JP2020150463A - フィルタ - Google Patents

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雄介 上道
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Abstract

【課題】温度変化に伴う特性変化を補償するフィルタを実現する。【解決手段】バンドパスフィルタ(1,2)は、一対の導体層(6,6’,7,7’)が両面に設けられ、ポスト壁(11〜16,21〜25,61〜63,71〜73)が内部に設けられた基板(5,5’)を有するポスト壁導波路であって、電磁気的に結合した複数の共振器(102〜104、201〜205)として機能するポスト壁導波路を備えている。前記基板(5,5’)は、第1の誘電体からなる第1の誘電体層(501)と、第2の誘電体からなる第2の誘電体層(502)とを含む。予め定められた温度範囲において、前記第1の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って増加し、且つ、前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って減少する、又は、前記第1の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って減少し、且つ、前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って増加する。【選択図】図5

Description

本発明は、ポスト壁導波路を用いたフィルタに関する。特に、温度補償機能を備えたフィルタに関する。
電磁気的に結合された複数の共振器は、特定の周波数帯域(以下、「通過帯域」とも記載する)の電磁波を選択的に通過させるバンドパスフィルタ(Bandpass Filter。以下、「BPF」とも記載する)として機能することが知られている。
非特許文献1には、複数の共振器として機能する金属製の導波管を用いたバンドパスフィルタが開示されている。また、非特許文献1には、このバンドパスフィルタにおいて中心周波数を調整するための技術が開示されている。
非特許文献2には、複数の共振器として機能するポスト壁導波路を用いたバンドパスフィルタが開示されている。ここで、ポスト壁導波路とは、両方の主面に広壁が設けられ、内部にポスト壁(一方の主面に設けられた広壁と他方の主面に設けられた広壁を短絡する導体ポストの集合)が設けられた基板により実現される導波路のことを指す。
吉田和明,「マイクロ波フィルタの技術と応用」,日本無線技報,No.64,pp.12-16,2013. Yusuke Uemichi, et. al, Compact and Low-Loss Bandpass Filter Realized in Silica-Based Post-Wall Waveguide for 60-GHz applications, IEEE MTT-S IMS, May 2015.
ポスト壁導波路を利用したBPFは、導波管を利用したBPFと比較して、コンパクトであり、伝送ロスが少なく、且つ、RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)の一部として集積化が容易である。また、ポスト壁導波路を利用したBPFは、プリント基板の製造方法を利用して製造可能であるため、導波管を利用したBPFと比較して、製造コストを抑制することができる。
その一方で、ポスト壁導波路を利用したBPFには、通過帯域の中心周波数が環境温度に応じてシフトし易いという問題があった。なぜなら、環境温度が変化すると、基板を構成する誘電体の誘電率が変化し、その結果、通過帯域の中心周波数がシフトするからである。特に、温度変化の大きな環境下では、このような問題が顕著に現れる。
本発明の一態様は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポスト壁導波路を用いたフィルタにおいて、温度変化に伴う通過帯域の中心周波数のシフトが従来よりも小さいフィルタを実現することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の態様1にかかるフィルタは、一対の導体層が両面に設けられ、ポスト壁が内部に設けられた基板を有するポスト壁導波路であって、電磁気的に結合した複数の共振器として機能するポスト壁導波路を備え、前記基板は、第1の誘電体からなる第1の誘電体層と、第2の誘電体からなる第2の誘電体層とを含む少なくとも2つの誘電体層からなり、予め定められた温度範囲において、前記第1の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って増加し、且つ、前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って減少する、又は、前記第1の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って減少し、且つ、前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って増加する構成である。
上記の構成によれば、相反する誘電率の温度依存性を備えた複数の誘電体を組み合わせることにより、各々の温度依存性を相殺又は抑制することにより温度変化に伴う通過帯域の中心周波数(以下、単に「中心周波数」とも記載する)のシフトを低減させることができる。
本発明の態様2に係るフィルタは、上記の態様1において、前記第1の誘電体層の誘電率の温度依存性よりも前記第2の誘電体層の誘電率の温度依存性が大きく、且つ、前記第1の誘電体層の体積が、前記第2の誘電体層の体積よりも大きい、構成としてもよい。
上記の構成によれば、各々の誘電体の温度依存性の大きさに伴い、誘電体層の体積を考慮することにより、温度変化の寄与率を考慮して温度変化に伴う中心周波数のシフトを低減させることができる。
本発明の態様3に係るフィルタは、上記の態様1または2において、前記基板は、第3の誘電体からなる第3の誘電体層を含む少なくとも3つの誘電体層からなる構成としてもよい。
上記の構成によれば、3層以上の誘電体層を組み合わせて誘電率の温度依存性を低減させることにより温度変化に伴う中心周波数のシフトを低減させることができる。
