JP2020169993A - 焼結鉱の観察評価方法及び焼結鉱の被還元性評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼結鉱に含まれる多元系カルシウムフェライト相であるSFCAとSFCA−Iを区別して、焼結鉱を詳細に評価することができる観察評価方法及び被還元性評価方法を提供する。【解決手段】SFCA相の焼結体及びSFCA−I相の焼結体を準備する工程と、SFCA相の焼結体及びSFCA−I相の焼結体のそれぞれの菊池パターンをEBSDによって取得する工程と、SFCA相及びSFCA−I相のそれぞれの結晶構造情報、並びにSFCA相の菊池パターン及びSFCA−I相の菊池パターンを含むデータベースを作成する工程と、評価対象である焼結鉱の一部の領域について、EBSDによって菊池パターンを取得し、データベースに基づいて前記領域におけるSFCA相とSFCA−I相とが区別された結晶方位マップを取得する工程と、を含む焼結鉱の観察評価方法、並びに、該観察評価方法を利用した被還元性評価方法。【選択図】図6

Description

本開示は、焼結鉱の観察評価方法及び焼結鉱の被還元性評価方法に関する。
鉄鋼材料製造プロセスの上工程における高炉製錬プロセスでは、主要な鉄源として、石灰石と鉄鉱石を混合後、1200℃〜1300℃程度で高温焼成したいわゆる焼結鉱が使用される。焼結鉱は、主として、ヘマタイト(Hematite)、マグネタイト(Magnetite)及び多成分カルシウムフェライトを主要鉱物とし、高炉製錬プロセスでは、焼結鉱を還元して銑鉄を製造する。
また、焼結鉱に含まれる多成分カルシウムフェライト相は、組成、結晶構造の違いから、SFCA(SFCA:Silico−Ferrite of Calcium and Aluminium)相(Ca(Fe,Ca)(Fe,Al,Si)20)とSFCA−I相(Ca(Fe,Ca)(Fe,Al)1628)に主に分類される。いずれの相もMgなどの他の元素を固溶することがある。
焼結鉱の被還元性、還元粉化率、強度は、一般にバルク焼結鉱を試料として、所定の各試験方法で評価される。焼結鉱に関する組織観察等の研究はこれまで種々報告されている。
例えば、特許文献1には、X線回折法によって得られたXRDパターンから求めた各構成相の存在比を用いて、光学顕微鏡による組織画像中の輝度のヒストグラム中にヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相、気孔を区別する境界値を高精度に決定し、ヘマタイト相、マグネタイト相、カルシウムフェライト相、気孔に対応して組織画像を4値化する焼結鉱の顕微鏡画像解析方法が開示されている。
特許文献2には、複数の構成相から構成される結合物質の断面画像から、構成相が接する異相同士の境界線の長さを確定する画像解析方法であって、結合物質を研磨加工する工程と、前記研磨した結合物質の研磨面を顕微鏡撮影し画像を作成する工程と、前記画像の輝度分布から、結合物質中の構成相の存在領域を確定する工程と、確定した構成相の存在領域から異相同士の境界線を画定する工程と、各異相同士の境界線の割合を導出する工程と、からなることを特徴とする複数相から構成される結合物質の画像解析方法等が開示されている。
特許文献3には、SFCA−Iの相分率から焼結鉱の被還元性を評価する焼結鉱の被還元性評価方法が開示されている。
また、非特許文献1には、鉄鋼の製銑工程中に生成する多成分カルシウムフェライト相の結晶学的研究が報告されている。
非特許文献2には、2種類の焼結鉱の光学的な組織写真を基にガラス質,マグネタイト,ヘマタイト,SFCAなど8種類の相に分類した、それぞれの相をポイントカウントと自動定量化装置を使用して定量化し,両者を比較したことが報告されている。
非特許文献3には、EDS分析値と結晶形状のアスペクト比の関係からSFCAとSFCA−Iを分類している。
特許第6094230号 特許第6107388号 特開2018−179691号公報
紋川亮 2010年度 科研費報告書 S. Hapugoda, L. Lu, E. Donskoi and J. Manuel, Mineral Processing and Extractive Metallurgy (Trans. Inst. Min. Metall.C) 125(3)pp.156−164 (2016) R. Mezibricky and M. Frohlichova, ISIJ int., 56(6) pp.1111−1113 (2016)
焼結鉱の微細組織は、例えば図1に示すように、鉄鉱石核粒子(ヘマタイト)、マグネタイト、種々のカルシウムフェライト、融液から生成する二次ヘマタイト、スラグ、気孔や亀裂からなる不均一な組織である。
焼結鉱の特性発現には組織を形成する個々の相の物性に加え、各相の結晶サイズや分布、隣接組織との密着性、気孔との関連などが寄与する。即ち、マクロな特性である焼結鉱の物性を制御するためには、焼結鉱の微細組織制御が必要であり、そのためには結晶相の相分率だけではなく、各相の結晶形態や分布などの組織情報も重要である。
例えば、焼結鉱の還元粉化は還元に伴う相変態や微細組織の変化により生じる。そして、荷重をかけた場合の割れや破壊は組織が不均一なところから発生することから、還元粉化による割れや荷重印加時の破壊の発生機構を解析するうえで、局所領域の相の分布や各相の被還元性、還元粉化性の評価技術が必要である。
また、高炉内反応では、融液が生成すると通気性が低下することから局所領域での融液生成開始温度や生成量も重要な因子である。
例えば、光学顕微鏡による組織観察やSEM−EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法)/EPMA(電子線マイクロアナライザ)で組成と微細組織の関係を調べる方法では、(I)焼結鉱中に含まれる多成分カルシウムフェライトは連続固溶体でSFCAとSFCA−Iの組成が近く、SFCA−IとSFCAの相境界は完全には解明されていないこと、(II)焼結鉱中のカルシウムフェライトの結晶サイズが小さいものは数ミクロンオーダーであり、電子線の侵入深さの影響を受けるため組成分析の精度が低いことなどの課題がある。
