JP2020152770A - ポリエステル系樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐衝撃性と流動性(成形性)、さらには耐熱性にも優れるポリエステル系樹脂組成物を提供する。【解決手段】(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂60〜90質量部および(B)ポリカーボネート樹脂10〜40質量部を含有する(A)と(B)の合計100質量部に対し、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を1〜20質量部、および(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体[ただし、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を除く。]を1〜20質量部を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明はポリエステル系樹脂組成物に関し、詳しくは、耐衝撃性と流動性(成形性)、さらには耐熱性にも優れたポリエステル系樹脂組成物に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、加工の容易さ、機械的物性、耐熱性その他物理的、化学的特性に優れているため、電気・電子機器用部品、自動車用部品、建築資材部品、その他精密機器用部品等の分野に幅広く使用されているが、近年は、大型の成形部品等のニーズが高まっている。
これらの大型製品は、以前は多数の成形部品を組み立てて製品化していたが、最近は金型設計の技術向上および樹脂成形技術の向上により、これを一気に成形することが行われつつある。また、その成形品は大型でも薄肉化する傾向にあり、このような成形品は通常、多点ゲートにより成形されてきたが、最近ではその金型設計上の煩雑さやウエルド問題の回避のために、1点ゲートによる成形が適用されつつあり、このためには樹脂材料には高い流動性が求められる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐衝撃性を上げるには分子量の高いポリブチレンテレフタレートを選定する、ポリカーボネートなど耐衝撃性に優れるエンプラとアロイ化するなどの手法があるが、これらの手法では流動性(成形性)が悪化してしまう問題点がある。
また、特に、IH調理器、ホットプレート、電気ポット等の家電製品は、加熱用に電熱ヒーターやIHヒーター等の加熱部を有しているため、これら家電製品の部品に使用するためには、さらに耐熱性にも優れることが求められる。しかしながら、耐衝撃性と流動性に加えて、優れた耐熱性をも兼ね備える材料の開発は、苦慮されてきたのが現状である。
特許文献1には、ポリブチレンテレフタレート樹脂の流動性の低下を回避しながら耐衝撃性を改善する方法として、エポキシ基含有エチレン共重合体に加えてスチレン−無水マレイン酸共重合体とポリアルキレンオキシドモノアルキルエーテルとの反応生成物を溶融混練する方法が提案されている。しかしながらこの提案での流動性は必ずしも十分であるといえない。
上記したように、特に最近は、大型で複雑な形状を有する成形品を射出成形する際でも1点ゲートで射出することが行われてきており、より優れた流動性が必要とされているが、このような場合でも、耐衝撃性と流動性(成形性)、耐熱性とを高度に併せて満足することが求められている。
特開平8−104799号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、高度の耐衝撃性と高度の流動性(成形性)を両立させ、耐熱性にも優れるポリエステル系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねてきた結果、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂に、2種の特別なエラストマー成分を組み合わせて含有させることにより上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下のポリエステル系樹脂組成物に関する。
[1](A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂60〜90質量部および(B)ポリカーボネート樹脂10〜40質量部を含有する(A)と(B)の合計100質量部に対し、
(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を1〜20質量部、および
(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体[ただし、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を除く。]を1〜20質量部を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
[2](C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の含有量の合計が、(A)と(B)の合計100質量部に対し、3〜30質量部である上記[1]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[3](C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の含有量が、(C)と(D)の合計100質量%に対し、5〜42質量%である上記[1]または[2]に記載のポリエステル系樹脂組成物。
[4](D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体のMFRが35〜350g/10minである上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂を併せて含有する系に対し、(C)α−オレフィン−不飽和グリシジル化合物−(メタ)アクリル酸エステル共重合体と(D)α−オレフィン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の2種類のエラストマーを組み合わせて配合することにより、初めて、高度の耐衝撃性と高度の流動性(成形性)をバランス良く達成し、さらに耐熱性にも優れるという効果を発現することができる。
したがって、本発明のポリエステル系樹脂組成物は、電気・電子分野(特には家電製品分野)、車両用分野(特に自動車分野)、建築資材分野等の広範囲の分野に適用が可能になる。特に、本発明のポリエステル系樹脂組成物は、複雑な形状であっても高度の耐衝撃性と耐熱性を有し、成形が容易なので、各種の家電製品用の成形品に有用である。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、
(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂60〜90質量部および(B)ポリカーボネート樹脂10〜40質量部を含有する(A)と(B)の合計100質量部に対し、
(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を1〜20質量部、および
(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体[ただし、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を除く。]を1〜20質量部を含有することを特徴とする。
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂]
本発明のポリエステル系樹脂組成物を構成する主成分である(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PBT樹脂」と略称することもある。)としては、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する高分子を示す。即ち、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
PBT樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。更に、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールも挙げられる。