本発明の態様4に係るフィルタは、上記の態様3において、前記予め定められた温度範囲において、前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って増加し、且つ、前記第3の誘電体の誘電率は、前記温度上昇と同じ範囲での温度上昇に伴って減少する、又は、前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って減少し、且つ、前記第3の誘電体の誘電率は、前記温度上昇と同じ範囲での温度上昇に伴って増加する、構成としてもよい。
上記の構成によれば、3層以上の誘電体層において相反する誘電率の温度依存性を備えた複数の誘電体を組み合わせることにより、各々の温度依存性を相殺又は抑制することにより温度変化に伴う中心周波数のシフトを低減させることができる。
本発明の態様5に係るフィルタは、上記の態様1から4のいずれかにおいて、前記第1の誘電体が、石英、サファイア、アルミナからなる群から選択される材料である構成としてもよい。
上記の構成によれば、好ましい誘電体材料から基板を構成することにより、温度変化に伴う中心周波数のシフトを低減させることができる。
本発明の態様6に係るフィルタは、上記の態様1から5のいずれかにおいて、前記第2の誘電体が、ポリイミドまたはポリアミドイミドから選択される材料である構成としてもよい。
上記の構成によれば、好ましい誘電体材料から基板を構成することにより、温度変化に伴う中心周波数のシフトを低減させることができる。
本発明の態様7に係るフィルタは、上記の態様1から6のいずれかにおいて、前記複数の共振器の各々が、平面視において円形状又は六角形以上の正多角形状であり、前記複数の共振器のうち互いに結合されている2つの共振器の各々は、これら2つの共振器の外接円の半径をR1及びR2とし、これらの2つの共振器の中心間距離をDとした場合に、D<R1+R2となるように配置されている、構成としてもよい。
上記の構成によれば、複数の共振器のうち互いに結合されている2つの共振器に着目した場合に、当該2つの共振器の各々の外接円の形状は、2つの外接円の中心同士をつなぐ直線を対称軸として線対称となり、フィルタの設計パラメータの数を少なくすることができる。
本発明の一態様によれば、誘電率の温度依存性を低減させることにより温度変化に伴う通過帯域の中心周波数のシフトを低減させることができるという効果を奏する。
(a)は、実施形態1にかかるBPF1の斜視透視図であり、(b)は、実施形態1にかかるBPF1の平面図である。 (a)は、実施形態2にかかるBPF2の斜視透視図であり、(b)は、実施形態2にかかるBPF2の平面図である。 (a)及び(b)は、それぞれ、図2に示したフィルタの入力ポートに接続された導波路の端部に設置可能な変換部の平面図及び断面図である。 図2に示した共振器の構成において、基板5が単一の石英から構成されるBPF2の透過特性のシミュレーション結果を示すグラフである。 図1の(b)及び図2の(b)の切断線A−A’における断面図である。 図2に示した共振器の構成において、基板5が複数の誘電体から構成されるBPF2の透過特性のシミュレーション結果を示すグラフである。
以下、図1に基づいて実施形態1にかかるバンドパスフィルタ1について説明し、図2に基づいて実施形態2にかかるバンドパスフィルタ2について説明する。続いて、図3〜5に基づいて実施形態1及び実施形態2に共通した事項(変換部の特徴、基板5の温度依存性など)について説明する。その後、図6に基づいてバンドパスフィルタ2の透過特性について説明をする。
〔実施形態1〕
本発明の第1の実施形態にかかるバンドパスフィルタ1(以下、単に「BPF1」とも称する。)について、図1の(a)及び(b)を参照して説明する。図1の(a)は、本実施形態にかかるBPF1の斜視透視図である。図1の(b)は、本実施形態にかかるBPF1の平面図である。
図1の(a)に示すように、BPF1は、誘電体により構成された基板5と、一対の広壁として機能する導体層6及び導体層7と、一対の狭壁として機能するポスト壁11及びポスト壁12と、により構成されるポスト壁導波路を備えている。なお、図1の(a)において導体層6及び導体層7を仮想線(二点鎖線)にて図示している。これは、基板5の内部に形成された複数の導体ポストを見やすくするためである。
<ポスト壁導波路の構成>
(基板)
基板5は、誘電体により構成された板状部材である。基板5は、図5に示すように、誘電率の温度依存性が異なる複数の誘電体層からなる多層構造である。以下において、基板5を構成する6つの表面のうち、面積が最も大きな2つの表面を基板5の主面と称す。本実施形態では、基板5の一部を構成する誘電体として石英を採用するが、他の誘電体(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのテフロン(登録商標)系樹脂や液晶ポリマー樹脂や、ポリテトラフルオロエチレン及びガラスファイバを含む複合樹脂材料や、熱硬化性樹脂及びセラミックフィラーを含む複合樹脂材料など)であってもよい。なお、ポリテトラフルオロエチレン及びガラスファイバを含む複合樹脂材料の一例としては、ROGERS社のRT/Duroid(登録商標)シリーズ(例えばRT/Duroid 5880, 6002など)が挙げられ、熱硬化性樹脂及びセラミックフィラーを含む複合樹脂材料の一例としては、ROGERS社のTMMシリーズ(例えばTMM10など)が挙げられる。
基板5の一部に石英ガラスを採用する場合、石英ガラスの厚さを500μmとすることができる。
(一対の広壁)
導体層6及び導体層7は、基板5の2つの主面上に設けられた一対の導体層である。すなわち、基板5、導体層6、及び導体層7は、基板5が導体層6,7によって挟持された積層構造を有する。本実施形態では、導体層6,7を構成する導体として銅を採用するが、他の導体(例えばアルミニウムなどの金属)であってもよい。導体層6,7の厚さは限定されるものではなく、任意の厚さを採用することができる。すなわち、導体層6,7の態様は、薄膜であってもよいし、箔(フィルム)であってもよいし、板であってもよい。
導体層6,7の各々は、ポスト壁導波路の一対の広壁を構成する。
(ポスト壁)
