本発明の非接触電力伝送装置は、非接触での双方向の電力伝送が可能な電力伝送装置であって、非接触での双方向の電力伝送が可能な電力伝送装置であって、充放電可能な電源と、複数のスイッチング素子からなるスイッチング回路と、コイルとコンデンサとを有する共振系と、前記スイッチング回路を構成する各スイッチング素子のON/OFF動作を制御する駆動制御回路とを備え、前記電力伝送装置は送電装置としても受電装置としても用いられ、前記コイルの共振電圧の過大電圧、前記コイルの共振電流の過大電流、前記電力伝送装置内の-温度、前記電源への電力供給時の過大電流、前記電源の過大電圧からなる群の少なくとも一つの所定条件を検出し、前記所定条件の検出結果に基づいて、前記駆動制御回路が前記スイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側又はグランド側のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行う。
以下、本開示にかかる非接触電力伝送装置についての実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
なお、以下で説明する本実施形態にかかる非接触電力伝送装置は、一つの電力伝送装置が、送電側の送電装置としても受電側の受電装置としても機能して双方向の電力伝送を行うことができる。以下では、電力を送電する側の送電装置と電力を受電する側の受電装置とに適宜分けて説明する。
(実施の形態)
図1、および、図2は、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置の概略構成を説明するブロック図である。図1では、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置が、それぞれ送電装置、および、受電装置として用いられ、電力を送受電している状態を示す図である。一方、図2では、送電装置としても受電装置としても機能する本実施形態にかかる非接触電力伝送装置の主要部の構成をより詳細に説明する図である。
図1に示すように、送電装置10は、装置全体を動作させるための充放電可能な電源11、電力を伝送するためのスイッチング動作を行うスイッチング回路12、送電電力を磁界に変換するための送電共振系13、スイッチング回路12を構成するスイッチング素子の動作を制御する駆動制御回路14、所定条件を検出する検出回路100を有している。
また、受電装置20は、装置全体を動作させるための充放電可能な電源21、受電した電力を整流して直流電圧に変換するスイッチング回路22、送電された電力を送電装置10の送電共振系13との間の磁気結合によって受電する受電共振系23、スイッチング回路22を動作させるための駆動制御回路24、所定条件を検出する検出回路200とを有している。
図2に示すように、送電装置10であり受電装置20でもある非接触電力伝送装置において、充放電可能な電源11、12は、例えば充放電が可能な二次電池として実現することができる。
図2に示すように、送電装置10、受電装置20は、スイッチング回路としてのフルブリッジ回路12、22を有している。
フルブリッジ回路12、22は、第1のスイッチング素子(12a、22a)と第2のスイッチング素子(12b、22b)との直列体と、第3のスイッチング素子(12c、22d)と第4のスイッチング素子(12d、22d)との直列体とが並列に接続されて構成され、電源11、21とグランド16、26との間に配置されている。
第1から第4のスイッチング素子(12a〜12d、22a〜22d)は、MOSFETで構成することができ、駆動制御回路14、24からのドライブ電圧によってそれぞれ別個にON/OFFが制御される。スイッチング素子(12a〜12d、22a〜22d)をMOSFETで構成した場合には、MOSFETが備えるボディダイオードが、いずれもグランド16、26側から電源11、21の側へのみ電流を流す方向に配置される。この結果、第1から第4のスイッチング素子(12a〜12d、22a〜22d)がいずれも動作しないOFF状態の場合には、フルブリッジ回路12、22は4つのダイオードによって構成された全波整流器として機能することになる。
送電共振系13、および、受電共振系23となる共振系は、いずれも共振コイル13a、23aと共振コンデンサ13b、23bとが直列に接続された直列共振系の共振回路として構成される。送電共振系13、および、受電共振系23である共振回路は、フルブリッジ回路12、22の2組のMOSFETを上下に直列接続したブリッジ回路のソースとドレインの接続部分に接続されている。
なお、図2では、送電共振系13、受電共振系23を、いずれも共振コイル13a、23aと共振コンデンサ13b、23bとが直列に接続された直列共振系の共振回路として示したが、共振コイル13a、23aと共振コンデンサ13b、23bとが並列に接続された並列共振系の共振回路として構成することもできる。ただし、この場合には共振コンデンサ13b、23bに直接フルブリッジ回路からの出力が供給されて大電流が流れるので、直列にインダクタンスを挿入する必要がある。
駆動制御回路14、24は、検出回路100、200が所定条件(後述する)について検出し、検出された結果に基づいて、フルブリッジ回路12、22を構成するスイッチング素子(12a〜12d、22a〜22d)それぞれのON/OFF動作を所定のタイミングで制御する。
送電装置10では、駆動制御回路14は、フルブリッジ回路12をインバータ回路として動作させて送電共振系13に印加する交流電流を生成する。また、後述するように、送電装置10で自励発振を行う場合や、電力伝送効率を向上させるためのPWM制御を行う場合、また、送電電力を低下させる場合の休止(遮断)動作制御や、余剰の電力を回収する回収動作を行う場合に、駆動制御回路14は、フルブリッジ回路12を構成するスイッチング素子(12a〜12d)を所定のタイミングでON/OFFさせる動作制御を行う。
受電装置20では、駆動制御回路24は、フルブリッジ回路22の各スイッチング素子が内蔵しているダイオードでの全波整流を行う場合は、フルブリッジ回路22を構成するスイッチング素子(22a〜22d)をOFF状態で維持する。また、後述する電力伝送効率を向上させる同期整流を行う場合や、受電装置20側から送電装置10へと電力を戻す回収動作を行う場合には、駆動制御回路24は、フルブリッジ回路22を構成するスイッチング素子(22a〜22d)を所定のタイミングでON/OFFさせる動作制御を行う。
本願発明においては、非接触電力伝送装置において送電装置としても受電装置としても機能させることができる安全な非接触電力伝送装置を提供するものである。安全とは、機器の部品の破損や、充放電可能な電源の不適切な使用を防止できることを意味する。機器の部品の破損が生じる原因としては、例えば共振系13、23が備えるコンデンサやコイルに過大な電圧がかかったり、過大な電流が流れたりすることでコンデンサやコイルが破損してしまうことがあげられる。また、コンデンサやコイル、充放電可能な電源および各種回路のいずれかが適切な温度から外れた状態での使用を継続すると、それらの破損が予測される。更には、充放電可能な電源は、非接触電力伝送装置が受電装置と機能する際に、過大な電流で電源への電力供給を行うのは安全とは言えない。非接触電力伝送装置が送電装置として機能するときに充放電可能な電源が過放電となる場合および受電装置として機能するときに充放電可能な電源が過充電となる場合は、充放電可能な電源の安全性に欠ける。
これらのことから、コイルの共振電圧の過大電圧、コイルの共振電流の過大電流、電力伝送装置内の-温度、充放電可能な電源への電力供給時の過大電流、充放電可能な電源の過大電圧からなる群の少なくとも一つの所定条件を検出し、その検出結果により非接触電力伝送装置の送電又は受電を遮断させるように、駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチングを制御する。この時、各スイッチング素子の電源側又はグランド側のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことで、非接触電力伝送装置の送電又は受電を遮断させることが出来る。また、このようにスイッチング素子を制御することで、共振を継続させた状態で送受電を遮断させることが出来るため、送受電を遮断した後にスムーズに送受電を再開させることが出来る。
