JP2020172666A - ロジン変性アルキッド樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】活性エネルギー線硬化型インキ組成物の調製にも使用可能であり、バイオマス由来の成分比率を高めることのできるインキ組成物用の樹脂を提供すること。また、そのような樹脂を用いることにより、バイオマス由来の成分比率を高めたオフセット印刷用インキ組成物、特に活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物を提供すること。【解決手段】樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、の縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm3)1/2であり、酸価が1〜50mgKOH/gであることを特徴とするロジン変性アルキッド樹脂を用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、ロジン変性アルキッド樹脂の製造方法に関するものである。
近年、様々な業界や業種で環境負荷低減活動が展開されているが、最終的な目標は地球環境保全で共通している。印刷インキ業界においてもこれまで各種の観点から環境負荷低減を促す活動が行われ、そのような活動の趣旨に適合した製品には各種の認証マークが付されることになっている。このような認証マークとしては、NL規制マーク、ベジタブルマーク、GPマーク、クリオネマーク等が存在する。このような中にあって、最近、印刷インキ工業連合会によって新たにインキグリーンマーク(以下、IGマークと呼ぶ。)制度が制定された。IGマークは、主にインキ組成物を構成する各成分のうちのバイオマスに由来する成分の比率を指標とし、その程度に応じてインキ組成物の環境対応レベルを3段階にランク付けする制度である。つまりこの制度は、環境負荷の低減を目的として、化石資源由来の原材料をバイオマス由来の原材料に代替することを促すことを特徴とするものといえる。
ところで、最近、各種の印刷分野において、印刷直後の印刷物に紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することにより、印刷物の表面に存在するインキ組成物を瞬時に乾燥させる印刷が普及し始めている。この印刷で用いられるインキ組成物には、活性エネルギー線の照射によりラジカルやカチオンを発生させる光重合開始剤と、これらラジカルやカチオンと反応することで高分子化するモノマーやオリゴマーが含まれており、活性エネルギー線が照射されることにより、印刷物の表面に存在するインキ組成物がフィルム状の硬化物となって乾燥状態となる。このようなインキ組成物のうち紫外線で硬化するタイプの製品はUVインキと呼ばれ、特に、高速印刷が行われるオフセット印刷分野において様々な製品が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
UVインキにおいても、より少ない紫外線の照射で乾燥できる製品や、消費電力の少ない発光ダイオード(LED)の光で乾燥できる省エネ対応の製品が販売されており、環境負荷低減を目指した動きが広がっているのは他のインキ組成物と同様である。しかしながら、UVインキでは、その成分としてモノマーやオリゴマーを多量に用いなければならないことからバイオマスを由来とする成分を多用することが困難であるとされ、それ故上記IGマークの認定基準には、バイオマス由来の成分比率が含まれておらず、これに代えてリサイクル適性や省エネ対応といった環境対応特性が指標として用いられているのが現状である。
特開2014−173070号公報
以上のような背景において、UVインキにおいてもバイオマス由来の成分比率を高めることは社会的に有用であり、その意義は極めて大きいといえる。しかしながら、UVインキを初めとした活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物で用いられるモノマーやオリゴマーは、一般のオフセット印刷用インキ組成物で用いられるバイオマス由来の材料との相溶性が悪く、従来の材料を単に適用するのが難しいのが現状である。
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、活性エネルギー線硬化型インキ組成物の調製にも使用可能であり、バイオマス由来の成分比率を高めることのできるインキ組成物用の樹脂を提供することを目的とする。また本発明は、そのような樹脂を用いることにより、バイオマス由来の成分比率を高めたオフセット印刷用インキ組成物、特に活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、の縮重合体であるロジン変性アルキッド樹脂のうち、溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2であり、酸価が1〜50mgKOH/gであるものは、UVインキの原材料であるモノマーやオリゴマーと良好な相溶性を示し、また、樹脂酸や脂肪酸がバイオマス由来の成分であることから、これをUVインキに用いることによりそのバイオマス由来の成分比率を高めることができることを見出した。本発明は、以上の知見により完成されたものであり、以下のようなものを提供する。
本発明は、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、の縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2であり、酸価が1〜50mgKOH/gであることを特徴とするロジン変性アルキッド樹脂である。
樹脂全体の質量に対する脂肪酸部分の質量の割合(質量%)である油長は30〜85であることが好ましい。
上記脂肪酸として炭素数8〜16の脂肪酸を含むことが好ましい。
上記脂肪酸はヤシ油又はパーム核油の脂肪酸であることが好ましい。
上記ロジン変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は1000〜70000であることが好ましい。
また本発明は、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、を反応させる工程を備えたロジン変性アルキッド樹脂の製造方法であって、得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるように上記脂肪酸を選択することを特徴とするロジン変性アルキッド樹脂の製造方法でもある。
上記脂肪酸はヤシ油又はパーム核油の脂肪酸であることが好ましい。
また本発明は、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと多価アルコールとをエステル交換反応させて反応中間体を調製するエステル交換工程と、下記(1)〜(3)のいずれかの存在下で、上記反応中間体を縮重合させる縮重合工程と、を備えるロジン変性アルキッド樹脂の製造方法であって、得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるように上記植物油を選択することを特徴とするロジン変性アルキッド樹脂の製造方法でもある。
(1)樹脂酸及び多塩基酸
(2)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体
(3)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸
また本発明は、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと下記(1)〜(3)のいずれかとをエステル交換反応させて反応中間体を調製するエステル交換工程と、多価アルコールの存在下で、上記反応中間体を縮重合させる縮重合工程と、を備えるロジン変性アルキッド樹脂の製造方法であって、得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるように上記植物油を選択することを特徴とするロジン変性アルキッド樹脂の製造方法でもある。
(1)樹脂酸及び多塩基酸
(2)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体
(3)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸
上記二発明において、植物油はヤシ油又はパーム核油であることが好ましい。
また本発明は、上記ロジン変性アルキッド樹脂を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物である。
上記オフセットインキ組成物は、活性エネルギー線硬化型であることが好ましい。
また本発明は、上記オフセットインキ組成物を用いて印刷を行う工程を含むことを特徴とする印刷物の製造方法である。