基板5には、柵状に配列した、複数の貫通孔が設けられている。これら複数の貫通孔において、貫通孔同士の間隔は、波長より十分に短い。複数の貫通孔は、基板5の一方の主面から他方の主面まで貫通している。貫通孔の内壁には、筒状の導体膜が形成されている。したがって、この筒状の導体膜は、誘電体製の基板5の中に形成された導体ポストとして機能する。また、この筒状の導体膜は、基板5の両主面に設けられた導体層6と導体層7とを短絡させる。このような導体ポストは、ポスト壁導波路の技術(プリント基板の技術)を利用して実現可能である。貫通孔の内壁は、筒状の導体膜でなくてもよく、導体が充填されていてもよい。
複数の導体ポストを所定の間隔で柵状に配列したものをポスト壁と呼ぶ。基板5には、n本の導体ポスト11i(iは1以上n以下の整数を一般化した表記)が柵状に配列したポスト壁11と、n本の導体ポスト12i(iは1以上n以下の整数を一般化した表記)が柵状に配列したポスト壁12と、m本の導体ポスト13j(jは1以上m以下の整数を一般化した表記)が柵状に配列したポスト壁13と、m本の導体ポスト14j(jは1以上m以下の整数を一般化した表記)が柵状に配列したポスト壁14と、m本の導体ポスト15j(jは1以上m以下の整数を一般化した表記)が柵状に配列したポスト壁15と、m本の導体ポスト16j(jは1以上m以下の整数を一般化した表記)が柵状に配列したポスト壁16と、が設けられている。ここで、nは、後述する狭壁を構成する導体ポストの数を表し、mは、後述する隔壁を構成する導体ポストの数を表す。本実施形態では、各隔壁の導体ポストの数を同一としたが、同一でなくてもよい。
導体ポストの直径を100μmとし、隣接する導体ポスト間の間隔を200μmとすることができる。
(一対の狭壁)
ポスト壁11を構成する導体ポスト11iの各々は、1つの平面上に配列されている。本実施形態では、図1に示すように、基板5の主面がxy平面と平行になり、導体ポスト11iの各々が配列されている1つの平面がyz平面と平行になるように、座標系を定義する。柵状に配列した導体ポスト11iにより構成されたポスト壁11は、電磁波を反射する導体壁として機能する。
ポスト壁11と同様に、ポスト壁12を構成する導体ポスト12iの各々は、yz平面と平行な1つの平面上に配列されている。柵状に配列した導体ポスト12iにより構成されたポスト壁12は、電磁波を反射する導体壁として機能する。設計パラメータとして、ポスト壁11とポスト壁12との間隔(x軸方向の距離)を1500μmとすることができる。
ポスト壁11,12の各々は、ポスト壁導波路の一対の狭壁を構成する。
<ポスト壁導波路の機能>
基板5の内部には、一対の狭壁として機能するポスト壁11,12の他に、4つのポスト壁13〜16が形成されている。
ポスト壁13を構成する導体ポスト13jの各々は、xz平面と平行な1つの平面上に配列されている。柵状に配列した導体ポスト13jにより構成されたポスト壁13は、電磁波を反射する導体壁として機能する。
ポスト壁13と同様に、ポスト壁14〜16の各々を構成する導体ポスト14j,15j,16jの各々は、xz平面と平行な1つの平面上に配列されている。柵状に配列した導体ポスト14j,15j,16jにより構成されたポスト壁14,15,16の各々は、電磁波を反射する導体壁として機能する。
ポスト壁導波路は、これらのポスト壁13〜16によって5つの区間に分割される。これら5つの区間のうち、両端に位置する2つの区間は、導波路101,105として機能する。また、これら3つの区間のうち、残りの3つの区間は、共振器102,103,104として機能する。つまり、ポスト壁導波路は、複数の(本実施形態においては3つの)共振器102,103,104からなる共振器群として機能すると共に、この共振器群の前段及び後段に設けられた導波路101,105として機能する。なお、ポスト壁13〜16の各々のことを隔壁13〜16とも称する。
導波路101は、y軸負方向側の端部が開放されており、y軸正方向側の端部に隔壁13が設けられている。共振器102は、y軸負方向側の端部及びy軸正方向側の端部の各々に、それぞれ、隔壁13及び隔壁14が設けられている。共振器103は、y軸負方向側の端部及びy軸正方向側の端部の各々に、それぞれ、隔壁14及び隔壁15が設けられている。共振器104は、y軸負方向側の端部及びy軸正方向側の端部の各々に、それぞれ、隔壁15及び隔壁16が設けられている。導波路105は、y軸負方向側の端部に隔壁16が設けられており、y軸正方向側の端部が開放されている。
導波路101のy軸負方向側の端部、及び、導波路105のy軸正方向側の端部は、何れも、BPF1の入出力ポートとして機能する。
隔壁13のx軸方向における中央近傍において、導体ポスト13jは、省略されている。すなわち、隔壁13の中央近傍には、開口13aが形成されている。開口13aは、電磁波を反射しない。その結果、導波路101と共振器102とは、開口13aを介して電磁気的に結合している。開口13aは、誘導性アイリス又は結合窓とも呼ばれる。同様に、隔壁14〜16の各々の中央近傍には、それぞれ、開口14a〜16aの各々が形成されている。
このように構成されたBPF1は、3つの共振器102〜104を直列に結合することにより構成された、3段の共振器結合型のBPFである。BPF1の通過帯域幅及び通過帯域の中心周波数は、BPF1を構成する各部の設計パラメータを調整することにより適宜調整することができる。なお、BPF1が備えている共振器の段数は、3段に限定されるものではなく、任意の段数を採用することができる。
<変換部>
BPF1は、その前段及び/又は後段に対して別の高周波デバイスが結合される。BPF1に結合される高周波デバイスの一例としては、アンテナ回路、送信回路、及び受信回路、及び、方向性結合器が挙げられる。
BPF1に対して矩形導波路を用いて結合することが好ましい高周波デバイス(例えば方向性結合器)の場合、高周波デバイスが備えている矩形導波路の一端を、BPF1の導波路101又は導波路105の開放された端部に対して結合すればよい。
一方、BPF1に対してマイクロストリップ線路を用いて結合することが好ましい高周波デバイス(例えば送信回路及び受信回路)の場合、変換部をBPF1の開放された端部に設け、変換部を介して高周波デバイスとBPF1とを結合すればよい。当該変換部については、後述する実施形態2において詳述する。
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態にかかるバンドパスフィルタ2(以下、単に「BPF2」とも称する。)について、図2の(a)及び(b)を参照して説明する。図2の(a)は、本実施形態にかかるBPF2の斜視透視図である。図2の(b)は、本実施形態にかかるBPF2の平面図である。
