<実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る放射線測定装置1について、図面を参照して説明する。
<放射線測定装置の構成>
図1は、本実施形態に係る放射線測定装置1の構成の一例を示す図である。放射線測定装置1は、ホスイッチ検出器10と、遮蔽体SD1と、ガード検出器SD2と、制御装置20を備える。なお、放射線測定装置1は、遮蔽体SD1と、ガード検出器SD2との少なくとも一方を備えない構成であってもよい。また、放射線測定装置1は、ホスイッチ検出器10と、遮蔽体SD1と、ガード検出器SD2と、制御装置20とに加えて、他の装置を更に備える構成であってもよい。また、放射線測定装置1は、放射能測定装置であってもよい。
ホスイッチ検出器10は、測定対象放射線を入射させる入射窓を有する。測定対象放射線は、ユーザーが測定する対象となる放射線(すなわち、ユーザーが放射線測定装置1により測定する対象となる放射線)のことである。入射窓は、ホスイッチ検出器10による放射線の検出時において測定対象放射線を入射させることを意図して設けられた窓である。入射窓は、ホスイッチ検出器10に設けられた開口部であってもよく、ホスイッチ検出器10に設けられた何らかの部位であってもよい。以下では、一例として、入射窓には、後述するように、シンチレーターが設けられている場合について説明する。
ここで、以下では、説明の便宜上、測定対象放射線以外の放射線のことを、背景放射線と称して説明する。背景放射線は、ホスイッチ検出器10が設置される環境(例えば、部屋等)中の放射線であり、例えば、床面や壁面に含まれる放射性元素から放射される放射線、宇宙空間から地球に降り注ぐ宇宙線起源の放射線等である。以下では、説明を簡略化するため、一例として、背景放射線がガンマ線のみである場合について説明する。また、以下では、一例として、測定対象放射線が、ストロンチウム90及びイットリウム90から放射されるベータ線である場合について説明する。なお、測定対象放射線は、当該ベータ線に代えて、他の放射性元素から放射されるベータ線であってもよく、アルファ線であってもよく、ガンマ線であってもよく、中性子線であってもよく、他の種類の放射線であってもよい。
ホスイッチ検出器10は、入射窓に対する相対的な位置のうちのユーザーにより予め決められる位置(又は、ホスイッチ検出器10の設計者により推奨される位置)に、試料Smが位置するように設置される。試料Smは、測定対象放射線を放射する放射線源を含む試料のことである。以下では、一例として、当該予め決められた位置が、入射窓と直交する方向に入射窓の中心からホスイッチ検出器10の外側に所定距離離れた位置である場合について説明する。所定距離は、例えば、数ミリメートル〜数センチメートル程度であるが、これに限られるわけではない。
また、ホスイッチ検出器10は、第1シンチレーターPS1と、第2シンチレーターPS2と、図示しない筐体と、光検出器Phを備える。
第1シンチレーターPS1は、前述のホスイッチ検出器10が備えるシンチレーターの一例である。第1シンチレーターPS1は、プラスチックシンチレーターである。第1シンチレーターPS1は、放射線の入射に応じて生じるシンチレーション光の減衰時間が第1減衰時間である。
第2シンチレーターPS2も、前述のホスイッチ検出器10が備えるシンチレーターの一例である。第2シンチレーターPS2は、プラスチックシンチレーターである。第2シンチレーターPS2は、放射線の入射に応じて生じるシンチレーション光の減衰時間が第2減衰時間である。第2減衰時間は、第1減衰時間と異なる時間である。以下では、一例として、第2減衰時間が、第1減衰時間よりも長い場合について説明する。なお、第2減衰時間は、第1減衰時間よりも短くてもよい。この場合、以下において説明する第1シンチレーターPS1と第2シンチレーターPS2との役割が逆になる。第1減衰時間と第2減衰時間とを異ならせることは、例えば、第1シンチレーターPS1の素材を、第2シンチレーターPS2の素材と異ならせること等により実現することができる。なお、第1減衰時間と第2減衰時間とを異ならせることは、他の方法により実現してもよい。
また、第2シンチレーターPS2の厚さは、図1に示した例では、第1シンチレーターPS1の厚さよりも厚い。なお、第2シンチレーターPS2の厚さは、第1シンチレーターPS1の厚さと同じ厚さであってもよく、第1シンチレーターPS1の厚さよりも薄い厚さであってもよい。しかしながら、この一例のように測定対象放射線がベータ線である場合、第2シンチレーターPS2の厚さは十分に厚く、第1シンチレーターPS1の厚さは、十分に薄いことが望ましい。具体的には、例えば、我々が行った実験では、本実施形態のように測定対象放射線がストロンチウム90及びイットリウム90から放射されるベータ線である場合、第1シンチレーターPS1の厚さが0.5ミリメートル程度であり、且つ、第2シンチレーターPS2の厚さが10ミリメートル以上であることが望ましかった。ただし、これらの厚さは、第1シンチレーターPS1及び第2シンチレーターPS2のそれぞれが、比重1.0程度のプラスチックシンチレーターであった場合の厚さである。また、第1シンチレーターPS1の厚さと第2シンチレーターPS2の厚さとのそれぞれは、測定対象放射線の種類、背景放射線の種類、測定環境、測定条件等によって変化するため、必ずしもこのような厚さが測定対象放射線の測定にとって適切であるとは限らない。なお、第1シンチレーターPS1の厚さと第2シンチレーターPS2の厚さとの合計は、ストロンチウム90と放射平衡にあるイットリウム90のベータ線の最大エネルギーが約2.3MeVであることから、スペクトルを歪み無く測定するため、そのエネルギーのベータ線の最大飛程以上の厚さであることが望ましい。また、第1シンチレーターPS1の厚さを薄くし過ぎると、電気ノイズからの制限により、必要なパルス波高を得ることができない。これらのような制限に基づいて、第1シンチレーターPS1の厚さと第2シンチレーターPS2の厚さとは、実験により適切に決められるものである。
ホスイッチ検出器10が備える図示しない筐体には、図1に示した例では、ホスイッチ検出器10の入射窓と直交する方向において積層された第1シンチレーターPS1と第2シンチレーターPS2とが入射窓に設けられている。なお、当該筐体における第1シンチレーターPS1と第2シンチレーターPS2との設置態様は、他の設置態様であってもよい。例えば、当該筐体における第1シンチレーターPS1と第2シンチレーターPS2との積層方向は、入射窓に対して直交する方向と異なる方向であってもよい。また、例えば、当該筐体における第1シンチレーターPS1と第2シンチレーターPS2とは、入射窓から離間している構成であってもよい。
光検出器Phは、例えば、光電子増倍管である。光検出器Phは、ホスイッチ検出器10の筐体内においてシンチレーション光が発せられるイベント毎に、イベントにより発せられたシンチレーション光に応じた信号を出力する。より具体的には、光検出器Phは、イベント毎に、イベントにより発せられたシンチレーション光を検出する。光検出器Phは、シンチレーション光を検出した場合、検出したシンチレーション光に応じた大きさ(すなわち、当該シンチレーション光に応じた電流値)の信号を制御装置20に出力する。ここで、あるイベントのイベント発生期間内において光検出器Phから出力される信号の大きさは、シンチレーション光が減衰するため、時間の経過とともに変化する。すなわち、当該イベント発生期間内において光検出器Phから出力された信号は、当該信号の大きさの時間的変化を表す波形を有する。そして、当該波形は、当該イベントに応じた波形である。なお、本実施形態において、あるイベントのイベント発生期間は、当該イベントが発生している期間のことであり、当該イベントによりシンチレーション光が発せられてから減衰し終わるまでの期間のことである。
以下では、説明の便宜上、所定の測定期間内において発生したすべてのイベントのうち測定対象放射線が発生させたイベントのことを、信号イベントと称して説明する。また、以下では、説明の便宜上、当該すべてのイベントのうち背景放射線が発生させた対象イベントのことを、背景イベントと称して説明する。
