以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1には、本発明の第1の実施形態としての薬液注入コントローラ10が示されている。薬液注入コントローラ10は、使用者である患者が自己操作によって急速の薬液投与を行うためのものであって、図2〜8に示すように、ハウジング12内にサブリザーバー14が収容状態で組み込まれた構造を有している。なお、薬液注入コントローラ10の内部構造を見易くするために、図2においてハウジング12の上半部分の図示が省略されていると共に、図3においてハウジング12の下半部分の図示が省略されている。以下の薬液注入コントローラ10の説明において、原則として、上下方向とは図5中の左右方向を、前後方向とは軸方向である図4中の下上方向を、左右方向とは図4中の左右方向を、それぞれ言う。
より具体的には、ハウジング12は、硬質の合成樹脂などで形成されている。ハウジング12は、全体として前後方向を長手とされた中空形状、より具体的には略有底筒状とされている。ハウジング12は、後端部分を除く広い範囲に亘って扁平な中空断面形状を有しており、本実施形態では中空の略長円形断面を有している。これにより、ハウジング12は、断面における長手方向である長軸方向が上下方向とされていると共に、短軸方向が左右方向とされている。ここで言う扁平な断面形状は、長円形断面のみに限定されるものではなく、例えば、扁平な多角形断面などであってもよい。好適には、ハウジング12は、患者が片手で掴むことができる外径寸法とされており、外周面が患者によって把持される把持面16を備えている。
また、ハウジング12には、サブリザーバー14が収容されている。サブリザーバー14は、図4〜8に示すように、カップ状とされたダイヤフラム部18の開口がベース部材20で覆蓋されることによって構成されている。
ダイヤフラム部18は、ゴムや樹脂エラストマーなどで形成されて可撓性を有している。ダイヤフラム部18は、外力の作用しない静置状態において略カップ状とされている。ダイヤフラム部18の開口部分には、外周へ突出するフランジ状の挟持部22が、全周に亘って一体形成されている。ダイヤフラム部18の底部24は、内周部分が外周部分よりも厚肉とされており、本実施形態ではダイヤフラム部18の底部24の外周部分が、ダイヤフラム部18の周壁部と略同じ厚さ寸法とされている。なお、本実施形態において、ダイヤフラム部18の底部24は、厚肉とされた内周部分が、薄肉とされた外周部分に対して、球冠状に前方へ突出している。また、ダイヤフラム部18の底部24の内周部分における球冠状の突出部分は、前面の曲率が、ベース部材20の後面を構成する凹面の曲率よりも小さくされている。これにより、収縮状態のサブリザーバー14において薬液の残留量が低減されると共に、ダイヤフラム部18の底部24がベース部材20の後面に張り付き難くなっている。
ダイヤフラム部18の底部24には、中央から後方へ向けて突出する位置決め突起28が一体形成されている。位置決め突起28は、棒状とされており、先端部分が先端に向けて小径となるテーパ部30とされている。テーパ部30の大径側端部は、テーパ部30を外れた位置決め突起28の基端部分よりも大径とされて、段差が形成されている。
ダイヤフラム部18の底部24には、後方へ突出する一対の戻しばね32,32が一体形成されている。戻しばね32は、位置決め突起28に対して左右方向の外側に離れた位置に設けられている。戻しばね32は、位置決め突起28よりも突出寸法が小さくされている。戻しばね32は、突出先端に向けて次第に断面積が小さくなる先細形状とされている。戻しばね32の具体的な形状は、あくまでも例示であって特に限定されない。例えば、戻しばね32は、周方向に連続する環状などであっても良い。
ベース部材20は、硬質の合成樹脂などで形成されて、略円板形状とされている。ベース部材20は、筒状の薬液流入部34と薬液流出部36とが貫通状態で形成されている。ベース部材20には、複数の係合突起38が後方(図8中の上方)へ向けて突出している。それら係合突起38によって、ベース部材20がガイド部材40に連結されている。
ガイド部材40は、硬質の合成樹脂などで形成されて、略円筒形状とされている。ガイド部材40は、前端部において外周へ向けて突出するフランジ状の係合部42が設けられている。そして、ベース部材20の係合突起38が、係合部42に対して引っ掛けられることにより、ベース部材20とガイド部材40が軸方向に連結されている。ガイド部材40の係合部42には、係止爪としての係止フック44が、周方向の2箇所にそれぞれ設けられている。係止フック44は、係合部42から後方へ延び出す板状の延出部と、当該延出部の先端から外周へ向けて突出する爪部とを、一体で備えている。係止フック44の後面は、外周へ向けて前方へ傾斜する傾斜形状とされている。
このガイド部材40の内周側に、ダイヤフラム部18が差し入れられている。そして、ダイヤフラム部18の挟持部22が、ベース部材20とガイド部材40の軸方向(前後方向)間で挟まれて支持されることにより、ダイヤフラム部18がそれらベース部材20及びガイド部材40に組み付けられている。このような組付け状態において、ダイヤフラム部18の開口がベース部材20によって液密に塞がれて、サブリザーバー14が構成されている。更に、サブリザーバー14の内部空間に対して、ベース部材20を貫通する薬液流入部34と薬液流出部36の各内腔が連通されている。
そして、ベース部材20とガイド部材40がハウジング12に取り付けられることにより、サブリザーバー14がハウジング12に対して位置決めされている。ダイヤフラム部18は、底部24がハウジング12に対して前後方向に移動可能とされており、前後方向の伸縮変形を許容されている。