また、特許文献1〜3及び非特許文献1〜3には、焼結鉱の局所領域において多成分カルシウムフェライト相であるSFCA相とSFCA−I相とを精度よく区別して評価する方法が開示されていない。
また、特許文献3では、カルシウムフェライトSFCA−Iの相分率が高いほど被還元性が良好であることが示されているが、ばらつきが大きく、被還元性をより高精度に評価することが望ましい。焼結鉱の組織は、例えば、図14に示すように複雑で1つの粒子に被還元性が異なる組織が含まれており、平均の相分率情報だけでは性能が評価できない課題がある。
上記状況に鑑み、本開示は、焼結鉱の鉱物相微細構造をSEM−EDSやEPMAより高分解能でマッピングし、焼結鉱に含まれる多元系カルシウムフェライト相であるSFCAとSFCA−Iとを区別して、焼結鉱を詳細に評価することができる観察評価方法を提供することを目的とする。
また、本開示は、不均質な組織である焼結鉱の局所的な被還元性を精度よく予測することができる被還元性評価方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 多成分カルシウムフェライト相であるSFCA相の焼結体及び前記SFCA相とは結晶構造が異なる多成分カルシウムフェライト相であるSFCA−I相の焼結体を準備する工程と、
前記SFCA相の焼結体から前記SFCA相の菊池パターンを、及び前記SFCA−I相の焼結体から前記SFCA−I相の菊池パターンを、それぞれEBSDによって取得する工程と、
前記SFCA相及び前記SFCA−I相のそれぞれの結晶構造情報、並びに前記SFCA相の菊池パターン及び前記SFCA−I相の菊池パターンを含むデータベースを作成する工程と、
評価対象である焼結鉱の一部の領域について、EBSDによって菊池パターンを取得し、前記データベースに基づいて前記領域におけるSFCA相とSFCA−I相とが区別された結晶方位マップを取得する工程と、
を含む焼結鉱の観察評価方法。
<2> 前記結晶方位マップに基づいて、前記領域における前記SFCA相及び前記SFCA−I相のそれぞれの相分率を求める工程をさらに含む、<1>に記載の焼結鉱の観察評価方法。
<3> 前記領域において少なくとも1種の元素についての元素分布を取得する工程と、
前記領域における前記結晶方位マップと前記元素分布とを対比することにより、前記結晶方位マップにおいて、前記元素分布を取得した前記元素が存在している部分を特定する工程と、
をさらに含む、<1>又は<2>に記載の焼結鉱の観察評価方法。
<4> 評価対象である焼結鉱を準備する工程と、
前記焼結鉱の一部の領域について、EBSDによって菊池パターンを取得する工程と、
前記焼結鉱の菊池パターンから、<1>に記載の焼結鉱の観察評価方法によりSFCA相とSFCA−I相とが区別された結晶方位マップを取得する工程と、
前記SFCA相及び前記SFCA−I相を、形態に基づいて、針状SFCA相、柱状SFCA相、針状SFCA−I相、及び柱状SFCA−I相にさらに区別する工程と、
前記焼結鉱の前記針状SFCA相、前記柱状SFCA相、前記針状SFCA−I相、前記柱状SFCA−I相、及びヘマタイト相の各相の相分率を求める工程と、
前記焼結鉱の前記各相のFe濃度を測定する工程と、
前記焼結鉱の前記各相の前記相分率及び前記Fe濃度から、前記焼結鉱の被還元性を予測する工程と、
を含む、焼結鉱の被還元性評価方法。
本開示によれば、焼結鉱の鉱物相微細構造をSEM−EDSやEPMAより高分解能でマッピングし、焼結鉱に含まれる多元系カルシウムフェライト相であるSFCAとSFCA−Iとを区別して、焼結鉱を詳細に評価することができる観察評価方法が提供される。
また、本開示によれば、さらに結晶形態毎に分類することで、より正確に焼結鉱の局所の被還元性を予想できる被還元性評価方法が提供される。
焼結鉱の微細組織を示す光学顕微鏡像の一例である。 SFCA相及びSFCA−I相の組成領域を示す図である。 EBSDによって測定した(a)SFCA−I相の菊池パターンの一例及び(b) SFCA相の菊池パターンの一例を示す図である。 実施例で用いた焼結鉱N−1の断面を研磨して観察した光学顕微鏡像の一例である。 実施例で用いた焼結鉱N−1の断面を研磨して観察した光学顕微鏡像の一例である。 図4Aの光学顕微鏡像の破線枠内の反射電子像を示す図である。 図4Aの光学顕微鏡像における視野1の領域のSEM像及びEBSD測定により得られた結晶方位マップ(SFCAの結晶方位,SFCA−Iの結晶方位,Hematiteの結晶方位,相)である。 図4Aの光学顕微鏡像における視野2の領域のSEM像及びEBSD測定により得られた結晶方位マップ(SFCAの結晶方位,SFCA−Iの結晶方位,Hematiteの結晶方位,相)である。 図4Aの光学顕微鏡像における視野3の領域のSEM像及びEBSD測定により得られた結晶方位マップ(SFCAの結晶方位,SFCA−Iの結晶方位,CFF相の結晶方位,Hematiteの結晶方位,相)である。 図4Aの光学顕微鏡像における視野4の領域のSEM像及びEBSD測定により得られたSEM像及び結晶方位マップ(SFCAの結晶方位,SFCA−Iの結晶方位,CFF相の結晶方位,Hematiteの結晶方位,相)である。 図4Bの光学顕微鏡像における視野5の領域のSEM像及びEBSD測定により得られた結晶方位マップ(SFCAの結晶方位,SFCA−Iの結晶方位,CFF相の結晶方位,Magnetiteの結晶方位,Hematiteの結晶方位,相)である。 図4Aの光学顕微鏡像における視野3の領域のEPMA測定により得られた元素分布(Fe,Ca,Si,Al,Mg(mass%))である。 図4Aの光学顕微鏡像における視野4の領域のEPMA測定により得られた元素分布(Fe,Ca,Si,Al,Mg(mass%))である。 