JP2020152904A - 半導体ナノ粒子及びその製造方法、並びに発光デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】バンド端発光を示す半導体ナノ粒子の製造方法を提供する。【解決手段】半導体ナノ粒子の製造方法は、銀(Ag)塩と、アルカリ金属塩と、インジウム(In)及びガリウム(Ga)の少なくとも一方を含む塩と、硫黄源と、有機溶媒とを含む第一混合物を得ることと、前記第一混合物を熱処理することを含む。ここで前記第一混合物におけるAgとアルカリ金属の原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比が0を超えて1未満である。【選択図】図6

Description

本開示は、半導体ナノ粒子及びその製造方法、並びに発光デバイスに関する。
半導体粒子はその粒径が例えば10nm以下になると、量子サイズ効果を発現することが知られており、そのようなナノ粒子は量子ドット(半導体量子ドットとも呼ばれる)と呼ばれる。量子サイズ効果とは、バルク粒子では連続とみなされる価電子帯と伝導帯のそれぞれのバンドが、ナノ粒子では離散的となり、粒径に応じてバンドギャップエネルギーが変化する現象を指す。
量子ドットは、光を吸収して、そのバンドギャップエネルギーに対応する光に波長変換可能であるため、量子ドットの発光を利用した白色発光デバイスが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。具体的には、発光ダイオード(LED)チップから放出される光の一部を量子ドットに吸収させて、量子ドットからの発光とLEDチップからの発光との混合色として白色光を得ることが提案されている。これらの特許文献では、CdSe及びCdTe等の第12族−第16族、PbS及びPbSe等の第14族−第16族の二元系の量子ドットを使用することが提案されている。またバンド端発光が可能で低毒性組成となり得る三元系の半導体ナノ粒子として、テルル化合物ナノ粒子(例えば、特許文献3参照)、硫化物ナノ粒子(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
特開2012−212862号公報 特開2010−177656号公報 特開2017−014476号公報 特開2017−025201号公報
本開示の一態様は、バンド端発光を示す半導体ナノ粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
第一態様は、銀(Ag)塩と、アルカリ金属塩と、インジウム(In)及びガリウム(Ga)の少なくとも一方を含む塩と、硫黄源と、有機溶媒とを含む第一混合物を熱処理することを含む半導体ナノ粒子の製造方法である。半導体ナノ粒子の製造方法では、第一混合物におけるAgとアルカリ金属の原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比が0を超えて、1未満である。
第二態様は、銀(Ag)塩と、アルカリ金属塩と、インジウム(In)及びガリウム(Ga)の少なくとも一方を含む塩と、硫黄源と、有機溶媒とを含む第一混合物を熱処理して半導体ナノ粒子を得ることと、前記半導体ナノ粒子と、第13族元素を含む化合物及び第16族元素の単体又は第16族元素を含む化合物と、有機溶媒とを含む第二混合物を熱処理することとを含むコアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法である。コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法では、第一混合物におけるAgとアルカリ金属の原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比が0を超えて、1未満である。
第三態様は、Agと、アルカリ金属と、In及びGaの少なくとも一方及びSを含む半導体ナノ粒子である。半導体ナノ粒子の組成中のAg及びアルカリ金属の総含有率は10モル%以上30モル%以下であり、In及びGaの総含有率は15モル%以上35モル%以下であり、Sの含有率は35モル%以上55モル%以下である。さらに組成におけるAgとアルカリ金属の原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比が0を超えて1未満である。そして半導体ナノ粒子は、200nm以上500nm未満の範囲内にある波長の光の照射により、500nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光スペクトルにおける半値幅が250meV以下である光を発する。
第四態様は、前記半導体ナノ粒子を含むコアと、前記コアの表面に配置され、実質的に第13族元素及び第16族元素からなる半導体材料を含むシェルと、を備え、光の照射により発光するコアシェル型半導体ナノ粒子である。
本開示の一態様によれば、バンド端発光を示す半導体ナノ粒子及びその製造方法を提供することができる。
半導体ナノ粒子の吸収スペクトルの一例を示す図である。 半導体ナノ粒子の発光スペクトルの一例を示す図である。 半導体ナノ粒子の吸収スペクトルの別例を示す図である。 半導体ナノ粒子の発光スペクトルの別例を示す図である。 半導体ナノ粒子の吸収スペクトルの別例を示す図である。 半導体ナノ粒子の発光スペクトルの別例を示す図である。 コアシェル型半導体ナノ粒子の吸収スペクトルの一例を示す図である。 コアシェル型半導体ナノ粒子の発光スペクトルの一例を示す図である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、半導体ナノ粒子及びその製造方法を例示するものであって、本発明は、以下に示す半導体ナノ粒子及びその製造方法に限定されない。
半導体ナノ粒子
半導体ナノ粒子は、銀(Ag)と、アルカリ金属と、インジウム(In)及びガリウム(Ga)の少なくとも一方と、硫黄(S)とを含む。半導体ナノ粒子の組成中のAg及びアルカリ金属の総含有率は10モル%以上30モル%以下であり、In及びGaの総含有率が15モル%以上35モル%以下であり、Sの含有率が35モル%以上55モル%以下であり、Agとアルカリ金属の原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比が0を越えて1未満である。半導体ナノ粒子は、200nm以上500nm未満の範囲内にある波長の光の照射により、500nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光スペクトルにおける半値幅が250meV以下である光を発する。
組成にAg及びアルカリ金属(以下、Mと略記することがある)と、In及びGaの少なくとも一方と、Sとを含む半導体ナノ粒子は、その形状及び寸法に起因して、バンド端発光を与えるものである。また、半導体ナノ粒子は、毒性が高いとされているCd及びPbを含まない組成のものとすることができ、Cd等の使用が禁じられている製品等にも適用可能である。したがって、この半導体ナノ粒子は、液晶表示装置に用いる発光デバイスの波長変換物質として、また、生体分子マーカー等として好適に用いることができる。
半導体ナノ粒子におけるアルカリ金属(M)には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が含まれる。アルカリ金属は、Agと同じく1価の陽イオンとなり得るため、半導体ナノ粒子の組成におけるAgの一部を置換することができる。特にLiはAgとイオン半径が同程度であり、好ましく用いられる。半導体ナノ粒子の組成において、Agの一部が置換されることで、例えば、バンドギャップが広がって発光ピーク波長が短波長にシフトする。また、詳細は不明であるが、半導体ナノ粒子の格子欠陥が低減されてバンド端発光量子収率が向上すると考えられる。
半導体ナノ粒子の組成におけるAg及びMの総含有率は、例えば、10モル%以上30モル%以下であり、好ましくは、15モル%以上25モル%以下である。In及びGaの総含有率は、例えば、15モル%以上35モル%以下であり、好ましくは、20モル%以上30モル%以下である。Sの含有率は、例えば、35モル%以上55モル%以下であり、好ましくは、40モル%以上55モル%以下である。
半導体ナノ粒子の組成におけるアルカリ金属の含有率は、例えば、0モル%より大きく30モル%未満であり、好ましくは、1モル%以上25モル%以下である。また、半導体ナノ粒子の組成におけるAgの原子数及びアルカリ金属(M)の原子数の合計に対するアルカリ金属(M)の原子数の比(M/(Ag+M))は、例えば、1未満であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下である。またその比は、例えば、0より大きく、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上である。
半導体ナノ粒子の組成におけるInとGaの原子数の和に対するInの原子数の比(In/(In+Ga))は、例えば、0.01以上1.0以下であり、好ましくは0.1以上0.99以下である。また、InとGaの原子数の和に対するAgとMの原子数の和の比((Ag+M)/(In+Ga))は、例えば、0.3以上1.2以下であり、好ましくは0.5以上1.1以下である。Ag、M、In及びGaの原子数の和に対するSの原子数の比(S/(Ag+M+In+Ga))は、例えば、0.8以上1.5以下であり、好ましくは0.9以上1.2以下である。
半導体ナノ粒子は、例えば、以下の式(1)で表される組成を有する。
(Ag (1−p)InGa(1−r)(q+3)/2 (1)
ここで、p、q及びrは、0<p<1.0、0.20<q≦1.2、0<r≦1.0を満たす。Mはアルカリ金属を示す。