本発明によれば、活性エネルギー線硬化型インキ組成物の調製にも使用可能であり、バイオマス由来の成分比率を高めることのできるインキ組成物用の樹脂が提供される。また、本発明によれば、そのような樹脂を用いることにより、バイオマス由来の成分比率を高めたオフセット印刷用インキ組成物、特に活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物が提供される。
以下、本発明のロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の一実施態様、ロジン変性アルキッド樹脂の一実施形態、オフセット印刷用インキ組成物の一実施形態、及び印刷物の製造方法の一実施態様について説明する。なお、本発明は、以下の実施形態及び実施態様に限定されるものではなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施をすることができる。
<ロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の第一実施態様>
まずは、本発明のロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の第一実施態様について説明する。本実施態様では、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、を反応させる工程を備えたロジン変性アルキッド樹脂の製造方法であって、得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるように上記脂肪酸を選択することを特徴とする。
樹脂酸は、ロジン類に含まれるアビエチン酸及びその異性体、並びにそれらの誘導体を指す。ロジン類は、松科の植物から採集される松脂の不揮発性の成分であり、アビエチン酸及びその異性体を主成分とする。アビエチン酸及びその異性体としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等が挙げられ、これらはいずれもカルボキシル基を有し、後述する多価アルコールとエステルを形成することができる。本発明のロジン変性アルキッド樹脂にこうした樹脂酸が導入されることにより、顔料に対する親和性を向上させることができるとともに、得られるロジン変性アルキッド樹脂におけるバイオマス由来の成分比率を高めることができる。
上記のアビエチン酸及びその異性体にはカルボキシル基が一つしか含まれないが、これを変性することにより複数のカルボキシル基を導入することができる。例えば、アビエチン酸はtrans−ジエン化合物であるが、これを加熱するとcis−ジエン化合物へ異性化させることができる。こうして得られたcis−ジエン化合物と、マレイン酸や1,2−シクロヘキセンジカルボン酸等のような複数のカルボキシル基を有するジエノフィル化合物とをディールスアルダー反応させることによって、アビエチン酸骨格に複数のカルボキシル基を導入することができる。また、複数分子のアビエチン酸又はその異性体を重合させることにより重合ロジンが合成されるが、こうした化合物も複数のカルボキシル基を有するものである。上記アビエチン酸及びその異性体の誘導体とはこうした化合物を指すものである。
ロジン類は樹脂酸を主成分とするものであるので、上記樹脂酸に代えてロジン類そのものを用いて合成を行うこともできる。ロジン類は、製造方法やその後の化学処理等の違いから複数の種類が知られているが、本発明においてはいずれのロジン類を用いてもよい。このようなロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トールロジン、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン等が挙げられる。また、ロジン類に対して、上記のようなディールスアルダー反応により変性を行ってもよい。なお、保存安定性の観点からは、共役二重結合を化学的に有さないか少ないロジン類を用いることが好ましい。このようなロジン類としては不均化ロジン、水添ロジンを挙げることができる。もっとも、共役二重結合を有するロジン類も合成された樹脂の保存安定性の面でやや劣るものの、問題無く使用することが可能である。
脂肪酸は、植物油や動物油のような天然油脂を加水分解することにより得られるものであり、1個のカルボキシル基を有するので、後述する多価アルコールとエステルを形成することができる。本発明のロジン変性アルキッド樹脂にこうした脂肪酸が導入されることにより、得られるロジン変性アルキッド樹脂におけるバイオマス由来の成分比率を高めることができる。このような観点から、樹脂全体の質量に対する脂肪酸部分の質量の割合(質量%)である油長が30〜85程度になるような量の脂肪酸を用いることが好ましく、50〜85程度になるような量の脂肪酸を用いることがより好ましい。
既に述べたように、本発明のロジン変性アルキッド樹脂の製造方法では、調製されるロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法によるsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるように脂肪酸を選択することを特徴の一つとする。この数値はこの種の樹脂としては比較的高いものであり、調製されるロジン変性アルキッド樹脂がこうした高いsp値を備えることにより、同じく高いsp値を備えるモノマーやオリゴマー類と良好な相溶性を備えることができる。
脂肪酸としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸等を挙げることができる。ところで、脂肪酸はカルボキシル基を有し、比較的sp値の高い化合物ということができる。それら脂肪酸の中でも炭素数が少ないほどsp値が高くなる傾向があり、そのような観点から本発明では、炭素数が8〜16である脂肪酸を好ましく用いることができ、炭素数が8〜14である脂肪酸をより好ましく用いることができる。このような高いsp値を持つ脂肪酸を一種又は2種以上を組み合わせて用いることにより、調製されるロジン変性アルキッド樹脂のsp値も高くすることができる。このような観点からは、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸が好ましく例示される。これらの脂肪酸は、いずれもFeders sp値が9.18以上である。もっとも、これよりも低いsp値を有する脂肪酸が使えないということではなく、低いsp値の脂肪酸であっても、高いsp値の脂肪酸と組み合わせれば問題無く用いることができる。いずれにしても、調製されたロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるようにこれらを適宜組み合わせればよい。また、脂肪酸は、不飽和脂肪酸であっても飽和脂肪酸であってもよいが、変質による着色等を避ける観点からは、分子内に含まれる不飽和結合の数が1以下のものが好ましく用いられる。なお、オレイン酸、リノール酸、エレオステアリンサン酸等のような不飽和結合の数が2以上の脂肪酸については、酸化処理により二重結合部分がエポキシ化されて消去されたものを使用することが望ましい。このような変性脂肪酸も本発明における脂肪酸として用いることができる。これら脂肪酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記のように炭素数の少ない脂肪酸であるほど好ましく、そのような観点からは、ヤシ油又はパーム核油の脂肪酸を用いることが好ましい。これらの脂肪酸は、炭素数12〜14の脂肪酸が豊富に含まれるので、ロジン変性アルキッド樹脂のsp値が高くなるように調節するのに好ましく用いられる。もっとも、調製されたロジン変性アルキッド樹脂のsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になればよいので、そのような範囲を実現することのできる範囲で他の油脂を由来とする脂肪酸を用いてもよい。
多塩基酸は、複数のカルボキシル基を有する化合物であり、後述する多価アルコールと縮重合して高分子量化させるための成分である。複数のカルボキシル基を有する化合物としては、アルキッド樹脂の合成に用いられてきたものを制限なく用いることができ、2又は3以上のカルボキシル基を備え、又はこれらの酸無水物であってもよい。
このような化合物としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、トリメリット酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキセンジカルボン酸、1,4−シクロヘキセンジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ソディオスルホイソフタル酸、フマル酸、安息香酸、tert−ブチル安息香酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、セバシン酸、アゼライン酸、テトラブロム無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラクロロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