図4Aの光学顕微鏡像における視野5の領域のEPMA測定により得られた元素分布(Fe,Ca,Si,Al,Mg(mass%))である。 EBSD測定及びEPMAによる元素分析結果より分類した焼結鉱N−1の微細組織の分布(実線で囲まれた部分:SFCA−I+微量のSFCA、点線で囲まれた部分:SFCA+微量のSFCA−I及びCFF、破線で囲まれた部分:Mg含有SFCA−I、矢印Sの部分:シリケートスラグ及び脈石)を示す図である。 本開示に係る焼結鉱の被還元性評価方法の評価フローを示す図である。 試料(1)〜(3)のタブレット断面の光学顕微鏡像である。 試料(1)〜(3)のSEM反射像である。 試料(1)〜(3)のEBSD法での相同定結果を示す図である。 Ar−22.5&CO−22.5%CO雰囲気、900℃における試料(1)〜(3)の還元曲線を示す図である。 図7の還元曲線において還元開始から10分間の還元曲線を拡大した図である。 Ar−22.5%CO−22.5%CO雰囲気、900℃における実施例1の還元曲線と本開示に係る焼結鉱の被還元性評価方法に基づく予測値を示す図である。
本開示の一例である実施形態(本実施形態)について説明する。
なお、本明細書中において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本発明者は、微細組織のマッピングを得ることができ、SFCAとSFCA−Iを区別してこれらを含む焼結鉱の各鉱物相の局所的な相分率を求める方法を開発すべく鋭意検討を行う中で、局所領域の結晶相を定量する方法として電子線後方散乱回折法(EBSD)で得られる菊池パターンによる結晶相の識別方法に着目した。
例えば、EPMAによって酸化鉄やカルシウムフェライトの組成分析を行う場合、試料表面の垂直方向から電子線を照射すると、深さ数ミクロンまで電子線が侵入し、蛍光X線が励起される。つまり、電子線を使った組成分析では、数ミクロンの領域の組織からの蛍光X線が検出されるので、目的の結晶の下や隣の組織からの組成情報も含んでしまう。電子線のビームサイズが0.5〜1μmであっても、空間分解能は数ミクロン以上となる。
一方、EBSD(電子線後方散乱回折)では、電子線の入射角度が試料に対して20°程度となるように試料を傾斜させて電子線を照射し、試料表面から0.5nm程度の最表相のみの回折情報のみを得る。よって、EBSDは、同じ電子ビームサイズであってもEDSやEPMAによる元素分析よりも空間分解能が高い手法である。また、結晶構造の違いによりEBSDによって得られる菊池パターンは変化するが、多成分カルシウムフェライトは三斜晶系の複雑な結晶構造のため、菊池パターンの解析を行うことは困難である。
しかし、本発明者は、例えばHough変換による菊池パターン中の晶帯軸の抽出と相の判定が向上した解析ソフトウェアを用い、SFCA相、及びSFCA−I相のそれぞれの菊池パターンと結晶構造情報を含むデータベースを作成すれば、組成が近いSFCA相、及びSFCA−I相であってもEBSDによって識別できる可能性があると考えた。
そこで、本発明者は、標準試料としてそれぞれの結晶相の焼結体を合成してEBSDによって菊池パターンを取得し、これらの菊池パターンと既知の結晶構造情報等を含むデータベースを作成した。そして、評価対象である焼結鉱についてEBSDによって菊池パターンを測定し、データベースと照合する解析を行ったところ、EPMAでの組成分析では識別が困難であった、サイズが数ミクロンオーダーの多成分カルシウムフェライト微細組織の相についても、SFCA相とSFCA−I相とに識別することが可能となることを見出した。
さらに、本発明者は、焼結鉱組織に含まれる組織の形態観察、EBSD法による結晶相を同定、元素分布を解析することで、焼結鉱中に含まれる被還元性が異なる組織を分類し、あらかじめ評価した各組織の被還元性から焼結鉱の局所の被還元性を予測することができることを見出した。
[焼結鉱の観察評価方法]
本開示に係る焼結鉱の観察評価方法は、
多成分カルシウムフェライト相であるSFCA相の焼結体及び前記SFCA相とは結晶構造が異なる多成分カルシウムフェライト相であるSFCA−I相の焼結体を準備する工程と、
前記SFCA相の焼結体から前記SFCA相の菊池パターンを、及び前記SFCA−I相の焼結体から前記SFCA−I相の菊池パターンを、それぞれEBSDによって取得する工程と、
前記SFCA相及び前記SFCA−I相のそれぞれの結晶構造情報、並びに前記SFCA相の菊池パターン及び前記SFCA−I相の菊池パターンを含むデータベースを作成する工程と、
評価対象である焼結鉱の一部の領域について、EBSDによって菊池パターンを取得し、前記データベースに基づいて前記領域におけるSFCA相とSFCA−I相とが区別された結晶方位マップを取得する工程と、
を含む。
上記のようにSFCA相の焼結体とSFCA−I相の焼結体からそれぞれEBSDによって取得した菊池パターンをSFCA相とSFCA−I相の結晶構造データとともにデータベースに登録し、評価対象である焼結鉱の表面(断面)をEBSDによって測定してデータベースと照合することで、焼結鉱に含まれるSFCAとSFCA−Iとを区別した微細組織のマッピングを得ることができる。
また、本開示に係る焼結鉱の観察評価方法は、前記結晶方位マップに基づいて、前記領域における前記SFCA相及び前記SFCA−I相のそれぞれの相分率を求める工程をさらに含んでもよい。
EBSDによって得られた結晶方位マップから、焼結鉱の各鉱物相の局所相分率を求めることができ、EPMAによる分析と比較してより正確に相分率を決定することができる。
また、本開示に係る焼結鉱の観察評価方法は、前記領域において少なくとも1種の元素についての元素分布を取得する工程と、
前記領域における前記結晶方位マップと前記元素分布とを対比することにより、前記結晶方位マップにおいて、前記元素分布を取得した前記元素が存在している部分を特定する工程と、をさらに含んでもよい。
評価対象である焼結鉱の同じ領域において、EBSDによって取得した結晶方位マップと例えばEPMAによって取得した元素分布を対比することで、各相における元素の存在分布を確認することができ、微細組織をより詳細に分類することが可能となる。
