JP2021181890A - 成人スチル病(asd)を判定するためのバイオマーカー - Google Patents

成人スチル病(asd)を判定するためのバイオマーカー Download PDF

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Abstract

【課題】成人スチル病(ASD)を判定するためのバイオマーカー、並びにバイオマーカーに基づいてASDを判定するための方法及びキットを提供すること。【解決手段】本発明は、被験体における成人スチル病を判定するための、ガレクチン9及び/又はTIM-3のバイオマーカーとしての使用に関する。また本発明は、被験体における成人スチル病を判定するために該被験体由来の試料を分析する方法であって、試料中のガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、並びにガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値と比較する工程を含む方法に関する。【選択図】図1A

Description

本発明は、バイオマーカーに基づいて、被験体における成人スチル病(ASD)を判定するための方法、使用、キット及びシステムに関する。また本発明は、成人スチル病の治療の有効性の評価方法に関する。
成人スチル病(Adult Still disease;ASD)は、高熱・皮疹・関節炎・肝障害などを呈する原因不明の自己炎症疾患で、指定難病である。ASDの病態の中心は、自然免疫系細胞の活性化と、それに伴う高サイトカイン血症であり、治療介入が遅れると、マクロファージ活性化症候群、血球貪食症候群を合併し、致死的な経過をとることがある。ASDは、現在、発熱・皮疹・関節症状などの臨床症状及び臨床検査(白血球数の増多、血清フェリチン値の上昇)で診断がなされているが、その重症度・病型を判定するのは非常に難しい。
非特許文献1には、ASD患者群において、非ASD及び非自己免疫疾患対照患者群に対して、血清IL-18が増加していることが記載されている。
Kawaguchi Y, Arthritis Rheum. 第44巻第7号第1716-7頁, 2001年
ASDの分野では、十分な精度及び/又は正確度を有するバイオマーカーを同定し、ASDを判定するための方法及び手段を開発するニーズが依然としてある。そのため、本発明は、ASDを判定するためのバイオマーカー、並びにバイオマーカーに基づいてASDを判定するための方法及びキットを提供することを目的とする。
前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明者は、成人スチル病(ASD)の発症、その病型や治療効果を予測できる新規バイオマーカーを見出し、かかるバイオマーカーを使用することにより成人スチル病を簡便かつ高精度に判定し得るという知見を得、本発明を完成するに至った。
例えば、本発明は以下の実施形態を包含する:
[1]被験体における成人スチル病を判定するための、ガレクチン9及びTIM-3からなる群より選択される1以上のバイオマーカーとしての使用。
[2]前記バイオマーカーとしての使用が、
前記被験体由来の試料中のガレクチン9及び/又はTIM-3を測定すること、並びに
前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値と比較すること
を含む、実施形態1に記載の使用。
[3]前記ガレクチン9の測定が、ガレクチン9タンパク質の検出、及び/又はガレクチン9遺伝子の転写産物の検出により行われる、実施形態2に記載の使用。
[4]前記TIM-3の測定が、TIM-3タンパク質の検出、及び/又はTIM-3遺伝子の転写産物の検出により行われる、実施形態2又は3に記載の使用。
[5]前記試料中のフェリチンを測定すること、並びに
前記フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比を参照比と比較すること
をさらに含む、実施形態2〜4のいずれかに記載の使用。
[6]前記試料が、全血、血漿及び血清からなる群より選択される試料である、実施形態2〜5のいずれかに記載の使用。
[7]前記成人スチル病の判定が、被験体における成人スチル病の発症の判定、被験体における成人スチル病の発症リスクの予測、被験体における成人スチル病の病型若しくは重症度の判定、被験体における成人スチル病についてのモニタリング、及び/又は被験体における成人スチル病に対する治療の効果のモニタリングである、実施形態1〜6のいずれかに記載の使用。
[8]被験体における成人スチル病を判定するために該被験体由来の試料を分析する方法であって、
前記試料中のガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、並びに
前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値と比較する工程
を含む方法。
[9]前記ガレクチン9を測定する工程が、ガレクチン9タンパク質の検出、及び/又はガレクチン9遺伝子の転写産物の検出により行われる、実施形態8に記載の方法。
[10]前記TIM-3を測定する工程が、TIM-3タンパク質の検出、及び/又はTIM-3遺伝子の転写産物の検出により行われる、実施形態8又は9に記載の方法。
[11]前記試料中のフェリチンを測定する工程、並びに
前記フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比を参照比と比較する工程
をさらに含む、実施形態8〜10のいずれかに記載の方法。
[12]前記試料が、全血、血漿及び血清からなる群より選択される試料である、実施形態8〜11のいずれかに記載の方法。
[13]前記成人スチル病の判定が、被験体における成人スチル病の発症の判定、被験体における成人スチル病の発症リスクの予測、被験体における成人スチル病の病型若しくは重症度の判定、被験体における成人スチル病についてのモニタリング、及び/又は被験体における成人スチル病に対する治療の効果のモニタリングである、実施形態8〜12のいずれかに記載の方法。
[14]前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値が、健常者由来の参照値よりも高い場合、及び/又は成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合、前記被験体が成人スチル病を発症している又は発症リスクがあることを示す、実施形態8〜13のいずれかに記載の方法。
[15]前記フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比が、慢性関節炎型の成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合、及び/又は慢性関節炎型以外の成人スチル病患者由来の参照値よりも高い場合、前記被験体が慢性関節炎型の成人スチル病を発症していることを示す、実施形態11〜14のいずれかに記載の方法。
[16]試料におけるガレクチン9及び/又はTIM-3を測定するための手段を含むことを特徴とする成人スチル病判定用キット。
[17]前記測定手段が抗体である、実施形態16に記載のキット。
[18]前記測定手段がプライマーDNA及び/又はプローブDNAである、実施形態16に記載のキット。
[19]試料におけるフェリチンを測定するための手段をさらに含む、実施形態16〜18のいずれかに記載のキット。
[20]前記試料が、全血、血漿及び血清からなる群より選択される試料である、実施形態16〜19のいずれかに記載のキット。
[21]成人スチル病の治療の有効性の評価方法であって、
被験治療薬又は治療法による処置を受けた成人スチル病を有する動物からの試料において、ガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、並びに
前記測定結果に基づいて成人スチル病に対する被験治療薬又は治療法の有効性を評価する工程
を含む方法。
[22]前記被験治療薬又は治療法による処置を行う前に、成人スチル病を有する動物からの試料においてガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程をさらに含む、実施形態21に記載の方法。
[23]処置後のガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値が処置前の測定値より低いことが、前記被験治療薬又は治療法が、成人スチル病による症状若しくは重症度の改善、又は成人スチル病の進行若しくは発症の停止若しくは減速化に有効であることを示す、実施形態21又は22に記載の方法。
[24]被験体における成人スチル病の判定に使用するための、ガレクチン9及び/又はTIM-3。
[25]被験体における成人スチル病を判定する方法であって、
被験体由来の試料中のガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、並びに
前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値と比較する工程
を含む方法。
[26]被験体における成人スチル病を治療する方法であって、