遮蔽体SD1は、放射線を遮蔽する物体である。遮蔽体SD1の材質は、例えば、鉛である。なお、遮蔽体SD1の材質は、鉛に変えて、タングステン等の他の材質であってもよい。遮蔽体SD1は、ホスイッチ検出器10が有する部位のうちの少なくとも入射窓を含む部位に対してホスイッチ検出器10の外側から入射する放射線を遮蔽するように、ホスイッチ検出器10に対して取り付けられる。遮蔽体SD1がホスイッチ検出器10に取り付けられる場合、前述の試料Smは、ホスイッチ検出器10の入射窓と遮蔽体SD1との間に配置される。これにより、放射線測定装置1では、第1シンチレーターPS1と第2シンチレーターPS2とのうちいずれか一方又は両方に入射する背景放射線の数を低減することができる。遮蔽体SD1は、偶発的な背景イベントを低減させることができる。
ガード検出器SD2は、ホスイッチ検出器10の外側からホスイッチ検出器10に入射する背景放射線のうちの一部を検出する。ガード検出器SD2は、例えば、プラスチックシンチレーターと、当該プラスチックシンチレーターに背景放射線が入射することによって発せられるシンチレーション光に応じた信号を第2信号として制御装置20に出力する光検出器を備える。ガード検出器SD2は、アンチ・コインシデンス法によって、すべての対象イベントの中から、背景イベントを除去する処理を制御装置20が行うために設けられる。
制御装置20は、分析装置30と、情報処理装置40を備える。なお、制御装置20は、分析装置30と、情報処理装置40とに加えて、他の装置を備える構成であってもよい。また、分析装置30と情報処理装置40は、一体に制御装置20として構成されてもよい。
分析装置30は、情報処理装置40からの要求に応じて、ホスイッチ検出器10を用いた放射線の測定を開始する。分析装置30は、当該測定を開始すると、情報処理装置40を介してユーザーにより指定された測定期間内においてホスイッチ検出器10から出力される信号を取得し始める。分析装置30は、当該測定を開始してから当該測定期間が経過すると、当該信号の取得を停止する。
また、分析装置30は、測定期間内において、個々のイベントが発生しているイベント発生期間内にホスイッチ検出器10から出力される信号を、イベントに応じた波形を有する対象信号としてイベント毎に取得する。より具体的には、測定期間内において、分析装置30は、ホスイッチ検出器10から取得した信号の大きさが予め決められた閾値を超えた場合、当該信号を取得し始める。当該信号を取得し始めた分析装置30は、当該信号の大きさが当該閾値以下となるまで当該信号を取得し続ける。そして、当該分析装置30は、当該信号の大きさが当該閾値以下となった場合、当該信号の取得を終える。ここで、当該信号の大きさが閾値を超えてから、当該信号の大きさが閾値以下となるまでの期間は、前述のイベント発生期間とほぼ同じ期間である。このため、分析装置30は、測定期間内において、個々のイベントが発生しているイベント発生期間内にホスイッチ検出器10から出力される信号を、イベントに応じた波形を有する対象信号としてイベント毎に取得することができる。
分析装置30は、イベント毎に取得した対象信号に基づいて、第2エネルギー総量をイベント毎に算出する。第2エネルギー総量は、対象信号を取得し始めてから第2減衰時間が経過するまでの期間内にホスイッチ検出器10において発せられたシンチレーション光に応じたエネルギーの総量を示す。また、分析装置30は、イベント毎に取得した対象信号に基づいて、波形特徴量をイベント毎に算出する。波形特徴量は、後述するように、対象信号の波形の特徴を示す。分析装置30は、算出した第2エネルギー総量と、算出した波形特徴量とを含む情報を、イベント情報としてイベント毎に生成する。このため、あるイベントのイベント情報は、当該イベントを、当該イベント情報に含まれる第2エネルギー総量及び波形特徴量によって特徴付けられるイベントとして示す情報でもある。なお、イベント情報には、第2エネルギー総量と、波形特徴量とに加えて、他の情報や値が含まれる構成であってもよい。以下では、一例として、イベント情報が、第2エネルギー総量と、波形特徴量とに加えて、他の情報や値を含む場合について説明する。このようなイベント情報の詳細については、後述する。分析装置30は、イベント毎に生成したイベント情報を、情報処理装置40に出力する。以下では、一例として、分析装置30が、イベント情報を生成する毎に、生成したイベント情報を情報処理装置40に出力する場合について説明する。
情報処理装置40は、例えば、ノートPC(Personal Computer)、デスクトップPC、ワークステーション等の情報処理装置である。なお、情報処理装置40は、タブレットPC、多機能携帯電話端末(スマートフォン)、PDA(Personal Digital Assistant)等の他の情報処理装置であってもよい。
情報処理装置40は、分析装置30からイベント毎のイベント情報を順次取得する。なお、情報処理装置40は、対象イベント毎のイベント情報のうちの一部又は全部を、並列に分析装置30から取得する構成であってもよい。この場合、前述の分析装置30は、イベント毎に生成したイベント情報のうちの一部又は全部を、まとめて情報処理装置40に出力する。
情報処理装置40は、分析装置30から取得したイベント毎のイベント情報に基づいて、イベントが発生する頻度についての、波形特徴量と第2エネルギー総量とを変数とする二次元分布を示す分布情報を生成する。情報処理装置40は、生成された分布情報が示す二次元分布に基づいて、イベント毎に生成されたイベント情報の中から、測定対象放射線が発生させたイベント(すなわち、前述の信号イベント)についてのイベント情報を抽出する。これにより、情報処理装置40は、信号イベントについてのイベント情報を精度よく抽出することができる。
また、情報処理装置40は、抽出したイベント情報に基づく各種の処理を行う。例えば、情報処理装置40は、当該各種の処理として、当該イベント情報に基づいて、測定対象放射線のエネルギースペクトルを生成する。また、例えば、情報処理装置40は、当該各種の処理として、当該イベント情報に基づいて、試料Smの測定対象放射線についての放射能を算出する。ここで、情報処理装置40は、前述した通り、信号イベントのイベント情報を精度よく抽出することができる。このため、情報処理装置40は、抽出したイベント情報に基づく各種の処理を精度よく行うことができる。
ここで、放射線測定装置1では、前述の試料Smとホスイッチ検出器10の入射窓との間の距離について、如何なる制約もない。このため、放射線測定装置1では、ホスイッチ検出器10による測定対象放射線の検出効率が、試料Smとホスイッチ検出器10との相対的な位置関係に応じて低下してしまうことを抑制することができる。すなわち、放射線測定装置1は、ホスイッチ検出器10によって測定対象放射線の検出効率が低下してしまうことを抑制しつつ、ホスイッチ検出器10から出力される信号と制御装置20とによって測定対象放射線についての各種の測定を精度よく行うことができる。
<ホスイッチ検出器内に入射する放射線とイベントの具体例>
以下、図2を参照し、ホスイッチ検出器10内に入射する放射線とイベントの具体例について説明する。
図2は、ホスイッチ検出器10内に入射した各種の放射線を例示する図である。図2に示した各矢印は、ホスイッチ検出器10内に入射した各種の放射線を示す。
例えば、図2に示した矢印R1は、あるベータ線を示す。当該ベータ線は、ホスイッチ検出器10の入射窓から第1シンチレーターPS1に入射している。当該ベータ線は、荷電粒子であるため、第1シンチレーターPS1内において電磁相互作用により散乱されながら当該第1シンチレーターPS1内を移動する。図2に示した例では、当該ベータ線は、このような移動を行いながら、第1シンチレーターPS1から第2シンチレーターPS2に入射している。そして、当該例では、当該ベータ線は、第2シンチレーターPS2内においてエネルギーをすべて失い、停止している。このため、当該ベータ線は、第1シンチレーターPS1及び第2シンチレーターPS2の両方においてシンチレーション光が発せられるイベントを生じさせる。当該ベータ線が測定対象放射線である場合、測定対象放射線は、当該イベントを信号イベントとして生じさせる。
