JP2020167115A - 酸化物超電導線材 - Google Patents

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真司 藤田
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Abstract

【課題】絶縁層の絶縁性能の低下を抑制できる酸化物超電導線材を提供する。【解決手段】酸化物超電導線材10は、基材1および超電導層3を有する超電導積層体5と、超電導積層体5を覆う安定化層6と、安定化層6を覆う絶縁層7と、を備える。絶縁層7は、絶縁テープ8を安定化層6の外面6aに巻き付けることにより形成される。安定化層6の外面6aの表面粗さRzは2.5μm〜10μmである。絶縁層7の厚さは15μm〜50μmである。【選択図】図1

Description

本発明は、酸化物超電導線材に関する。
酸化物超電導線材は、例えば、基材と、中間層と、酸化物超電導層と、保護層とを有する超電導積層体の外周面に安定化層が形成されて構成される。酸化物超電導線材は、安定化層の外周面に絶縁層が形成されることがある。絶縁層は、例えば、絶縁テープで構成される(例えば、特許文献1を参照)。
特許第5501541号公報
しかしながら、前述の酸化物超電導線材では、絶縁テープが破損、位置ずれすることなどにより、絶縁層の絶縁性能が低くなる可能性があった。
本発明の一態様は、上記事情に鑑みてなされたものであり、絶縁層の絶縁性能の低下を抑制できる酸化物超電導線材を提供することを課題とする。
本発明の一態様は、基材および超電導層を有する超電導積層体と、前記超電導積層体を覆う安定化層と、前記安定化層を覆う絶縁層と、を備え、前記絶縁層は、絶縁テープを前記安定化層の外面に巻き付けることにより形成され、前記安定化層の外面の表面粗さRzは、2.5μm〜10μmであり、前記絶縁層の厚さは、15μm〜50μmである、酸化物超電導線材を提供する。
安定化層の外面の表面粗さRzは2.5μm以上であるため、前記外面の突起(微小突起)が絶縁テープに当接することによってずれ止め突起として作用し、絶縁テープに位置ずれが起こりにくくなる。よって、絶縁層は高い絶縁性能(絶縁耐性)を確保できる。前記外面の表面粗さRzは10μm以下であるため、前記突起の突出高さを抑制し、前記突起の圧迫による絶縁テープの破損、および局所的な薄膜化を防ぐことができる。よって、絶縁層の絶縁耐性の低下を抑制できる。
絶縁層の厚さは15μm以上であるため、絶縁層を構成する絶縁テープに十分な機械的強度(例えば、引張強度)を与えることができる。そのため、絶縁層の形成にあたって、絶縁テープを破損しにくくすることができる。よって、絶縁層は高い絶縁性能(絶縁耐性)を確保できる。絶縁層の厚さは50μm以下であるため、この酸化物超電導線材を用いた超電導コイルにおける電流密度の低下を抑制することができる。
前記安定化層の外面の表面粗さRaは、0.3μm〜1μmであることが好ましい。
前記絶縁テープは、ポリイミドで形成されることが好ましい。
前記絶縁層は、前記絶縁テープを前記安定化層の外面に二重ラップ巻きにより巻き付けることにより形成されることが好ましい。
本発明の一態様によれば、絶縁層の絶縁性能の低下を抑制できる。
一実施形態の酸化物超電導線材を模式的に示す断面図である。 絶縁層を形成する方法の一例を説明する模式図である。 図1の酸化物超電導線材を用いた超電導コイルの斜視図である。 図1の酸化物超電導線材を用いた超電導コイルを模式的に示す断面図である。
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
[酸化物超電導線材](第1実施形態)
図1は、第1実施形態の酸化物超電導線材10を模式的に示す断面図である。酸化物超電導線材10は、超電導積層体5と、安定化層6と、絶縁層7とを備える。超電導積層体5は、基材1上に中間層2を介して酸化物超電導層3および保護層4が形成された構造を有する。詳しくは、超電導積層体5は、テープ状の基材1の一方の面に、中間層2と酸化物超電導層3と保護層4がこの順に積層された構成を有する。
Y方向は、酸化物超電導線材10の厚さ方向であり、基材1、中間層2、酸化物超電導層3、保護層4等の各層が積層される方向である。X方向は、酸化物超電導線材10の幅方向であり、酸化物超電導線材10の長手方向および厚さ方向に直交する方向である。
