そこでこの発明は、コネクタ形状の違いによる影響を極力受けずに固定部分の損傷防止ができるようにすることを主な目的とする。
そのための手段は、第1コネクタ、第2コネクタ及びコネクタホルダを有し、前記第1コネクタと前記第2コネクタが互いに嵌め合わされて接続されるものであり、前記コネクタホルダには、前記第1コネクタを固定する第1コネクタ保持部が形成されたコネクタ保持構造であって、前記第1コネクタ保持部に固定された前記第1コネクタに前記第2コネクタが嵌合された状態において、前記第2コネクタの端部に対して当接して前記第2コネクタの変位を規制する当接部が前記コネクタホルダに形成されたコネクタ保持構造である。
この構成では、第1コネクタに嵌合した第2コネクタに対してコネクタホルダからもぎ取られるような傾いた力が作用した場合に、コネクタホルダの当接部が、傾いた力が作用している第2コネクタの端部を支えて、第2コネクタがよじれたりもぎ取られたりする方向にさらに変位することを抑制する。これによって、第1コネクタ保持部や第1コネクタ保持部の近傍にかかる荷重が軽減される。この結果、第1コネクタ保持部や第1コネクタ保持部の近傍の損傷が防止できる。
また、当接部に当たる部分である第2コネクタの端部は、第2コネクタに形成されるのであって、第1コネクタにおける電線が延びている後端面に形成されるのではない。このため、当接部に当たる部分は、第1コネクタの後端面に形成される場合と比べて、第1コネクタの外周面よりも外側の領域に対応する比較的広い範囲に形成できる。したがって、コネクタ形状の違いによる影響を極力受けにくく、コネクタの形状の違いに対応しやすいコネクタ保持構造が得られる。
この発明の態様として、前記第2コネクタは前記コネクタホルダに対して非固定であるとよい。非固定とは、第2コネクタとコネクタホルダが互いに嵌合等されずに、第2コネクタが第1コネクタに対してのみ嵌合されることである。
この構成では、第2コネクタはコネクタホルダに対して一部が当接するだけであるので、第2コネクタに傾いた力が作用した場合でも、第2コネクタとコネクタホルダは相対移動する。換言すれば、第2コネクタとコネクタホルダとの間には破壊につながるような負荷は生じにくく、固定部分の損傷防止に貢献する。
この発明の態様として、前記第1コネクタに対する前記第2コネクタの嵌合方向と、前記当接部に対する前記第2コネクタの当接方向は同一であるとよい。
この構成では、第2コネクタを嵌合する方向と当接部に当接する方向が同一であるので、第1コネクタに対する第2コネクタの嵌合方向と当接部に対する第2コネクタの当接方向が互いに異なる方向である場合に比して、前述のように第1コネクタ保持部や第1コネクタ保持部の近傍の損傷を防止する当接部と第2コネクタにおける第1コネクタ保持部側の端部の構成は、簡素にできる。
この発明の態様として、前記第1コネクタ保持部が、前記第1コネクタを前記コネクタホルダに沿って一方向に相対移動させて固定するものであるとともに、前記第1コネクタ保持部に対する前記第1コネクタの固定方向と、前記第1コネクタに対する前記第2コネクタの嵌合方向が同一であるコネクタ保持構造としてもよい。
この構成では、第1コネクタの固定方向と、第1コネクタに対する第2コネクタの嵌合方向は同一であるので、第1コネクタの固定方向と、第1コネクタに対する第2コネクタの嵌合方向が互いに異なる方向である場合に比して、前述のように第1コネクタ保持部や第1コネクタ保持部の近傍の損傷を防止する当接部と第2コネクタにおける第1コネクタ保持部側の端部の構成は、簡素にできる。
この発明の態様として、前記コネクタホルダに、前記第1コネクタを隔てて前記第1コネクタ保持部と反対側に前記第1コネクタ保持部側から延びる延設部が形成され、前記当接部が、前記延設部における前記第1コネクタを隔てて前記第1コネクタ保持部と反対側であって、前記第1コネクタの外周面から離れた位置に形成されたコネクタ保持構造であってもよい。
この構成では、延設部に形成された当接部は、第1コネクタにおける第1コネクタ保持部と反対側であって第1コネクタの外周面から離れた位置で、第2コネクタの端部に当接する。つまり、当接部の位置は第1コネクタ保持部の近傍位置から離されて、当接部と第1コネクタ保持部との間の距離は大きく取れる。このため、第2コネクタに傾いた力が作用した際の当接部による荷重の支持が効果的に行える。
