JP2020176111A - アルツハイマー型認知症予防・治療用組成物、アミロイドβオリゴマー神経毒性低減用組成物 - Google Patents

アルツハイマー型認知症予防・治療用組成物、アミロイドβオリゴマー神経毒性低減用組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】アミロイドβオリゴマーによる神経毒性、シナプス毒性の低減効果を備える組成物を提供すること。【解決手段】アミロイドβオリゴマーは強い神経毒性、シナプス毒性を有し、特定の認知症疾患(アルツハイマー型認知症)の病原因子とみなされる。本開示は、チロソール及びその誘導体、並びに、これらの塩の少なくともいずれかを有効成分として含有するアミロイドβオリゴマー神経毒性、シナプス毒性低減用組成物、およびチロソール及びその誘導体、並びに、これらの塩を含有する植物抽出物を有効成分とするアミロイドβオリゴマー神経毒性、シナプス毒性低減用組成物を含む。さらに、アミロイドβオリゴマーが発病に関与する疾患の予防・治療のための医薬品、食品またはサプリメントとしての上記組成物の使用を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、アルツハイマー型認知症予防・治療用組成物、アミロイドβオリゴマー神経毒性低減用組成物に関する。
アルツハイマー型認知症は、記憶障害や学習障害等の認知障害をもたらす認知症の一種であって、高齢者が罹患する最も一般的な病である。また、同疾患の発病前には、軽度認知障害(MCI)という前駆的時期を経るため、MCIから認知症への移行の予防が重要と考えられる。
アルツハイマー型認知症を発症する原因については不明な部分もあるが、人間の脳内において、アミロイドベータ(以下「Aβ」という。)が可溶性集合体(Aβオリゴマー以下「AβO」という。)を形成し、さらにフィブリルとして凝集し、老人斑として沈着する。Aβの蓄積により微小管関連タンパク質であるタウの異常、シナプス障害といった神経障害や炎症反応が起こり、神経変性を引き起こすことによって認知症を発生させていると考えられている。また、アルツハイマー病を背景とするMCIの時期には、すでにAβが蓄積していることが知られている。
そのため、アルツハイマー型認知症を発症させないためには、様々な方策が開発されており、例えば、(1)Aβが産生してしまうのを防ぐ、(2)AβOが凝集、沈着してしまうのを防ぐ、(3)蓄積したAβを除去、分解するといったことがあげられる。
上記の技術に関しては、例えば、下記特許文献1にはアミロイドベータたんぱく質産生を阻害するための方法が、下記特許文献2にはアミロイドベータ凝集阻害作用を有するフェノール誘導体に関する技術が、下記特許文献3にはアミロイドベータの除去を促進するための特異的抗体に関する技術が、それぞれ開示されている。
特表2007−533989号公報 特開2008−231102号公報 特開2012−24098号公報
ところで、上記AβO自身も神経毒性を引き起こすことが知られており、これを低減させることに基づいた予防・治療薬候補化合物についての報告は未だない。AβO自身の神経毒性を低減させることができれば、上記文献で示されるような他の治療法と相まってより効果的なアルツハイマー型認知症の予防・治療を実現することが可能となる。
そこで、本発明は上記課題に鑑み、AβOによる神経毒性低減効果を備える組成物、アルツハイマー型認知症の予防・治療用組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、多種の化合物を対象に、上記効果を有する化合物の探索を行っていたところ、ある特定の植物エキスに、アミロイドβオリゴマー神経毒性を低減させることができることを発見し、更にその根幹となる特定の化合物を同定し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一観点に係るアルツハイマー型認知症予防・治療用組成物は、チロソール及びその誘導体、並びに、これらの塩の少なくともいずれかを有効成分として含有するものである。
また、本発明の他の一観点に係るアミロイドβオリゴマー神経毒性低減用組成物は、チロソール及びその誘導体、並びに、これらの塩の少なくともいずれかを有効成分として含有するものである。
以上、本発明によって、AβOによる神経毒性低減効果を備える組成物、アルツハイマー型認知症の予防・治療用組成物を提供することができる。