また、ダイヤフラム部18の底部24には、プランジャ46が重ね合わされている。プランジャ46は、図4〜7に示すように、プランジャ本体48と外周ガイド部50が後端部において一体的につながった構造を有している。
プランジャ本体48は、後方に向けて開口する略有底円筒形状とされている。プランジャ本体48は、後述する第2コイルスプリング88の外周形状に対応する円形断面で前後方向に直線的に延びる凹所52を有している。プランジャ本体48の前壁部には、中央部分を前後方向に貫通する嵌合孔54が形成されている。この嵌合孔54にダイヤフラム部18の位置決め突起28が嵌め入れられることにより、プランジャ46とダイヤフラム部18の底部24を相互に位置決めする位置決め機構が構成される。
外周ガイド部50は、プランジャ本体48の外周を囲むように設けられる筒状とされている。外周ガイド部50は、周上の2箇所においてそれぞれ部分的に前後方向の長さが短くされており、短くされた部分の前端部には、外周へ突出する係止解除部56がそれぞれ形成されている。係止解除部56は、外周へ向けて前方へ傾斜しており、前面が傾斜面とされている。係止解除部56は、後述するプッシュボタン62の内周へ挿入可能とされている。係止解除部56,56は、周方向においてガイド部材40の係止フック44,44と対応する位置に設けられており、各係止フック44の内周面よりも外周まで突出している。
外周ガイド部50は、一対の突起部58a,58bを備えている。突起部58a,58bは、小径の略円柱形状とされている。突起部58a,58bは、係止解除部56,56が設けられる径方向と略直交する径方向の両側において、外周ガイド部50の前端部から外周へ向けて突出している。要するに、一方の突起部58aが上方へ向けて突出していると共に、他方の突起部58bが下方へ向けて突出している。突起部58a,58bの先端部分には、前方に向けて外周へ傾斜する傾斜面60が形成されている。
外周ガイド部50は、少なくとも前端部分がガイド部材40に外挿されている。これにより、外周ガイド部50を備えるプランジャ46の移動が、ガイド部材40によって前後方向に案内されるようになっている。プランジャ46が前後方向に往復移動する際に、プランジャ46がハウジング12に固定されたガイド部材40によって案内されることで、プランジャ46の傾きなどが防止される。
また、プランジャ46は、押圧操作部材としてのプッシュボタン62に内挿されている。プッシュボタン62は、前方へ向けて開口する略有底円筒形状とされている。プッシュボタン62の開口部分がハウジング12の後端部分に対して軸方向後側から差し入れられており、プッシュボタン62がハウジング12の長手方向(前後方向)に往復移動可能に組み付けられている。プッシュボタン62の底壁部側は、ハウジング12の後端開口から軸方向後方へ突出している。ハウジング12から露出したプッシュボタン62の後面は、指先押圧面としての押圧操作面64とされており、使用者である患者がハウジング12の把持面16を握りながら親指で押圧操作可能とされている。
プッシュボタン62の底壁部の内周部分には、小径筒状のスプリング支持部66が一体形成されている。スプリング支持部66は、後述する第1コイルスプリング86の内周形状に対応する外周形状を備えており、プッシュボタン62の底壁部から前方へ向けて突出している。
プッシュボタン62の周壁部には、周方向の2箇所において軸方向に延びるスライダ係合孔68がそれぞれ形成されている。更に、プッシュボタン62の周壁部には、フック係止孔70がそれぞれ形成されている。フック係止孔70は、スライダ係合孔68,68の前方において、プッシュボタン62の周壁部を径方向に貫通している。プッシュボタン62の開口部分である前端部分には、ロック部72が設けられている。ロック部72は、図5に示すように、プッシュボタン62の周方向の一部に設けられており、プッシュボタン62の周壁部から下方(外周側)へ向けて突出している。
さらに、図3,8に示すように、プッシュボタン62には、主動片74が一体形成されている。主動片74は、プッシュボタン62の開口端部から前方へ向けて突出して、ガイド部材40の外周まで延び出している。更にまた、主動片74の突出先端部分は、並列的に配された2つの板状部分とされている。それら板状部分の突出先端面は、先端側に向けて上下方向に傾斜する傾斜面とされている。2つの板状部分は、互いに同じ形状であってもよいし、互いに異なる形状とされていてもよい。
また、図4〜7に示すように、プランジャ46とプッシュボタン62の軸方向間には、スライダ76が配設されている。スライダ76は、硬質の合成樹脂などで形成されている。スライダ76は、略有底円筒形状の中央部分78と、中央部分78の外周に配される略円筒形状の外周筒部80とが、後端部において一体的に連結された構造を有している。
スライダ76の中央部分78は、外径寸法がプランジャ本体48の内径寸法よりも小さくされている。これにより、スライダ76の中央部分78は、プランジャ本体48の内周へ隙間をもって差し入れることが可能とされている。スライダ76の中央部分78の前壁部には、前後方向に貫通する貫通孔82が形成されている。貫通孔82は、プランジャ本体48の嵌合孔54よりも大径とされており、ダイヤフラム部18の位置決め突起28が隙間をもって挿通可能とされている。