半導体ナノ粒子は、その組成にセレン(Se)を含んでいていてもよい。セレン(Se)は、例えば、半導体ナノ粒子の組成におけるイオウ(S)の一部を置換して含有されてよい。半導体ナノ粒子がその組成にセレン(Se)を含む場合、その含有率は、例えば、0モル%より大きく50モル%未満であり、好ましくは1モル%以上45モル%以下、より好ましくは15モル%以上42モル%以下である。また、半導体ナノ粒子の組成におけるイオウ(S)とセレン(Se)の総含有率は、例えば、35モル%以上55モル%以下であり、好ましくは、40モル%以上55モル%以下である。更に、半導体ナノ粒子の組成におけるイオウ(S)の原子数及びセレン(Se)の原子数の合計に対するイオウ(S)の原子数の比(S/(S+Se))は、例えば、1未満であり、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下である。またその比は、例えば、0より大きく、好ましくは0.1以上である。半導体ナノ粒子がセレンを含む場合、200nm以上500nm未満の範囲内にある波長の光の照射により、500nm以上900nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光スペクトルにおける半値幅が250meV以下である光を発する。
組成にセレン(Se)を含む半導体ナノ粒子は、例えば、以下の式(2)で表される組成を有する。
(Ag (1−p)InGa(1−r)(S+Se(1−s)(q+3)/2 (2)
ここで、p、q、r及びsは、0<p<1.0、0.20<q≦1.2、0<r≦1.0、0<s<1.0を満たす。ここでMはアルカリ金属を示す。
半導体ナノ粒子の組成は、例えば、エネルギー分散型X線分析法(EDX)、蛍光X線分析法(XRF)、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法等によって同定される。(Ag+M)/(In+Ga)、S/(Ag+M+In+Ga)等はこれらの方法のいずれかで同定される組成に基づいて算出される。
半導体ナノ粒子の組成において、Agはその一部が置換されてCu及びAuの少なくとも一方の元素を含んでいてもよいが、実質的にAgから構成されることが好ましい。ここで「実質的に」とは、Agに対するAg以外の元素の割合が、例えば、10モル%以下であり、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下であることを意味する。
半導体ナノ粒子の組成において、Mは少なくともLiを含むことが好ましく、実質的にLiであることが好ましい。ここで「実質的に」とは、Liに対するLi以外のアルカリ金属の割合が、例えば、10モル%以下であり、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下であることを意味する。
半導体ナノ粒子の組成において、In及びGaの少なくとも一方は、その一部が置換されてAl及びTlの少なくとも一方の元素を含んでいてもよいが、実質的にIn及びGaの少なくとも一方から構成されることが好ましい。ここで「実質的に」とは、In及びGaに対するIn又はGa以外の元素の割合が、例えば、10モル%以下であり、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下であることを意味する。
半導体ナノ粒子の組成において、Sはその一部が置換されてSe及びTeの少なくとも一方の元素を含んでいてもよく、実質的にSから構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは、Sに対するS以外の元素の割合が、例えば、10モル%以下であり、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下であることを意味する。
半導体ナノ粒子は、実質的にAg、M、In及びGaの少なくとも一方並びにSのみから構成されてよい。また、半導体ナノ粒子は、実質的にAg、M、In及びGaの少なくとも一方、並びにSe及びSのみから構成されてよい。ここで「実質的に」という用語は、不純物の混入等に起因して不可避的にAg、M、In、Ga、S及びSe以外の元素が含まれることを考慮して使用している。
半導体ナノ粒子の結晶構造は、正方晶、六方晶及び斜方晶からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてよい。例えば、Ag、In及びSを含み、かつその結晶構造が正方晶、六方晶、又は斜方晶である半導体ナノ粒子は、一般的には、AgInSの組成式で表されるものとして、文献等において紹介されている。本実施形態に係る半導体ナノ粒子は、例えば、Agの一部をアルカリ金属で置換し、第13族元素であるInの一部を同じく第13族元素であるGaで置換したものと考えることができる。半導体ナノ粒子の組成は例えば、Ag−M−In−Ga−S、Ag−M−In−Ga−S−Se等で表されてもよい。
なお、Ag−M−In−Ga−Sなどの組成式で表される半導体ナノ粒子であって、六方晶の結晶構造を有するものはウルツ鉱型であり、正方晶の結晶構造を有する半導体はカルコパイライト型である。結晶構造は、例えば、X線回折(XRD)分析により得られるXRDパターンを測定することによって同定される。具体的には、半導体ナノ粒子から得られたXRDパターンを、AgInSの組成で表される半導体ナノ粒子と仮定して既知のXRDパターン、又は結晶構造パラメータからシミュレーションを行って求めたXRDパターンと比較する。既知のパターン及びシミュレーションのパターンの中に、半導体ナノ粒子のパターンと一致するものがあれば、当該半導体ナノ粒子の結晶構造は、その一致した既知又はシミュレーションのパターンの結晶構造であるといえる。
半導体ナノ粒子の集合体においては、異なる結晶構造の半導体ナノ粒子が一部混在していてもよい。その場合、XRDパターンにおいては、複数の結晶構造に由来するピークが観察される。
半導体ナノ粒子は、例えば、50nm以下の平均粒径を有する。半導体ナノ粒子の平均粒径は、例えば、20nm以下、10nm以下又は10nm未満であってよい。この平均粒径が50nm以下であると量子サイズ効果が得られ易く、バンド端発光が得られ易い傾向がある。またこの平均粒径の下限は例えば、1nmである。
半導体ナノ粒子の粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影されたTEM像から求めることができる。具体的には、ある粒子についてTEM像で観察される粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分であって、当該粒子の内部を通過する線分のうち、最も長い線分の長さをその粒子の粒径とする。
ただし、粒子がロッド形状を有するものである場合には、短軸の長さを粒径とみなす。ここで、ロッド形状の粒子とは、TEM像において短軸と短軸に直交する長軸とを有し、短軸の長さに対する長軸の長さの比が1.2より大きいものを指す。ロッド形状の粒子は、TEM像で、例えば、長方形状を含む四角形状、楕円形状、又は多角形状等として観察される。ロッド形状の長軸に直交する面である断面の形状は、例えば、円、楕円、又は多角形であってよい。具体的にはロッド状の形状の粒子について、長軸の長さは、楕円形状の場合には、粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指し、長方形状又は多角形状の場合、外周を規定する辺の中で最も長い辺に平行であり、かつ粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指す。短軸の長さは、外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、前記長軸の長さを規定する線分に直交し、かつ最も長さの長い線分の長さを指す。
半導体ナノ粒子の平均粒径は、50,000倍以上150,000倍以下のTEM像で観察される、すべての計測可能な粒子について粒径を測定し、それらの粒径の算術平均とする。ここで、計測可能な粒子は、TEM像において粒子全体が観察できるものである。したがって、TEM像において、その一部が撮像範囲に含まれておらず、切れているような粒子は計測可能なものではない。1つのTEM像に含まれる計測可能な粒子数が100以上である場合には、そのTEM像を用いて平均粒径を求める。一方、1つのTEM像に含まれる計測可能な粒子の数が100未満の場合には、撮像場所を変更して、TEM像をさらに取得し、2以上のTEM像に含まれる100以上の計測可能な粒子について粒径を測定して平均粒径を求める。
半導体ナノ粒子はバンド端発光が可能である。半導体ナノ粒子は、200nm以上500nm未満の範囲内にある波長の光を照射することにより、500nm以上650nm以下の範囲に発光ピーク波長を有して発光する。半導体ナノ粒子の発光スペクトルにおける半値幅は、250meV以下であり、好ましくは200meV以下、より好ましくは150meV以下である。この半値幅の下限値は例えば30meV以上である。半値幅が250meV以下であるとは、発光ピーク波長が600nmの場合には半値幅が73nm以下であり、発光ピーク波長が700nmの場合には半値幅が100nm以下であり、発光ピーク波長が800nmの場合には半値幅が130nm以下であることを意味し、半導体ナノ粒子がバンド端発光することを意味する。
半導体ナノ粒子は、バンド端発光とともに、他の発光、例えば欠陥発光を与えるものであってよい。欠陥発光は一般に発光寿命が長く、またブロードなスペクトルを有し、バンド端発光よりも長波長側にそのピークを有する。バンド端発光と欠陥発光がともに得られる場合、バンド端発光の強度が欠陥発光の強度よりも大きいことが好ましい。
半導体ナノ粒子のバンド端発光は、半導体ナノ粒子の形状及び平均粒径の少なくとも一方、特に平均粒径を変化させることによって、そのピーク位置を変化させることができる。例えば、半導体ナノ粒子の平均粒径をより小さくすれば、量子サイズ効果により、バンドギャップエネルギーがより大きくなり、バンド端発光のピーク波長を短波長側にシフトさせることができる。
また半導体ナノ粒子のバンド端発光は、半導体ナノ粒子の組成を変化させることによって、その発光ピーク波長を変化させることができる。例えば、組成におけるInとGaの原子数の和に対するGaの原子数の比であるGa比(Ga/(In+Ga))を大きくすることでバンド端発光の発光ピーク波長を短波長側にシフトさせることができる。また、例えば、アルカリ金属としてLi等を選択し、組成におけるAgとアルカリ金属(M)の原子数の和に対するアルカリ金属(M)の原子数の比であるM比(M/(Ag+M))を大きくすることでバンド端発光の発光ピーク波長を短波長側にシフトさせることができる。また、例えば、組成におけるSの一部をSeで置換し、SとSeの原子数の和に対するSの原子数の比であるS比(S/(S+Se))を大きくすることでバンド端発光の発光ピーク波長を短波長側にシフトさせることができる。
