JP2020156336A - タンパク質細胞表層発現酵母 - Google Patents

タンパク質細胞表層発現酵母 Download PDF

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Abstract

【課題】表層提示技術の発現カセット改良アプローチのみに固執することなく、細胞表層のタンパク質の活性を一層向上させることができるタンパク質表層発現酵母を提供すること。【解決手段】タンパク質を細胞表層発現する形質転換酵母であって、CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子、CWP1遺伝子、およびそれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの細胞壁関連遺伝子を保有する宿主酵母における少なくとも1つの該細胞壁関連遺伝子の機能を欠損しており、かつプロモーター、分泌シグナル配列、該タンパク質をコードするDNA、アンカードメインをコードするDNAおよびターミネーターを含むポリヌクレオチドが導入されている、形質転換酵母を開示する。【選択図】図1

Description

本発明は、タンパク質細胞表層発現酵母に関する。
例えば、リグノセルロース系バイオマスからのエタノールの生産のために、セルロース分解酵素のようなタンパク質を酵母に発現させ、それをその細胞の表層に効率良く提示する表層提示技術が用いられてきた(例えば、特許文献1および2)。こうした表層提示技術の改良のために、従来、高発現プロモーターを用いてタンパク質の発現量を増やすか、または分泌能力が高いシグナル配列を用いて異種タンパク質を効率良く細胞表層へ輸送するように、表層提示を目的とするタンパク質を含む発現カセットを改良するアプローチが取られてきた。
このようなアプローチにより作製されたタンパク質表層発現酵母では、細胞表層のタンパク質の活性を所定レベルまで向上させることができる。しかし、実用性の点、例えばエタノールなどの目的物の工業的生産性を向上させる目的でみれば、未だ十分なニーズに応えているとは言い難く、さらなる表層のタンパク質活性の向上が求められている。
国際公開第2014/157141号 国際公開第2016/017736号
本発明は、従来からの細胞表層提示技術の発現カセット改良アプローチのみに固執することなく、細胞表層のタンパク質の活性を一層向上させることができるタンパク質細胞表層発現酵母を提供することを目的とする。
本発明は、タンパク質を細胞表層発現する形質転換酵母であって、
CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子、CWP1遺伝子、およびそれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの細胞壁関連遺伝子を保有する宿主酵母における少なくとも1つの該細胞壁関連遺伝子の機能を欠損しており、かつ
プロモーター、分泌シグナル配列、該タンパク質をコードするDNA、アンカードメインをコードするDNAおよびターミネーターを含むポリヌクレオチドが導入されている、
形質転換酵母を提供する。
1つの実施形態では、上記形質転換酵母は、CCW12遺伝子およびCCW14遺伝子の少なくとも一方の上記細胞壁関連遺伝子の機能を欠損している。
1つの実施形態では、上記形質転換酵母は、CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子およびCWP1遺伝子の全ての上記細胞壁関連遺伝子の機能を欠損している。
1つの実施形態では、上記形質転換酵母は、SED1遺伝子の機能をさらに欠損している。
1つの実施形態では、上記タンパク質は酵素である。
1つの実施形態では、上記酵素はセルロース分解酵素である。
1つの実施形態では、上記宿主酵母はサッカロマイセス属酵母である。
本発明は、タンパク質を細胞表層発現する形質転換酵母の製造方法を提供し、この方法は、
CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子、CWP1遺伝子、およびそれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの細胞壁関連遺伝子を保有する宿主酵母における、該宿主酵母の少なくとも1つの該細胞壁関連遺伝子の機能を欠損させる工程、および
該宿主酵母に、プロモーター、分泌シグナル配列、該タンパク質をコードするDNA、アンカードメインをコードするDNAおよびターミネーターを含むポリヌクレオチドを導入する工程
を含む。
本発明は、上記形質転換酵母を含む、酵素剤を提供する。
1つの実施形態では、上記酵素剤はバイオマスを用いたエタノール製造のために用いられる。
本発明は、エタノールの製造方法を提供し、この方法は、上記形質転換酵母を、β-1,4結合したグルコース多糖を含む培地で培養する工程を含む。
本発明によれば、酵母の細胞表層の細胞壁構造を変化させることにより、当該細胞表層におけるタンパク質の活性をより向上させることができる。さらに、本発明によれば、例えば、リグノセルロース系バイオマスからエタノールの生産に有用なセルロース分解酵素を細胞表層に発現させた酵母を提供することができる。
サッカロマイセス・セレビシエBY4741株およびその5遺伝子ノックアウト株をそれぞれ宿主として発現カセットX8を含むプラスミドを導入して得られた表層提示形質転換酵母(A:BY-EG-SSSD株およびB:GPIm-EGSD株)のそれぞれの細胞壁の形態を示す電子顕微鏡写真である。 サッカロマイセス・セレビシエBY4741株およびその5遺伝子ノックアウト株をそれぞれ宿主として発現カセットX7を含むプラスミドを導入して得られた表層提示形質転換酵母(BY-BG-SSSD株およびGPIm-BGSD株)の(A)菌体のβ−グルコシダーゼ活性および(B)菌体増殖の経時変化を示すグラフである。 サッカロマイセス・セレビシエBY4741株およびその5遺伝子ノックアウト株を宿主として発現カセットX8を含むプラスミドを導入して得られた表層提示形質転換酵母(BY-EG-SSSD株およびGPIm-EGSD株)の菌体のエンドグルカナーゼ活性を示すグラフである。 サッカロマイセス・セレビシエBY4741株、5遺伝子ノックアウト株、および5遺伝子のうちの2つ(CCW12およびCCW14)または3つ(TIP1、CWP1、およびDAN1)のみをノックアウトした株を宿主として発現カセットX7を含むプラスミドを導入して得られた表層提示形質転換酵母(BY-BG-SSSD株、GPIm-BGSD株、ccw12/ccw14-BGSD株、tip1/cwp1/dan1-BGSD株)の(A)菌体のβ−グルコシダーゼ活性および(B)菌体増殖の経時変化を示すグラフである。 5遺伝子ノックアウト株を宿主として発現カセットX7を含むプラスミドを導入して得られた表層提示形質転換酵母(GPIm-BGSD株)およびその株のSED1遺伝子を追加でノックアウトした形質転換株(GPIm-sed1-BGSD株)の(A)菌体のβ−グルコシダーゼ活性および(B)菌体増殖の経時変化を示すグラフである。 サッカロマイセス・セレビシエBY4741株、CCW12およびCCW14の2遺伝子ノックアウト株、および5遺伝子ノックアウト株を宿主として発現カセットX7を含むプラスミドを導入して得られた表層提示形質転換酵母(BY-BG-SSSD株、ccw12/ccw14-BGSD株、およびGPIm-BGSD株)のセロビオース含有培地における培養の際の培養液中の(A)セロビオースおよび(B)エタノールの濃度の経時変化を示すグラフである。
本発明について、以下、詳細に説明する。
(1.細胞表層提示方法)
まず、本発明のタンパク質細胞表層発現酵母に採用される細胞表層提示方法について説明する。この細胞表層提示方法は、プロモーター、分泌シグナル配列、細胞表層に提示する目的のタンパク質(「目的タンパク質」)をコードするDNA、アンカードメインをコードするDNAおよびターミネーターを含むポリヌクレオチドを用いて行われる。
(1.1 アンカードメインをコードするDNA)
「アンカードメイン」とは、目的タンパク質を酵母の細胞表層に固定化するアンカー活性を有するドメインをいう。「アンカードメイン」としては、例えば、細胞表層局在タンパク質が用いられ得る。「細胞表層局在タンパク質」は、細胞表層に固定化または付着もしくは接着し、そこに局在するタンパク質をいう。細胞表層局在タンパク質としては、脂質で修飾されたタンパク質が知られており、この脂質が膜成分と共有結合することにより細胞膜に固定される。
細胞表層局在タンパク質の代表例として、GPI(glycosyl phosphatidyl inositol(グリコシルホスファチジルイノシトール):エタノールアミンリン酸−6マンノースα−1,2マンノースα−1,6マンノースα−1,4グルコサミンα−1,6イノシトールリン脂質を基本構造とする糖脂質)アンカータンパク質を挙げることができる。GPIアンカータンパク質は、そのC末端に糖脂質であるGPIを有しており、このGPIが細胞膜中のPI(phosphatidyl inositol(ホスファチジルイノシトール))と共有結合することによって細胞膜表面に結合する。
GPIアンカータンパク質のC末端へのGPIの結合は、例えば以下のようにして行われる。GPIアンカータンパク質は、転写および翻訳の後、N末端側に存在する分泌シグナルの作用により小胞体内腔に分泌される。GPIアンカータンパク質のC末端またはその近傍の領域に、GPIアンカーがGPIアンカータンパク質と結合する際に認識されるGPIアンカー付着シグナルと呼ばれる領域が存在する。小胞体内腔およびゴルジ体において、このGPIアンカー付着シグナル領域が切断され、新たに生じるC末端にGPIが結合する。
GPIが結合したタンパク質は、分泌小胞により細胞膜まで運ばれ、GPIが細胞膜のPIに共有結合することにより、細胞膜に固定される。さらに、ホスファチジルイノシトール依存性ホスホリパーゼC(PI−PLC)によりGPIアンカーが切断され、細胞壁に組み込まれることにより細胞壁に固定された状態で、細胞表面に提示される。
細胞表層提示の方法としては、例えば、GPIアンカリング領域を用いる方法が挙げられる。この方法では、「GPIアンカリング領域」として、細胞表層局在タンパク質であるGPIアンカータンパク質の全体、またはその細胞壁結合領域であるGPIアンカー付着シグナル領域を含む領域をコードするDNAを用いることができる。この方法では、「アンカードメイン」として、GPIアンカータンパク質の全体、またはその細胞壁結合領域であるGPIアンカー付着シグナル領域を含む領域が用いられる。GPIアンカリング領域を用いる方法では、GPIアンカー付着シグナルを細胞表層提示に利用する。細胞壁結合領域(GPIアンカー付着シグナル領域)は、通常、細胞表層局在タンパク質のC末端側の領域である。細胞壁結合領域は、GPIアンカー付着シグナル領域を含んでいればよく、融合タンパク質の酵素活性を阻害しない限り、GPIアンカータンパク質のその他の任意の部分を含んでいてもよい。
GPIアンカータンパク質は、酵母細胞で機能するタンパク質であればよい。このようなGPIアンカータンパク質としては、例えば、SED1、α−またはa−アグルチニン(AGα1、AGA1)、TIP1、FLO(例えばFLO1)、CWP1およびCWP2が挙げられる。アンカードメインとして、好ましくは、SED1またはその細胞壁結合領域(GPIアンカー付着シグナル領域)が用いられる。アンカードメインとして、α−アグルチニンのC末端から320アミノ酸を含む領域もまた好適に用いられ、この領域をコードするDNAは、α−アグルチニン遺伝子の3’末端側の半分の領域とも称される。