前記延設部は枠状であるとよい。枠状とは、開放端のない閉じた形状のことであり、枠状の延設部は、第1コネクタの外周を周方向に囲む空間を内側に有することになる。延設部は、方形の枠状のほか、例えば円弧形状を含む枠状など方形以外の枠状であってもよい。
延設部が開放端を有しないので、当接部の強度は高い。このため当接部は、第2コネクタにおける第1コネクタ保持部側の端部を強力に支えることができる。
前記延設部が枠状である場合、枠状の延設部は、前記第1コネクタを挿通可能な大きさであるとよい。
枠状の延設部は第1コネクタの挿通を許容するので、第1コネクタをコネクタホルダに対して固定する際に、第1コネクタが長い電線を有していいても、作業性が良い。
この発明の態様として、前記当接部が当接する前記第2コネクタの端部に、前記第1コネクタ保持部と反対側に突出する嵩上げ部が形成されるとよい。嵩上げ部は、第1コネクタ保持部と反対側に高さを稼ぐ構成であれば足り、例えばリブなどで構成され得る。
この構成では、第2コネクタの嵩上げ部は、第1コネクタ保持部の近傍から当接部に当接する部位までの距離をより一層長くする。このため、第2コネクタに傾いた力が作用した際の当接部による荷重の支持が効果的に行える。
前記嵩上げ部は、中空部を設けて形成されるとよい。中空部は、適宜の形態の部分に形成される空間であり、周りが囲まれた閉じた形態の場合も、解放された形態の場合もある。
中空部は、第2コネクタの軽量化をはかるとともに放熱性を促す。このため、中空部を有する嵩上げ部を備えたコネクタホルダは、自動車に搭載するコネクタホルダとして有益である。
この発明の態様として、前記当接部は、前記第1コネクタを隔てて前記第1コネクタ保持部と反対側において前記第1コネクタ保持部に対向する対向片に形成されるとよい。対向片は、平板状であるほか、湾曲板状などの他の形状であってもよい。
この構成では、対向片の当接部は第2コネクタにおける第1コネクタ保持部側の端部を強力に支える。また対向片は、第1コネクタ保持部と対応しているので、当接部の範囲を広くとることができる。
この発明の態様として、前記当接部は、前記第1コネクタを隔てて前記第1コネクタ保持部と反対側に前記第1コネクタ保持部側から延びる側片に形成されるとよい。側片は、平板状であるほか、湾曲板状などの他の形状であってもよい。
この構成では、側片の当接部は第2コネクタにおける第1コネクタ保持部側の端部を強力に支える。また側片は、第1コネクタ保持部と反対側に向けて延びるので、当接部の範囲を広くとることができる。
前記当接部を前記側片に形成する場合には、前記当接部を有する前記側片は、前記第1コネクタと前記第2コネクタが嵌合し合う部分に対応する部位から、前記第1コネクタと前記第2コネクタが嵌合し合う部分よりも前記第1コネクタを隔てた前記第1コネクタ保持部と反対側の部位にかけて連続しているものとするとよい。側片における第1コネクタと第2コネクタが嵌合し合う部分に対応する部位とは、第1コネクタ保持部に対する位置関係が、第1コネクタ及び第2コネクタが嵌合し合う部分と第1コネクタ保持部との位置関係と同様である部位のことである。
側片は、第1コネクタと第2コネクタが嵌合し合う部分に対応する部位から第1コネクタ保持部とは反対側の部位にかけて一連に形成されており、第1コネクタと第2コネクタの変位を抑制する機能も有する。このため、第2コネクタに傾いた力が作用した際の当接部による荷重の支持が効果的に行える。
前記当接部を前記対向片に形成する場合には、前記当接部を有する前記対向片は、前記第1コネクタ保持部に対応する部位と前記第1コネクタと前記第2コネクタが嵌合し合う部分に対応した部位を有する側片の先に一体形成されたものとするとよい。第1コネクタ保持部に対応する部位とは、側片の第1コネクタ保持部側の部位、換言すれば側片の基部である。