本実施形態にかかる非接触電力伝送装置では、検出回路100、200の一例として、共振電流検出回路15、25とすることが出来る。共振電流検出回路15、25は、フルブリッジ回路12、22を構成するスイッチング素子において、下段のスイッチング素子に流れる電流を検出してもよい。例えば、共振電流検出回路15、25は、第1のスイッチング素子(12a、22a)と第2のスイッチング素子(12b、22b)とを接続したブリッジ回路の下段側のスイッチング素子(12b、22b)に流れる電流を検出するための第1の抵抗(15a、25a)と、第3のスイッチング素子(12c、22d)と第4のスイッチング素子(12d、22d)とを接続したブリッジ回路の下段のスイッチング素子(12d、22d)に流れる電流を検出するための第2の抵抗(15b、25b)とを有する構成とすることができる。
共振電流検出回路15、25では、第1の抵抗(15a、25a)と第2の抵抗(15b、25b)とで検出されたフルブリッジ回路の下段の2つのスイッチング素子を流れる電流の波形を、反転処理と合成処理などの適宜の処理を行って、送電共振系13、または、受電共振系23を流れる共振電流波形を得る。
共振電流検出回路15、25は、このようにして検出されたフルブリッジ回路12、22を流れる共振電流波形や、電流波形に基づいて得られた共振電圧の電圧値の情報を駆動制御回路14、24に伝達し、駆動制御回路14、24における動作制御のための情報とする。
なお、図2において、共振電流検出回路15、25は、フルブリッジ回路12、22におけるグランド16側に配置された第2のスイッチング素子(12b、22b)、および、第4のスイッチング素子(12d、22d)を流れる電流を検出するように、フルブリッジ回路12、22のグランド16側に電流検出のための抵抗(15a、25a、15b、25b)を配置した例を示して説明した。しかし、本実施形態において、共振電流検出回路15、25は、フルブリッジ回路12、22の電源11、21側のスイッチング素子(12a、22a、12c、22c)を流れる電流を検出する構成とすることができる。
ただし、この場合には電流検出用の抵抗をスイッチング素子(12a、22a、12c、22c)と電源11、21との間に設置する必要があり、信号変化は小さくとも抵抗出力自体に高い電圧が重畳されることになり、共振電流検出回路15、25を構成する電子部品として耐電圧が高い部品を使用する必要が生じる。例えば、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置が電気自動車のバッテリーに充放電するための電力を伝送する装置の場合では、電源電圧値が数百ボルトとなる場合があり、このような高電圧に耐える電子部品で共振電流検出回路15、25構成することはコスト高に繋がってしまう。このため、共振電流検出回路15、25は、フルブリッジ回路12、22におけるグランド16側のスイッチング素子(12b、22b、12d、22d)を流れる電流を検出する構成とすることがより好ましい。
このように共振電流検出回路15、25により検出された共振電流値に基づいて、共振系13、23のコイルの共振電流の過大電流を検出し、過大電流の検出結果に基づいて駆動制御回路14、24がスイッチング回路を構成する12、22を構成する各スイッチング素子12a〜12d、22a〜22dの電源側(12aと12c、22aと22c)又はグランド側(12bと12d、22bと22d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。このように制御することにより、共振系による送電を停止させることが出来るため、送電の継続により共振系の共振電流が増加し、過大な電流が流れてコイルが破損してしまうのを防ぐことが出来る。一方で、共振状態は継続させることができるので送受電を効率よく再開させることが出来る。
尚、共振電流の検出は、共振系の途中に電流検出用の抵抗を挿入して検出する手段(検出IC)や、カレントトランスを設けて検出する手段がある。しかし、非接触電力伝送装置の伝送出力が大きくなるとブリッジ回路に電力を供給する電源の電圧が高くなり、検出ICの定格電圧以上となることがある。更に、カレントトラストは応答性が低いことが問題になる。フルブリッジ回路におけるグランド側に抵抗を配置する、もしくはフルブリッジ回路の電源側に抵抗を配置するというシンプルな構成で、且つ高速で精度の高い共振電流の電流値の検出が可能になり、低コスト化や高性能化の観点から好ましい。
なお、例えば、高電圧側に共振電流検出回路15、25を動作させるための電源を別途設けるなどして、共振電流検出回路15、25を構成する電子部品の耐電圧を下げることもできるが、通常、駆動制御回路14、24は低電圧側に設置するため、電圧シフトや別電源の構成等を行う必要があり、コスト上昇や回路構成の複雑化に繋がってしまう。
図3は、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置における電力の送受電の状態を示すイメージ図である。
図3に示すように、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置を、送電装置10、および、受電装置20として用いて電力を送受電する場合は、送電装置10におけるコイルに図中矢印31として示す方向に電流が流れると、コイルに生じた磁界が受電装置20のコイルと鎖交し、この磁界を打ち消すように受電装置20のコイルに起電力が発生して、図中矢印32に示す方向に電流が流れる。このように送電装置10と受電装置20とを同一構成とした場合、送電と受電とでは鎖交する磁力線の向きに対して起電力の方向が逆向きとなるが、送電装置10の送電共振系13の共振コイル13aと受電装置20の受電共振系23の共振コイル23aとが磁気的に結合することで、送電装置10から受電装置20への非接触での電力伝送33が実現する。
[送電装置の動作]
次に、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置について、送電装置として用いる場合の動作を具体的に説明する。
図4は、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置を送電装置として用いた場合の構成を示す回路構成図である。
図4に示す送電装置10の構成は、図1,および、図2で説明したものと同じであり、電源11と、4つのスイッチング素子(12a、12b、12c、12d)からなるフルブリッジ回路12と、送電共振系13を構成する共振コイル13aと共振コンデンサ13bと、フルブリッジ回路12の各スイッチング素子(12a、12b、12c、12d)の動作を制御する駆動制御回路14と、フルブリッジ回路を流れる電流から送電共振系13を流れる共振電流を検出する共振電流検出回路15とを備えている。
4つのスイッチング素子12a、12b、12c、12dはいずれもMOSFETで構成されていて、駆動制御回路14の4つの端子A、B、C、Dから印加される信号がHighの時に、導通して電流を流す。また、図4に図示するように、MOSFETが備えるボディダイオードが、グランド16から電源11の側に電流が流れる向きに配置されている。
図4で示す送電装置10では、共振電流検出回路15として、フルブリッジ回路12のグランド16側に配置された2つのスイッチング素子12b、12dを流れる電流を検出する2つの抵抗15a、15bに加えて、反転合成回路として抵抗15c、15d、15e、15gとアンプ15f、電源15hとを備えていて、スイッチング素子12bを流れる電流を反転してスイッチング素子12dを流れる電流と合成することで、共振電流の検出電圧が端子Mに出力される。
この端子Mに出力される電圧は、共振系13のコイルの共振電流を検出し電圧変換した検出電圧である。つまり、反転合成回路もコイルの共振電流検出回路であり、検出回路100の一例としてとして機能させることが可能である。端子Mに出力される共振検出値が過大であると検出されると、その検出結果に基づいて駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは12aと12c)又はグランド側(ここでは12bと12d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、過大な電流が流れてコイルが破損してしまうのを防ぐことが出来る。一方で、共振状態は継続させることができるので送受電を効率よく再開させることが出来る。