実験例における図に関する簡単な説明は以下のようである。
実験例における植物の抽出物に関するウエスタンブロットの結果を示す図である。 実験例における植物コウケイテンに含まれる各種化合物に関するウエスタンブロットの結果を示す図である。 実験例においてチロソールの量を変化させた場合のウエスタンブロットの結果を示す図である。 実験例においてThTアッセイを用い、Aβ42の凝集に対するチロソールの影響について確認した結果を示す図である。 実験例においてADマウスの処置及びチロソールの投与について説明するための図である。 実験例においてチロソール投与開始後のそれぞれのマウスにおける体重変化を測定した結果を示す図である。 実験例におけるバーンズ迷路テストの結果を示す図である。 実験例において20週間水のみ与えたTgマウス(Tg−Veh)、水とチロソールを与えたTgマウス(Tg−Tyr)の海馬(上側)及び大脳皮質(下側)におけるAβ沈着の確認の結果を示す写真図である。 上記の図において、Aβ斑の占める面積をそれぞれの位置において定量的に求めた結果を示す図である。 実験例において、Aβ斑のAβ40とAβ42それぞれの蓄積量について定量的な分析を行った結果の図である。 実験例におけるマウスの海馬における注目領域を示す図である。 実験例において、20週それぞれのマウスの海馬のスピノフィリン抗体による免疫染色の結果を示す図である。 実験例において、12週および20週それぞれにおけるスピノフィリン強度の定量的なデータを示す図である。 実験例において、20週の海馬CA3領域における4−HNE抗体による免疫染色の結果を示す図である。 実験例において、12および20週における海馬CA3領域における4−HNE強度の定量的な結果を示す図である。 実験例において、AβオリゴマーまたはAβオリゴマーとチロソールで処理した神経細胞のヘキサノイルリジン付加物(HEL)抗体による免疫染色を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載された具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
(組成物)
まず、本実施形態に係るアルツハイマー型認知症予防・治療用組成物(以下「本組成物」という。)は、チロソール及びその誘導体、並びに、これらの塩の少なくともいずれかを有効成分として含有する。なお、本予防・治療用組成物は、アミロイドベータオリゴマー神経毒性低減の効果を有しているため、アミロイドβオリゴマー神経毒性低減用組成物でもある。
本組成物において、「チロソール」とは、下記式で示される化合物をいう。この化合物は本組成物の効果を発揮する有効成分であって、後述の実験例によっても確かめられているが、AβO神経毒性低減効果があり、神経毒性を低減することで、脳内の神経変性を抑え、アルツハイマー型認知症の予防及び治療のいずれにおいても効果を発揮することができるものである。
また、本組成物において「誘導体」とは、チロソールの効果と同等の効果を得ることができ、薬学的に許容できる範囲でチロソールの構造の一部を改変させた化合物をいい、限定されるわけではないが、チロソールと酸とが結合したエステル、チロソール中の水素を他の置換基に置き換えた置換化合物等を例示することができる。なおエステルにおける酸の例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等を例示することができるがこれに限定されない。
また、本組成物において「塩」とは、薬学的に許容でき、本組成物の効果と同等の効果を得ることができる、チロソール又はチロソール誘導体と塩基との反応により得られる塩をいい、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を例示することができる。
また本組成物は、上記の通り予防及び治療の少なくともいずれかに用いることができるものであって、医薬(薬剤)としての態様の他、食品(機能性食品)としての態様等を取ることができる。
本組成物が医薬である場合、既にアルツハイマー型認知症を発症している患者、アルツハイマー病を背景とするMCIの患者や将来患者となるリスクの高い者に対して投与することで予防又は治療を実現できる。
また本組成物が医薬である場合に、投与方法は、効果を発揮することができる限りにおいて限定されず、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤等の内服薬の形態であってもよく、湿布剤、軟膏剤等の外用薬、更には液剤等の注射薬のいずれの形態であってもよい。すなわち、本組成物は、経口投与、注射、舌下投与、皮膚投与等が可能である。