半導体ナノ粒子は、その吸収スペクトルがエキシトンピークを示すものであることが好ましい。エキシトンピークは、励起子生成により得られるピークであり、これが吸収スペクトルにおいて発現しているということは、粒径の分布が小さく、結晶欠陥の少ないバンド端発光に適した粒子から半導体ナノ粒子が構成されていることを意味する。また、エキシトンピークが急峻になるほど、粒径がそろった結晶欠陥の少ない粒子が半導体ナノ粒子の集合体により多く含まれていることを意味する。したがって、エキシトンピークが急峻であると、発光の半値幅は狭くなり、発光効率が向上すると予想される。半導体ナノ粒子の吸収スペクトルにおいて、エキシトンピークは、例えば、350nm以上900nm以下の範囲内で観察される。
半導体ナノ粒子は、ストークスシフトにより吸収スペクトルのエキシトンピークより長波長側に発光ピーク波長を有して発光する。半導体ナノ粒子の吸収スペクトルがエキシトンピークを示す場合、エキシトンピークと発光ピーク波長のエネルギー差は、例えば、300meV以下である。
コアシェル型半導体ナノ粒子
半導体ナノ粒子は、表面にシェルが配置されるコアシェル構造を有しているものが好ましい。コアシェル型半導体ナノ粒子は、前記半導体ナノ粒子の表面にシェルを構成する半導体が配置されてなる。シェルは、コアを構成する半導体よりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体であって、第13族元素及び第16族元素を含む半導体から構成される。第13族元素としては、B、Al、Ga、In及びTlが挙げられ、第16族元素としては、O、S、Se、Te及びPoが挙げられる。シェルを構成する半導体には、第13族元素が1種類だけ、又は2種類以上含まれてよく、第16族元素が1種類だけ、又は2種類以上含まれていてもよい。
シェルは、実質的に第13族元素及び第16族元素からなる半導体から構成されていてもよい。ここで「実質的に」とは、シェルに含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、第13族元素及び第16族元素以外の元素の割合が、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
シェルは、上述のコアを構成する半導体のバンドギャップエネルギーに応じて、その組成等を選択して構成してもよい。あるいは、シェルの組成等が先に決定されている場合には、コアを構成する半導体のバンドギャップエネルギーがシェルのそれよりも小さくなるように、コアを設計してもよい。例えば、Ag−In−Sからなる半導体は、1.8eV以上1.9eV以下程度のバンドギャップエネルギーを有する。
具体的には、シェルを構成する半導体は、例えば2.0eV以上5.0eV以下、特に2.5eV以上5.0eV以下のバンドギャップエネルギーを有してよい。また、シェルのバンドギャップエネルギーは、コアのバンドギャップエネルギーよりも、例えば0.1eV以上3.0eV以下程度、特に0.3eV以上3.0eV以下程度、より特には0.5eV以上1.0eV以下程度大きいものであってよい。シェルを構成する半導体のバンドギャップエネルギーとコアを構成する半導体のバンドギャップエネルギーとの差が前記下限値以上であると、コアからの発光において、バンド端発光以外の発光の割合が少なくなり、バンド端発光の割合が大きくなる傾向がある。
さらに、コア及びシェルを構成する半導体のバンドギャップエネルギーは、コアとシェルのヘテロ接合において、シェルのバンドギャップエネルギーがコアのバンドギャップエネルギーを挟み込むtype−Iのバンドアライメントを与えるように選択されることが好ましい。type−Iのバンドアライメントが形成されることにより、コアからのバンド端発光をより良好に得ることができる。type−Iのアライメントにおいて、コアのバンドギャップとシェルのバンドギャップとの間には、少なくとも0.1eVの障壁が形成されることが好ましく、例えば0.2eV以上、又は0.3eV以上の障壁が形成されてよい。障壁の上限は、例えば1.8eV以下であり、特に1.1eV以下である。障壁が前記下限値以上であると、コアからの発光において、バンド端発光以外の発光の割合が少なくなり、バンド端発光の割合が大きくなる傾向がある。
シェルを構成する半導体は、第13族元素としてIn又はGaを含むものであってよい。またシェルは、第16族元素としてSを含むものであってよい。In又はGaを含む半導体及びSを含む半導体は、上述のコアよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する半導体となる傾向にある。
シェルは、その半導体の晶系がコアの半導体の晶系となじみのあるものであってよく、またその格子定数が、コアの半導体のそれと同じ又は近いものであってよい。晶系になじみがあり、格子定数が近い(ここでは、シェルの格子定数の倍数がコアの格子定数に近いものも格子定数が近いものとする)半導体からなるシェルは、コアの周囲を良好に被覆することがある。また、シェルはアモルファス(非晶質)であってもよい。
アモルファス(非晶質)のシェルが形成されているか否かは、コアシェル構造の半導体ナノ粒子を、HAADF−STEMで観察することにより確認できる。アモルファス(非晶質)のシェルが形成されている場合、具体的には、規則的な模様(例えば、縞模様、ドット模様等)を有する部分が中心部に観察され、その周囲に規則的な模様を有するものとしては観察されない部分がHAADF−STEMにおいて観察される。HAADF−STEMによれば、結晶性物質のように規則的な構造を有するものは、規則的な模様を有する像として観察され、非晶性物質のように規則的な構造を有しないものは、規則的な模様を有する像としては観察されない。そのため、シェルがアモルファスである場合には、規則的な模様を有する像として観察されるコア(前記のとおり、正方晶系等の結晶構造を有する)とは明確に異なる部分として、シェルを観察することができる。
また、シェルがGa−Sからなる場合、Gaがコアに含まれるAg及びInよりも軽い元素であるために、HAADF−STEMで得られる像において、シェルはコアよりも暗い像として観察される傾向にある。
アモルファスのシェルが形成されているか否かは、高解像度の透過型電子顕微鏡(HRTEM)で本実施形態のコアシェル構造の半導体ナノ粒子を観察することによっても確認できる。HRTEMで得られる画像において、コアの部分は結晶格子像(規則的な模様を有する像)として観察され、シェルの部分は結晶格子像として観察されず、白黒のコントラストは観察されるが、規則的な模様は見えない部分として観察される。
一方、シェルはコアと固溶体を構成しない半導体からなることが好ましい。シェルがコアと固溶体を形成すると両者が一体のものとなり、シェルによりコアを被覆して、コアの表面状態を変化させることによりバンド端発光を得るという、本実施形態のメカニズムが得られなくなり得る。
シェルは、第13族元素及び第16族元素の組み合わせとして、InとSの組み合わせ、GaとSとの組み合わせ、又はInとGaとSとの組み合わせを含んでよいが、これらに限定されるものではない。InとSとの組み合わせは硫化インジウムの形態であってよく、また、GaとSとの組み合わせは硫化ガリウムの形態であってよく、また、InとGaとSの組み合わせは硫化インジウムガリウムであってよい。シェルを構成する硫化インジウムは、化学量論組成のもの(In)でなくてよく、その意味で、本明細書では硫化インジウムを式InS(xは整数に限られない任意の数字、例えば0.8以上1.5以下)で表すことがある。同様に、硫化ガリウムは化学量論組成のもの(Ga)でなくてよく、その意味で、本明細書では硫化ガリウムを式GaS(xは整数に限られない任意の数字、例えば0.8以上1.5以下)で表すことがある。硫化インジウムガリウムは、In2(1−y)Ga2y(yは0よりも大きく1未満である任意の数字)で表される組成のものであってよく、あるいは、InGa1−a(aは0よりも大きく1未満である任意の数字であり、bは整数に限られない任意の数値である)で表されるものであってよい。
硫化インジウムは、そのバンドギャップエネルギーが2.0eV以上2.4eV以下であり、晶系が立方晶であるものについては、その格子定数は1.0775nm(10.775Å)である。硫化ガリウムは、そのバンドギャップエネルギーが2.5eV以上2.6eV以下程度であり、晶系が正方晶であるものについては、その格子定数が0.5215nm(5.215Å)である。ただし、ここに記載された晶系等は、いずれも報告値であり、実際のコアシェル構造の半導体ナノ粒子において、シェルがこれらの報告値を満たしているとは限らない。
硫化インジウム及び硫化ガリウムは、コアの表面に配置されるシェルを構成する半導体として好ましく用いられる。特に、硫化ガリウムは、バンドギャップエネルギーがより大きいことから好ましく用いられる。硫化ガリウムを使用する場合には、硫化インジウムを使用する場合と比較して、より強いバンド端発光を得ることができる。
シェルを構成する半導体は、第13族元素及び第16族元素に加えてアルカリ金属(M)を更に含んでいてもよい。シェルを構成する半導体に含まれるアルカリ金属は、少なくともリチウムを含んでいてよい。シェルを構成する半導体がアルカリ金属を含む場合、アルカリ金属の原子数と第13族元素の原子数の総和に対するアルカリ金属の原子数の比は、例えば、0.01以上1未満、又は0.1以上0.9以下であってよい。また、アルカリ金属の原子数と第13族元素の原子数の総和に対する第16族元素の原子数の比は、例えば、0.25以上0.75以下であってよい。
コアシェル構造の半導体ナノ粒子において、コアは、例えば、10nm以下、特に、8nm以下の平均粒径を有してよい。コアの平均粒径は、2nm以上10nm以下の範囲内、特に2nm以上8nm以下の範囲内にあってよい。コアの平均粒径が前記上限値以下であると、量子サイズ効果を得られ易い。
シェルの厚みは0.1nm以上50nm以下の範囲内、0.1nm以上10nm以下の範囲内、特に0.3nm以上3nm以下の範囲内にあってよい。シェルの厚みが前記下限値以上である場合には、シェルがコアを被覆することによる効果が十分に得られ、バンド端発光を得られ易い。