また、例えば、図2に示した矢印R2は、他のベータ線を示す。当該ベータ線は、ホスイッチ検出器10の入射窓から第1シンチレーターPS1に入射している。当該ベータ線は、荷電粒子であるため、第1シンチレーターPS1内において電磁相互作用により散乱されながら第1シンチレーターPS1内を移動する。図2に示した例では、当該ベータ線は、このような移動を行いながら、第1シンチレーターPS1内においてエネルギーをすべて失い、停止している。このため、当該ベータ線は、第1シンチレーターPS1においてシンチレーション光が発せられるイベント(当該ベータ線が測定対象放射線である場合、信号イベント)を発生させる。
また、例えば、図2に示した矢印R3は、更に他のベータ線を示す。当該ベータ線は、ホスイッチ検出器10の入射窓から第1シンチレーターPS1に入射している。当該ベータ線は、荷電粒子であるため、第1シンチレーターPS1内において電磁相互作用により散乱されながら第1シンチレーターPS1内を移動する。図2に示した例では、当該ベータ線は、このような移動を行いながら、ホスイッチ検出器10の外側に出て行っている。このため、当該ベータ線は、第1シンチレーターPS1においてシンチレーション光が発せられるイベント(当該ベータ線が測定対象放射線である場合、信号イベント)を発生させる。
ここで、この一例における測定対象放射線は、ベータ線である。このため、測定対象放射線は、少なくとも第1シンチレーターPS1においてシンチレーション光を発生させる。このような事象は、信号取得部31から取得される対象信号の波形の特徴として現われる。すなわち、前述の波形特徴量は、このような事象を示す指標の1つである。
一方、図2に示した矢印R4は、あるガンマ線を示す。当該ガンマ線は、ホスイッチ検出器10の側面から第1シンチレーターPS1及び第2シンチレーターPS2の両方と相互作用を起こすことなく、第1シンチレーターPS1及び第2シンチレーターPS2を貫通してホスイッチ検出器10の外側に出て行っている。このため、当該ガンマ線は、イベントを発生させない。
また、図2に示した矢印R5は、他のガンマ線を示す。当該ガンマ線は、ホスイッチ検出器10の側面から第2シンチレーターPS2に入射している。そして、当該ガンマ線は、第2シンチレーターPS2内においてコンプトン散乱を起こし、矢印R6が示すガンマ線として光検出器Phへと入射している。図2に示した矢印E1は、このようなコンプトン散乱によって生じたコンプトン電子を示す。図2に示した例では、当該コンプトン電子は、散乱によってエネルギーを失い、第2シンチレーターPS2内において停止している。このようなコンプトン散乱の過程では、当該コンプトン電子が、第2シンチレーターPS2においてシンチレーション光が発せられるイベントを発生させる。
また、図2に示した矢印R7は、更に他のガンマ線を示す。当該ガンマ線は、ホスイッチ検出器10の側面から第2シンチレーターPS2に入射している。図2に示した例では、当該ガンマ線は、第2シンチレーターPS2内において相互作用を起こさず、第2シンチレーターPS2を貫通して第1シンチレーターPS1に入射している。そして、当該ガンマ線は、第1シンチレーターPS1内においてコンプトン散乱を起こし、矢印R8が示すガンマ線としてホスイッチ検出器10の外側へと出て行っている。図2に示した矢印E2は、このようなコンプトン散乱によって生じたコンプトン電子を示す。図2に示した例では、当該コンプトン電子は、散乱によってエネルギーを失い、第1シンチレーターPS1内において停止している。このようなコンプトン散乱の過程では、当該コンプトン電子が、第1シンチレーターPS1においてシンチレーション光が発せられるイベントを発生させる。
また、図2に示した矢印R9は、更に更に他のガンマ線を示す。当該ガンマ線は、ホスイッチ検出器10の入射窓から第1シンチレーターPS1に入射している。図2に示した例では、当該ガンマ線は、第1シンチレーターPS1と第2シンチレーターPS2との境界付近においてコンプトン散乱を起こし、矢印R10が示すガンマ線として光検出器Phへと入射している。図2に示した矢印E3は、このようなコンプトン散乱によって生じたコンプトン電子を示す。図2に示した例では、当該コンプトン電子は、散乱によってエネルギーを失いながら、第2シンチレーターPS2から第1シンチレーターPS1へ移動し、第1シンチレーターPS1内において停止している。このようなコンプトン散乱の過程では、当該コンプトン電子が、第1シンチレーターPS1及び第2シンチレーターPS2の両方においてシンチレーション光が発せられるイベントを発生させる。
以上のようなことから、あるイベントの波形特徴量は、当該イベントが信号イベントであったか否かを示す指標の1つとなり得る。ただし、波形特徴量のみでは、当該イベントが信号イベントであるか否かを精度よく判定することができない。そこで、放射線測定装置1では、波形特徴量と第2エネルギー総量との両方を用いて、当該イベントが信号イベントであるか否かを判定する。
<分析装置のハードウェア構成>
以下、図3を参照し、分析装置30のハードウェア構成について説明する。図3は、分析装置30のハードウェア構成の一例を示す図である。
分析装置30は、例えば、信号取得部31と、波形情報生成部32と、第1エネルギー総量算出部33と、第2エネルギー総量算出部34と、波形特徴量算出部35と、時刻情報生成部36と、イベント情報生成部37と、通信部38と、第2信号取得部39を備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。なお、分析装置30は、これらの構成要素に加えて、例えば、CPU(Central Processing Unit
)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプロセッサーを備える構成であってもよい。また、信号取得部31と、波形情報生成部32と、第1エネルギー総量算出部33と、第2エネルギー総量算出部34と、波形特徴量算出部35と、時刻情報生成部36と、イベント情報生成部37と、通信部38と、第2信号取得部39とのうちの一部又は全部は、一体に構成されてもよい。
信号取得部31は、前述の測定期間内において、個々のイベントが発生しているイベント発生期間内にホスイッチ検出器10から出力される信号を、イベントに応じた波形を有する対象信号としてイベント毎に取得する。より具体的には、信号取得部31は、測定期間内において、ホスイッチ検出器10から取得した信号の大きさが予め決められた閾値を超えた場合、当該信号を取得し始める。当該信号を取得し始めた信号取得部31は、当該信号の大きさが当該閾値以下となるまで当該信号を取得し続ける。そして、当該信号取得部31は、当該信号の大きさが当該閾値以下となった場合、当該信号の取得を終える。このため、信号取得部31は、測定期間内において、個々のイベントが発生しているイベント発生期間内にホスイッチ検出器10から出力される信号を、イベントに応じた波形を有する対象信号としてイベント毎に取得することができる。信号取得部31は、取得した対象信号を、波形情報生成部32、第1エネルギー総量算出部33、第2エネルギー総量算出部34のそれぞれにイベント毎に出力する。
また、信号取得部31は、測定期間内において、ホスイッチ検出器10から取得した信号の大きさが予め決められた閾値を超えた場合、ホスイッチ検出器10の筐体内においてイベントが発生したタイミングを示すトリガー信号を、第1エネルギー総量算出部33と、第2エネルギー総量算出部34と、時刻情報生成部36のそれぞれに出力する。これにより、第1エネルギー総量算出部33と、第2エネルギー総量算出部34と、時刻情報生成部36のそれぞれは、イベントが発生したタイミングに応じて処理を行うことができる。
波形情報生成部32は、イベント毎に取得した対象信号に基づいて、波形情報をイベント毎に生成する。波形情報は、対象信号の波形を示す。波形情報生成部32は、生成した波形情報を、イベント情報生成部37にイベント毎に出力する。なお、波形情報生成部32は、分析装置30において、イベント情報生成部37と一体に構成されてもよい。
第1エネルギー総量算出部33は、イベント毎に取得した対象信号に基づいて、第1エネルギー総量をイベント毎に算出する。第1エネルギー総量は、対象信号を取得し始めてから第1減衰時間が経過するまでの期間内にホスイッチ検出器10において発せられたシンチレーション光に応じたエネルギーの総量を示す。より具体的には、第1エネルギー総量算出部33は、イベントが発生した場合、対象信号よりも先にトリガー信号を信号取得部31から取得する。これは、遅延回路等を用いて実現することができる。第1エネルギー総量算出部33は、トリガー信号を取得した場合、トリガー信号の後に取得される対象信号について、トリガー信号を取得したタイミングから第1減衰時間が経過するまでの第1減衰期間における対象信号の大きさを積分する。そして、第1エネルギー総量算出部33は、当該大きさを積分した後の値を、放射線のエネルギーの大きさに換算することにより、第1エネルギー総量を算出する。第1エネルギー総量算出部33は、算出した第1エネルギー総量をイベント情報生成部37にイベント毎に出力する。