基材1は、テープ状であり、例えばハステロイ(登録商標)等の金属で形成されている。
中間層2は、例えば、基材1側から、拡散防止層、ベッド層、配向層、キャップ層等を備える。拡散防止層は、基材1の成分の一部が拡散し、不純物として酸化物超電導層3側に混入することを抑制する機能を有する。ベッド層は、基材1と酸化物超電導層3との界面における反応を低減し、その上に形成される層の配向性を向上させる。配向層は、キャップ層の結晶配向性を制御する。キャップ層は、結晶粒が面内方向に自己配向し得る材料からなる。
酸化物超電導層3は、酸化物超電導体から構成される。酸化物超電導体としては、特に限定されないが、例えば一般式REBaCu(RE123)で表されるRE−Ba−Cu−O系酸化物超電導体が挙げられる。希土類元素REとしては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luのうちの1種又は2種以上が挙げられる。
保護層4は、事故時に発生する過電流をバイパスしたり、酸化物超電導層3と保護層4の上に設けられる層との間で起こる化学反応を抑制する等の機能を有する。保護層4の材質としては、例えば銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、金と銀との合金、その他の銀合金、銅合金、金合金などが挙げられる。
基材1、中間層2、酸化物超電導層3および保護層4の構成は、公知技術を適用できる。
安定化層6は、超電導積層体5の外面全体を覆って形成されている。安定化層6は、酸化物超電導層3が常電導状態に転移した時に発生する過電流を転流させるバイパス部としての機能を有する。安定化層6の構成材料としては、銅、銅合金(例えばCu−Zn合金、Cu−Ni合金等)、アルミニウム、アルミニウム合金、銀等の金属が挙げられる。安定化層6は、めっき(例えば電解めっき)によって形成することができる。
安定化層6の外面6aの表面粗さRz(JIS B 0601−2001に規定されている最大高さ)は、2.5μm〜10μmである。安定化層6の外面6aの表面粗さRzは2.5μm以上であるため、外面6aの突起(微小突起)が絶縁テープ8(後述)に当接することによってずれ止め突起として作用し、絶縁テープ8に位置ずれが起こりにくくなる。よって、絶縁層7は高い絶縁性能(絶縁耐性)を確保できる。例えば、絶縁テープ8が二重ラップ巻き(図2参照)されている場合には、絶縁テープ8の幅方向の位置がずれると、その部分で絶縁テープ8が一重となって絶縁耐性が低下したり、安定化層6が露出してしまうことが考えられるが、外面6aの表面粗さRzを前記範囲とすることで、このような絶縁耐性の低下や安定化層6の露出を抑制できる。
安定化層6の外面6aの表面粗さRz(最大高さ)は10μm以下であるため、外面6aの突起の突出高さを抑制し、外面6aの突起の圧迫による絶縁テープ8の破損、および局所的な薄膜化を防ぐことができる。よって、絶縁層7の絶縁耐性の低下を抑制できる。
安定化層6は、外面6aに研磨紙などにより研磨を施すことで表面粗さRzを前述の範囲にすることができる。
安定化層6の外面6aの表面粗さRa(JIS B 0601−2001に規定されている算術平均粗さ)は、0.3μm〜1μmが好ましい。安定化層6の外面6aの表面粗さRaが0.3μm以上であると、絶縁テープ8に位置ずれが起こりにくくなるため、絶縁層7は高い絶縁性能(絶縁耐性)を確保できる。安定化層6の外面6aの表面粗さRaは1μm以下であると、外面6aの突起の突出高さを抑制できるため、絶縁テープ8の破損、および局所的な薄膜化を抑制し、絶縁耐性が低下するのを回避できる。
安定化層6は、外面6aに研磨紙などにより研磨を施すことで表面粗さRaを前述の範囲にすることができる。
絶縁層7は、安定化層6の外面6aの全体を覆って形成されている。絶縁層7は、絶縁性材料(例えば、絶縁性の樹脂)で構成される。絶縁性の樹脂としては、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリビニルブチラール、およびポリビニルホルマールなどが挙げられる。なかでも、ポリイミドおよびフッ素樹脂は、電気絶縁性等の特性に優れるため好ましい。
絶縁層7は、前記絶縁性材料で構成される絶縁テープ8を用いて形成される。絶縁層7は、例えば、絶縁テープ8が安定化層6の外面6aに巻き付けられて構成される。絶縁テープ8の巻き形態としては、ラップ巻き、突合せ巻きなどが挙げられる。絶縁テープ8は、安定化層6の外面6aに縦添えして形成してもよい。ラップ巻きは、テープの側縁を含む領域が互いに重なるように巻き付ける巻き方である。突合せ巻きとは、テープが互いに重ならないように側縁どうしを突き合わせて巻き付ける巻き方である。