また本組成物が医薬である場合、上記の形態をとる組成物の製造を容易にする、品質の安定化を図る、又は効果を高める等の観点から、医薬の形態に応じて、賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝材、懸濁化剤、乳化剤、着色剤、着香剤、粘度調整剤等の上記有効成分以外の成分、いわゆる医薬品添加物を含むことができる。もちろん、本組成物の品質や効果等を変化させない範囲で水や生理食塩水等の溶媒を含ませることも可能である。
また、本組成物が食品である場合も、上記医薬の場合と同様、アルツハイマー型認知症の予防及び治療(改善)に用いることができる。なおここで、「食品」とは、茶、コーヒー、乳酸菌飲料、牛乳等の飲料、肉類、魚介類、卵類、穀物、豆類、イモ類、野菜類、海藻類、果物類等の天然の食材を用いた生鮮食品、ヨーグルト、納豆等の発酵食品、天然食材を加工した加工食品、サラダ油やオリーブオイル、大豆油、コーン油等の食用油を含む油脂類、しょう油、みそ等の調味料等を例示することができ、およそ人が摂取することができるものである限りにおいて限定されない。またこの食品には、上記有効成分を、上記食品の粉末や濃縮液及び上記賦形剤等の少なくともいずれかと混合した、いわゆるサプリメントとしての形態ももちろん含まれる。またもちろん、原料からエキスとして抽出するような場合、そのエキス自体も食品組成物といえる。
また本組成物の有効成分の投与量は、組成物の形態が医薬品であるか食品であるかによっても異ならせることができ、また、投与対象者の症状及び体重等によって適宜調整可能である。限定されるわけではないが、体重1kgあたり、1日に0.5 mg以上であることが好ましく、より好ましくは1.0 mg以上である。この範囲とすることで、本組成物の効果を発揮することが可能となる。
また、本組成物におけるチロソール及びその誘導体並びにその塩(以下「チロソール等」という。)は、合成によって製造することもできるが、これを含む植物から抽出することによっても得ることができる。この場合において、植物の種類としては、チロソール等を含む限りにおいて限定されるわけではないが、できる限り単位体積又は単位重量当たり多く含まれているものであることが好ましく、Rhodiola rosea L.、Sinopodophyllum emodi (WALL.) YING、Rhodiola crenulata (HOOK.f.et Thoms.) H.OHBA、Rhodiola sachalinensis、Olea europaea、Engelhardia roxburghiana及びFraxinus americana等を例示することができる。
また、植物からチロソール等を抽出する場合において、その抽出方法は特に限定されず、公知の方法に従って行うことができる。この抽出の際に用いることができる抽出溶媒としては、水、アルコール、アセトン、ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの少なくとも2つの混合物のいずれかを好適に用いることができる。なお、アルコールとしては、限定されるわけではないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールなどを例示することができ、人が口にする観点からするとエタノールであることはより好ましい。なお、水とエタノールの混合物の場合、エタノール含量が5重量%以上95重量%以下の含水エタノールを用いることがより好ましく、更に好ましくは10重量%以上90重量%以下である。
以上、本組成物は、AβOによる神経毒性低減効果を備える組成物、アルツハイマー型認知症の予防・治療用組成物として効果を発揮することができる。特に、本組成物は、チロソール等を有効成分としているため、経口投与等が容易に可能である。また、上記の通り公知のアルツハイマー型認知症の予防・治療組成物と機序が異なるものでもあり、当該他の組成物との併用が可能であり相乗効果が期待できる。また、本組成物は、化学構造が比較的単純であり、製造が容易であるだけでなく、植物由来のものであり、高い安全性を備えているといえる。更に、チロソールは比較的低分子であって、体内に取り込まれた後脳まで移行しやすく、高い効果が期待できる。