スライダ76の外周筒部80は、内径寸法がプランジャ46の外周ガイド部50の外径寸法と略同じか、それよりも僅かに大きくされている。外周筒部80は、外径寸法がプッシュボタン62の内径寸法と略同じか、それよりも僅かに小さくされている。外周筒部80は、軸方向の長さが外周ガイド部50の軸方向の長さよりも短くされている。本実施形態の外周筒部80は、外周ガイド部50に対して半分程度の軸方向長さとされている。外周筒部80の前端部には、外周へ向けて突出する係合突起84が径方向の両側に設けられている。この係合突起84は、プッシュボタン62のスライダ係合孔68に差し入れられており、スライダ76とプッシュボタン62の前後方向の相対変位量が、係合突起84とスライダ係合孔68の内面との係合によって制限される。
スライダ76は、中央部分78がプランジャ本体48の凹所52に差し入れられていると共に、外周筒部80がプッシュボタン62の内周に差し入れられている。これにより、スライダ76は、プランジャ46とプッシュボタン62の間に配されている。また、スライダ76は、プランジャ46とプッシュボタン62の何れにも固定されておらず、それらプランジャ46とプッシュボタン62に対して、前後方向で相対変位可能とされている。
また、スライダ76とプッシュボタン62の軸方向間には、第1ばねとしての第1コイルスプリング86が配設されている。第1コイルスプリング86は、前端部分がスライダ76の中央部分78の内周に差し入れられている。第1コイルスプリング86は、後端部分がプッシュボタン62の底壁部に突出するスプリング支持部66に外挿されて、プッシュボタン62に対して軸直角方向で位置決めされている。これにより、第1コイルスプリング86は、スライダ76とプッシュボタン62の前後方向間に延びる所定の配設状態に安定して保持されている。
さらに、プランジャ46とスライダ76の軸方向間には、第2ばねとしての第2コイルスプリング88が配設されている。第2コイルスプリング88は、前端部分がプランジャ本体48の内周に差し入れられている。第2コイルスプリング88は、後端部分がスライダ76の中央部分78に外挿されている。これらによって、第2コイルスプリング88は、両端部分が軸直角方向で位置決めされている。これにより、第2コイルスプリング88は、プランジャ46とスライダ76の前後方向間に延びる所定の配設状態に安定して保持されている。第2コイルスプリング88のばね定数は、第1コイルスプリング86のばね定数よりも小さくされている。
このように、スライダ76とプッシュボタン62の間に第1コイルスプリング86が配されていると共に、プランジャ46とスライダ76の間に第2コイルスプリング88が配されている。換言すれば、第1,第2コイルスプリング86,88がプランジャ46とプッシュボタン62の間に配されており、それら第1,第2コイルスプリング86,88がスライダ76を介して直列配置されている。これにより、プランジャ46とプッシュボタン62とスライダ76は、第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88の弾性変形を伴って、前後方向で相対変位可能とされている。また、第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88のばね力が、プランジャ46とプッシュボタン62の間に及ぼされるようになっている。
使用前の薬液注入コントローラ10は、図4に示すように、サブリザーバー14に薬液が充填されていない。従って、サブリザーバー14が前後方向で収縮した状態とされて、プランジャ46が前方に位置している。また、プッシュボタン62は、往復移動の後端位置にある。これらにより、プランジャ46とプッシュボタン62の間に配された第1,第2コイルスプリング86,88は、圧縮変形量が比較的に小さくされている。
プランジャ46が往復移動の前方に位置すると共に、プッシュボタン62が往復移動の後端に位置する状態では、プッシュボタン62の前方への移動が、ロック機構90によって規制されている。
ロック機構90は、図5に示すように、プッシュボタン62とは別体の可動部材92を備えている。即ち、可動部材92は、プッシュボタン62に対してリンク部材などで連結された駆動機構によって連結されておらず、プッシュボタン62とは独立して移動可能な状態で、プッシュボタン62とは別部材とは別に組み付けられている。可動部材92は、図9,10に示すように、全体として略矩形板状とされている。可動部材92は、図9に示すように、上方へ突出するロック突部としての係止爪部94を備えている。要するに、比較的に大きな矩形ブロック板状の本体部分から、部分的に小さな係止爪部94が突出して一体形成されている。係止爪部94は、前側の面が突出方向に向かって上方に向けて後傾する傾斜面96とされていると共に、後側の面が前後方向と略直交して広がる平面とされている。また、可動部材92は、図10に示すように、下面側に開口する円形のばね挿入凹所98を備えている。可動部材92は、図9の斜め上下方向となる左右方向に位置する一対の対辺において外側へ突出する案内突起100,100を、前後方向の中間部分に位置して備えている。
可動部材92は、図5,11に示すように、ハウジング12の下半部分に設けられた矩形筒状のガイド部としての案内筒部102に挿入されている。これにより、可動部材92は、案内筒部102の内周面に案内されて、上下方向にスライド可能とされている。案内筒部102は、往復移動するプッシュボタン62よりも下側に設けられて、上下方向に直線的に延びている。また、案内筒部102の内周面には、図11に示すように、可動部材92の一対の案内突起100,100に対応する一対の案内溝104,104が、上下方向に直線的に延びている。