被験体由来の試料中のガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、
前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値と比較し、前記被験体が成人スチル病を発症しているか否か判定する工程、並びに
成人スチル病を発症している被験体に治療薬を投与する工程
を含む方法。
本発明により、簡便かつ高精度に成人スチル病(ASD)を判定するためのバイオマーカーが提供される。このバイオマーカーは、血液検査によって簡便かつ高精度にASDの発症又は病型などを評価することができるため、疾患の早期発見及び早期治療に有効である。また、本バイオマーカーは、ASD治療の有効性を評価するための指標としても使用することができる。したがって、本発明は、成人スチル病(ASD)の診断、検査、治療評価、創薬、基礎研究などの分野で有用である。
成人スチル病(ASD)患者、関節リウマチ(RA)患者及び健常対照(HC)における血清ガレクチン9レベルを示すグラフである。 ASD患者、RA患者及び健常対照(HC)における血清sTIM-3レベルを示すグラフである。 ASD患者におけるガレクチン9とフェリチンの血清レベルの相関を示すグラフである。 ASD患者におけるsTIM-3とフェリチンの血清レベルの相関を示すグラフである。 ASD患者における血清ガレクチン9レベルと疾患活動性指標(Pouchotスコア)との相関を示すグラフである。 ASD患者における血清sTIM-3レベルと疾患活動性指標(Pouchotスコア)との相関を示すグラフである。 ASD患者におけるガレクチン9とIL-18の血清レベルの相関を示すグラフである。 ASD患者におけるsTIM-3とIL-18の血清レベルの相関を示すグラフである。 ASD患者におけるガレクチン9/フェリチン比と慢性関節炎型の有無との相関を示すグラフである。 ASD患者におけるsTIM-3/フェリチン比と慢性関節炎型の有無との相関を示すグラフである。 免疫抑制治療の前後の血清Gal-9濃度の縦断的変化を示すグラフである。 免疫抑制治療の前後の血清sTIM-3濃度の縦断的変化を示すグラフである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、成人スチル病に関連する新規なバイオマーカーを利用する。これらのバイオマーカーは、成人スチル病患者において特異的にかつ有意に高レベルで存在する成分である。そのため、本発明に係るバイオマーカーは、成人スチル病の発症の判定若しくは発症リスクの予測、成人スチル病の病型若しくは重症度の判定、成人スチル病についてのモニタリング、又は成人スチル病に対する治療効果のモニタリングなどに有用である。
一態様において、本発明は、被験体における成人スチル病(ASD)を判定するための、ガレクチン9及びTIM-3からなる群より選択される1以上のバイオマーカーとしての使用に関する。
本発明に係る成人スチル病を判定するためのバイオマーカーとしての使用は、
前記被験体由来の試料中のガレクチン9及び/又はTIM-3を測定すること、並びに
前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値と比較すること
を含む。
別の態様において、本発明は、
被験体における成人スチル病を判定するために該被験体由来の試料を分析する方法であって、
前記試料中のガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、並びに
前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値と比較する工程
を含む方法に関する。
本発明では、被験体における成人スチル病(Adult Still disease;ASD)を判定する。成人スチル病とは、成人発症型スチル病(Adult Onset Still disease;AOSD)とも呼ばれ、マクロファージ等の自然免疫系の細胞が活性化され、IL-1β、IL-18等の炎症性サイトカインにより高熱・皮疹・肝障害を含む臓器障害を呈する難治性の炎症性疾患である。現在、これら臨床症状をスコア化したPouchotスコア(各種症状を1点とし合計化したもの/最高12点)が疾患活動性指標として用いられている(例えば、Pouchot J, et al. Medicine. 1991;70:118-36)。
成人スチル病(ASD)の症状は大きく発熱などの全身症状と関節炎などの関節症状の2つに大別されている。また、全身症状は単発で終わるもの(単周期)、多周期に認められるものに分かれる。以上の臨床症状を統合して、ASDの病型は、単周期全身型、多周期全身型、慢性関節炎型の3つに大別される。単周期全身型は予後は良好で、慢性関節炎型は関節リウマチに準じた治療が行われることが多い。一方、多周期全身型は最も予後が悪く、難治性であり、その病態の中心として高サイトカイン血症が考えられている。したがって、ASDの多周期全身型には、トシリズマブ等の抗サイトカイン療法が推奨されている。
本発明において測定する対象となるバイオマーカーは、ガレクチン9、TIM-3、又はそれらの組み合わせである。ガレクチン9及びTIM-3は、免疫チェックポイント分子であり、免疫系(T細胞)にブレーキをかける分子機構の1つであることが知られている。
また本発明では、バイオマーカーとしてフェリチンをさらに測定してもよい。フェリチンは鉄結合性タンパク質であり、鉄欠乏性貧血の指標として臨床検査において一般的に測定されるマーカーである。
本明細書中、ガレクチン9(Gal-9)及びTIM-3、並びに場合によりフェリチンを単に「バイオマーカー」と呼ぶ。なお、ガレクチン9タンパク質、TIM-3タンパク質及びフェリチンタンパク質をまとめて「マーカータンパク質」と記載することもあり、またガレクチン9遺伝子、TIM-3遺伝子及びフェリチン遺伝子をまとめて「マーカー遺伝子」とも記載する。
本発明において使用するバイオマーカーは、当技術分野で公知であり、そのマーカータンパク質のアミノ酸配列及びマーカー遺伝子の塩基配列も公共のデータベース(GenBank、EMBL、DDBJ)に登録されている。例えば、ガレクチン9(Galectin-9、Gal-9)は、Lectin, Galactoside-Binding, Soluble, 9とも称し、そのアミノ酸配列及び遺伝子配列は、例えばヒトガレクチン9タンパク質(GenBankアクセッション番号BAB83625.1、BAB83624.1、BAB83623.1、CAB93851.1など、アミノ酸配列の一例を配列番号1に示す)、ヒトガレクチン9遺伝子(GenBankアクセッション番号NC_000017、mRNA配列の一例を配列番号2に示す)、マウスガレクチン9タンパク質及び遺伝子、ウシガレクチン9タンパク質及び遺伝子などが公知である。TIM-3は、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有タンパク質3(T-cell Immunoglobulin And Mucin Domain-Containing Protein 3)の略称であり、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(Hepatitis A virus cellular receptor 2)、T細胞免疫グロブリンムチンファミリーメンバー3(T-Cell Immunoglobulin Mucin Family Member 3)又はT細胞免疫グロブリンムチンドメイン3(T-Cell Immunoglobulin Mucin Domain 3)とも称するTIM-3のアミノ酸配列及び遺伝子配列は、例えばヒトTIM-3タンパク質(GenBankアクセッション番号NP_116171.3など、アミノ酸配列の一例を配列番号3に示す)、ヒトTIM-3遺伝子(GenBankアクセッション番号NP_116171.3、mRNA配列の一例を配列番号4に示す)、マウス、ラット、アカゲザルのTIM-3タンパク質及び遺伝子などが公知である。例えばヒトTIM-3タンパク質(配列番号3)の場合、アミノ酸1〜21位はシグナルペプチドに相当し、また膜貫通タンパク質であることからエクトドメイン・シェディング(細胞外領域を可溶化して放出)されることが知られる。そのため、ヒトTIM-3タンパク質(配列番号3)を検出する場合には、シグナルペプチドを除いたマチュアなタンパク質のうち、細胞外領域から構成される可溶性TIM-3(sTIM-3)を検出対象とすることが好ましい。sTIM-3は、例えば、配列番号3で示すアミノ酸配列(301アミノ酸)からシグナルペプチド、膜貫通領域及び細胞内領域を除いた22位から202位のアミノ酸(181アミノ酸)のペプチドのうち、連続する、120アミノ酸以上、140アミノ酸以上及び160アミノ酸以上のアミノ酸配列を含むペプチドが例示される。
本発明では、試料中のバイオマーカーを測定する。「測定する」とは、試料中のその量又は濃度を、好ましくは半定量的又は定量的に測定することを意味し、その量は、絶対量であってもよいし又は相対量であってもよい。相対量とは、意図的に添加した標準物質に対して、目的とするバイオマーカーの測定強度の比である。一方、絶対濃度とは、目的とするバイオマーカーに対して、あらかじめ同じバイオマーカーを用いて検量線(バイオマーカーの濃度とバイオマーカーの測定強度との関係)を作成し、測定された強度からその絶対濃度を算出する方法である。