図2の(a)に示すように、BPF2は、誘電体により構成された基板5’と、一対の広壁として機能する導体層6’及び導体層7’と、一対の狭壁として機能するポスト壁21〜25、ポスト壁61〜63、及びポスト壁71〜73と、により構成されるポスト壁導波路を備えている。なお、図2の(a)において導体層6’及び導体層7’を仮想線(二点鎖線)にて図示している。これは、基板5’の内部に形成された複数の導体ポストを見やすくするためである。
<ポスト壁導波路の構成>
(基板、一対の広壁、一対の狭壁)
基板5’は、実施形態1の基板5と同様に構成されており、図5に示すように、誘電率の温度依存性が異なる複数の誘電体層からなる多層構造で構成される。導体層6’,7’は、実施形態1の導体層6,7と同様に構成されており、ポスト壁導波路の一対の広壁として機能する。ポスト壁21〜25,61〜63,71〜73は、配置パターンを除いて実施形態1のポスト壁11,12と同様に構成されており、ポスト壁導波路の狭壁として機能する。
<ポスト壁導波路の機能>
基板5’の内部に形成されたポスト壁21〜25,61〜63,71〜73は、ポスト壁導波路が、複数の(本実施形態においては5つの)共振器201〜205として機能すると共に、これらの共振器201〜205の前段及び後段に設けられた導波路206,207として機能するように配置されている。
(共振器201〜205の構成)
共振器201は、互いに対向する一対の広壁と、一対の広壁の間に介在する狭壁とにより構成されている。一対の広壁は、実施形態1と同様に、金属製の導体層6’,7’により構成されている。共振器201のxy平面における形状は、開口AP,AP12が設けられる部分を除くと円形である。別の好ましい実施形態では、円形の代わりに正六角形以上の正多角形から構成されてもよい。正多角形から構成される場合、正多角形の外接円が、当該円形に相当する。開口AP,AP12については、後述する。また、開口は、誘導性アイリス又は結合窓とも呼ばれる。
共振器201〜205の狭壁は各々、ポスト壁21〜25により構成されている。ポスト壁21〜25は、それぞれk本の導体ポスト21i〜25i(iは1以上k以下の整数を一般化した表記)から構成される。ポスト壁21〜25は、導体層6,7からなる一対の広壁を導通させ、一対の広壁とともに、開口AP,AP12を除いた領域が電磁気的に閉じた円筒形の空間を形成する。
開口AP及び開口AP12の各々は、共振器201のxy平面における円形の弦を切断線として、広壁及び狭壁の一部を、xy平面に対して垂直な方向に切り落とすことによって形成される。開口APは、後述する導波路206と共振器201とを電磁気的に結合させ、開口AP12は、共振器201と後述する共振器202とを電磁気的に結合させる。
なお、この導体層6’,7’の厚さは、実施形態1と同様に、任意に定めることができる。すなわち、導体層6’,7’は、その厚さを特に限定されるものではなく、導体薄膜や、導体箔や、導体板などの層状の導体全般を指す。
本実施形態では、一対の広壁及び狭壁を構成する金属として銅を採用している。なお、この金属は、銅に限定されるものではなく、アルミニウムであってもよいし、複数の金属元素により構成された合金であってもよい。
共振器202〜205は、それぞれ、共振器201と同様に構成されている。すなわち、共振器202〜205は、導体層6’,7’からなる一対の広壁と、ポスト壁22〜25からなる狭壁とにより各々構成されている。共振器202のxy平面における形状は、開口AP12,AP23が設けられる部分を除くと円形であり、共振器203のxy平面における形状は、開口AP23,AP34が設けられる部分を除くと円形であり、共振器204のxy平面における形状は、開口AP34,AP45が設けられる部分を除くと円形であり、共振器205のxy平面における形状は、開口AP45,APが設けられる部分を除くと円形である。開口AP23は、共振器202と共振器203とを電磁気的に結合させ、開口AP34は、共振器203と共振器204とを電磁気的に結合させ、開口AP45は、共振器204と共振器205とを電磁気的に結合させ、開口APは、共振器205と後述する導波路207とを電磁気的に結合させる。
以上のように、BPF2は、5つの共振器201〜205が電磁気的に結合した、5段の共振器結合型のフィルタである。BPF2は、バンドパスフィルタとして機能する。
(各共振器の中心間距離)
導体層6’における共振器201のxy平面の円形の中心のことを中心C11と称し、導体層7’における共振器201のxy平面の円形の中心のことを中心C12と称する。共振器201の中心Cは、中心C11と中心C12との中点に位置する。共振器202の中心C、共振器203の中心C、共振器204の中心C、及び共振器205の中心Cの各々は、共振器201の中心Cと同様に定められる。
図2の(b)に示すように、共振器201の半径をR、共振器202の半径をR、共振器203の半径をR、共振器204の半径をR、共振器205の半径をRとする。また、中心Cと中心Cとの中心間距離をD12とし、中心Cと中心Cとの中心間距離をD23とし、中心Cと中心Cとの中心間距離をD34とし、中心Cと中心Cとの中心間距離をD45とする。
このとき、R,RとD12とは、D12<R+Rの条件を満たし、R,RとD23とは、D23<R+Rの条件を満たし、R,RとD34とは、D34<R+Rの条件を満たし、R,RとD45とは、D45<R+Rの条件を満たす。これらの条件を満たすことによって、円筒形の2つの共振器(例えば共振器201と共振器202と)を、各共振器の側面に設けた開口(例えば開口AP12)を介して結合させることができる。
(隣接する2つの共振器の対称性)
BPF2において、複数の共振器のうち互いに結合されている2つの共振器に着目する。ここでは、共振器202と共振器203とを用いて説明する。2つの共振器202,203の各々のxy平面における形状(共振器202,203の外接円の形状と同じ)は、2つの外接円の中心C,C同士をつなぐ直線BB’を対称軸として線対称である(図2の(b)参照)。これにより、BPF2は、所望の特性を有するフィルタを容易に設計することができる。