SED1の遺伝子(Sed1)は、例えば、GenBankに登録された配列情報に基づき、当業者が通常用いる方法を用いて入手することができる(GenBank accession number NM_001180385;NCBI Gene ID:851649)。Sed1のタンパク質コーディング領域の塩基配列を配列番号11(開始メチオニンを除く場合の配列を配列番号47に示す)に示し、コードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号12(開始メチオニンを除く場合の配列を配列番号48に示す)に示す。SED1の細胞壁結合領域は、例えば、配列番号48の110位から338位を含む領域である。SED1をコードするDNAは、配列番号48のアミノ酸配列の全長をコードするポリヌクレオチドであっても、またはアンカー機能を損なわない限り、一部の配列(例えば、配列番号48の110位から338位のアミノ酸配列を含む配列)をコードするDNAであってもよい。
ここで、本明細書において記載されるタンパク質またはペプチドは、開示されたアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、本発明において所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質またはペプチドであってもよく、DNAまたはポリヌクレオチドは、そのようなタンパク質またはペプチドをコードするものを含んでもよい。開示されるアミノ酸配列に対するアミノ酸の変異(例えば、欠失、置換もしくは付加)は、いずれか1種類であってもよいし、2種類以上が組み合わされていてもよい。また、これらの変異の総数は、1または数個であるが、その所望の機能または効果を実質的に有する限り特に限定されず、タンパク質またはペプチドの大きさにも依存し得る。変異の総数としては、例えば、1個以上10個以下、1個以上5個以下、1個以上4個以下、1個以上3個以下、または1個以上2個以下が挙げられるが、これらに限定されない。また、変異の総数は、例えば、以下に説明する配列同一性を満たす範囲内であり得る。アミノ酸置換の例としては、各機能または効果を実質的に保持する限りにおいていずれの置換であってもよい。例えば、保存的置換が挙げられる。保存的置換としては、具体的には以下のグループ内(すなわち、括弧内に示すアミノ酸間)での置換が挙げられる:(グリシン、アラニン)、(バリン、イソロイシン、ロイシン)、(アスパラギン酸、グルタミン酸)、(アスパラギン、グルタミン)、(セリン、トレオニン)、(リジン、アルギニン)、(フェニルアラニン、チロシン)。
他の実施形態としては、本明細書において記載されるタンパク質またはペプチドは、開示されるアミノ酸配列に対して、例えば、70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ本発明において所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質またはペプチドであってもよく、ポリヌクレオチドは、そのようなタンパク質またはペプチドをコードするものであってもよい。アミノ酸配列における配列同一性はまた、開示されるアミノ酸配列に対して、例えば、70%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ本発明において所望の機能または効果を実質的に有するタンパク質またはペプチドをコードするものであってもよい。アミノ酸配列における配列同一性はまた、74%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上であり得る。
本明細書において配列の同一性または類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。配列の「同一性」とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一連の、部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、「類似性」とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一連の、部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸または配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarityと称される。同一性および類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性および類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラム(例えば、Altschulら, J. Mol. Biol.,1990,215:403-410;Altschylら,Nucleic Acids Res., 1997,25:3389-3402)を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。
さらに他の実施形態として、本明細書に記載されるタンパク質またはペプチドは、開示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズしたDNAによりコードされたものであってもよく、そしてポリヌクレオチドは、そのようなハイブリダイズしたDNAを含むものでもよい。開示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとのハイブリダイズについては、好ましくは、ストリンジェントな条件でハイブリダイズする。
ストリンジェントな条件とは、例えば、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、塩基配列の同一性が高い核酸、すなわち開示される塩基配列と例えば、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が例えば、15mM〜750mM、50mM〜750mM、または300mM〜750mM、温度が例えば、25℃〜70℃、50℃〜70℃、または55℃〜65℃、そしてホルムアミド濃度が例えば、0%〜50%、20%〜50%、または35%〜45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、ナトリウム塩濃度が例えば、15mM〜600mM、50mM〜600mM、または300mM〜600mM、そして温度が例えば50℃〜70℃、55℃〜70℃、または60℃〜65℃である。また、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、例えば、DNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaClの存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM NaCl、15mM クエン酸ナトリウムである)の中、65℃でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAが挙げられる。ハイブリダイゼーションは、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd Ed,, Cold Spring Harbor Laboratory(2001)に記載されている方法などの周知の方法で行うことができる。温度が高いほど、または塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり、より相同性(配列同一性)の高いポリヌクレオチドを単離できる。
さらなる他の実施形態として、DNAまたはポリヌクレオチドは、開示される塩基配列と例えば、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の同一性を有する塩基配列を有し、かつその所望の機能または効果を実質的に有するポリヌクレオチドが挙げられる。
所定のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、遺伝暗号の縮重に基づく置換によって、タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく、所定のアミノ酸配列をコードする塩基配列の少なくとも1つの塩基を他の塩基に置換することもできる。
「アンカードメイン」としては、例えば、細胞表層局在タンパク質が糖鎖結合タンパク質である場合(例えば、FLO(例えばFLO1))、その糖鎖結合タンパク質ドメイン(国際公開第02/085935号)を利用することもできる。糖鎖結合タンパク質ドメインを用いた酵母の細胞表層提示方法としては、例えば、細胞表層局在タンパク質の糖鎖結合タンパク質ドメインのN末端側、C末端側、またはN末端側とC末端側との両方に目的タンパク質を融合させた融合タンパク質を発現するように設計されたDNAを、宿主酵母に導入する方法が挙げられる。このような導入されたDNAから発現され、細胞膜外に分泌されたタンパク質は、その糖鎖結合タンパク質ドメインが有する複数の糖鎖が細胞壁中の糖鎖と相互作用を行うことによって、細胞表層に留まり得る。例えば、レクチン、レクチン様タンパク質などの糖鎖結合部位などが挙げられる。糖鎖結合タンパク質ドメインとしては、例えば、代表的には、GPIアンカータンパク質の凝集機能ドメインが挙げられる。「GPIアンカータンパク質の凝集機能ドメイン」とは、GPIアンカリング領域よりもN末端側にあり、複数の糖鎖を有し、酵母細胞間の凝集に関与していると考えられているドメインをいう。
アンカードメインをコードするDNAは、これらを有する微生物から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに由来する核酸を鋳型として、既知の配列情報に基づいて設計したプライマーを用いてPCRによってDNA断片として取得し得る。アンカードメインをコードするDNAは、既知の配列情報に基づいて設計したプローブを用いて、上記ライブラリー由来の核酸に対してハイブリダイゼーションを行うことによって、DNA断片として取得してもよい。アンカードメインをコードするDNAを含む既存のベクターから、DNA断片として切り出して利用することもできる。アンカードメインをコードするDNAは、化学合成法等の当該技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、DNA断片として合成してもよい。
(1.2 分泌シグナル配列)
「分泌シグナル配列」は、分泌シグナルペプチドをコードするDNAである。分泌シグナルペプチドは、ペリプラズムを含む細胞外に分泌される分泌性タンパク質のN末端に通常結合しているペプチドである。このペプチドは、生物間で類似した構造を有しており、例えば20個程度のアミノ酸からなり、N末端付近に塩基性アミノ酸配列を有し、その後に疎水性アミノ酸を多く含んでいる。分泌シグナルは、通常、分泌性タンパク質が細胞内から細胞膜を通過して細胞外へ分泌される際にシグナルペプチダーゼにより分解されることにより除去される。
本発明においては、目的タンパク質を酵母の細胞外に分泌させることができる分泌シグナルペプチドをコードするDNAであれば、どのようなものでも用いることができ、その起源は問わない。目的タンパク質が本来有する分泌シグナルペプチドをコードするDNAを利用することもできる。分泌シグナルの活性を示す限り、天然型タンパク質をコードする塩基配列において、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異を含む塩基配列であってもよく、あるいは1または2以上(例えば数個)アミノ酸が欠失、付加または置換などの変異を含むアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列であってもよい。分泌シグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列およびコードするタンパク質のアミノ酸配列に関して、上記で説明した配列の同一性およびハイブリダイズ条件等が適用される。