本実施形態では、可動部材92がハウジング12における扁平な中空断面形状を有する部分に収容されている。ハウジング12は、上下方向が長軸となる扁平断面形状とされていることから、上下方向に移動する可動部材92をスペース効率良く収容することができる。また、可動部材92は、案内筒部102で案内されることで、傾動しない並進状態でスライドして往復移動するようになっており、プッシュボタン62から外方に最も離れた移動位置では、プッシュボタン62のプッシュ操作による移動経路から、可動部材92の全体が完全に外れた外方に配されるようになっている。そして、可動部材がプッシュボタン62側(図5中の左側)へ移動することで、可動部材92の係止爪部94が、プッシュボタン62(ロック部72)の移動経路上へ側方からスライドして入り込み、プッシュボタン62の押圧方向への移動を規制し得るようになっている。
なお、ハウジング12の下壁内面から上方へ突出する突起106が、案内筒部102の内周に設けられており、可動部材92のばね挿入凹所98と上下方向で対応する位置に配置されている。更に、案内筒部102の内周には、ハウジング12における突起106の周囲において突起106の周方向に延びる環状の溝108が、上方に向けて開口して形成されている。
可動部材92とハウジング12の下壁との上下方向間には、付勢手段としての付勢部材110が設けられている。付勢部材110は、本実施形態ではコイルスプリングであって、案内筒部102の内周に配されている。そして、案内筒部102に挿入された可動部材92が、付勢部材110によって上向きに付勢されている。付勢部材110は、上端部分が可動部材92のばね挿入凹所98に差し入れられていると共に、下端部分は、突起106に外挿されて、且つ溝108に差し入れられている。
また、図4に示すように、サブリザーバー14のベース部材20には、流入流路112と流出流路114が接続されている。流入流路112は、閉止弁116によって連通状態から遮断状態へ切り替えが可能とされている。流出流路114は、急速投与弁118によって連通状態と遮断状態に切り替えが可能とされている。
さらに、流入流路112には、図3,4に示すように、閉止弁116によって遮断される部分をバイパスする制限流路120が接続されている。また、流入流路112と流出流路114における閉止弁116及び急速投与弁118よりも前方には、それら流入流路112と流出流路114を相互に連通する流量制御部122が設けられている。それら制限流路120と流量制御部122は、流入流路112及び流出流路114よりも流路断面積が小さくされており、薬液の流量(流速)を制限するようになっている。
このような構造とされた薬液注入コントローラ10は、図2〜4に示すように、流入流路112に上流側の外部ライン124が接続されると共に、流出流路114に下流側の外部ライン126が接続されることによって、薬液投与装置を構成する。上流側の外部ライン124と流入流路112と流量制御部122と流出流路114と下流側の外部ライン126とによって、メインライン128が構成されている。メインライン128は、サブリザーバー14を経由せずに、図示しないメインリザーバーと、患者側の留置針などに接続される図示しない投与ポートとをつなぐ流路である。また、流入流路112における流量制御部122の接続部分よりも下流側と、流出流路114における流量制御部122の接続部分よりも上流側とによって、サブライン130が構成されている。サブライン130は、メインライン128から分岐してサブリザーバー14に接続される流路である。
使用前の薬液注入コントローラ10は、例えば、図4〜7に示すように、薬液が充填されていないサブリザーバー14が前後方向で収縮しており、サブリザーバー14の底部24に位置決めされたプランジャ46が、前方に位置する状態とされている。更に、プッシュボタン62は、第1,第2コイルスプリング86,88の弾性によって後方に位置する状態とされている。この状態において、プランジャ46の係止解除部56は、ガイド部材40の係止フック44に当接して、係止フック44を左右内側へ撓ませている。
図4〜8に示す使用前の初期状態において、プランジャ46は、第2コイルスプリング88の弾性による弱い力によって、前方へ付勢されている。また、プランジャ46には、サブリザーバー14の底部24に設けられた戻しばね32,32が押し当てられており、戻しばね32,32の弾性に基づく後方への付勢力が作用している。これにより、プランジャ46に作用する前向きの力が相殺されて低減されており、プランジャ46の係止解除部56からガイド部材40の係止フック44に及ぼされる押圧力が低減される。従って、例えば長期間に亘って当該状態に保持される場合にも、クリープなどによる係止フック44の塑性変形を抑えることができる。
また、プランジャ46が前方に位置すると共にプッシュボタン62が後方に位置する図4〜8の状態において、可動部材92の係止爪部94は、図5に示すように、付勢部材110の弾性によってプッシュボタン62のロック部72よりも前側に位置している。そして、付勢部材110によって付勢された可動部材92の係止爪部94が、プッシュボタン62のロック部72と前後方向で重なる位置に保持される。これにより、プッシュボタン62が前進しようとすると、プッシュボタン62のロック部72が可動部材92の係止爪部94に当たって、プッシュボタン62の前進が側方(下方)から係止された可動部材92によって制限される。その結果、患者は、プッシュボタン62を前方へ押し込むことができず、サブリザーバー14に圧迫力を及ぼすことができない。