共振系のコンデンサの電圧を検出する共振電圧検出回路を設けることが出来る。共振電圧検出回路は、検出回路100の一例として機能させることが可能である。共振電圧検出回路により検出された共振系のコンデンサの電圧が、過大電圧であると検出されると、その検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路を構成するスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは12aと12c)又はグランド側(ここでは12bと12d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、過大な電圧がかかってコイルが破損してしまうのを防ぐことが出来る。一方で、共振状態は継続させることができるので送受電を効率よく再開させることが出来る。共振電圧検出回路は、コンデンサの両端電圧を直接検出することでもよいが、共振電流から検出することも可能である。この場合、共振コンデンサの容量と共振電流からコンデンサに半周期分にわたってチャージされる電流量を求めて、コンデンサチャージされる最大電圧を検出し、検出電圧が閾値を超えたときに過大電圧であると検出する方法がある。
また、共振電流検出回路15として、2つのスイッチング素子12b、12dを流れる電流値は、共振系13のコイルの共振電流である。共振電流を2つの抵抗15a、15bで検出する。共振電流検出回路は、検出回路100の一例として機能させることが可能である。共振電流値が過大電流であると検出されると、その検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは12aと12c)又はグランド側(ここでは12bと12d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、過大な電流流れてコイルが破損してしまうのを防ぐことが出来る。一方で、共振状態は継続させることができるので送受電を効率よく再開させることが出来る。
過大電流であると検出する方法としては、予め閾値を決めておき、検出電流値が閾値を超えたときに過大電流であると検出する方法がある。
また、図4で示す送電装置10では、電源11とグランド16との間にパスコンとなるコンデンサ17を配置しており、送電共振系13を流れる共振電流は、通常は、交流抵抗成分の小さなコンデンサ17を経由して流れる。さらに、図4で示す送電装置10では、フルブリッジ回路12とグランド16との間に電源11から流出する電流を抵抗による電圧降下で検出するための電流検出用の抵抗18が配置されている。
電源11から流出する電流を検出する電流検出用抵抗18は、電流検出回路として機能する。電流検出回路は、検出回路100の一例として機能させることが可能である。電流検出回路により検出された電源からの電流値が過大電流であると検出されると、その検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路スイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは12aと12c)又はグランド側(ここでは12bと12d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、電源からの過大な電流が流れてコイルが破損してしまうのを防ぐことが出来る。一方で、共振状態は継続させることができるので送受電を効率よく再開させることが出来る。
また、電源11の電圧を検出する電源電圧検出回路を電源電圧を測定できるように設けることが出来る。電源電圧検出回路は、検出回路100の一例として機能させることが可能である。電源電圧検出回路により検出され電源の電圧が、過小電圧であると検出されると、その検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは12aと12c)又はグランド側(ここでは12bと12d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、電源が所謂過放電となる状態を防止することが出来るので、安全な条件で電力伝送装置を使用することが出来る。一方で、共振状態は継続させることができるので送受電を効率よく再開させることが出来る。
コンデンサ17と抵抗18とを備えることで、共振電流以外に送電装置10に流れる電流に基づいて、電源11から出力される電力を検出することができる。このため、実際に伝送される送電電力を検出することができ、適宜駆動制御回路におけるスイッチング回路の動作制御に利用することか可能となる。
なお、抵抗18は、電源11とフルブリッジ回路12との間に配置しても同様に送電電力を検出することができるが、高電圧系に配置することにより高い耐電圧が要求されることとなるため、図4に示したように、グランド側に配置することがより好ましい。また、パスコン17と、抵抗18とは本実施形態で説明する送電装置10において必須のものではない。
また、図面には不図示であるが、非接触電力伝送装置における破損を防止したい部品、例えば共振系のコイルや各種回路および電源について、温度検出回路による温度検出ができるようにすることが出来る。温度検出回路は、温度検出用サーミスタ等、公知の手段によって実現できる。温度検出回路は、検出回路100の一例として機能させることが可能である。温度検出回路により検出された温度が過大、又は過小と検出されると、その検出結果に基づいて駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは12aと12c)又はグランド側(ここでは12bと12d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、各種部品の破損を防止でき、また適切な温度範囲以外での送電を遮断することが出来る。一方で、共振状態は継続させることができるので送受電を効率よく再開させることが出来る。
温度の過大又は過小であると検出する方法としては、予め温度の上限値及び/又は下限値を決めておき、検出した温度が上限値及び/又は下限値の範囲内かどうかを検出する方法がある。
上述の通り、所定条件の検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは12aと12c)又はグランド側(ここでは12bと12d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。当該制御は、共振状態を継続させることができるので送受電を効率よく再開させることが出来る利点があるが、当該制御の間も電力を消費する。そこで、所定期間継続しても送受電の再開が行われないときは、非接触電力伝送装置の電源をオフとすることが出来る。これにより、電力の消費を極力減らすことが可能になる。
図4では、以下で行う動作説明で使用するため、上述した端子A〜D、端子Mの他に、フルブリッジ回路12の第1のスイッチング素子12aと第2のスイッチング素子12bとの中間部分に端子Eを、フルブリッジ回路12の第3のスイッチング素子12cと第4のスイッチング素子12dとの中間部分に端子Fを、送電共振系13の共振コイル13aと共振コンデンサ13bとの間に端子Gを、電流検出部15の第1の抵抗15aの電圧を示す端子Kと第2の抵抗15bの電圧を示す端子Lとを設けている。
また、以下の説明では、図中矢印で示したように、電源側からグランド側に流れる方向を共振電流H、I、Jの正の方向として説明する。
なお、図4において、実施線または点線と矢印で示すa〜dは、図6を用いて説明するPWM制御時にフルブリッジ回路12を流れる電流を示している。詳細は、図6の説明において説明する。
a.起動と共振電流の制御
図5は、本実施形態で説明する送電装置の電力伝送動作時における端子電圧波形と共振電流波形を示すタイミングチャートである。
図5において、横方向のマス目は動作のタイミングをラベル化して示すものである。また、縦方向のマス目は、印加される電圧においてはHigh(以下適宜「Hi」と表す)とLow(以下適宜「Lo」と表す)とのレベルを示し、共振電流や共振電圧ではその波形の高さ方向をラベル化して表したものである。なお、以下の説明に用いられる各タイミングチャートにおいても、図5と同様に、動作のタイミングと、印加電圧や共振電圧、共振電流の波形を示すこととする。
まず、a)起動タイミングで、駆動制御回路14がフルブリッジ回路12の第1のスイッチング素子12aと第4のスイッチング素子12dをON、第2のスイッチング素子12bと第3のスイッチング素子12cをOFFとして、端子電圧EをHi、端子電圧FをLoの状態とすると、送電共振系13を充電するように共振電流が流れ、共振コンデンサ13bが充電されると逆方向の電流が流れるため、共振電圧G、共振電流Iとして示す共振が始まる。
本実施形態で説明する送電装置では、このときの共振タイミングに応じて、さらに、端子Eと端子Fに印加する電圧を制御する。