例えば、酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の定常期における主要な細胞表層局在タンパク質であるSED1(上記)の分泌シグナルペプチドが挙げられる。この分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列を配列番号45に示し、それをコードするDNAの塩基配列を配列番号44に示す。さらに、例えば、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)などのグルコアミラーゼの分泌シグナルペプチド、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)のグルコアミラーゼの分泌シグナルペプチド、酵母サッカロマイセス・セレビシエのα−またはa−アグルチニンの分泌シグナルペプチド、酵母サッカロマイセス・セレビシエのα因子の分泌シグナルペプチドなどをコードするDNAを好適に用いることができる。リゾプス・オリゼ由来グルコアミラーゼの分泌シグナルペプチド配列は、分泌効率の点で好ましい。また、アスペルギルス・オリゼ由来グルコアミラーゼの分泌シグナルペプチドをコードするDNAも好ましいものとして挙げられる。
分泌シグナルペプチドをコードするDNAは、例えば、既知の配列情報に基づいて設計したプライマーを用いて、所定の酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ)から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに由来する核酸を鋳型としてPCRを行うことによって、DNA断片として取得し得る。分泌シグナルペプチドをコードするDNAは、既知の配列情報に基づいて設計したプローブを用いて、上記ライブラリー由来の核酸に対してハイブリダイゼーションを行うことによって、DNA断片として取得し得る。分泌シグナルペプチドをコードするDNAは、化学合成法等の当技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、DNA断片として合成してもよい。また、分泌シグナルペプチドをコードするDNAを含む既存のベクターから、DNA断片(発現カセットの形態であってもよい)として切り出して利用することもできる。
例えば、SED1の分泌シグナル配列は、アンカードメインをコードするDNAとしてSED1の遺伝子Sed1のコーディング領域およびプロモーターとしてその遺伝子Sed1のプロモーターとともに用いることができる。
(1.3 目的タンパク質)
目的タンパク質の種類、もしくはその起源は特に限定されない。目的タンパク質の種類として、例えば、酵素、抗体、リガンド、蛍光タンパク質などが挙げられる。酵素としては、例えば、セルロース分解酵素、デンプン分解酵素、グリコーゲン分解酵素、キシラン分解酵素、キチン分解酵素、脂質分解酵素などが挙げられ、より具体的には、例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼ、アミラーゼ(例えば、グルコアミラーゼおよびα−アミラーゼ)、リパーゼなどが挙げられる。
目的タンパク質をコードするDNAは、イントロンを除いたcDNA配列が好ましい。
目的タンパク質をコードするDNAは、その全長をコードする配列であってもよく、目的タンパク質の活性を示すものであれば目的タンパク質の一部領域をコードする配列であってもよい。また、上記のように、目的タンパク質の活性を示す限り、天然型タンパク質をコードする塩基配列において、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異を含む塩基配列であってもよく、あるいは1または2以上(例えば数個)アミノ酸が欠失、付加または置換などの変異を含むアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列であってもよい。目的タンパク質をコードするDNAの塩基配列およびコードするタンパク質のアミノ酸配列に関して、上記で説明した配列の同一性およびハイブリダイズ条件等が適用される。
目的タンパク質をコードするDNA(遺伝子)は、そのタンパク質を有するまたは産生する微生物から抽出したDNA、各種cDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーに由来する核酸を鋳型として、既知の配列情報に基づいて設計したプライマーを用いてPCRによって核酸断片として取得し得る。このようなポリヌクレオチドは、既知の配列情報に基づいて設計したプローブを用いて、上記ライブラリー由来の核酸に対してハイブリダイゼーションを行うことによって、DNA断片として取得し得る。また、目的タンパク質をコードするDNAを含む既存のベクターから、DNA断片(発現カセットの形態であってもよい)として切り出して利用することもできる。このような遺伝子は、必要に応じて宿主のコドン頻度を考慮して最適化した配列に基づいて、人工的に合成して得ることもできる。
目的タンパク質の一例として、以下、セルロース分解酵素を例に挙げて説明する。
セルロース分解酵素は、β1,4−グリコシド結合を切断し得る任意の酵素をいう。セルロース分解酵素は、任意のセルロース加水分解酵素生産菌に由来し得る。セルロース加水分解酵素生産菌としては、代表的には、アスペルギルス属(例えば、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、およびアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae))、トリコデルマ属(例えば、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei))、クロストリディウム属(例えば、クロストリディウム・テルモセラム(Clostridium thermocellum)、セルロモナス属(例えば、セルロモナス・フィミ(Cellulomonas fimi)およびセルロモナス・ウダ(Cellulomonas uda))、シュードモナス属(例えば、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescence))などに属する微生物が挙げられる。
以下、代表的なセルロース分解酵素として、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼについて説明するが、セルロース分解酵素はこれらに限定されない。
エンドグルカナーゼは、通常、セルラーゼとも称される酵素であり、セルロースを分子内部から切断し、グルコース、セロビオース、およびセロオリゴ糖を生じる(「セルロース分子内切断」)。エンドグルカナーゼには5種類あり、それぞれエンドグルカナーゼI、エンドグルカナーゼII、エンドグルカナーゼIII、エンドグルカナーゼIV、およびエンドグルカナーゼVと称される。これらの区別は、アミノ酸配列の差異であるが、セルロース分子内切断作用を有する点では共通する。例えば、トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼ(特に、エンドグルカナーゼII:EGII)が用いられ得るが、これに限定されない。
セロビオヒドロラーゼは、セルロースの還元末端または非還元末端のいずれかから分解してセロビオースを遊離する(「セルロース分子末端切断」)。セロビオヒドロラーゼには2種類あり、それぞれセロビオヒドロラーゼIおよびセロビオヒドロラーゼIIと称される。これらの区別は、アミノ酸配列の差異であるが、セルロース分子末端切断作用を有する点では共通する。例えば、トリコデルマ・リーセイ由来セロビオヒドロラーゼ(特に、セロビオヒドロラーゼII:CBHII)が用いられ得るが、これに限定されない。
β−グルコシダーゼは、セルロースの非還元末端からグルコース単位を切り離していくエキソ型の加水分解酵素である(「グルコース単位切断」)。β−グルコシダーゼは、アグリコンまたは糖鎖とβ−D−グルコースとのβ1,4−グリコシド結合を切断し得、セロビオースまたはセロオリゴ糖を加水分解してグルコースを生成し得る。β−グルコシダーゼは、セロビオースまたはセロオリゴ糖を加水分解し得る酵素の代表例である。β−グルコシダーゼは現在、1種類知られており、β−グルコシダーゼ1と称される。例えば、アスペルギルス・アクレアタス由来β−グルコシダーゼ(特に、β−グルコシダーゼ1:BGL1)が用いられ得るが、これに限定されない。
セルロースの良好な加水分解のために、セルロース加水分解様式の異なる酵素を組み合わせてもよい。セルロース分子内切断、セルロース分子末端切断、およびグルコース単位切断などの種々の異なるセルロース加水分解様式で作用する酵素が適宜、組み合わされ得る。それぞれの加水分解様式を有する酵素の例として、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼが挙げられるがこれらに限定されない。セルロース加水分解様式の異なる酵素の組合せは、例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼからなる群から選択され得る。セルロースの構成糖であるグルコースを最終的に生産できることが望ましいので、グルコースを生成し得る酵素を少なくとも1つ含むことが好ましい。グルコースを生成し得る酵素としては、グルコース単位切断酵素(例えば、β−グルコシダーゼ)に加え、エンドグルカナーゼもグルコースを生成し得る。例えば、酵母において、β−グルコシダーゼ、エンドグルカナーゼ、およびセロビオヒドロラーゼを分泌または表層提示させ得る。
(1.4 プロモーター)
プロモーターは、プロモーター活性を有するDNAであり、「プロモーター活性」とは、プロモーター領域に転写因子が結合し、転写を惹起する活性をいう。プロモーターは、例えば、所望のプロモーター領域を保有する菌体、ファージなどから、制限酵素を用いて切り出し得る。必要に応じて制限酵素認識部位またはクローニングベクターとの重複部位を設けたプライマーを用い、PCRで所望のプロモーター領域を増幅することによりプロモーター領域のDNA断片を得ることができる。また、既に判明しているプロモーター領域の塩基配列情報をもとにして、所望のプロモーターを化学合成してもよい。目的の機能を果たすものであれば、プロモーターは、上記のように、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異された塩基配列を有するものであってもよい。このプロモーターを構成する塩基配列には、上記で説明した配列の同一性およびハイブリダイズ条件等が適用される。
プロモーターは、酵母においてプロモーター活性を有する限り、任意のプロモーターであり得る。プロモーターは、発現を目的とする遺伝子自身のものであっても、他の遺伝子由来のものを利用してもよい。また、アンカードメインとして用いられる細胞表層局在タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターであってもよい。例えば、SED1プロモーター、TDH3プロモーター、PGK1プロモーター、CWP2プロモーター、およびTDH1プロモーターが挙げられる。
SED1プロモーターは、SED1(上述)の遺伝子(Sed1)のプロモーターであり、その塩基配列を配列番号46に示す。SED1プロモーターは、SED1の遺伝子Sed1のコーディング領域をアンカードメインとしてコードするDNAと併用されることが好ましい。さらに、SED1分泌シグナル配列と併用することもできる。
(1.5 ターミネーター)