<焼結体の準備>
まず、SFCA相の菊池パターンとSFCA−I相の菊池パターンを取得するため、多成分カルシウムフェライト相であるSFCA相の焼結体及び前記SFCA相とは結晶構造が異なる多成分カルシウムフェライト相であるSFCA−I相の焼結体を準備する。
各焼結体は既存の焼結体を入手してもよいが、例えば以下のようにしてSFCA相の焼結体(多結晶)、SFCA−I相の焼結体(多結晶)をそれぞれ作製することができる。
(SFCA相の焼結体の作製)
Fe、CaCO、SiO、Al試薬粉末を所望のSFCA相の化学量論比になるよう秤量する。例えば、56.1Fe−30.4CaO−5.7Al−7.9SiO(mol%)があるが、連続固溶体であるSFCA相の単相生成領域であればよく、例えばMgOを添加してもよい。メノウ乳鉢で十分に混合したのち、圧粉成型する。800℃での仮焼を2時間行い脱炭酸し、粉砕混合したのちに再び錠剤にする。1200℃での本焼成を大気中で60時間行い、炉冷し、単相のSFCA焼結体を得る。均質化のため、本焼成と粉砕混合の工程を数回繰り返してもよい。また本焼成温度は所望の組成における融点未満であれば、1200℃よりも高温であっても良い。
(SFCA−I相の焼結体の作製)
Fe、CaCO、Al試薬粉末を所望のSFCA−I相の化学量論比になるよう秤量する。例えば、67.7Fe−25.6CaO−6.7Al(mol%)があるが、SFCA−I相の組成域であればSiOを添加してもよい。メノウ乳鉢で十分に混合したのち、圧粉成型する。800℃での仮焼を2時間行い脱炭酸し、粉砕混合したのちに再び錠剤にする。1200℃での本焼成を60時間行い、単相のSFCA焼結体を得る。均質化のため、本焼成と粉砕混合の工程を数回繰り返してもよい。また本焼成温度は所望の組成における融点未満であれば、1200℃よりも高温であっても良い。
<菊池パターンの取得>
前記SFCA相の焼結体から前記SFCA相の菊池パターンを、及び前記SFCA−I相の焼結体から前記SFCA−I相の菊池パターンを、それぞれEBSDによって取得する。
図3は、上記のように作製した各相の焼結体のサンプルについて、EBSDによって測定した(a)SFCA−I相の菊池パターンの一例と、(b)SFCA相の菊池パターンの一例を示している。多成分カルシウムフェライトはSFCA、SFCA−Iとも三斜晶系の複雑な結晶構造であるため、図3の(a)、(b)に示すように、各サンプルの菊池パターンには多数の晶帯軸が表われる。
また、各相の焼結体は多結晶であるため、同じ焼結体であっても測定点における結晶方位が異なり、結晶粒子(結晶方位の向き)が異なれば、菊池パターンが異なる。そのため、SFCA相、SFCA−I相のそれぞれについて複数の菊池パターン、好ましくは10個以上の菊池パターンを取得することが好ましい。
<データベースの作成>
前記SFCA相及び前記SFCA−I相のそれぞれの結晶構造情報、並びに前記SFCA相の菊池パターン及び前記SFCA−I相の菊池パターンを含むデータベースを作成する。
SFCA相及びSFCA−I相のそれぞれの結晶構造情報は既知の情報として入手することができる。結晶構造情報としては、SFCA相、SFCA−I相のほか、焼結鉱を構成する他の結晶相の結晶構造情報も含むことが好ましい。例えば、下記表1に示す結晶相の結晶構造情報を用いることが好ましい。


一方、データベースに含まれる菊池パターンについても、前記取得したSFCA相、SFCA−I相の各菊池パターンほか、焼結鉱を構成する他の結晶相の菊池パターンも含むことが好ましい。必要に応じて標準試料として他の結晶相の焼結体を作製し、EBSDによって各結晶相の菊池パターンを測定すればよい。
SFCA相、SFCA−I相に加え、焼結鉱を構成するSFCA相、SFCA−I相以外の各結晶相のデータベースを用いれば、評価対象の焼結鉱をEBSDによって観察評価する際、SFCA相、SFCA−I相だけでなく、焼結鉱を構成する各結晶相が区別された結晶方位マップを取得することができる。
<結晶方位マップの取得>
評価対象である焼結鉱の一部の領域について、EBSDによって菊池パターンを取得し、前記データベースに基づいて前記領域におけるSFCA相とSFCA−I相とが区別された結晶方位マップを取得する。
以下、実施例としてEBSDにより結晶方位マップを取得した手順も含めて具体的に説明する。
評価対象として選んだ焼結鉱試料(本実施形態において「焼結鉱N−1」と称する場合がある。)をエポキシ樹脂に埋めて切断及び研磨し、さらにダイアモンドスラリー(平均粒径:1μm)で鏡面研磨したのちにコロイダルシリカで最終研磨を行う。なお、最終研磨は表面(焼結鉱N−1の観察面)のダメージを除去できれば、イオンビームによる表面仕上げなどほかの手法でもよい。
その後、最終研磨した焼結鉱N−1断面にカーボンを蒸着して、EBSD測定を行う。
ここで、最終研磨した焼結鉱N−1断面について、光学顕微鏡及びSEMによって観察して得られた画像を示す。
焼結鉱N−1断面の光学顕微鏡像を図4A、図4Bに示す。白っぽい部分が鉄鉱石核粒子及び二次ヘマタイトで、黒っぽい部分は気孔、白と黒の中間色の部分はカルシウムフェライト、マグネタイト及びスラグである。また、柱状あるいは針状の結晶はカルシウムフェライトであるが、コントラスト及び結晶サイズの異なる相が観測される。光学顕微鏡の反射率では、こうしたカルシウムフェライトの相の種類を識別できない。
図5は図4A中に示した破線枠内(約250μm×200μm)の領域のSEM反射像であり、最も明るい部分がヘマタイト、暗い部分は気孔、中間色の部分はカルシウムフェライト及びスラグである。このような長辺が250μm程度の狭い視野内においてもコントラストの異なる柱状晶及び針状晶が複数観察されることが分かる。しかし、反射電子像のコントラストの違いのみでは、針状晶がSFCAかSFCA−Iのいずれであるのかは判別できない。