PBT樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/又はジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。PBT樹脂は、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
PBT樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることができる。
PBT樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
PBT樹脂は、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよいが、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類(特にはポリテトラメチレングリコール(PTMG))を共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、特にはイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。なお、これらの共重合体は、共重合量が、PBT樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量は好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
そして、これら共重合体とホモポリマーを混合して用いる場合は、共重合体の好ましい含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の総量100質量%中に、50質量%以下、更には5〜30質量%、特には10〜20質量%である。
PBT樹脂の極限粘度([η])は高い耐衝撃性を得るためには高い方が好ましく、具体的には0.7dl/g以上であるものが好ましく、0.75dl/g以上であるものがより好ましく、0.80dl/g以上であるものがさらに好ましい。また、極限粘度が高すぎると溶融時の樹脂の流動性が悪くなり、射出成形における成形性を損なうことがあるため、ある程度は低い方が好ましく、具体的には、1.4dl/g以下であることが好ましく、1.3dl/g以下であることがより好ましく、1.2dl/g以下であることがさらに好ましく、1dl/g以下であることが特に好ましい。
なお、極限粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定するものとする。
(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部基準で、(A)PBT樹脂が60〜90質量部であり、下限としては好ましくは67質量部以上であり、より好ましくは74質量部以上であり、更に好ましくは80質量部以上である。また、上限としては、85質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下である。上記上限値を上回ると、本発明のポリエステル系樹脂組成物の耐衝撃性や靭性の改良効果が小さく、さらに、寸法安定性が低下する。また、上記下限値を下回ると流動性が悪くなり成形性が悪化する。
[(B)ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂に加えて、(B)ポリカーボネート樹脂を併せて含有する。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、20,000以上であることが好ましく、より好ましくは23,000以上、さらに好ましくは25,000以上、特に好ましくは29,000以上である。粘度平均分子量が20,000より低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。また60,000以下であることが好ましく、40,000以下であることがより好ましく、35,000以下であることがさらに好ましい。60,000より高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、25℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10−4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
(B)ポリカーボネート樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部基準で、(B)ポリカーボネート樹脂が10〜40質量部であり、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、好ましくは36質量部以下、より好ましくは33質量部以下である。上記下限値を下回ると、本発明のポリエステル系樹脂組成物の耐衝撃性や靭性の改良効果が小さく、さらに、寸法安定性が低下する。また、上記上限値を上回ると流動性が悪くなり成形性が悪化する。
[(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、さらに、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を併せて含有する。
(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの三元共重合体のみならず、α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とからなる四元系以上の多元共重合体であってもよい。
上記共重合体(C)におけるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンを例示できるが、特にエチレンが好ましい。
また、不飽和グリシジル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル又は不飽和グリシジルエーテル、例えばビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等であることが好ましく、特に(メタ)アクリル酸グリシジル、すなわちアクリル酸グリシジル又はメタアクリル酸グリシジルが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル等を例示することができるが、特にアクリル酸ブチルが好ましい。
また上記四元系以上の多元共重合体の成分となり得る他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル類、アクリロニトリル、スチレン、一酸化炭素、無水マレイン酸等を例示することができる。
(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体において、各構成単位の好ましい含有量は、(C)全体の質量を100質量%としたときに、α−オレフィンが50〜94.5質量%、より好ましくは52〜85質量%、さらに好ましくは55〜75質量%であり、不飽和グリシジル化合物が0.5〜20質量%、より好ましくは1〜18質量%、さらに好ましくは2〜15質量%であり、特に好ましくは3〜10質量%であり、(メタ)アクリル酸エステルが5〜49.5質量%、より好ましくは7〜45質量%、さらに好ましくは10〜40質量%であり、特に好ましくは15〜35質量%である。その他の単量体を更に併用する場合には、上記その他の単量体が0〜49.5質量%、より好ましくは0.5〜40質量%、さらに好ましくは1〜35質量%の範囲で共重合されているものが好ましい。
不飽和グリシジル化合物の含有量が少なすぎると、ポリエステル系樹脂組成物の耐衝撃性が損なわれる恐れがあり、一方その量が多くなりすぎると、樹脂粘度が急激に上昇して成形が困難となったり、また組成物中にゲルが発生する等の問題を起こすことがある。また(メタ)アクリル酸エステルを上記範囲で共重合させたものを使用することにより、ポリエステル系樹脂組成物に良好な耐衝撃性を付与することが容易となる。
(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、ランダム共重合体であってもグラフト共重合体であってもよいが、ランダム共重合体を使用するのが好ましい。このようなランダム共重合体は、例えば、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、メルトフローレート(JIS K7210−1999に準拠、190℃、2.16kg荷重で測定)が、0.01〜1,000g/10min、さらには0.1〜200g/10min、特に1〜70g/10minのものを使用するのが好ましい。