ターミネーターは、ターミネーター活性を有するDNAであり、「ターミネーター活性」とは、ターミネーター領域において転写を終結させる活性をいう。ターミネーターは、例えば、所望のターミネーター領域を保有する菌体、ファージなどから、制限酵素を用いて切り出し得る。必要に応じて制限酵素認識部位またはクローニングベクターの挿入部位を設けたプライマーを用い、PCRで所望のターミネーター領域を増幅することによりターミネーター領域のDNA断片を得ることができる。また、既に判明しているターミネーター領域の塩基配列情報をもとにして、所望のターミネーターを化学合成してもよい。目的の機能を果たすものであれば、ターミネーターは、上記のように、1または2以上(例えば数個)のヌクレオチドが欠失、付加または置換などの変異された塩基配列を有するものであってもよい。このターミネーターを構成する塩基配列には、上記で説明した配列の同一性およびハイブリダイズ条件等が適用される。
ターミネーターとしては、例えば、α−アグルチニンターミネーター、ADH1(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)ターミネーター、TDH3(グリセルアルデヒド−3’−リン酸デヒドロゲナーゼ)ターミネーター、DIT1ターミネーターなどが挙げられる。
(1.6 発現カセットおよび発現ベクターの構築)
本発明中において、「発現カセット」とは、目的タンパク質が発現し得るように、該目的タンパク質をコードするDNAと、その発現を調節するための種々の調節エレメントとが、宿主の微生物または細胞中で機能し得る状態で連結されているDNAまたはポリヌクレオチドをいう。ここで「機能し得る状態で連結されている」とは、目的タンパク質をコードするDNAが、プロモーターの制御下で、そして場合により他の調節エレメントの制御下で、発現されるように、発現カセットまたは発現ベクターに含まれる各構成要素が連結されていることを意味する。各構成要素は、目的タンパク質が発現し得る限りにおいて、それらの要素間にリンカーなどの配列をさらに含んで連結されていてもよい。
細胞表層提示技術に用いられる発現カセット(「表層提示用カセット」ともいう)では、分泌シグナル配列、目的タンパク質をコードするDNA、およびアンカードメインをコードするDNAが、宿主微生物または宿主細胞中で機能し得る状態で連結され得る。分泌シグナル配列は、目的タンパク質をコードするDNAの上流に位置する。目的タンパク質をコードするDNAとアンカードメインをコードするDNAとの配置は、アンカードメインの種類に応じて、発現されるタンパク質が、アンカードメインのN末端またはC末端側に目的タンパク質を融合するように配置される。表層提示用カセットは、例えば、5’末端から3’末端に向かって、分泌シグナル配列、目的タンパク質をコードするDNAおよびアンカードメインをコードするDNAを記載の順に含むか、あるいは分泌シグナル配列、アンカードメインをコードするDNAおよび目的タンパク質をコードするDNAを記載の順に含むように構築される。表層提示用カセットは、分泌シグナル配列の上流にプロモーターをさらに含む。また、表層提示用カセットは、目的タンパク質をコードするDNAおよびアンカードメインをコードするDNAの下流にターミネーターをさらに含む。
本明細書において「発現ベクター」とは、目的タンパク質をコードするDNAの発現のためのユニット(発現カセット)が挿入されたベクターをいい、目的タンパク質をコードするDNAが挿入されたものを含む。発現ベクターは、プラスミドベクターであってもよく、あるいは人工染色体であってもよい。酵母を宿主とする場合、ベクターの調製が容易であり、また酵母細胞の形質転換が容易である点で、プラスミドの形態が好ましい。DNAの取得の簡易化の点からは、酵母と大腸菌とのシャトルベクターであることが好ましい。必要に応じて、ベクターは、調節配列(オペレーター、エンハンサーなど)を含み得る。このようなベクターは、例えば、酵母の2μmプラスミドの複製開始点(Ori)とColE1の複製開始点とを有しており、酵母選択マーカー(以下に説明)および大腸菌の選択マーカー(薬剤耐性遺伝子など)を有する。
酵母選択マーカーとしては、公知の任意のマーカーが利用され得る。例えば、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性マーカー遺伝子(例えば、イミダゾールグリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ(HIS3)をコードする遺伝子、リンゴ酸ベータ−イソプロピルデヒドロゲナーゼ(LEU2)をコードする遺伝子、O−アセチルホモセリンO−アセチルセリンスルフィドリラーゼ(MET15)をコードする遺伝子、トリプトファンシンターゼ(TRP5)をコードする遺伝子、アルギニノコハク酸リアーゼ(ARG4)をコードする遺伝子、N−(5'−ホスホリボシル)アントラニル酸イソメラーゼ(TRP1)をコードする遺伝子、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(HIS4)をコードする遺伝子、オロチジン−5−リン酸デカルボキシラーゼ(URA3)をコードする遺伝子、ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(URA1)をコードする遺伝子、ガラクトキナーゼ(GAL1)をコードする遺伝子、およびアルファ−アミノアジピン酸レダクターゼ(LYS2)をコードする遺伝子など)が挙げられる。例えば、栄養要求性マーカー遺伝子(例えば、HIS3、LEU2、URA3、MET15欠損マーカーなど)が好ましく用いられ得る。
各種配列を含むDNAの合成および結合は、当業者が通常用い得る方法で行われ得る。各構成要素の結合については、例えば、PCR法により適当な制限酵素の認識配列を付与された各構成要素のDNAをその制限酵素で切断し、リガーゼなどを用いて連結すること、One-step isothermal assembly(Nature Methods,2009,6:343-345)を用いて行うこと、あるいはIn-Fusion法(Biotechniques,2007,43:354-359)を用いて行うことができる。
目的タンパク質(例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼなどの酵素、蛍光タンパク質、または各種抗体)をコードする領域(構造遺伝子)、およびプロモーターおよびターミネーターなどの発現調節配列を含むプラスミドから、適宜、ベクターの調製に適した形態で切り出して、インサートを調製することによって利用することもできる。
(2.形質転換酵母の調製)
本発明の形質転換酵母は、上記1で説明した細胞表層提示方法を宿主酵母に適用することにより作製される。本発明の形質転換酵母は、目的のタンパク質を細胞表層にて発現して、その細胞表層に提示するため、「細胞表層発現酵母」または「細胞表層提示酵母」とも称することができる。
「宿主酵母」は、子のう菌酵母(Ascomycetous yeast)に属するものであればよく、特に限定されない。例えば、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、クルイウェロマイセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、スキゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ハンセヌラ属(Hancenula)、クロッケラ属(Kloeckera)、シュワニオマイセス属(Schwanniomyces)、コマガタエラ属(Komagataella)およびヤロウィア属(Yarrowia)などの酵母が挙げられる。
本発明においては、「宿主酵母」は、所定の細胞壁関連遺伝子を保有する宿主酵母である。この所定の細胞壁関連遺伝子とは、CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子およびCWP1遺伝子、およびそれらに相当する遺伝子、ならびにそれらの組み合わせである。
本発明の形質転換酵母の製造方法は、上記所定の細胞壁関連遺伝子を保有する宿主酵母において、この宿主酵母が保有する細胞壁関連遺伝子の少なくとも1つの遺伝子の機能を欠失させる工程、および上記1で説明したようなポリヌクレオチドを宿主酵母に導入する工程を含む。ポリヌクレオチドは、発現カセットの形態であっても発現ベクターの形態であってもよい。遺伝子の機能を欠失させる工程と、ポリヌクレオチドを導入する工程とは、いずれの工程を先に行ってもよい。特に、細胞表層発現するタンパク質を用途に応じて切り替えるのが容易になるという理由から、遺伝子の機能を欠失させる工程を先に行うことが好ましい。
CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子およびCWP1遺伝子はサッカロマイセス属の酵母の細胞壁関連遺伝子として知られている。これらの遺伝子の配列情報は、Saccharomyces genome database(SGD)により入手可能である。CCW12遺伝子は、YLR110Cとも称され、SGD IDは、SGD:S000004100である。この遺伝子のタンパク質コーディング領域の塩基配列およびコードされたタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1および2に示す。CCW14遺伝子は、YLR390W−Aとも称され、SGD IDは、SGD:S000006429である。この遺伝子のタンパク質コーディング領域の塩基配列およびコードされたタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3および4に示す。DAN1遺伝子は、YJR150Cとも称され、SGD IDは、SGD:S000003911である。この遺伝子のタンパク質コーディング領域の塩基配列およびコードされたタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5および6に示す。TIP1遺伝子は、YBR067Cとも称され、SGD IDは、SGD:S000000271である。この遺伝子のタンパク質コーディング領域の塩基配列およびコードされたタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7および8に示す。CWP1遺伝子は、YKL096Wとも称され、SGD IDは、SGD:S000001579である。この遺伝子のタンパク質コーディング領域の塩基配列およびコードされたタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号9および10に示す。
「相当する遺伝子」とは、酵母の細胞壁の構築に影響を及ぼし得る遺伝子であって、CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子、またはCWP1遺伝子と機能的に等価な遺伝子(例えば、異なる名称が付された遺伝子)をいい、これらも本発明における「細胞壁関連遺伝子」として包含される。このような「相当する遺伝子」としては、例えば、サッカロマイセス属以外の酵母における機能的に等価な遺伝子が挙げられる。このような機能的に等価な遺伝子は、例えば、上記各遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列と上記の配列同一性、例えば、74%以上、78%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列であるタンパク質をコードする遺伝子であり得る。
1つの実施形態では、本発明の形質転換酵母は、宿主酵母におけるこれらの遺伝子のうち、CCW12遺伝子およびCCW14遺伝子の少なくとも1つ(または相当する遺伝子)の機能を欠損している。CCW12遺伝子およびCCW14遺伝子の両方の機能を欠損していてもよい。別の実施形態では、本発明の形質転換酵母は、宿主酵母における、CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子およびCWP1遺伝子の全て(または相当する遺伝子)の機能を欠損している。