ここで、上記実施形態において言及した組成物の効果について、実際に行った実験を基に説明する。
(抽出物)
まず、コウケイテン(Rhodiola rosea)の根茎に対し、80度の水で抽出し、遠心分離をかけ、抽出物を得た。
(有効成分の同定)
次に、培養9日目の初代培養ニューロンに対し、何も加えない場合、2.5μMのAβOのみ加えた場合、又は、このAβOと上記植物抽出物を加えた場合で3日間静置し、活性化カスパーゼ3抗体を用いたウエスタンブロットにより評価を行った。なお、この実験において、AβOは合成Aβ42を用いて既報の方法により調整し、培養液で希釈した後に、使用した。この結果を図1に示す。なお図中、Cは何も加えない場合、OはAβOのみ加えた場合、E1はAβOとコウケイテンの抽出物(10μg/ml)を加えた場合の結果それぞれを示している。なお、活性化カスパーゼ3は、アポトーシス活性化の指標として用いた。
この結果によると、コウケイテンの抽出物を加えた状態において、有意に活性化カスパーゼ3の発現レベルが下がっていることができた。すなわち、コウケイテン抽出物に神経毒性の低減効果の可能性があることを確認した。
次に、コウケイテン抽出物において含有されている候補化合物であるチロソール(Tyrosol)、サリドロシド(Salidroside)、ロザビン(Rosavin)、ロザリン(Rosarin)、ロジン(Rosin)、ロジリジン(Rosiridin)をそれぞれ5μMとして、上記と同様の実験を行った。この結果を図2に示す。なお図中、Tはチロソール、Sはサリドロシド、R1はロザビン、R2はロザリン、R3はロジン、R4はロジリジンを添加した場合を示している。
この結果によると、チロソールにおいて有意に活性化カスパーゼ3の発現レベルが下がっていることが確認でき、コウケイテン抽出物エキス中のチロソールが主としてこの効果を担っているものと考えられた。
また更に、チロソールの濃度を変えて、上記と同様の実験を行った。具体的には、チロソールの濃度を5μMとした場合、10μMとした場合それぞれについて行った結果を図3に示す。なお図中、T5はチロソールを5μMで添加した場合、T10はチロソールを10μMで添加した場合の結果をそれぞれ示している。
この結果、いずれの添加量の場合においても、活性化カスパーゼ3の発現レベルが下がっていることが確認できた。なお、この効果は20μMとした場合においても確認でき、更に、少なくとも200μMまで毒性を示さないことを確認している(図示せず)。
(Aβ凝集に対する化合物の影響)
次に、チオフラビンT(Thioflavin T(ThT))アッセイを用い、Aβ42の凝集に対するチロソールの影響について確認した。この結果を図4に示す。
なお図中、横軸は時間、縦軸は発光強度を示しており、AβはAβ(50μM)のみ、Aβ+EGCGは、Aβ50μMとエピガロカテキンガレート(Epigallocatechin gallate(EGCG))を加えたもの、Aβ+T10はAβ50μMにチロソールを10μMで加えたもの、Aβ+T25はAβ50μMにチロソールを25μMで加えたもの、Aβ+T50はAβ50μMにチロソールを50μMで加えたもの、Aβ+T100はAβ50μMにチロソールを100μMで加えたもの、をそれぞれ示している。
この結果、72時間経過後において、EGCGにおいては顕著な凝集抑制を確認することができたが、チロソールを加えたものについては有意な凝集抑制効果がないことを確認した。すなわち、上述のチロソールの効果はAβ凝集を抑制するという観点が主ではないことを確認した。
(ADモデルマウス)
次に、実際にアルツハイマー型認知症を発症したAD(Alzheimer’s Disease)モデルマウス(5XFAD)トランスジェニック(Tg)マウス)及び野生型マウス(Nonマウス)を用いてチロソールの有効性について確認を行った。なお、5XFADマウスは、変異アミロイドβ前駆体タンパクと変異プレセニリン1を過剰発現するマウスで、米国MMRRCより入手し、C57BL/6マウスとの交配により、維持した。
そこで、まず、Tgマウス、Nonマウスそれぞれに対し、水のみ投与した群(Tg−Vehマウス、Non−Vehマウス)、水とチロソール(投与量12.5mg/kg/day)を与えた群(Tg−Tyrマウス、Non−Tyrマウス)で分けた。水とチロソールを与える時期においては、更に、生後2月から20週(生後7月目まで)の場合と、生後4月から12週(生後7月目まで)の場合に分けて準備した。なお、生後3月付近がAβの凝集によるAβ斑の出現時期となっている。この場合のイメージ図を図5に示しておく。なおこの場合において、チロソールは、給水便にチロソールを含む水(25μM)を入れ、自由飲水によりマウスに投与した。
