JP2020153767A - 被検動物における急性期のbadの発症可能性の評価方法及び急性期の分岐粥腫型梗塞の診断薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規の被検動物における急性期の分岐粥腫型梗塞(BAD)の発症可能性を評価する方法及び急性期のBADの診断薬を提供する。【解決手段】被検動物における急性期のBADの発症可能性を評価する方法は、被検動物由来の血液中のペントラキシン3(PTX3)濃度を測定し、得られた測定値が予め設定された基準値超である場合には、前記被検動物は、急性期のBADを発症している可能性が高いと評価し、前記基準値以下である場合には、急性期のBADを発症している可能性が低いと評価する、評価方法である。急性期のBADの診断薬は、抗PTX3抗体を含む。【選択図】なし
Description
本発明は、被検動物における急性期のBADの発症可能性の評価方法及び急性期の分岐粥腫型梗塞の診断薬に関する。
脳卒中は、血管がつまるタイプの脳梗塞と、血管が切れるタイプの脳出血及びくも膜下出血に分類される。中でも、脳梗塞は脳卒中の約7割を占めており、新規年間発症者数が日本国内では30万人、米国では80万人、全世界では1500万人に上り、単一臓器の疾患としては極めて多い。脳梗塞は後遺症を残す患者が多く、寝たきりとなる原因の第1位となっている。さらに、慢性期の治療はリハビリのみであり、その効果は十分でない例が多い。一方で、急性期のより早い段階で再灌流療法や薬物投与等の治療を施し、血流再開を促すことで予後が著しく改善することが知られており、発症早期にいち早く治療介入することが必要である。
脳梗塞には、アテローム血栓症梗塞、分岐粥腫型梗塞(Branch Atheromatous disease;BAD)、ラクナ梗塞、心原性脳梗塞、塞栓源不明の脳塞栓症(Embolic Stroke of Undetermined Source;ESUS)、血管炎や遺伝子異常による脳梗塞等の病型が存在し、病型に応じて治療方針が異なる。中でも、BADは穿通枝動脈の開口部が、マイクロアテロームを形成することにより発症すると考えられており、症状の進行性増悪を伴い、多くは神経学的予後が不良であることが知られている。発症から数日後にMRIによりBAD病型を診断し、予後予測することができるが、早期に診断することができず、現状ではBADの発症早期から治療を開始することができない。
一方で、特許文献1には、脳血管疾患のバイオマーカーとしてペントラキシン3(PTX3)を用いることが開示されている。
特許文献1では、脳血管疾患を診断するために被検試料中のPTX3濃度を測定することが提案されているが、適用対象の脳血管疾患としてBADは含まれておらず検討もなされていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、新規の被検動物における急性期の分岐粥腫型梗塞の発症可能性を評価する方法及び急性期のBADの診断薬を提供する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、急性期のBAD患者において血液中のPTX3濃度が顕著に上昇することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
本発明の第1態様に係る被検動物における急性期の分岐粥腫型梗塞の発症可能性を評価する方法は、得られた測定値が予め設定された基準値超である場合には、前記被検動物は、急性期の分岐粥腫型梗塞を発症している可能性が高いと評価し、前記基準値以下である場合には、急性期の分岐粥腫型梗塞を発症している可能性が低いと評価する、評価方法である。
前記ペントラキシン3濃度の測定において、抗ペントラキシン3抗体を用いてもよい。
本発明の第1態様に係る被検動物における急性期の分岐粥腫型梗塞の発症可能性を評価する方法は、得られた測定値が予め設定された基準値超である場合には、前記被検動物は、急性期の分岐粥腫型梗塞を発症している可能性が高いと評価し、前記基準値以下である場合には、急性期の分岐粥腫型梗塞を発症している可能性が低いと評価する、評価方法である。
前記ペントラキシン3濃度の測定において、抗ペントラキシン3抗体を用いてもよい。
本発明の第2態様に係る急性期の分岐粥腫型梗塞の診断薬は、抗ペントラキシン3抗体を含む。
上記態様の評価方法及び診断薬によれば、早期にBADと診断することができ、発症早期からの治療が可能となる。
<PTX3>