なお、BPF2においては、互いに結合されている2つの共振器が線対称となるように構成されていることに加えて、BPF2全体も線対称となるように構成されている。具体的には、共振器201〜205は、x軸に沿い且つ共振器203の中心Cを通る直線AA’を対称軸として線対称となるように配置されており、且つ、導波路206〜207は、上記直線を対称軸として線対称となるように配置されている。これにより、BPF2は、所望の特性を有するフィルタを更に容易に設計することができる。
(共振器201,205の配置)
BPF2において、共振器201と共振器205とは、互いに隣接するように配置されている(図2の(a),(b)参照)。したがって、複数の共振器が直線状に配置されている実施形態1の場合と比較して、フィルタの全長を短くすることができる。
(導波路206,207の構成)
導波路206は、導体層6’,7’からなる一対の広壁と、一対の狭壁であるポスト壁61,62とにより構成された、断面が長方形の矩形導波路である。導波路206の共振器201側の端部には、共振器201の開口APと同じ形状の開口が形成されたショート壁63が設けられている。この開口と共振器201の開口APとが一致するように導波路206と共振器201とを接続することによって、導波路206と共振器201とは、電磁気的に結合する。
導波路207は、導波路206と同様に、導体層6’,7’からなる一対の広壁と、一対の狭壁であるポスト壁71,72とにより構成された矩形導波路である。導波路207のショート壁73に設けられた開口と共振器205の開口APとが一致するように導波路207と共振器205とを接続することによって、導波路207と共振器205とは、電磁気的に結合する。
BPF2において、導波路206のy軸負方向側の端部および導波路207のy軸正方向側の端部は、何れも入出力ポートとして機能する。導波路206のy軸負方向側の端部を入力ポートとすれば、導波路207のy軸正方向側の端部が出力ポートとなり、導波路207のy軸正方向側の端部を入力ポートとすれば、導波路206のy軸負方向側の端部が出力ポートとなる。いずれの入出力ポートを入力ポートにするかは任意であるが、本実施形態では、導波路206のy軸負方向側の端部を入力ポートとし、導波路207のy軸正方向側の端部を出力ポートとして説明する。すなわち、共振器201が最初段(第1段目)の共振器であり、共振器205が最終段(第5段目)の共振器である。
〔実施形態1,2に共通する事項〕
<変換部>
実施形態1のBPF1、実施形態2のBPF2のそれぞれに接続可能な変換部80について説明する。図3の(a)及び(b)は、それぞれ、図1に示したBPF1の導波路101のy軸負方向側の端部、又は、図2に示した導波路206のy軸負方向側の端部に設置可能な変換部80の平面図及び断面図である。
ここでは、実施形態2に関して説明する。図2に示したBPF2において、導波路206のy軸負方向側の端部には、図3に示す変換部80が設けられていてもよい。導波路206のy軸負方向側の端部の変換部80は、好ましい実施形態では入力変換部であってもよい。同様に、導波路207のy軸正方向側の端部にも、変換部80が設けられていてもよい。導波路207のy軸正方向側の端部の変換部80は、好ましい実施形態では出力変換部であってもよい。以下では、導波路206のy軸負方向側の端部に設けられた変換部80を例にして説明する。
導波路206のy軸負方向側の端部に変換部80を設ける場合、当該端部には、ショート壁64が形成される。ショート壁64は、p本の導体ポスト64i(iは1以上p以下の整数を一般化した表記)を柵状に配列することによって得られるポスト壁である。ショート壁64は、ショート壁63と対になるショート壁であり、導波路206の共振器201側と逆側の端部を閉じる。
図3の(a),(b)に示すように、変換部80は、信号線85と、パッド86と、ブラインドビア87と、電極88,89とを備えている。
誘電体層8は、導体層6の表面に形成されている、誘電体製の層である。誘電体層8には、開口8aが設けられている。また、変換部80の導体層6には、開口8aと重畳する開口6aが設けられている。開口6aは、開口8aを包含するように設けられている。開口6aは、アンチパッドとして機能する。
信号線85は、誘電体層8の表面に形成された帯状導体である。信号線85の一端部は、開口8aを取り囲むように形成されている。なお、信号線85と導体層6とは、マイクロストリップ線路を形成する。
パッド86は、基板5の表面であって、導体層6が設けられている表面に形成された円形の導体層である。パッド86は、導体層6に設けられた開口6a内に、導体層6と絶縁された状態で配置されている。
基板5の表面には、導体層6が設けられた表面から、基板5の内部に向かう非貫通孔が形成されている。ブラインドビア87は、その非貫通孔の内壁に形成された筒上の導体膜からなる。ブラインドビア87は、信号線85の一端部に、パッド86を介して導通するように接続されている。すなわち、ブラインドビア87は、信号線85の一端部に接続されており、開口6a,8aを通って基板5の内部に形成されている。ブラインドビア87は、導体ピンとも称する。ブラインドビア87は、非貫通孔の内壁に形成された筒上の導体膜でなくてもよく、非貫通孔に充填された導体であってもよい。
電極88,89は、誘電体層8の表面に形成された電極である。電極88,89の各々は、信号線85の他端部近傍に、信号線85の他端部を挟むように配置されている。
誘電体層8の電極88と重畳する領域には、複数の貫通孔が設けられている。これらの複数の貫通孔には、ビア88Aとして機能する筒状の導体膜が形成されている。貫通孔の内壁は、筒状の導体膜でなくてもよく、導体が充填されていてもよい。
ビア88Aは、電極88と導体層6とを短絡する。また、ビア88Aと同様に構成されたビア89Aは、電極89と導体層6とを短絡する。このように構成された電極88及び電極89は、グランドとして機能するので、信号線85とともにグランド−シグナル−グランドの端子構造を実現する。
このように構成された変換部80は、マイクロストリップ線路を伝搬するモードと、導波路206の内部を伝搬するモードとを変換する。したがって、変換部80は、入力ポート及び出力ポートの各々に対して、マイクロストリップ線路を容易に結合させることができる。また、信号線85と電極88,89とからなる端子構造には、RFICをバンプなどを用いて容易に接続することができる。