具体的には、上記した起動を行った後に、図5中のb)駆動開始タイミング以降、共振電流Iの極性(+が正、すなわち図4に示す矢印Hの方向、−が負、矢印Hとは逆の方向)に応じて、駆動制御回路14から4つのスイッチング素子12a〜12dに印加される電圧を制御し、共振電流Iの極性が「正」である場合には、フルブリッジ回路12の第1のスイッチング素子12aと第4のスイッチング素子12dをON、第2のスイッチング素子12bと第3のスイッチング素子12cをOFFとして、端子電圧EをHi、端子電圧FをLoとする。一方、共振電流Iの極性が「負」である場合には、フルブリッジ回路12の第2のスイッチング素子12bと第3のスイッチング素子12cをON、第1のスイッチング素子12aと第4のスイッチング素子12dをOFFとして、端子電圧EをLo、端子電圧FをHiとする。
すなわち、図5における共振電流Iが0となる時点を検出して、そのタイミングで、駆動制御回路14の4つのゲートA〜Dを制御し、共振電流Iが正の値から負の値となる時に端子電圧FをHi、端子電圧EをLo、q共振電流Iが負の値から正の値となる時に端子電圧EをHi、端子電圧FをLoとする駆動を開始する。
このようにすることで、例えば、図5中、b)駆動開始タイミングとして示している時点では、端子電圧Fを電源電圧、端子電圧Eをグランド電位とすることで、端子Fが電源電圧分だけ上昇し、これに応じて共振コンデンサ13bのもう一方の端子Gの電位が2Vから3Vに上昇する。このとき、共振コイル13aの端子E側がグランド電位固定されるため、共振コイル13aの両端電圧は図5中に破線矢印として示す3Vの電位差がかかる。この電位差にしたがって、共振コイル13aには共振電流Iで示すように電流が流れ始める。この電流は共振コンデンサ13bの両端電圧が0となるまで増加を続け、0となった時点で共振コイル13aに流れる電流は最大となる。その後、共振コイル13aに蓄えられた磁界のエネルギーにより今度は共振コンデンサ13bを充電するので、共振電流Iが0となるまで共振コンデンサ13bの電位は下がりつつけ、端子Gの電位がー3Vまで低下する。
この時点で端子Eを電源電圧に、端子Fをグランド電位にするように駆動制御回路14からのゲート信号を制御すると、端子Fの電圧が電源電圧の分である1Vだけ低下し、これが共振コンデンサ13bを通じて端子Gに表れるので、4Vの長さの破線矢印のような電位差が共振コイル13aに印加される。従って、先ほどと同様に共振電流が流れ始め共振電圧自体は増大していく。
このような動作を継続し、送電共振系13に流れる共振電流Iを補う方向にフルブリッジ回路12から電流が流れこんで電力を送電共振系13に注入するため、送電共振系13での共振が増大していき、最終的には、コイルの抵抗等で消費される電力と注入される電力とが等しくなって共振が安定して継続される。上述したa)起動タイミングでの起動動作のように、端子電圧EをHiとするだけでは、送電共振系13に生じた共振は共振回路の抵抗成分によって次第に減衰してしまうが、駆動制御回路14でフルブリッジ回路12の各スイッチング素子12a〜12dのON/OFFを制御することで、送電共振系13での共振が増大したままで維持できる。
なお、本実施形態で説明する非接触電力伝送装置では、以上の動作は送受電共振系の総合的な共振特性のピーク点を保持するように駆動が開始され、その後発振が継続するので、いわゆる自励発振を行っている送電装置を構成する。
さらに詳細には、本実施形態の送電装置10において、送電共振系13での共振を維持するためにフルブリッジ回路12から送電共振系13に印加される電流は、送電共振系13を流れる共振電流Iに同期させて印加される。送電装置10と受電装置20とが電力伝送可能な状態で配置されていた場合には、送電共振系13での共振電流Iは、近接して配置されている受電装置20の受電共振系23と結合した状態での共振特性に応じて流れることになる。このため、本実施形態の送電装置10のように、起動タイミングで印加された電圧で励起された共振電流を測定し、この共振電流の極性の変化に応じて駆動制御回路14によってフルブリッジ回路13を制御して共振回路に印加された電流は、受電装置20の受電共振系23と結合した状態での共振特性に応じたものとなる。したがって、送電装置10と受電装置20との間隔や、送電装置10と受電装置20との間の異物の有無にかかわらず、本実施形態で示す送電装置10では、最適な状態で送電共振系13を共振させる自励発振を行うことができる。
なお、本実施形態の送電装置10では、共振電流検出回路15によってフルブリッジ回路12を流れる電流から送電共振系13の共振電流を検出して、その極性に応じてフルブリッジ回路12のスイッチング素子を制御するため、例えば、送電装置10と受電装置20との間隔が変化した場合や、送電共振系13と受電共振系23との間に異物が入ってきた場合などでも、その時の送電共振系13と受電共振系23との結合状態に応じた送電共振系13への電流印加のタイミングを変化させることができる。この結果、送電共振系13と受電共振系23との状態から、共振特性を測定して、送電共振系13の共振コイル13aや共振コンデンサ13bの特性をあらかじめ設定する必要がなく、また、送電共振系13と受電共振系23との結合状態に対応させて共振系の回路特性を変化させるために、送電コイル13aや送電コンデンサ13bの回路特性を可変とする必要がない。この結果、本実施形態で説明する送電装置10では、送電共振系13の回路構成を簡素化でき、結果として送電装置10の小型化や低コスト化を実現することができる。
送電共振系13と受電共振系23とが磁気的に結合している状態において、例えば、受電装置20の負荷が低下した場合には、受電側の共振電圧が上昇し、結果として送電共振系13の共振電圧も上昇する。このように、共振電圧が上昇した状態で放置すると、さらに共振電圧が上昇し、共振系回路を構成する部品の耐電圧を超えてしまう事態が生じる場合がある。
このため、本実施形態で示す送電装置10においては、送電共振系13の端子Gに現れる共振電圧を検出する、不図示の共振電圧検出回路を設け、その検出電圧が過大となった場合に、フルブリッジ回路12から送電共振系13に注入する電力の供給を休止したりあるいは、共振電流Iとは逆方向の電流を流すようにしたりして、共振電圧を低下させることができる。
例えば、共振電流Iの極性が負、すなわち、共振電流Iが端子Fから端子Eに向かって流れているタイミングで、端子電圧Eがグランド電位(便宜上「負」と称する)、端子電圧Fが電源電圧(便宜上「正」と称する)となるように、フルブリッジ回路12のスイッチング素子12bと12cとがONとなり、スイッチング素子12aと12dとがOFFとなるように制御する。また、共振電流Iの極性が正、すなわち、共振電流Iが端子Fから端子Eに向かって流れているタイミングで、端子電圧Eが正、端子電圧Fが負となるように、フルブリッジ回路12のスイッチング素子12aと12eとがONとなり、スイッチング素子12bと12cとがOFFとなるように制御する。
このように駆動制御回路を動作させることで、送電共振系13には共振方向とは逆方向の電流が印加されることとなり、共振電圧と共振電流とを減少させる作用が働く。
このため、本実施形態にかかる送電装置10では、共振電流検出回路15において検出されたフルブリッジ回路12に流れる共振電流に基づいて、駆動制御回路14でフルブリッジ回路12のスイッチング素子(12a〜12d)のON/OFFを制御することで、共振電圧が過大となることによって共振回路を構成する回路が耐電圧を超えて破損してしまう事態を効果的に回避することができる。
なお、送電装置10において、共振電圧と共振電流が増大したことに対応して、駆動制御回路14による共振電圧を低減する動作が行われている状態において、受電装置20における負荷が増大して、共振電圧の値が小さくなった場合には、共振電流検出回路15でこれを検出して、上述の自励発振時のように、フルブリッジ回路12から送電共振系13に流れる電流を増大させる方向の動作制御を行う。このように制御することで、送電共振系13に印加される共振電圧の大きさを所定の電圧値に維持することができる。
b.PWM制御
次に、本実施形態で説明する送電回路における、電力制御や省電力のための動作について説明する。
図6は、本実施形態にかかる送電装置において、フルブリッジ回路のスイッチング素子に印加する電圧幅を制御するPWM制御を説明するための図である。
図6では、駆動制御回路14のA、B、C、D4つの端子電圧それぞれのHiとLoの状態、また、共振電流検出回路15の第1の抵抗15aを流れる電流Iと、第2の抵抗15bを流れる電流J、さらには、反転合成回路において作成される検出電流Iの反転信号と、これに検出電流Jとを合成した反転合成端子Mでの電圧波形も併せて表示している。