図2は、絶縁層7を形成する方法の一例を説明する模式図である。図2に示すように、この例の方法では、絶縁テープ8のラップ巻きにより絶縁層7を形成する。絶縁テープ8は、側縁8aを含む重ね領域8bが互いに重なるように安定化層6の外面6aに巻きつけられる。重ね領域8bは、例えば、絶縁テープ8の幅の約1/2に相当する領域である。絶縁テープ8は、既に安定化層6に巻き付けられた絶縁テープ8の重ね領域8bに重ねられつつ巻き付けられる。一方の側縁8aを含む第1の重ね領域8b(8b1)は前の周回の重ね領域8bに重ねられるため、この領域では絶縁テープ8は二重に積層される。他方の側縁8aを含む第2の重ね領域8b(8b2)には、後の周回の重ね領域8bが重ねられるため、この領域でも絶縁テープ8は二重に積層される。よって、絶縁テープ8は、ほぼ全幅にわたって二重の積層構造を有する絶縁層7となる。このようなラップ巻きを「二重ラップ巻き」という。二重ラップ巻きは、絶縁テープ8間に隙間が生じにくく、しかも絶縁テープ8の積層厚さを抑えることができる。そのため、絶縁層7に高い絶縁性能(絶縁耐性)を確保し、かつ、超電導コイルにおける電流密度の低下を抑制することができる。
絶縁テープ8を安定化層6の外面6aに巻き付ける際には、絶縁テープ8に0.1〜0.3kgf(0.98〜2.94N)の引張張力を加えながら、絶縁テープ8を安定化層6の外面6aに巻回することが好ましい。引張張力を0.1kgf以上とすることで絶縁テープ8を安定化層6の外面6aとの間に隙間がないように巻回することができる。また、引張張力を0.3kgf以下とすることで絶縁テープ8は破損しにくくなる。
図1に示すように、絶縁層7の厚さT1は15μm〜50μmである。絶縁層7の厚さT1は15μm以上であるため、絶縁層7を構成する絶縁テープ8に十分な機械的強度(例えば、引張強度)を与えることができる。そのため、絶縁層7の形成にあたって、絶縁テープ8を破損しにくくすることができる。よって、絶縁層7は高い絶縁性能(絶縁耐性)を確保できる。絶縁層7の厚さT1は50μm以下であるため、酸化物超電導線材10を用いた超電導コイルにおける電流密度の低下を抑制することができる。
絶縁テープ8の厚さは7.5μm以上が好ましい。これによって、絶縁テープ8に十分な機械的強度(例えば、引張強度)を与えることができる。そのため、絶縁層7の形成にあたって、絶縁テープ8を破損しにくくし、絶縁層7に高い絶縁性能(絶縁耐性)を確保できる。絶縁テープ8の厚さは25μm以下が好ましい。これによって、酸化物超電導線材10を用いた超電導コイルにおける電流密度の低下を抑制することができる。
[超電導コイル]
図3は、酸化物超電導線材10を用いた超電導コイル100の斜視図である。図4は、超電導コイル100を模式的に示す断面図である。図4は、図3のI−I断面を示す図である。
図3に示すように、超電導コイル100は、酸化物超電導線材10が厚さ方向に積層されて多数回巻回されて構成されたパンケーキ型の多層巻きコイルである。図4に示すように、超電導コイル100は、酸化物超電導線材10と金属テープ20とが積層された積層体30と、含浸樹脂層40とを備える。
含浸樹脂層40は、積層体30に含浸されるとともに、積層体30の外表面を覆っている。含浸樹脂層40を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
超電導コイル100は、例えば、樹脂(エポキシ樹脂等)を塗布した酸化物超電導線材10と金属テープ20とを共巻きによりコイル化した後、加熱等により前記樹脂を硬化させる方法により製造することができる。超電導コイル100の製造方法としては、酸化物超電導線材10と金属テープ20とを共巻きによりコイル化した後、このコイルに減圧下で前記樹脂を含浸させ、加熱等により前記樹脂を硬化させる方法をとってもよい。
[実施形態の酸化物超電導線材が奏する効果]
絶縁層が絶縁テープで構成される酸化物超電導線材では、電流密度を低下させずに高い絶縁性能を得るのは難しい場合があった。しかし、実施形態の酸化物超電導線材10では、安定化層6の外面6aの表面粗さRzを2.5μm〜10μmとすることによって、絶縁テープ8の位置ずれ(例えば絶縁テープ8の幅方向の位置ずれ)を生じにくくし、かつ、絶縁テープ8の破損および局所的薄膜化を抑制できる。
