10部加えたのち、真空度40torrで180℃まで90分で加熱昇温し水を蒸留除去し、続けて180℃にて30分間水蒸気を吹き込みながら未反応フェノールを蒸留除去し、フェノール樹脂1を得た。
<実施例2>
実施例1のカシューナッツ殻液を600部、37%ホルマリン水溶液を850部とし、シュウ酸二水和物の代わりに97%硫酸10部とした以外は、実施例1と同様の方法とし、フェノール樹脂2を得た。
<比較例1>
カシュー変性フェノール樹脂(PR-12686、住友ベークライト株式会社製)を、フェノール樹脂3として用いた。
<測定・評価>
得られた各フェノール樹脂について、以下の評価・測定を行った。結果を表1に示す。
・生産安定性:180℃で12時間保管した後のフェノール樹脂の状態(溶融またはゲル化)について目視で観察した。
・数平均分子量:GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、東ソー製TSKgelG1000HXL 1本、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本を用い、溶媒テトラヒドロフランを使用し、カラム温度40℃、流量1ml/分で測定した。数平均分子量はポリスチレン換算で算出した。
・不飽和結合量:H−NMRスペクトルにおける不飽和結合に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)と、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)とを測定し、重溶媒由来のピークを除き炭素原子に結合した水素に由来するピークに対する不飽和結合に由来するピークの割合(%)を算出した。
NMRの測定は日本電子社製JNM−AL300を用い、重アセトン溶媒、積算回数64回で行った。各NMRチャートを図2〜4にそれぞれ示す。
さらに、得られた各フェノール樹脂を用いて、ゴム組成物を調製した。
具体的には、フェノール樹脂10重量部と、ゴム成分100重量部と、カーボンブラック50重量部と、ステアリン酸3重量部と、酸化亜鉛5重量部とを、250cc密閉式バンバリーミキサーを用いて5分混練した。混練後ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該混練物を同バンバリーミキサーに再度入れ、硬化剤2.5重量部、加硫促進剤0.6重量部と、硫黄2.5重量部とをさらに加えて5分間混練し、各ゴム組成物を得た。
[材料]
・ゴム成分:ジエン系ゴム、天然ゴム、RSS3、株式会社東知製
・カーボンブラック:シースト3、HAFグレード、東海カーボン株式会社製
・ステアリン酸:東京化成工業株式会社製
・酸化亜鉛:東京化成工業株式会社製
・硬化剤:ヘキサメトキシメチルメラミン、スミカノール508、田岡化学工業株式会社製
・加硫促進剤(DM):ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、東京化成工業株式会社製
・硫黄:東京化成工業株式会社製
<測定・評価>
次に、得られたゴム組成物を温度145℃で30分間加熱することで、厚さ2mmとなるようにプレス加硫した試験片について、以下の硬度、動的粘弾性試験での60℃tanδの評価を行った。得られたゴム加硫物を用いて、以下の測定・評価を行った。結果を表1に示す。
・硬度:JIS K 6253に準拠して、デュロメーター(東洋精機社製)を用いて、デュロD硬度を評価した。評価結果を下記表1に示す。値が大きい方が良好な硬さを有していることを示す。なお単位は、無次元である。
・動的粘弾性(60℃tanδ):2mm厚の加硫シートより、幅10mm、長さ40mmとなるように試験片を切り出し、動的粘弾性試験機(ARES G2、TAインスツルメンツ株式会社製)にて、スパン22mm、歪2%、周波数10Hzにて60℃におけるtanδを評価した。tanδの値は小さい方がよりヒステリシスロスが低く良好であることを示す。なお単位は、無次元である。
Figure 2020176240

Claims (20)

  1. 不飽和結合を有する、ゴム組成物用のフェノール樹脂。
  2. 有機酸触媒存在下で得られた、請求項1に記載のフェノール樹脂。
  3. 前記フェノール樹脂が一般式(1)で表される構造単位を、少なくとも1個以上有する、請求項1または2に記載のフェノール樹脂。
    Figure 2020176240
    [式(1)中、Rは不飽和結合を有する置換基を示す。]
  4. 式(1)中、前記不飽和結合が炭素−炭素不飽和結合である、請求項3に記載のフェノール樹脂。
  5. 前記フェノール樹脂が一般式(2)で表される構造単位を、少なくとも1個以上有する請求項1または2に記載のフェノール樹脂。
    Figure 2020176240
    [式(2)中、Rは不飽和結合を有する置換基を示す。Rは、水素、アルキル基、アリール基、水酸基、エーテル基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、アルデヒド基、スルフィド基、チオール基、またはメチロール基のいずれかを示す。]
  6. 式(2)中、前記不飽和結合が炭素−炭素不飽和結合である、請求項5に記載のフェノール樹脂。
  7. H−NMRスペクトルにおける前記不飽和結合に由来するピーク(4.5〜6.0ppmのピーク)の割合が、炭素原子に結合した水素に由来するピーク(0.2〜7.5ppmのピーク)の積算値合計の0.5%以上、20%以下である、請求項1乃至6いずれか一項に記載のフェノール樹脂。
  8. 請求項1乃至7いずれか一項に記載のフェノール樹脂と、ゴム成分と、を含むゴム組成物。
  9. 前記ゴム成分が、ジエン系ゴムである、請求項8に記載のゴム組成物。
  10. タイヤ用部材に用いられる、請求項8または9に記載のゴム組成物。
  11. 請求項8または9に記載のゴム組成物を用いて成形されたゴム製品。
  12. 請求項10に記載のゴム組成物を用いて成形されたタイヤ用トレッド部材。
  13. 請求項10に記載のゴム組成物を用いて成形されたタイヤ用サイドウォール部材。
  14. 請求項10に記載のゴム組成物を用いて成形されたタイヤ用ビード部材。
  15. 請求項10に記載のゴム組成物を用いて成形されたタイヤ用ベルト部材。
  16. 請求項10に記載のゴム組成物を用いて成形されたタイヤ用カーカス部材。
  17. 請求項10に記載のゴム組成物を用いて成形されたタイヤ用ショルダー部材。
  18. 請求項10に記載のゴム組成物を用いて成形されたタイヤ補強層。
  19. 請求項10に記載のゴム組成物を用いて成形されたタイヤ。
  20. 請求項1乃至7いずれか一項に記載のフェノール樹脂の製造方法であって、
    フェノール類と、アルデヒド類と、不飽和結合を有する化合物とを、有機酸触媒存在下において反応させる工程を有する、フェノール樹脂の製造方法。
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