多価アルコールは、既に説明した、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分とエステルを形成させ、これらの成分を高分子量化するものである。多価アルコールとしては、これまでアルキッド樹脂の合成に用いられてきたものを制限なく用いることができ、2又は3以上の水酸基を備える化合物が挙げられる。
このような化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、ジオキサングリコール、アダマンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、メチルオクタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパンジオール1,3、3−メチルペンタンジオール1,5、ヘキサメチレングリコール、オクチレングリコール、9−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのエチレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのごとき二官能フェノールのプロピレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合変性化合物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、アダマンタンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
調製されるロジン変性アルキッド樹脂の分子量を調節するために、脂肪酸以外の一塩基酸を酸成分として加えてもよい。このような一塩基酸としては、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられる。
上記の樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとを反応させることでロジン変性アルキッド樹脂が調製される。反応手順としては、これらの原料を仕込んだ反応釜に、窒素ガス等不活性ガスを流入させた状態でキシレン等の溶剤を少量加えて加熱を行い、縮合水と共沸させて水を除きながら縮重合させる方法を挙げることができる。反応温度としては170〜250℃程度を挙げることができ、反応時間としては5〜25時間程度を挙げることができるが特に限定されない。反応終了の判断は、反応時間の経過に応じて反応混合物の酸価をモニターすることで行うことができる。すなわち、縮重合に伴う反応混合物の酸価の低下が止まった時点で反応終了とすればよい。縮重合反応は、縮重合によって生じた水を系外に留出させるか反応触媒を用いることで、より短時間で行うことができる。反応触媒としては、テトラブチルジルコネート、モノブチルチンオキサイド(モノブチルすずオキサイド)、ジルコニウムナフテート、テトラブチルチタネート等を挙げることができる。
縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は、1000〜70000程度であることが好ましい。ロジン変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は、酸成分と多価アルコールとのバランスによって決定されるものなので、初回の合成は小スケールで行い、反応条件や原材料の種類などを決定してから大スケールの合成へ移行することが望ましい。
縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2となるように原料となる脂肪酸の種類や量を選択することが必要である。そのため、先に述べた重量平均分子量の場合と同様に、初回の合成は小スケールで行い、反応条件や原材料の種類などを決定してから大スケールの合成へ移行することが望ましい。ロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値は、9.3〜10.0(cal/cm1/2がより好ましく、9.5〜10.0(cal/cm1/2がさらに好ましい。
縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、1〜50mgKOHである。酸価が50mgKOH以下であることにより、このロジン変性アルキッド樹脂を適用したオフセット印刷用インキ組成物における異常乳化等のトラブルの発生を抑制することができる。この酸価は、1〜25mgKOHであることが好ましく、1〜10mgKOHであることがより好ましい。なお、反応終了時点でのロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、酸成分と多価アルコールとの量のバランスによって決定されるものなので、先に述べた重量平均分子量の場合と同様に、初回の合成は小スケールで行い、反応条件や原材料の種類などを決定してから大スケールの合成へ移行することが望ましい。
ここで、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値の算出について説明する。これは、簡便な実測法である濁点滴定により測定することができ、下記のK.W.SUH,J.M.CORBETTの式に従い算出される値である。なお、この方法によるsp値の算出については、J.Appl.Polym.Sci.1968,12,2359を参考にすることができる。
式 sp値=(Vml 1/2・δH+Vmh 1/2・δD)/(Vml 1/2+Vmh 1/2
濁点滴定では、試料0.5gを良溶媒であるトルエン10mL又はトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)10mLに溶解させた中に低sp値貧溶媒であるn−ヘキサンを加えていき、濁点での滴定量H(mL)を読み、同様にトルエン溶液中に高sp値貧溶媒であるエタノールを加えたときの濁点における滴定量D(mL)を読み、これらを下記式に適用し、Vml、Vmh、δH、及びδDを算出し、上記式へ代入すればよい。
なお、上記の濁点滴定で用いた各溶剤の分子容やsp値は次の通りである。
良溶媒の分子容 φ0 トルエン:106.28mL/mol
TMPTA:279.55mL/mol
低sp値貧溶媒の分子容 φl n−ヘキサン:131.61mL/mol
高sp値貧溶媒の分子容 φh エタノール:58.39mL/mol
各溶剤のsp値 トルエン:9.14、TMPTA:9.88
n−ヘキサン:7.28、エタノール:12.58
ml=(φ0・φl)/{(1−VH)・φl+VH・φ0}
mh=(φ0・φh)/{(1−VD)・φh+VD・φ0}
VH=H/(M+H)
VD=D/(M+D)
δH=(δ0・M)/(M+H)+(δl・H)/(M+H)
δD=(δ0・M)/(M+D)+(δl・D)/(M+D)

δ0:良溶媒のsp値
δl:低sp値貧溶媒のsp値
δh:高sp値貧溶媒のsp値
H:低sp値貧溶媒の滴定量(mL)
D:高sp値貧溶媒の滴定量(mL)
M:良溶媒の量(mL)
VH:低sp値貧溶媒滴定量の体積分率(%)
VD:高sp値貧溶媒滴定量の体積分率(%)
<ロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の第二実施態様>
次に、本発明のロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の第二実施態様について説明する。本実施態様では、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと多価アルコールとをエステル交換反応させて反応中間体を調製するエステル交換工程と、下記(1)〜(3)のいずれかの存在下で、上記反応中間体を縮重合させる縮重合工程と、を備えるロジン変性アルキッド樹脂の製造方法であって、得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるように上記植物油を選択することを特徴とする。なお、本実施態様について説明を行うにあたり、既に説明した第一実施態様の説明と重複する部分についてはその説明を適宜省略する。
(1)樹脂酸及び多塩基酸
(2)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体
(3)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸
本実施態様では、エステル交換工程とそれに続く縮重合工程の2工程を備える。まずはエステル交換工程から説明する。
[エステル交換工程]
エステル交換工程は、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと多価アルコールとをエステル交換反応させて反応中間体を調製する工程である。先に説明した第一実施態様では、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と多価アルコールとを縮重合させたが、本実施態様では、これらの原材料のうち脂肪酸と多価アルコールに代えて、植物油及び/又は植物油の脂肪酸エステルと多価アルコールとをエステル交換させた反応中間体を用いる点が大きな相違点である。このように植物油及び/又はその脂肪酸エステルと多価アルコールとをエステル交換させてから縮重合を行う手法は、アルキッド樹脂の合成においてよく用いられるものであり、ここで行われるエステル交換反応はアルコリシスと呼ばれるものである。
植物油は、脂肪酸とグリセリンとのエステルであり、本発明の製造方法では脂肪酸及び多価アルコール(グリセリン)の供給源となる他、用いた全量がバイオマス由来の成分としてカウントされるものである。植物油としては、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油等が挙げられる。また、酸化処理により二重結合が消去されたエポキシ化植物油も本発明における植物油として用いることができる。このようなエポキシ化植物油としてはエポキシ化大豆油(ESO)、エポキシ化アマニ油(ELO)等が挙げられる。これら植物油は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
合成されるロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2という比較的高い値となるように植物油及び/又は植物油脂肪酸エステルを選択しなければならない。既に説明したが、このような観点からは炭素数の少ない脂肪酸を有する植物油や植物油脂肪酸エステルを選択することが好ましく、炭素数が12〜14の脂肪酸を豊富に含むヤシ油又はパーム核油を用いることが特に好ましい。また、植物油に含まれる脂肪酸は、不飽和脂肪酸であっても飽和脂肪酸であってもよいが、変質による着色等を避ける観点からは、分子内に含まれる不飽和結合の数が1以下である脂肪酸を含む植物油が好ましく用いられる。なお、合成されるロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値は、9.3〜10.0(cal/cm1/2がより好ましく、9.5〜10.0(cal/cm1/2がさらに好ましい。
多価アルコールは、多塩基酸と反応して縮重合による高分子量化に寄与するとともに、植物油とのエステル交換反応により脂肪鎖が導入されることで溶解性や顔料との親和性を向上させる。多価アルコールとしては、水酸基を2又は3以上備えた化合物が挙げられ、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、ジオキサングリコール、アダマンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、メチルオクタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパンジオール1,3、3−メチルペンタンジオール1,5、ヘキサメチレングリコール、オクチレングリコール、9−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールAのような二官能フェノールのエチレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのような二官能フェノールのプロピレンオキサイド変性化合物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合変性化合物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合系ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、アダマンタンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、アダマンタントリオール、ポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の植物油及び多価アルコールを反応させることでエステル交換反応が生じ、反応中間体が調製される。反応手順としては、これらの原料を仕込んだ反応釜に、窒素ガス等不活性ガスを流入させた状態で加熱することが挙げられる。反応温度としては170〜250℃程度を挙げることができ、反応時間としては1〜2時間程度を挙げることができるが特に限定されない。
エステル交換工程を経て調製された反応中間体を含む反応混合物は、縮重合工程に付される。
[縮重合工程]
縮重合工程は、(1)樹脂酸及び多塩基酸、(2)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、又は(3)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸の存在下で、上記エステル交換工程で得た反応中間体を縮重合させる工程である。上記(1)〜(3)には、いずれも1分子中に複数のカルボキシル基を含んだ化合物、すなわちポリカルボン酸化合物が含まれ、本工程では、この化合物と1分子中に1又は2以上の水酸基を備えた化合物を含む上記反応中間体とを縮重合させる。また、上記(1)〜(3)には必ず樹脂酸又は樹脂酸誘導体が含まれるので、縮重合の結果得られた重合体には樹脂酸が導入されることになる。これにより、ロジン変性アルキッド樹脂が合成される。
樹脂酸、複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸については、上記ロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の第一実施態様で述べた通りなので、ここでの説明を省略する。また、調製されるロジン変性アルキッド樹脂の分子量を調節するために、脂肪酸以外の一塩基酸を酸成分として加えてもよいことも同様である。
縮重合反応の手順としては、上記反応中間体を含む反応混合物に上記(1)〜(3)のいずれかを投入し、反応釜に窒素ガス等不活性ガスを流入させた状態でキシレン等の溶剤を少量加えて加熱を行い、縮合水と共沸させて水を除きながら縮重合させる方法を挙げることができる。反応温度としては170〜250℃程度を挙げることができ、反応時間としては5〜25時間程度を挙げることができるが特に限定されない。反応終了の判断は、反応時間の経過に応じて反応混合物の酸価をモニターすることで行うことができる。すなわち、縮重合に伴う反応混合物の酸価の低下が止まった時点で反応終了とすればよい。縮重合反応は、縮重合によって生じた水を系外に留出させるか反応触媒を用いることで、より短時間で行うことができる。反応触媒としては、テトラブチルジルコネート、モノブチル錫オキサイド、ジルコニウムナフテート、テトラブチルチタネート等を挙げることができる。
縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は、1000〜70000程度であることが好ましい。ロジン変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は、植物油、樹脂酸及び/又はその誘導体、多塩基酸、並びに多価アルコールのバランスによって決定されるものなので、初回の合成は小スケールで行い、反応条件や原材料の種類などを決定してから大スケールの合成へ移行することが望ましい。
既に述べたが、縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2となるように、上記エステル交換工程にて原料となる植物油やその脂肪酸エステルの種類や量を選択することが必要である。そのため、先に述べた重量平均分子量の場合と同様に、初回の合成は小スケールで行い、反応条件や原材料の種類などを決定してから大スケールの合成へ移行することが望ましい。ロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値は、9.3〜10.0(cal/cm1/2がより好ましく、9.5〜10.0(cal/cm1/2がさらに好ましい。
縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、1〜50mgKOHである。酸価が50mgKOH以下であることにより、このロジン変性アルキッド樹脂を適用したオフセット印刷用インキ組成物における異常乳化等のトラブルの発生を抑制することができる。この酸価は、1〜25mgKOHであることが好ましく、1〜10mgKOHであることがより好ましい。なお、反応終了時点でのロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、植物油、樹脂酸及び/又はその誘導体、多塩基酸、並びに多価アルコールの量のバランスによって決定されるものなので、先に述べた重量平均分子量の場合と同様に、初回の合成は小スケールで行い、反応条件や原材料の種類などを決定してから大スケールの合成へ移行することが望ましい。
<ロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の第三実施態様>
次に、本発明のロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の第三実施態様について説明する。本実施態様では、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと下記(1)〜(3)のいずれかとをエステル交換反応させて反応中間体を調製するエステル交換工程と、多価アルコールの存在下で、上記反応中間体を縮重合させる縮重合工程と、を備えるロジン変性アルキッド樹脂の製造方法であって、得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるように上記植物油を選択することを特徴とする。なお、本実施態様について説明を行うにあたり、既に説明した第一実施態様及び第二実施態様の説明と重複する部分についてはその説明を適宜省略する。
(1)樹脂酸及び多塩基酸
(2)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体
(3)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸
本実施態様では、エステル交換工程とそれに続く縮重合工程の2工程を備える。まずはエステル交換工程から説明する。
[エステル交換工程]
エステル交換工程は、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと、(1)樹脂酸及び多塩基酸、(2)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、又は(3)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸のいずれかとをエステル交換反応させて反応中間体を調製する工程である。先に説明した第二実施態様では、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと多価アルコールとをエステル交換させてから縮重合させたが、本実施態様では、植物油及び/又はその脂肪酸エステルと上記(1)〜(3)のポリカルボン酸化合物との間でエステル交換させてから縮重合させる点が大きな相違点である。このように、このように植物油及び/又はその脂肪酸エステルとポリカルボン酸化合物とをエステル交換させてから縮重合を行う手法は、アルキッド樹脂の合成において良く用いられるものであり、ここで行われるエステル交換反応はアシドリシスと呼ばれるものである。
植物油及び/又はその脂肪酸エステル、樹脂酸、樹脂酸誘導体、並びに多塩基酸については既に説明した通りなので、ここでの説明は省略する。また、調製されるロジン変性アルキッド樹脂の分子量を調節するために、これらの酸成分に加えて一塩基酸を加えてもよいことも同様である。
本工程では、植物油及び/又はその脂肪酸エステル、並びに上記(1)〜(3)のいずれかとを反応させることでエステル交換反応が生じ、反応中間体が調製される。反応手順としては、これらの原料を仕込んだ反応釜に、窒素ガス等不活性ガスを流入させた状態で加熱することが挙げられる。反応温度としては170〜250℃程度を挙げることができ、反応時間としては1〜2時間程度を挙げることができるが特に限定されない。
エステル交換反応を経て調製された反応中間体を含む反応混合物は、縮重合工程に付される。
[縮重合工程]
縮重合工程は、多価アルコールの存在下で、エステル交換工程で得た反応中間体を縮重合させる工程である。多価アルコールは1分子中に複数の水酸基を備えた化合物であり、本工程では、この化合物と1分子中に1又は2以上のカルボキシル基を備えた化合物を含む上記反応中間体とを縮重合させる。なお、反応中間体に含まれる化合物には、樹脂酸又は樹脂酸誘導体が含まれるので、縮重合の結果得られた重合体には樹脂酸が導入されることになる。これにより、ロジン変性アルキッド樹脂が得られる。
多価アルコールについては、上記ロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の第二実施態様で述べた通りなので、ここでの説明を省略する。
縮重合反応の手順としては、上記反応中間体を含む反応混合物に多価アルコールを投入し、反応釜に窒素ガス等不活性ガスを流入させた状態でキシレン等の溶剤を少量加えて加熱を行い、縮合水と共沸させて水を除きながら縮重合させる方法を挙げることができる。反応温度としては170〜250℃程度を挙げることができ、反応時間としては5〜25時間程度を挙げることができるが特に限定されない。反応終了の判断は、反応時間の経過に応じて反応混合物の酸価をモニターすることで行うことができる。すなわち、縮重合に伴う反応混合物の酸価の低下が止まった時点で反応終了とすればよい。縮重合反応は、縮重合によって生じた水を系外に留出させるか反応触媒を用いることで、より短時間で行うことができる。反応触媒としては、テトラブチルジルコネート、モノブチルチンオキサイド(モノブチルすずオキサイド)、ジルコニウムナフテート、テトラブチルチタネート等を挙げることができる。
縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2となるように、上記エステル交換工程にて原料となる植物油やその脂肪酸エステルの種類や量を選択することが必要である。そのため、初回の合成は小スケールで行い、反応条件や原材料の種類などを決定してから大スケールの合成へ移行することが望ましい。ロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値は、9.3〜10.0(cal/cm1/2がより好ましく、9.5〜10.0(cal/cm1/2がさらに好ましい。
縮重合反応によって得られたロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、1〜50mgKOHである。酸価が50mgKOH以下であることにより、このロジン変性アルキッド樹脂を適用したオフセット印刷用インキ組成物における異常乳化等のトラブルの発生を抑制することができる。この酸価は、1〜25mgKOHであることが好ましく、1〜10mgKOHであることがより好ましい。なお、反応終了時点でのロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、植物油、樹脂酸及び/又はその誘導体、多塩基酸、並びに多価アルコールの量のバランスによって決定されるものなので、先に述べたsp値と同様に、初回の合成は小スケールで行い、反応条件や原材料の種類などを決定してから大スケールの合成へ移行することが望ましい。
<ロジン変性アルキッド樹脂>
次に、本発明のロジン変性アルキッド樹脂の一実施形態について説明する。本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、上述のロジン変性アルキッド樹脂の製造方法により調製されるものであり、本発明の一つである。本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールと、の縮重合体であり、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2であり、酸価が1〜50mgKOH/gであることを特徴とする。なお、以下の説明を行うにあたり、既に説明したロジン変性アルキッド樹脂の製造方法の各実施態様の説明と重複する部分についてはその説明を適宜省略する。
本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、オフセット印刷用インキ組成物の調製において好ましく用いることができ、特に活性エネルギー硬化型のインキ組成物の調製で用いられるモノマーやオリゴマーと良好な相溶性を有するので、活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物の調製において好ましく用いられる。本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、バイオマス由来の原材料を多く含むため、これを含むインキ組成物のバイオマス由来成分の含有量を高めることができる。また、本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、そのポリマー鎖又は側鎖に樹脂酸骨格を含むので顔料に対する親和性に優れ、良好な顔料分散性をもたらすほか、印刷されたインキ組成物の良好な光沢をもたらす。