このように、プッシュボタン62とは別体の可動部材92が、プッシュボタン62の前方へ側方(下方)から差し入れられて、それら可動部材92とプッシュボタン62が前後方向で係止されることにより、プッシュボタン62の移動制限が簡単に実現される。また、可動部材92がプッシュボタン62に対して下方から差し入れられて前後方向で係止される構造により、薬液注入コントローラ10がプッシュボタン62の往復移動方向である前後方向において小型化される。
可動部材92は、ハウジング12の案内筒部102に差し入れられていることから、上下方向の移動が許容されていると共に、前後方向の移動が制限されている。それ故、プッシュボタン62が前向きに押されて可動部材92に押し当てられる際に、プッシュボタン62の前進が、側方から係止された可動部材92によって有効に制限される。
薬液注入コントローラ10を備える薬液投与装置は、投薬の開始前に、メインライン128とサブライン130を薬液(プライミング液)で満たすプライミングが実施される。即ち、閉止弁116が開放状態とされ、且つプッシュボタン62が前方へ押し込まれていない薬液注入コントローラ10の初期状態(図4〜8に示す状態)において、図示しないメインリザーバーから薬液が送り込まれる。これにより、メインライン128とサブライン130を含む薬液流路と、サブリザーバー14とが、薬液によって満たされる。そして、それら薬液流路とサブリザーバー14内の空気が、薬液によって下流側へ押し出されて、図示しない投与ポートなどから外部へ排出される。なお、プライミングの完了によって、サブリザーバー14は、図12に示すように、薬液で満たされて膨らんだ状態とされる。
また、プライミングが完了した後、閉止弁116と一体形成されたスイッチ部材134が下向きに押し込まれることにより、スイッチ部材134と一体の閉止弁116が下方へ移動する。これにより、図12,13に示すように、閉止弁116が流入流路112に流路直交方向で押し付けられて、流入流路112が閉止弁116を押し当てられた中間部分で押し潰されて遮断される。流入流路112は、閉止弁116による遮断部分に対する上流側と下流側が、制限流路120によって連通されており、薬液の単位時間当たりの流量が制限流路120によって制限されている。
スイッチ部材134が下方へ移動することによって、図13に示すように、スイッチ部材134と急速投与弁118の上下方向での係合が解除されて、急速投与弁118の下方への移動が許容される。これにより、急速投与弁118がコイルスプリング138の付勢力によって下方へ移動して、急速投与弁118が流出流路114に対して流出流路114の流路直交方向で押し付けられる。その結果、流出流路114が急速投与弁118によって部分的に押し潰されて、流出流路114が部分的に閉塞されることから、サブリザーバー14からの薬液の流出が防止される。
上流側の外部ライン124から流入流路112へ入った薬液は、流量制御部122を通じて、流出流路114に接続された下流側の外部ライン126へ流出する。これにより、薬液は、メインライン128と下流側の外部ライン126に接続された図示しない留置針などとを通じて、患者の体内へ少量ずつ持続的に投与される。なお、患者の体内へ持続投与される薬液の単位時間当たりの量は、流量制御部122の流量によって調節されている。
また、プライミングによってサブリザーバー14に薬液が充填されると、図14に示すように、プランジャ46がサブリザーバー14の前後方向での伸長に伴って後方へ移動する。そして、サブリザーバー14に所定量の薬液が充填されると、プランジャ46の下側の突起部58bの傾斜面60が、可動部材92の係止爪部94の傾斜面96に前方から押し当てられる。これにより、可動部材92が案内筒部102に案内されながら下方へ移動する。そして、可動部材92の係止爪部94がプッシュボタン62よりも下側まで移動するまで押し込まれることにより、可動部材92によるプッシュボタン62の前進の規制が解除される。その結果、患者がプッシュボタン62の押圧操作面64に前向きの力を加えることによって、プッシュボタン62を前方へ押し込むことが可能となる。このように、サブリザーバー14に薬液が充填されることによって、ロック機構90によるプッシュボタン62の移動規制が、プランジャ46の下側の突起部58bで解除されるようになっている。これにより、本実施形態のロック解除機構は、プランジャ46の下側の突起部58bによって構成されている。なお、プッシュボタン62を押込操作すると、プランジャ46の突起部58bも前方へ押し込まれて可動部材92から離れるが、その時点では、可動部材92の係止爪部94はプッシュボタン62のロック部72よりも後方に位置することから、ロック部72への当接によるプッシュボタン62の押込方向への移動規制は解除状態に維持され得る。また、プッシュボタン62のロック部72よりも後方に位置する可動部材92の係止爪部94は、プッシュボタン62の筒状周壁部の外周面に摺接しても良いし僅かに離れていても良い。
患者は、薬液の投与量を一時的に増やす急速投与を行う場合に、ロック機構90によるプッシュボタン62のロックが解除された状態で、薬液注入コントローラ10のプッシュボタン62を押し込む自己操作を実行する。プッシュボタン62が患者によって押し込まれると、図15に示すように、プッシュボタン62とプランジャ46の間で、第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88が圧縮される。これにより、プランジャ46には、圧縮された第1,第2コイルスプリング86,88の弾性に基づいて、前向きの付勢力が及ぼされる。