半導体ナノ粒子は、その表面が任意の化合物で修飾されていてよい。半導体ナノ粒子の表面を修飾する化合物は表面修飾剤とも呼ばれる。表面修飾剤は、例えば、半導体ナノ粒子を安定化させて半導体ナノ粒子の凝集又は成長を防止する機能、半導体ナノ粒子の溶媒中での分散性を向上させる機能、半導体ナノ粒子の表面欠陥を補償して発光効率を向上させる機能等の少なくとも1つを有する。
表面修飾剤は、例えば、炭素数4から20の炭化水素基を有する含窒素化合物、炭素数4から20の炭化水素基を有する含硫黄化合物、炭素数4から20の炭化水素基を有する含酸素化合物、炭素数4から20の炭化水素基を有する含リン化合物等であってよい。炭素数4から20の炭化水素基としては、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などの飽和脂肪族炭化水素基;オレイル基などの不飽和脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6から10の芳香族炭化水素基;ベンジル基、ナフチルメチル基などのアリールアルキル基などが挙げられ、このうち飽和脂肪族炭化水素基や不飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。含窒素化合物としてはアミン類、アミド類等が挙げられ、含硫黄化合物としてはチオール類等が挙げられ、含酸素化合物としては脂肪酸類等が挙げられ、含リン化合物としては、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類等が挙げられる。
表面修飾剤としては、炭素数4から20の炭化水素基を有する含窒素化合物が好ましい。そのような含窒素化合物としては、ブチルアミン、イソブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどのアルキルアミン、オレイルアミンなどのアルケニルアミンが挙げられる。
表面修飾剤としては、また、炭素数4から20の炭化水素基を有する含硫黄化合物が好ましい。そのような含硫黄化合物としては、ブタンチオール、イソブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、オクタンチオール、エチルヘキサンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等が挙げられる。
表面修飾剤は、1種単独で用いても、異なる2種以上のものを組み合わせて用いてよい。例えば、上記において例示した含窒素化合物から選択される一つの化合物(例えば、オレイルアミン)と、上記において例示した含硫黄化合物から選択される一つの化合物(例えば、ドデカンチオール)とを組み合わせて用いてよい。
半導体ナノ粒子がコアシェル構造を有する場合、そのシェル表面は、負の酸化数を有するリン(P)を含む表面修飾剤(以下、「特定修飾剤」ともいう)で修飾されていてもよい。シェルの表面修飾剤が特定修飾剤を含んでいることで、コアシェル構造の半導体ナノ粒子のバンド端発光における量子効率がより向上する。
特定修飾剤は、第15族元素として負の酸化数を有するPを含む。Pの酸化数は、Pに水素原子又は炭化水素基が1つ結合することで−1となり、酸素原子が単結合で1つ結合することで+1となり、Pの置換状態で変化する。例えば、トリアルキルホスフィン及びトリアリールホスフィンにおけるPの酸化数は−3であり、トリアルキルホスフィンオキシド及びトリアリールホスフィンオキシドでは−1となる。
特定修飾剤は、負の酸化数を有するPに加えて、他の第15族元素を含んでいてもよい。他の第15族元素としては、N、As、Sb等を挙げることができる。
特定修飾剤は、例えば、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含リン化合物であってよい。炭素数4以上20以下の炭化水素基としては、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基などの直鎖又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基;オレイル基などの直鎖又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基;ベンジル基、ナフチルメチル基などのアリールアルキル基などが挙げられ、このうち飽和脂肪族炭化水素基や不飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。特定修飾剤が、複数の炭化水素基を有する場合、それらは同一であっても、異なっていてもよい。
特定修飾剤として具体的には、トリブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリス(エチルヘキシル)ホスフィン、トリデシルホスフィン、トリドデシルホスフィン、トリテトラデシルホスフィン、トリヘキサデシルホスフィン、トリオクタデシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンオキシド、トリイソブチルホスフィンオキシド、トリペンチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリス(エチルヘキシル)ホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリドデシルホスフィンオキシド、トリテトラデシルホスフィンオキシド、トリヘキサデシルホスフィンオキシド、トリオクタデシルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
半導体ナノ粒子の製造方法
半導体ナノ粒子の製造方法は、Ag塩と、アルカリ金属塩と、In及びGaの少なくとも一方を含む塩と、硫黄源と、有機溶媒とを含む第一混合物を準備する準備工程と、第一混合物を熱処理して半導体ナノ粒子を得る熱処理工程とを含んでいてよい。製造方法においては、第一混合物におけるAgの原子数とアルカリ金属の原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比を、0を超えて1未満としてよい。
第一混合物におけるIn及びGaの少なくとも一方を含む塩は、In塩とGa塩の少なくとも一方を含んでいてよく、アルカリ金属塩はリチウム塩を含んでいてよい。第一混合物は、必要に応じてセレン(Se)供給源を更に含んでいてもよい。
第一混合物におけるAg及びアルカリ金属(M)の原子数の合計に対するアルカリ金属(M)の原子数の比(M/(M+Ag))は、例えば、1未満、0.85以下、又は0.35以下である。またその比は、例えば、0より大きく、0.1以上、又は0.15以上である。すなわち、この実施形態の製造方法には、組成におけるAgの一部をアルカリ金属に置換して、半導体ナノ粒子を生成する点に特徴の1つがある。
半導体ナノ粒子は、Ag塩、アルカリ金属塩、In及びGaの少なくとも一方を含む塩、硫黄源、並びに必要に応じてセレン供給源の少なくとも1種を一度に有機溶剤に投入して第一混合物を調製し、これを熱処理することで製造してもよい。この方法によれば、簡便な操作によりワンポットで再現性よく半導体ナノ粒子を合成できる。また、有機溶剤とAg塩及びアルカリ金属塩とを反応させて錯体を形成し、次に、有機溶媒とIn及びGaの少なくとも一方を含む塩とを反応させて錯体を形成するとともに、これらの錯体と硫黄源とを反応させ、得られた反応物を結晶成長させる方法で製造してもよい。この場合、熱処理は硫黄源と反応させる段階にて実施してよい。
Ag塩、アルカリ金属塩、並びにIn及びGaの少なくとも一方を含む塩はいずれも、有機酸塩又は無機酸塩のいずれであってもよい。具体的には、塩としては、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩、アセチルアセトナート塩等を挙げることができ、好ましくはこれらからなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくは酢酸塩等の有機酸塩である。有機酸塩は有機溶剤への溶解度が高く、反応をより均一に進行させやすいことによる。
硫黄源としては、例えば、イオウ単体、チオ尿素、アルキルチオ尿素、チオアセトアミド、アルキルチオール、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3,2,4−ジチアジホスフェタン−2,4−ジスルフィド、2,4−ペンタンジチオンなどのβ−ジチオン類、1,2−ビス(トリフルオロメチル)エチレン−1,2−ジチオールなどのジチオール類、ジエチルジチオカルバミド酸塩等の含硫黄化合物を挙げることができる。
Se供給源としては、例えば、セレン単体;セレノ尿素、セレノアセトアミド、アルキルセレノール等の含Se化合物などを挙げることができる。
第一混合物は、Ag塩と、アルカリ金属塩と、In及びGaの少なくとも一方を含む塩と、硫黄源と、必要に応じてSe供給源の少なくとも1種とをこれらが互いに反応することなく含んでいてもよく、これらから形成される錯体として含んでいてもよい。また、混合物は、Ag塩から形成されるAg錯体、In及びGaの少なくとも一方を含む塩から形成される錯体、硫黄源から形成される錯体等を含むものであってもよい。錯体形成は、例えば、適当な溶媒中で、Ag塩と、アルカリ金属塩と、In及びGaの少なくとも一方を含む塩と、硫黄源とを混合することで実施される。
有機溶剤としては、例えば、炭素数4から20の炭化水素基を有するアミン、特に、炭素数4から20のアルキルアミンもしくはアルケニルアミン、炭素数4から20の炭化水素基を有するチオール、特に炭素数4から20のアルキルチオールもしくはアルケニルチオール、炭素数4から20の炭化水素基を有するホスフィン、特に炭素数4から20のアルキルホスフィンもしくはアルケニルホスフィン等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。これらの有機溶媒は、例えば、最終的には、得られる半導体ナノ粒子を表面修飾してもよい。有機溶剤は2種以上を組み合わせて使用してよく、特に、炭素数4から20の炭化水素基を有するチオールから選択される少なくとも一種と、炭素数4から20の炭化水素基を有するアミンから選択される少なくとも一種とを組み合わせた混合溶媒を使用してよい。これらの有機溶媒はまた、他の有機溶剤と混合して用いてもよい。有機溶剤が前記チオールと前記アミンとを含む場合、アミンに対するチオールの含有体積比(チオール/アミン)は、例えば、0より大きく1以下であり、好ましくは0.007以上0.2以下である。