PTX3は、ペントラキシンスーパーファミリー(Pentraxin super family)に属し、体内における炎症反応により産生される炎症性タンパク質の一つである。ペントラキシンスーパーファミリーは、Long PentraxinとShort Pentraxinに大別されており、PTX3はLong Pentraxinに分類され、炎症性タンパク質として知られているC反応性タンパク質(C reactive protein;CRP)や血清アミロイドP成分(serum amyloid P component;SAP)はShort Pentraxinに分類される。これらの共通点は、C-末端Pentraxinドメインを有することであり、相違点は、Long PentraxinはUnrelated Long N-末端ドメインを有することにある。
PTX3は、ペントラキシンスーパーファミリー(Pentraxin super family)に属し、体内における炎症反応により産生される炎症性タンパク質の一つである。ペントラキシンスーパーファミリーは、Long PentraxinとShort Pentraxinに大別されており、PTX3はLong Pentraxinに分類され、炎症性タンパク質として知られているC反応性タンパク質(C reactive protein;CRP)や血清アミロイドP成分(serum amyloid P component;SAP)はShort Pentraxinに分類される。これらの共通点は、C-末端Pentraxinドメインを有することであり、相違点は、Long PentraxinはUnrelated Long N-末端ドメインを有することにある。
PTX3はリポ多糖体(LPS)やインターロイキン-1(IL-1)、TNF-α等の炎症シグナルに反応して血管内皮細胞や血管平滑筋細胞等から産生されるため、主にIL-6の刺激により肝臓で産生されるCRPと比べ、より鋭敏に血管局所の炎症を反映すると考えられている。
なお、PTX3遺伝子の塩基配列及びPTX3のアミノ酸配列の情報は、Genbank等のデータベースから入手できる。PTX3のアミノ酸配列は、例えば、Genbankのアクセッション番号NM_002852として開示されている。
なお、PTX3遺伝子の塩基配列及びPTX3のアミノ酸配列の情報は、Genbank等のデータベースから入手できる。PTX3のアミノ酸配列は、例えば、Genbankのアクセッション番号NM_002852として開示されている。
<バイオマーカー>
後述する実施例に示すように、急性期のBAD患者において血清中のPTX3濃度が顕著に上昇することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、PTX3は急性期のBADのバイオマーカーとして有用である。PTX3濃度を測定することで、発症早期にBADを鑑別することができ、BADに適した治療を早期に開始することができる。なお、ここでいう急性期とは、BADの発症から1日以内の期間をいう。また、BADの発症の起点は、被検動物が症状を自覚した時刻を起点とする。
後述する実施例に示すように、急性期のBAD患者において血清中のPTX3濃度が顕著に上昇することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、PTX3は急性期のBADのバイオマーカーとして有用である。PTX3濃度を測定することで、発症早期にBADを鑑別することができ、BADに適した治療を早期に開始することができる。なお、ここでいう急性期とは、BADの発症から1日以内の期間をいう。また、BADの発症の起点は、被検動物が症状を自覚した時刻を起点とする。
<被検動物における急性期のBADの発症可能性の評価方法>
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係る被検動物における急性期のBADの発症可能性を評価する方法は、被検動物由来の血液中のPTX3濃度を測定し、得られた測定値が予め設定された基準値超である場合には、前記被検動物は、急性期のBADを発症している可能性が高いと評価し、前記基準値以下である場合には、急性期のBADを発症している可能性が低いと評価する、評価方法である。
本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係る被検動物における急性期のBADの発症可能性を評価する方法は、被検動物由来の血液中のPTX3濃度を測定し、得られた測定値が予め設定された基準値超である場合には、前記被検動物は、急性期のBADを発症している可能性が高いと評価し、前記基準値以下である場合には、急性期のBADを発症している可能性が低いと評価する、評価方法である。