プッシュボタン62が押し込まれて前進することにより、ガイド部材40の係止フック44が、プッシュボタン62のフック係止孔70の内面に対して軸方向で係止される。これにより、プッシュボタン62が第1,第2コイルスプリング86,88の付勢力に抗して押し込まれた位置に保持されて、第1,第2コイルスプリング86,88の付勢力がプランジャ46に対して効率的に及ぼされる。
また、プッシュボタン62が押し込まれて前進することにより、図16に示すように、プッシュボタン62に一体形成された主動片74が、急速投与弁118に一体形成された従動片136に押し当てられる。これにより、プッシュボタン62に対して前向きに入力された力が、上向きの力に変換されて急速投与弁118に及ぼされる。その結果、急速投与弁118がコイルスプリング138の付勢力に抗して上側へ移動して、急速投与弁118による流出流路114の遮断が解除される。
さらに、プッシュボタン62が押し込まれて、第1コイルスプリング86が圧縮されると、プランジャ46が第1コイルスプリング86の付勢力によってサブリザーバー14のダイヤフラム部18に強く押し付けられる。これにより、ダイヤフラム部18の底部24が、プランジャ46によって前方へ押し込まれる。その結果、プランジャ46によって圧迫されたサブリザーバー14の内圧が高まって、サブリザーバー14内に貯留された薬液が、連通状態とされた流出流路114を介して下流側の外部ライン126へ流出する。そして、下流側の外部ライン126を通じて患者の体内へ投与される薬液の量が一時的に増加して、急速の薬液投与が実行される。なお、流入流路112が閉止弁116で遮断されていると共に、制限流路120の内腔が極めて小径とされている。それ故、サブリザーバー14の内圧上昇に際して、サブリザーバー14内の薬液は、流入流路112へ逆流することなく、流出流路114へ送り出される。
このように、自己操作によってプッシュボタン62に及ぼされる力がプランジャ46に直接及ぼされるのではなく、押し込まれたプッシュボタン62は第1コイルスプリング86を圧縮する。そして、圧縮された第1コイルスプリング86の反発力がプランジャ46に及ぼされて、プランジャ46がサブリザーバー14を圧迫するようになっている。これにより、サブリザーバー14に過大な圧迫力が作用するのを防ぐことができて、サブリザーバー14の耐久性の向上が図られると共に、サブリザーバー14内の薬液を効率的に押し出すことができる。
薬液注入コントローラ10は、プッシュボタン62が一度押し込まれると、プッシュボタン62が押し込まれた位置に保持される。それ故、短時間の押圧操作を1度行うことによって、サブリザーバー14に貯留された薬液の略全量が所定の時間をかけて投与される。従って、薬液注入コントローラ10を使用する患者は、プッシュボタン62を押し続けることなく、十分な量の薬液をワンプッシュで投与することができる。
本実施形態では、プランジャ46の移動がガイド部材40によって前後方向に案内されると共に、プランジャ46とダイヤフラム部18の底部24が位置決め突起28によって相互に位置決めされている。それ故、プランジャ46の移動によって、サブリザーバー14のダイヤフラム部18が圧迫される際に、圧迫位置のずれが防止されて、ダイヤフラム部18が安定して圧迫される。
プランジャ46の下側の突起部58bと可動部材92との接触は、プランジャ46の前進によって解除されるが、図17に示すように、可動部材92は、プッシュボタン62の周壁に当たることで、上方への移動が引き続き制限される。即ち、前方へ押し込まれたプッシュボタン62の前端は、可動部材92よりも前方に位置しており、可動部材92の上方への移動がプッシュボタン62の周壁によって制限されて、可動部材92の係止爪部94がプッシュボタン62よりも下側に保持される。
薬液の急速投与が完了すると、図18に示すように、前方へ移動したプランジャ46の係止解除部56が、ガイド部材40の係止フック44に当接して、係止フック44を左右内側へ撓ませる。これにより、プッシュボタン62のフック係止孔70の内面に対する係止フック44の係止が解除されて、ハウジング12に対するプッシュボタン62の後方への移動が許容される。プランジャ46は、ばね定数の大きい第1コイルスプリング86によって強い力で前方へ押し込まれる。それ故、プランジャ46の係止解除部56がガイド部材40の係止フック44に強く押し付けられて、係止フック44が左右方向の内側へ十分に大きく撓まされる。
プッシュボタン62には、第1,第2コイルスプリング86,88のばね力が後方へ向けて作用していることから、係止フック44によるプッシュボタン62の移動制限が解除されると、図19,20に示すように、プッシュボタン62は速やかに後方へ移動する。また、スライダ76は、外周筒部80の前端部に設けられた係合突起84が、プッシュボタン62のスライダ係合孔68の前端内面に係合されることによって、プッシュボタン62と一体的に後方へ移動する。これにより、プッシュボタン62とスライダ76は、プランジャ46に対して相対的に後方へ移動する。
プッシュボタン62が後方へ移動すると、図20に示すように、プッシュボタン62の周壁と可動部材92の係止が解除される。また、プッシュボタン62が後方へ移動する際、サブリザーバー14はほとんど薬液が入っていない収縮状態とされており、サブリザーバー14に連結されたプランジャ46が前方に移動した状態とされている。それ故、プランジャ46の下側の突起部58bが可動部材92から離れており、プッシュボタン62との係止が解除された可動部材92は、付勢部材110の弾性によって上方へ移動する。その結果、可動部材92の係止爪部94がプッシュボタン62のロック部72と前後方向で重なる位置まで移動して、プッシュボタン62の前方への移動が係止爪部94への当接によって規制される。これにより、患者が後方へ移動したプッシュボタン62を直ちに再度押し込もうとしても、押し込むことができない。