本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、樹脂酸、脂肪酸及び多塩基酸を含む酸成分と、多価アルコールとの縮重合体である。これらの各成分については既に説明した通りである。なお、脂肪酸及び多価アルコールは、それぞれを別個に反応今後物に加えて反応させてもよいし、脂肪酸とグリセリンとのエステルである植物油を反応混合物に加えてエステル交換させたものでもよい。
本発明のロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値は、9.0〜11.0(cal/cm1/2である。活性エネルギー線硬化型のインキ組成物にはモノマーやオリゴマーが成分として含まれ、これらの成分は比較的高いsp値を有する。そのため、本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、9.0〜11.0(cal/cm1/2という、この種の材料としては高いsp値を有するものである。これにより、本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、モノマーやオリゴマーに対して高い相溶性を有しており、通常のオフセット印刷用インキ組成物のみならず、活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物に対しても好ましく用いることができる。ロジン変性アルキッド樹脂の濁点滴定法による溶解性パラメータsp値は、9.3〜10.0(cal/cm1/2がより好ましく、9.5〜10.0(cal/cm1/2がさらに好ましい。
上記のように高いsp値を持たせるために、ロジン変性アルキッド樹脂を構成する脂肪酸に含まれる炭素数は少ないことが好ましく、当該脂肪酸に含まれる炭素数が8〜16であることが好ましく、8〜14であることがより好ましい。このような低鎖長の脂肪酸は、ヤシ油やパーム核油に多く含まれるので、本発明のロジン変性アルキッド樹脂を構成する脂肪酸としては、ヤシ油又はパーム核油の脂肪酸であることが好ましい。また、バイオマス由来の成分比率を高めるとの観点から、ロジン変性アルキッド樹脂全体の質量に対する脂肪酸部分の質量の割合(質量%)である油長は、30〜85であることが好ましく、50〜85であることがより好ましい。
本発明のロジン変性アルキッド樹脂の酸価は、1〜50mgKOH/gである。酸価が50mgKOH以下であることにより、このロジン変性アルキッド樹脂を適用したオフセット印刷用インキ組成物における異常乳化等のトラブルの発生を抑制することができる。この酸価は、1〜25mgKOHであることが好ましく、1〜10mgKOHであることがより好ましい。
本発明のロジン変性アルキッド樹脂の重量平均分子量は、1000〜70000であることが好ましい。重量平均分子量が1000以上であることにより、顔料の分散性に優れ、インキ組成物に良好な粘弾性を付与することができるので好ましく、重量平均分子量が70000以下であることにより、溶解性が良好でハンドリングに優れるので好ましい。
<オフセット印刷用インキ組成物>
上記ロジン変性アルキッド樹脂を含むことを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物も本発明の一つである。既に説明したように、本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、原材料としてバイオマス由来の成分比率が高く、これを含むオフセット印刷用インキ組成物のバイオマス由来の成分比率を高めることができる。そのため、このオフセット印刷用インキ組成物は、環境負荷が低減されており、IGマーク認証等、各種の環境関連の認証を受けるのに適した製品となる。
また、既に説明したように、本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物に含まれるモノマーやオリゴマーとの相溶性に優れるので、活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物の構成成分として好ましく用いることができる。このような活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物も本発明の一つである。
オフセット印刷用インキ組成物の成分として本発明のロジン変性アルキッド樹脂を用いる場合、植物油や鉱物油等の油成分に溶解させてワニスとすればよい。また、活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷用インキ組成物の成分として本発明のロジン変性アルキッド樹脂を用いる場合、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等といった低粘度のモノマーに溶解させてワニスとすればよい。
<印刷物の製造方法>
上記本発明のオフセット印刷用インキ組成物を用いて印刷を行う工程を含むことを特徴とした印刷物の製造方法も本発明の一つである。既に述べたように、本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、バイオマス由来成分の比率が高く、従来の製品よりも環境負荷が小さいことを特徴とする。このようなオフセット印刷用インキ組成物を用いることにより、より環境負荷の小さい印刷を行うことができ、また環境負荷の小さい印刷物を得ることができる。
以下、実施例を示すことによりさらに具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味するものとする。
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、イソフタル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例1の樹脂を得た。実施例1の樹脂の酸価は13mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.74であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.7万だった。
[実施例2]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、デヒドロアビエチン酸160部、イソフタル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例2の樹脂を得た。実施例2の樹脂の酸価は13mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.70であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.7万だった。
[実施例3]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール50部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、重合ロジン160部、イソフタル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例3の樹脂を得た。実施例3の樹脂の酸価は12mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.73であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は1.4万だった。
[実施例4]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール20部、グリセリン16部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、イソフタル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例4の樹脂を得た。実施例4の樹脂の酸価は12mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.74であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.9万だった。
[実施例5]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、フマル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例5の樹脂を得た。実施例5の樹脂の酸価は10mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.73であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.8万だった。
