JP2020167829A - インバータ装置および車両制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
このインバータ装置1Aは、強電回路となるインバータ1と、このインバータ1を制御する制御部9を備え、車体に搭載される。インバータ1はバッテリ2より電力が供給され、内部では、電力を平滑コンデンサ5で安定化し、制御部9内の演算回路部8で計算されたトルクに対応した電流を流すために、ゲート駆動回路7が半導体からなるスイッチング素子(例えばIGBT)3を適切に駆動する。
モータ駆動電流は、電流センサ4で計測され、電流監視回路6で適正な電流になっているか判断し、演算回路部8で制御される。演算回路部8は、計算された電流指令値より、計測された電流が小さければ、さらに指令電流を大きくし、計算された電流指令値より、計測された電流が大きければ、さらに指令電流を小さくすることによってモータ電流を制御する。
Iu=Acos(θ)
Iv=Acos(θ+120°)
Iw=Acos(θ−120°)
と示すことができる。Aは電流の実効値、θは位相角である。
ここでモータ回転中に、図7において、たとえばIuを100(Arms)流す場合、位相角0〜180°では6個のスイッチング素子3のうち、スイッチング素子3-up が受け持ち、位相角180〜360°ではスイッチング素子3-vnが受け持つ。したがって、たとえば、スイッチング素子3のひとつは、実効値の1/2、つまり50(Arms)流れていると考えて損失を計算することができる。他のすべてのスイッチング素子は350(Arms)流れているとしてよい。
したがって、必要以上の出力のスイッチング素子3を選択せずに、登坂性能を確保できる運用方法を確立する必要がある。
特許文献1に記載の技術では、集中した電流の位相をずらして8%の改善を得ている。しかし、もう少し大きな改善を行いたい。
前記制御部9は、前記モータ10を始動させた直後など、前記モータ10の回転数が閾値よりも低い場合に、電流制限をかけ、前記スイッチング素子3の使用状況を示す定められた事項が設定条件を満たす場合は、前記電流制限を緩和する。
このように、始動直後のモータ10の回転数が低い場合に、基本的には電流制限を行い、条件充足時のみ制限を緩和するため、一部の相のスイッチング素子3に電流が偏ってそのスイッチング素子3が損傷することが防止でき、またその防止の制御によってトルクが不足することが改善できる。
過電流によるスイッチング素子3の損傷は、この素子3の発熱によりある程度温度上昇した場合に生じる。このため、電流制限を緩和する判断のための、スイッチング素子3の使用状況を示す事項としてスイッチング素子3の温度を用いることで、電流制限の緩和が適切に行える。また、温度であると、その測定が容易に行える。
スイッチング素子3はパッケージ内に組み込まれていて、その温度を直接に測定することは困難であるが、インバータ1の冷却水の温度は容易に測定できる。冷却水の温度はスイッチング素子3の温度を精度良く示すものではないが、スイッチング素子3の温度との相関関係が強く、またスイッチング素子3を冷却する能力を示す指標ともなる。このため、冷却水の温度が低い場合は電流制限を緩和することで、簡単に電流制限の緩和の制御が行える。
インバータ1の構成によっては、スイッチング素子3の温度を測定する温度センサを設けることができる。この温度センサは、例えば個々のスイッチング素子3のカバー等に温度の関知部が設けられていてもよい。個々のスイッチング素子3の温度を温度センサで測定できる場合は、この温度センサの測定温度を用いることで、より一層精度良く、電流制限の緩和の制御が行える。
一般的に、スイッチング素子3やその他の電気素子は、瞬間的な電流など、短時間の電流であれば、ある程度大きな電流を流すことができる。また、時間の計測は容易に行える。そのため、経過時間を制限緩和の条件とすることで、電流制限の適切な緩和を簡単に行うことができる。
スイッチング素子3の損傷に影響する複数の事項を判断することで、確実な損傷を防止を図りながら、より多くの場合に電流制限が緩和されるようにしてトルク不足の改善効果を高めることができる。また、トルク不足の改善の程度を同じとすれば、より一層確実な損傷防止が図れる。
車両の走行駆動用のモータ10の制御を行うインバータ装置1Aにこの発明を適用することで、この発明における、一部の相のスイッチング素子3に電流が偏ってそのスイッチング素子3が損傷することが防止でき、またその防止の制御によってトルクが不足することが改善できると言う効果が、効果的に発揮される。
この発明の実施形態を図1ないし図6共に説明する。
図1は、インホイールシステムを搭載した電気自動車の一例の概念図である。この電気自動車におけるインバータ装置1Aに、この実施形態に係るインバータ装置が適用されている。この電気自動車は、後輪となる左右の車輪22がそれぞれモータ10により個別に駆動される駆動輪とされ、前輪となる車輪21が操舵装置23によって操舵される従動輪となる後輪二輪駆動車である。モータ10は、インホイールモータ装置を構成するモータである。モータ10は、車体20上に設置されたモータであってもよい。各モータ10は交流モータであり、三相の同期モータが用いられている。操舵装置23は、ステアリングホイール等の操舵操作手段24によって操作される。各車輪21,22にブレーキ25が設けられ、ブレーキペダルからなるブレーキ装置手段16の踏み込み操作等に従って制動を行う。