また本発明では、「バイオマーカーを測定する」とは、バイオマーカーそのものを測定してもよいし、又はその派生物若しくは誘導体を測定してもよい。例えば、「派生物」及び「誘導体」とは、バイオマーカーから派生する物質及び当該バイオマーカーに由来する物質をそれぞれ意味する。「派生物」及び「誘導体」には、例えば、修飾されたバイオマーカー、シグナルペプチドを含むタンパク質、タンパク質の特定のサブユニット分子、ペプチド断片、遺伝子転写産物(mRNA)の断片などが含まれるが、これに限定されるものではない。バイオマーカーの測定は、直接的又は間接的に行うことができる。直接的な測定は、試料中に存在するマーカータンパク質又はマーカー遺伝子(mRNA)の分子数と直接相関するシグナルに基づいて、その量又は濃度を測定することを含む。そのようなシグナルは、例えばマーカータンパク質又は遺伝子の特定の物理的又は化学的な特性に基づいている。間接的な測定は、二次成分(すなわちバイオマーカー以外の成分)、例えば抗体やアプタマーなどのリガンド、標識又は酵素反応生成物から得られるシグナルの測定である。
使用する試料は、成人スチル病について判定しようとする被験体に由来する試料であれば特に限定されるものではない。例えば生体液試料(全血、血清、血漿、尿、髄液、腹水等)が挙げられ、採取の容易性の点から、全血、血清又は血漿などを試料として用いることが好ましい。血漿を使用する場合には、抗凝固剤としてEDTAを使用することが好ましいが、ヘパリン、クエン酸ナトリウムなど当該分野で公知又は汎用されているものを使用することができる。血液試料の場合、採血後は氷冷又は冷蔵保存することが好ましい。
また被験体は、ヒト、及びその他の哺乳動物、例えば霊長類(サル、チンパンジーなど)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなど)、ペット用動物(イヌ、ネコなど)、実験動物(マウス、ラット、ウサギなど)である。特に、ヒトを被験体とすることが好ましい。
本発明では、バイオマーカー、すなわちガレクチン9及び/又はTIM-3(場合によりフェリチン)を測定するが、その測定方法は、当技術分野で公知の方法又は手段を用いることができ、特に限定されるものではない。
一実施形態では、バイオマーカーの測定は、試料中のマーカータンパク質(すなわちガレクチン9タンパク質及び/又はTIM-3タンパク質、場合によりフェリチンタンパク質)を検出することにより行うことができる。そのような検出方法及び手段は当技術分野で公知であり、例えば免疫アッセイの方法及び試薬などがある。またマーカータンパク質の測定は、マーカータンパク質に特有の物理的又は化学的特性を測定するための手段、例えば正確な分子量又はNMRスペクトル等を測定するための手段によって行うことができる。マーカータンパク質を測定するための手段としては、バイオセンサー、プロテインチップ、免疫アッセイと連結した光学装置、質量分析計、NMR分析計、二次元電気泳動装置又はクロマトグラフィー装置等の分析装置が挙げられる。
例えば、試料中のマーカータンパク質の測定は、免疫アッセイ(免疫学的測定法)により行うことができる。すなわち試料中のマーカータンパク質と、該タンパク質に特異的に結合する抗体との反応に基づいて、該タンパク質の発現を測定する。免疫アッセイは、当該分野で汎用されている方法であれば液相系及び固相系のいずれで行ってもよい。検出の容易性の点で、固相系を利用することが好ましい。また免疫アッセイの形式も限定されるものではなく、直接固相法の他、サンドイッチ法、競合法、ウエスタンブロッティング法、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)法などであってもよい。
免疫アッセイを採用する場合には、マーカータンパク質に対する抗体を使用する。マーカータンパク質に対する抗体はモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のいずれであってもよいし、あるいはマーカータンパク質のエピトープに結合することができるFab、Fvフラグメントなどであってもよい。一次抗体と二次抗体を使用する場合には、両方ともモノクローナル抗体を用いることもでき、あるいは、一次抗体と二次抗体のいずれか一方をポリクローナル抗体とすることもできる。抗体は、当技術分野で公知の方法により調製することができる。また抗体は、市販品として入手することができ、モノクローナル及びポリクローナル抗体、標識化抗体、抗体を含む検出用キットなども複数市販されている。例えば、ガレクチン9に対する抗体は、QuantikineTM ELISA Human Galectin-9 immunoassayキット(R&D Systems社)に含まれる抗体、抗ヒトガレクチン-9, モノクローナル抗体 (9M1-3)(富士フィルム和光純薬社)、Anti-Galectin 9 Polyclonal Antibody(Bioss社)などを利用可能である。またTIM-3に対する抗体は、Human TIM-3 Quantikine ELISAキット(R&D Systems社)に含まれる抗体、Anti-Tim-3, Rabbit(ポリクローナル、GeneTex社)、TIM-3 Antibody(R&D Systems社)などを利用可能である。さらにフェリチンを測定する場合には、フェリチンに対する抗体もAnti-Ferritin, -Mono(BBI Solutions社)、抗ヒトフェリチンモノクローナル抗体(コスモ・バイオ社、品番KR-062)、ルミパルス(登録商標)フェリチン-Nキット(富士レビオ社)などが市販されている。
マーカータンパク質と抗体との結合(反応)は、周知の方法に従って測定しうる。当業者であれば、採用する免疫アッセイの種類及び形式、使用する標識の種類などに応じて、各アッセイについての有効かつ最適な測定方法を決定することができる。例えば、試料中のマーカータンパク質と抗体との結合を容易に検出するために、該抗体を標識することにより該結合を直接検出するか、又は標識二次抗体若しくはビオチン−アビジン複合体等を用いることにより間接的に検出する。
免疫アッセイとして固相系を選択する場合には、例えば試料中のタンパク質成分を固相(プレート、膜、ビーズ等)に固定化することができ、あるいは、抗体を固相に固定してもよい。この方法は、いわゆる「サンドイッチ法」と呼ばれる方法であり、標識として酵素を用いる場合には、「ELISA」として広く用いられている方法である。このような固相系の方法は、極微量のタンパク質の検出と操作の簡便化のため好ましい方法である。またこのような免疫アッセイは、例えば操作が簡便なテストストリップにおいても実施することができる。
免疫アッセイとして液相系を選択する場合には、例えば、標識化抗体と試料とを接触させて標識化抗体とマーカータンパク質を結合させ、この結合体を分離し、標識シグナルを検出する。あるいは、マーカータンパク質に対する抗体(一次抗体)と試料とを接触させて一次抗体とマーカータンパク質を結合させ、この結合体に標識化抗体(二次抗体)を結合させ、この三者の結合体における標識シグナルを検出する。あるいは、さらにシグナルを増強させるためには、非標識の二次抗体を先ず抗体+マーカータンパク質結合体に結合させ、この二次抗体に標識物質を結合させるようにしてもよい。このような二次抗体への標識物質の結合は、例えば二次抗体をビオチン化し、標識物質をアビジン化しておくことによって行うことができる。
免疫アッセイにおいて使用する抗体を標識するための標識としては、酵素、放射性同位体、蛍光色素又はアビジン−ビオチン系を使用することができる。酵素としては、通常の酵素免疫アッセイ(EIA)に用いられる酵素、例えば、パーオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等を用いることができる。放射性同位体としては、125Iや3H等の通常のラジオイムノアッセイ(RIA)で用いられているものを使用することができる。蛍光色素としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)やテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)等の通常の蛍光抗体法に用いられるものを使用することができる。
標識シグナルの検出もまた、当技術分野で公知の方法に従って行うことができる。例えば、酵素標識を用いる場合には、酵素作用によって分解して発色する基質を加え、基質の分解量を光学的に測定することによって酵素活性を求め、これを結合抗体量に換算し、標準値との比較から抗体量が算出される。基質は、使用する酵素の種類に応じて異なり、例えば酵素としてパーオキシダーゼを使用する場合には、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジシンを、また酵素としてアルカリフォスファターゼを用いる場合には、パラニトロフェノール等を用いることができる。放射性標識を用いる場合には、放射性標識の発する放射線量をシンチレーションカウンター等により測定する。蛍光標識は、例えば蛍光顕微鏡、プレートリーダー等を用いて検出及び定量することができる。
以上の免疫学的方法では、試料中のマーカータンパク質とマーカータンパク質に対する抗体との結合量が多いほど、試料中にマーカータンパク質が多く存在することとなる。