(チロソールの安全性確認)
図6に、チロソール投与開始後のそれぞれのマウスにおける体重変化を測定した結果を示す。この結果によると、水のみを投与した場合とチロソールを投与した場合において殆ど差異は見られなかった。また、アルブミン、尿素窒素、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の値についても確認したが、これらについてもTgマウスとNonマウスの間に差異は見られなかった。この結果、チロソール自体に毒性は確認できず、投与の範囲において安全性を確認することができた。
(バーンズ迷路テスト)
ここで、上記マウスの空間記憶の評価のためバーンズ迷路テストを行った。この結果を図7に示しておく。このテストによると、訓練5日間のうちの2、3日目において、12週間水のみ又は水とチロソールを与えたTgマウスの逃避潜時はNon−Vehマウスに比べて長かったが、5日目になるとTg−Vehマウスの逃避潜時がNon−Vehマウスより有意に長いが、Tg−TyrマウスではNon−Vehと有意差がなかったことを確認した。また、Tg−VehマウスとTg−Tyrマウスに対し、対応のある2−way ANOVAを行ったところ、Tg−Tyrマウスにおいて空間認知機能が有意に軽度改善していることを確認した。なお、Nonマウスにおいては、水のみ与えた場合とチロソールも与えた場合の間において差異は見られなかった。
一方、20週間水のみ又は水とチロソールを与えたTgマウスでは、4、5日目になるとTg−Vehマウスの逃避潜時がNon−Vehマウスより有意に長い一方、Tg−TyrマウスではNon−Vehと有意差がなかったことを確認した。また、Tg−VehマウスとTg−Tyrマウスに対し、対応のある2−way ANOVAを行ったところ、両群間に有意差があり、Tg−Tyrマウスにおいて空間認知機能が有意に軽度改善していることを確認した。
なお、この場合において、6日目にプローブテストを行った。Tg−Tyrマウスでは、ターゲット穴のある4分円内の孔付近に滞在する時間が他の4分円内の孔付近に滞在する時間に比べて長いが、Tg−Vehマウスではそうではなかった。(図示省略)
(Aβの蓄積)
ところで、ADマウスにおけるAβの蓄積について免疫組織化学的分析及び生化学的分析により確認を行った。図8は、20週間水のみ与えたTgマウス(Tg−Ver)、20週間水とチロソールを与えたTgマウス(Tg−Tyr)の海馬(上側)及び大脳皮質(下側)におけるAβ蓄積の免疫組織化学的分析を示すものである。また、図9は、このAβ蓄積量をそれぞれの位置において定量的に求めたものである。これらの結果、マウスにはいずれもAβ斑が確認できた。なおこの場合において、12週間チロソールを与えたマウスには、水のみ与えたマウスに比べAβ斑において有意差はなかったが、20週間チロソールを与えたマウスの場合、水のみ与えたマウスに比べて差異はあまりなかった。また、図10で示すように、Aβ斑をさらに細かくAβ40とAβ42の蓄積量それぞれについてELISAによる分析を行ったが、これらの結果によっても、水のみ与えたマウスとチロソールを与えたマウスの間に大きな差異は見られなかった。この結果によっても、チロソールがAβの蓄積に影響しないことを確認できた。また、大脳皮質抽出液のウエスタンブロットの結果、アミロイドβ前駆体タンパクのレベルは、上記2群のマウス間で同等であった。(図示省略)
(シナプス異常)
また、AβO神経毒性の主な影響はシナプス毒性であって、ADモデルマウスではシナプスの機能や構造が乱されることが報告されている。そこで、チロソールがシナプス異常に有益な効果を及ぼすかどうかを調べるため、樹状突起シナプスの足場タンパク質であるスピノフィリンに注目し、確認を行った。この結果を図11乃至13に示す。図11は、マウスの海馬における注目領域を示す図であり、図12は、20週におけるそれぞれのマウスの海馬の免疫染色の結果を示す図である。また、図13は、12週および20週それぞれにおけるスピノフィリン強度の定量的なデータを示す。