なお、本構成例では、導波路206又は導波路207の端部に変換部80を設けるものとして説明した。すなわち、変換部80は、導波路206又は導波路207を介して共振器201又は共振器205に結合されるものとして説明した。しかし、変換部80は、共振器201又は共振器205に直接結合するように設けられていてもよい。すなわち、変換部80のブラインドビア87は、共振器201の広壁又は共振器205の広壁の一部に設けられた開口から共振器201又は共振器205の内部に形成されるように構成されていてもよい。
同様に、実施形態1では、変換部80は、導波路101又は導波路105を介して共振器102又は共振器104に結合される。これにより、マイクロストリップ線路を伝搬する電磁波のモードを導波路101含むBPF1を伝搬する電磁波のモードに変換することができる。このように、導波路101に対して変換部80を設けることによって、矩形導波路を備えていない高周波デバイスを、低損失な状態で、且つ、容易に、BPF1に対して結合することができる。ここで、変換部80は、共振器102又は共振器104に直接結合するように設けられていてもよい。すなわち、変換部80のブラインドビア87は、共振器102の広壁又は共振器104の広壁の一部に設けられた開口から共振器102又は共振器104の内部に形成されるように構成されていてもよい。
〔温度変化に伴う特性変動〕
実施形態1に係るBPF1(図1参照)及び実施形態2に係るBPF2(図2参照)においては、基板5の誘電率の温度依存性が問題となる場合がある。例えば、低温から高温まで大きな温度変化が想定される環境でのフィルタの使用については、特に基板5の誘電率の温度依存性を検討することが望ましい。以下、この点について、図4〜図6を参照して詳しく説明する。
<誘電体の誘電率の温度依存性>
石英の比誘電率の温度依存性に関して、−40℃から+100℃までの温度上昇に伴い、石英の比誘電率εが増加することが知られている。樹脂フィルムの誘電率の温度依存性に関して、例えば、20℃から100℃までの温度上昇に伴い、ポリイミドフィルムやポリアミドイミドフィルムでは、誘電率が低下することが知られている。
<比較例>
図4は、図2に示したBPF2において、基板5’を石英から構成される誘電体層のみを含む単層基板に置き換えたバンドパスフィルタ(以下、「比較例にかかるBPF」とも記載する)の透過特性のシミュレーション結果を示す。シミュレーションは、図2の(b)に示すようなxy平面において円形状の5つの共振器が電磁気的に結合されたフィルタで実行されたものである。高次モードの共振周波数では、共振器内の電界分布に鑑みて、共振器の周辺部よりも中央部の方が共振の影響が大きい。シミュレーション条件として、第1段目及び第5段目の共振器の半径R,Rは共に700μm、第2段目及び第4段目の共振器の半径R,Rは共に725μm、第3段目の共振器の半径Rは750μmである。基板5の石英の厚さは、520μmである。
図4のグラフにおいて、サンプル1は、石英の比誘電率が3.79(すなわち、−40℃相当)の場合、サンプル2は、石英の比誘電率が3.8(すなわち、+100℃相当)の場合のシミュレーション結果を示す。図4に示した透過特性シミュレーションの結果、サンプル1及びサンプル2の透過特性において、中心周波数のシフトが確認できる。すなわち、比較例にかかるBPFおいては、使用環境の温度上昇に伴い、通過帯域の中心周波数が低周波数側にシフトする。かかる中心周波数のシフトを小さくするために、以下のような基板5,5’の構成を検討する。
<多層構造からなる基板5,5’>
次いで、BPF1,BPF2の基板5,5’が複数の誘電体層から構成される態様を説明する。
図5は、図1の(b)及び図2の(b)の切断線A−A’におけるxz平面の断面の一例を模式的に示す。図5の(a)の例では、基板5,5’は、誘電体層501の上に誘電体層502が配置されている2層構造からなる。図5の(b)の例では、基板5,5’は、誘電体層501の上に誘電体層502が配置され、誘電体層502の上に誘電体層503が配置されている3層構造からなる。誘電体層503は、誘電体層501と同じ材料から構成されていてもよい。BPF1では、導体ポスト11i,12iが基板5,5’を貫通し、BPF2では、導体ポスト23iが基板5,5’を貫通する。いずれの構造においても、貫通した導体ポスト11i,12i又は23iが、導体層6,6’と導体層7,7’とを導通する。
導体層7,7’の上に誘電体層(501,502・・・)を積層構造に配置した後(「基板形成工程」とも称する。)、基板5,5’に導体ポストを形成するための複数の貫通孔を形成させる(「貫通孔形成工程」とも称する。)のが好ましい。
<2層構造からなる基板5,5’>
誘電体層501が石英からなる誘電体層である場合、温度上昇に伴い比誘電率が上昇し、中心周波数が低周波側にシフトする。かかるシフトの影響を低減するために、温度上昇に伴い誘電率が減少する誘電体からなる誘電体層502を石英からなる誘電体層501の上又は下に配置させることが好ましい。図5に示した通り、例えば、ポリイミドフィルムは、温度上昇に伴い誘電率が低下する。ポリイミドフィルムからなる誘電体層502を石英からなる誘電体層501の上に配置させた模式図を図5の(a)に示す。かかる2層構造を採用することにより、温度上昇に伴う中心周波数のシフトの影響を低減させることができる。
誘電率の温度依存性の寄与率に応じて、誘電体層501と誘電体層502との体積比を調整することにより中心周波数のシフトの影響を低減させることができる。
誘電体層501(特許請求の範囲に記載の第1の誘電体層に相当)を構成する誘電体の誘電率(以下、「誘電体層501の誘電率」と略記する)の温度依存性よりも誘電体層502(特許請求の範囲に記載の第2の誘電体層に相当)を構成する誘電体の誘電率(以下、「誘電体層502の誘電率」と略記する)の温度依存性が大きい場合、誘電体層501の体積が、誘電体層502の体積よりも大きいのが好ましい。
また、基板5,5’が複数の誘電体層から構成される場合、体積の大きな誘電体層の線膨張係数が、体積の小さな誘電体層の線膨張係数よりも小さいのが好ましい。
<2層構造からなる基板5’の温度依存性>
かかる態様にて、透過特性のシミュレーションを行った結果を図6に示す。本実施形態におけるシミュレーションは、図2の(b)に示すようなxy平面において円形形状の5つの共振器が電磁気的に結合されたフィルタで実行されたものである。第1段目及び第5段目の共振器の半径R,Rは共に700μm、第2段目及び第4段目の共振器の半径R,Rは共に725μm、第3段目の共振器の半径Rは750μmである。図5の(a)におけるxz平面における誘電体層501の厚さは520μmであり、誘電体層502の厚さは16μmである。