側片は、第1コネクタ保持部に対応する部位と第1コネクタ及び第2コネクタが互いに嵌合し合う部分に対応した部位を有しており、第1コネクタと第2コネクタの変位を抑制する機能も有する。対向片はそのような側片に一体形成されており、対向片の当接部は側片の当接部と共に、第2コネクタに傾いた力が作用した際に荷重を支持する。このため、荷重の支持がより効果的に行える。
この発明の態様として、前記第1コネクタ保持部に、差し込まれた前記第1コネクタの差し込み部を押さえつけるフランジ部が形成されたコネクタ保持構造であってもよい。押さえつけるとは、フランジ部が直接面接触して押さえつけるほか、フランジ部が非接触状態であっても差し込み部分に剛性を付与して押さえつける作用を発揮できる状態を含む意味である。押さえつける方向は、第1コネクタ保持部に向けた方向である。
この構成では、フランジ部が、傾いた力のかかる第1コネクタの差し込み部を押さえ込んで固定状態を強固に維持する。このため、第2コネクタに作用する荷重を当接部で支持する構成であっても、固定部分の損傷防止の実効性が十分に得られる。
前記フランジ部は、差込方向に対して側面に相当する部位に形成されるとよい。
フランジ部は長く形成できるので、固定状態を維持する範囲を広くとることが可能である。このため、第1コネクタの固定状態の維持による効果が高められる。
別の手段は、互いに嵌め合わされて接続される第1コネクタと第2コネクタのうち前記第1コネクタを固定する第1コネクタ保持部が形成されたコネクタホルダであって、前記第1コネクタ保持部に固定された前記第1コネクタに前記第2コネクタが嵌合された状態において、前記第2コネクタの端部に対して当接して前記第2コネクタの変位を規制する当接部が前記コネクタホルダに形成されたコネクタホルダである。
この発明によれば、コネクタ形状の違いによる影響を極力受けずに固定部分の損傷防止ができ、コネクタの保持状態を維持することが可能である。
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1に、コネクタホルダ11と、コネクタホルダ11を用いたコネクタ保持構造を示す。
コネクタホルダ11は、コネクタを保持する部材であって、複数のコネクタが並べられた状態で保持される。図1に例示したコネクタホルダ11は複数のコネクタを並列して保持するものである。複数設けられたコネクタを固定する部位のうちの少なくとも一つが、本発明に係るコネクタ保持構造を適用する固定構造部12である。
まず、固定構造部12に固定されるコネクタ13の構造について説明する。
コネクタ13は、コネクタ保持構造の分解斜視図である図2に示したように、第1コネクタ21と第2コネクタ31を有している。第1コネクタ21と第2コネクタ31は、互いに嵌め合わせて電気的に接続される。図3は、コネクタ保持構造の側面図であり、図4に、図3のA−A断面図を示している。
第1コネクタ21と第2コネクタ31は共に、本体21a,31aに端子を内蔵しており、端子からは電線22,32が延びている。本体21a,31aのうち電線22,32が延びる方向と反対側の部分が先端側であり、電線22,32が延びる方向が後端側である。第1コネクタ21と第2コネクタ31は互いに軸方向で嵌り合う。
第1コネクタ21と第2コネクタ31のうちの第1コネクタ21の本体21aは、先端側に形成され第2コネクタを接続する内筒部23と、後端側に形成された後端軸部24を有している。内筒部23の内側は嵌入穴23aである。内筒部23は、外周面の一部に、第2コネクタ31を係止して抜け止めする係止突起25と、内筒部23の長手方向に沿って延びる一対の突条26が形成されている。
係止突起25は、内筒部23の長手方向の中間部において、内筒部23の長手方向と直交する方向に延びている。突条26は、内筒部23の外周面における係止突起25を形成した部位の反対側に形成され、外周面よりも外方に突出している。突条26は内筒部23の長手方向全体にわたって延びている。
後端軸部24は内筒部23よりも細く形成されており、後端軸部24の外周面の一部には、コネクタホルダ11の固定構造部12に固定される差し込み部41が形成されている。差し込み部41の形成位置は、内筒部23の外周面における突条26を形成した側と同じ側である。つまり差し込み部41は、本体21aの長手方向沿って突条26と並ぶように形成されている。ただし差し込み部41は、突条26よりも本体21aの軸心から周方向の外方に離れた位置に形成される。