上述したように、脳梗塞には複数の病型が存在し、病型により発症のメカニズムや進行度合いが異なる(図1参照)。
一般に、ラクナ梗塞は、脳の細い動脈が高血圧等により損傷を受けて詰まることにより発症し、脳の深い部分に小さな梗塞巣ができる。症状は軽く、進行性ではない。
一般に、BAD(分岐粥腫型梗塞)は、穿通枝動脈の開口部が、マイクロアテロームを形成することにより発症すると考えられており、発症早期は小さい脳梗塞であるものの、時間の経過とともに大きな脳梗塞に変化する。症状は重く、進行性である。
一般に、アテローム血栓症梗塞は、顎の動脈や頭蓋骨内の比較的大きな動脈の硬化(アテローム硬化)により動脈が狭くなり、そこに血栓ができて詰まることや、その血栓がはがれて流れ出し、先の方で詰まることで発症する。
一般に、心原性脳梗塞は、心臓にできた血栓がはがれて流れ出し、脳に運ばれて動脈を塞ぐことで発症する。
一般に、ラクナ梗塞は、脳の細い動脈が高血圧等により損傷を受けて詰まることにより発症し、脳の深い部分に小さな梗塞巣ができる。症状は軽く、進行性ではない。
一般に、BAD(分岐粥腫型梗塞)は、穿通枝動脈の開口部が、マイクロアテロームを形成することにより発症すると考えられており、発症早期は小さい脳梗塞であるものの、時間の経過とともに大きな脳梗塞に変化する。症状は重く、進行性である。
一般に、アテローム血栓症梗塞は、顎の動脈や頭蓋骨内の比較的大きな動脈の硬化(アテローム硬化)により動脈が狭くなり、そこに血栓ができて詰まることや、その血栓がはがれて流れ出し、先の方で詰まることで発症する。
一般に、心原性脳梗塞は、心臓にできた血栓がはがれて流れ出し、脳に運ばれて動脈を塞ぐことで発症する。
従来、これら脳梗塞の診断は、コンピュータ断層撮影(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)、磁気共鳴血管画像法(MRA)等の画像診断によって行われる。上記病型のうち、ラクナ梗塞とBADとは急性期における梗塞巣が小さいことから、鑑別することが困難であり、発症から数日経過後に画像診断を行うことでいずれの病型であるか診断される。
これに対して、急性期のBADを発症している被検動物の血液中ではPTX3濃度が顕著に上昇することを本発明者らは今回初めて明らかにした。一方で、急性期のBADを発症していない血液中では、後述する実施例に示すように、PTX3濃度が1063.0±142.3 pg/mL程度と極微量である。このため、血液中のPTX3濃度に基づいて急性期のBAD発症群と非発症群とを鑑別することができる。本実施形態の評価方法によれば、発症早期にBADを鑑別することができ、BADに適した治療を早期に開始することができる。
これに対して、急性期のBADを発症している被検動物の血液中ではPTX3濃度が顕著に上昇することを本発明者らは今回初めて明らかにした。一方で、急性期のBADを発症していない血液中では、後述する実施例に示すように、PTX3濃度が1063.0±142.3 pg/mL程度と極微量である。このため、血液中のPTX3濃度に基づいて急性期のBAD発症群と非発症群とを鑑別することができる。本実施形態の評価方法によれば、発症早期にBADを鑑別することができ、BADに適した治療を早期に開始することができる。
本実施形態の評価方法において対象となる被検動物としては、ヒトであってもよく、非ヒト動物であってもよい。非ヒト動物の生物種は特に限定されるものではなく、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、サル、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ブタ、ロバ、イヌ、ネコ等の家畜や実験動物が挙げられる。被検動物としては、ヒト、家畜、実験動物が好ましく、ヒトがより好ましい。また、本実施形態の評価方法に用いられる血液には、血清、血漿が包含される。
具体的には、血液中のPTX3濃度が、予め設定された基準値超である場合に、当該血液が採取された被検動物は、急性期のBADである可能性が高いと評価する。一方、血液中のPTX3濃度が、予め設定された基準値以下である場合には、急性期のBADの可能性が低いと評価する。当該基準値は、急性期のBADの発症群と非発症群を識別するための基準値である。
当該基準値は、例えば、急性期のBADの患者群と非患者群の血液中のPTX3濃度を測定し、両群を区別することができる閾値として実験的に求めることができる。本発明における血液中のPTX3濃度の基準値の決定方法としては特に限定されず、例えば、一般的な統計学的手法を用いて決定することができる。