図2は、1軸分のインバータ装置1Aの基本構造である。図1に示したインバータ装置1Aは、この基本構造を2組備えている。
図2において、インバータ装置1Aは、インバータ1と、このインバータ1を制御する制御部9とを有する。
インバータ1は、各相U,V,W毎の上下のスイッチング素子3(Up,Un,Vp,Vn,Wp,Wn)で構成されるブリッジ回路であり、バッテリ2の直流電流を前記スイッチング素子3の開閉により疑似的な正弦波状の3相の交流電流に変換する。なお、個々のスイッチング素子3を区別する場合は、参照符号として、「3」の後に前記Up,Un,Vp,Vn,Wp,Wnの符号を付して「3-up 」のように示す。スイッチング素子3には、IGBTやMOS−FET等の半導体スイッチング素子が用いられる。また、バッテリ2と並列に平滑用のコンデンサ5が接続されている。インバータ1の各相の出力端はモータ10の各相の入力端に接続される。
制御部9は、演算回路部8、ゲート駆動回路7、および電流監視回路6を有する。演算回路部8は、その基本制御部31により、上位のVCU14(図1)から与えられたトルク指令に対応する電流を流すように、ゲート駆動回路7に指令を与え、ゲート駆動回路7がスイッチング素子3を開閉させる。インバータ1から出力されてモータ10を流れるモータ駆動電流は、電流センサ4で計測され、電流監視回路6で適正な電流になっているか判断し、演算回路部8で制御される。演算回路部8の基本制御部31は、計算された電流指令値より、計測された電流が小さければ、さらに指令電流を大きくし、計算された電流指令値より、計測された電流が大きければ、さらに指令電流を小さくする電流フィフードドバック制御によってモータ電流を制御する。
このような基本構成のインバータ装置1において、その制御部9の演算回路部8に、電流制限部32が設けられている。電流制限部32は、モータ10を始動させた直後など、モータ10の回転数が閾値よりも低い場合に、電流制限をかけ、スイッチング素子3の使用状況を示す定められた事項が設定条件を満たす場合は、前記電流制限を緩和する。電流制限の条件は制限条件設定部33に設定され、緩和の条件は緩和条件設定部34に設定されている。緩和の条件は、前記スイッチング素子3の使用状況を示す定められた事項と、その事項に関する前記設定条件である。
前記温度に関する事項は、スイッチング素子の温度を測定する温度センサの測定温度であってもよく、この測定温度が素子用の設定温度よりも低い場合は前記電流制限を緩和する。
図3は、水冷したスイッチング素子3の簡単な原理図である。スイッチング素子3は、金属材等からなる放熱器11に設置されている。放熱器11には裏面を覆う冷却水ジャケット13が設けられていて、この冷却水ジャケット13内の冷却水12に放熱器11の放熱フィン11aが浸漬されている。スイッチング素子3で損失となった熱は、放熱器11に熱伝導し、冷却水12で冷却される。冷却水12は、図示しない循環手段で循環経路内を循環させられ、循環経路中にラジエータ(図示せず)で冷却される。
各スイッチング素子3は、個別に、または複数のスイッチング素子3を纏めて、放熱器11と共にパッケージ(図示せず)内に収められ、スイッチング素子モジュール3Aとされる。前記冷却水ジャケット13は、前記パッケージの外皮の一部であってもよい。
ここで、正確には、パッキング付きスイッチング素子3A内のスイッチング素子3からパッケージまでの熱抵抗、パッケージと放熱盤11との間の熱抵抗、放熱器11と冷却水12との間の熱抵抗、冷却水12の温度分布や流速、放熱器11内の熱伝導など考慮すべき点は多くあるが、説明の簡単のためや計算の簡単のために、スイッチング素子3で損失となった熱は全て冷却水12で冷却されるとし、一つのスイッチング素子3から冷却水12の熱抵抗をまとめてθs( ℃/w)とする。
モータ10の回転が、ある程度以上の回転数であって、電流が一定で熱的に平行な状態の場合、位相角が20°〜160°の間は、スイッチング素子3-up の温度は上昇し、その他のタイミングでは下降することを繰り返す。
モータ10の回転が、下がってくると、位相角が20°〜160°の間の、スイッチング素子3-up の温度は上昇が、ジャンクション温度の最大値Tjmax を超える可能性が出てくる。そのため、その場合はモータの回転数によって最大電流を下げる必要がある。そのような制限の一案を図4に示す。
この仕組みにより、スイッチング素子3のジャンクション温度の最大値T1max を超えない運用ができ、インバータの故障を防ぐことができる。
Imax 簡略化すると、一つのスイッチング素子3の損失Paと、Tw,Td,θsで決まる。
Td=Tjmax として、
Paは、ほぼ相電流Iに比例し、比例係数をKpとすると、
Pa=Kp・Iとなる。
Pa=ΔT/θsであるから、
Td−Tw=Kp・I・θs
I=(Td−Tw)/(Kp・(θs)
となる。
Id=150、TW=60、Kp=1、θs=0.3とすると、
Imax =I=300(Arms )
Ires =106(Arms )
となる。
ここで、車両発進時、冷却水水温は上昇していないと仮定して、たとえば30℃であるとすると、
Imax =I=400(Arms )
Ires =142(Arms )
ただし、Imax は、いずれ水温が上昇し、Tw=60としなければならないとして、
Imax =300(Arms )