図6において、図中左側の部分では、送電共振系13での共振電流を維持する方向にフルブリッジ回路を動作させる前述の自励発振動作が行われている。
このようにして、自励発振動作によって送電共振系13が安定して動作している状態において、駆動制御回路14からフルブリッジ回路12の4つのスイッチング素子12a〜12dに印加される電圧の印加時間を変更するPWM制御を行う。
なお、PWM制御時の共振電流の流れを説明するために、図4に、電流の流れる方向を符号a〜dとして示した。図4に示した符号aから符号dにおいては、矢印Hと同一方向に共振電流が流れる場合の電流の向きを塗りつぶした矢印で、反対方向の共振電流の場合を塗りつぶさない矢印で示している。また、スイッチング素子がONの状態にある場合の電流の流路を実線で、OFFの状態での経路を破線で示すことにより、共振電流の向きとスイッチング素子の状態を同時に表示できるようにしている。
したがって、スイッチング素子がOFFの状態での送電共振系13で共振した正方向の電流は、符号bとして表しており、スイッチング素子12cとスイッチング素子12bとのボディダイオードを通じて流れる。また、第1のスイッチング素子12aと第4のスイッチング素子12dをOFF、第2のスイッチング素子12bと第3のスイッチング素子12cをONとした状態で、送電共振系13で共振した逆方向電流は、符号cで示した経路と向きに流れる。
図6では、一例として、各スイッチング素子のゲートに印加されるHi電圧のパルス幅を1/2にするPWM制御を行った状態を示す。なお、図6では、ゲートAからゲートDの各端子に印加する電圧がPWM制御によって減少していることが明確になるように、PWM制御されていない状態の電圧印加期間を点線で示している。
図6中、a)PWM制御として示しているタイミング以降で、PWM制御によりスイッチング素子aとスイッチング素子dへの印加電圧がHiからLoになり、これに伴って端子電圧EがPWM開始前のHi状態からLo状態へ、端子電圧FがLo状態からHi状態へと変化する。なお、このとき、端子電圧EがLo状態よりさらに低い電圧に、端子電圧がHi電圧よりもさらに高い電圧になっているのは、スイッチング素子として用いているMOSFETの寄生ダイオードの両端電圧分が重畳することが原因である。
スイッチング素子に印加する動作電圧をPWM制御することによって生じる端子電圧Eと端子電圧Fの挙動は、共振電流が逆極性のスイッチング素子12bと12cとがON状態における場合も逆方向ではあるが同様に生じる。
このように、フルブリッジ回路を構成する各スイッチング素子に印加する駆動電圧をPWM制御した場合、フルブリッジ回路12を構成するスイッチング素子のうち、図中左側に示したスイッチング素子の直列接続体の下段部のスイッチング素子を流れる共振電流Iと、図中右側に示した第2の直列接続体の下段部のスイッチング素子を流れる共振電流Jとは、スイッチング素子をPWM制御して動作させることで、Hi状態とLo状態の切り替え時に大きく変動する。しかし、本実施形態の送電装置では、反転合成回路において、共振電流Iと共振電流Jとを反転合成して端子電圧Mを得ているため、図6に示すように、PWM制御を行っていない場合と同様に共振電流を把握することができる。
このため、送電装置と受電装置との間で電力の伝送が行われている状態で、常に磁気結合している状態の共振電流を把握でき、前述の自励発振制御や共振電圧を低減する制御を行うことができる。
PWM制御を行うことで、送電装置における送電電力を低減することができるため、低消費電力での非接触電力伝送が実現できる。また、PWM制御を行うことで、駆動制御回路でのロジック変更によって共振電圧の大きさを調整できるため、従来の非接触電力伝送装置で用いられていたDC/DCコンバータによりフルブリッジ回路に印加する電圧自体を変更する、PAM(Pulse Amplitude Modulation)制御を用いる必要がなくなり、送電装置の小型化と低コスト化を実現することができる。
c.送電休止(遮断)と回収動作
図7は、本実施形態にかかる送電装置において、送電を休止(遮断)する動作を行う際の電流の流れを説明するための送電装置の回路構成図である。
図8は、本実施形態にかかる送電装置で、共振電流の極性に応じて送電を休止(遮断)する動作を説明するためのタイミングチャートである。
前述した自励発振動作、PWM制御動作によって、送電装置から受電装置へと電力を伝送している状態において、いったん送電を休止(遮断)する場合には、図8のタイミングチャートでb)休止(遮断)追加タイミングとして示したように、駆動制御回路14における、ゲート端子Bとゲート端子DとをHi、ゲート端子Aとゲート端子CとをLoとする動作制御を行い、フルブリッジ回路12においてグランド16側に配置されたスイッチング素子12bとスイッチング素子12dとをON、電源11側に配置されたスイッチング素子12aとスイッチング素子12cとがOFFとなるように制御する。
このようにすることで、図7に、矢印aと矢印cとして示したような、フルブリッジ回路12のグランド側の素子と送電共振系との間でのみ共振電流Hが流れる状態となる。本実施形態の送電装置では、共振電流検出回路15でフルブリッジ回路12のグランド側の2つの素子を流れる電流Iと電流Jとを把握する構成としているため、図7に示す矢印aと矢印cの共振電流を図8に示す共振電流I、共振電流Jとして把握することができる。
このとき、本実施形態にかかる送電装置10では、第1の抵抗15aを流れる電流Iを反転させて第2の抵抗15bを流れる電流Jと合成しているため、図8に示すように、端子Mでの電圧値は、自励発振制御やPWM制御を行っていた時の電圧値の2倍とはなるものの、その位相、すなわち共振電流が0となるタイミングは同じである。このため、休止(遮断)状態から送電を再開する場合において、共振電流検出回路15で検出された共振電流のタイミングに応じてフルブリッジ回路12の各スイッチング素子のON/OFF制御を、休止(遮断)状態となる前の動作タイミングと同じタイミングで直ちに再開することができる。
なお、本実施形態の送電装置では、共振電流検出回路などの耐電圧を低く抑えるためにフルブリッジ回路を構成するグランド側のスイッチング素子を流れる電流を検出する構成としているが、前述したように、フルブリッジ回路を構成する電源側のスイッチング素子を流れる電流値を共振電流検出回路で検出する構成とすることも可能である。このように、共振電流検出回路を、フルブリッジ回路の電源側のスイッチング素子(A、C)を流れる電流を検出する構成とした場合には、送電休止(遮断)動作を行う場合には、駆動制御回路の端子Aと端子CとをHi、端子Bと端子DとをLoとして、送電共振系の共振電流Hがフルブリッジ回路12の電源側を流れるように制御する。このようにすることで、休止(遮断)状態における共振電流波形の把握を継続でき、休止(遮断)状態から直ちに送電状態へと復帰することができる。
図9に、本実施形態にかかる送電装置において、休止(遮断)状態に入った後に、送電共振系に残留した電力を回収する受電モードでの動作をする場合のタイミングチャートを示す。
前述したように、本実施形態で説明する送電装置10では、電源11に二次電池が使用される場合があり、この場合に、送電装置10からの送電が停止した後に、送電共振系13に残っていた電力が回収できれば、その分電源11としての二次電池の電力を回復することができる。
図9に示したように、休止状態ではフルブリッジ回路12においてグランド側の2つのスイッチング素子12bと12dのみをON状態とするように端子電圧BとDをHi、端子電圧AとCとをLoとしていたが、その後、共振電流が「正」の時に、端子電圧BとCをHi、端子電圧AとDとをLo、共振電流が「負」の時に、端子電圧AとDをHi、端子電圧BとCとをLoに制御することで、送電状態とは逆の位相でフルブリッジ回路12に電流が流れるため、受電モードでの動作が行われる。
本実施形態にかかる送電装置では、フルブリッジ回路の2つのグランド側のスイッチング素子に流れる電流を反転合成して共振電流検出回路の出力となるため、図9に示すように、受電モードの場合でも、共振電圧の検出波形は、送電モードや休止(遮断)モードの場合と同じである。このため、本実施形態にかかる送電装置では、送電モード、休止(遮断)モード、受電モードのモード間の切り替えを円滑に行うことができる。
なお、この受電モードにおける、共振電流の位相に対する駆動制御回路14からのフルブリッジ回路12の各スイッチング素子への動作パルスの制御を送電モードから反転させた状態は、後述する受電装置20でのフルブリッジ回路22の受電動作時の制御と同じとなる。