さらに、プッシュボタン62が後方へ移動すると、プッシュボタン62の主動片74と、急速投与弁118の従動片136との当接が解除される。これにより、急速投与弁118がコイルスプリング138の付勢力によって流出流路114に押し付けられて、流出流路114が急速投与弁118によって遮断状態に切り換えられる。
更にまた、プッシュボタン62とスライダ76が後方へ移動することにより、図示しないメインリザーバーから上流側の外部ライン124へ送り出される薬液の一部は、流入流路112及び制限流路120を通じてサブリザーバー14へ充填される。即ち、図19,20のようにプッシュボタン62とスライダ76が後方へ移動すると、プッシュボタン62とプランジャ46の間における第1,第2コイルスプリング86,88の圧縮量が小さくなる。これにより、プランジャ46からサブリザーバー14に及ぼされる圧迫力が低減される。それ故、流入流路112及び制限流路120を通じて薬液がサブリザーバー14に供給されて、急速投与によって減少したサブリザーバー14内の薬液が、徐々に増える。なお、薬液の急速投与後に所定量の薬液をサブリザーバー14に再充填するまでの所要時間が、制限流路120によって調節されており、サブリザーバー14への薬液の過剰な供給を防ぐことで、薬液の過剰投与が防止されている。
特に本実施形態では、相互にばね定数の異なる第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88が設けられている。そして、プッシュボタン62とスライダ76が初期位置に復帰することで、ばね定数の大きい第1コイルスプリング86が初期状態まで復元すると共に、ばね定数の小さい第2コイルスプリング88の圧縮変形量が小さくなる。これにより、第2コイルスプリング88の弾性に基づく弱い力がプランジャ46に対して前向きに作用して、プランジャ46からサブリザーバー14に及ぼされる圧迫力が低減される。従って、例えば、薬液を大きな圧力で流すことなく、サブリザーバー14に十分な量の薬液を充填することができる。
また、第1コイルスプリング86がプッシュボタン62とスライダ76の間に設けられていると共に、第2コイルスプリング88がプランジャ46とスライダ76の間に設けられている。これにより、第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88を常時圧縮状態とすることも可能であり、第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88が移動したり、離隔状態から打ち当たることによる異音が生じたりするのを防ぐことができる。
また、第1,第2コイルスプリング86,88の圧縮変形量が小さくなることにより、第1,第2コイルスプリング86,88からプランジャ46に及ぼされる前方向きの力が低減される。それ故、プランジャ46の係止解除部56,56からガイド部材40の係止フック44,44に及ぼされる力が低減される。更に、前後方向で圧縮された戻しばね32,32の弾性に基づいて、プランジャ46に後方向きの力が作用することによっても、係止フック44,44に作用する力が低減される。このように、係止フック44,44に作用する力が低減されることで、係止フック44,44の左右内側への曲げ変形量が低減されることから、係止フック44,44の塑性変形が抑えられる。
サブリザーバー14内の薬液の量が増えるに従って、プランジャ46はサブリザーバー14のダイヤフラム部18に押されて後方へ移動する。そして、サブリザーバー14内に急速投与前と略同量の薬液が充填されることにより、プランジャ46が図12に示す急速薬液投与を実行する前の待機位置まで移動せしめられる。サブリザーバー14に所定量の薬液が充填されると、プランジャ46の下側の突起部58bの傾斜面60が、可動部材92の係止爪部94の傾斜面96に当接して、可動部材92が突起部58bによって下側に押し込まれる。これにより、ロック機構90によるプッシュボタン62の前進の制限が、ロック解除機構によって解除されて、プッシュボタン62を再度押し込むことが可能になることから、自己操作による薬液の急速投与を再び実行することが可能になる。
なお、図1に示すように、プランジャ46に設けられた上側の突起部58aが、目印としてハウジング12の周壁を貫通するスリット140に差し入れられている。そして、プランジャ46のハウジング12に対する軸方向での相対位置が、突起部58aのスリット140内での位置によって、外部から把握できるようになっている。例えば、上側の突起部58aがスリット140の後端付近まで移動した状態が、サブリザーバー14に薬液が充填された状態を示す(図14参照)。本実施形態のプランジャ46は、目印を構成する上側の突起部58aと、ロック解除機構を構成する下側の突起部58bが、互いに対応する形状で設けられている。これにより、プランジャ46が周方向で180°の回転対称形状とされており、プランジャ46を組み付ける際に、向きの制限が緩和されることで製造の容易化が図られる。