さらに、宿主酵母は、上記の遺伝子の機能の欠損に加えて、SED1遺伝子(または相当する遺伝子)の機能を欠損していてもよい。SED1遺伝子(Sed1)は、上述の通り、酵母サッカロマイセス・セレビシエの定常期における主要な細胞表層局在タンパク質である。この遺伝子は、YDR077Wとも称され、SGD IDは、SGD:S000002484である。SED1の遺伝子のタンパク質コーディング領域の塩基配列およびコードされたタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号11および配列番号12に示す。「相当する遺伝子」は、上記と同様に、機能的に等価である遺伝子をいい、例えば、配列番号12のアミノ酸配列と上記の配列同一性を有するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
宿主酵母におけるこのような遺伝子の「機能の欠損」は、後述する人為的な操作を通じて対象となる遺伝子の機能が失われることを意味し、宿主酵母に、対象となる遺伝子自体が元々含まれていない場合は除外される。当該遺伝子の機能の欠損は、例えば、宿主酵母におけるこれらの遺伝子の破壊または発現を抑制することによって行われ得る。このような「欠損」の実施形態としては、タンパク質の発現抑制、正常タンパク質の生産量の抑制、および機能しない変異体タンパク質の生産もしくは促進などが挙げられる。そのための遺伝子操作としては、トランスジェニック、遺伝子ノックアウト、ノックインなどが挙げられる。例えば、宿主細胞への遺伝子ノックアウトにより、当該宿主細胞からその遺伝子を完全に欠失させてしまってもよい。遺伝子ノックアウトの方法として、例えば、CRISPR−Cas9システムを用いることができる。
このような欠損酵母は、公知の遺伝子配列情報に基づいて適宜プライマー等を作製し、上記遺伝子操作を行うことによって作製してもよく、市販の欠損株(ノックアウト株)を利用してもよい。市販の欠損株としては、例えば、酵母サッカロマイセス・セレビシエBY4741株(MATα his3 leu2 met15 ura3株)のYeast Knockout Collection(Open Biosystems社、Thermo Fisher Scientific社などより入手)などが挙げられる。
ポリヌクレオチドの宿主酵母への「導入」とは、ポリヌクレオチドまたは発現カセットまたは発現ベクター中の発現を目的とする遺伝子(目的タンパク質をコードするDNA)が宿主細胞に導入されるだけでなく、宿主細胞で発現されることも含む。導入方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。代表的には、上記説明した本発明の発現ベクターを用いて酵母を形質転換する方法が挙げられる。形質転換方法は、特に限定されず、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、酢酸リチウム法、プロトプラスト法などのトランスフェクション法やマイクロインジェクション法のような公知の方法を制限なく使用できる。導入された遺伝子は、プラスミドの形態で存在してもよく、または酵母の染色体に挿入された形態あるいは酵母の染色体に相同組換えにより組み込まれた形態で存在してもよい。
ポリヌクレオチドが導入された酵母は、常法に従い、酵母選択マーカーによる形質または目的タンパク質の活性などを指標として選択することができる。
また、得られた酵母の細胞表層に目的タンパク質が固定(細胞表層提示)されていることは、常法により確認することができる。例えば、被験酵母に、このタンパク質に対する抗体と、FITCのような蛍光標識2次抗体またはアルカリフォスファターゼのような酵素標識2次抗体などとを作用させる方法、このタンパク質に対する抗体とビオチン標識2次抗体とを反応させた後さらに蛍光標識ストレプトアビジンを作用させる方法などが挙げられる。
複数種のタンパク質を細胞表層提示発現するように、酵母を形質転換することもできる。この場合、複数種のタンパク質のそれぞれをコードする配列の遺伝子発現カセットを含むそれぞれの発現ベクターを構築してもよく、複数の遺伝子発現カセットを1つの発現ベクターに入れることもできる。
本発明の形質転換酵母は、一般的に酵母に適用可能な培養条件下で培養し得る。形質転換酵母の培養は、当業者に周知の方法により適宜実施できる。培地組成、培養pHおよび培養温度は、その酵母の性質および目的タンパク質に応じて、適宜設定し得る。培養の際の菌体密度および培養時間もまた、その酵母の性質および目的タンパク質に応じて適宜設定し得る。
本発明の形質転換酵母は、目的タンパク質に応じて、種々の用途に用いられる。例えば、目的タンパク質が酵素である実施形態では、本発明の形質転換酵母(酵素表層提示酵母)を含む酵素剤がさらに提供される。このような酵素剤は、例えば、酵素表層提示酵母および当該表層提示酵母を維持し得る培地を含む懸濁液、または凍結乾燥した酵素表層提示酵母の形態が挙げられる。このような酵素剤は、生体触媒として用いることができる。「生体触媒」は、酵素表層提示酵母の細胞表層に提示された酵素の活性を利用する用途で用いられるもの、ならびに酵素表層提示酵母の細胞表層に提示された酵素の活性と当該酵母自体の発酵能との両方を利用する用途で用いられるものの両方を包含する。酵素剤が、例えば、セルロース分解酵素、デンプン分解酵素などを細胞表層発現する酵母を含む場合、その酵素剤は、表層提示された酵素が基質とする多糖の分解(糖化)と酵母の発酵との両方の反応を触媒することができる。例えば、セルロース分解酵素を細胞表層発現する酵母を含む酵素剤は、例えば、バイオマスを用いたエタノール製造のために用いることができる。さらに、例えば、リパーゼを細胞表層発現する酵母は、生体触媒として、バイオディーゼルの製造に用いることができる。例えば、抗体またはリガンドを細胞表層発現する酵母は、抗体またはリガンドのライブラリーとして利用し得る。
(3.エタノールの製造方法)
本発明によるセルロース分解酵素を細胞表層発現する酵母は、例えばエタノールの製造に用いられ得る。このような酵母は、例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼからなる群から選択される少なくとも1つの酵素を細胞表層提示する酵母(本明細書中、「セルラーゼ細胞表層提示酵母」ともいう)である。あるいは、このような酵母は、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼからなる群から選択される2種の酵素;またはエンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、およびβ−グルコシダーゼを細胞表層提示する酵母であってもよい。
セルラーゼ細胞表層提示酵母は、β-1,4結合したグルコース多糖を発酵基質として利用し得る。β-1,4結合したグルコース多糖では、多糖を構成する1つのβ−グルコースの1位と別のβ−グルコースの4位との間でグリコシド結合(β-1,4グリコシド結合)が形成されている。β-1,4結合したグルコース多糖としては、セルロースおよびその糖化物(例えば、セロビオース、セロオリゴ糖)が挙げられる。β-1,4結合したグルコース多糖について、それらの入手源または材料として、例えば、バイオマスが挙げられる。バイオマスとは、枯渇性資源ではない、現生生物体構成物質起源の産業資源をいう。すなわち、バイオマスとは、再生可能な、生物由来の有機性資源から化石資源を除いたものをいう。バイオマスは、セルロースを含み得る。バイオマスとしては、特に限定されず、例えば、資源作物またはその廃棄物が挙げられる。資源作物としては、特に限定されず、例えば、トウモロコシ、サトウキビが挙げられ、さらに資源作物の廃棄物の例としては、これらの処理工程で発生する廃棄物が挙げられる。リグノセルロース系バイオマスは、食糧と競合しない点で好ましい材料である。リグノセルロース系バイオマスとしては、特に限定されず、例えば、イネ、ムギ、ススキ、ヨシなどのイネ科植物の食糧となる部位を除く部位(例えば、籾殻、根、茎、葉)、およびこれらの部位でなる製品から生じた廃棄物が挙げられる。
必要に応じて、発酵基質材料(例えば、バイオマス)を、発酵に供する前に前処理してもよい。このような前処理は、「糖化」により、バイオマス中の多糖類(例えば、セルロース)をオリゴ糖または単糖に分解し得る。前処理方法としては、特に限定されないが、例えば、酵素法、希硫酸法、水熱分解法が挙げられる。コストの点で、希硫酸法、水熱分解法が好ましい。希硫酸法では、例えば、1%(v/v)〜5%(v/v)の希硫酸で材料を180℃〜200℃にて5分〜1時間程度処理する。水熱分解法では、例えば、130℃〜300℃にて10MPa程度の水で材料を処理する。
セルラーゼ細胞表層提示酵母は、発酵に供する前に好気的条件下で培養することにより、その菌体量を増加させ得る。形質転換酵母の培養は、当業者に周知の方法により適宜実施できる。培地のpHは、例えば4〜6、好ましくは5である。好気的培養時の培地中の溶存酸素濃度は、例えば0.5ppm〜6ppm、好ましくは1ppm〜4ppm、より好ましくは2ppmである。培養温度は、例えば20℃〜45℃、好ましくは25℃〜35℃、より好ましくは30℃である。酵母菌体量が例えば10g(湿潤量)/L以上、好ましくは12.5g(湿潤量)/L、より好ましくは15g(湿潤量)/L以上になるまで培養することが好ましく、培養時間は例えば24時間〜96時間程度である。
発酵培養では、酵母に一般的に適用される培養条件を適宜選択して用いることができる。典型的には、発酵のための培養のために、静置培養、振とう培養または通気攪拌培養等を用いることができる。通気条件は、嫌気条件下、微好気条件下、および好気条件などから適宜選択することができる。培養温度は、例えば25℃〜45℃、好ましくは30℃〜40℃、より好ましくは35℃である。培養時間は、必要に応じて任意の時間が設定され得、例えば24時間〜120時間などの範囲内の培養時間に設定することができる。pHの調整は、無機あるいは有機酸、アルカリ溶液などを用いて行うことができる。発酵培地には、発酵基質に加えて、酵母の培養のために添加され得る培地成分を必要に応じてさらに含めることもできる。
エタノール発酵終了後、培養液(発酵液)からエタノール含有画分を回収する工程、さらにこれを精製または濃縮する工程を実施することもできる。これらの工程およびそれらに要する手段は、当業者によって適宜選択される。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
本実施例で用いた酵母サッカロマイセス・セレビシエのBY4741株およびBY4741sed1Δ株は、Thermo Fisher Scientific社より入手した。
本実施例に示す全てのPCR法には、KOD−Plus−Neo−DNAポリメラーゼ(東洋紡績株式会社製)を用いて実施した。
本実施例に示す全ての酵母への遺伝子導入は、酢酸リチウム法によって実施した。
(調製例1:Cas9エンドヌクレアーゼ発現カセットを含有するベクタープラスミドの調製)
下記発現カセットX1を含むプラスミドを調製した:
X1:TEF1プロモーター+Cas9エンドヌクレアーゼ+CYC1ターミネーター
上記発現カセットに含まれる各構成要素の塩基配列およびアミノ酸配列は、以下に示されるとおりである:
配列番号13:サッカロマイセス・セレビシエ由来のTEF1のプロモーターの塩基配列
配列番号14:ストレプトコッカス・パイロジェネス由来のCas9エンドヌクレアーゼをコードするDNAの塩基配列(両端にシミアンウイルス40由来の核移行シグナル(SV40 NLS)配列を含む)
配列番号15:ストレプトコッカス・パイロジェネス由来のCas9エンドヌクレアーゼのアミノ酸配列(両端にシミアンウイルス40由来の核移行シグナル(SV40 NLS)配列を含む)
配列番号16:サッカロマイセス・セレビシエ由来のCYC1のターミネーターの塩基配列
以下、本実施例で用いるCas9発現カセットを含有するプラスミドの調製手順について説明する。