このように、本実施形態で説明した送電装置では、フルブリッジ回路の2つのグランド側のスイッチング素子の電流を検出して、検出された電流の位相に応じてフルブリッジ回路の各スイッチング素子のON/OFFタイミングを切り替える。このようにすることで、受電装置と磁気結合している状態の共振波形に合わせて、送電装置におけるフルブリッジ回路の各スイッチング素子のONとOFFとを制御できるため、送電コイルと受電コイルとの間の距離の変化や異物の有無などによる共振電流波形の変動に自動的に追従して、送電ロスの少ない電力伝送をすることができる。
また、受電共振系と磁気結合している状態の送電共振系の共振電圧の大きさを把握できることから、共振電圧が過大となる前に共振電力を低減することができ、例えば、受電装置側で負荷の低減などが生じた場合でも、送電共振系の回路が耐電圧を超えた過大な電圧によって破損することを効果的に防止することができる。
また、共振電流検出回路によって、フルブリッジ回路のグランド側のスイッチング素子を流れる電流をそれぞれ検出することで、送電電力を低下させるPWM制御や休止(遮断)モードでの制御、受電モードでの制御を、連続した同じ位相の共振電圧波形に基づいて行うことができる構成を低コストで実現することができる。
[受電装置の動作]
次に、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置について、受電装置として用いる場合の動作を具体的に説明する。
図10は、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置を受電装置として用いた場合の構成を示す回路構成図である。
本実施形態で説明する非接触電力伝送装置では、図1、図2に示したように、同じ構成の装置を送電装置としても受電装置としても使用することができる。図10では、図2において説明した受電装置の各構成の名称と符号とをそのまま用いて説明するが、実際に受電装置20を構成する回路部品は、駆動制御回路のロジック部分以外、図4で示した送電装置の構成と同じである。言い換えれば、駆動制御回路のロジック部分に、送電装置のものと受電装置のものとの双方を備えこれを適宜切り替えることで、一つの非接触電力伝送装置を送電装置としても、受電装置としても使用することができる。
図10に示す、本実施形態にかかる受電装置20の構成は、図1、および、図2で説明したものと同じであり、電源21と、4つのスイッチング素子(22a、22b、22c、22d)からなるフルブリッジ回路22と、受電共振系23を構成する共振コイル23aと共振コンデンサ23bと、フルブリッジ回路22の各スイッチング素子(22a、22b、22c、22d)の動作を制御する駆動制御回路24と、フルブリッジ回路を流れる電流から受電共振系23を流れる共振電流を検出する共振電流検出回路25とを備えている。
4つのスイッチング素子22a〜22dがいずれもMOSFETで構成されていること、駆動制御回路24の4つの端子A〜Dから印加される信号がHighの時に、スイッチング素子が導通すること、図10に示すように、グランド26から電源21の側に電流が流れる向きにMOSFETのボディダイオードが配置されていることも図4の送電装置と同様である。さらに、共振電流検出回路25の構成も送電装置10の共振電流検出回路15と同じであり、フルブリッジ回路22のグランド26側に配置された2つのスイッチング素子22b、22dを流れる電流を検出する2つの抵抗25a、25bと反転合成回路を備えていて、反転合成された共振電流波形から共振電圧が端子Mに出力される。
この端子Mに出力される電圧は、共振系23のコイルの共振電流の検出電圧である。つまり、反転合成回路がコイルの共振電流検出回路であり、検出回路200の一例としてとして機能させることが可能である。端子Mに出力される共振電流値が過大電流であると検出されると、その検出結果に基づいて駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは22aと22c)又はグランド側(ここでは22bと22d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、過大な電流が流れてコイルが破損してしまうのを防ぐことが出来る。
過大電圧であると検出する方法としては、予め閾値を決めておき、検出電圧が閾値を超えたときに過大電圧であると検出する方法がある。
また、共振電流検出回路25として、2つのスイッチング素子22b、22dを流れる電流値は、共振系23のコイルの共振電流である。共振電流を2つの抵抗25a、25bで検出する。共振電流検出回路は、検出回路200の一例として機能させることが可能である。共振電流値が過大電流であると検出されると、その検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは22aと22c)又はグランド側(ここでは22bと22d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、過大な電流流れてコイルが破損してしまうのを防ぐことが出来る。
また、共振系のコンデンサの電圧を検出する共振電圧検出回路を設けることが出来る。共振電圧検出回路は、検出回路200の一例として機能させることが可能である。共振電圧検出回路により検出された共振系のコンデンサの電圧が、過大電圧であると検出されると、その検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路を構成するスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは22aと22c)又はグランド側(ここでは22bと22d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、過大な電圧がかかってコイルが破損してしまうのを防ぐことが出来る。共振電圧検出回路は、コンデンサの両端電圧を直接検出することでもよいが、共振電流から検出することも可能である。この場合、共振コンデンサの容量と共振電流からコンデンサに半周期分にわたってチャージされる電流量を求めて、コンデンサチャージされる最大電圧を検出し、検出電圧が閾値を超えたときに過大電圧であると検出する方法がある。
なお、図10で示すように、受電装置でも電源21とグランド26との間にパスコンとなるコンデンサ27を配置しており、受電共振系23を流れる共振電流は、通常は、交流抵抗成分の小さなコンデンサ27を経由して流れる。また、上述した送電装置10と同様に、フルブリッジ回路22とグランド26との間に電源21に流入する電流を抵抗による電圧降下で検出するための電流検出用の抵抗28が配置されていて、共振電流以外に受電装置20に流れる電流に基づいて、電源21から出力される電力を検出することができ、例えば電源21として用いられる二次電池に充電された電力や、負荷回路で消費された電力を検出することができる。なお、送電装置10と同様に、抵抗28は、電源21とフルブリッジ回路22との間に配置してもよく、また、パスコン27と、抵抗28とは本実施形態で説明する受電装置20において必須のものではない。
電源21に流入する電流を検出する電流検出用抵抗28は、電流検出回路として機能させることが出来る。そして、電流検出回路は、検出回路200の一例として機能させることが可能である。電流検出回路により検出された電源への電流値が過大電流であると検出されると、その検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路スイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは22aと22c)又はグランド側(ここでは22bと22d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、電源へ過大な電流が流れてることを防ぐことが出来るので、安全な条件で電力伝送装置を使用することが出来る。
これらは電源が単純に二次電池とした場合には、これらの過大電流は過充電電流に相当し、送電側の場合では過放電電流に相当するので、これらを防止することは、二次電池に対する発熱、発火、寿命等の点から重要である。