あるいは、マーカータンパク質の測定は、質量分析法(MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)、キャピラリー電気泳動質量分析法(CE-MS)、又はキャピラリー電気泳動飛行時間型質量分析法(CE-TOFMS)などを使用して行うことができる。
また別の実施形態においては、バイオマーカーの測定は、試料中のマーカー遺伝子(すなわちガレクチン9遺伝子及び/又はTIM-3遺伝子、場合によりフェリチン遺伝子)の転写産物を検出することにより行うことができる。そのような検出方法及び検出手段は当技術分野で公知であり、例えば、マーカー遺伝子のDNAの全部若しくは一部の配列又はその相補配列を含むプライマーDNA又はプローブDNAを使用した検出がある。該プライマーDNA又はプローブDNAは、被験体由来の試料中に発現しているマーカー遺伝子のmRNA又は該mRNAに対応するcDNAと特異的に結合して、試料中のマーカー遺伝子の転写産物を検出することが可能である。
プライマーDNA及びプローブDNAは、マーカー遺伝子のDNAの塩基配列に基づいて、公知のプログラムにより容易に設計することができ、また当業者に公知の方法に従って調製することができる。具体的には、マーカー遺伝子の塩基配列、例えば配列番号2(ヒトガレクチン9)や配列番号4(ヒトTIM-3)に示される塩基配列及びその相補配列に基づいて設計することができる。プライマーとして実質的な機能を有するDNAの長さとしては、10塩基以上が好ましく、さらに好ましくは15〜50塩基であり、さらに好ましくは20〜30塩基である。またプローブとして実質的な機能を有するDNAの長さとしては、10塩基以上が好ましく、さらに好ましくは15〜50塩基であり、さらに好ましくは20〜30塩基である。さらに、当業者には周知のように、プライマーDNA又はプローブDNAには、アニーリング又はハイブリダイズする部分以外の配列、例えばタグ配列などの付加配列が含まれていてもよい。
被験体由来の試料におけるマーカー遺伝子の転写産物を検出するためには、上記プライマーDNA及び/又はプローブDNAをそれぞれ増幅反応又はハイブリダイゼーション反応において用い、その増幅産物又はハイブリッド産物を検出する。そのような反応を行う場合には、通常は、当技術分野で周知の方法を使用して被験体由来の試料からmRNA又は該mRNAに対応するcDNAを調製する。以上のように調製した試料を用いて、以下に示す増幅反応及び/又はハイブリダイゼーション反応を行う。
プライマーDNAを用いてmRNA又はcDNAを鋳型とした増幅反応を行い、その特異的増幅反応を検出することにより、試料中のマーカー遺伝子の転写産物を検出することができる。増幅手法としては、特に限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法の原理を利用した公知の方法(PCR、RT-PCR、リアルタイムPCRなど)を挙げることができる。増幅産物の検出には、増幅反応により得られる増幅産物を特異的に認識することができる公知の手段を用いることができる。例えば、アガロースゲル電気泳動法等を利用して、特定のサイズの増幅断片が増幅されているか否かを確認することにより、特異的な増幅反応を検出することができる。
あるいは、増幅反応の過程で取り込まれるdNTPに、放射性同位体、蛍光物質、発光物質などの標識体を作用させ、この標識体を検出することができる。放射性同位体としては、32P、125I、35Sなどを用いることができる。また蛍光物質としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、スルホローダミン(SR)、テトラメチルローダミン(TRITC)などを用いることができる。また発光物質としてはルシフェリンなどを用いることができる。これら標識体の種類や標識体の導入方法等に関しては、特に制限されることはなく、従来公知の各種手段を用いることができる。例えば標識体の導入方法としては、放射性同位体を用いるランダムプライム法が挙げられる。
標識したdNTPを取り込んだ増幅産物を観察する方法としては、上述した標識体を検出するための当技術分野で公知の方法であればいずれの方法でもよい。例えば、標識体として放射性同位体を用いた場合には、放射活性を、例えば液体シンチレーションカウンター、γ-カウンターなどにより計測することができる。また標識体として蛍光を用いた場合には、その蛍光を蛍光顕微鏡、蛍光プレートリーダーなどを用いて検出することができる。
また、プローブDNAを用いて試料に対するハイブリダイゼーション反応を行い、その特異的結合(ハイブリッド)を検出することにより、マーカー遺伝子の転写産物を検出することもできる。ハイブリダイゼーション反応は、プローブDNAが試料中のマーカー遺伝子のmRNA又はcDNAのみと特異的に結合するような条件、すなわちストリンジェントな条件下で行う必要がある。ハイブリダイゼーションを行う場合には、プローブDNAに蛍光標識(フルオレセイン、ローダミンなど)、放射性標識(32Pなど)、ビオチン標識等の適当な標識を付加することができる。
標識化プローブDNAを用いた検出は、試料又はそれから調製したmRNA若しくはcDNAとプローブDNAとをハイブリダイズ可能なように接触させることを含む。具体的には、試料又はmRNA若しくはcDNAを適当な固相に固定化し、標識を付加したプローブDNAを添加することにより、あるいは標識プローブDNAを適当な固相に固定化し、試料又はmRNA若しくはcDNAを添加することにより、プローブDNAと試料又はmRNA若しくはcDNAとを接触させてハイブリダイゼーション反応を行い、ハイブリダイズしなかったプローブDNAを除去した後、試料又はmRNA若しくはcDNAとハイブリダイズしているプローブDNAの標識を検出する。標識が検出された場合には、試料中にマーカー遺伝子の転写産物が存在することとなる。標識化プローブDNAを用いた発現の測定方法の例としては、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等を挙げることができる。
一実施形態において、バイオマーカーとして、ガレクチン9を測定する。また別の実施形態において、バイオマーカーとして、TIM-3を測定する。さらに別の実施形態では、バイオマーカーとして、ガレクチン9及びTIM-3を測定する。バイオマーカーを2つ組み合わせて使用することによって、より正確かつ高精度な判定や、治療の効果のモニタリングが可能となる。
バイオマーカーは、当技術分野で公知の他のマーカーと組み合わせてもよい。他のマーカーとしては、例えば血清フェリチン、血清IL-18(インターロイキン18)が挙げられる。このようにマーカーを組み合わせることによって、成人スチル病の判定をより高精度に行うことができる。
以上のようにして、被験体から採取した試料に含まれるバイオマーカーを測定し、その結果に基づいて被験体における成人スチル病を判定することが可能である。さらに、被験体から複数の時点に採取した試料においてバイオマーカーを測定してもよい。
本明細書中、「成人スチル病を判定する」とは、被験体における成人スチル病の発症を判定することだけではなく、被験体における成人スチル病の発症リスクを予測すること、被験体における成人スチル病の病型若しくは重症度を判定すること、被験体において成人スチル病についてモニタリングすること、被験体における成人スチル病に対する治療の効果をモニタリングすること、さらには成人スチル病の診断を補助することを含む意味である。また本発明において「判定」は、既に検出又は診断された成人スチル病の継続的なモニタリング、及び既に行った成人スチル病の診断の確認も包含する。
なお、本発明において「判定」は、統計学的に有意な割合の被験体を判定できることを意図している。よって本発明に係る成人スチル病の判定方法、判定用キット及び判定システムによる「判定」には、被験体の全て(すなわち100%)について必ず正しい結果が得られない場合も含まれる。統計的に有意な割合は、様々な周知の統計評価ツール、例えば信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントのt検定、マン・ホイットニー検定等を用いて決定することができる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%である。p値は、好ましくは、0.1、0.01、0.05、0.005又は0.0001である。より好ましくは、被験体の少なくとも60%、少なくとも80%又は少なくとも90%を、本発明にしたがって適切に判定することができる。
成人スチル病の判定では、上述のように測定したバイオマーカーの測定値を参照値と比較する。複数のバイオマーカーを測定する場合には、それぞれのバイオマーカーをそれぞれの参照値と比較する。
参照値(基準値)は、成人スチル病の発症の指標となるバイオマーカーの量若しくは濃度、又はその量若しくは濃度の範囲、あるいは異常なしの指標となるバイオマーカーの量若しくは濃度、又はその量若しくは濃度の範囲である。例えば、参照値は、健常者(集団)又は成人スチル病の低リスク者(集団)に由来するものとすることができる。あるいは、参照値は、成人スチル病を発症した又は特定の病型若しくは重症度の成人スチル病を有する患者(患者集団)に由来するものとすることができる。個々の被験体に適用する参照値は、対象動物の種類、年齢、性別などの様々な生理学的パラメータに応じて変化しうる。