このような本実施形態に従う構造の薬液注入コントローラ10は、サブリザーバー14に所定量の薬液が充填されていない場合に、プッシュボタン62が可動部材92との係止によって押し込まれないようにロックされる。それ故、患者がプッシュボタン62を短時間に何度も押し込むことはできず、薬液の急速投与を連続して実行することはできない。従って、薬液の急速投与が所定時間以上の間隔で所定量ずつに制限されて、薬液の過剰投与が防止されると共に、急速投与される薬液の量を管理し易くなる。
サブリザーバー14に所定量の薬液が充填されると、プッシュボタン62と可動部材92の係止が解除されて、プッシュボタン62を押し込む操作が可能となる。従って、サブリザーバー14に十分な量の薬液が充填される時間間隔をもって、所定量の薬液の急速投与が可能とされる。これにより、薬液の過剰投与を防いで投薬の安全性が高められると共に、適量の投与によって薬液の効能を有効に得ることができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、プランジャ46とプッシュボタン62の間に設けられるばねの数は、前記実施形態のような2つに限定されるものではなく、1つでも良いし、3つ以上であっても良い。第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88のばね定数は、互いに同じにすることもできる。
前記実施形態では、第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88が、スライダ76を介して直列配置された構造を例示したが、第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88は並列配置され得る。具体的には、例えば、第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88の長さが異なるようにして、それら第1コイルスプリング86と第2コイルスプリング88を内外挿状態で並列配置することもできる。これによれば、プッシュボタン62を押し込む場合に、途中までは第2コイルスプリング88だけが圧縮されると共に、途中からは第1,第2コイルスプリング86,88の両方が圧縮されることから、自己操作に際して患者に手応えの変化を与えることができる。
スライダ76は、本発明において必須の構成ではなく、省略され得る。また、プッシュボタン62とスライダ76の間と、プランジャ46とスライダ76の間とに、それぞればねが設けられている必要はない。
プランジャ46とダイヤフラム部18の底部24の間の位置決め機構は必須ではなく、プランジャ46とダイヤフラム部18の底部24は、互いに離れ得るようにもできる。また、位置決め機構は、位置決め突起28と嵌合孔54の嵌合によるものに限定されず、例えば、接着や係止、他部材を介した嵌め合わせなどによって構成することもできる。
前記実施形態においてダイヤフラム部18の底部24に設けられていた戻しばね32は、必須ではない。更に、戻しばねは、プランジャ46に対して後方への力を及ぼすものであれば良く、ダイヤフラム部18とは別体で設けることもできる。例えば、弾性変形可能な突片がプランジャ46に設けられて、該突片によって戻しばねが構成されるようにすれば、戻しばねがプランジャ46に設けられる。
前記実施形態では、ダイヤフラム部18の底部24は、内周部分が外周部分よりも厚肉とされていたが、底部24は、全体が略一定の厚さであっても良い。更に、例えば、ダイヤフラム部18の底部24と周壁部を略一定の厚さとすることもできる。
可動部材92は、プッシュボタン62の押圧操作による移動を規制するロック機構を構成するものであれば良く、具体的な形状が限定されるものではない。また、可動部材92のスライド方向は、プッシュボタン62の往復移動方向に対して厳密に直交する方向に限定されず、直交方向に対して傾斜していても良い。或いは、プッシュボタン62の押圧操作方向と平行で且つプッシュボタン62の押圧操作による移動経路を外方に外れた位置に設定された支軸回りで、可動部材92を揺動乃至は回動可能に組み付けて、揺動乃至は回動によって可動部材がプッシュボタン62の移動経路上に側方からスライドして入り込むように構成しても良い。
また、可動部材を案内するガイド部は、実施形態の如き案内筒部102に限定されるものでなく、例えば可動部材の周囲を部分的に囲んで案内するガイド突起や、可動部材に貫通されて可動部材を案内するガイドロッドなど、各種のガイド部が採用可能である。尤も、上述のように支軸回りで揺動乃至は回動する可動部材を採用する場合には、別途のガイド部は必ずしも必要ない。
また、前記実施形態では、プッシュボタン62において可動部材92(係止爪部94)へ当接する部分が、プッシュボタン62の筒状周壁部から外周面に突設されたロック部72によって構成されていたが、かかるロック部72を設けることなく、プッシュボタン62の筒状周壁部に対して可動部材92を直接的に当接させても良い。なお、このようなロック部72を採用すれば、プッシュボタン62自体の形状や構造への影響を回避しつつ可動部材92への当接部を構成できたり、ロック部72の突設位置をプッシュボタン62の長さ方向で任意に設定できる等といった利点がある。
更にまた、前記実施形態では、ロック解除部材が、プランジャ46の外周面に突設された突起部58bによって構成されており、上記のプッシュボタン62の外周面に突設されたロック部72と当該突起部58bとが、プッシュボタン62やプランジャ46の周壁部の外周に配された可動部材92の係止爪部94に対して両面から作用し、ロック(押圧操作の阻止)とロック解除とを、コンパクトを機構によって実現可能とされている。尤も、ロック解除機構も、このようなプランジャ46の外周面上に突出する突起部58bに限定されるものでない。