また、電源21の電圧を検出する電源電圧検出回路を電源電圧を測定できるように設けることが出来る。電源電圧検出回路は、検出回路200の一例として機能させることが可能である。電源電圧検出回路により検出され電源の電圧が、過大電圧であると検出されると、その検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路スイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは22aと22c)又はグランド側(ここでは22bと22d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、電源へ過大な電圧がかかる所謂過充電となる状態を防止することが出来るので、安全な条件で電力伝送装置を使用することが出来る。
更に、図面には不図示であるが、非接触電力伝送装置における破損を防止したい部品、例えば共振系のコイルや各種回路および電源について、温度検出回路による温度検出ができるようにすることが出来る。温度検出回路は、温度検出用サーミスタ等、公知の手段によって実現できる。温度検出回路は、検出回路200の一例として機能させることが可能である。温度検出回路により検出された温度が過大、又は過小と検出されると、その検出結果に基づいて駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは22aと22c)又はグランド側(ここでは22bと22d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。これにより、各種部品の破損を防止でき、また適切な温度範囲以外での送電を遮断することが出来る。
温度の過大又は過小であると検出する方法としては、予め温度の上限値及び/又は下限値を決めておき、検出した温度が上限値及び/又は下限値の範囲内かどうかを検出する方法がある。
上述の通り、所定条件の検出結果に基づいて、駆動制御回路がスイッチング回路を構成する各スイッチング素子の電源側(ここでは22aと22c)又はグランド側(ここでは22bと22d)のいずれかのスイッチング素子のみをONとする制御を行うことが出来る。一方、当該制御は共振状態は継続させることができるので送受電を効率よく再開させることが出来る利点があるが、当該制御の間も電力を消費する。そこで、所定期間継続しても送受電の再開が行われないときは、非接触電力伝送装置の電源をオフとすることが出来る。これにより、電力の消費を極力減らすことが可能になる。
なお、以下で行う動作説明で使用するため、上述した端子A〜D、端子Mの他に、端子E、端子F、端子G、端子Kと端子Lとを、送電装置と同様に設ける。また、共振コイル23aに流れる共振電流が矢印Hの方向の場合や、電流I、電流Jが電源側からグランド側に流れる方向を共振電流H、I、Jの正の方向として説明する。
さらに、図10には、受電共振系23で受電された受電電流を整流回路として機能するフルブリッジ回路22で整流する際の電流の流れを符号a〜dとして示す。図10に示す受電装置10で流れる電流a〜dは、送電装置を流れる電流として図4に示した電流a〜dの電流方向とスイッチング素子の状態とに対応させて示している。すなわち、共振コイル23aに矢印Hの方向に電流が流れる場合は塗りつぶした矢印で、逆方向に流れる場合は塗りつぶさない矢印で示し、さらに、各スイッチング素子がすべてOFFの場合の電流の経路を破線で、スイッチング素子を駆動している場合の電流の経路を実線で示す。
受電装置20ではスイッチング素子22a〜22dのボディダイオードを利用して検波している為、電流aとして示した経路は、送電装置10のものとは異なっている。
a.同期整流制御動作
図11は、本実施形態で説明する受電装置の電力伝送動作時における端子電圧波形と共振電流波形を示す図である。
図11に示すように、受電装置20においては、送電装置10から電力伝送が開始される状態で、フルブリッジ回路22を構成する4つのスイッチング素子の動作電圧はすべてLoとなっている。
このとき、端子Eと端子Fには、共振電圧波形、共振電流波形の位相に応じてHiとLoとが変化する電圧が印加される。この共振電圧波形には、一例として端子E電圧に符号b)、符号e)として示されるように、スイッチング素子22a〜22dそれぞれのボディダイオード分の電圧降下が重畳される。
これに対し、図11においてa)同期整流追加タイミングとして記載しているように、共振電流波形が「負」の時に、駆動制御回路24の端子Aと端子DとをHi、端子Bと端子CとをLoと制御することで、ボディダイオードを通らずにスイッチング素子本体を電流が流れるようになって、端子Eと端子Fとで検出する電圧波形からボディダイオード分の電圧降下によって生じていた波形上の膨らみがなくなって(図中、c、f)、図中d、gとして示すように矩形状のきれいな整流波形が得られる。
このように、本実施形態にかかる受電装置20において、受電共振系23に流れる共振電流の位相に同期して整流回路として機能するフルブリッジ回路22のスイッチング素子を動作させることで、ボディダイオードによる電圧降下分がなくなって、より高い効率で共振電圧を直流電圧に整流することができる。
なお、図11に示すように、反転合成回路で検出される反転合成後の端子Mの電圧波形は、図6に示した送電装置10の反転合成回路の端子Mの電圧波形と同じ位相の波形となる。ここで、図6と図11とを比較すると、送電装置10のフルブリッジ回路12と、受電装置20のフルブリッジ回路22のそれぞれのスイッチング素子(12a〜12d、22a〜22d)に印加される駆動電圧は、位相が180度ずれた反転した状態の位相となっていることがわかる。このように、本実施形態にかかる非接触電力伝送装置では、送電装置と受電装置とにおいて、両者の共振系が結合して生じる共振波形に対して、逆の極性でフルブリッジ回路を構成する4つのスイッチング素子のHi/Loを切り替えることで、より高い効率での電力伝送ができることがわかる。
b.整流休止時の動作と送電動作
図12は、本実施形態にかかる受電装置において、送電装置から送電された電力の整流動作を休止する電流の流れを説明するための受電装置の回路構成図である。
図13は、本実施形態にかかる受電装置で、受電共振系で受電した電流の整流を休止する動作を説明するためのタイミングチャートである。
例えば受電装置20の電源21が二次電池であって、受電共振系13で受け取った電力を用いて二次電池を充電する場合において、二次電池の充電容量が増大して受電共振系23から取り出す電力が小さくなってくると、受電共振系23の共振コイル23aや共振コンデンサ23bの共振電圧が上昇する。この場合、受電共振系23から電源21側への整流を休止させる必要がある。
このような場合には、図13に示すように、駆動制御回路24によってゲート端子Bとゲート端子DとをHi、ゲート端子Aとゲート端子CとをLoとする動作制御を行い、フルブリッジ回路22においてグランド26側に配置されたスイッチング素子bとスイッチング素子dとをON、電源21側に配置されたスイッチング素子aとスイッチング素子cとがOFFとなるように制御する。
このようにすることで、図12に、矢印aと矢印cとして示したような、フルブリッジ回路22のグランド側の素子と受電共振系23との間でのみ共振電流Hが流れる状態となる。本実施形態の送受装置では、共振電流検出回路25でフルブリッジ回路22のグランド側の2つの素子を流れる電流Iと電流Jとを把握する構成としているため、図12に示す矢印aと矢印cの共振電流を、図13に示す共振電流I、共振電流Jとして把握することができる。
このとき、本実施形態にかかる受電装置20では、第1の抵抗25aを流れる電流Iを反転させて第2の抵抗25bを流れる電流Jと合成しているため、図13に示すように、端子Mでの電圧値は、通常の受電や同期整流を行っていた時の電圧値の2倍となるものの、その位相、すなわち共振電流が0となるタイミングは同じである。このため、休止(遮断)状態から受電を再開する場合において、共振電流検出回路25で検出された共振電流のタイミングに応じてフルブリッジ回路22の各スイッチング素子のON/OFF制御を、休止(遮断)状態となる前の動作タイミングで直ちに再開することができる。
なお、フルブリッジ回路を構成する電源側のスイッチング素子を流れる電流値を検出回路で検出する構成としている場合には、駆動制御回路の端子Aと端子CとをHi、端子Bと端子DとをLoとして、受電共振系の共振電流Hがフルブリッジ回路22の電源側を流れるように制御することで、休止(遮断)状態における共振電流波形を継続して把握でき、休止(遮断)状態から直ちに受電状態へと復帰することができることは、前述の送電装置の場合と同様である。
図14に、本実施形態にかかる受電装置において、休止(遮断)状態に入った後に、受電共振系に残留した電力を送電装置側へと送電する送電モードでの動作をする場合のタイミングチャートを示す。