第一混合物では、その組成として含まれるIn及びGaの原子数の合計に対するAg及びMの原子数の合計の比((Ag+M)/(In+Ga))が、例えば、0.1以上2.5以下であり、好ましくは0.2以上2.0以下、より好ましくは0.3以上1.5以下である。また、第一混合物の組成では、In及びGaの原子数の合計に対するInの原子数の比(In/(In+Ga))が、例えば、0.1以上1.0以下であり、好ましくは0.25以上0.99以下である。更に、混合物の組成では、Sの原子数の合計に対するAgとMaの原子数の合計の比((Ag+M)/S)が、例えば、0.27以上1.0以下であり、好ましくは0.35以上0.5以下である。混合物の組成がこれらの条件を満たすように各元素の供給源を用いることにより、バンド端発光を与えやすい半導体ナノ粒子を生成することができる。
第一混合物がSe供給源を含む場合、第一混合物におけるS及びSeの原子数の合計に対するSの原子数の比(S/(Se+S))は、例えば、1未満であり、好ましくは0.95以下、又は0.9以下である。またその比は、例えば、0より大きく、好ましくは0.1以上、又は0.4以上である。
熱処理工程は、第一混合物を所定の温度で熱処理する1段階の熱処理工程であっても、第一温度で熱処理した後、第一温度よりも高い第二温度で熱処理する2段階の熱処理工程であってもよい。熱処理を2段階で実施することにより、例えば、より良好な再現性で、バンド端発光の強度が比較的高い半導体ナノ粒子を製造することができる。ここで、第一温度での熱処理と第二温度での熱処理とは、連続して行ってもよく、第一温度での熱処理後に降温し、次いで第二温度に昇温して熱処理してもよい。
第一混合物の熱処理を2段階の熱処理工程で行う場合、第一温度は、例えば30℃以上であってよく、好ましくは100℃以上である。また、第一温度は、例えば200℃以下であってよく、好ましくは180℃以下である。第一温度での熱処理の時間は、例えば、1分以上であってよく、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上である。また、第一温度での熱処理の時間は、例えば、120分以下であってよく、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下であり、さらに好ましくは15分以下である。
第二温度は、例えば180℃以上であってよく、好ましくは200℃以上である。また、第二温度は、例えば370℃以下であってよく、好ましくは350℃以下である。第二温度での熱処理の時間は、例えば、1分以上であってよく、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上である。また、第二温度での熱処理の時間は、例えば、120分以下であってよく、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
なお、熱処理の時間は、所定の温度に到達した時点を熱処理の開始時間とし、降温又は昇温のための操作を行った時点をその所定温度における熱処理の終了時点とする。また所定の温度に到達するまでの昇温速度は、例えば、1℃/分以上100℃/分以下、又は1℃/分以上50℃/分以下である。また、熱処理後における降温速度は、例えば1℃/分以上100℃/分以下であり、必要に応じて冷却してもよく、熱源を停止して放冷するだけでもよい。
熱処理工程における雰囲気は、アルゴン等の希ガス雰囲気、窒素雰囲気等の不活性雰囲気が好ましい。不活性雰囲気下で熱処理することで、酸化物の副生及び得られる半導体ナノ粒子表面の酸化を抑制することができる。
熱処理して得られる半導体ナノ粒子は、有機溶剤から分離してよく、必要に応じて、さらに精製してもよい。半導体ナノ粒子の分離は、例えば、熱処理工程終了後、半導体ナノ粒子を含む有機溶剤を遠心分離に付して、ナノ粒子を含む上澄み液を取り出すことにより行う。精製は、例えば、上澄み液にアルコール等の有機溶剤を添加して遠心分離に付し、半導体ナノ粒子を沈殿物として取り出すことを含む。沈殿物は、それ自体を取り出してよく、又は上澄み液を除去することにより取り出してよい。取り出した沈殿物は、例えば、真空脱気、もしくは自然乾燥、又は真空脱気と自然乾燥との組み合わせにより、乾燥させてよい。自然乾燥は、例えば、大気中に常温常圧にて放置することにより実施してよく、その場合、20時間以上、例えば、30時間程度放置してよい。
あるいは、取り出した沈殿物は、有機溶剤に分散させてもよい。アルコールの添加と遠心分離とを含む精製処理は必要に応じて複数回実施してもよい。精製に用いるアルコールには、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコールを用いてよい。沈殿物を有機溶媒に分散させる場合、有機溶剤として、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン等の炭化水素系溶剤を用いてよい。
コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法
コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法は、前述の半導体ナノ粒子の製造方法により得られる半導体ナノ粒子と、第13族元素を含む化合物と、第16族元素の単体又は第16族元素を含む化合物と、有機溶媒とを混合することにより第二混合物を得る準備工程と、前記第二混合物を熱処理するシェル形成工程を含む製造方法であってよい。すなわち、コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法は、Ag塩と、アルカリ金属塩と、In及びGaの少なくとも一方を含む塩と、硫黄源と、有機溶媒とを含む第一混合物を準備する第一準備工程と、第一混合物を熱処理して半導体ナノ粒子を得る熱処理工程と、前記半導体ナノ粒子と、第13族元素を含む化合物と、第16族元素の単体又は第16族元素を含む化合物と、有機溶媒とを混合することにより第二混合物を得る第二準備工程と、前記第二混合物を熱処理してコアシェル型半導体ナノ粒子を得るシェル形成工程とを含む製造方法であって、前記第一混合物におけるAgの原子数とアルカリ金属の原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比を、0を超えて1未満とする製造方法であってよい。
半導体ナノ粒子は分散液として第二混合物を構成してもよい。半導体ナノ粒子が分散した液体においては、散乱光が生じないため、分散液は一般に透明(有色又は無色)のものとして得られる。半導体ナノ粒子を分散させる溶媒は、半導体ナノ粒子を作製するときと同様、任意の有機溶剤とすることができ、有機溶剤は、表面修飾剤、又は表面修飾剤を含む溶液とすることができる。例えば、有機溶剤は、半導体ナノ粒子の製造方法に関連して説明した表面修飾剤である、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物から選ばれる少なくとも1つとすることができ、あるいは、炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1つとすることができ、あるいは炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物から選ばれる少なくとも1つと炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物から選ばれる少なくとも1つとの組み合わせとすることができる。含窒素化合物としては、沸点が反応温度より高いことが好ましく、特に、特に純度の高いものが入手しやすい点と沸点が290℃を超える点とから、オレイルアミン、n−テトラデシルアミン又はその組み合わせが挙げられる。具体的な有機溶剤としては、オレイルアミン、n−テトラデシルアミン、ドデカンチオール、又はその組み合わせが挙げられる。
半導体ナノ粒子の分散液は、分散液に占める粒子の濃度が、例えば、5.0×10−8モル/リットル以上5.0×10−4モル/リットル以下、特に1.0×10−7モル/リットル以上、5.0×10−5モル/リットル以下となるように調製してよい。分散液に占める粒子の割合が小さすぎると貧溶媒による凝集・沈澱プロセスによる生成物の回収が困難になり、大きすぎるとコアを構成する材料のオストワルド熟成、衝突による融合の割合が増加し、粒径分布が広くなる傾向にある。
第13族元素を含む化合物は、第13族元素源となるものであり、例えば、第13族元素の有機酸塩、無機酸塩、有機金属化合物等である。第13族元素を含む化合物としては、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩、アセチルアセトナート錯体等が挙げられ、好ましくは酢酸塩、アセチルアセトナート錯体等の有機酸塩、又は有機金属化合物である。有機酸塩及び有機金属化合物は有機溶媒への溶解度が高く、反応をより均一に進行させやすいことによる。
第13族元素を含む化合物は、インジウム(In)及びガリウム(Ga)の少なくとも一方を含む塩であってよい。塩は、酢酸塩、アセチルアセトナート錯体等の有機塩、硫酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩等の無機塩等であってよい。好ましくは酢酸塩、アセチルアセトナート錯体等の有機塩であってよい。
第16族元素の単体又は第16族元素を含む化合物は、第16族元素源となるものである。例えば、第16族元素として硫黄(S)をシェルの構成元素とする場合、硫黄源は、高純度硫黄のような硫黄単体、あるいは、n−ブタンチオール、イソブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール等のチオール、ジベンジルスルフィドのようなジスルフィド、チオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素等のアルキルチオ尿素、チオカルボニル化合物等の硫黄含有化合物であってよい。中でもチオ尿素、アルキルチオ尿素等を硫黄源として用いると、シェルが十分に形成されて、強いバンド端発光を与える半導体ナノ粒子が得られやすい。