サッカロマイセス・セレビシエ由来の遺伝子TEF1について、PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株ゲノムを鋳型とし、プライマー対TEF1pCas9-F(配列番号17)およびTEF1pCas9-R(配列番号18)を用いて増幅し、TEF1プロモーター領域を含むDNA断片を調製した。同様に、サッカロマイセス・セレビシエ由来の遺伝子CYC1について、PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株ゲノムを鋳型とし、プライマー対CYC1tCas9-F(配列番号19)およびDIT1t-NcoI-R(配列番号20)を用いて増幅し、CYC1遺伝子のコーディング領域下流のターミネーター領域を含むDNA断片を調製した。さらに、PCR法により、プラスミドCas9_Base(SCIENTIFIC REPORTS, 7: 8993, DOI:10.1038/s41598-017-08356-5)を鋳型とし、プライマー対Cas9-F(配列番号21)およびCas9-R(配列番号22)を用いて増幅し、ストレプトコッカス・パイロジェネス由来Cas9エンドヌクレアーゼ遺伝子のコーディング領域を含むDNA断片を調製した。これらの断片を、TEF1プロモーター領域、Cas9エンドヌクレアーゼ遺伝子コーディング領域、CYC1ターミネーター領域の順番になるようにOverlap extension PCR法により連結し、発現カセットX1を含むDNA断片を調製した。最後に、このDNA断片をXhoIおよびNotI-HFで処理したプラスミドpGK415(栄養要求性マーカー遺伝子LEU2を有する低コピープラスミドベクター:J. Biochem. 2009;145(6)701-708)にIn-Fusion法により連結し、得られたプラスミドをpCL-Cas9と命名した。
(調製例2:ガイドRNA(gRNA)発現カセットを含有するベクタープラスミドの調製)
下記発現カセットX2〜X6をそれぞれ、または複数含むプラスミドを調製した:
X2:SNR52プロモーター+CCW12用gRNA+gRNAscafold+SUP4ターミネーター
X3:SNR52プロモーター+CCW14用gRNA+gRNAscafold+SUP4ターミネーター
X4:SNR52プロモーター+DAN1用gRNA+gRNAscafold+SUP4ターミネーター
X5:SNR52プロモーター+TIP1用gRNA+gRNAscafold+SUP4ターミネーター
X6:SNR52プロモーター+CWP1用gRNA+gRNAscafold+SUP4ターミネーター
上記発現カセットに含まれる各構成要素の塩基配列およびアミノ酸配列は、以下に示されるとおりである:
配列番号23:サッカロマイセス・セレビシエ由来の核小体低分子RNA(snoRNA)遺伝子SNR52のプロモーターの塩基配列
配列番号24:CCW12用gRNAの塩基配列
配列番号25:CCW14用gRNAの塩基配列
配列番号26:DAN1用gRNAの塩基配列
配列番号27:TIP1用gRNAの塩基配列
配列番号28:CWP1用gRNA
配列番号29:gRNAscafoldの塩基配列
配列番号30:サッカロマイセス・セレビシエ由来のtRNA遺伝子SUP4のターミネーターの塩基配列
以下、本実施例で用いるガイドRNA(gRNA)発現カセットを含有する各種プラスミドの調製手順について説明する。
PCR法により、プラスミドpGK426(栄養要求性マーカー遺伝子URA3を有する高コピープラスミドベクター:J. Biochem. 2009;145(6)701-708)を鋳型とし、プライマー対Guide-F1(配列番号31)およびGuide-R1(配列番号32)を用いて増幅し、得られたDNA断片をIn-Fusion法により環状化した。さらに、PCR法により、この環状DNAを鋳型とし、プライマー対Guide-F2(配列番号33)およびGuide-R2(配列番号34)を用いて増幅することで、gRNAscafold配列およびサッカロマイセス・セレビシエ由来のtRNA遺伝子SUP4のコーディング領域下流のターミネーター領域を含むベクターDNA断片を調製した。続いて、サッカロマイセス・セレビシエ由来の核小体低分子RNA(snoRNA)遺伝子SNR52について、PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株ゲノムを鋳型とし、プライマー対SNR52p-F(配列番号35)およびSNR52p-R(配列番号36)を用いて増幅し、SNR52プロモーター領域を含むDNA断片を調製した。さらに、このDNA断片を鋳型とし、プライマー対SNR52p-F(配列番号35)およびSNR52p-R-CCW12(配列番号37)、SNR52p-R-CCW14(配列番号38)SNR52p-R-DAN1(配列番号39)、SNR52p-R-TIP1(配列番号40)、またはSNR52p-R-CWP1(配列番号41)を用いて増幅することで、SNR52プロモーター領域の下流にCCW12用gRNA、CCW14用gRNA、DAN1用gRNA、TIP1用gRNA、またはCWP1用gRNAが連結されたDNA断片をそれぞれ調製した。これらのDNA断片をそれぞれ上記のベクターDNA断片にIn-Fusion法により連結し、得られた発現カセットX2、X3、X4、X5、またはX6を含むプラスミドをそれぞれp2gRNA-CCW12、p2gRNA-CCW14、p2gRNA-DAN1、p2gRNA-TIP1、およびp2gRNA-CWP1と命名した。
PCR法により、プラスミドp2gRNA-CCW14を鋳型とし、プライマー対gRNA-F(配列番号42)およびgRNA-R(配列番号43)を用いて増幅し、発現カセットX3を含むDNA断片を調製した。この断片を、SmaIで処理したプラスミドp2gRNA-CCW12にIn-Fusion法により連結し、得られた発現カセットX2およびX3を含むプラスミドをp2gRNA-CCW12/CCW14と命名した。
PCR法により、プラスミドp2gRNA-CWP1を鋳型とし、プライマー対gRNA-F(配列番号42)およびgRNA-R(配列番号43)を用いて増幅し、発現カセットX6を含むDNA断片を調製した。この断片を、SmaIで処理したプラスミドp2gRNA-TIP1にIn-Fusion法により連結し、得られた発現カセットX5およびX6を含むプラスミドをp2gRNA-TIP1/CWP1と命名した。
PCR法により、プラスミドp2gRNA-DAN1を鋳型とし、プライマー対gRNA-F(配列番号42)およびgRNA-R(配列番号43)を用いて増幅し、発現カセットX4を含むDNA断片を調製した。この断片を、SmaIで処理したプラスミドp2gRNA-CCW12/CCW14にIn-Fusion法により連結し、得られた発現カセットX2、X3、およびX4を含むプラスミドをp2gRNA-CCW12/CCW14/DAN1と命名した。
PCR法により、プラスミドp2gRNA-DAN1を鋳型とし、プライマー対gRNA-F(配列番号42)およびgRNA-R(配列番号43)を用いて増幅し、発現カセットX4を含むDNA断片を調製した。この断片を、SmaIで処理したプラスミドp2gRNA-TIP1/CWP1にIn-Fusion法により連結し、得られた発現カセットX4、X5、およびX6を含むプラスミドをp2gRNA-TIP1/CWP1/DAN1と命名した。
(調製例3:細胞表層発現カセットを含有するベクタープラスミドの調製)
下記発現カセットX7およびX8をそれぞれ含むプラスミドを調製した:
X7:SED1プロモーター+SED1分泌シグナル+BGL1+SED1アンカードメイン+DIT1ターミネーター
X8:SED1プロモーター+SED1分泌シグナル+EGII+SED1アンカードメイン+DIT1ターミネーター
上記発現カセットに含まれる各構成要素の塩基配列およびアミノ酸配列は、以下に示されるとおりである:
配列番号44:サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1の分泌シグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列
配列番号45:サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1の分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列
配列番号46:サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1のプロモーターの塩基配列
配列番号47:本発明の実施例においてSED1アンカードメインとして用いた、サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1アンカータンパク質のコーディング領域から開始コドンを除いた領域のDNAの塩基配列
配列番号48:本発明の実施例においてSED1アンカードメインとして用いた、サッカロマイセス・セレビシエ由来のSED1アンカータンパク質(但し開始メチオニンを含まない)のアミノ酸配列
配列番号49:アスペルギルス・アクレアタス由来β−グルコシダーゼ1(BGL1)をコードするDNAの塩基配列
配列番号50:アスペルギルス・アクレアタス由来β−グルコシダーゼ1(BGL1)のアミノ酸配列
配列番号51:トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(EGII)をコードするDNAの塩基配列
配列番号52:トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(EGII)のアミノ酸
配列番号53:サッカロマイセス・セレビシエ由来のDIT1のターミネーターの塩基配列
以下、本実施例で用いる細胞表層発現カセットを含有するプラスミドの調製手順について説明する。
サッカロマイセス・セレビシエ由来の遺伝子DIT1について、PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株ゲノム(Biotechniques.2011, 50(5):325-328に記載の方法により調製した)を鋳型とし、プライマー対DIT1t-BsrGI-F(配列番号54)およびDIT1t-NcoI-R(配列番号55)を用いて増幅し、DIT1遺伝子のコーディング領域下流のターミネーター領域を含むDNA断片を調製した。他方で、ベクタープラスミドpIEG-SSS(栄養要求性マーカー遺伝子HIS3、およびEG発現カセット(すなわち、SED1プロモーター、SED1の分泌シグナルペプチド配列、トリコデルマ・リーセイ由来エンドグルカナーゼII(「EGII」)遺伝子のコーディング領域、SED1遺伝子のコーディング領域、およびα−アグルチニン遺伝子のコーディング領域下流445bpのターミネーター領域がこの順に配置されているカセットを有する表層発現用ベクター: Biotechnology and Bioengineering, Vol.113, No.11, 2016, 2358-2366)を鋳型とし、プライマー対pRS403-NcoI-F(配列番号56)およびSED1a-BsrGI-R(配列番号57)を用いて増幅することにより、このプラスミドのα−アグルチニン遺伝子のターミネーター領域を除いた全長を含むDNA断片を調製した。これらの断片をそれぞれBsrGIおよびNcoIで処理し、ライゲーション法により連結した。得られた発現カセットX8を含むプラスミドをpIEG-SSSDと命名した。
プラスミドpIBG-SSS(栄養要求性マーカー遺伝子HIS3、およびBGL発現カセット(すなわち、SED1プロモーター、SED1の分泌シグナルペプチド配列、アスペルギルス・アクレアータス由来β−グルコシダーゼ1(「BGL1」)遺伝子のコーディング領域、SED1遺伝子のコーディング領域、およびα−アグルチニン遺伝子のコーディング領域下流445bpのターミネーター領域がこの順に配置されているカセットを有する表層発現用ベクター:Biotechnology and Bioengineering, Vol.113, No.11, 2016, 2358-2366)をNdeIおよびBsrGIで処理し、栄養要求性マーカー遺伝子HIS3の一部、SED1プロモーター、SED1の分泌シグナルペプチド配列、BGL遺伝子のコーディング領域、およびSED1遺伝子のコーディング領域を含むDNA断片を調製した。このDNA断片を、同様にNdeIおよびBsrGIで処理したプラスミドpIEG-SSSDにライゲーション法により連結した。得られた発現カセットX7を含むプラスミドをpIBG-SSSDと命名した。