参照値又は参照範囲は、対照(健常者又は患者)におけるバイオマーカーの中央値、平均値、上限レベル、下限レベル、一定範囲の値を所定の参照値又は参照範囲として用いることができる。また、上記の値若しくは範囲に適当な係数(例えば、0.3以上、0.5以上、0.8以上、0.9以上、又は3以下、2以下、1.5以下、又は1.1以下)をかけたものを閾値として用いてもよい。閾値は、予測の精度等に応じて適宜設定することができ、例えば、ROC(receiver operating characteristic curve:受信者動作特性曲線)解析により定めることができる。
好ましくは、バイオマーカーの量又は濃度と、成人スチル病の発症又は特定の病型若しくは重症度との相関をデータベースとして記録する。そして、測定された試料中のバイオマーカーの測定値を、データベース中の参照値と比較することができる。このようなデータベースは、成人スチル病発症の有無やその病型若しくは重症度の指標となる参照値又は参照範囲として有用である。
ガレクチン9(Gal-9)は、成人スチル病の発症の有無及び発症後の病型若しくは重症度においてその量又は濃度に差があり、成人スチル病の発症により、また治療の開始前又は開始後に、その量又は濃度が変化する。具体的には、ガレクチン9は、健常者と比較して成人スチル病患者においてその量又は濃度が上昇し、治療後にその量又は濃度が低下する。したがって、ガレクチン9の測定値が、健常者由来の参照値よりも高い場合、及び/又は成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合には、被験体が成人スチル病を発症している又は発症リスクがあるといえる。さらに、ガレクチン9は、成人スチル病の重症度に伴ってその量又は濃度が上昇する。したがって、ガレクチン9の測定値が、特定の重症度の成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合には、被験体の成人スチル病がその特定の重症度又はそれより重篤な重症度であると判定できる。
またTIM-3は、成人スチル病の発症の有無及び発症後の病型若しくは重症度においてその量又は濃度に差があり、成人スチル病の発症により、また治療の開始前又は開始後に、その量又は濃度が変化する。具体的には、TIM-3は、健常者と比較して成人スチル病患者においてその量又は濃度が上昇し、治療後にその量又は濃度が低下する。したがって、TIM-3の測定値が、健常者由来の参照値よりも高い場合、及び/又は成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合には、被験体が成人スチル病を発症している又は発症リスクがあるといえる。さらに、TIM-3は、成人スチル病の重症度に伴ってその量又は濃度が上昇する。したがって、TIM-3の測定値が、特定の重症度の成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合には、被験体の成人スチル病がその特定の重症度又はそれより重篤な重症度であると判定できる。
さらなる実施形態において、本発明に係る成人スチル病を判定するためのバイオマーカーとしての使用は、
試料中のフェリチンを測定すること、並びに
前記フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比を参照比と比較すること
をさらに含んでもよい。
またさらなる実施形態において、本発明に係る方法は、
試料中のフェリチンを測定する工程、並びに
前記フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比を参照比と比較する工程
をさらに含んでもよい。
フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比(すなわち、ガレクチン9/フェリチン比、TIM-3/フェリチン比)は、成人スチル病の病型(慢性関節炎型と非慢性関節炎型)において差がある。具体的には、ガレクチン9/フェリチン比、及び/又はTIM-3/フェリチン比は、慢性関節炎型ではない病型(全身型)と比較して慢性関節炎型の成人スチル病患者において値が上昇する。したがって、フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比が、慢性関節炎型の成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合、及び/又は慢性関節炎型以外の成人スチル病患者由来の参照値よりも高い場合、被験体が慢性関節炎型の成人スチル病を発症しているといえる。
別の実施形態では、被験体から複数の時点で試料を採取し、それぞれの測定時点における試料に含まれるバイオマーカーを測定し、バイオマーカーの測定値をそれぞれの測定時点で比較する。より具体的には、第1の時点におけるバイオマーカーの量又は濃度と第2の時点におけるバイオマーカーの量又は濃度とを比較する。測定は、経時的に少なくとも2回、3回、4回、5回、10回、15回、20回、30回、又はそれ以上の回で、例えば1日、2日、5日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、半年、1年、2年、3年、5年、又はそれ以上の期間を空けて、行うことができる。この比較によって、経時的なモニタリングを行うことができ、成人スチル病の進行(重篤化)又は治癒、異常なしからの成人スチル病の発症などを評価することができる。
本発明の成人スチル病の判定方法は、バイオマーカーを測定するための手段を備えた診断薬若しくは判定用キット及び/又はシステムを用いることによって、容易かつ簡便に行うことができる。
本発明に係る成人スチル病の判定用キット又は診断薬は、試料におけるガレクチン9及び/又はTIM-3を測定するための手段を少なくとも含む。別の実施形態において、本発明に係る判定用キット又は診断薬は、フェリチンを測定するための手段をさらに含んでもよい。
本発明のキット又は診断薬は、バイオマーカーを測定するための手段以外にも判定に有用な他の成分を含んでもよく、それにより、バイオマーカーの測定を容易かつ簡便に行うことができ、成人スチル病を判定することができる。
本発明のキット又は診断薬の一例は、免疫アッセイ用試薬セットであり、少なくともマーカータンパク質に対する抗体試薬(抗体、抗体フラグメント、抗体複合体、標識化抗体など)を含む。さらに、希釈や洗浄用緩衝液、標準抗原、各抗体試薬に特異的に結合をする標識抗体試薬、発色・発光・蛍光を生じさせる基質試薬、手順と評価方法を記載した手順書等を含んでもよい。キットに含まれる抗体は、予め標識されたものであってもよいし、又は標識されていなくてもよい。また抗体は、固相支持体(例えば、メンブレン、ビーズ等)に固定されていてもよい。また本発明のキット又は診断薬の別の例は、質量分析用試薬セットであり、例えば同位体標識試薬、分画用ミニカラム、緩衝液、手順書等により構成される。本発明のキット又は診断薬のさらに別の例は、試料中のマーカー遺伝子を検出するための手段(プライマーDNA、プローブDNAなど)を含むものであってもよい。
本発明のキット又は診断薬は、該キット又は診断薬を使用するための手順(例えば、本発明の方法を実施するための手順)及びプロトコールを記載した説明書、成人スチル病の判定において使用する参照値又は参照範囲を示した表などを含んでもよい。
本発明のキット又は診断薬に含まれる構成要素は、個別に提供されてもよいし、又は単一の容器内に提供されてもよい。好ましくは、本発明のキット又は診断薬は、本発明の方法を実施するために必要な構成要素の全てを、即時に使用することができるように、例えば調整された濃度の構成要素として含む。
本発明に係る成人スチル病の判定用システムは、以下の手段を備える:
ガレクチン9及びTIM-3からなる群より選択される1以上を試料中で測定する測定部と、
上記測定部で測定したガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値又は前回の測定値と比較する比較部と、
上記比較部で得られた比較結果から成人スチル病を判定する判定部。
本発明のシステムは、好ましくは、本発明の方法を実施することができるように、上記の測定部、比較部及び判定部が互いに動作可能なように連結されたシステムである。ここで、測定部は、上述のように、試料中のバイオマーカーを測定するための手段を含み、例えばバイオセンサー、プロテインチップ、免疫アッセイと連結した光学装置、質量分析計、NMR分析計、二次元電気泳動装置又はクロマトグラフィー装置等の分析装置を備えている。測定部は、上述したような分析装置等から得られた測定値を処理するソフトウエアと計算機よりなるデータ解析部を備えている。データ解析部は、上述したような分析装置等から得られた測定値に基づいて検量線等のデータを参照することで、試料に含まれるバイオマーカーの量若しくは濃度を算出する。データ解析部は、例えば、シグナル表示部分、測定値を分析するユニット、コンピュータユニット等を含むことができる。また、比較部は、バイオマーカーの量若しくは濃度に関する参照値を記憶装置(データベース)等から読み出し、上記測定部で測定したバイオマーカーの測定値と参照値とを比較する。このとき、比較部は、バイオマーカーの種類に応じて適切な参照値を選択して読み出す。あるいは、同一被験体における経時的モニタリングの場合には、比較部は、前回の測定値を記憶装置(データベース)等から読み出し、測定部で測定したバイオマーカーの測定値と比較する。