第16族元素として、酸素(O)をシェルの構成元素とする場合には、アルコール、エーテル、カルボン酸、ケトン、N−オキシド化合物を、第16族元素源として用いてよい。第16族元素として、セレン(Se)をシェルの構成元素とする場合には、セレン単体、又はセレン化ホスフィンオキシド、有機セレン化合物(ジベンジルジセレニドやジフェニルジセレニド)もしくは水素化物等の化合物を、第16族元素源として用いてよい。第16族元素として、テルル(Te)をシェルの構成元素とする場合には、テルル単体、テルル化ホスフィンオキシド、又は水素化物を、第16族元素源として用いてよい。
第二混合物は、第13族元素源及び第16族元素源に加えて、アルカリ金属塩を含んでいてもよい。アルカリ金属には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が含まれる。アルカリ金属塩は、有機酸塩又は無機酸塩のいずれであってもよい。具体的には、塩としては、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩酸塩、スルホン酸塩、アセチルアセトナート塩等を挙げることができ、好ましくはこれらからなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくは酢酸塩等の有機酸塩である。
第二混合物における第13族元素源及び第16族元素源の仕込み比は、第13族元素と第16族元素とからなる化合物半導体の化学量論組成比に対応させて仕込み比を決めてもよく、必ずしも化学量論組成比にしなくてもよい。例えば、第13族元素に対する第16族元素の仕込み比として0.75以上1.5以下とすることができる。
第二混合物がアルカリ金属塩を含む場合、第13族元素源に対するアルカリ金属塩の仕込み比は、例えば0.1以上5以下、又は0.2以上4以下であってよい。またアルカリ金属塩及び第13族元素源の総和に対する第16族元素源の仕込み比は、例えば0.3以上3以下、又は0.5以上2以下であってよい。
第二混合物における第13族元素源、第16族元素源及び必要に応じて含まれるアルカリ金属塩の仕込み量は、分散液中に存在する半導体ナノ粒子に所望の厚さのシェルが形成されるように、分散液に含まれる半導体ナノ粒子の量を考慮して選択してよい。例えば、半導体ナノ粒子の、粒子としての物質量10nmolに対して、第13族元素及び第16族元素から成る化学量論組成の半導体化合物が0.1μmol以上10mmol以下、特に5μmol以上1mmol以下生成されるように、第13族元素源及び第16族元素源の仕込み量を決定してよい。ただし、粒子としての物質量というのは、粒子1つを巨大な分子と見なしたときのモル量であり、分散液に含まれるナノ粒子の個数を、アボガドロ数(NA=6.022×1023)で除した値に等しい。
コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法としては、半導体ナノ粒子を含む分散液を昇温して、そのピーク温度が200℃以上350℃以下となるようにし、ピーク温度に達してから、ピーク温度を保持した状態で、予め第13族元素源及び第16族元素源、ならびに必要に応じてアルカリ金属塩を、有機溶媒に分散又は溶解させた混合液を少量ずつ加え、その後、降温させる方法で、シェル層を形成してよい(スローインジェクション法)。この場合、半導体ナノ粒子を含む分散液と混合液が混合されて第二混合物が得られた直後に熱処理が開始される。混合液は、0.1mL/時間以上10mL/時間以下、特に1mL/時間以上5mL/時間以下の速度で添加してよい。ピーク温度は、混合液の添加を終了した後も必要に応じて保持してよい。
ピーク温度が前記温度以上であると、半導体ナノ粒子を修飾している表面修飾剤が十分に脱離し、又はシェル生成のための化学反応が十分に進行する等の理由により、半導体の層(シェル)の形成が十分に行われる傾向がある。ピーク温度が前記温度以下であると、半導体ナノ粒子に変質が生じることが抑制され、良好なバンド端発光が得られる傾向がある。ピーク温度を保持する時間は、混合液の添加が開始されてからトータルで1分間以上300分間以下、特に10分間以上120分間以下とすることができる。ピーク温度の保持時間は、ピーク温度との関係で選択され、ピーク温度がより低い場合には保持時間をより長くし、ピーク温度がより高い場合には保持時間をより短くすると、良好なシェル層が形成されやすい。昇温速度及び降温速度は特に限定されず、降温は、例えばピーク温度で所定時間保持した後、加熱源(例えば電気ヒーター)による加熱を停止して放冷することにより実施してよい。
あるいは、コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法としては、半導体ナノ粒子を含む分散液と第13族元素源及び第16族元素源ならびに必要に応じてアルカリ金属塩とを混合して、第二混合物を得た後、第二混合物を熱処理することにより、シェルである半導体層を半導体ナノ粒子の表面に形成してよい(ヒーティングアップ法)。具体的には、第二混合物を徐々に昇温して、そのピーク温度が200℃以上310℃以下となるようにし、ピーク温度で1分間以上300分間以下保持した後、徐々に降温させるやり方で加熱してよい。昇温速度は例えば1℃/分以上50℃/分以下としてよいが、シェルの無い状態で熱処理され続けることによって生じるコアの変質を最小限に留めるため200℃までは50℃/分以上100℃/分以下が好ましい。また、200℃以上にさらに昇温したい場合は、それ以降は1℃/分以上5℃/分以下とすることが好ましい。降温速度は、例えば1℃/分以上50℃/分以下としてよい。所定のピーク温度が前記範囲であることの有利な点は、スローインジェクション法で説明したとおりである。
ヒーティングアップ法によれば、スローインジェクション法でシェルを形成する場合と比較して、より強いバンド端発光を与えるコアシェル型半導体ナノ粒子が得られる傾向にある。
いずれの方法で第13族元素源及び第16族元素源の仕込み比は、第13族元素と第16族元素とからなる化合物半導体の化学量論組成比に対応させて仕込み比を決めてもよく、必ずしも化学量論組成比にしなくてもよい。例えば、第13族元素に対する第16族元素の仕込み比として0.75以上1.5以下とすることができる。
また、分散液中に存在する半導体ナノ粒子に所望の厚さのシェルが形成されるように、仕込み量は、分散液に含まれる半導体ナノ粒子の量を考慮して選択する。例えば、半導体ナノ粒子の、粒子としての物質量10nmolに対して、第13族元素及び第16族元素から成る化学量論組成の化合物半導体が0.1μmol以上10mmol以下、特に5μmol以上1mmol以下生成されるように、第13族元素源及び第16族元素源の仕込み量を決定してよい。ただし、粒子としての物質量というのは、粒子1つを巨大な分子と見なしたときのモル量であり、分散液に含まれるナノ粒子の個数を、アボガドロ数(NA=6.022×1023)で除した値に等しい。
コアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法においては、第13族元素源として、酢酸インジウム又はガリウムアセチルアセトナートを用い、第16族元素源として、硫黄単体、チオ尿素又はジベンジルジスルフィドを用いて、分散液として、オレイルアミンとドデカンチオールの混合液を用いて、硫化インジウム又は硫化ガリウムを含むシェルを形成することが好ましい。
また、ヒーティングアップ法で、分散液にオレイルアミンとドデカンチオールの混合液を用いると、欠陥発光に由来するブロードなピークの強度がバンド端発光のピークの強度よりも十分に小さい発光スペクトルを与えるコアシェル型半導体ナノ粒子が得られる。上記の傾向は、第13族元素源としてガリウム源を使用した場合にも、有意に認められる。
このようにして、シェルを形成してコアシェル構造のコアシェル型半導体ナノ粒子が形成される。得られたコアシェル構造のコアシェル型半導体ナノ粒子は、溶媒から分離してよく、必要に応じて、さらに精製及び乾燥してよい。分離、精製及び乾燥の方法は、先に半導体ナノ粒子に関連して説明したとおりであるから、ここではその詳細な説明を省略する。
コアシェル型半導体ナノ粒子のシェル表面が、特定修飾剤で修飾されている場合は、上記で得られるコアシェル型半導体ナノ粒子を修飾工程に付してもよい。修飾工程では、コアシェル型半導体ナノ粒子と、酸化数が負のリン(P)を含む特定修飾剤とを接触させて、コアシェル粒子のシェル表面を修飾する。これにより、より優れた量子収率でバンド端発光を示すコアシェル型半導体ナノ粒子が製造される。
コアシェル型半導体ナノ粒子と特定修飾剤との接触は、例えば、コアシェル型半導体ナノ粒子の分散液と特定修飾剤とを混合することで行うことができる。またコアシェル粒子を、液状の特定修飾剤と混合して行ってもよい。特定修飾剤には、その溶液を用いてもよい。コアシェル型半導体ナノ粒子の分散液は、コアシェル型半導体ナノ粒子と適当な有機溶媒とを混合することで得られる。分散に用いる有機溶剤としては、例えばクロロホルム等のハロゲン溶剤;トルエン等の芳香族炭化水素溶剤;シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶剤などを挙げることができる。コアシェル型半導体ナノ粒子の分散液における物質量の濃度は、例えば、1×10−7mol/L以上1×10−3mol/L以下であり、好ましくは1×10−6mol/L以上1×10−4mol/L以下である。
特定修飾剤のコアシェル型半導体ナノ粒子に対する使用量は、例えば、モル比で1倍以上50,000倍以下である。また、コアシェル型半導体ナノ粒子の分散液における物質量の濃度が1.0×10−7mol/L以上1.0×10−3mol/L以下であるコアシェル型半導体ナノ粒子の分散液を用いる場合、分散液と特定修飾剤とを体積比で1:1000から1000:1で混合してもよい。
コアシェル型半導体ナノ粒子と特定修飾剤との接触時の温度は、例えば、−100℃以上100℃以下又は30℃以上75℃以下である。接触時間は特定修飾剤の使用量、分散液の濃度等に応じて適宜選択すればよい。接触時間は、例えば、1分以上、好ましくは1時間以上であり、100時間以下、好ましくは48時間以下である。接触時の雰囲気は、例えば、窒素ガス、希ガス等の不活性ガス雰囲気である。
[発光デバイス]