基準値の決定方法として具体的には、例えば、一般的に行われている画像診断等の他の方法によって目的のBAD患者であると診断されている患者について、予め画像診断前(入院時等)に採集しておいた血液中のPTX3濃度を測定する。複数の患者について測定した後に、その平均値又は中央値等からこれらの血液中のPTX3濃度を算出し、これが含まれる数値を基準値とすることができる。
また、複数のBAD患者と複数のBADの非患者に対して、それぞれ予め画像診断前(入院時等)に採集しておいた血液中のPTX3濃度を測定し、平均値又は中央値等から急性期のBAD患者群及び急性期のBAD非患者群の血液中のPTX3濃度とそのばらつきをそれぞれ算出した後、ばらつきも考慮して両数値が区別されるような閾値を求めて、これを基準値とすることができる。
被検動物から採取された血液中のPTX3濃度の測定方法は、特に限定されるものではなく、タンパク質の発現を定量的又は半定量的に測定する際に一般的に使用される各種方法で測定することができる。測定方法として具体的には、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法、ウエスタンブロット、免疫染色、免疫拡散法等の免疫反応を利用した方法等が挙げられる。中でも、エンザイムイムノアッセイが好ましく、酵素結合免疫吸着定量法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)が特に好ましい。
免疫反応を利用した測定方法においては、いずれの抗PTX3抗体を用いてもよい。
市販されている抗PTX3抗体としては、例えば、Anti-Pentraxin 3 / PTX3抗体(abcam社製、ウサギ由来モノクローナル抗体、クローン名:EPR6699、型番:ab125007)、Anti-Pentraxin 3 / PTX3抗体(abcam社製、ラット由来モノクローナル抗体、クローン名:MNB1、型番:ab90806)、PTX3抗体(C-10)(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY社製、マウス由来モノクローナル抗体、型番:sc-373951)、Anti-PTX3(ペルセウスプロテオミクス社製、マウス由来モノクローナル抗体、クローン名:PPJ0069、商品コード:PP-PPJ0069-00)等が挙げられる。また、抗PTX3抗体としては、例えば、Pentraxin 3(PTX3) (Human) ELISAキット(Aviscera Bioscience社製、型番:SK00101-06)等の市販のELISAキットの形態のものを使用してもよい。
また、抗PTX3抗体に代えて、PTX3と結合する分子を利用することができる。当該分子としては、ペプチド、タンパク質、核酸、低分子等のいずれであってもよい。また、当該分子は、標識化物(PTX3と結合する部位に、直接又は間接的に標識物質が結合したもの)であってもよい。当該標識物質は、特に限定されるものではなく、例えば、ビオチン等の低分子であってもよく、蛍光物質であってもよく、酵素であってもよく、Hisタグ、Mycタグ、Flagタグ等のタグペプチドであってもよい。
市販されている抗PTX3抗体としては、例えば、Anti-Pentraxin 3 / PTX3抗体(abcam社製、ウサギ由来モノクローナル抗体、クローン名:EPR6699、型番:ab125007)、Anti-Pentraxin 3 / PTX3抗体(abcam社製、ラット由来モノクローナル抗体、クローン名:MNB1、型番:ab90806)、PTX3抗体(C-10)(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY社製、マウス由来モノクローナル抗体、型番:sc-373951)、Anti-PTX3(ペルセウスプロテオミクス社製、マウス由来モノクローナル抗体、クローン名:PPJ0069、商品コード:PP-PPJ0069-00)等が挙げられる。また、抗PTX3抗体としては、例えば、Pentraxin 3(PTX3) (Human) ELISAキット(Aviscera Bioscience社製、型番:SK00101-06)等の市販のELISAキットの形態のものを使用してもよい。