差し込み部41は、第1コネクタ21の斜視図である図5、図6に示したように(なお、図5、図6においては電線22の図示を省略している)、本体21aの長手方向に延びる偏平な四角筒状に形成されており、後端側に向けて開く保持穴42と、弾性係止片43を有している。保持穴42の開口は、一対の突条26が対をなす方向と同じ方向に広がっている。弾性係止片43は、差し込み部41における後端軸部24とは反対側の面に形成されており、割溝部44に挟まれて本体21aの長手方向に延びている。割溝部44の長さは、差し込み部41の後端から差し込み部41の長手方向の途中までであり、割溝部44の幅方向外側の部位は、内向きのスライド係止片45である。弾性係止片43の先端(本体21aの後端側)の端には、上に向けて凸の爪部43aが形成されている。爪部43aは、内筒部23側の面に係止のための起立面43bを有している(図4参照)。
第2コネクタ31の本体31aは、図4に示したように、略全体が第1コネクタ21の内筒部23に外嵌合する外筒部33と、外筒部33の内側に位置して第1コネクタ21の嵌入穴23aに嵌る突起部34を有している。外筒部33は、第1コネクタ21の本体21aの太さよりも太く、外筒部33の先端面33aは、第1コネクタ21の外周面27よりも外側の領域に位置する。
外筒部33は、第1コネクタ21を嵌合し、嵌合状態を保持するため、第1コネクタ21に形成された一組の突条26を嵌める案内溝35と、第1コネクタ21の係止突起25に係止する弾性変位可能な抜け止め片36を、周方向に分けて有している(図7参照)。
外筒部33の長手方向の長さは、案内溝35を有する側と抜け止め片36を有する側で長さを異なっている。つまり、外筒部33は、第2コネクタの斜視図を示す図7にも示したように、抜け止め片36を有し第1コネクタ21の係止突起25に対応する側の部分(以下この部分を、外周面における第1コネクタ21の差し込み部41と反対側の部分という意味で「反差し込み部側の部分」ともいう)が、案内溝35を有し第1コネクタ21の突条26に対応する側の部分(以下この部分を、外周面における第1コネクタ21の差し込み部41と同じ側の部分という意味で「差し込み部側の部分」ともいう)よりも先端側にせり出した形状である。このため、第1コネクタ21との嵌合状態において図4に示したように、外筒部33の先端面33aのうち差し込み部側の部分の先端面33bが第1コネクタ21の差し込み部41に対し近接して対向するように設定すると、外筒部33の先端面33aのうち反差し込み部側の部分の先端面33cの位置は、差し込み部側の部分の先端面33bよりも先端側に位置することになる。
外筒部33における反差し込み部側の部分の先端面33cと差し込み部側の部分の先端面33bは、それぞれ外筒部33の長手方向と直交する方向に延びており面一である。外筒部33における反差し込み部側の部分と、差し込み部側の部分との間の部分は、傾斜して連続する移行部33dである。
外筒部33の厚さについては、反差し込み部側の部分のほうが差し込み部側の部分よりも厚く形成されている。すなわち、外筒部33における反差し込み部側の部分は、外筒部33の長手方向の全体が、かさ高く形成された嵩上げ部37である。嵩上げ部37は、コネクタホルダ11における後述する第1コネクタ保持部52と反対側に突出して、高さを稼ぎ、適宜広さの先端面33aを得る部位である。嵩上げ部37はリブ等で適宜構成される。
嵩上げ部37の幅方向の中間部は、差し込み部側の部分に向けて下がる段差部37aを有している。段差部37aの下には、図4に示したように中空部37bが形成されている。中空部37bは嵩上げ部37に形成された空間である。中空部37bの高さは、抜け止め片36が段差部37aに一体形成されており、中空部37b内に位置しているので、例えば抜け止め片36の弾性変位が得られる高さ以上の高さに設定され得る。
また、嵩上げ部37の長手方向における第2コネクタ31の先端側の部分の幅方向の両側部は、幅方向外側に広がる肥大部37cである。肥大部37cは、厚さを稼ぎ、適宜広さの先端面33aを得られる構成であれば、形状は適宜設定できる。