前述したように、本実施形態で説明する送電装置では、電源11に二次電池が使用される場合があり、この場合に、送電装置からの送電が停止した後に、受電装置の受電共振系に残っていた電力を送電装置へと送電することで、送電装置の電源11を構成する二次電池の電力を回復することができる。
図14に示したように、休止(遮断)状態ではフルブリッジ回路12においてグランド26側の2つのスイッチング素子12bと12dのみをON状態とするように端子電圧BとDをHi、端子電圧AとCとをLoとしていたが、その後、共振電流が「正」の時に、端子電圧AとDをHi、端子電圧BとCとをLo、共振電流が「負」の時に、端子電圧BとCをHi、端子電圧AとDとをLoに制御することで、受電装置を送電装置として動作させて、受電装置側から送電装置側への電力の伝送を行うことができる。
図9を用いて説明した送電装置の場合と同様に、本実施形態にかかる受電装置では、フルブリッジ回路の下段の2つのスイッチング素子に流れる電流を反転合成して共振電流検出回路の出力としているため、図14に示すように、受電装置における送電モードの場合でも、共振電圧の検出波形は、受電モードでの同期整流動作時や休止(遮断)モードの場合と同じである。このため、本実施形態にかかる受電装置では、受電モード、休止(遮断)モード、送電モードのモード間の切り替えを円滑に行うことができる。
なお、この受電装置における送電モードでの駆動制御回路24からのフルブリッジ回路22の各スイッチング素子への動作電圧パルスの制御状態は、前述した送電装置10でのフルブリッジ回路12の動作制御と同じとなる。
このように、本実施形態で説明した受電装置では、送電装置として用いられる際に送電共振系への電流の流れを制御するフルブリッジ回路の各スイッチング素子が有するボディダイオードを用いて、受電共振系の受電電流を全波整流して直流電流に変換することができる。
さらに、受電共振系の共振電流の位相に応じてフルブリッジ回路を構成するスイッチング素子のON/OFFを制御することで、スイッチング素子のボディダイオード分による電圧降下を回避できる同期整流を行うことができ、高い受電効率での受電を実現することができる。
また、共振電流検出回路によって、フルブリッジ回路のスイッチング素子のグランド側の2つのスイッチング素子を流れる電流をそれぞれ検出することで、受電動作を休止(遮断)させる休止(遮断)モードでの制御、受電装置から送電装置側へと電力を伝送する送電モードでの制御を、連続した同じ位相の共振電圧波形に基づいて制御する構成を、低コストで実現することができる。
[双方向送受電装置としての利用]
以上説明したように、本実施形態で説明した非接触電力伝送装置は、同じ構成の装置を送電装置としても受電装置としても使用することができるので、一対の装置間での双方向の非接触電力伝送を行うことができる。
例えば、図15に示すように、2つの非接触電力伝送装置41と42とを用いて、家庭に備えられた、例えば太陽光パネル45によって発電された電力を貯める蓄電池43から電気自動車に搭載された二次電池44に電力を伝送することができる。一方、例えば地震などの災害時に電力会社からの送電が停止した場合には、自動車に搭載された二次電池44を充電した方向とは反対に、装置42から装置41側へと電力を伝送して、太陽光パネル45から供給される電力と併せて、自動車の二次電池44に蓄えられていた電力を、家庭内の電気機器を動作させる電源として活用することができる。
また、2つの非接触電力装置間での電力の伝送ではなく、3つ、またはそれ以上の非接触電力伝送装置の間での電力伝送を用いる形態としても、本実施形態で説明した非接触電力伝送装置を利用することができる。例えば、潜水艦やヘリコプターなどに搭載される電力伝送装置として本願で開示する非接触電力伝送装置を採用することで、基地では、他の非接触電力伝送装置から電力を受け取る受電装置として動作させ、その後、海底や山頂などの到達することが困難な場所にある機器の動作電源に接続された受電装置に電力を伝送する送電装置として活用することができる。
なお、上記の実施形態では、本願で開示する非接触電力伝送装置について、送電装置として用いられる場合と、受電装置として用いられる場合がある双方向の非接触電力伝送装置として説明した。
しかし、本実施形態で説明した、電源と、フルブリッジ回路と、共振系と、駆動制御回路と、共振電流検出回路とを備えた構成は、それぞれ、送電装置単独として、また、受電装置単独としての様々な動作制御を行うことができるという格別な作用効果を奏するものである。
このため、本願で開示する非接触電力伝送装置は、双方向に電力を伝送できる電力伝送装置としてのみではなく、送電のみを行う送電装置として、または、受電のみを行う受電装置として、それぞれ好適に使用することができる。
また、上記実施形態では、送電装置として、自励発振制御、共振電流を増減させる制御、PWM制御、休止(遮断)制御、回復制御という駆動制御回路によって行われるすべての動作制御が行われるものを例示したが、本願で開示する非接触電力伝送装置を送電装置として用いる場合に、これらすべての制御を行うものとする必要は無い。上述した各種の制御の内の、一部のみの動作を行う送電装置として実現できることは言うまでも無い。
同様に、本願で開示する非接触電力伝送装置を受電装置として用いる場合にも、上述した、同期整流制御、休止(遮断)制御、受電装置からの送信制御のすべての動作制御が行われるものには限られず、これらの動作制御の内の一部のみの動作を行う受電装置として実現することができる。
なお、上記実施形態では、スイッチング回路の例としてMOSFETをスイッチング素子として用いたフルブリッジ回路を例示して説明を行った。スイッチング回路としては、上述のMOSFETの他にも、他のトランジスタ素子やIGBTなど、従来電源回路のスイッチング素子として使用されている各種の素子を用いることができる。
なお、本願で開示する非接触電力伝送装置では、受電装置として受電電流を整流する必要があるため、MOSFETのようなボディダイオードを有している素子を用いることが好ましい。例えば、IGBTなどのように、ボディダイオードを備えていないスイッチング素子を用いる場合には、スイッチング素子に並列に、グランド側から電源側への方向にのみ電流を流すようにダイオードを追加配置する。また、MOSFETをスイッチング素子として用いる場合を含めて、ボディダイオードの抵抗成分が大きい場合には、より抵抗成分の小さなダイオードをスイッチング素子に並列に接続することが、装置の低消費電力化を図る上で好ましい。
また、スイッチング回路としては、上記例示したフルブリッジ回路に限られず、ハーフブリッジ回路を用いることも可能である。ただし、ハーフブリッジ回路を備えた非接触電力伝送装置では、送電装置として用いた場合に、例えば自励発振動作などはそのままで対応可能であるが、PWM制御を行うと共振電流検出回路で検出される共振電流が半周期分しか得られなくなるため、残りの半周気分の共振電流波形を反転合成して作成するなどの信号処理が必要となる場合がある。また、受電装置として用いた場合には、受電電流の整流が半波整流となるために、フルブリッジ回路をスイッチング回路として全波整流を行う場合と比較すると受電効率が低下する。
なお、複数のスイッチング素子からなるスイッチング回路の回路構成としては、上述したフルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路などのいわゆるブリッジ接続構成のものには限られず、複数のスイッチング素子を個別に制御して送電共振系に印加する電流の方向を変更でき、かつ、受電装置として用いた場合に共振電流を整流できる構成であれば、他の回路構成を採用することも可能である。
更に一対の本願発明の電力伝送装置を一方を送電装置、他方を受電装置として利用する場合に、送電装置の電源スイッチを取り付け、スイッチオンで送電を開始した後、遮断動作が継続する場合、相手側の電池が満充電となったと判断して送電動作を停止して電源スイッチをオフとしてもよい。
これは、受電装置側が満充電でこれ以上の電力が必要としなくなった場合に、遮断モードとすることにより、送電側の送電電力の行き場がなくなり送電側の共振電圧が上昇して遮断モードが継続することになり、この場合は電源スイッチをオフとすることが妥当であり、この一連の動作により、特に、通信による送受電制御を行わなくとも、本願発明の構成により、送受電制御が可能となるメリットがあり、簡単な構成で送受電装置を構成できる。もちろん、双方向に電力伝送が可能であるので、充電された装置を送電装置として別の受電装置に向けて電力伝送を行うことにより、本願発明によって、電力のやり取りができる装置として構成し利用できることも言うまでもない。