(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を配合することにより、耐衝撃性が向上できる。配合量は(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、1〜20質量部であり、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2質量部、さらに好ましくは3質量部以上であり、また好ましくは16質量部以下、より好ましくは12質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。含有量が多くなりすぎると耐熱性の低下、機械強度の低下、流動性の悪化を引き起こすことがある。
[(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、さらに、(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を含有する。ここで、(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、上記した(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体とは異なる共重合体であり、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は除かれる。
本発明で用いる(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンを例示できるが、特にエチレンが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル等を例示することができる。
アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとでは、アクリル酸エステルが好ましく、特にアクリル酸ブチルが好ましい。
α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの比率は適宜調整すればよいが、α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体における(メタ)アクリル酸エステルの質量比で示すと、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが一層好ましい。上限としては、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
α−オレフィンおよび(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。さらに、α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステル以外の他のモノマーを含む共重合体であってもよい。オレフィンとアルキル(メタ)アクリレート以外の他のモノマーを含む共重合体である場合、他のモノマーは、共重合体を構成するモノマーの10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であってもよい。
(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、エポキシ基を含有しないことが好ましい。(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体がエポキシ基を含有しないことで、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と結合しにくく、エラストマーとして効果がより効果的に発揮される。
(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体であることが好ましく、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート共重合体であることがより好ましく、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート共重合体であることがさらに好ましい。
より具体的には、下記式aで表される構成単位と下記式bで表される構成単位とを有する共重合体であることがより好ましい。
上記式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが好ましく、メチル基またはブチル基であることがさらに好ましく、ブチル基であることが一層好ましい。
構成単位aと構成単位bとの比率は適宜調整すればよいが、コポリマーにおける構成単位bを構成するモノマーの質量比で示すと、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが一層好ましい。上限としては、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、190℃、2.16kg荷重にて測定されるMFRが35〜350g/10分であることが好ましい。MFRが上記の下限値以上であることで、これを含むポリエステル系樹脂組成物を成形品としたときに高い衝撃性が得られる。MFRの上限値は300g/10分以下であることがより好ましく、さらに好ましくは200g/10分以下、特に好ましくは150g/10分以下である。
本発明で用いる(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体のガラス転移点(Tg)は0℃以下であることが好ましく、−30℃以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、−100℃以上であることが実際的である。ガラス転移点(Tg)は、JIS K7121に準拠し、DSC法により得られる温度として定義される温度である。
本発明で用いる(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の融点は、70〜120℃であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物に採用することができる(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体としては、具体的には、アルケマ社製の商品名「LOTRYL(登録商標)28BA175」、「LOTRYL(登録商標)35BA40T」、「LOTRYL(登録商標)35BA40」、「LOTRYL(登録商標)35BA320T」、「LOTRYL(登録商標)HMA−LV」、「LOTRYL(登録商標)35BA320」等が挙げられる。
(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を含有することにより、良流動性と耐衝撃性が向上できる。含有量は(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、1〜20質量部であり、2質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましく、5質量部以上が特に好ましく、18質量部以下が好ましく、16質量部以下がさらに好ましく、15質量部以下が特に好ましい。配合量が多くなりすぎると耐熱性の低下、機械強度の低下を引き起こすことがある。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を併せて含有することにより、前記した効果を発現するが、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の含有量の合計は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、3〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜28質量部であり、7〜26質量部であることがさらに好ましい。
(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と、(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の含有量の比率は、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の含有量が、(C)と(D)の合計100質量%に対し、5〜42質量%であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、35質量%以下、28質量%以下であり、また7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上であるのが、耐衝撃性と流動性が良好なバランスで得られるので特に好ましい。