この抗スピノフィリンによる海馬の免疫染色によると、CA3、CA1、および歯状回(DG)の門領域において陽性のシグナルを示していることを確認した。これらの領域におけるスピノフィリンの強度はNon−Vehマウスに比べて、Tg−Vehマウスにおいては低下していたが、Tg−Tyrマウスでは対照のレベルまで戻っているようだった。また定量分析によると、スピノフィリン強度がTg−Vehマウスでは約30%減少したが、Non−VehマウスとTg−Tyrマウスではほぼ同等の強度であることを確認した。この結果は、12週のマウス、20週のマウスのいずれにおいても同様な結果であった。また、Non−VehマウスとNon−Tyrマウスの間で上記のスピノフィリン免疫反応強度には差がなかった。(図示省略)
(酸化ストレス応答)
また、AβOは酸化ストレスを誘発することが知られている。そこで、シナプス障害に対するチロソールの保護効果の根底にあるメカニズムについての洞察を得るため、抗4−HNEを用いた免疫染色によって、酸化ストレス応答のよく知られたマーカーである4−HNEに対するチロソール投与の効果を分析した。この結果を図14、図15に示す。なお図14は、海馬CA3領域における4−HNE免疫染色(の結果を示しており、図15はこの定量的な結果を示すものである。
この結果、海馬CA3領域のニューロンで比較的強い点状の免疫反応性シグナルが確認できた。特に、抗4−HNEおよびDAPIによる二重染色は、4−HNE免疫反応性シグナルが神経細胞周辺に存在することを示している。なお、興味深いことに、4−HNE免疫反応性の強度は、Tg−Vehマウスの方がNon−Vehマウスよりも強かった。
また、定量的データによると、CA3領域における4−HNE免疫反応性の強度が、Non−Vehマウスと比較して、Tg−Vehマウスにおいて15〜20%程度有意に増大していたが、Tg−TyrマウスではNon−Vehマウスレベルまで回復したことが12週、20週の両群で見られた。また、Non−VehマウスとNon−Tyrマウスの間で上記の4−HNE免疫反応強度には差がなかった。(図示省略)
なお、ここで、チロソールがAβO誘導酸化ストレスを予防できるかどうかを調べるため、脂質過酸化による酸化的損傷のマーカーであることが知られているヘキサノイルリジン付加物(HEL)に対する抗体を用いて免疫細胞化学分析を行った。この結果、図16に示すように、HEL免疫反応性が細胞体および神経突起の近位部分に存在し、AβOによる酸化ストレスの誘導を反映して、対照よりもAβO処理ニューロンにおいてより強いことを確認した。しかしながら対照的に、AβOおよびチロソール(5μM)で同時処置したニューロンの強度は対照とほぼ同様であったため、チロソールの抗酸化効果を推察することができた。
(その他の結果)
チロソールは5〜10μMの濃度で、初代培養神経細胞からのAβ40およびAβ42の分泌量に影響を与えなかった(図示省略)ことから、チロソールは神経細胞のAβ産生には影響しないことが示唆された。
以上の結果から、植物Rhodiola roseaの主成分の1つであるチロソールが、AβOの神経毒性からニューロンを保護する薬剤となりうることを確認した。ADモデルマウスへのチロソールの長期経口投与は、認知障害をやや軽減し、Aβ蓄積に影響を与えることなくシナプス障害および酸化反応を有意に逆転させることができる。これらの結果は、天然剤チロソールが、Aβ蓄積の抑制という既存薬剤の作用機序とは異なる作用機序を有する、ADのための安全で有効かつ独特の薬物候補であることをまとめて示唆している。
本発明は、アルツハイマー型認知症予防・治療用組成物、アミロイドβオリゴマー神経毒性低減用組成物として産業上の利用可能性がある。





Claims (5)

  1. チロソール及びその誘導体、並びに、これらの塩の少なくともいずれかを有効成分として含有するアルツハイマー型認知症予防・治療用組成物。
  2. チロソール及びその誘導体、並びに、これらの塩の少なくともいずれかを有効成分として含有するアミロイドβオリゴマー神経毒性低減用組成物。
  3. チロソール及びその誘導体、並びに、これらの塩を含有する植物抽出物を有効成分とするアルツハイマー型認知症予防・治療用組成物。
  4. チロソール及びその誘導体、並びに、これらの塩を含有する植物抽出物を有効成分とするアミロイドβオリゴマー神経毒性低減用組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物を含有する医薬品、食品又はサプリメント。




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