また、抗PTX3抗体に代えて、PTX3と結合する分子を利用することができる。当該分子としては、ペプチド、タンパク質、核酸、低分子等のいずれであってもよい。また、当該分子は、標識化物(PTX3と結合する部位に、直接又は間接的に標識物質が結合したもの)であってもよい。当該標識物質は、特に限定されるものではなく、例えば、ビオチン等の低分子であってもよく、蛍光物質であってもよく、酵素であってもよく、Hisタグ、Mycタグ、Flagタグ等のタグペプチドであってもよい。
抗PTX3抗体を用いた一般的な検出方法としては、例えば、抗PTX3抗体を支持体に固定し、ここに被検動物から採取された血液試料を加え、インキュベートを行い抗PTX3抗体とPTX3を結合させた後に洗浄して、抗PTX3抗体を介して支持体に結合したPTX3を検出することにより、血液中のPTX3の検出を行う方法等が挙げられる。
PTX3の測定方法においては、PTX3を検出したい被検動物由来の血液試料の他に、コントロール試料を設置してもよい。コントロール試料としては、PTX3を含まない陰性コントロール試料やPTX3を含む陽性コントロール試料等が挙げられる。この場合、PTX3を含まない陰性コントロール試料で得られた結果、PTX3を含む陽性コントロール試料で得られた結果と比較することにより、被検動物由来の血液試料中のPTX3を検出することが可能である。また、濃度を段階的に変化させた一連のコントロール試料を調製し、各コントロール試料に対する検出結果を数値として得て、標準曲線を作成し、被検動物由来の血液試料の数値から標準曲線に基づいて、被検動物由来の血液中のPTX3を定量的に検出することも可能である。
<急性期のBADの診断薬>
本実施形態の急性期のBADの診断薬は、抗PTX3抗体を含む。診断薬はキットの形態で提供することもできる。本実施形態の診断薬がELISA法を用いる場合には、抗PTX3抗体は担体に固定化された形態であってもよい。また、本実施形態の診断薬は、ブロッキング溶液、洗浄溶液、検出試薬等のELISA法で用いられる各種試薬を更に含んでいてもよい。
本実施形態の急性期のBADの診断薬は、抗PTX3抗体を含む。診断薬はキットの形態で提供することもできる。本実施形態の診断薬がELISA法を用いる場合には、抗PTX3抗体は担体に固定化された形態であってもよい。また、本実施形態の診断薬は、ブロッキング溶液、洗浄溶液、検出試薬等のELISA法で用いられる各種試薬を更に含んでいてもよい。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[参考例1]
血漿フィブリノーゲンはアテローム形成にとって重要な因子であり、頸動脈や冠動脈プラークとの関連性も報告されている(参考文献1:Urabe T et al., “Prevalence of abnormal glucose metabolism and insulin resistance among subtypes of ischemic stroke in Japanese patients.”, Stroke, Vol. 40, No. 4, p1289-1295, 2009.)。フィブリノーゲンがBADの病態に関与すると考え、発症後の血漿フィブリノーゲン値変化を検討した。
血漿フィブリノーゲンはアテローム形成にとって重要な因子であり、頸動脈や冠動脈プラークとの関連性も報告されている(参考文献1:Urabe T et al., “Prevalence of abnormal glucose metabolism and insulin resistance among subtypes of ischemic stroke in Japanese patients.”, Stroke, Vol. 40, No. 4, p1289-1295, 2009.)。フィブリノーゲンがBADの病態に関与すると考え、発症後の血漿フィブリノーゲン値変化を検討した。
(方法)
2008年から2015年に、新潟大学神経内科に入院した連続70例のラクナ梗塞患者とBAD患者について、後方視的な検討を実施した。各群での神経症状、入院時NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale、脳卒中重症度評価スケールである)、退院時mRS(modified Rankin Scale、脳卒中重症度スコアである)、血漿フィブリノーゲン値や凝固能を含む検査データについて比較した。BADの診断は「MRI画像上レンズ核線条体動脈(LSA)領域で3スライス以上(20mm)又は傍正中橋動脈(PPA)領域で腹側に接する病変があるとき」と定義した。入院時(0日目から2日目まで)を急性期(acute)、入院約2週間後(13日目から15日目まで)を亜急性期(subacute)と定義した。退院時mRSが0以上2以下である場合を予後良好とした。