(調製例4:遺伝子ノックアウト酵母の調製)
以下、本実施例で用いる遺伝子ノックアウト酵母のCRISPR-Cas9システムを介した調製手順について説明する。
調製例1に記載のプラスミドpCL-Cas9を酵母サッカロマイセス・セレビシエBY4741株(MATα his3 leu2 met15 ura3株)に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(ヒスチジン、メチオニン、およびウラシルを補充)にて選択を行うことで、pCL-Cas9を保持する形質転換株を獲得した。次に、調製例2に記載のプラスミドp2gRNA-CCW12/CCW14/DAN1と、CCW12、CCW14、およびDAN1遺伝子のコーディング領域とそれぞれ相同性を有し、かつ特定のアミノ酸コドンが終止コドンに置き換えられた配列を持つ2本鎖のオリゴDNA(配列番号58、59、および60)を混合して上記の形質転換株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(ヒスチジンおよびメチオニンを補充)にて選択を行うことで、pCL-Cas9およびp2gRNA-CCW12/CCW14/DAN1を保持する形質転換株を獲得した。得られた形質転換株のうち、シーケンス解析によりゲノム上のCCW12、CCW14、およびDAN1遺伝子の標的コドンがすべて終止コドンに置換されていることが確認できた株について、SD培地(ヒスチジン、メチオニン、およびウラシルを補充)にて数日間培養してプラスミドp2gRNA-CCW12/CCW14/DAN1を菌体から脱落させた。その後、SD培地(ヒスチジンおよびメチオニンを補充)において生育が見られないことが確認できた株を、CCW12、CCW14、およびDAN1遺伝子がノックアウトされた株として選択した。この株をBY-ccw12/ccw14/dan1株と称する。
調製例2に記載のプラスミドp2gRNA-TIP1/CWP1と、TIP1およびCWP1遺伝子のコーディング領域とそれぞれ相同性を有し、かつ特定のアミノ酸コドンが終止コドンに置き換えられた配列を持つ2本鎖のオリゴDNA(配列番号61および62)を混合してBY-ccw12/ccw14/dan1株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(ヒスチジンおよびメチオニンを補充)にて選択を行うことで、pCL-Cas9およびp2gRNA-TIP1/CWP1を保持する形質転換株を獲得した。得られた形質転換株のうち、シーケンス解析によりゲノム上のTIP1およびCWP1遺伝子の標的コドンがすべて終止コドンに置換されていることが確認できた株について、YPD培地にて数日間培養してプラスミドpCL-Cas9およびp2gRNA-TIP1/CWP1を菌体から脱落させた。その後、SD培地(ヒスチジン、メチオニン、およびロイシンを補充)およびSD培地(ヒスチジン、メチオニン、およびウラシルを補充)の両方において生育が見られないことが確認できた株を、CCW12、CCW14、DAN1、TIP1、およびCWP1遺伝子がノックアウトされた株として選択した。この株をGPImutant株と称する。
(調製例5:細胞表層発現酵母の調製)
以下、各種細胞表層発現酵母の調製手順について説明する。
(5−1:5遺伝子ノックアウト株を宿主とするβ−グルコシダーゼ(BGL)表層提示株)
調製例3に記載のプラスミドpIBG-SSSDをNdeIで処理し、それぞれ酵母サッカロマイセス・セレビシエBY4741株およびGPImutant株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(メチオニン、ロイシン、およびウラシルを補充)にて選択を行うことで、形質転換株を獲得した。これらの形質転換株をそれぞれBY-BG-SSSD株(BY4741株を宿主とするBGL細胞表層提示株)およびGPIm-BGSD株(5遺伝子ノックアウト株を宿主とするBGL細胞表層提示株)と称する。
(5−2:5遺伝子ノックアウト株を宿主とするエンドグルカナーゼ(EG)表層提示株)
調製例3に記載のプラスミドpIEG-SSSDをNdeIで処理し、それぞれ酵母サッカロマイセス・セレビシエBY4741株およびGPImutant株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(メチオニン、ロイシン、およびウラシルを補充)にて選択を行うことで、形質転換株を獲得した。これらの形質転換株をそれぞれBY-EG-SSSD株(BY4741株を宿主とするEG細胞表層提示形質転換株)およびGPIm-EGSD株(5遺伝子ノックアウト株を宿主とするEG細胞表層提示形質転換株)と称する。
BY-EG-SSSD株およびGPIm-EGSD株のそれぞれの細胞壁を透過型電子顕微鏡にて観察した。これらの電子顕微鏡写真を図1に示す(A:BY-EG-SSSD株およびB:GPIm-EGSD株)。GPIm-EGSD株では、BY-EG-SSSD株と比べて、細胞壁の細胞外側の表面にブラシ状構造の乱れが観察された。細胞壁の厚みには両株間であまり大きな差は見られなかった。
(5−3:CCW12およびCCW14遺伝子がノックアウトされた細胞表層発現酵母株)
調製例1に記載のプラスミドpCL-Cas9をBY-BG-SSSD株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(メチオニンおよびウラシルを補充)にて選択を行うことで、pCL-Cas9を保持する形質転換株を獲得した。次に、調製例2に記載のプラスミドp2gRNA-CCW12/CCW14と、CCW12およびCCW14遺伝子のコーディング領域とそれぞれ相同性を有し、かつ特定のアミノ酸コドンが終止コドンに置き換えられた配列を持つ2本鎖のオリゴDNA(配列番号58および59)を混合して上記の形質転換株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(メチオニンを補充)にて選択を行うことで、pCL-Cas9およびp2gRNA-CCW12/CCW14を保持する形質転換株を獲得した。得られた形質転換株のうち、シーケンス解析によりゲノム上のCCW12およびCCW14遺伝子の標的コドンがすべて終止コドンに置換されていることが確認できた株について、SD培地(メチオニン、ロイシン、およびウラシルを補充)にて数日間培養してプラスミドpCL-Cas9およびp2gRNA-CCW12/CCW14を菌体から脱落させた。その後、SD培地(メチオニンおよびロイシンを補充)およびSD培地(メチオニンおよびウラシルを補充)の両方において生育が見られないことが確認できた株を、CCW12およびCCW14遺伝子がノックアウトされた細胞表層発現酵母株として選択した。この株をccw12/ccw14-BGSD株と称する。
(5−4:TIP1、CWP1、およびDAN1遺伝子がノックアウトされた細胞表層発現酵母株)
調製例1に記載のプラスミドpCL-Cas9をBY-BG-SSSD株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(メチオニンおよびウラシルを補充)にて選択を行うことで、pCL-Cas9を保持する形質転換株を獲得した。次に、調製例2に記載のプラスミドp2gRNA-TIP1/CWP1/DAN1と、DAN1、TIP1、およびCWP1遺伝子のコーディング領域とそれぞれ相同性を有し、かつ特定のアミノ酸コドンが終止コドンに置き換えられた配列を持つ2本鎖のオリゴDNA(配列番号60、61、および62)を混合して上記の形質転換株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(メチオニンを補充)にて選択を行うことで、pCL-Cas9およびp2gRNA-CCW12/CCW14/DAN1を保持する形質転換株を獲得した。得られた形質転換株のうち、シーケンス解析によりゲノム上のTIP1、CWP1、およびDAN1遺伝子の標的コドンがすべて終止コドンに置換されていることが確認できた株について、SD培地(メチオニン、ロイシン、およびウラシルを補充)にて数日間培養してプラスミドpCL-Cas9およびp2gRNA-TIP1/CWP1/DAN1を菌体から脱落させた。その後、SD培地(メチオニンおよびロイシンを補充)およびSD培地(メチオニンおよびウラシルを補充)の両方において生育が見られないことが確認できた株を、TIP1、CWP1、およびDAN1遺伝子がノックアウトされた細胞表層発現酵母株として選択した。この株をtip1/cwp1/dan1-BGSD株と称する。
(5−5:6遺伝子ノックアウト細胞表層発現酵母株)
PCR法により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741sed1Δ株ゲノム(Biotechniques.2011, 50(5):325-328に記載の方法により調製した)を鋳型とし、プライマー対sed1-F(配列番号63)およびsed1-R(配列番号64)を用いて増幅し、SED1遺伝子のコーディング領域上流520bpの領域、抗生物質G418耐性マーカー遺伝子kanMX遺伝子、およびSED1遺伝子のコーディング領域下流526bpの領域をこの順番で含むDNA断片を調製した。このDNA断片をGPIm-BGSD株に供し、酢酸リチウム法により導入した。その後、SD培地(メチオニン、ロイシン、ウラシル、およびG418を補充)にて選択を行うことで、形質転換株を獲得した。この形質転換株をGPIm-sed1-BGSD株と称する。
(試験例1:β−グルコシダーゼ(BGL)活性の検討)
酵母菌体のβ−グルコシダーゼ(BGL)活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(U)の検討を以下の手順に従って行った。
菌体をSD培地(ロイシン、メチオニン、およびウラシルを補充)5mLに移植し、30℃、180rpmにて18時間培養し(前培養)、次いで1×YPD培地50mLに移植し(初発OD600=0.05)、30℃、150rpmにて培養した(本培養)。本培養開始からの24時間経過ごとに培養液をそれぞれ回収し、1,000g、5分間の遠心分離にて菌体と培地とを分離した。
菌体のβ−グルコシダーゼ活性の測定は、以下のように行った:
(1)菌体を蒸留水で2回洗浄;
(2)反応液500μL(組成:10mM pNPG(p−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド)100μL(最終濃度2mM);500mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0) 50μL(最終濃度50mM);蒸留水250μL;および酵母懸濁液100μL)(最終菌体濃度1〜10g湿潤菌体/L))を調製し、500rpm、30℃にて10分間反応;
(3)反応終了後、3M NaCO 500μLを加え反応を停止;そして
(4)10,000gで5分間遠心後、上清の400nmにおける吸光度ABS400を測定。1分間で1μmolのpNP(p−ニトロフェノール)を遊離する酵素量を1Uとする。
(試験例2:エンドグルカナーゼ(EG)活性の検討)
酵母菌体のエンドグルカナーゼ(EG)活性(乾燥菌体重量当たりの活性量)の検討を以下の手順に従って行った。
菌体をSD培地(ロイシン、メチオニン、およびウラシルを補充)5mLに移植し、30℃、180rpmにて18時間培養し(前培養)、次いで1×YPD培地50mLに移植し(初発OD600=0.05)、30℃、150rpmにて培養した(本培養)。本培養開始からの48時間後に培養液をそれぞれ回収し、1,000g、5分間の遠心分離にて菌体と培地とを分離した。