外筒部33における反差し込み部側の部分の先端面33cは、外筒部33において最も先端側に突出している面であり、第2コネクタ31における後述するコネクタホルダ11の第1コネクタ保持部52側の端部である。より具体的には、外筒部33における反差し込み部側の部分の先端面33cは、第2コネクタ31の端部、詳しくは第2コネクタ31の軸方向における第1コネクタ保持部52側の端部である。以下、反差し込み部側の部分の先端面33cを、「突き当て部38」ともいう。突き当て部38は、第1コネクタ21との嵌合状態において、第1コネクタ21の外周面27よりも外側に位置することになる。
以上のように、第1コネクタ21にはコネクタホルダ11に対して固定される差し込み部41が形成される一方、第2コネクタ31はコネクタホルダ11に対して固定される部位を有さず、第1コネクタ21に対して嵌合されるので、第2コネクタ31は、コネクタホルダ11に対しては第1コネクタ21を介して固定されることになる。つまり、コネクタ13をコネクタホルダ11に固定しても、第2コネクタ31はコネクタホルダ11に対しては非固定である。
つぎに、コネクタホルダ11の固定構造部12について説明する。
固定構造部12は、図1に示したように互いに嵌合し合った第1コネクタ21と第2コネクタ31を載置可能な大きさの長方形板状をなす基板部51と、図7に示したように基板部51の長手方向の一端部に形成された第1コネクタ保持部52と、第1コネクタ保持部52を支持するとともに基板部51から離れる方向に延びる延設部53を有している。
基板部51は、第1コネクタ21と第2コネクタ31を保持する側の面に複数本のリブ51a,51bを基板部51の長手方向に沿って備えている。図示例のリブ51a,51bは4本であり、基板部51の長手方向と直交する幅方向の両側の2本のリブ51aと、これらの間の2本のリブ51bである。また幅方向両側のリブ51aは、前述した延設部53と一体であり、延設部53の基部である立ち上がり部53aを構成する。
第1コネクタ保持部52は、基板部51における第1コネクタ21が位置する側の端部に形成されており、第1コネクタ21をコネクタホルダ11、具体的には基板部51の長手方向に沿って一方向に相対移動させて固定するものである。第1コネクタ21を第1コネクタ保持部52に固定するための移動方向、換言すれば第1コネクタ21の固定方向Xは、固定構造部12の基板部51の長手方向のうち延設部53に向けた方向であり、第1コネクタ21を基準にすれば第1コネクタ21の後端側に向けた方向である。
第1コネクタ保持部52は、コネクタホルダの固定構造部の正面図である図8、図8のB−B断面図である図9、図8のC−C断面図である図10にも示したように、第1コネクタ21の差し込み部41を差込可能な大きさで直方体状の空間である差し込み空間54と、差し込み空間54の奥、つまり第1コネクタ21の差し込み方向先端側の端に位置する端末壁部55と、差し込み空間54の長手方向に沿って延びる差し込み片56と、差し込まれた第1コネクタ21の差し込み部41を押さえつけるフランジ部57とを有している。
差し込み空間54は、前述したリブ51a.51bのうち幅方向の両側に位置する2本のリブ51aに延設部53の基部である立ち上がり部53aを設けて形成される。立ち上がり部53aを有するリブ51aの間に位置する他の2本のリブ51bの高さは、差し込み空間54に対して差し込み部41の挿入を許容する高さである。リブ51bの高さは差し込み部41に接する高さであってもよい。
端末壁部55は、立ち上がり部53aにおける第1コネクタ21の固定方向の先端側の端に立設されている。端末壁部55は、差し込み片56とフランジ部57を支持する機能を有する。端末壁部55のうち、幅方向の中間部には分割開口55aが形成されている。
差し込み片56は、図11に示したように、全体として平面視H字状であり、幅方向の中間部に、第1コネクタ21の弾性係止片43を導入する導入凹部56aと、弾性係止片43の爪部43aが係止する被係止部56bを形成する切り欠き部56cを有している。図中、56dは、幅方向の両側において延びる長片部であり、56eは、長片部56d同士を連結する連結部である。