[実施例6]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例6の樹脂を得た。実施例6の樹脂の酸価は11mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.74であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.8万だった。
[実施例7]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なってから、安息香酸10部を加えて250℃で1時間縮重合反応を行った。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例7の樹脂を得た。実施例7の樹脂の酸価は11mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.73であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.6万だった。
[実施例8]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、6時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なってから、安息香酸10部を加えて250℃で1時間縮重合反応を行った。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例8の樹脂を得た。実施例8の樹脂の酸価は11mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.63であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.8万だった。
[実施例9]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、イソフタル酸50部、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸10部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例9の樹脂を得た。実施例9の樹脂の酸価は6mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.73であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は1.9万だった。
[実施例10]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、フマル酸50部、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸10部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例10の樹脂を得た。実施例10の樹脂の酸価は5mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.74であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は2.1万だった。
[実施例11]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部を配合し、150℃に昇温後、ロジン160部、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例11の樹脂を得た。実施例11の樹脂の酸価は12mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.74であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.9万だった。
[実施例12]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、大豆油800部を配合し、150℃に昇温後、ロジン160部、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例12の樹脂を得た。実施例12の樹脂の酸価は10mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.45であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.8万だった。
[実施例13]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部を配合し、150℃に昇温後、不均化ロジン160部、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例13の樹脂を得た。実施例13の樹脂の酸価は12mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.76であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.8万だった。
[実施例14]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部を配合し、150℃に昇温後、ロジン160部、フマル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例14の樹脂を得た。実施例14の樹脂の酸価は10mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.74であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.9万だった。
[実施例15]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部を配合し、150℃に昇温後、ロジン160部、フマル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なってから、安息香酸10部を加えて250℃で1時間縮重合反応を行った。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例15の樹脂を得た。実施例15の樹脂の酸価は11mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.73であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.8万だった。
[実施例16]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、大豆油800部を配合し、150℃に昇温後、ロジン160部、フマル酸50部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なってから、安息香酸10部を加えて250℃で1時間縮重合反応を行った。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで実施例16の樹脂を得た。実施例16の樹脂の酸価は11mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は9.62であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.7万だった。
[比較例1]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで比較例1の樹脂を得た。比較例1の樹脂の酸価は21mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は8.84であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.5万だった。
[比較例2]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、大豆油800部、ペンタエリスリトール36部を配合し、250℃で1時間保持して、エステル交換反応を行なった。150℃に冷却し、ロジン160部、還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで比較例2の樹脂を得た。比較例2の樹脂の酸価は18mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は8.89であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.7万だった。