[ガラス繊維]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、ガラス繊維を含有することが好ましい。
ガラス繊維の平均繊維長は特に限定されないが、例えば0.1〜20mmの範囲で選ぶことが好ましく、0.3〜5mmであることがより好ましい。平均繊維長が0.1mm未満であると、補強効果が十分に発現しない恐れがあり、20mmを超えると、得られるポリエステル系樹脂組成物の成形が困難になる恐れがある。
ガラス繊維の平均繊維径は特に制限されないが、例えば1〜100μmの範囲で選ぶことが好ましく、より好ましくは2〜50μm、更に好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。平均繊維径が1μm未満のガラス繊維は、製造が容易でなく、コスト高になる恐れがあり、一方100μmを超えると、ガラス繊維の引張強度が低下する恐れがある。
ガラス繊維としては、長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5〜8である扁平断面ガラス繊維を用いるのが、曲げ強度や衝撃強度の点で、また製品の外観、反り等の寸法安定の良さの点でより好ましい。扁平断面ガラス繊維の繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値は、より好ましくは1.6〜7、さらに好ましくは1.7〜6、特に好ましくは1.8〜5である。
また、ガラス繊維は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることが好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れる傾向にあり好ましい。
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でも、ノボラック型のエポキシ樹脂がより好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
本発明においては、ガラス繊維を含有する場合の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、10〜150質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜120質量部、さらに好ましくは30〜100質量部である。このような含有量とすることにより、耐衝撃性、耐熱性及び流動性をバランスよく向上させることができ好ましい。
[無機充填材]
本発明のポリエステル系樹脂組成物には、ガラス繊維以外の無機充填材を含有することも好ましい。無機充填材としては常用のものをいずれも用いることができる。ガラス繊維以外の無機充填材を含有する場合の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは0.5〜50質量部であり、より好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。ガラス繊維(B)以外の無機充填材の含有量が50質量部を上回ると、流動性が低下するので好ましくない。
ガラス繊維(B)以外の無機充填材としては、具体的には例えば、炭素繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の充填材;炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状又は無定形の充填材;タルク等の板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等の鱗片状の充填材を用いることもできる。中でも、機械的強度、剛性及び耐熱性の点からタルクを用いるのが好ましい。
[難燃剤]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、難燃剤を含有することが好ましい。
難燃剤としては、既知のプラスチック用難燃剤が使用可能であり、具体的には、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(ポリリン酸メラミン等)、窒素系難燃剤(シアヌル酸メラミン等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム等)である。
ハロゲン系難燃剤としては、臭素系難燃剤がより好ましい。
臭素系難燃剤としては、従来公知の任意の、熱可塑性樹脂に使用される臭素系難燃剤を用いることが出来る。このような臭素系難燃性としては、芳香族系化合物が挙げられ、具体的には例えば、ペンタブロモベンジルポリアクリレート等のポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレート、ポリブロモフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、N,N’−エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(EBTPI)等の臭素化イミド化合物、臭素化ポリカーボネート等が挙げられる。
中でも熱安定性の良好な点より、ペンタブロモベンジルポリアクリレート等のポリブロモ化ベンジル(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAのエポキシオリゴマー等の臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネートが好ましく、特に臭素化エポキシ化合物であるのがコスト及び難燃性の点から好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤としては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤における、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常、2〜30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時に(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎても(B)ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高くなり、成形体内の分散不良を引き起こし、成形体外観、特に光沢性が低下する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。
臭素化ポリカーボネート系難燃剤の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1000〜20000、中でも2000〜10000であることが好ましい。なお、臭素化ポリカーボネート系難燃剤の粘度平均分子量は、(B)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定と同様の方法で求めることができる。
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、例えば、臭素化ビスフェノールとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
ポリ臭素化ベンジル(メタ)アクリレートとしては、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートを単独で重合、又は2種以上を共重合、もしくは他のビニル系モノマーと共重合させることによって得られる重合体であることが好ましく、該臭素原子は、ベンゼン環に付加しており、付加数はベンゼン環1個あたり1〜5個、中でも4〜5個付加したものであることが好ましい。
該臭素原子を含有するベンジルアクリレートとしては、ペンタブロムベンジルアクリレート、テトラブロムベンジルアクリレート、トリブロムベンジルアクリレート、又はそれらの混合物等が挙げられる。また、臭素原子を含有するベンジルメタクリレートとしては、上記したアクリレートに対応するメタクリレートが挙げられる。
臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートと共重合させるために使用される他のビニル系モノマーとしては、具体的には例えば、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ベンジルアクリレートのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル類;スチレン、アクリロニトリル、フマル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸又はその無水物;酢酸ビニル、塩化ビニル、等が挙げられる。
これらは通常、臭素原子を含有するベンジル(メタ)アクリレートに対して等モル量以下、中でも0.5倍モル量以下が用いることが好ましい。
また、ビニル系モノマーとしては、キシレンジアクリレート、キシレンジメタクリレート、テトラブロムキシレンジアクリレート、テトラブロムキシレンジメタクリレート、ブタジエン、イソプレン、ジビニルベンゼン等を使用することもでき、これらは通常、臭素原子を含有するベンジルアクリレート又はベンジルメタクリレートに対し、0.5倍モル量以下が使用できる。
該ポリブロム化ベンジル(メタ)アクリレートとしては、ペンタブロモベンジルポリアクリレートが、高臭素含有量であること、電気絶縁特性(耐トラッキング特性)が高い観点で好ましい。
臭素化エポキシ化合物としては、具体的には、テトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型ブロモ化エポキシ化合物が挙げられる。
臭素化エポキシ化合物の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、質量平均分子量(Mw)で3000〜100000であり、中でも分子量が高い方が好ましく、具体的にはMwが15000〜80000、中でも18000〜78000、更には20000〜75000、特に22000〜70000であることが好ましく、この範囲内に於いても分子量の高いものが好ましい。
臭素化エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が3000〜40000g/eqであることが好ましく、中でも4000〜35000g/eqが好ましく、特に10000〜30000g/eqであることが好ましい。
また、臭素化エポキシ化合物系難燃剤として臭素化エポキシオリゴマーを併用することもできる。この際、例えばMwが5000以下のオリゴマーを0〜50質量%程度用いることで、難燃性、離型性および流動性を適宜調整することができる。臭素化エポキシ化合物における臭素原子含有量は任意だが、十分な難燃性を付与する上で、通常10質量%以上であり、中でも20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましく、その上限は60質量%、中でも55質量%以下であることが好ましい。
難燃剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは3〜30質量部であり、より好ましくは7質量部以上であり、さらに好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは25質量部以下であり、さらに好ましくは23質量部以下であり、特に好ましくは20質量部以下である。難燃剤の含有量が少なすぎると本発明に用いる樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に多すぎても機械的特性、離型性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生ずる。
[アンチモン化合物]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、難燃剤助剤であるアンチモン化合物を含有することが好ましい。
アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb)、五酸化アンチモン(Sb)およびアンチモン酸ナトリウムが好ましい例として挙げられる。これらの中でも、耐衝撃性の点から三酸化アンチモンが好ましい。
アンチモン化合物は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とのマスターバッチとして配合することが好ましい。これにより、アンチモン化合物が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相に存在しやすくなり、(B)ポリカーボネート樹脂に対する悪影響が抑制でき、耐衝撃性の低下が抑えられる傾向となる。
マスターバッチ中のアンチモン化合物の含有量は20〜90質量%であることが好ましい。アンチモン化合物が20質量%未満の場合は、難燃剤マスターバッチ中のアンチモン化合物の割合が少なく、これを配合するポリブチレンテレフタレート樹脂への難燃性向上効果が小さい。一方、アンチモン化合物が90質量%を超える場合は、アンチモン化合物の分散性が低下しやすく、これをポリブチレンテレフタレート樹脂に配合すると樹脂組成物の難燃性が不安定になり、また難燃剤マスターバッチ製造時の作業性も著しく低下する、例えば、押出機を使用して製造する際に、ストランドが安定せず、切れやすい等の問題が発生しやすいため好ましくない。
マスターバッチ中のアンチモン化合物の含有量は、下限値として好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、上限値としては、好ましくは88質量%であり、より好ましくは85質量%以下である。
アンチモン化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは1〜15質量部であり、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは2.5質量部以上であり、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下、なかでも6質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記下限値を下回ると難燃性が低下しやすく、上記上限値を上回ると、結晶化温度が低下し離型性が悪化したり、耐衝撃性等の機械的物性が低下する。
[離型剤]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル系樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、離形効果が高い点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物及びシリコーン系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましく、特に、脂肪酸エステル系化合物が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、質量平均分子量が、700〜10,000、更には900〜8,000のものが好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、飽和又は不飽和の脂肪族1価又は2価のカルボン酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられる。中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸とアルコールで構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。
脂肪族カルボン酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。また、脂肪族カルボン酸は、脂環式のカルボン酸であってもよい。
アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪酸エステル系化合物の具体例としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリストールジステアレート、ステアリルステアレート、エチレングリコールモンタン酸エステル等が挙げられる。
また、シリコーン系化合物としては、ポリブチレンテレフタレート系樹脂との相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端及び/又は片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等が挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタアクリル基、メルカプト基、フェノール基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