発光デバイスは、光変換部材及び半導体発光素子を備え、光変換部材に上記において説明した半導体ナノ粒子を含むものである。この発光デバイスによれば、例えば、半導体発光素子からの発光の一部を、半導体ナノ粒子が吸収してより長波長の光が発せられる。そして、半導体ナノ粒子からの光と半導体発光素子からの発光の残部とが混合され、その混合光を発光デバイスの発光として利用できる。
具体的には、半導体発光素子としてピーク波長が400nm以上490nm以下程度の青紫色光又は青色光を発するものを用い、半導体ナノ粒子として青色光を吸収して黄色光を発光するものを用いれば、白色光を発光する発光デバイスを得ることができる。あるいは、半導体ナノ粒子として、青色光を吸収して緑色光を発光するものと、青色光を吸収して赤色光を発光するものの2種類を用いても、白色発光デバイスを得ることができる。
あるいは、ピーク波長が400nm以下の紫外線を発光する半導体発光素子を用い、紫外線を吸収して青色光、緑色光、赤色光をそれぞれ発光する、3種類の半導体ナノ粒子を用いる場合でも、白色発光デバイスを得ることができる。この場合、発光素子から発せられる紫外線が外部に漏れないように、発光素子からの光をすべて半導体ナノ粒子に吸収させて変換させることが望ましい。
あるいはまた、ピーク波長が490nm以上510nm以下程度の青緑色光を発する半導体発光素子を用い、半導体ナノ粒子として上記の青緑色光を吸収して赤色光を発するものを用いれば、白色光を発光するデバイスを得ることができる。
あるいはまた、半導体発光素子として波長700nm以上780nm以下の赤色光を発光するものを用い、半導体ナノ粒子として、赤色光を吸収して近赤外線を発光するものを用いれば、近赤外線を発光する発光デバイスを得ることもできる。
半導体ナノ粒子は、他の半導体量子ドットと組み合わせて用いてよく、あるいは他の量子ドットではない蛍光体(例えば、有機蛍光体又は無機蛍光体)と組み合わせて用いてよい。他の半導体量子ドットは、例えば、背景技術の欄で説明した二元系の半導体量子ドットである。量子ドットではない蛍光体として、アルミニウムガーネット系等のガーネット系蛍光体を用いることができる。ガーネット蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が挙げられる。他にユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体、β−SiAlON系蛍光体、CASN系又はSCASN系等の窒化物系蛍光体、LnSi11系又はLnSiAlON系等の希土類窒化物系蛍光体、BaSi:Eu系又はBaSi12:Eu系等の酸窒化物系蛍光体、CaS系、SrGa系、SrAl系、ZnS系等の硫化物系蛍光体、クロロシリケート系蛍光体、SrLiAl:Eu蛍光体、SrMgSiN:Eu蛍光体、マンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体としてのKSiF:Mn蛍光体などを用いることができる。
発光デバイスにおいて、半導体ナノ粒子を含む光変換部材は、例えばシート又は板状部材であってよく、あるいは三次元的な形状を有する部材であってよい。三次元的な形状を有する部材の例は、表面実装型の発光ダイオードにおいて、パッケージに形成された凹部の底面に半導体発光素子が配置されているときに、発光素子を封止するために凹部に樹脂が充填されて形成された封止部材である。
光変換部材の別の例は、平面基板上に半導体発光素子が配置されている場合にあっては、前記半導体発光素子の上面及び側面を略均一な厚みで取り囲むように形成された樹脂部材である。あるいはまた、光変換部材のさらに別の例は、半導体発光素子の周囲に上端が半導体発光素子と同一平面を構成するように反射材を含む樹脂部材が充填されている場合にあっては、前記半導体発光素子及び前記反射材を含む樹脂部材の上部に、所定の厚さで平板状に形成された樹脂部材である。
光変換部材は半導体発光素子に接してよく、あるいは半導体発光素子から離れて設けられていてよい。具体的には、光変換部材は、半導体発光素子から離れて配置される、ペレット状部材、シート部材、板状部材又は棒状部材であってよく、あるいは半導体発光素子に接して設けられる部材、例えば、封止部材、コーティング部材(モールド部材とは別に設けられる発光素子を覆う部材)又はモールド部材(例えば、レンズ形状を有する部材を含む)であってよい。
また、発光デバイスにおいて、異なる波長の発光を示す2種類以上の半導体ナノ粒子を用いる場合には、1つの光変換部材内で前記2種類以上の半導体ナノ粒子が混合されていてもよいし、あるいは1種類の量子ドットのみを含む光変換部材を2つ以上組み合わせて用いてもよい。この場合、2種類以上の光変換部材は積層構造を成してもよいし、平面上にドット状ないしストライプ状のパターンとして配置されていてもよい。
半導体発光素子としてはLEDチップが挙げられる。LEDチップは、GaN、GaAs、InGaN、AlInGaP、GaP、SiC、及びZnO等からなる群から選択される1種又は2種以上からなる半導体層を備えたものであってよい。青紫色光、青色光、又は紫外線を発光する半導体発光素子は、例えば、組成がInAlGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で表わされるGaN系化合物を半導体層として備えたものである。
発光デバイスは、光源として液晶表示装置に組み込まれることが好ましい。半導体ナノ粒子によるバンド端発光は発光寿命の短いものであるため、これを用いた発光デバイスは、比較的速い応答速度が要求される液晶表示装置の光源に適している。また、本実施形態の半導体ナノ粒子は、バンド端発光として半値幅が小さい発光ピークを示し得る。したがって、発光デバイスにおいて青色半導体発光素子によりピーク波長が420nm以上490nm以下の範囲内にある青色光を得るようにし、半導体ナノ粒子により、ピーク波長が510nm以上550nm以下、好ましくは530nm以上540nm以下の範囲内にある緑色光、及びピーク波長が600nm以上680nm以下、好ましくは630nm以上650nm以下の範囲内にある赤色光を得るようにする。又は、発光デバイスにおいて、半導体発光素子によりピーク波長400nm以下の紫外光を得るようにし、半導体ナノ粒子によりピーク波長430nm以上470nm以下、好ましくは440nm以上460nm以下の範囲内にある青色光、ピーク波長が510nm以上550nm以下、好ましくは530nm以上540nm以下の緑色光、及びピーク波長が600nm以上680nm以下、好ましくは630nm以上650nm以下の範囲内にある赤色光を得るようにする。これらによって、濃いカラーフィルターを用いることなく、色再現性の良い液晶表示装置が得られる。発光デバイスは、例えば、直下型のバックライトとして、又はエッジ型のバックライトとして用いられる。
あるいは、半導体ナノ粒子を含む、樹脂もしくはガラス等からなるシート、板状部材、又はロッドが、発光デバイスとは独立した光変換部材として液晶表示装置に組み込まれていてよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
半導体ナノ粒子の作製
0.05mmolの酢酸銀(AgOAc)、0.05mmolの酢酸リチウム(LiOAc)、0.1mmolの酢酸インジウム(In(OAc))及び硫黄源として0.2mmolのチオ尿素を、0.1cmの1−ドデカンチオールと2.9cmのオレイルアミンの混合液に投入して分散させた。分散液を、撹拌子とともに試験管に入れ、窒素置換を行った後、窒素雰囲気下で、試験管内の内容物を撹拌しながら、第1段階の加熱処理として150℃で10分、第2段階の加熱処理として300℃で10分の加熱処理を実施した。加熱処理後、得られた懸濁液を放冷した後、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付し、沈殿物を取り出した。これにメタノール3mlを加えて、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付し、半導体ナノ粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた。そこへ、さらにエタノール3mlを加えて、同じ条件で遠心分離に付し、半導体ナノ粒子を沈殿させた。沈殿物を取り出して、乾燥した後クロロホルムに分散させて半導体ナノ粒子分散液を得た。
(実施例2、比較例1、2)
原料の仕込み組成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして半導
体ナノ粒子分散液を得た。
(平均粒径)
実施例1、2及び比較例1、2で得られた半導体ナノ粒子の形状を、透過型電子顕微鏡(TEM、(株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名H−7650)を用いて観察するとともに、その平均粒径を8万倍から20万倍のTEM像から測定した。ここでは、TEMグリッドとして、商品名ハイレゾカーボン HRC−C10 STEM Cu100Pグリッド(応研商事(株))を用いた。得られた粒子の形状は、球状もしくは多角形状であった。平均粒径は、3か所以上のTEM画像を選択し、これらに含まれているナノ粒子のうち、計測可能なものをすべて、すなわち、画像の端において粒子の像が切れているようなものを除くすべての粒子について、粒径を測定し、その算術平均を求める方法で求めた。本実施例を含む全ての実施例及び比較例において、3以上のTEM像を用いて、合計100点以上のナノ粒子の粒径を測定した。平均粒径を表2に示す。
(吸収・発光特性)
実施例1、2及び比較例1、2で得られた半導体ナノ粒子について、吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルは、ダイオードアレイ式分光光度計(アジレントテクノロジー社製、商品名Agilent 8453A)を用いて、波長を190nm以上1100nm以下として測定した。発光スペクトルは、マルチチャンネル分光器(浜松ホトニクス社製、商品名PMA11)を用いて、励起波長365nmにて測定した。吸収スペクトルを図1に、発光スペクトルを図2に示す。
各発光スペクトルにて観察された急峻な発光ピークの発光ピーク波長(バンド端発光)、バンド端発光の半値幅、バンド端発光の発光量子収率及びバンド端発光のストークスシフト(吸収スペクトルから得られる吸収ピークのエネルギー値から発光スペクトルから得られる発光ピークのエネルギー値を差し引いたもの)を表2に示す