[比較例3]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、ヤシ油800部、ロジン160部、ペンタエリスリトール36部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで比較例3の樹脂を得た。比較例3の樹脂の酸価は17mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は8.91であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.8万だった。
[比較例4]
撹拌機、還流冷却器、温度計付きの反応釜に、大豆油800部、ロジン160部、ペンタエリスリトール36部、さらに還流用キシレンを加えて、250℃まで徐々に加熱し、12時間保持して脱水しながら縮重合反応を行なった。さらにキシレンを脱溶剤化するために、3時間減圧下で反応を行なって溶剤を留去することで比較例4の樹脂を得た。比較例4の樹脂の酸価は18mgKOH/gであり、濁点滴定法によるsp値は8.85であり、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は0.8万だった。
[モノマーに対する相溶性試験]
実施例1〜16、及び比較例1〜4のそれぞれの樹脂について、活性エネルギー線硬化型のインキ組成物に用いられる各種モノマーに対する相溶性を試験した。試験は、樹脂80部、モノマー19部、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)1部を80℃の加温下で混合及び撹拌してから25℃まで冷却して、溶解状態を目視で観察することにより行った。次の基準で各樹脂を評価し、その結果を表1に示す。なお、表1に示すsp値の単位は、(cal/cm1/2である。
○:完全に溶解し、溶液は透き通っている
△:溶液は僅かに濁っている
×:溶液が白濁している、固体が析出している、又は溶けない
表1に示した各モノマーは、次の通りである。なお、通常のオフセット印刷用インキ組成物で用いられる油成分である大豆油、及びAFソルベント7号(JX日鉱日石株式会社製)も試験に加えた。
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
DI−TMPTA:ジトリメトロールプロパンテトラアクリレート
3EO−TMPTA:エチレンオキシド3モル付加TMPTA
6EO−TMPTA:エチレンオキシド6モル付加TMPTA
NPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
3PO−TMPTA:プロピレンオキシド3モル付加TMPTA
2PO−NPGDA:プロピレンオキシド2モル付加NPGDA
AF−7:AFソルベント7号
表1から理解できるように、sp値が9.0〜11.0である本発明のロジン変性アルキッド樹脂は、活性エネルギー線硬化型インキ組成物で用いられる各種のモノマーに対して良好な相溶性を示すことがわかる。
Figure 2020172666
[ワニスの調製]
実施例1〜16の樹脂のそれぞれについて、樹脂80部、DI−TMPTA19部、及びBHT1部を冷却管付き反応釜に仕込み、100℃で1時間加熱及び撹拌することによりワニス1〜16をそれぞれ調製した。いずれのワニスも透明であり、相溶性は良好だった。各ワニスの粘度は概ね1.9〜5.4Pa・sの範囲だった。なお、比較例1〜4の樹脂については、相溶性が悪く、ワニスを調製することはできなかった。
[活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキ組成物の調製]
上記の手順で調製したワニス1〜16のそれぞれを用いて、インキ1〜16をそれぞれ調製した。調製の手順は、ワニス70部、カーボンブラック(三菱化学株式会社製、製品名#60)15部、イルガキュア907(BASF社製)7部、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(EAB)3部を混合し、ロール温度40℃の3本ロールミルを用いて粒度が5.0μm以下になるまで練肉し、必要に応じてTMPTA5部を添加して粘度が40Pa・s付近となるように調節してインキ組成物とした。
[性状測定]
インキ1〜16のそれぞれについて、ラレー粘度計を用いて測定した25℃における粘度、及びJIS K5101に従って25℃で測定したスロープを表2及び3の「粘度」及び「スロープ」欄にそれぞれ記載した。
[乳化性評価]
インキ1〜16のそれぞれについて、卓上乳化機(太陽機械製作所製)を使用して、湿し水(KG−502(株式会社小森コーポレーション製)1.5%)の存在下でインキ組成物(1g)を回転ローラーで練り、0.5分間経過時点での当該インキ組成物の乳化率(%)を測定した。その結果を表2及び3の「乳化率」欄に記載した。
[硬化性の評価]
インキ1〜16のそれぞれについて、RI−2型展色機2分割ロール(明製作所製)により、印刷インキ組成物量0.1mL/204cmをアート紙(三菱特アート110K)に展色したものを試験片とし、その後、160W/cmのメタルハライドランプ(焦点距離13cm、集光型、1灯;ヘレウス社製)を使用して試験片に紫外線を照射した。その際、指触によりタックフリーになる硬化速度で評価した。評価基準は下記の3段階とし、その結果を表2及び3の「硬化性」欄に記載した。
(評価基準)
○ :硬化速度が100m/min以上である
△ :硬化速度が60m/min以上、100m/min未満である
× :硬化速度が60m/min未満である
[光沢の評価]
上記硬化性の評価によりタックフリーとなった試験片を用いて、光沢値の測定を行った。測定に際しては、村上式デジタル光沢計(村上色彩研究所製)を用いて、60°反射光沢を求めた。その結果を表2及び3の「光沢」欄に記載した。
[印刷紙面汚れ評価]
インキ1〜16のそれぞれについて印刷機を使用した実印刷を行い、その際の印刷紙面汚れを評価した。印刷に際しては、印刷機をLITHRONE LS426、湿し水をKG−502(1.5%;株式会社小森コーポレーション製)、印刷用紙を三菱特アート紙(菊版)として、標準水量から水ダイヤルを5ポイント下げた場合の印刷紙面における汚れ度合いを評価した。評価基準は下記の通りであり、その結果を表2及び3の「印刷紙面汚れ」欄に示す。
○:印刷紙面の汚れが認められなかった
×:印刷紙面の汚れが認められた
Figure 2020172666
Figure 2020172666
表2及び3から理解されるように、本発明に係る樹脂1〜16を使用して調製されたインキ組成物は、実用的な性状、乳化性、硬化速度及び光沢を示した他、実印刷においても汚れの発生がなく良好だった。

Claims (3)

  1. 植物油及び/又はその脂肪酸エステルと多価アルコールとをエステル交換反応させて反応中間体を調製するエステル交換工程と、
    下記(1)〜(3)のいずれかの存在下で、前記反応中間体を縮重合させる縮重合工程と、を備えるロジン変性アルキッド樹脂の製造方法であって、
    得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるように前記植物油を選択することを特徴とするロジン変性アルキッド樹脂の製造方法。
    (1)樹脂酸及び多塩基酸
    (2)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体
    (3)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸
  2. 植物油及び/又はその脂肪酸エステルと下記(1)〜(3)のいずれかとをエステル交換反応させて反応中間体を調製するエステル交換工程と、
    多価アルコールの存在下で、前記反応中間体を縮重合させる縮重合工程と、を備えるロジン変性アルキッド樹脂の製造方法であって、
    得られたロジン変性アルキッド樹脂の濁点測定法による溶解性パラメータsp値が9.0〜11.0(cal/cm1/2になるように前記植物油を選択することを特徴とするロジン変性アルキッド樹脂の製造方法。
    (1)樹脂酸及び多塩基酸
    (2)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体
    (3)複数のカルボキシル基を備えた樹脂酸誘導体、及び多塩基酸
  3. 前記植物油がヤシ油又はパーム核油である請求項1又は2記載のロジン変性アルキッド樹脂の製造方法。
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