離型剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.1〜3質量部であることが好ましく、0.2〜2.5質量部であることがより好ましい。0.1質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下する傾向があり、一方、3質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形体表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、更に好ましくは0.5〜2質量部である。
[安定剤]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、安定剤を含有することが、熱安定性改良や、エステル交換反応の防止、成形滞留時の急激な粘度変化の抑制、発泡によるボイドの抑制、機械的強度、透明性や色相および表面外観の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤、イオウ系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましく、リン系安定剤およびフェノール系安定剤がより好ましい。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機リン酸エステル化合物が好ましい。
有機リン酸エステル化合物は、リン原子にアルコキシ基又はアリールオキシ基が1〜3個結合した部分構造を有するものである。なお、これらのアルコキシ基やアリールオキシ基には、さらに置換基が結合していてもよい。好ましくは、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される有機リン酸エステル化合物を用いる。有機リン酸エステル化合物は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。
一般式(2)中、Rはアルキル基又はアリール基を表し、Mはアルカリ土類金属又は亜鉛を表す。
一般式(3)中、R〜R11は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表す。
一般式(4)中、R12〜R14は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。M’は3価の金属イオンとなる金属原子を表し、2つのM’はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
一般式(5)中、R15はアルキル基又はアリール基を表す。nは0〜2の整数を表す。なお、nが0のとき、3つのR15は同一でも異なっていてもよく、nが1のとき、2つのR15は同一でも異なっていてもよい。
一般式(1)〜(5)中、R〜R15は、通常は炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数6〜30のアリール基である。滞留熱安定性、耐薬品性、耐湿熱性等の観点からは、炭素数2〜25のアルキル基であるのが好ましく、更には炭素数6〜23のアルキル基であるのが最も好ましい。アルキル基としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。また、一般式(1)、(2)のMは亜鉛であるのが好ましく、一般式(3)、(4)のM’はアルミニウムであるのが好ましい。
有機リン酸エステル化合物の好ましい具体例としては一般式(1)の化合物としてはビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、一般式(2)の化合物としてはモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩、一般式(3)の化合物としてはトリス(ジステアリルアッシドホスフェート)アルミニウム塩、一般式(4)の化合物としては1個のモノステアリルアッシドホスフェートと2個のモノステアリルアッシドホスフェートアルミニウム塩との塩、一般式(5)の化合物としてはモノステアリルアシッドホスフェートやジステアリルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また混合物として用いてもよい。
有機リン酸エステル化合物としては、エステル交換抑制効果が非常に高く、成形加工時の熱安定性がよく成形性に優れ、射出成形機での計量部の設定温度を高めに設定することが可能となって成形が安定すること、また耐加水分解性、耐衝撃性が優れる観点から、前記一般式(1)で表される有機リン酸エステル化合物の亜鉛塩であるビス(ジステアリルアシッドホスフェート)亜鉛塩、前記一般式(2)で表される有機リン酸エステル化合物の亜鉛塩であるモノステアリルアシッドホスフェート亜鉛塩等のステアリルアシッドホスフェートの亜鉛塩を用いるのが好ましい。これらの市販のものとしては、城北化学工業社製「JP−518Zn」等がある。
イオウ系安定剤としては、従来公知の任意のイオウ原子含有化合物を用いることが出来、中でもチオエーテル類が好ましい。具体的には例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよく、特にリン系安定剤とフェノール系安定剤の2種を併用するのが好ましい。
安定剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜2質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、2質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.01〜1.5質量部であり、更に好ましくは、0.1〜1質量部である。
[カーボンブラック]
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。その数平均粒径には特に制限はないが、5〜60nm程度であることが好ましい。
カーボンブラックの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.1〜4.0質量部、より好ましくは0.2〜3.0質量部である。0.1質量部未満では、所望の色が得られなかったり、耐候性改良効果が十分でない場合があり、4.0質量部を超えると、機械的物性が低下する場合がある。
なお、カーボンブラックは、予めカーボンブラックを高濃度で含有するマスターバッチとして配合することが、樹脂組成物製造時のハンドリング性、樹脂組成物における均一分散性を高める上で好ましい。この場合、カーボンブラックのマスターバッチに用いる樹脂としては、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂であってもよく、これ以外の樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、スチレン系樹脂(例えばAS樹脂等)、ポリエチレン樹脂等であってもよい。高濃度のカーボンブラックを分散させ易く、マスターバッチ化が容易な点からは、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂を用いることが好ましい。
カーボンブラックマスターバッチのカーボンブラック濃度は、通常10〜60質量%程度である。
[その他成分]
本発明のポリエステル系樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記した以外の各種樹脂添加剤を含有することもできる。各種樹脂添加剤としては、滴下防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、上記したカーボンブラック以外の染顔料等の着色剤、滑剤、触媒失活剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、結晶核剤、結晶化促進剤等が挙げられる。
本発明のポリエステル系樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を含有することができる。他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂等が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種でも2種類以上であってもよい。