第2エネルギー総量算出部34は、イベント毎に取得した対象信号に基づいて、前述の第2エネルギー総量をイベント毎に算出する。より具体的には、第2エネルギー総量算出部34は、イベントが発生した場合、対象信号よりも先にトリガー信号を信号取得部31から取得する。これは、遅延回路等を用いて実現することができる。第2エネルギー総量算出部34は、トリガー信号を取得した場合、トリガー信号の後に取得される対象信号について、トリガー信号を取得したタイミングから第2減衰時間が経過するまでの期間における対象信号の大きさを積分する。そして、第2エネルギー総量算出部34は、当該大きさを積分した後の値を、放射線のエネルギーの大きさに換算することにより、第2エネルギー総量を算出する。第2エネルギー総量算出部34は、算出した第2エネルギー総量をイベント情報生成部37にイベント毎に出力する。
波形特徴量算出部35は、第1エネルギー総量算出部33から取得した第1エネルギー総量と、第2エネルギー総量算出部34から取得した第2エネルギー総量とに基づいて(換言すると、イベント毎に取得した対象信号に基づいて)、前述の波形特徴量をイベント毎に算出する。なお、波形特徴量算出部35は、分析装置30において、第1エネルギー総量算出部33及び第2エネルギー総量算出部34と一体に構成されてもよい。この場合、波形特徴量算出部35は、イベント毎に信号取得部31から取得した対象信号に基づいて、波形特徴量をイベント毎に算出する。
ここで、図4を参照し、波形特徴量を算出するために用いられる第1エネルギー総量及び第2エネルギー総量について説明する。図4は、対象信号の一例を示す図である。図4に示した信号SG1は、あるイベントに応じて信号取得部31により取得された対象信号の一例を示す。信号SG1の波形は、2つの信号の波形が重ね合わせられることによって形成されている。当該2つの信号のうちの一方は、図4に示した信号SG2である。当該2つの信号のうちの他方は、図4に示した信号SG3である。信号SG2は、当該イベントにおいて第1シンチレーターPS1のみがシンチレーション光を発した場合において信号取得部31により取得される対象信号の一例である。信号SG3は、当該イベントにおいて第2シンチレーターPS2のみがシンチレーション光を発した場合において信号取得部31により取得される対象信号の一例である。また、図4に示した時刻tsは、当該イベントが発生したタイミングの一例を示す。また、図4に示した期間t1は、時刻tsから第1減衰時間が経過するまでの期間の一例を示す。また、図4に示した期間t2は、時刻tsから第2減衰時間が経過するまでの期間の一例を示す。
図4に示したように、期間t1における信号SG1の大きさを積分した場合、当該大きさを積分した後の値は、すなわち、第1エネルギー総量に相当する値であり、期間t1における信号SG2と信号SG3とのそれぞれの大きさが積分された後の値である。この場合、当該値には、信号SG2のほぼすべての成分が含まれている一方、信号SG3の一部の成分が含まれていない。
一方、期間t2における信号SG1の大きさを積分した場合、当該大きさを積分した後の値は、すなわち、第2エネルギー総量に相当する値であり、期間t2における信号SG2と信号SG3とのそれぞれの大きさが積分された後の値である。この場合、当該値には、信号SG2及び信号SG3のほぼすべての成分が含まれている。換言すると、当該値には、信号SG1のほぼすべての成分が含まれている。このため、第2エネルギー総量は、信号SG1を発生させたイベントにおいてホスイッチ検出器10に吸収された放射線のエネルギーのほぼすべてである。
このような第1エネルギー総量及び第2エネルギー総量を用いて、波形特徴量算出部35は、波形特徴量を算出する。例えば、あるイベントの第2エネルギー総量をQL、当該イベントの第1エネルギー総量をQSとした場合、波形特徴量算出部35は、例えば、以下の式(1)によって当該イベントの波形特徴量を算出する。
(QL−QS)/QL ・・・(1)
すなわち、上記の式(1)によって算出される波形特徴量は、PSD(Pulse Shape Discrimination)と呼ばれる場合がある。波形特徴量は、ホスイッチ検出器10の筐体内においてイベントにより発生したシンチレーション光に含まれる光の成分のうち第1シンチレーターPS1において発生したシンチレーション光の成分が大きいほど、小さくなる。一方、波形特徴量は、ホスイッチ検出器10の筐体内においてイベントにより発生したシンチレーション光に含まれる光の成分のうち第2シンチレーターPS2において発生したシンチレーション光の成分が大きいほど、大きくなる。例えば、本実施形態では、ベータ線である測定対象放射線は、図2において説明した通り、ガンマ線である背景放射線と比べて、第1シンチレーターPS1においてイベントを発生させやすく、第2シンチレーターPS2においてイベントを発生させにくい。そのため、信号イベントに応じて算出される波形特徴量は、小さくなる傾向を有する。一方、背景イベントに応じて算出される波形特徴量は、小さくなる傾向を有さない。また、本実施形態のように第1シンチレーターPS1の厚さよりも第2シンチレーターPS2の厚さの方が厚い場合、当該波形特徴量は、大きくなる傾向を有する。このような事情から、あるイベントの波形特徴量は、前述した通り、当該イベントが信号イベントであったか否かを示す指標の1つとなり得る。
波形特徴量算出部35は、算出した波形特徴量を、イベント情報生成部317にイベント毎に出力する。
時刻情報生成部36は、信号取得部31によりイベント毎に取得された対象信号に基づいて、対象信号が信号取得部31により取得され始めた時刻を示す時刻情報をイベント毎に出力する。より具体的には、時刻情報生成部36は、イベントが発生した場合、トリガー信号を信号取得部31から取得する。時刻情報生成部36は、トリガー信号を取得した時刻を、イベントが発生した時刻を示す時刻情報、すなわち、対象信号が信号取得部31により取得され始めた時刻を示す時刻情報として生成する。時刻情報生成部316は、生成した時刻情報を、イベント情報生成部317にイベント毎に出力する。
イベント情報生成部37は、波形情報生成部32により生成された波形情報と、第1エネルギー総量算出部33により算出された第1エネルギー総量と、第2エネルギー総量算出部34により算出された第2エネルギー総量と、波形特徴量算出部35により算出された波形特徴量と、時刻情報生成部36により出力された時刻情報とを含む情報を、イベント情報としてイベント毎に生成する。より具体的には、イベント情報生成部37は、波形情報生成部32から波形情報をイベント毎に取得する。また、イベント情報生成部37は、第1エネルギー総量算出部33から第1エネルギー総量をイベント毎に取得する。また、イベント情報生成部37は、第2エネルギー総量算出部34から第2エネルギー総量をイベント毎に取得する。また、イベント情報生成部37は、波形特徴量算出部35から波形特徴量をイベント毎に取得する。また、イベント情報生成部37は、時刻情報生成部36から時刻情報をイベント毎に取得する。イベント情報生成部37は、取得した波形情報、第1エネルギー総量、第2エネルギー総量、波形特徴量、時刻情報のそれぞれを含む情報を、イベント情報としてイベント毎に生成する。なお、イベント情報には、波形情報、第1エネルギー総量、第2エネルギー総量、波形特徴量、時刻情報のそれぞれに加えて、他の情報が更に含まれる構成であってもよい。また、イベント情報には、波形情報、第1エネルギー総量、時刻情報のうちの一部又は全部が含まれない構成であってもよい。イベント情報に時刻情報が含まれない場合、イベント情報には、イベント情報を識別する他の情報が含まれる。イベント情報生成部37は、イベント毎に生成したイベント情報を、通信部38に出力する。