一方、針状結晶が見られる図4A及び図4Bにおける実線の四角い囲みで示す5つの領域(視野1〜5)について、EBSD法による菊池パターンのマッピングを測定ピッチ0.15〜0.40μmの間隔で行った。測定ピッチは測定対象の結晶サイズに応じ、調整を行った。
菊池パターンの相同定には、前記表1に示す結晶相の結晶構造情報及び粉末焼結法で作製したSFCA−I相、SFCA相、α−CFF相などの標準試料を用いた菊池パターンを含むデータベースを用いた。
取り込んだ菊池パターンはEBSD解析ソフトウェア「OIM Data Analysis」(TLSソリューションズ社製)を用い、Hough変換により晶帯軸を検出する。データベースパターンの候補相の条件で指数付し、最も良く整合するものをその測定点の相と判定した。必要に応じ、ノイズ低減処理と、樹脂・気孔と結晶相を区別するために、Hough空間上でのピーク強度(IQ値)に閾値の設定を行い、解析を行った。
ここで、本実施形態における菊池パターンの解析手順について詳細に説明する。
(1)菊池パターンの取り込み
EBSDにより、解析したい結晶粒のサイズよりも十分に小さい電子ビーム径及び位置間隔で菊池パターンを取得する。菊池パターンから得られる結晶構造情報は、晶帯軸の位置(=結晶方位の情報)、バンド幅(=格子定数)、バンド間の角度=結晶面間の角度、バンドの位置である。このうち、バンド幅から求められる格子定数は誤差が大きいため本実施例における解析には使用していない。
(2)画像処理
次のステップのHough空間でピークを検出しやすいように、必要に応じ、画素をビニング(Binning処理)してからHough変換するなどの画像処理を行う。
像のBinning処理のほか、積算によるランダムノイズの改善、バックグラウンド除去によるコントラスト改善、画像の圧縮処理などを行ってもよい。
(3)Hough変換
バンドの検出を行うため、菊池パターンの画像のHough変換を行う。
ここで、x,yはEBSDパターン像(菊池パターン)の各ピクセルの座標値を表している。通常はスクリーンの中心を原点としている。直線上にある点をHough変換すると、Hough空間上では一点で交わる。ρは原点からその直線までの距離、交点の位置は元画像の直線に原点から垂線を引いた時の垂直線の角度で決まる。
各ピクセルの輝度をHough空間上に示すと、EBSDの明線に対応した交点は明るく、暗線に対応した交点は暗くなる。
立方晶系のFCC(面心立方格子)構造やBCC(体心立方格子)構造は8本の晶帯軸があれば、区別がつく。しかし、SFCAやSFCA−Iは三斜晶系で対称性が低いため、極力多く(好ましくは15本以上)のバンドを検出する。
相の区別がつかなかった(後述のCI値がCI≦0.1以下)ピクセルは解析しない。
(4)測定した領域中に含まれる気孔や樹脂部分を解析対象から除く。
Hough空間で得られたピークの平均強度(グレイスケール値)をImage quality値(IQ値)と定義し、下限値を設けてそれ以下の領域は解析対象から外す。IQ値の強度は、EBSD検出器や測定条件、菊池パターン像の品質によるので、SEM像と比較しながら、空孔や樹脂を除ける最適な閾値を設定する。
(5)含まれている可能性のある候補の結晶相について、あらかじめ結晶の対称性や結晶面のデータから、結晶面間の角度の関係を求めておく。
(6)キャリブレーション
検出したバンドからそれらのバンドを作る結晶面間の角度を算出するための基準点を決め、菊池パターンの画像のゆがみ(平面の検出器で菊池パターンを検出する影響などによる)を補正し、バンド間角度を結晶面間角度に補正する。
(7)次いで、バンドのミラー指数を算出する(3バンド法,Wright and Adams,1992)。
検出したバンドから3本を抽出し、それら3つのバンド間の角度関係をすべて満たすミラー指数を算出する。
(8)決定されたバンドのミラー指数より結晶方位を算出する。
(9)検出したバンドから3本を抽出するすべての組み合わせに対し結晶方位を算出し、Voting法(Field,1997)により共通解を探し最終的な結晶方位とする。
(10)データの良し悪しの判定
Fit値(°):検出したバンドとそれを基に結晶方位計算を行い、得られた結晶方位に基づくシミュレーションによるバンドと対応する検出したバンドとの誤差を角度で表し、その平均を求めたもの。本実施形態では2°以下を適切とし、実施例では平均のFit値が1.5〜1.7°であった。
CI値:経験則に基づくパラメータで、3バンド法で結晶方位を算出した際に、最終解としたもののVote数と2番目に可能性の高かった解のVote数の差を3本のバンドを選択する組み合わせの数で割ったもの。
CI=(V−V)/Videal
Videal:3本のバンドを選ぶ組み合わせ数
,V:最初と2番目の解のVote数
候補相が複数ある場合は、各相について指数付を行い、もっともVote数が高かった相を採用する。
CIoverall=(Vphase1−Vphase2)/Videal
(11)ノイズ低減処理を行う。
CI≦0.1以下となったピクセルのデータは解析対象から外す。
結晶粒の定義で結晶粒と認識されなかったピクセルのデータを、周辺の結晶粒と認識されたピクセルの方位に置き換える(Grain Dilation)。例えば、方位差5°以下で2つ以上のピクセルがつながっているものを結晶粒とし、単独で孤立したピクセルは、隣接するもっともCI値が高いピクセルの方位で置き換える。SEM像の結晶形状とEBSD解析で得た相マップを比較し、妥当性を検証する。
SEMの結晶形状とノイズ低減処理を行った後の結晶形状が対応していなければ、ノイズ低減処理条件を最適化する。
以上の解析手順は、OIM Data Analysisの解析アルゴリズムによる一例であるが、本実施形態に使用可能なソフトウェアはこれに限定されず、他の解析ソフトウェアを用いてもよい。他の解析ソフトウェアでは、キャリブレーションや方位付、ノイズ低減のアルゴリズムが異なるが、いずれにしてもHough変換をして、バンドを検出し、得られたバンドを候補相のシミュレーションと比較して判定する流れで解析を行うことができる。