2008年から2015年に、新潟大学神経内科に入院した連続70例のラクナ梗塞患者とBAD患者について、後方視的な検討を実施した。各群での神経症状、入院時NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale、脳卒中重症度評価スケールである)、退院時mRS(modified Rankin Scale、脳卒中重症度スコアである)、血漿フィブリノーゲン値や凝固能を含む検査データについて比較した。BADの診断は「MRI画像上レンズ核線条体動脈(LSA)領域で3スライス以上(20mm)又は傍正中橋動脈(PPA)領域で腹側に接する病変があるとき」と定義した。入院時(0日目から2日目まで)を急性期(acute)、入院約2週間後(13日目から15日目まで)を亜急性期(subacute)と定義した。退院時mRSが0以上2以下である場合を予後良好とした。
(結果)
34例がラクナ梗塞、36例がBADと診断した。予後良好はラクナ梗塞群で30/34例(88%)、BAD群で17/36例(47%)であった(p<0.001)。
入院時NIHSSはラクナ梗塞群で2(IQ:1-4)、BAD群で4(IQ:3-6)であった(P=0.002)。
動脈硬化に関連するコレステロール値、血圧等について、両群で有意差は認められなかった(図示せず)。さらに、炎症マーカー高感度CRP値、血管障害マーカーD-dimer値についても同様に、両群で有意差は認められなかった(図示せず)。
血漿フィブリノーゲン値は、急性期ではラクナ梗塞群で312±81 mg/dL、BAD群で334±72 mg/dLで差を認めなかった(p=0.18)(図2参照)。亜急性期では、ラクナ梗塞群で325±90 mg/dL、BAD群で404±135 mg/dLで、BAD群で高値であった(P=0.001)(図2参照)。
34例がラクナ梗塞、36例がBADと診断した。予後良好はラクナ梗塞群で30/34例(88%)、BAD群で17/36例(47%)であった(p<0.001)。
入院時NIHSSはラクナ梗塞群で2(IQ:1-4)、BAD群で4(IQ:3-6)であった(P=0.002)。
動脈硬化に関連するコレステロール値、血圧等について、両群で有意差は認められなかった(図示せず)。さらに、炎症マーカー高感度CRP値、血管障害マーカーD-dimer値についても同様に、両群で有意差は認められなかった(図示せず)。
血漿フィブリノーゲン値は、急性期ではラクナ梗塞群で312±81 mg/dL、BAD群で334±72 mg/dLで差を認めなかった(p=0.18)(図2参照)。亜急性期では、ラクナ梗塞群で325±90 mg/dL、BAD群で404±135 mg/dLで、BAD群で高値であった(P=0.001)(図2参照)。
(考察)
BADはフィブリノーゲン由来のプラーク破綻によると考えられており、急性期から亜急性期にかけて血漿フィブリノーゲン値が遅れて上昇すると考えられる。よって、フィブリノーゲンでは急性期においてBADとラクナ梗塞とを鑑別することが難しいことが明らかとなった。
BADはフィブリノーゲン由来のプラーク破綻によると考えられており、急性期から亜急性期にかけて血漿フィブリノーゲン値が遅れて上昇すると考えられる。よって、フィブリノーゲンでは急性期においてBADとラクナ梗塞とを鑑別することが難しいことが明らかとなった。
[実施例1]
参考例1の結果から、BAD及びラクナ梗塞での動脈硬化進行においてより上流に位置するバイオマーカーを探索した。そこで、炎症反応に着目したが、単純な炎症反応では病型を分類することが困難であることから、急性期に炎症に反応して血管内皮細胞や血管平滑筋細胞等から産出される動脈硬化に関連するマーカーに注目した。
参考例1の結果から、BAD及びラクナ梗塞での動脈硬化進行においてより上流に位置するバイオマーカーを探索した。そこで、炎症反応に着目したが、単純な炎症反応では病型を分類することが困難であることから、急性期に炎症に反応して血管内皮細胞や血管平滑筋細胞等から産出される動脈硬化に関連するマーカーに注目した。
(方法)
2008年から2015年に、新潟大学神経内科に入院した連続53例のラクナ梗塞患者とBAD患者について、後方視的な検討を実施した。各群での血清中の動脈硬化に関連する各種マーカー(Lox1、PTX3、高感度CRP)の濃度について比較した。これらのマーカーの基準濃度(46-3000 pg/ml)は、各マーカーに対すELISAキット(Aviscera Bioscience社製)を用いて測定を行った。BADの診断は「MRI画像上LSA領域で3スライス以上(20mm)又はPPA領域で腹側に接する病変があるとき」と定義した。入院時(0日目から2日目まで、すなわち発症1日(24時間)以内)を急性期(acute)と定義した。