ただし、前記した必須成分の樹脂以外の、他の樹脂を含有する場合の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂および(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、40質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは30質量部以下、さらには20質量部以下、中でも10質量部以下、特には5質量部以下、2質量部以下とすることが最も好ましい。
本発明のポリエステル系樹脂組成物を製造する方法は、特定の方法に限定されるものではないが、溶融・混練法によるのが好ましい。溶融・混練方法は、熱可塑性樹脂について通常採用されている方法によることができる。
溶融・混練方法としては、例えば、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂及び(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、さらに必要により所望の前述した各成分を、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、タンブラー等により均一に混合した後、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー、ラボプラストミル(ブラベンダー)等で溶融・混練する方法が挙げられる。要すればガラス繊維等は混練押出機のサイドフィーダーより供給することにより、強化充填材の折損を抑制し、分散させることが可能になり好ましい。
溶融・混練する際の温度と混練時間は、樹脂成分を構成する成分の種類、成分の割合、溶融・混練機の種類等により選ぶことができるが、溶融・混練する際の温度は200〜300℃の範囲が好ましい。300℃を超えると、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂、(B)ポリカーボネート樹脂および(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体等の熱劣化が問題となり、成形品の物性が低下したり、外観が悪化したりすることがある。
このようにして得られる本発明のポリエステル系樹脂組成物は、流動性(成形性)の点において、温度265℃、荷重5kgfの条件で測定されたメルトボリュームレート(MVR)が8cm/10min以上であることが好ましく、9cm/10min以上であることがより好ましく、10cm/10min以上であることがさらに好ましい。
ここで、MVRは、メルトインデクサーを用い、得られたペレットを265℃、荷重5kgfの条件で測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(単位:cm/10min)である。メルトインデクサーとしてはタカラ工業(株)社製のものなどがあげられる。
また、耐熱性の点では、ボールプレッシャー温度が180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましい。
ここで、ボールプレッシャー温度は、例えば100×100×3mmtの試験片を用い、電気用品調査委員会B法(油中)に従って、測定することができる。具体的には、試験温度の油中で、φ5mmの鋼球を荷重20Nで1時間押当て、試験片のへこみ深さが0.209mmになった時の油の温度をボールプレッシャー温度とした。
本発明のポリエステル系樹脂組成物から、成形品を製造する方法は特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について従来から採用されている成形法、すなわち射出成形法、インサート成形法、中空成形法、押出成形法、圧縮成形法等によることができるが、特に射出成形法が好ましい。射出成形の方法は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の射出成形に適用される常法を適用すればよい。本発明のポリエステル系樹脂組成物を用いることにより、ゲートが一つの1点ゲートにおいても、流動性(成形性)に優れ、耐衝撃性と耐熱性が良好な成形品が可能となる。
成形品としては、射出成形により一体的に成形されたものが好ましい。射出成形による成形品としては、特に、周囲の立ち上がり壁によって凹没した底面部を有する形状であり、その容積が200〜20000cmであり、最少厚みが3mm以下の成形品であるものが好ましい。
以下、このような好ましい成形品について、説明する。
周囲の立ち上がり壁によって凹没した底面部の形状に特に限定はない。平板であってもよいし曲面であってもよく、一部又は全面に凹凸部、リブ部、ヒンジ部、ボス部を有していてもよい。
底面部が曲面である場合、成形品高さ方向の底面部の断面形状としては、例えば、略半円形、略半楕円形、略半長円形、略長方形、略正方形、円弧形状及びこれらの形状を組み合わせた形状や、テーパー形状と円弧形状とを組み合わせた形状、テーパー形状と平板形状とを組み合わせた形状等が挙げられる。また、成形品高さ方向と垂直な平面方向の底面部の断面形状としては、例えば、略円形、略半円形、略楕円形、略半楕円形、略長円形、略半長円形、略三角形、略長方形、略正方形及びこれらの形状を組み合わせた形状等が挙げられる。
成形品の容積は好ましくは200〜18000cmであり、より好ましくは300〜15000cm、さらに好ましくは500〜12000cmである。また、最少厚みは好ましくは0.1〜3mmであり、より好ましくは0.5〜2.5mmである。
ここで成形品の容積とは、成形品がその周囲の立ち上がり壁と立ち上がり壁によって凹没した底面部により形成される空間の容積をいい、
(周囲の立ち上がり壁の高さ)×(周囲の立ち上がり壁によって凹没した底面部の最大投影面積)
により求めることができる。なお、底面部が曲面であったり凹凸を有している等の平板状でない場合や、周囲の立ち上がり壁の高さが部位によって異なる等の場合は、成形品の部位によって立ち上がり壁の高さが異なる。従って、このような場合は、立ち上がり壁の高さが最も高くなる部位の高さを、立ち上がり壁の高さとして成形品容積の計算を行う。なお、立ち上がり壁の高さには、ボス部、リブ部等の影響は勘定しないものとする。
また、成形品の最少厚みとは、成形品にリブ部、ヒンジ部、ボス部等がある場合は、それらを除いた部分における最少厚みである。
かかる容積と平均と最少厚みを有するということは、係る成形品が、薄くて大きいことを意味しており、また、成形品が形成する空間には、他の物品や製品を収容または保持することも可能である。このように構成された成形品は、本発明のポリエステル系樹脂組成物が有する優れた流動性のために容易に安定的に成形することが可能となったものであり、しかも成形品は、良好な耐衝撃性と耐熱性を有することが可能となったものである。
成形品は、最少厚みが3mm以下の部分を少なくとも有しているものが好ましいが、より好ましくは厚み3mm以下である部分の割合が成形品面積の20%以上であり、中でも30%以上、特には35%以上であり、とりわけ40%以上であることが好ましい。なお、ここで面積とは、成形品にリブ部、ヒンジ部、ボス部等がある場合は、それらを除いた部分の面積の合計であり、底面部及び周囲立ち上がり壁の合計面積をいう。底面部と対峙する位置等にその他の部位が存在する場合は、その他の部位も該面積に含めるものとする。
成形品は、平均厚みが1〜5mmであることが好ましく、1〜4mmであることがより好ましく、1〜3.5mmであることがさらに好ましい。なお、成形品の平均厚みとは、成形品にリブ部、ヒンジ部、ボス部等がある場合は、それらを除いた部分の厚みを測定し、それらを平均した値をいう。
さらに、成形品は、周囲の立ち上がり壁によって凹没した底面部の面積が100〜900cmであることが好ましく、130〜800cmであることがより好ましく、150〜700cmであることがさらに好ましい。なお、底面部の面積とは、底面部の最大投影面積をいう。
成形品の好ましい製造方法である射出成形法は特に限定されるものではなく、代表的な例として、一般射出成形法、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法等を挙げることができる。
成形の際は、射出シリンダー内での樹脂温度を230〜290℃の範囲で成形するのが好ましく、240〜280℃がより好ましい。
射出成形の金型としては、多点ゲートのものでも適用可能であるが、中心部に1点の、又は数点のピンゲートを配したものが、金型設計の容易さやウエルド問題の回避のために好ましく、本発明のポリエステル系樹脂組成物が有する優れた流動性のために、1点ゲートによっても本発明の薄肉で大型の成形品を容易に安定的に成形することが可能である。