図6〜10に、視野1〜5の領域のSEM像及びEBSD測定により得られた主要結晶相の結晶方位マップ、相分布のカラーマップをそれぞれ示す。なお、図6〜図10では、図面の制約上、濃淡差のある白黒表示となっているが、実際の測定では、結晶相あるいは結晶方位に応じて色分けされたマップが得られる。
(SFCA相とSFCA−I相との判別)
視野1と視野2の各領域はSEM反射像において、針状組織のコントラストがわずかに異なっている(図5)。
そして、本実施形態によるEBSDマッピングの結果、視野1の領域の針状組織はSFCA相が主であり、SFCA相の結晶粒子の隙間にわずかにSFCA−I相が生成していることがわかった(図6)。
一方、視野2の領域の針状組織はSFCA−I相が主要相であった(図7)。
視野3,4の各領域にみられる太さ1μm程度の針状組織はSFCA相であった(図8、図9)。
また、視野5の領域の主要相はSFCA−I相で、粒子間にヘマタイト及びマグネタイトが分布している(図10)。
<相分率の算出>
このようにEBSD測定によって得られた各結晶相の結晶方位マップを画像解析することで、各領域における各結晶相の面積分率(相分率)が得られる。表2に、視野1〜5の領域における各結晶相の面積分率(相分率)を示す。

<EPMAによる元素分布の取得>
また、EBSD測定を行った視野3〜5についてEPMA分析を行い、Fe,Ca,Si,Al,Mg,Oの各元素分布を求めた。測定ピッチは1μmとした。
図11〜図13に視野3〜5の領域におけるEPMAによる元素分布をそれぞれ示す。なお、図11〜図13では、図面の制約上、濃淡差のある白黒表示となっているが、実際の測定では、各元素の濃度(mass%)に応じて色分けされた元素分布が得られる。
<EBSDによる結晶方位マップとEPMAによる元素分布との対比>
視野3〜5の領域に関して、図8〜図10に示すSFCA相とSFCA−I相の生成領域と図11〜図13に示す元素分布をそれぞれ領域ごとに比較すると、いずれもSFCA相の方がSFCA−I相よりも高Si/低Feの傾向であり、図2に示す平衡状態図上の生成領域の傾向と対応している。
また、視野3,視野4のような1〜2μmオーダーの非常に細かい針状組織については、EPMAでの定量分析では空間分解能が不十分であり、本開示のEBSDによる定性及び定量の方が、より正確に相の比率を求めることができることが、視野3に関する図8と図11、あるいは視野4に関する図9と図12の比較により見て取れる。
(Mgの分布)
また、図11及び図13の元素分布から視野3及び視野5にはMgを1〜2mass%含む領域が存在するが、これらはSFCA−I相であった。
SFCA相にMgが広く固溶することが、例えばK. Sugiyama, A. Monkawa and T. Sugiyama, ISIJ Int., 45, pp.560-568 (2005) に報告されているが、本実施形態(実施例)で用いた焼結鉱中ではSFCA−I相に多く分布していることがわかった。
(焼結鉱N−1の微細組織の分布)
EBSD測定及びEPMA元素分析結果に基づき、焼結鉱N−1の微細組織を分類した結果を図14に示す。焼結鉱N−1中には、大別すると(1)ヘマタイト、(2)SFCAと微量のSFCA−I、(3)SFCA−Iと少量のSFCA、(4)Mg固溶SFCA−I、(5)シリケートスラグ及び脈石が含まれ、さらに図中には記載していないが、(6)マグネタイト、マグネシオフェライトなどの微細粒子が含まれることがわかった。
多成分カルシウムフェライト相は連続固溶体で、組成により格子定数や原子座標が連続的に変化するが、本開示の観察評価方法によれば、低Al相と高Al相いずれもSFCA相として分類できた。
また、従来、MgがSFCA相に広く固溶することが報告されていたが、実施例の焼結鉱組織においてはSFCA−I相に多く分布していることを、EPMAを併用して、本開示の手法により解明できた。
本開示に係る焼結鉱の観察評価方法によれば、EBSDマッピング解析において、各測定点において好ましくは8本以上の晶帯軸を抽出して解析できれば、多成分カルシウムフェライトの相の判別は高確率で可能である。なお、隣接している反射電子コントラストが同等の領域においては同じ結晶構造の組織が析出しているので、すべての領域のEBSDパターンを測定する必要はなく、測定時間を短縮することもできる。
例えば、本開示に係る焼結鉱の観察評価方法によって得られた焼結鉱の微細組織の構造と、焼結鉱の製造条件との関連性や、焼結鉱の被還元性、還元粉化率、強度との関連性を調査することで、所望の焼結鉱を得るための製造条件を見出すことができる可能性がある。
以上、本開示に係る焼結鉱の観察評価方法について説明したが、本開示に係る焼結鉱の観察評価方法は、上記実施形態に限定されない。
例えば、EPMAによってFe,Ca,Si,Al,Mg,Oの各元素分布を測定し、EBSDによって取得したSFCA相の結晶方位マップ及びSFCA−I相の結晶マップ結晶方位マップとMgの元素分布とを対比してMgが存在している部分を特定したが、Mgに限定されず、他の元素分布と対比してもよい。
また、上記実施形態では、EPMAによって元素分布を取得する場合について説明したが、EPMAに限定されず、例えば、EDS、放射光を使った蛍光X線分析など他の手法を用いて元素分布を取得してもよい。
[焼結鉱の被還元性評価方法]
次に、本開示に係る焼結鉱の被還元性評価方法について説明する。
本開示に係る焼結鉱の被還元性評価方法は、前述した焼結鉱の観察評価方法を利用して、EBSD法による結晶相を同定、元素分布を解析することで、焼結鉱中に含まれる被還元性が異なる組織を分類し、あらかじめ評価した各組織の被還元性から焼結鉱の局所の被還元性を予測ないし推定する方法である。
焼結鉱は、高炉に装入されてコークスの燃焼によるCOガスあるいは水素によって還元され、焼結鉱の被還元性は、結晶相の種類や組成、形態、周囲の組織や気孔構造などにより決まる。