2008年から2015年に、新潟大学神経内科に入院した連続53例のラクナ梗塞患者とBAD患者について、後方視的な検討を実施した。各群での血清中の動脈硬化に関連する各種マーカー(Lox1、PTX3、高感度CRP)の濃度について比較した。これらのマーカーの基準濃度(46-3000 pg/ml)は、各マーカーに対すELISAキット(Aviscera Bioscience社製)を用いて測定を行った。BADの診断は「MRI画像上LSA領域で3スライス以上(20mm)又はPPA領域で腹側に接する病変があるとき」と定義した。入院時(0日目から2日目まで、すなわち発症1日(24時間)以内)を急性期(acute)と定義した。
(結果)
23例がラクナ梗塞、30例がBADと診断した。
血清中のLox1、高感度CRP等の炎症マーカーの濃度は、両群で有意差は認められなかった(図示せず)。
一方、血清中のPTX3濃度は、急性期ではラクナ梗塞群で3735.8±519.1 pg/mL、BAD群で5741.5±611.9 pg/mLで、BADで高値であった(P=0.006)(図3参照)。
また、他の病型の脳梗塞群(各20例)とBAD群(上記30例)の比較においても、BAD群は血清中のPTX3濃度が有意に高値であった(アテローム性血栓性脳梗塞群: 1606.5±190.1 pg/mL、P<0.001;心原性梗塞群: 1885.1±339.7 pg/mL,P<0.001)(図3参照)。
なお、脳血管障害から除外された他の疾患を有する患者群(以下、「コントロール群」と称する場合がある)(20例)における血清中のPTX3濃度は、1063.0±142.3 pg/mlであり、BAD群ではコントロール群よりも血清中のPTX3濃度が有意に高値であったが、他の病型の脳梗塞群では、血清中のPTX3濃度に有意差が認められなかった。
23例がラクナ梗塞、30例がBADと診断した。
血清中のLox1、高感度CRP等の炎症マーカーの濃度は、両群で有意差は認められなかった(図示せず)。
一方、血清中のPTX3濃度は、急性期ではラクナ梗塞群で3735.8±519.1 pg/mL、BAD群で5741.5±611.9 pg/mLで、BADで高値であった(P=0.006)(図3参照)。
また、他の病型の脳梗塞群(各20例)とBAD群(上記30例)の比較においても、BAD群は血清中のPTX3濃度が有意に高値であった(アテローム性血栓性脳梗塞群: 1606.5±190.1 pg/mL、P<0.001;心原性梗塞群: 1885.1±339.7 pg/mL,P<0.001)(図3参照)。
なお、脳血管障害から除外された他の疾患を有する患者群(以下、「コントロール群」と称する場合がある)(20例)における血清中のPTX3濃度は、1063.0±142.3 pg/mlであり、BAD群ではコントロール群よりも血清中のPTX3濃度が有意に高値であったが、他の病型の脳梗塞群では、血清中のPTX3濃度に有意差が認められなかった。
(考察)
動脈硬化に関連する炎症性タンパク質であるPTX3濃度を測定することで、発症早期にBADと、ラクナ梗塞や他の病型の脳梗塞群(アテローム性血栓性脳梗塞群、心原性梗塞群等)とを鑑別できることが示唆された。
動脈硬化に関連する炎症性タンパク質であるPTX3濃度を測定することで、発症早期にBADと、ラクナ梗塞や他の病型の脳梗塞群(アテローム性血栓性脳梗塞群、心原性梗塞群等)とを鑑別できることが示唆された。
本実施形態の評価方法及び診断薬によれば、早期にBADと診断することができ、発症早期からの治療が可能となる。
Claims (3)
- 被検動物における急性期の分岐粥腫型梗塞の発症可能性を評価する方法であって、
被検動物由来の血液中のペントラキシン3濃度を測定し、
得られた測定値が予め設定された基準値超である場合には、前記被検動物は、急性期の分岐粥腫型梗塞を発症している可能性が高いと評価し、前記基準値以下である場合には、急性期の分岐粥腫型梗塞を発症している可能性が低いと評価する、評価方法。 - 前記ペントラキシン3濃度の測定において、抗ペントラキシン3抗体を用いる、請求項1に記載の評価方法。
- 抗ペントラキシン3抗体を含む、急性期の分岐粥腫型梗塞の診断薬。
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