Ires =142(Arms )
となり、
Rres =2.11となり、2.82/2.11から、この例では、134%まで若干改善する。
または、水温計がない場合は、停止時にスイッチング素子3に付属の温度センサ(図示せず)の測定値を、Twとして、Ires を決めることができる。この場合、スイッチング素子3の温度上昇に伴い、スイッチング素子3に付属の温度センサの測定値は急上昇するが、短時間であれば、初期の冷却水水温Twの値を使用しても差し支えない。短時間とは、例えば、冷却水12が循環経路を1周回る時間とする。その時間は言い換えれば、全冷却水量を流量で割った時間である。
図6にスイッチング素子モジュール3Aの例を示す。6個のスイッチング素子3は、それぞれ、放熱器11の1/6のエリアを使用して、放熱を行う。上記最悪条件の場合、スイッチング素子3-un 、スイッチング素子3-vp は電流が流れていないため、スイッチング素子3-up はその2つの放熱器エリアも使用できる。ただし、スイッチング素子3-up の真下にあるわけではないので、熱抵抗が大きく、放熱器11の3/6の全てが有効に使用できるわけではない。ここで仮に熱抵抗が2倍と仮定しても、放熱器11の2/6のエリアが利用できるのと同じ効果があり、θsは1/2になる。
Imax =300(Arms )
Ires =106 (Arms )
に対し、
Ires =204(Arms )
Rres =1.47となり、2.82/1.47から、この例では、192%まで改善する。
Rres =1.10
Ires =273(Arms )
となり、さらにこれに、次の時間による電流制限の緩和を利用して、電流制限をさらに緩和することができる。
上記最悪条件であるとしても、短時間であれば、Imax まで電流を流すことができる。すなわち、Rres の初期値は1でも構わない。車両の発進時には、徐々にモータ回転数が上昇し短時間で上記3相交流の周波数はFnに達する。
ただし、急な上り坂や、段差等で車両が前進できなかった場合は、モータ10はロック状態になり、電流がImax では短時間でジャンクション温度がTjmax を超え、スイッチング素子3が故障する。
したがって、通電開始またはある程度の電流値を超えてからの時間で電流制限を行うことが有効である。
または点線のような関数で制限をかけてもよい。
1A…インバータ装置
2…バッテリ
3…スイッチング素子
5…コンデンサ
6…電流監視回路
7…ゲート駆動回路
8…演算回路部
9…制御部
10…モータ
14…VCU
20…車体
31…基本制御部
32…電流制限部
33…限条件設定部
34…緩和条件設定部
Claims (7)
- 直流電流を駆動対象のモータの形式に応じた交流電流に、各相の半導体からなるスイッチング素子の開閉によって変換するインバータと、このインバータを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記モータを始動させた直後など、前記モータの回転数が閾値よりも低い場合に、電流制限をかけ、前記スイッチング素子の使用状況を示す定められた事項が設定条件を満たす場合は、前記電流制限を緩和するインバータ装置。 - 請求項1に記載のインバータ装置において、前記スイッチング素子の使用状況を示す定められた事項として、前記スイッチング素子の直接または間接的に測定される温度に係る事項を含むインバータ装置。
- 請求項2に記載のインバータ装置において、前記インバータを冷却する冷却水の温度が設定温度よりも低い場合は前記電流制限を緩和するインバータ装置。
- 請求項2に記載のインバータ装置において、前記スイッチング素子の温度を測定する温度センサの測定温度が設定温度よりも低い場合は前記電流制限を緩和するインバータ装置。
- 請求項1に記載のインバータ装置において、前記スイッチング素子の使用状況を示す定められた事項として、通電開始からの、または電流値が設定値を超えてからの経過時間を含むインバータ装置。
- 請求項1に記載のインバータ装置において、前記スイッチング素子の使用状況を示す定められた事項が設定条件を満たす場合として、前記インバータを冷却する冷却水の温度が設定温度よりも低い場合、前記スイッチング素子の温度を測定する温度センサの測定温度が設定温度よりも低い場合、および経過時間に係る設定事項を満たす場合のうちの複数の場合を含むインバータ装置。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のインバータ装置を搭載し、前記モータが車両の走行駆動用のモータである車両制御装置。
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JP2013110926A (ja) * | 2011-11-24 | 2013-06-06 | Ntn Corp | モータの制御装置 |
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- 2019-03-29 JP JP2019065618A patent/JP2020167829A/ja active Pending
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2020
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