さらに、判定部は、比較部においてバイオマーカーの測定値と参照値とを比較した結果に基づいて、あるいは比較部において複数の時点におけるバイオマーカーの測定値を比較した結果に基づいて、成人スチル病(ASD)を判定する。ここで、判定部は、被験体における成人スチル病の発症や進行段階、異常なし等を示す情報を取得する。好ましいシステムは、専門の臨床医の知識がなくても使用することができるものであり、例えば、単に試料を付加すればよい電子的装置がある。
例えば、判定部は、
バイオマーカーであるガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値が、健常者由来の参照値よりも高い場合、及び/又は成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合、被験体が成人スチル病を発症している又は発症リスクがあると判定し、
バイオマーカーであるガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値が参照値よりも低い場合、被験体が成人スチル病について異常なしの可能性があると判定し、
フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比が、慢性関節炎型の成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合、及び/又は慢性関節炎型以外の成人スチル病患者由来の参照値よりも高い場合、被験体が慢性関節炎型の成人スチル病を発症している可能性がある判定する。
本発明のシステムは、データ保存部、データ出力・表示部などをさらに備えるものであってもよい。
また別の態様では、本発明に使用されるバイオマーカーを利用して、被験体における成人スチル病に対する治療(治療薬又は治療法)の効果をモニタリングすることができる。具体的には、
(a)治療薬又は治療法による処置を受ける前に、成人スチル病患者からの試料においてガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、
(b)治療薬又は治療法による処置を受けた後に、成人スチル病患者からの試料においてガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、
(c)必要に応じて、工程(b)を繰り返す工程、並びに
(d)(a)〜(c)の測定結果に基づいて成人スチル病に対する治療薬又は治療法の効果をモニタリングする工程
を含む。
上記方法では、治療薬又は治療法による処置を受ける前に、成人スチル病患者から試料を採取し、試料中のバイオマーカーを測定する。成人スチル病患者に治療薬又は治療法による処置が行われた後、適当な時期に試料を採取して、試料中のバイオマーカーを測定する。例えば、処置の直後、30分後、1時間後、3時間後、5時間後、10時間後、15時間後、20時間後、24時間(1日)後、2〜10日後、10〜20日後、20〜30日後、1ヶ月〜6ヶ月後に試料を採取する。試料中のバイオマーカーの測定については前記と同様に行うことができる。治療前後にバイオマーカーを測定することによって、その治療薬又は治療法による処置の効果をモニタリングすることが可能となる。モニタリングの結果に基づいて、治療の停止、継続又は変更を検討する一助となる。
本発明に係る判定方法は、さらに精度を高めるために、他の従来公知の診断方法と組み合わせて行ってもよい。そのような公知の成人スチル病の診断方法としては、別のバイオマーカーの測定(血清フェリチン値、血清IL-18値など)、白血球数の測定、疾患活動性スコア(Pouchotスコア)による判定が挙げられる。このような成人スチル病の診断基準は、当業者に公知であり、例えば、Yamaguchi M. et al., J Rheumatol 19:424, 1992、三村俊英著、成人Still病の診断と治療、日本内科学会雑誌107巻9号、1892頁〜1898頁、2018年を参照されたい。
本発明の成人スチル病の判定方法、キット及びシステムによって、成人スチル病の発症や進行を早期に判定することができ、詳細な検査や治療方針の決定に役立つ。また被験体は、成人スチル病の治療を早期に受けたり、成人スチル病の進行を経過観察することが可能となる。また、治療の効果についてモニタリングすることができ、治療の効果に応じて治療の停止、継続又は変更を検討することが可能となる。
上述の判定結果に基づいて、医師は、被験体の成人スチル病について診断を行い、適切な処置を行うことができる。すなわち本発明は、被験体において成人スチル病を判定し、治療する方法にも関する。例えば、本発明に係る方法に従って被験体における成人スチル病を判定し、被験体が成人スチル病を発症している可能性が高いと評価された場合、被験体において成人スチル病を治療する又はその進行を予防する処置を行う。また、被験体における成人スチル病が進行している又は重症度が高いと評価された場合には、治療を継続したり、必要であれば治療法の変更を検討する。また、被験体において成人スチル病の発症可能性が高いと評価された場合には、上述したような他の成人スチル病の診断方法を行って、成人スチル病の発症を確定する。さらに、治療前後での評価結果に基づいて、治療の効果をモニタリングし、治療の停止、継続又は変更を決定する。また、異常なしと判定された場合には、バイオマーカーの測定を経時的に行って、経過観察することができる。
本発明に従って被験体が成人スチル病を発症している又はその発症リスクが高いと判定された場合、被験体を適切に治療することが好ましい。成人スチル病の治療は、当技術分野で公知の治療であれば特に限定されるものではなく、治療有効量の治療薬、例えばステロイド剤を投与することができる。ステロイド剤としては、限定されないが、コルチコステロイド、例えばプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン及びヒドロコルチゾン並びにそれらの溶媒和物などが挙げられる。ステロイド剤は、単独で又は組みあわせて使用できる。ステロイド剤は、注射、静脈内投与、経口投与などの経路で投与され得る。成人スチル病の治療薬、用量、投与回数、投与方法などは、治療対象の被験体の病型、重症度、体重、既往歴、治療歴などを考慮して医師が適宜選択することができる。
成人スチル病の治療は、臓器障害を有する場合や全身状態不良等では、副腎皮質ステロイドを大量(プレドニン換算で1 mg/kg)に用い、さらに重篤な臓器障害ではステロイドパルス療法を併用する。CRPやフェリチンの正常化がみられない場合には減量せずに、十分な説明と同意のもと、免疫抑制薬の併用又は生物学的抗リウマチ薬の使用を考慮する。免疫抑制薬としては、副腎皮質ステロイド抵抗性の難治性ASDに対してメトトレキサート(methotrexate:MTX)の使用が強く推奨されている。生物学的抗リウマチ薬として、日本ではASDに類似する病態と推定されるsJIAに保険適用のある抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)の有効性が示され、ASDに対する治療薬として承認されている。
また慢性関節炎型の成人スチル病の治療は、第1選択薬としてステロイド剤を投与した後、TNF-αブロッカーの使用が考慮されることがある。TNF-αブロッカーとして、例えばインフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブが挙げられる。そのため、本発明に従って被験体が慢性関節炎型の成人スチル病を発症していると判定された場合には、このような治療を検討してもよい。
また、本発明に使用されるバイオマーカーを利用して、成人スチル病の治療(治療薬又は治療法)の有効性を評価する、あるいは成人スチル病の治療薬候補をスクリーニングすることができる。具体的には、成人スチル病の治療の有効性を評価する方法、又は成人スチル病の治療薬候補をスクリーニング方法は、
被験治療薬又は治療法による処置を受けた成人スチル病を有する動物からの試料において、ガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、並びに
前記測定結果に基づいて成人スチル病に対する被験治療薬又は治療法の有効性を評価する工程
を含む。
本発明の方法では、成人スチル病を有する動物から試料を採取し、試料中のバイオマーカーをin vitroで測定する。好ましくは、被験治療薬又は治療法による処置を行う前に、成人スチル病を有する動物から試料を採取し、試料中のバイオマーカーをin vitroで測定する。成人スチル病を有する動物に被験治療薬又は治療法による処置が行われた後、適当な時期に試料を採取して、試料中のバイオマーカーをin vitroで測定する。例えば、処置の直後、30分後、1時間後、3時間後、5時間後、10時間後、15時間後、20時間後、24時間(1日)後、2〜10日後、10〜20日後、20〜30日後、1ヶ月〜6ヶ月後に試料を採取する。試料中のバイオマーカーの測定、成人スチル病の判定については前記と同様に行うことができる。