表2より、実施例1、2においてリチウム塩と、銀塩及びインジウム塩を用いて得られた半導体ナノ粒子は、半値幅が250meV以下のバンド端発光を示した。一方、実施例1に対し、リチウム塩の代わりに銀塩を用いた比較例1は、欠陥発光のみを示し、実施例1に対し、銀塩の代わりにリチウム塩を用いた比較例2は、発光を確認できなかった。
また、表2、図1、図2から、実施例1、2において銀塩に対するリチウム塩の比を変更して半導体ナノ粒子を合成することにより、比較例1と比べて、バンド端発光を示す吸収スペクトル及び発光スペクトルのピーク波長が短波長へシフトすることを確認できた。 また、実施例1は、実施例2と比べて、銀塩に対するリチウム塩の比が高いことにより、バンド端発光を示す吸収スペクトル及び発光スペクトルのピーク波長がより短波長へシフトすることを確認できた。
(実施例3)
半導体ナノ粒子の作製
0.05mmolの酢酸銀(AgOAc)、0.05mmolの酢酸リチウム(LiOAc)、0.06mmolのアセチルアセトナートガリウム(Ga(acac))、0.04mmolの酢酸インジウム(In(OAc))及び硫黄源として0.2mmolのチオ尿素を、0.1cmの1−ドデカンチオールと2.9cmのオレイルアミンの混合液に投入して分散させた。分散液を、撹拌子とともに試験管に入れ、窒素置換を行った後、窒素雰囲気下で、試験管内の内容物を撹拌しながら、第1段階の加熱処理として150℃で10分、第2段階の加熱処理として300℃で10分の加熱処理を実施した。加熱処理後、得られた懸濁液を放冷した後、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付し、上澄みを孔径が0.20μmのメンブレンフィルターでろ過した。これにメタノール3mlを加えて、遠心分離(半径146mm、4000rpm、5分間)に付し、半導体ナノ粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた。再びメタノール3mlを加え、遠心分離で粒子を沈殿させ、さらにエタノール3mlを加えて、同じ条件で遠心分離に付し、半導体ナノ粒子を沈殿させた。沈殿物を取り出して、乾燥した後クロロホルムに分散させて半導体ナノ粒子分散液を得た。
(実施例4、5比較例3)
原料の仕込み組成を表3に示すように変更したこと以外は、実施例3と同様にして半導
体ナノ粒子分散液を得た。
実施例3から5、比較例3にて得られた半導体ナノ粒子について、実施例1と同様にして平均粒径と発光特性を測定した。結果を表4に示す。また、図3に吸収スペクトルを、図4に発光スペクトルを示す。
表4より、実施例3から5においてリチウム塩とインジウム塩及びガリウム塩用いて得られた半導体ナノ粒子は、半値幅が250meV以下のバンド端発光を示した。
また、表4、図3、図4から、実施例3から5において、銀塩に対するリチウム塩の比を変更して半導体ナノ粒子を合成することにより、比較例3と比べて、バンド端発光を示す吸収スペクトル及び発光スペクトルのピーク波長が短波長へシフトすることを確認できた。 また、銀塩に対するリチウム塩の比が最も高い実施例4において、実施例3と5と比べて、バンド端発光を示す吸収スペクトル及び発光スペクトルのピーク波長がより短波長へシフトすることを確認できた。また実施例5においては、実施例3、4と比べてバンド端発光の量子収率が最も高かった。
(実施例6から8)
原料の仕込み組成を表5に示すように変更したこと以外は、実施例4と同様にして半導
体ナノ粒子分散液を得た。
実施例6から8にて得られた半導体ナノ粒子について、実施例1と同様にして平均粒径と発光特性を測定した。結果を表6示す。また、図5に吸収スペクトルを、図6に発光スペクトルを示す。
表6より、実施例6から8において、リチウム塩とインジウム塩及びガリウム塩を用いて得られた半導体ナノ粒子は、実施例3同様に、半値幅が250meV以下のバンド端発光を示した。
また、表6、図5、図6より実施例6から8において、インジウムに対するガリウムの比を変更して合成することにより、ガリウムの比が最も大きい実施例6において、実施例7と8と比べて、バンド端発光を示す吸収スペクトル及び発光スペクトルのピーク波長がより短波長へシフトすることと、バンド端発光量子収率が高くなることを確認できた。
コアシェル型半導体ナノ粒子の作製
(実施例9)
実施例1で得られた半導体ナノ粒子を光路長1cmで、波長500nmにおける吸光度が0.5となるようにクロロホルムを加えて濃度調整し、その中から2mlを量りとった。その後、溶媒を減圧乾燥した。ここに、アセチルアセトナートガリウム(Ga(acac))5.33×10−5mmolとチオ尿素5.33×10−5mmolとを量り取り、オレイルアミン3.0mLを加えて試験管内を窒素置換した。300℃で15分間加熱撹拌し、室温まで放冷した。遠心分離(4000rpm、5分間)して沈殿物を除去した。上澄みは孔径が0.20μmのメンブレンフィルターで濾過した。メタノールを加えて遠心分離(4000rpm、5分間)をし、得られた沈殿物にエタノールを加えて遠心分離(4000rpm、5分間)をして沈殿物としてコアシェル型半導体ナノ粒子を得た。沈殿を乾燥させ、クロロホルムを加えてナノ粒子を分散させた。
(実施例10)
実施例3で得られた半導体ナノ粒子を用いたこと以外は実施例9と同様にして、
コアシェル型半導体ナノ粒子を得た。
コアシェル型半導体ナノ粒子の作製
(実施例11)
実施例3で得られた半導体ナノ粒子を光路長1cmで、波長500nmにおける吸光度が0.5となるようにクロロホルムを加えて濃度調整し、その中から2mlを量りとった。その後、溶媒を減圧乾燥した。ここに、アセチルアセトナートガリウム(Ga(acac))5.33×10−5mmolと酢酸リチウム(LiOAc)5.33×10−5mmolとチオ尿素10.7×10−5mmolとを量り取り、オレイルアミン3.0mLを加えて試験管内を窒素置換した。300℃で15分間加熱撹拌し、室温まで放冷した。遠心分離(4000rpm、5分間)して沈殿物を除去した。上澄みは孔径が0.20μmのメンブレンフィルターで濾過した。メタノールを加えて遠心分離(4000rpm、5分間)をし、得られた沈殿物にエタノールを加えて遠心分離(4000rpm、5分間)をして沈殿としてコアシェル型半導体ナノ粒子を得た。沈殿物を乾燥させ、クロロホルムを加えてナノ粒子を分散させた。
実施例9から11にて得られたコアシェル型半導体ナノ粒子について、実施例1と同様にして平均粒径と発光特性を測定した。結果を表7示す。また、図7に吸収スペクトルを、図8に発光スペクトルを示す。
表7から、実施例9、10において、半導体ナノ粒子をコアシェル型とすることで、バンド端発光の量子収率が向上することを確認した。また、実施例11において、リチウム化合物を用いて半導体ナノ粒子及びコアシェル型半導体ナノ粒子を合成することにより、比較例3や実施例3と比べて、バンド端発光を示す発光スペクトルのピーク波長がより短波長へシフトすることを確認できた。

Claims (11)

  1. 銀(Ag)塩と、アルカリ金属塩と、インジウム(In)及びガリウム(Ga)の少なくとも一方を含む塩と、硫黄源と、有機溶媒とを含む第一混合物を熱処理することを含み、
    前記第一混合物におけるAgとアルカリ金属の原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比が0を超えて1未満である半導体ナノ粒子の製造方法。
  2. 前記アルカリ金属塩がリチウム塩である請求項1に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  3. 前記第一混合物を、30℃以上200℃未満の範囲にある温度にて1分以上120分以下で熱処理した後に、200℃以上350℃以下の範囲にある温度にて更に熱処理する請求項1又は2に記載の半導体ナノ粒子の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法で得られる半導体ナノ粒子と、第13族元素を含む化合物及び第16族元素の単体又は第16族元素を含む化合物と、有機溶媒とを含む第二混合物を熱処理することを含むコアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法。
  5. 前記第二混合物が更にアルカリ金属塩を含む請求項4に記載のコアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法。
  6. 前記アルカリ金属塩がリチウム塩である請求項5に記載のコアシェル型半導体ナノ粒子の製造方法。
  7. 銀(Ag)と、アルカリ金属と、インジウム(In)及びガリウム(Ga)の少なくとも一方と、硫黄(S)とを含み、
    組成中の銀(Ag)及びアルカリ金属の総含有率が10モル%以上30モル%以下、インジウム(In)及びガリウム(Ga)の総含有率が15モル%以上35モル%以下、硫黄(S)の含有率が35モル%以上55モル%以下であり、
    銀(Ag)とアルカリ金属の原子数の合計に対するアルカリ金属の原子数の比が0を超えて1未満であり、
    200nm以上500nm未満の範囲内にある波長の光の照射により、500nm以上650nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光スペクトルにおける半値幅が250meV以下である光を発する半導体ナノ粒子。
  8. 請求項7に記載の半導体ナノ粒子を含むコアと、
    前記コアの表面に配置され、実質的に第13族元素及び第16族元素からなる半導体材料を含むシェルと、を備え、
    光の照射により発光するコアシェル型の半導体ナノ粒子。
  9. 請求項7に記載の半導体ナノ粒子を含むコアと、
    前記コアの表面に配置され、実質的にアルカリ金属、第13族元素及び第16族元素からなる半導体材料を含むシェルと、を備え、
    光の照射により発光する、コアシェル型の半導体ナノ粒子。
  10. 請求項7に記載半導体ナノ粒子、又は請求項8もしくは9に記載のコアシェル型半導体ナノ粒子を含む光変換部材と、半導体発光素子とを備える、発光デバイス。
  11. 前記半導体発光素子はLEDチップである、請求項10に記載の発光デバイス。
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