通信部38は、情報処理装置40と有線又は無線による通信を行う。通信部38は、例えば、イベント情報生成部37からイベント情報を取得した場合、取得したイベント情報を情報処理装置40に出力する。また、例えば、通信部38は、後述する第2信号取得部39から第2信号情報を取得した場合、取得した第2信号情報を情報処理装置40に出力する。この際、通信部38は、時刻情報生成部36から現在の時刻を示す情報を取得し、取得した情報を第2信号取得時刻情報として第2信号情報に含ませる。
第2信号取得部39は、ガード検出器SD2から出力される第2信号を、ガード検出器SD2から取得する。第2信号取得部39は、取得した第2信号を示す第2信号情報を生成し、生成した第2信号情報を通信部38に出力する。
<情報処理装置のハードウェア構成>
以下、図5を参照し、情報処理装置40のハードウェア構成について説明する。図5は、情報処理装置40のハードウェア構成の一例を示す図である。
情報処理装置40は、例えば、CPU41と、記憶部42と、入力受付部43と、通信部44と、表示部45を備える。これらの構成要素は、バスを介して相互に通信可能に接続されている。なお、情報処理装置40は、CPU41に代えて、FPGA等の他のプロセッサーを備える構成であってもよい。
CPU41は、記憶部42に格納された各種のプログラムを実行する。
記憶部42は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、ROM(Read−Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。なお、記憶部42は、情報処理装置40に内蔵されるものに代えて、USB等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。記憶部42は、情報処理装置40が処理する各種の情報、各種のプログラム等を格納する。
入力受付部43は、例えば、キーボードやマウス、タッチパッド、その他の入力装置である。なお、入力受付部43は、表示部45と一体に構成されたタッチパネルであってもよい。
通信部44は、例えば、USB等のデジタル入出力ポートやイーサネット(登録商標)ポート等を含んで構成される。
表示部45は、例えば、液晶ディスプレイパネル、あるいは、有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイパネルである。
<情報処理装置の機能構成>
以下、図6を参照し、情報処理装置40の機能構成について説明する。図6は、情報処理装置40の機能構成の一例を示す図である。
情報処理装置40は、記憶部42と、入力受付部43と、通信部44と、表示部45と、制御部46を備える。
制御部46は、情報処理装置40の全体を制御する。制御部46は、表示制御部461と、設定受付部463と、イベント情報取得部465と、分布情報生成部467と、信号イベント抽出部469と、処理部471を備える。制御部46が備えるこれらの機能部は、例えば、CPU41が、記憶部42に記憶された各種のプログラムを実行することにより実現される。また、当該機能部のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
表示制御部461は、ユーザーから受け付けた操作に基づいて、情報処理装置40がユーザーからの操作を受け付ける操作画面を含む各種の画面を生成する。表示制御部461は、生成した各種の画面を表示部45に表示させる。
設定受付部463は、表示制御部461が表示部45に表示させた各種の画面の少なくとも一部の画面を介して、制御部46が備える各機能部に設定される各種の設定をユーザーから受け付ける。
イベント情報取得部465は、分析装置30からイベント情報をイベント毎に取得する。イベント情報取得部465は、取得したイベント毎のイベント情報を、記憶部42に記憶させる。
分布情報生成部467は、ユーザーから受け付けた操作に応じて、記憶部42から、ユーザーが所望する期間内に含まれる時刻を示す時刻情報を含むイベント情報を記憶部42から読み出す。以下では、一例として、ユーザーが所望する期間が、前述の測定期間である場合について説明する。分布情報生成部467は、測定期間内に起きたイベント毎のイベント情報、すなわち、記憶部42から読み出したイベント情報に基づいて、イベントが発生する頻度についての、波形特徴量と第2エネルギー総量とを変数とする二次元分布を示す分布情報を生成する。
信号イベント抽出部469は、分布情報生成部467により生成された分布情報が示す二次元分布に基づいて、イベント情報生成部37によりイベント毎に生成されたイベント情報の中から、測定対象放射線が発生させたイベントについてのイベント情報を抽出する。
処理部471は、信号イベント抽出部469により抽出されたイベント情報に基づく処理を行う。例えば、処理部471は、当該イベント情報に基づいて、測定対象放射線のエネルギースペクトルを生成する。また、例えば、処理部471は、当該イベント情報に基づいて、試料Smの測定対象放射線についての放射能を算出する。
<測定期間内において分析装置が行う処理>
以下、測定期間内において分析装置30が行う処理について説明する。測定期間内において分析装置30が行う処理は、前述した通り、ハードウェア機能部である9つの機能部、すなわち、信号取得部31、波形情報生成部32、第1エネルギー総量算出部33、第2エネルギー総量算出部34、波形特徴量算出部35、時刻情報生成部36、イベント情報生成部37、通信部38、第2信号取得部39のそれぞれが連携して行う。これら9個のハードウェア機能部間における各種の信号の送受信のタイミング、及び、これら9個のハードウェア機能部間の連携については、設計者の設計方針に応じて如何様にも決めることができる。そこで、以下では、これら9個のハードウェア機能部それぞれの処理について説明する。
図7は、測定期間内において信号取得部31が行う処理の流れの一例を示す図である。
信号取得部31は、予め決められた閾値を超えた大きさの信号がホスイッチ検出器10から取得されるまで待機する(ステップS110)。
信号取得部31は、予め決められた閾値を超えた大きさの信号がホスイッチ検出器10から取得された場合(ステップS110−YES)、ホスイッチ検出器10から取得された信号を、波形情報生成部32、第1エネルギー総量算出部33、第2エネルギー総量算出部34のそれぞれへ対象信号として出力し始める(ステップS120)。また、信号取得部31は、当該場合、トリガー信号を、第1エネルギー総量算出部33、第2エネルギー総量算出部34、時刻情報生成部36のそれぞれに出力する。
次に、信号取得部31は、ホスイッチ検出器10から取得された信号の大きさが予め決められた閾値以下であるか否かを判定する(ステップS130)。
信号取得部31は、ホスイッチ検出器10から取得された信号の大きさが予め決められた閾値を超えている場合(ステップS130−NO)、ステップS120において開始した対象信号の出力を継続する。
一方、信号取得部31は、ホスイッチ検出器10から取得された信号の大きさが予め決められた閾値以下である場合(ステップS130−YES)、ステップS120において開始した対象信号の出力を終了する(ステップS140)。そして、信号取得部31は、ステップS110に遷移し、予め決められた閾値を超えた大きさの信号がホスイッチ検出器10から取得されるまで再び待機する。
このように、ステップS120〜ステップS140の処理が行われている期間において信号取得部31により波形情報生成部32、第1エネルギー総量算出部33、第2エネルギー総量算出部34のそれぞれへ出力された一連の信号が、前述のイベントに応じた波形を有する対象信号である。
図8は、測定期間内において波形情報生成部32が行う処理の流れの一例を示す図である。
波形情報生成部32は、信号取得部31から対象信号が取得され始めるまで待機する(ステップS210)。
波形情報生成部32は、信号取得部31から対象信号が取得され始めた場合(ステップS210−YES)、信号取得部31から対象信号が取得され終わるまで待機する(ステップS220)。
次に、波形情報生成部32は、信号取得部31から取得した対象信号に基づいて、当該対象信号の波形を示す波形情報を生成する(ステップS230)。
次に、波形情報生成部32は、ステップS230において生成した波形情報をイベント情報生成部37に出力する(ステップS240)。そして、波形情報生成部32は、ステップS210に遷移し、信号取得部31から対象信号が取得され始めるまで再び待機する。