対象となる動物は、成人スチル病を発症したヒトであってもよいし、あるいは成人スチル病モデル動物(マウス、ラット、イヌなど)であってもよい。一般的には、モデル動物において被験治療薬又は治療法の有効性が確認された後に、ヒトにおいて、例えば臨床試験などにより有効性の評価が行われる。
評価又はスクリーニングの対象となる被験治療薬又は治療法の種類は特に限定されるものではない。例えば、被験治療薬又は治療法は、任意の物質的因子、具体的には、天然に生じる分子、例えば、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物(糖等)、ステロイド、グリコペプチド、糖タンパク質、プロテオグリカンなど;天然に生じる分子の合成アナログ又は誘導体、例えば、ペプチド擬態物、核酸分子(アプタマー、アンチセンス核酸、二本鎖RNA(RNAi)等)など;天然に生じない分子、例えば低分子有機化合物(無機及び有機化合物ライブラリー、又はコンビナトリアルライブラリー等)など;並びにそれらの混合物を挙げることができる。
動物の被験治療薬又は治療法による処置は、その治療薬又は治療法の種類により異なるが、当業者であれば容易に決定することができる。例えば、被験治療薬の投与量、投与期間、投与経路などの投与条件は、当業者であれば適切に決定することができる。また、被験治療薬又は治療法の有効性は、いくつかの条件で検討することも可能である。そのような条件としては、被験治療薬又は治療法で処置する時間又は期間、量(大小)、回数などが挙げられる。さらに、複数の治療薬又は治療法を組み合わせて用いてもよい。
被験治療薬又は治療法の処置後の動物から採取した試料中のバイオマーカーを測定し、処置前の量又は濃度と比較することによって、被験治療薬又は治療法が、成人スチル病による症状若しくは重症度の改善、成人スチル病の進行若しくは発症の停止又は減速化に有効であるか否かを評価することができる。
例えば、ガレクチン9及び/又はTIM-3の場合には、成人スチル病患者において、処置後の測定値が処置前の測定値より低いことは、被験治療薬又は治療法が、成人スチル病による症状若しくは重症度の改善、その進行若しくは発症の停止若しくは減速化に有効であることを示す。一方、処置後の測定値が処置前の測定値より高い又は処置前の測定値と有意差がないことは、被験治療薬又は治療法が成人スチル病の治療に有効でないことを示す。
以上から、本発明に係る成人スチル病の治療の有効性の評価方法により、成人スチル病を治療又は予防するための治療薬又は治療法を見出し、さらには治療薬又は治療法の有効性を確認することができる。
以下、本発明を実施例及び図面によりさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
実施例において、結果は平均値±標準偏差で示し、Dunnett検定、対応のあるt検定、又はStudentのt検定により比較した。連続変数間の相関はSpearmanの順位相関検定により分析した。すべてのデータ入力及び統計解析は、GraphPad Prism version 7.0(GraphPad Software, San Diego, CA)を用いて行った。いずれの解析においても、両側p<0.05を統計学的に有意とした。
<実施例1> 成人スチル病(ASD)患者の血清ガレクチン9及びTIM-3濃度の測定
本実施例では、ASD患者において血清ガレクチン9及びTIM-3を測定し、ガレクチン9又はTIM-3がASDのバイオマーカーとなり得るかを検討した。
(1)被験者の概要
2000年から2019年までに福島県立医科大学病院リウマチ科で成人発症スチル病(ASD)と診断された全患者の探索的遡及試験を行った。対象患者は16歳以上とし、Yamaguchiらの診断基準(Yamaguchi M, et al., J Rheumatol. 1992;19:424-30)に従い成人スチル病(ASD)と診断することとした。患者群では、電子カルテをレビューすることにより、病歴及び臨床所見を収集した。治験実施計画書は、福島県立医科大学治験審査委員会の倫理委員会の承認(No.2920)を受けた。本試験で使用する臨床記録について、各個人から書面によるインフォームドコンセントを取得した。患者は既報(Gerfaud-Valentin M, et al., Autoimmun Rev. 2014;13:708-22)のように全身型と慢性関節型の2つの疾患パターンに分類された。特に、多周期性全身性発熱発作を伴うASD患者は、多周期性全身型に分類された。患者は、慢性関節炎型の有無により2つの異なる病型として分類された。
46名のASD患者の臨床的、人口統計学的、及び検査的特徴を分析し、その結果を以下の表1にまとめた。標準化されたフォームを用いて、以下の人口統計学的及び臨床的ASD関連特性を収集した:性別、生年月日、診断時年齢、罹病期間、リウマチ性疾患の既往歴又は家族歴、スチル病関連発疹の存在、関節痛、関節炎、筋痛、発熱の特徴、リンパ節腫脹、及び内臓病変(漿膜炎、肝障害)。以下の臨床検査データを記録した:白血球数及び血小板数、ヘモグロビン、C反応性タンパク質(CRP)、トランスアミナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、フェリチン、及び血球貪食のマーカー(高トリグリセリド血症、低フィブリノーゲン血症、骨髄における血球貪食)。各患者は、Pouchotら(Pouchot J, et al. Medicine. 1991;70:118-36)が提唱したASDの全身性スコア(Pouchotスコア)について評価した。このPouchotスコアは、発熱、典型的な発疹、胸膜炎、肺炎、心膜炎、肝腫大又は肝機能検査異常、脾腫、リンパ節腫脹、白血球増加>15,000/mm3、咽頭痛、筋肉痛、並びに腹痛の12症状のそれぞれに1点を割り当てる(最高スコア:12点)。データはスタンドデータ抽出フォームを用いて収集し、2名のリウマチ専門医がダブルチェックした。
Figure 2021181890
対照として、27名の健常被験者(男性11名、女性16名、年齢中央値40歳、四分位範囲[IQR];35〜49歳)及び関節リウマチ(RA)患者(116例、内83例(71.6%)が女性、平均年齢63.5歳(SD 14.4))を対象とした。RA患者の大半は疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を服用しており、大部分はメトトレキサート(116症例中59例、50.9%)、生物学的製剤(116症例中38例、32.8%)であった。
(2)ガレクチン9及びTIM-3の測定
ガレクチン9及び可溶性TIM-3(sTIM-3)の血清濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイキット(R&D Systems、Minneapolis, MN, USA)を製造業者の指示に従って用いてELISA法により測定した。
成人スチル病(ASD)患者、関節リウマチ(RA)患者及び健常対照(HC)におけるガレクチン9又はsTIM-3の血清レベルの測定結果をそれぞれ図1A及び図1Bに示す。結果は平均値±標準偏差で示し、分散分析に後続するTukey検定により比較した。図1A及び図1Bに示される通り、ASD患者(n=46)におけるガレクチン9又はsTIM-3の血清レベルは、RA患者(n=116)又は健常被験者(n=27)と比較して有意に高かった。これは、ガレクチン9及びTIM-3がそれぞれ独立してASDのバイオマーカーとなり得ることを示している。
<実施例2> 血清ガレクチン9及びTIM-3濃度のバイオマーカーとしての有用性
本実施例では、ガレクチン9又はTIM-3のバイオマーカーとしての有用性についてさらに検討した。
(1)血清フェリチンレベルとの相関
ASD患者におけるガレクチン9又はsTIM-3とフェリチンの血清レベルの相関を調べた。その結果を図2A及び図2Bに示す。連続変数間の相関はSpearmanの順位相関検定により分析した。図2Aに示されるように、ガレクチン9とフェリチンの血清レベルの相関分析は、ASD患者において有意な正の相関を示した。また図2Bに示されるように、sTIM-3とフェリチンの血清レベルの相関分析は、ASD患者において有意な正の相関を示した。この相関分析からも、ガレクチン9及び/又はTIM-3が独立して成人スチル病のバイオマーカーとして有用であることが示された。
(2)疾患活動性指標(Pouchotスコア)との相関
ASD患者におけるガレクチン9又はsTIM-3の血清レベルと疾患活動性指標(Pouchotスコア)との相関を調べた。その結果を図3A及び図3Bに示す。図3Aに示されるように、血清ガレクチン9レベルと疾患活動性指標(Pouchotスコア)の相関分析は、ASD患者において有意な正の相関を示した。また図3Bに示されるように、血清sTIM-3レベルと疾患活動性指標(Pouchotスコア)の相関分析は、ASD患者において有意な正の相関を示した。この相関分析から、ガレクチン9及び/又はTIM-3が独立して成人スチル病のバイオマーカーとして有用であることがさらに示された。また、ガレクチン9及び/又はTIM-3が、成人スチル病の重症度に応じて上昇することがわかった。
(3)血清IL-18レベルとの相関