菌体のエンドグルカナーゼ活性の測定は、以下のように行った:
(1)菌体を蒸留水で2回洗浄;
(2)反応液2500μL(組成:セラザイムCタブレット(Megazyme社製)1錠;500mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0) 250μL(最終濃度50mM);蒸留水2000μL;および酵母懸濁液250μL(最終菌体濃度10g湿潤菌体/L))を調製し、静置、38℃にて3時間反応;
(3)反応終了後、10,000gで5分間遠心後、上清の590nmの吸光度ABS590を測定。
(試験例3:β−グルコシダーゼ表層提示酵母を用いたセロビオースからのエタノール生産能力の検討)
β−グルコシダーゼ(BGL)表層提示酵母を用いたセロビオースからのエタノール生産能力の検討を以下の手順に従って行った。
菌体をSD培地(ロイシン、メチオニン、およびウラシルを補充)5mLに移植し、30℃、180rpmにて18時間培養し(前培養)、次いで1×YPD培地500mLに移植し(初発OD600=0.05)、30℃、150rpmにて培養した(本培養)。本培養開始からの48時間後に培養液をそれぞれ回収し、菌体を蒸留水で2回洗浄し、エタノール生産試験に用いた。
エタノール生産試験は、以下の条件下で行った:
セロビオース 20g/L
酵母エキス 10g/L
ペプトン 20g/L
酵母菌体 10g湿潤菌体重量/L
合計 20mL
上記を回転式発酵装置に入れ、市販酵素剤を添加せずに、30℃、150rpm、8時間反応させた。
(実施例1:β−グルコシダーゼ(BGL)細胞表層提示における宿主酵母の比較)
本実施例では、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株およびその5遺伝子ノックアウト株を宿主として発現カセットX7を含むプラスミドを導入して得られた細胞表層提示形質転換酵母(BY-BG-SSSD株およびGPIm-BGSD株:それぞれ調製例5の5−1にて調製した)について、菌体のβ−グルコシダーゼ(BGL)活性を測定した。
この結果を図2に示す。(A)β−グルコシダーゼ活性および(B)菌体増殖の経時変化を示す。図2(A)(B)とも横軸は培養時間(「時間(時間)」)を示し、そして縦軸は、(A)ではβ−グルコシダーゼ活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(「U/g乾燥菌体重量」)、(B)では菌体増殖(OD600)を示す。図2中の記号は以下の通りである:黒丸、BY-BG-SSSD株;および黒四角、GPIm-BGSD株。
図2に示されるように、5遺伝子ノックアウト株を宿主に用いたBGL細胞表層提示形質転換株(GPIm-BGSD株)は、従来のBY4741株を宿主に用いた形質転換株(BY-BG-SSSD株)と比較しても、相当に高い表層BGL活性を示すことが分かった。
(実施例2:エンドグルカナーゼ(EG)細胞表層提示における宿主酵母の比較)
本実施例では、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株およびその5遺伝子ノックアウト株を宿主として発現カセットX8を含むプラスミドを導入して得られた細胞表層提示形質転換酵母(BY-EG-SSSD株およびGPIm-EGSD株:それぞれ調製例5の5−2にて調製した)について、菌体のエンドグルカナーゼ(EG)活性を測定した。
この結果を図3に示す。図3の縦軸は、EG相対活性(吸光度測定値(「ABS590」)を示す。図3の棒グラフは、左から順に:BY-EG-SSSD株およびGPIm-EGSD株を表す。
図3に示されるように、EG活性を指標とした場合でも、5遺伝子ノックアウト株を宿主に用いたEG細胞表層提示形質転換株(GPIm-EGSD株)は、従来のBY4741株を宿主に用いた形質転換株(BY-EG-SSSD株)よりも高い細胞表層EG活性を示すことが観察された。
(実施例3:ノックアウトする遺伝子の組み合わせの検討)
本実施例では、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株、5遺伝子ノックアウト株、および5遺伝子のうちの2つ(CCW12およびCCW14)または3つ(TIP1、CWP1、およびDAN1)のみをノックアウトした株を宿主として発現カセットX1を含むプラスミドを導入して得られた表層提示形質転換酵母(BY-BG-SSSD株、GPIm-BGSD株(上記5−1)、ccw12/ccw14-BGSD株(上記5−3)、tip1/cwp1/dan1-BGSD株(上記5−4))について、菌体のBGL活性を測定した。
この結果を図4に示す。(A)β−グルコシダーゼ活性および(B)菌体増殖の経時変化を示す。図4(A)(B)とも横軸は培養時間(「時間(時間)」)を示し、そして縦軸は、(A)ではβ−グルコシダーゼ活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(「U/g乾燥菌体重量」)、(B)では菌体増殖(OD600)を示す。図4中の記号は以下の通りである:黒丸、BY-BG-SSSD株;および黒四角、GPIm-BGSD株。黒菱形、ccw12/ccw14-BGSD株;および黒三角、tip1/cwp1/dan1-BGSD株。
図4に示されるように、CCW12およびCCW14のみをノックアウトした株を宿主に用いたBGL細胞表層提示形質転換株(ccw12/ccw14-BGSD株)は、5遺伝子ノックアウト株を宿主に用いた形質転換株(GPIm-BGSD株)とほぼ同等の、高い細胞表層BGL活性を示すことが分かった。また、TIP1、CWP1、およびDAN1のみをノックアウトした株を宿主に用いた形質転換株(tip1/cwp1/dan1-BGSD株)についても、従来のBY4741株を宿主に用いた形質転換株(BY-BG-SSSD株)と比較して、わずかに高い表層BGL活性を示すことが観察された。
(実施例4:ノックアウトする遺伝子を追加された宿主酵母の比較)
本実施例では、5遺伝子ノックアウト株を宿主として発現カセットX7を含むプラスミドを導入して得られた細胞表層提示形質転換酵母(GPIm-BGSD株)(上記5−1)およびその株のSED1遺伝子を追加でノックアウトした形質転換株(GPIm-sed1-BGSD株)(上記5−5)について、菌体のBGL活性を測定した。
この結果を図5に示す。(A)β−グルコシダーゼ活性および(B)菌体増殖の経時変化を示す。図5(A)(B)とも横軸は培養時間(「時間(時間)」)を示し、そして縦軸は、(A)ではβ−グルコシダーゼ活性(乾燥菌体重量当たりの活性量(「U/g乾燥菌体重量」)、(B)では菌体増殖(OD600)を示す。図5中の記号は以下の通りである:黒四角、GPIm-BGSD株;および黒菱形、GPIm-sed1-BGSD株。
図5に示されるように、5遺伝子ノックアウト株を宿主に用いたBGL細胞表層提示形質転換株(GPIm-BGSD株)と比較して、SED1遺伝子を追加でノックアウトした形質転換株(GPIm-sed1-BGSD株)は、培養時間72時間以降において、高い細胞表層BGL活性を示すことが分かった。
(実施例5:β−グルコシダーゼ細胞表層提示酵母を用いたセロビオースからのエタノール生産における宿主酵母の比較)
本実施例では、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株、CCW12およびCCW14の2遺伝子ノックアウト株、CCW12、CCW14、TIP1、CWP1、およびDAN1の5遺伝子ノックアウト株を宿主として発現カセットX7を含むプラスミドを導入して得られた細胞表層提示形質転換酵母(BY-BG-SSSD株、ccw12/ccw14-BGSD株、およびGPIm-BGSD株)(上記5−1、5−3)について、グルコース2分子の重合体であるセロビオースからのエタノール生産能力を比較した。
この結果を図6に示す。図6(A)(B)とも横軸は発酵時間(「時間(時間)」)を示し、そして縦軸は、(A)ではセロビオース濃度(g/L)、(B)ではエタノール濃度(g/L)を示す。図6中の記号は以下の通りである:黒丸、BY-BG-SSSD株;黒菱形、ccw12/ccw14-BGSD株;および黒四角、GPIm-BGSD株。
図6に示されるように、2遺伝子ノックアウト株を宿主に用いたBGL細胞表層提示形質転換株(ccw12/ccw14-BGSD株)および5遺伝子ノックアウト株を宿主に用いたBGL細胞表層提示形質転換株(GPIm-BGSD株)は、従来のBY4741株を宿主に用いた形質転換株(BY-EG-SSSD株)よりもセロビオースからエタノールを生産する速度が速いことが確認された。
本発明によれば、酵母を用いた物質生産の効率化、低コスト化およびその普及の促進に非常に有用である。より具体的な応用分野としては、セルロース分解酵素を細胞表層に提示した酵母によるセルロース系バイオマスからの化学品生産等の効率化、低コスト化が考えられる。さらに、例えばリパーゼを細胞表層に提示した酵母によるバイオディーゼルの製造の効率化、抗体またはリガンドを細胞表層に提示した酵母ライブラリーによる薬剤スクリーニングへの利用が考えられる。

Claims (11)

  1. タンパク質を細胞表層発現する形質転換酵母であって、
    CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子、CWP1遺伝子、およびそれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの細胞壁関連遺伝子を保有する宿主酵母における少なくとも1つの該細胞壁関連遺伝子の機能を欠損しており、かつ
    プロモーター、分泌シグナル配列、該タンパク質をコードするDNA、アンカードメインをコードするDNAおよびターミネーターを含むポリヌクレオチドが導入されている、
    形質転換酵母。
  2. CCW12遺伝子およびCCW14遺伝子の少なくとも一方の前記細胞壁関連遺伝子の機能を欠損している、請求項1に記載の形質転換酵母。
  3. CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子およびCWP1遺伝子の全ての上記細胞壁関連遺伝子の機能を欠損している、請求項1に記載の形質転換酵母。
  4. SED1遺伝子の機能をさらに欠損している、請求項1から3のいずれかに記載の形質転換酵母。
  5. 前記タンパク質が酵素である、請求項1から4のいずれかに記載の形質転換酵母。
  6. 前記酵素がセルロース分解酵素である、請求項5に記載の形質転換酵母。
  7. 前記宿主酵母がサッカロマイセス属酵母である、請求項1から6のいずれかに記載の形質転換酵母。
  8. タンパク質を細胞表層発現する形質転換酵母の製造方法であって、
    CCW12遺伝子、CCW14遺伝子、DAN1遺伝子、TIP1遺伝子、CWP1遺伝子、およびそれらに相当する遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの細胞壁関連遺伝子を保有する宿主酵母における、該宿主酵母の少なくとも1つの該細胞壁関連遺伝子の機能を欠損させる工程、および
    該宿主酵母に、プロモーター、分泌シグナル配列、該タンパク質をコードするDNA、アンカードメインをコードするDNAおよびターミネーターを含むポリヌクレオチドを導入する工程
    を含む、方法。
  9. 請求項5または6に記載の形質転換酵母を含む、酵素剤。
  10. バイオマスを用いたエタノール製造のために用いられるエタノール製造のために用いられる、請求項9に記載の酵素剤。
  11. エタノールの製造方法であって、
    請求項6に記載の形質転換酵母を、β-1,4結合したグルコース多糖を含む培地で培養する工程
    を含む、方法。
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