図9は、測定期間内において第1エネルギー総量算出部33が行う処理の流れの一例を示す図である。
第1エネルギー総量算出部33は、信号取得部31からトリガー信号が取得されるまで待機する(ステップS310)。
第1エネルギー総量算出部33は、信号取得部31からトリガー信号が取得された場合(ステップS310−YES)、信号取得部31から対象信号が取得されるまで待機する(ステップS320)。
次に、第1エネルギー総量算出部33は、信号取得部31から取得した対象信号に基づいて、当該対象信号の第1エネルギー総量を算出する(ステップS330)。より具体的には、ステップS310においてトリガー信号を取得したタイミングから第1減衰時間が経過するまでの第1減衰期間における当該対象信号の大きさを積分する。そして、第1エネルギー総量算出部33は、当該大きさを積分した後の値を、放射線のエネルギーの大きさに換算することにより、第1エネルギー総量を算出する。
次に、第1エネルギー総量算出部33は、ステップS330において算出した第1エネルギー総量を波形特徴量算出部35に出力する(ステップS340)。そして、第1エネルギー総量算出部33は、ステップS310に遷移し、信号取得部31からトリガー信号が取得されるまで再び待機する。
図10は、測定期間内において第2エネルギー総量算出部34が行う処理の流れの一例を示す図である。
第2エネルギー総量算出部34は、信号取得部31からトリガー信号が取得されるまで待機する(ステップS410)。
第2エネルギー総量算出部34は、信号取得部31からトリガー信号が取得された場合(ステップS410−YES)、信号取得部31から対象信号が取得されるまで待機する(ステップS420)。
次に、第2エネルギー総量算出部34は、信号取得部31から取得した対象信号に基づいて、当該対象信号の第2エネルギー総量を算出する(ステップS430)。より具体的には、ステップS410においてトリガー信号を取得したタイミングから第2減衰時間が経過するまでの第2減衰期間における当該対象信号の大きさを積分する。そして、第2エネルギー総量算出部34は、当該大きさを積分した後の値を、放射線のエネルギーの大きさに換算することにより、第2エネルギー総量を算出する。
次に、第2エネルギー総量算出部34は、ステップS430において算出した第2エネルギー総量を波形特徴量算出部35に出力する(ステップS440)。そして、第2エネルギー総量算出部34は、ステップS410に遷移し、信号取得部31からトリガー信号が取得されるまで再び待機する。
図11は、測定期間内において波形特徴量算出部35が行う処理の流れの一例を示す図である。
波形特徴量算出部35は、2つのエネルギー総量が取得されるまで待機する(ステップS510)。当該2つのエネルギー総量は、第1エネルギー総量と第2エネルギー総量のことである。すなわち、波形特徴量算出部35は、ステップS510において、第1エネルギー総量算出部33から第1エネルギー総量が取得され、且つ、第2エネルギー総量算出部34から第2エネルギー総量が取得されるまで、待機する。
波形特徴量算出部35は、2つのエネルギー総量が取得された場合(ステップS510−YES)、ステップS510において取得した第1エネルギー総量及び第2エネルギー総量と、上記の式(1)とに基づいて、波形特徴量を算出する(ステップS520)。
次に、波形特徴量算出部35は、ステップS520において算出した波形特徴量を、イベント情報生成部37に出力する(ステップS530)。そして、波形特徴量算出部35は、ステップS510に遷移し、2つのエネルギー総量が取得されるまで再び待機する。
図12は、測定期間内において時刻情報生成部36が行う処理の流れの一例を示す図である。
時刻情報生成部36は、信号取得部31からトリガー信号が取得されるまで待機する(ステップS610)。
時刻情報生成部36は、信号取得部31からトリガー信号が取得された場合(ステップS610−YES)、当該トリガー信号を取得した時刻を示す情報を、対象信号が信号取得部31により取得され始めた時刻を示す時刻情報として生成する(ステップS620)。
次に、時刻情報生成部36は、ステップS620において生成した時刻情報をイベント情報生成部37に出力する(ステップS630)。そして、時刻情報生成部36は、ステップS610に遷移し、信号取得部31からトリガー信号が取得されるまで再び待機する。
図13は、測定期間内においてイベント情報生成部37が行う処理の流れの一例を示す図である。
イベント情報生成部37は、各種の情報が取得されるまで待機する(ステップS710)。当該各種の情報は、波形情報、第1エネルギー総量、第2エネルギー総量、波形特徴量、時刻情報のそれぞれである。すなわち、イベント情報生成部37は、ステップS710において、波形情報、第1エネルギー総量、第2エネルギー総量、波形特徴量、時刻情報の全部が取得されるまで、待機する。
イベント情報生成部37は、波形情報、第1エネルギー総量、第2エネルギー総量、波形特徴量、時刻情報の全部が取得された場合(ステップS710−YES)、当該全部を含む情報を、イベント情報として生成する(ステップS720)。
次に、イベント情報生成部37は、ステップS720において生成したイベント情報を通信部38に出力する(ステップS730)。そして、イベント情報生成部37は、ステップS710に遷移し、各種の情報が取得されるまで再び待機する。
図14は、測定期間内において通信部38が行う処理の流れの一例を示す図である。
通信部38は、情報処理装置40に出力する情報が取得されるまで待機する(ステップS810)。当該情報は、イベント情報、第2信号情報等である。
通信部38は、情報処理装置40に出力する情報が取得された場合(ステップS810−YES)、当該情報を情報処理装置40に出力する(ステップS820)。例えば、当該情報がイベント情報であった場合、通信部38は、イベント情報を情報処理装置40に出力する。また、例えば、当該情報が第2信号情報であった場合、第2信号情報を情報処理装置40に出力する。そして、通信部38は、ステップS810に遷移し、情報処理装置40に出力する情報が取得されるまで再び待機する。
図15は、測定期間内において第2信号取得部39が行う処理の流れの一例を示す図である。
第2信号取得部39は、ガード検出器SD2から前述の第2信号が取得されるまで待機する(ステップS910)。
第2信号取得部39は、ガード検出器SD2から第2信号情報が取得された場合(ステップS910−YES)、取得した第2信号を示す第2信号情報を生成する(ステップS920)。
次に、第2信号取得部39は、ステップS920において生成した第2信号情報を通信部38に出力する(ステップS930)。そして、第2信号取得部39は、ガード検出器SD2から前述の第2信号が取得されるまで再び待機する。
このように、分析装置30が備える9個のハードウェア機能部は、測定期間内における処理を行う。なお、上記において説明した1つの対象信号に対する処理は、1つのイベントに対する処理に相当する。これは、イベントが発生する毎に信号取得部31から対象信号が出力されるためである。
<放射線の測定を開始した場合において情報処理装置が行う処理>
以下、図16を参照し、放射線の測定を開始した場合において情報処理装置40が行う処理について説明する。図16は、放射線の測定を開始した場合において情報処理装置40が行う処理の流れの一例を示す図である。以下では、一例として、図16に示したステップS1010の処理が開始されるよりも前のタイミングにおいて、放射線の測定を開始する操作を情報処理装置40がユーザーから受け付けている場合について説明する。
イベント情報取得部465は、分析装置30からイベント情報を取得するまで待機する(ステップS1010)。
イベント情報取得部465は、分析装置30からイベント情報を取得したと判定した場合(ステップS1010−YES)、取得したイベント情報を記憶部42に記憶させる(ステップS1020)。
次に、イベント情報取得部465は、ユーザーから受け付けた測定期間が終了したか否かを判定する(ステップS1030)。ここで、イベント情報取得部465は、放射線の測定を開始する操作を受け付けたタイミングから、当該測定期間が経過している場合、当該測定期間が終了したと判定する。一方、イベント情報取得部465は、放射線の測定を開始する操作を受け付けたタイミングから、当該測定期間が経過していない場合、当該測定期間が終了していないと判定する。