長片部56dの上面(基板部51と反対側の面)には、図12にも示したように、三角リブ58が長片部56dの長手方向に沿って立設されている。三角リブ58は、差し込み片56の長片部56dの途中から端末壁部55にかけて形成されており、断面形状が三角形である。具体的には、長手方向の中間部から端末壁部55までの部位が直角三角形であり、他の部位には、断面三角形の頂点を移行させるための稜線58aが長手方向に対して捻じれ方向に延びるように形成されている。三角リブ58は、差し込み片56の幅方向の外側が直角に切り立つ起立面58bを有している。
フランジ部57は、斜視図である図13、平面図である図14に示したように、第1コネクタ21の固定方向、つまり差し込み方向に対して側面に相当する部位である立ち上がり部53aの内側面に形成され、一対の立ち上がり部53aのうちの一方の立ち上がり部53aのフランジ部57は、連続する端末壁部55の内側面にも形成されている。
延設部53は、図7、図8、図9、図10に示したように、リブ51aと一体で、基板部51から離れる方向に延びる平板状の側片61と、側片61の端部同士を連結する平板状の対向片62を有しており、基板部51と合わせて正面視方形枠状である。
側片61は、固定された第1コネクタ21を隔てて第1コネクタ保持部52と反対側に向けて第1コネクタ保持部52側からまっすぐに、換言すれば基板部51に対して垂直に延びている。より具体的には、側片61は、図4に示したように、第1コネクタ21と第2コネクタ31が嵌合し合う部分(軸方向に直角の断面で見た際に大きさの小さい第1コネクタ21のうち、第2コネクタ31が入り込んで重なり合っている部分)に対応する部位61aから、第1コネクタ21と第2コネクタ31が嵌合し合う部分よりも第1コネクタ21を隔てた第1コネクタ保持部52と反対側に部位61bにかけて連続している。また側片61は、第1コネクタ保持部52に対応する部位、つまり立ち上がり部53aと、第1コネクタ21と第2コネクタ31が嵌合し合う部分に対応した部位61aを有している。
対向片62は、第1コネクタ21を隔てて第1コネクタ保持部52と反対側において第1コネクタ保持部52に対向し、側片61と一体である。側片61と対向片62における差し込み方向の長さは適宜設定されるが、少なくとも十分な強度を有する長さに設定する。図示例の側片61と対向片62における差し込み方向の長さは、全体にわたって同一である。
このような延設部53は、第1コネクタ21を挿通可能な大きさである。つまり、延設部53と第1コネクタ21の関係を示した説明図である図15に示したように、延設部53の側片61同士の間隔は、第1コネクタ21の幅よりもわずかに大きく設定され、延設部53の対向片62とフランジ部57と間の間隔は、第1コネクタ21の主たる部分である内筒部23の高さよりも大きく設定されている。第1コネクタ21の差し込み部41は、内筒部23よりも固定面側に下げて形成されているが、差し込み部41を形成する後端軸部24における差し込み部41と反対側の部分も差し込み部41側に下がっているので、第1コネクタ21は図16に示したように、内筒部23を先にして延設部53の端末壁部55側から挿通可能である。
この延設部53は、固定状態の第1コネクタ21に嵌合された第2コネクタ31における第1コネクタ保持部52側の端部、つまり突き当て部38に対して当接する当接部63を有している。当接部63は、第1コネクタ保持部52に固定された第1コネクタ21に第2コネクタ31が嵌合された状態において、第2コネクタ31の端部に対して当接して第2コネクタ31の変位を規制する部分である。
この当接部63は、固定状態の第1コネクタ21に第2コネクタ31を嵌合接続した際に突き当て部38が面接触するものであるほか、第2コネクタ31を嵌合接続した際には突き当て部38との間に隙間を有する状態で対向し、接近させる方向に力がかかった際に突き当て部38と接触するものであってもよい。
第2コネクタ31の突き当て部38が前述のように構成されるので、延設部53の当接部63は、延設部531、つまり側片61と対向片62における端末壁部55と反対側の端面のうち、特に対向片62の端面の略全体と、側片61の端面の上部である。