実施形態の酸化物超電導線材10は、絶縁層7の厚さを15μm〜50μmとすることによって、電流密度を低下させることなく、絶縁テープ8に十分な強度を与えて破損しにくくすることができる。このように、実施形態の酸化物超電導線材10では、安定化層6の外面6aの表面粗さRzおよび絶縁層7の厚さを前述の範囲とすることによって、電流密度を良好とし、かつ、絶縁層7において優れた絶縁性能を確保することができる。
以下、酸化物超電導線材の試験結果について説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されない。
(試験例1〜5)
酸化物超電導線材を次のようにして作製した。ハステロイで構成されたテープ状の基材(厚さ75μm)の一方の面に中間層を形成した。中間層は、拡散防止層、ベッド層、配向層およびキャップ層をこの順に積層した構成である。中間層の上に、GdBCOで構成される酸化物超電導層を形成した。酸化物超電導層の上に、Agで構成される保護層を形成して超電導積層体を得た。超電導積層体の外面に、銅で構成される安定化層(厚さ20μm)を電界めっきにより形成し、幅4mmの超電導線材本体を得た。
研磨紙を用いて安定化層の外面に研磨を施すことによって、この外面の表面粗さRz(最大高さ)、および表面粗さRa(算術平均粗さ)を表1に示す範囲とした。
安定化層の外面に、絶縁テープ(ポリイミドテープ。厚さ12.5μm)を二重ラップ巻き(図2参照)により巻き付けることによって絶縁層(厚さ25μm)を形成した。これにより、酸化物超電導線材を得た。
前記酸化物超電導線材と、銅で構成される金属テープ(厚さ20μm、幅3mm)とを共巻きによりコイル化した。この際、酸化物超電導線材に加えた張力は5kgf(49N)であった。酸化物超電導線材と金属テープとの間に高電圧(DC1kV)を加え、絶縁が保たれているか否かを調べた。結果を「絶縁性」として表1に示す。絶縁が保たれた場合を「〇(Good)」とし、絶縁性が低くなった場合を「△(Not Very Good)」とする。
コイル化のため酸化物超電導線材をロール間で搬送する際に、酸化物超電導線材に絶縁テープのずれが生じているか否かを目視にて確認した。結果を「テープずれ」として表1に示す。絶縁テープのずれが起こらなかった場合を「〇(Good)」とし、絶縁テープのずれが起きた場合を「△(Not Very Good)」とする。
Figure 2020167115
表1に示すように、試験例1〜4では絶縁が維持できたことが確認された。試験例5では、電圧低下(絶縁層の絶縁破壊)が起こった。試験例2〜5ではテープずれは起こらなかった。試験例1においては、テープずれが確認された。このように、安定化層の表面粗さRzが2.5〜10μmである試験例2〜4では、絶縁性が確保され、かつテープずれは起こらなかった。
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、超電導コイルの形状は特に限定されない。超電導コイルは、円環状に限らず、レーストラック状、矩形状などであってもよい。絶縁層は、安定化層の外面の少なくとも一部を覆っていればよいが、全体を覆うのが好ましい。
1…基材、3…酸化物超電導層、5…超電導積層体、6…安定化層、6a…外面、7…絶縁層、8…絶縁テープ、100…超電導コイル。

Claims (4)

  1. 基材および超電導層を有する超電導積層体と、
    前記超電導積層体を覆う安定化層と、
    前記安定化層を覆う絶縁層と、を備え、
    前記絶縁層は、絶縁テープを前記安定化層の外面に巻き付けることにより形成され、
    前記安定化層の外面の表面粗さRzは、2.5μm〜10μmであり、
    前記絶縁層の厚さは、15μm〜50μmである、酸化物超電導線材。
  2. 前記安定化層の外面の表面粗さRaは、0.3μm〜1μmである、請求項1記載の酸化物超電導線材。
  3. 前記絶縁テープは、ポリイミドで形成される、請求項1または2に記載の酸化物超電導線材。
  4. 前記絶縁層は、前記絶縁テープを前記安定化層の外面に二重ラップ巻きにより巻き付けることにより形成される、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の酸化物超電導線材。
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