イベント情報取得部465は、ユーザーから受け付けた測定期間が終了していないと判定した場合(ステップS1030−NO)、ステップS1010に遷移し、分析装置30からイベント情報を取得するまで再び待機する。
一方、イベント情報取得部465は、ユーザーから受け付けた測定期間が終了したと判定した場合(ステップS1030−YES)、測定期間内において記憶部42に記憶されたすべてのイベント情報を記憶部42から読み出す(ステップS1040)。
次に、分布情報生成部467は、ステップS1040においてイベント情報取得部465が記憶部42から読み出したイベント情報に基づいて、前述の分布情報を生成する(ステップS1050)。当該分布情報は、例えば、二次元ヒストグラム(二次元分布の一例)によって表すことができる。そこで、以下では、二次元ヒストグラムによって表された分布情報を例に挙げて、分布情報について説明する。なお、分布情報は、イベントの頻度と、第2エネルギー総量と、波形特徴量とが対応付けられたテーブル等の他の情報であってもよい。ここで、図17及び図18を参照し、二次元ヒストグラムとして表された分布情報について説明する。
図17は、測定対象放射線のみがホスイッチ検出器10により検出された場合におけるイベント情報に基づいて情報処理装置40に生成される分布情報の一例を示す情報である。このようなイベント情報は、背景放射線を完全に遮蔽することができれば、実験により生成することができる。しかしながら、このような遮蔽は、現実的ではない。このため、当該イベント情報は、背景放射線がホスイッチ検出器10に入射する強度よりも高い強度の測定対象放射線を放射する参照放射線源を資料Smの代わりに用いて測定対象放射線を測定することにより近似的に得られた情報である。なお、当該イベント情報は、モンテカルロ・シミュレーション等のシミュレーションによって得られた情報であってもよい。
また、図18は、背景放射線のみがホスイッチ検出器10により検出された場合におけるイベント情報に基づいて情報処理装置40に生成される分布情報の一例を示す情報である。このようなイベント情報は、試料Smを配置せずに放射線測定装置1による放射線の測定を行うことにより得ることができる。なお、当該イベント情報は、モンテカルロ・シミュレーション等のシミュレーションによって得られた情報であってもよい。モンテカルロ・シミュレーションを用いた場合、背景放射線の起源毎に、分布情報上において現われる背景イベントについてのプロットを含む領域を特定することができる。
図17及び図18に示した分布情報は、両方とも、横軸が第2エネルギー総量を示し、縦軸が波形特徴量を示す。図17及び図18に示した分布情報は、二次元ヒストグラムであるため、本来は色の違いによって頻度が示される。しかしながら、図17及び図18は、白黒図面である関係上、頻度をレベルH1〜レベルH5の5段階のレベルのいずれかに分類した場合における等高線図として表している。例えば、図17及び図18において、最も高い頻度を100%とした場合、頻度が0〜20%の範囲をレベルH1の領域、頻度が21〜40%の範囲をレベルH2の領域、頻度が41〜60%の範囲をレベルH3の領域、頻度が61〜80%の範囲をレベルH4の領域、頻度が81〜100%の範囲をレベルH5の領域として表されている。
図17及び図18を比べることにより、信号イベントについてのレベルH5の領域と、背景イベントについてのレベルH5の領域とは、二次元ヒストグラムとして表された分布情報上において、異なる領域に位置している。このことから、当該分布情報上の領域に対して、何らかの方法によってユーザーが指定した領域内に含まれるプロットに対応するイベント情報を抽出することにより、信号イベントについてのプロットが含まれる領域をできるだけ除去せずに、背景イベントについてのプロットが含まれる領域をできるだけ除去することを、容易に行うことができる。
より具体的には、実際の放射線の測定において放射線測定装置1により生成される分布情報は、図17に示した分布情報上のプロットと、図18に示した分布情報上のプロットとが、1つの二次元ヒストグラム上にプロットされたような情報となる。図19は、実際の放射線の測定において放射線測定装置1により生成される分布情報の一例である。図19に示した領域FLは、ユーザーにより指定された領域の一例である。図19に示した例では、情報処理装置40は、分布情報に含まれるプロットのうち領域FLに含まれるプロットに対応するイベント情報を抽出し、残りのプロットに対応するイベント情報を除去する。
また、このようなイベント情報の抽出と、背景放射線の起源毎に、分布情報上において現われる背景イベントについてのプロットを含む領域を特定することとを組み合わせることにより、信号イベントに対する背景イベントの影響を、より詳細に理解することができる。その結果、情報処理装置40は、より高い精度で、信号イベントについてのイベント情報を分布情報に基づいて抽出することができる。
領域FLのような領域の情報処理装置40への指定は、何らかの条件を情報処理装置40に与えることによって指定してもよく、表示部45に表示された分布情報に対してユーザーがGUI(Graphical User Interface)による描画を行うことによって指定してもよく、他の方法によって指定してもよい。
なお、測定対象放射線の検出効率は、領域FLの位置、形状、広さ等に応じて変化する。例えば、図20は、情報処理装置40により抽出されたイベント情報に基づいて生成された測定対象放射線のエネルギースペクトルを例示する図である。図20に示したエネルギースペクトルSP1及びエネルギースペクトルSP2はそれぞれ、測定対象放射線のエネルギースペクトルの一例である。エネルギースペクトルSP1は、情報処理装置40により生成された分布情報と、ある広さの領域FLとによって抽出されたイベント情報に基づいて生成されたエネルギースペクトルである。一方、エネルギースペクトルSP2は、情報処理装置40により生成された分布情報と、当該広さよりも狭い広さの領域FLとによって抽出されたイベント情報に基づいて生成されたエネルギースペクトルである。エネルギースペクトルSP1とエネルギースペクトルSP2を比較することにより、測定対象放射線の検出効率が、領域FLの位置、形状、広さ等に応じて変化することが分かる。ただし、エネルギースペクトルSP1とエネルギースペクトルSP2とのいずれであっても、測定対象放射線のピークが明確に見えている。これは、背景イベントについてのイベント情報を、高い精度で除去できていることを表している。特に、エネルギースペクトルSP2では、エネルギースペクトルSP1と比べて、背景イベントの数が10分の1程度まで低減されている。これは、領域FLを狭くするほど、背景イベントについてのイベント情報を、より高い精度でより多く除去できることを表している。すなわち、放射線測定装置1は、生成した分布情報に基づいて、信号イベントについてのイベント情報を精度よく抽出することができる。その結果、放射線測定装置1は、抽出した当該イベント情報に基づく処理を精度よく行うことができる。
図16に戻る。ステップS1050において分布情報が生成された後、信号イベント抽出部469は、記憶部42に予め記憶された背景イベント除去条件を記憶部42から読み出す(ステップS1060)。背景イベント除去条件は、前述の領域FLの広さ、形状、大きさ等を指定する条件のことである。信号イベント抽出部469は、読み出した背景イベント除去条件に基づいて、ステップS1050において生成された分布情報上の領域のうち、背景イベント除去条件に基づく領域を生成する。
次に、信号イベント抽出部469は、ステップS1060において生成した領域と、ステップS1050において生成した分布情報とに基づいて、当該領域内に含まれるプロットに対応するイベント情報を、ステップS1040において記憶部42から読み出したイベント情報の中から、測定対象放射線が発生させたイベントについてのイベント情報として抽出する(ステップS1070)。また、ステップS1070において、信号イベント抽出部469は、分析装置30から取得した第2信号情報に基づくアンチ・コインシデンス法によって、ステップS1040において記憶部42から読み出したイベント情報の中から、背景イベントについてのイベント情報を更に除去する。これにより、放射線測定装置1は、信号イベントについてのイベント情報を、より高い精度で抽出することができる。なお、信号イベント抽出部469は、このようなアンチ・コインシデンス法による背景イベントについてのイベント情報の除去を行わない構成であってもよい。