従来、結晶形態や結晶相の種類、組成などの焼結鉱組織解析が行われているが、図15に示す評価フローのようにEBSD法による相同定を導入することで、従来よりも精度よい多成分カルシウムフェライトの分類が実現し、焼結鉱組織の詳細な分類および局所の相分率の導出が可能となる。
すなわち、本開示に係る焼結鉱の被還元性評価方法は、
評価対象である焼結鉱を準備する工程と、
前記焼結鉱の一部の領域について、EBSDによって菊池パターンを取得する工程と、
前記焼結鉱の菊池パターンから、前述した本開示に係る焼結鉱の観察評価方法によりSFCA相とSFCA−I相とが区別された結晶方位マップを取得する工程と、
前記SFCA相及び前記SFCA−I相を、形態に基づいて、針状SFCA相、柱状SFCA相、針状SFCA−I相、及び柱状SFCA−I相にさらに区別する工程と、
前記焼結鉱の前記針状SFCA相、前記柱状SFCA相、前記針状SFCA−I相、前記柱状SFCA−I相、及びヘマタイト相の各相の相分率を求める工程と、
前記焼結鉱の前記各相のFe濃度を測定する工程と、
前記焼結鉱の前記各相の前記相分率及び前記Fe濃度から、前記焼結鉱の被還元性を予測する工程と、
を含む。
なお、本開示における各カルシウムフェライト相の形態を表す「針状」とは、短辺が5μm未満の細長い結晶形態を意味し、「柱状」とは短辺が5μmより大きい結晶形態あるいは多結晶でも顕微鏡像で同等コントラストが得られ空隙や別の相に囲まれていない密な組織を意味する。各カルシウムフェライト相の「針状」又は「柱状」の判別は、光学顕微鏡観察と走査型電子顕微鏡観察の一方又は両方によって行うことができる。
以下、本開示に係る焼結鉱の被還元性評価方法について、特許文献3(特開2018−179691号公報)に開示されている焼結鉱の被還元性評価方法とともに具体的に説明する。
<試料の作製>
表3に示す2種類の組成比で鉄鉱石(Ore)および試薬を混合して、8mmΦ×10mm(h)のタブレットを作製し、下記(1)〜(3)のいずれかのパターンの温度プロファイルで焼成することで、気孔率、カルシウムフェライト総量は同等で、カルシウムフェライトの相別の割合が異なる5種類の焼結タブレット(試料(1)〜(5)、以下、単に「タブレット」と称する場合がある。)をそれぞれ2個ずつ作製した。尚、鉄鉱石はT.Fe:67.14mass%、SiO:2.44mass%、Al:0.22mass%、平均粒径70μmのヘマタイト鉱石を用いた。
(温度パターン)
(1)1100℃から1300℃まで200℃/minで昇温し、1100℃まで66.7℃/minで冷却
(2)1100℃から1300℃まで200℃/minで昇温し、1100℃まで20℃/sで冷却
(3)1100℃から1250℃まで200℃/minで昇温し、1100℃まで20℃/sで冷却
作製した各タブレット(試料(1)〜(5))について、各タブレットの1つは粉砕して粉末X線回折測定を行い、1つは切断して樹脂に埋め込み研磨を行い、後述する光学顕微鏡観察、SEM観察、EBSD測定を行った。また、タブレット片の還元試験を行った。
(従来手法による相分率の評価)
特許文献3(特開2018−179691号公報)に記載の方法に準拠して、粉末X線回折測定で求めたタブレットに含まれる相の定量結果を表4に示す。なお、SFCA相はCa(Fe,Ca)(Fe,Al,Si)20,SFCA−I相は(Ca,Fe)(Fe,Al,Si)1628の構造式で表される多成分カルシウムフェライト連続固溶体である。表4に示すように、試料(1)、(4)はSFCA−I相を多く含み、試料(2)、(3)、(5)はSFCA相を多く含んでいる。

<カルシウムフェライトの形態別相分率の測定>
図16に試料(1)〜(3)のタブレット断面の光学顕微鏡像を示す。タブレット内部は焼けむらなく焼成されていることを確認した。さらに拡大した図17のSEMによる反射電子像に示すように、試料(1)は針状カルシウムフェライト(針状CF)の生成量が少なく、試料(2)、(3)は針状カルシウムフェライト組織が多く生成していた。
図18に試料(1)〜(3)の針状カルシウムフェライト組織部のEBSD測定による相同定結果を示す。なお、図18では、図面の制約上、濃淡差のある白黒表示となっているが、実際の測定では、結晶相に応じて色分けされたマップが得られる。いずれの組織においてもSFCA相とSFCA−I相が存在するが、試料(1)はSFCA−I相の割合が高い傾向が得られた。なお、試料(1)の柱状組織のカルシウムフェライトは大部分がSFCA−I相であった。
反射電子像から各カルシウムフェライトの形態を柱状と針状に分類し、それぞれの形態別にEBSDの結果から柱状SFCA、柱状SFCA−I、針状SFCA、針状SFCA−Iの4種類の形態別相分率を求めた。EBSDで求めた面積分率を体積分率に換算し、結晶相の理論密度を用い求めた各相の質量分率を表5に示す。
尚、ヘマタイトの面積分率は、EBSDの結果から求めてもよい。あるいは、SEMの反射電子像のコントラストからヘマタイトと同定された領域の面積率として求めることができる。または、粉末X線回折−リートベルト(Rietvelt)法によって求めることもできる。
[還元率の評価]
試料(1)〜(5)の焼結タブレットから切り出した小片50mgを、Ar雰囲気で900℃まで加熱し、900℃到達後にAr−22.5%CO−22.5%CO雰囲気で還元処理をしながら熱重量測定を行った。熱重量曲線から、還元開始前の還元率を0%、還元処理し、重量がほぼ平衡に達した時点の還元率を100%として求めた還元曲線を図19に示す。図20は還元開始から10分間の還元曲線の拡大図である。これらの還元曲線から求めた還元開始4分後の還元率RI4minを表6に示す。

特許文献3(特開2018−179691号公報)の知見から、被還元性は、Feの割合が高く、且つSFCA−I相が多い順、すなわち、試料(1)>(3)>(2)の順に良いことが予測されていたが、実際には、図18、図19、表6に示すように、還元速度は試料(3)>(2)>(1)の順番であった。これは、試料(1)のSFCA−Iは針状組織ではなく柱状が多く、微細気孔が少ないためと考えられる。