図6にて、リファレンス3は、誘電体層501の比誘電率を3.79(石英の場合、−40℃に相当)、誘電体層502の比誘電率を3.0とした場合のシミュレーション結果である。同様に、リファレンス4は、誘電体層501の比誘電率を3.80(石英の場合、+100℃に相当)、誘電体層502の比誘電率を3.0とした場合のシミュレーション結果である。つまり、誘電体層502の誘電率に温度依存性がないと仮定した場合のシミュレーション結果の対比である。誘電体層501の上に誘電体層502を配置させたとしても、誘電体層502の誘電率に温度依存性がなければ、実施形態2における図4のシミュレーション結果と同様に、温度上昇に伴い中心周波数が低周波側にシフトすることが確認できる。
次いで、誘電体層502の誘電率に温度依存性がある条件でサンプル3とサンプル4とを対比する。サンプル3は、リファレンス3における誘電体層502の比誘電率を3.1とした場合のシミュレーション結果である。サンプル4は、リファレンス4における誘電体層502の比誘電率を2.9とした場合のシミュレーション結果である。図6に示した結果のとおり、サンプル3とサンプル4との透過特性がほぼ一致し、温度上昇に伴う中心周波数のシフトが解消されるのが確認できる。
上記の例では、誘電体層501が、温度上昇に伴い誘電率が増加する誘電体から構成される例を示した。一方、誘電体層501が、温度上昇に伴い誘電率が低下する誘電体から構成される場合、誘電体層502は、温度上昇に伴い誘電率が増加する誘電体から構成されるのが好ましい。特定の温度変化が生じる温度領域において、温度変化に対する誘電率の変化傾向が相殺又は抑制される関係にある誘電体を組み合わせるのが好ましい。
図5に示した通り、ポリアミドイミドフィルムは、20℃から100℃までは温度上昇に伴い誘電率が低下するが、100℃から240℃までは温度上昇に伴い誘電率は増加する。従って、バンドパスフィルタ使用の環境温度変化が100℃から240℃であれば、誘電体層502としてポリアミドイミドフィルムを用いた場合、誘電体層501は同じ温度変化範囲で誘電率が低下する誘電体を用いるのが好ましい。
<誘電率の温度依存性が反転する誘電体層を包含する基板5,5’>
フィルタの使用環境温度変化が広範囲にわたる場合、誘電率の温度依存性が温度領域によって変化する場合がある。例えば、フィルタの使用環境温度変化が20℃から160℃程度の場合、ポリアミドイミドフィルムから構成される誘電体層502を用いるに際し、誘電率の温度依存性が大きく変化することに注意を要する。20℃から100℃までは、温度上昇に伴いポリアミドイミドフィルムの誘電率が低下するが、100℃以上では温度上昇に伴いポリアミドイミドフィルムの誘電率が増加する。このような温度変化でのフィルタ利用を想定すると、誘電体層501は、20℃から100℃までは、温度上昇に伴い誘電率が増加し、100℃以上では温度上昇に伴い誘電率が低下する誘電体を用いるのが好ましい。かかる場合においても、特定の温度変化が生じる温度領域において、温度変化に対する誘電率の変化傾向が相殺又は抑制される関係にある誘電体を組み合わせる。
<3層構造からなる基板5,5’>
例えば、図5の(b)に示すように、温度上昇に伴い誘電率が増加する誘電体からなる誘電体層501と誘電体層503(特許請求の範囲に記載の第3の誘電体層に相当)との間に、温度上昇に伴い誘電率が低下する誘電体からなる誘電体層502を配置することができる。好ましい実施形態では、誘電体層501が石英、サファイア、又はアルミナから構成され、誘電体層502がポリイミドフィルム又はポリアミドイミドフィルムから構成されることができる。誘電体層503も石英、サファイア、又はアルミナから構成されることができる。
上記の例では、誘電体層501及び誘電体層503が、温度上昇に伴い誘電率が増加する誘電体から構成される例を示した。一方、誘電体層501及び誘電体層503が、温度上昇に伴い誘電率が低下する誘電体から構成される場合、誘電体層502は、温度上昇に伴い誘電率が増加する誘電体から構成されることが好ましい。
別の好ましい実施形態では、誘電体層501及び誘電体層502が、温度上昇に伴い誘電率が低下する誘電体から構成される場合、誘電体層503は、温度上昇に伴い誘電率が増加する誘電体から構成されるのが好ましい。かかる組み合わせに限定されず、特定の温度変化が生じる温度領域において、温度変化に対する誘電率の変化傾向が相殺又は抑制される関係にある複数の誘電体を組み合わせるのが好ましい。
更に別の好ましい実施形態では、誘電体層503(特許請求の範囲に記載の第3の誘電体層に相当)を誘電体層502(特許請求の範囲に記載の第2の誘電体層に相当)の上ではなく、誘電体層501(特許請求の範囲に記載の第1の誘電体層に相当)の下に配置する構成とすることもできるし、誘電体層502と誘電体層501との間に配置する構成とすることもできる。
<誘電率の温度依存性が反転する誘電体層を包含する基板5,5’>
2層構造の場合と同様に、フィルタの使用環境温度変化が、広範囲にわたる場合、例えば、ポリアミドイミドフィルムのような誘電体を誘電体層502として用いる際には、誘電率の温度依存性が一様ではないことに注意を要する。温度上昇に伴い誘電率が低下する温度領域(以下、「第1の温度領域」とも称する。)と、温度上昇に伴い誘電率が増加する温度領域(以下、「第2の温度領域」とも称する。)とを備えた誘電体から誘電体層502が構成される場合について検討する。かかる場合、誘電体層501,503を2層構造の場合と同様に、第1の温度領域では温度上昇に伴い誘電率が増加し、第2の温度領域では温度上昇に伴い誘電率が低下する温度依存性を備えた誘電体から構成することも可能である。すなわち、同様の誘電率の温度依存性を備えた誘電体層501,503により、それぞれの温度領域において誘電体層502の誘電率の温度依存性を相殺又は抑制する構成とすることができる。また、かかる場合、誘電体層501を、第1の温度領域では温度上昇に伴い誘電率が増加し、第2の温度領域では温度上昇に伴い誘電率が低下する温度依存性を備えた誘電体から構成し、誘電体層503を、第1の温度領域では温度上昇に伴い誘電率が低下し、第2の温度領域では温度上昇に伴い誘電率が増加する温度依存性を備えた誘電体から構成することも可能である。ずなわち、誘電体層501の誘電率の温度依存性が大きい場合、同様の誘電率の温度依存性を備えた誘電体層502,503により、それぞれの温度領域において誘電体層501の誘電率の温度依存性を相殺又は抑制する構成とすることもできる。