詳しくは、第2コネクタ31の外筒部33における反差し込み部側の部分の先端面33c、つまり突き当て部38は、第1コネクタ21における第1コネクタ保持部52と反対側で第1コネクタ21の外周面から離れた位置に存在し、この突き当て部38に当接する当接部63が、第1コネクタ21を隔てて第1コネクタ保持部と反対側に延びる延設部53の側片61と対向片62に形成されている。当接部63は全体にわたって面一である。
なお、前述のような構成であるため、当接部63に対する第2コネクタ31の当接方向は、第1コネクタ保持部52に対する第1コネクタ21の固定方向Xと同じであり、また当接部63に対する第2コネクタ31の当接方向は、第1コネクタ21に対する第2コネクタ31の嵌合方向とも同一である。
以上のような構成のコネクタホルダ11を用いたコネクタ保持構造では、コネクタ13は次のようにしてコネクタホルダ11に保持される。
まず、図16に示したように、第1コネクタ21がコネクタホルダ11の固定構造部12に対して固定される。第1コネクタ21の固定は、本体21aの先端を延設部53の内側の空間に端末壁部55を有する側から挿入して延設部53の反対側に引き出したのち、本体21aを延設部53に向けて押し戻すようにして(第1コネクタの固定方向Xに相対移動させて)、差し込み部41を第1コネクタ保持部52に対して差し込む。これにより、図17に示したように、差し込み部41は第1コネクタ保持部52の差し込み空間54と差し込み片56に嵌り、弾性係止片43の爪部43aを被係止部56bに係止し、抜け止め状態になる。
つぎに、第2コネクタ31が第1コネクタ21に対して嵌合により接続される。第2コネクタ31の嵌合は、第2コネクタ31の周方向の向きを第1コネクタ21の周方向の向きに合わせて、第2コネクタ31を第1コネクタ21の内筒部23に嵌める。すると、第2コネクタ31の突き当て部38は、コネクタホルダ11の延設部53の当接部63に接触又は近接した状態となって(図18の上部の仮想線参照)、コネクタ13の保持が完了する。
このようにしてコネクタ13を保持したコネクタ保持構造では、第2コネクタ31は第1コネクタ21を介してコネクタホルダ11に固定されており、第2コネクタ31は、突き当て部38が当接部63に接触するのみで、コネクタホルダ11に対しては非固定である。第2コネクタ31の突き当て部38と当接部63が互いに接触し合うと、突き当て部38から当接部63にかかる荷重は当接部63に伝達されることになる。
このため、図19に示したように、第1コネクタ21に嵌合した第2コネクタ31に対してコネクタホルダ11からもぎ取られるような傾いた力Fが作用した場合に、コネクタホルダ11の当接部63が、傾いた力Fが作用している第2コネクタ31の第1コネクタ保持部側の端部(突き当て部38)を支えて、第2コネクタ31がよじれたりもぎ取られたりする方向にさらに変位することを抑制する。これによって、第1コネクタ保持部52や差し込み部41にかかる荷重が軽減されるので、第1コネクタ保持部52や差し込み部41の損傷が防止できる。
しかも、第2コネクタ31の第1コネクタ保持部側の端部(突き当て部38)と、延設部53に形成された当接部63が、第1コネクタ保持部52とは反対側であって第1コネクタ21の外周面27よりも外側の領域において当接し合う。つまり、突き当て部38と当接部63の位置を第1コネクタ保持部52から離すことができる。このため、傾いた力Fが作用した際の荷重の支持が効果的に行える。
当接部63と第1コネクタ保持部52との間の距離は、第2コネクタ31の嵩上げ部37を形成したので、より一層長くできる。このため、第1コネクタ保持部52の近傍にかかる荷重はより効果的に低減できる。特に、嵩上げ部37は中空部37bを設けて形成されているので、コネクタ保持構造の軽量化をはかれるとともに、放熱性が促進される。このため、中空部37bを有する嵩上げ部37を備えたコネクタ保持構造は、自動車に搭載するのに有益なものとなる。