焼結鉱の局所還元率は簡易には、各領域に含まれるFe相(ヘマタイト相)の相分率及びカルシウムフェライトの形態別相分率と各相の還元指数の積の和で予測される。
ヘマタイトの相分率はリートベルト法で求めた。
表4及び表5に示す試料(1)〜(5)の形態別相分率から、表6に示す還元開始4分後の還元率RI4minを下記予測式(I)により求めることができる。
RI4min=Σ×Fe×R+Y ・・・(I)
ここで、Wは形態別の相分率(mass%)、Feは各相の鉄濃度(mass%)、Rは各相の還元指数、Yは定数である。FeはSEM−EDSあるいはEPMA分析で求めることができる。
なお、還元率は最も試料間の差が見えた還元開始4分後の値を用いたが、所望の反応条件や測定に用いる装置により最適化してもよい。
試料(1)〜(5)の相分率及び還元率からパラメータRおよびYを求めることで、式(I)は式(II)のように表せる。尚、試料(1)〜(5)及び下記の実施例1で評価した試料aのヘマタイトの相分率は、19.7〜23.6mass%の範囲であったので、概ね一定とみなし、式(I)におけるヘマタイト相の項は、定数Yに含めて、ヘマタイト相以外の相のRおよびYを重回帰分析により求めた。相関係数Rは0.968であった。尚、試料中に含まれる相の還元速度を比較するとヘマタイト相が最も速く、カルシウムフェライト相はそれよりも遅いため、カルシウムフェライト相のRは負になっている。式(I)において、ヘマタイト相のRもパラメータとして重回帰分析を行った場合は、各Rは正の値となり、その値が大きいほど還元速度が速い相であると、考えられる。式(II)の負の係数は、その絶対値が小さいほど、還元速度が速い相であると推定される。
RI4min(%)=W針SFCA−I×Fe針SFCA−I×(−0.314)+W針SFCA×Fe針SFCA×(−0.236)+W柱SFCA−I×Fe柱SFCA−I×(−0.354)+W柱SFCA×Fe柱SFCA×(−0.640)+71.6 ・・・(II)
<実施例1>
試料(5)と同じ組成、作製条件で作製したタブレットを1100℃から1250℃まで200℃/minで昇温し、1100℃まで66.7℃/minで冷却して得た、ヘマタイト相分率19.7mass%、表5に示す形態毎のカルシウムフェライト分率を有する焼結体(試料a)の還元率測定を試料(1)〜(5)と同様の条件で行い、図21に示す還元曲線を得た。還元開始4分後の還元率は46.5%であり、本開示による還元率予測式(II)で求めた還元率は45.1%であった。
以上の知見から、焼結鉱の組織から針状および柱状のカルシウムフェライトの形態別の割合を求め、さらにEBSD法で、カルシウムフェライトの形態別に相分率を求めることで、焼結鉱の(局所)被還元性を従来よりも精度よく予測できると考えられる。
以上、本開示に係る焼結鉱の被還元性評価方法について説明したが、本開示に係る焼結鉱の被還元性評価方法は、上記実施形態に限定されない。
焼結鉱の組織形態の分類は、断面の光学顕微鏡像あるいは走査型電子顕微鏡像を用いることができる。針状カルシウムフェライトを識別するのに十分な空間分解能があれば、X線CTによる3次元像を用いてもよい。
また、上記実施形態では、局所還元率の比較にAr−CO−CO混合ガスを用いた900℃における等温還元曲線を用いたが、所望の焼結鉱性能の評価が可能であれば、他の温度雰囲気条件や測定方法を用いてもよい。

Claims (4)

  1. 多成分カルシウムフェライト相であるSFCA相の焼結体及び前記SFCA相とは結晶構造が異なる多成分カルシウムフェライト相であるSFCA−I相の焼結体を準備する工程と、
    前記SFCA相の焼結体から前記SFCA相の菊池パターンを、及び前記SFCA−I相の焼結体から前記SFCA−I相の菊池パターンを、それぞれEBSDによって取得する工程と、
    前記SFCA相及び前記SFCA−I相のそれぞれの結晶構造情報、並びに前記SFCA相の菊池パターン及び前記SFCA−I相の菊池パターンを含むデータベースを作成する工程と、
    評価対象である焼結鉱の一部の領域について、EBSDによって菊池パターンを取得し、前記データベースに基づいて前記領域におけるSFCA相とSFCA−I相とが区別された結晶方位マップを取得する工程と、
    を含む焼結鉱の観察評価方法。
  2. 前記結晶方位マップに基づいて、前記領域における前記SFCA相及び前記SFCA−I相のそれぞれの相分率を求める工程をさらに含む、請求項1に記載の焼結鉱の観察評価方法。
  3. 前記領域において少なくとも1種の元素についての元素分布を取得する工程と、
    前記領域における前記結晶方位マップと前記元素分布とを対比することにより、前記結晶方位マップにおいて、前記元素分布を取得した前記元素が存在している部分を特定する工程と、
    をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の焼結鉱の観察評価方法。
  4. 評価対象である焼結鉱を準備する工程と、
    前記焼結鉱の一部の領域について、EBSDによって菊池パターンを取得する工程と、
    前記焼結鉱の菊池パターンから、請求項1に記載の焼結鉱の観察評価方法によりSFCA相とSFCA−I相とが区別された結晶方位マップを取得する工程と、
    前記SFCA相及び前記SFCA−I相を、形態に基づいて、針状SFCA相、柱状SFCA相、針状SFCA−I相、及び柱状SFCA−I相にさらに区別する工程と、
    前記焼結鉱の前記針状SFCA相、前記柱状SFCA相、前記針状SFCA−I相、前記柱状SFCA−I相、及びヘマタイト相の各相の相分率を求める工程と、
    前記焼結鉱の前記各相のFe濃度を測定する工程と、
    前記焼結鉱の前記各相の前記相分率及び前記Fe濃度から、前記焼結鉱の被還元性を予測する工程と、
    を含む、焼結鉱の被還元性評価方法。
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