また、第1の温度領域において、温度上昇に伴い誘電率が低下し、且つ、第2の温度領域において、温度上昇に伴い誘電率が増加する誘電体層502を採用している場合、第1の温度領域及び第2の温度領域の両領域に亘って、温度上昇に伴い誘電率が増加する誘電体層501と、第1の温度領域及び第2の温度領域の両領域に亘って、温度上昇に伴い誘電率が低下する誘電体層503とを採用することもできる。この場合、第1の温度領域においては、温度上昇に伴い、誘電体層502,503の誘電率が低下し、誘電体層501の誘電率が増加する。また、第2の温度領域においては、温度上昇に伴い、誘電体層501,502の誘電率が増加し、誘電体層503の誘電率が低下する。したがって、このような構成を採用する場合、誘電体層501〜503の各々は、(1)第1の温度領域において、誘電体層501の誘電率の温度依存性が誘電体層502,503の誘電率の温度依存性を相殺又は抑制し、(2)第2の温度領域において、誘電体層503の誘電率の温度依存性が誘電体層501,502の誘電率の温度依存性を相殺又は抑制する、ように構成されている。
<4層以上の積層構造からなる基板5,5’>
上記の例では、図5に示す通り、2層構造、3層構造からなる基板5,5’を構成する誘電体層の具体例を示した。同様に4層以上の積層構造により基板5,5’を構成することも可能である。基板5,5’を多くの材料から選択して構成することができるため、目的に応じて柔軟に設計することが可能である。導体層6,6’,7,7’の熱伝導性に鑑みて、導体層6,6’,7,7’近傍には誘電率の温度依存性が小さい誘電体、また線膨張係数が小さい誘電体や熱伝導率が小さい誘電体を採用することができる。フィルタの使用想定温度レンジに合わせて種々のラインナップを用意することが可能である。積層の数を多くすると、損失が増大する可能性も高くなるため、透過特性とのトレードオフに注意する必要もある。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
1、2 バンドパスフィルタ(BPF)
5,5’ 基板
6,6’,7,7’ 導体層
6a,8a、13a〜16a、AP12,AP23,AP34,AP45,AP,AP 開口
8、501、502、503 誘電体層
11〜16、21〜25、61,62、71,72 ポスト壁
11i,12i、13j〜16j、21i〜25i、61i〜64i、71i〜73i 導体ポスト
13〜16 隔壁
32、88A、89A ビア
63、73 ショート壁
80 変換部
85 信号線
86 パッド
87 ブラインドビア
88,89 電極
101,105、206,207 導波路
102〜104、201〜205 共振器
501 誘電体層(第1の誘電体層)
502 誘電体層(第2の誘電体層)
503 誘電体層(第3の誘電体層)

Claims (7)

  1. 一対の導体層が両面に設けられ、ポスト壁が内部に設けられた基板を有するポスト壁導波路であって、電磁気的に結合した複数の共振器として機能するポスト壁導波路を備え、
    前記基板は、第1の誘電体からなる第1の誘電体層と、第2の誘電体からなる第2の誘電体層とを含む少なくとも2つの誘電体層からなり、
    予め定められた温度範囲において、
    前記第1の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って増加し、且つ、前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って減少する、又は、
    前記第1の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って減少し、且つ、前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って増加する、
    ことを特徴とするフィルタ。
  2. 前記第1の誘電体層の誘電率の温度依存性よりも前記第2の誘電体層の誘電率の温度依存性が大きく、且つ、前記第1の誘電体層の体積が、前記第2の誘電体層の体積よりも大きい、
    ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
  3. 前記基板は、第3の誘電体からなる第3の誘電体層を含む少なくとも3つの誘電体層からなる、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ。
  4. 前記予め定められた温度範囲において、
    前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って増加し、且つ、前記第3の誘電体の誘電率は、前記温度上昇と同じ範囲での温度上昇に伴って減少する、又は、
    前記第2の誘電体の誘電率は、温度上昇に伴って減少し、且つ、前記第3の誘電体の誘電率は、前記温度上昇と同じ範囲での温度上昇に伴って増加する、
    ことを特徴とする請求項3に記載のフィルタ。
  5. 前記第1の誘電体が、石英、サファイア、アルミナからなる群から選択される材料である、
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルタ。
  6. 前記第2の誘電体が、ポリイミドまたはポリアミドイミドから選択される材料である、
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルタ。
  7. 前記複数の共振器の各々が、平面視において円形状又は六角形以上の正多角形状であり、
    前記複数の共振器のうち互いに結合されている2つの共振器の各々は、これら2つの共振器の外接円の半径をR及びRとし、これらの2つの共振器の中心間距離をDとした場合に、D<R+Rとなるように配置されている、
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のフィルタ。
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