ASD患者におけるガレクチン9又はsTIM-3とIL-18の血清レベルの相関を調べた。なお、IL-18の血清レベルは、サンドイッチELISA(MBL、名古屋、日本)を製造業者の指示に従って用いて測定した。その結果を図4A及び図4Bに示す。連続変数間の相関はSpearmanの順位相関検定により分析した。図4Aに示されるように、ガレクチン9とIL-18の血清レベルの相関分析は、ASD患者において有意な正の相関を示した。また図4Bに示されるように、sTIM-3とIL-18の血清レベルの相関分析は、ASD患者において有意な正の相関を示した。この相関分析から、ガレクチン9及び/又はTIM-3が独立して成人スチル病のバイオマーカーとして有用であることがさらに示された。
<実施例3> バイオマーカーとASDの病型との関連
本実施例では、ガレクチン9又はTIM-3がASDの病型との関連性を有するか否かについて検討した。
ASD患者におけるチェックポイント分子(ガレクチン9又はsTIM-3)とフェリチンの血清レベルの比を求め、ASDの病型(慢性関節炎型と非慢性関節炎型)との関係を調べた。その結果を図5A及び図5Bに示す。有意性の判定にはMann Whitney U検定を用いた。
図5Aの左側は、ガレクチン9(Gal-9)のみを病型(慢性関節炎型と非慢性関節炎型)で比較したものであり、右側は、ガレクチン9/フェリチンの比(Gal-9/FT)を病型で比較したものである。Gal-9/フェリチンの比は、慢性関節炎型のASD患者の方が、慢性関節炎型のない患者より有意に高かった。
図5Bの左側は、sTIM-3のみを病型(慢性関節炎型と非慢性関節炎型)で比較したものであり、右側は、sTIM-3/フェリチンの比(sTIM-3/FT)を病型で比較したものである。sTIM-3/フェリチンの比は、慢性関節炎型のASD患者の方が、慢性関節炎型のない患者より有意に高かった。
以上の結果から、ガレクチン9及びTIM-3は、それぞれ独立して、フェリチンに対する比を求めることでASDの病型(慢性関節炎型の有無)の分類に有用なバイオマーカーであることがわかった。
<実施例4> バイオマーカーによるASD治療のモニタリング
本実施例では、ガレクチン9又はTIM-3の、ASD治療のモニタリングにおける有用性について検討した。
ASD患者5例において、免疫抑制治療(ステロイド剤)の前後における血清ガレクチン(Gal-9)濃度及び血清sTIM-3(可溶性TIM-3)濃度の変化を調べた。その結果を図6A及び図6Bに示す。同一被験者のペア検体をpaired t検定により比較した。図6Aは、ASDの治療により、検体中のガレクチン9濃度が顕著に低下することを示している。また図6Bは、ASDの治療により、検体中のsTIM-3濃度が顕著に低下することを示している。これは、ガレクチン9及び/又はTIM-3が、独立してASD治療が成功したか否かの判定やASD治療のモニタリングに有用であることを示している。

Claims (23)

  1. 被験体における成人スチル病を判定するための、ガレクチン9及びTIM-3からなる群より選択される1以上のバイオマーカーとしての使用。
  2. 前記バイオマーカーとしての使用が、
    前記被験体由来の試料中のガレクチン9及び/又はTIM-3を測定すること、並びに
    前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値と比較すること
    を含む、請求項1に記載の使用。
  3. 前記ガレクチン9の測定が、ガレクチン9タンパク質の検出、及び/又はガレクチン9遺伝子の転写産物の検出により行われる、請求項2に記載の使用。
  4. 前記TIM-3の測定が、TIM-3タンパク質の検出、及び/又はTIM-3遺伝子の転写産物の検出により行われる、請求項2又は3に記載の使用。
  5. 前記試料中のフェリチンを測定すること、並びに
    前記フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比を参照比と比較すること
    をさらに含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の使用。
  6. 前記試料が、全血、血漿及び血清からなる群より選択される試料である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の使用。
  7. 前記成人スチル病の判定が、被験体における成人スチル病の発症の判定、被験体における成人スチル病の発症リスクの予測、被験体における成人スチル病の病型若しくは重症度の判定、被験体における成人スチル病についてのモニタリング、及び/又は被験体における成人スチル病に対する治療の効果のモニタリングである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
  8. 被験体における成人スチル病を判定するために該被験体由来の試料を分析する方法であって、
    前記試料中のガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、並びに
    前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値を参照値と比較する工程
    を含む方法。
  9. 前記ガレクチン9を測定する工程が、ガレクチン9タンパク質の検出、及び/又はガレクチン9遺伝子の転写産物の検出により行われる、請求項8に記載の方法。
  10. 前記TIM-3を測定する工程が、TIM-3タンパク質の検出、及び/又はTIM-3遺伝子の転写産物の検出により行われる、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記試料中のフェリチンを測定する工程、並びに
    前記フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比を参照比と比較する工程
    をさらに含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記試料が、全血、血漿及び血清からなる群より選択される試料である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記成人スチル病の判定が、被験体における成人スチル病の発症の判定、被験体における成人スチル病の発症リスクの予測、被験体における成人スチル病の病型若しくは重症度の判定、被験体における成人スチル病についてのモニタリング、及び/又は被験体における成人スチル病に対する治療の効果のモニタリングである、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記ガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値が、健常者由来の参照値よりも高い場合、及び/又は成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合、前記被験体が成人スチル病を発症している又は発症リスクがあることを示す、請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記フェリチンの測定値に対するガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値の比が、慢性関節炎型の成人スチル病患者由来の参照値と同等若しくはそれ以上である場合、及び/又は慢性関節炎型以外の成人スチル病患者由来の参照値よりも高い場合、前記被験体が慢性関節炎型の成人スチル病を発症していることを示す、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 試料におけるガレクチン9及び/又はTIM-3を測定するための手段を含むことを特徴とする成人スチル病判定用キット。
  17. 前記測定手段が抗体である、請求項16に記載のキット。
  18. 前記測定手段がプライマーDNA及び/又はプローブDNAである、請求項16に記載のキット。
  19. 試料におけるフェリチンを測定するための手段をさらに含む、請求項16〜18のいずれか1項に記載のキット。
  20. 前記試料が、全血、血漿及び血清からなる群より選択される試料である、請求項16〜19のいずれか1項に記載のキット。
  21. 成人スチル病の治療の有効性の評価方法であって、
    被験治療薬又は治療法による処置を受けた成人スチル病を有する動物からの試料において、ガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程、並びに
    前記測定結果に基づいて成人スチル病に対する被験治療薬又は治療法の有効性を評価する工程
    を含む方法。
  22. 前記被験治療薬又は治療法による処置を行う前に、成人スチル病を有する動物からの試料においてガレクチン9及び/又はTIM-3を測定する工程をさらに含む、請求項21に記載の方法。
  23. 処置後のガレクチン9及び/又はTIM-3の測定値が処置前の測定値より低いことが、前記被験治療薬又は治療法が、成人スチル病による症状若しくは重症度の改善、又は成人スチル病の進行若しくは発症の停止若しくは減速化に有効であることを示す、請求項21又は22に記載の方法。
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