射出成形時の1ゲートあたりの樹脂組成物充填容積は、50ml以上であることが好ましく、70ml以上であることがより好ましく、100ml以上がさらに好ましく、200ml以上が特に好ましい。このような1ゲートあたりの樹脂組成物充填容積を本発明に用いるポリエステル系樹脂組成物は容易に達成でき、これにより、本発明の大型の成形品を1点ゲートによっても成形が可能となる。なお、射出成形時の1ゲートあたりの樹脂組成物充填容積とは、成形品の合計樹脂充填容積をゲート数で割って算出される値をいう。
本発明の樹脂組成物を用いた成形品は、高度の耐衝撃性と耐熱性を有し、複雑な形状で大型であっても製造が容易である。
これらの特徴を必要とする製造できる成形品としては、例えば、電気・電子部品、家電製品部品、自動車部品、OA機器部品、機械機構部品、建築資材部品、その他精密機器用部品、各種容器等に適用できる。特に、家電製品部品、中でも高い耐衝撃性と成形性(流動性)と耐熱性が要求される製品の部品に好適である。
中でも、製品が電気ヒーター(抵抗加熱、誘電加熱、マイクロ波加熱、誘導加熱等を含む)による加熱部(発熱部)を有する製品であって、その加熱部から30mm以内、特に20mm以内に位置するように配置されるような部品に好適に使用できる。なお、「加熱部から30mm以内に位置する」とは、成形品の少なくとも一部が加熱部から30mm以内に位置するように設置される状態をいい、成形品と加熱部が直接接している状態も含まれる。
特に、本発明の樹脂組成物を成形した成形品は、実製品の部品として使用するに十分な耐熱性を有しているので、成形品の20%以上、特に30%以上の部位が加熱部から30mm以内に位置するような、高い耐熱性が要求される製品の部品にも使用可能である。さらに、本発明のポリエステル系樹脂組成物からなる部品は、優れた耐熱性を有するため、加熱部の近傍に配置されても、熱劣化による機械的物性の低下や変色等の問題が発生しにくいといった利点もある。
加熱部(発熱部)を有する製品の部品としては、例えば、炊飯器、IH調理器、ホットプレート、湯沸かし器、電子レンジ、オーブンレンジ、クッキングヒーター、電気ポット、コーヒーメーカー、電気ヒーター、遠赤外線ヒーター、食器乾燥機、ファンヒーター、アイロン、ヘヤードライヤー、照明機器等の部品等が挙げられる。
以下の実施例及び比較例に使用した原料成分は、以下の表1のとおりである。
(実施例1〜3、比較例1〜9)
<ポリエステル系樹脂組成物の製造>
表1に記載の各成分の中、ガラス繊維以外の各成分を、後記表2に示される割合(質量部で記載。)にて、ブレンドし、これを30mmのベントタイプ二軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機「TEX30α」)を使用して、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給し、バレル温度270℃にて溶融混練し、ストランドに押し出した後、ストランドカッターによりペレット化し、ポリエステル系樹脂組成物のペレットを得た。
<測定評価方法>
実施例及び比較例における各種の物性・性能の測定評価は以下の方法により実施した。
[耐衝撃性評価:インパクトハンマー試験]
上記の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製射出成形機(型締め力80T)を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で成形した100×100×2mmtの射出成形試験片を試験片として用いた。
試験片を載置する台座として、幅10mm、厚み4mmの樹脂片で内部面積15cm、20cm、25cm、30cmの4種の正方形の枠体を作成した。それぞれの台座の上に、上記100×100×2mmtの試験片を載置し、その中心部に、0.5Jのエネルギーで牽引したインパクトハンマーにて衝撃をそれぞれ10回加え、破壊しなかった(ノンブレイク)回数(クリア数)をカウントし、以下の基準で評価した。
◎:10回全てがノンブレイク
○:5〜9回ノンブレイク
△:1〜4回ノンブレイク
×:10回全てがブレイク
樹脂枠が小さい場合でもノンブレイクの比率が高いサンプルが耐衝撃性に優れると判断できる。
[流動性:射出ピーク圧]
上記インパクトハンマー試験片を成形する際の射出ピーク圧(単位:MPa)を読み取り、流動性の指標とした。110MPa以下であることを流動性に優れる目安とした。
[ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度設計値]
仕込み前の原料ポリブチレンフタレート樹脂(表2に記載されたA1〜A3の質量比の混合物)の30℃における極限粘度IVを測定した(表中「IV設計値」と記す)。
極限粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値(単位:dl/g)である。
以上の評価結果を以下の表2に示す。
上記表2において、比較例1〜3は、本発明の(C)成分と(D)成分を配合することなしに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度を高くすることによって、耐衝撃性を向上させようと意図した例であるが、IV値を上げることで耐衝撃性は向上はするものの、十分ではなく、流動性悪化の方が顕著であることが分かる。
また、比較例4〜7は、(B)ポリカーボネート樹脂の配合なしに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に、(C)成分と(D)成分を配合した例であるが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の極限粘度を高くすることによって耐衝撃性は若干向上はするものの、不十分であることが分かる。
比較例8〜9は、(C)成分または(D)成分のいずれかのみを配合した例であるが、(D)成分のみを単独で配合した比較例8は、耐衝撃性は少し向上するが不十分であり、(C)成分のみを単独で配合した比較例9では、耐衝撃性は向上するが流動性が悪いことが分かる。
一方、本願の要件を満たす実施例1〜3では、耐衝撃性は極めて良好で合格レベルであり、流動性も良好であることが分かる。
本発明のポリエステル系樹脂組成物は、耐衝撃性と流動性(成形性)、さらには耐熱性にも優れるので、各種の用途に広く採用することができ、電気・電子部品、家電製品部品、自動車部品、OA機器部品、機械機構部品、建築資材部品、その他精密機器用部品、各種容器等に適用でき、その利用性は高い。

Claims (4)

  1. (A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂60〜90質量部および(B)ポリカーボネート樹脂10〜40質量部を含有する(A)と(B)の合計100質量部に対し、
    (C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を1〜20質量部、および
    (D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体[ただし、(C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を除く。]を1〜20質量部を含有することを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
  2. (C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体と(D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の含有量の合計が、(A)と(B)の合計100質量部に対し、3〜30質量部である請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
  3. (C)α−オレフィンと不飽和グリシジル化合物と(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の含有量が、(C)と(D)の合計100質量%に対し、5〜42質量%である請求項1または2に記載のポリエステル系樹脂組成物。
  4. (D)α−オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルの共重合体のMFRが35〜350g/10minである請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル系樹脂組成物。
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