また当接部63は、第1コネクタ21よりも外側の領域であって電線22から離れた位置に比較的広く形成できるので、コネクタ形状の違いに影響されないコネクタ保持構造が得られる。
そのうえ、コネクタ保持構造は、第1コネクタ21と第2コネクタ31の双方をコネクタホルダ11に固定する必要のない簡素な構成である。第2コネクタ31はコネクタホルダ11に対して非固定であるので、第2コネクタ31に傾いた力Fがかかっても、第2コネクタ31がコネクタホルダ11に対してよじれなどの力が作用して、第2コネクタ31とコネクタホルダ11との間が損傷することはない。
コネクタ13の固定状態において、延設部53は第1コネクタ21を囲繞する枠形状であり、対向片62と側片61を有している。このため、対向片64と側片61の当接部63が前述のように第2コネクタ31の突き当て部38を強力に支えることができる。
また、前述のように第1コネクタ保持部52にはフランジ部57と三角リブ58を備えており、フランジ部57による剛性付与と、三角リブ58による接触抵抗とによって、第1コネクタ21の差し込み部41の固定は、がたつきのない強固なものになる。つまり、差し込み片56の上面に形成されている三角リブ58は、差し込み部41の内側面に対して差し込みに従ってより強く接して、差し込み片56との間のがたつきがない状態を得る。また、フランジ部57は差し込み部41を押さえ込んで強固な固定を行わせる。このため、当接部63によって荷重を支持する構成であっても、十分な損傷防止が行える。しかもフランジ部57は、差込方向に対して側面に相当する部位に形成されており、長く形成できるため、差し込み部41に対する固定強度を高められる。
さらに、コネクタホルダ11に対してコネクタ13を固定する作業は簡単である。つまり、延設部53は枠状であるので電線22の扱いが面倒であるところ、延設部53が第1コネクタ21を挿通可能な大きさであるので、固定作業に際しては第1コネクタ21の本体21aを延設部53の内側に挿通するとよい。このため、第1コネクタ21をコネクタホルダ11に対して固定する作業は容易に行える。
第2コネクタ31を第1コネクタ21に対して嵌合する作業は、第1コネクタ21が第1コネクタ保持部52に対して、嵌め合わせと係止のほかに、三角リブ58とフランジ部57との協働によって強固に固定されており徒に動かないので、簡易迅速に行える。しかも、第2コネクタ31は抜け止め片36を有するので、第1コネクタ21との適切な嵌合状態が確実に得られるとともに、第1コネクタ21と第2コネクタ31の嵌合強度は高い。
また、第1コネクタ保持部52に対する第1コネクタ21の固定方向Xと、第1コネクタ21に対する第2コネクタ31の嵌合方向と、当接部63に対する第2コネクタ31の当接方向が同一であるので、これらが互いに異なる方向である場合に比して、前述のように第1コネクタ保持部52や第1コネクタ保持部52の近傍の損傷を防止する当接部63と突き当て部38の構成、ひいてはコネクタ保持構造の構成を簡素にできる。
以上の構成はこの発明を実施するための一形態の構成であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
例えば、前述した第1コネクタ21と第2コネクタ31は様々な形態のコネクタ13の一例であって、その他の形状のコネクタ13であってもよい。
第1コネクタ21の固定方向は、基板部51に対して垂直など、基板部51に沿った方向以外のものであってもよい。また第1コネクタ21の固定は、差し込んで係止する構造のほか、ねじ止めなど別体の固定部材を用いて行うものであってもよい。
コネクタホルダ11の延設部53は、前述の例では差し込み方向の長さが全体にわたって同一である例を示したが、長さを部分的に変えてもよい。同様に、前述の例では第2コネクタ31の反差し込み部側の部分が先端側にせり出した形状であったが、第2コネクタ31の先端面の多くの部分が面一の形状であってもよい。
延設部53は、前述のような閉じた枠状のほか、例えば一部に電線を通せる隙間を備えた枠状や、ほとんど側片のみからなる形状のもの、一の側片と対向片からなる形状のものなどであってもよい。
コネクタ13は、第2コネクタ31もコネクタホルダ11に対して固定するものであってもよい。