次に、処理部471は、ステップS1070において抽出されたイベント情報に基づく処理を行う(ステップS1080)。例えば、処理部471は、当該イベント情報に基づいて、図20に示したような測定対象放射線のエネルギースペクトルを生成する。また、例えば、処理部471は、当該イベント情報に基づいて、試料Smの測定対象放射線についての放射能を算出する。ステップS1080の処理が行われた後、情報処理装置40は、処理を終了する。
なお、上記において説明した分析装置30が備える機能の一部は、情報処理装置40に備えられる構成であってもよい。
また、上記において説明した情報処理装置40が備える機能の一部は、分析装置30に備えられる構成であってもよい。
以上説明したように、本実施形態における放射線測定装置(上記において説明した例では、放射線測定装置1)は、測定する対象となる測定対象放射線(上記において説明した例では、ストロンチウム90及びイットリウム90から放射されるベータ線)を入射させる入射窓を有し、入射窓に対する相対的な位置のうちの予め決められた位置に、測定対象放射線を放射する放射線源を含む試料(上記において説明した例では、試料Sm)が位置するように設置されるホスイッチ検出器(上記において説明した例では、ホスイッチ検出器10)と、ホスイッチ検出器から出力される信号に基づく処理を行う制御装置(上記において説明した例では、制御装置20)とを備える放射線測定装置であって、ホスイッチ検出器は、放射線の入射に応じて生じるシンチレーション光の減衰時間が第1減衰時間である第1シンチレーター(上記において説明した例では、第1シンチレーターPS1)と、放射線の入射に応じて生じるシンチレーション光の減衰時間が第1減衰時間と異なる第2減衰時間である第2シンチレーター(上記において説明した例では、第2シンチレーターPS2)と、ホスイッチ検出器の筐体内においてシンチレーション光が発せられるイベント毎に、イベントにより発せられたシンチレーション光に応じた信号を出力する光検出器(上記において説明した例では、光検出器Ph)と、を備え、制御装置は、所定の測定期間内において、個々のイベントが発生しているイベント発生期間内にホスイッチ検出器から出力される信号を、イベントに応じた波形を有する対象信号としてイベント毎に取得する信号取得部(上記において説明した例では、信号取得部31)と、信号取得部によりイベント毎に取得された対象信号に基づいて、対象信号が信号取得部により取得され始めてから第2減衰時間が経過するまでの期間内にホスイッチ検出器において発せられたシンチレーション光に応じたエネルギーの総量を示す第2エネルギー総量をイベント毎に算出する第2エネルギー総量算出部(上記において説明した例では、第2エネルギー総量算出部34)と、信号取得部によりイベント毎に取得された対象信号に基づいて、対象信号の波形の特徴を示す波形特徴量をイベント毎に算出する波形特徴量算出部(上記において説明した例では、波形特徴量算出部35)と、第2エネルギー総量算出部により算出された第2エネルギー総量と、波形特徴量算出部により算出された波形特徴量とを含む情報を、イベント情報としてイベント毎に生成するイベント情報生成部(上記において説明した例では、イベント情報生成部37)と、イベント情報生成部によりイベント毎に生成されたイベント情報に基づいて、イベントが発生する頻度についての、波形特徴量と第2エネルギー総量とを変数とする二次元分布を示す分布情報を生成する分布情報生成部(上記において説明した例では、分布情報生成部467)と、分布情報生成部により生成された分布情報が示す二次元分布(上記において説明した例では、二次元ヒストグラム)に基づいて、イベント情報生成部によりイベント毎に生成されたイベント情報の中から、測定対象放射線が発生させたイベントについてのイベント情報を抽出する抽出部(上記において説明した例では、信号イベント抽出部469)と、を備える。これにより、放射線測定装置は、測定対象放射線の検出効率が低下してしまうことを抑制しつつ、抽出したイベント情報に基づく処理を精度よく行うことができる。
また、放射線測定装置では、制御装置は、信号取得部によりイベント毎に取得された対象信号に基づいて、対象信号が信号取得部により取得され始めてから第1減衰時間が経過するまでの期間内にホスイッチ検出器において発せられたシンチレーション光に応じたエネルギーの総量を示す第1エネルギー総量をイベント毎に算出する第1エネルギー総量算出部(上記において説明した例では、第1エネルギー総量算出部33)と、信号取得部によりイベント毎に取得された対象信号に基づいて、対象信号の波形を示す波形情報をイベント毎に生成する波形情報生成部(上記において説明した例では、波形情報生成部32)と、信号取得部によりイベント毎に取得された対象信号に基づいて、対象信号が信号取得部により取得され始めた時刻を示す時刻情報をイベント毎に出力する時刻情報出力部(上記において説明した例では、時刻情報生成部36)と、を更に備え、波形特徴量算出部は、第1エネルギー総量算出部により算出された第1エネルギー総量と、第2エネルギー総量算出部により算出された第2エネルギー総量とに基づいて、波形特徴量をイベント毎に算出し、イベント情報生成部は、波形情報生成部により生成された波形情報と、第1エネルギー総量算出部により算出された第1エネルギー総量と、第2エネルギー総量算出部により算出された第2エネルギー総量と、波形特徴量算出部により算出された波形特徴量と、時刻情報出力部により出力された時刻情報とを含む情報を、イベント情報としてイベント毎に生成する、構成が用いられてもよい。
また、放射線測定装置では、制御装置は、イベント情報生成部によりイベント毎に生成されたイベント情報を記憶する記憶部(上記において説明した例では、記憶部42)を更に備える、構成が用いられてもよい。
また、放射線測定装置では、抽出部は、分布情報が示す二次元分布と、ユーザーにより指定された二次元分布上の領域(上記において説明した例では、領域FL)とに基づいて、イベント情報生成部によりイベント毎に生成されたイベント情報の中から、測定対象放射線が発生させたイベント(上記において説明した例では、信号イベント)についてのイベント情報を抽出する、構成が用いられてもよい。
また、放射線測定装置では、制御装置は、抽出部により抽出されたイベント情報に基づく処理を行う処理部(上記において説明した例では、処理部471)を更に備える、構成が用いられてもよい。
また、放射線測定装置では、測定対象放射線は、ユーザーにより選択された1種類以上の放射性元素のベータ崩壊によって放出されるベータ線である、構成が用いられてもよい。
また、放射線測定装置は、ホスイッチ検出器が有する部位のうちの少なくとも入射窓を含む部位に対してホスイッチ検出器の外側から入射する放射線を遮蔽する遮蔽体(上記において説明した例では、遮蔽体SD1)を更に備え、試料は、入射窓と遮蔽体との間に配置される、構成が用いられてもよい。
また、放射線測定装置は、ホスイッチ検出器の外側からホスイッチ検出器に入射する背景放射線(上記において説明した例では、ガンマ線)のうちの一部を検出するガード検出器(上記において説明した例では、ガード検出器SD2)を備え、抽出部は、ガード検出器から出力される第2信号に基づくアンチ・コインシデンス法によって、イベント情報生成部によりイベント毎に生成されたイベント情報の中から、背景放射線が発生させたイベントについてのイベント情報を除去する、構成が用いられてもよい。
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
また、以上に説明した装置(例えば、制御装置20、分析装置30、情報処理装置40)における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)−ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリー(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。