JP2020149770A - 金属めっき端子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、コネクタ用金属端子の腐食防止を目的とする。【解決手段】母材をプレス加工により接点が形成されたコネクタ用金属端子であって、プレス加工で形成された圧縮変形面、せん断面及び破断面の腐食を防止するために、圧縮変形面、せん断面及び破断面にも金属めっきを施すことを特徴とする金属めっき端子である。【選択図】図2
Description
本発明は、自動車などの電子回路を電気的に接続するためのコネクタに使用される金属めっき端子及びその製造方法に関する。
自動車などの電子回路において、電源や電気信号を容易に接続・遮断するためにコネクタが用いられる。コネクタは、接続端子がオス端子のものとメス端子のものがあり、オス端子とメス端子の接点を接触させることで電気的に接続される。なお、接続端子の母材である銅合金など導電性のある金属板を加工した後、着脱時の摩耗等により金属板が酸化して通電不良が進むのを抑制するために、接続端子の表面にはめっき等の表面処理が施される。
めっきの材料としては、金や錫などが用いられるが、金は高価であるため、めっきを施す面積を小さくしてコストダウンする場合もある。特許文献1に記載されているように、導電性基材からなる一対の端子の一方の端子の突起部の表面に、湿式方式の部分電気金めっき皮膜が形成され、他方の端子の略平坦部の表面の、一方の端子の突起部に当接する部分に同様に湿式の部分電気金めっき皮膜が形成されている、端子構造に関する技術が開示されている。特許文献1に記載されているように、導電性基材には主に銅合金が用いられるが、ニッケルなどの電気金めっき下地膜を導電性基材の全面に施してから、その上に部分電気金めっきを形成する方法が示されている。これは銅合金上に直接に電気部分金めっきをする場合に、密着性が得にくいこと、及び部分電気金めっき膜のピンホール部から、銅と金の標準電極電位の相違により生ずる電位差によって、電気化学的な腐食(電食)が起こるため、これを防止するのが目的である。
特許文献1の方法では、部分めっきによる金の節減が可能であるが、湿式めっき法であることから、脱脂、酸洗、活性化前処理用薬品の他、電気金めっき液に必要な高価な調合薬品が必要で、まためっき後の洗浄や高純度水による仕上げ洗浄などに、高価な洗浄用高純度処理水が必要である。まためっき廃液や洗浄排水の処理設備などの湿式めっき特有の環境対応設備が必要である。さらにめっき工程が長く複雑であり、めっき装置そのものが非常に高価となる問題も抱えている。また特に部分めっきでは、特殊構造で精密加工された高価なめっきマスキング治具が必要で、さらにめっきコストが上昇する問題もある。
電気部分めっき法には、特許文献1のように、めっき不要部をマスキング治具により機械的にマスキングする方法が通常用いられるが、その他の方法には、特許文献2に記載されているように、雌型端子の挟圧部に凸状接点構造部を形成し、凸状接点構造部の表面にのみレーザめっき法を用いて選択的に硬質金めっきする雌型端子金具の部分めっき技術も開示されている。このレーザめっき法は、全面に電気ニッケルめっきがなされた端子を、めっき液の流路を通して浸漬し、雌型端子の凸状接点構造部に、波長300nm以上、450nm以下の近紫外から青色レーザの集光ビームを照射して、レーザビーム照射部のみに部分的にめっきを施す方法である。この方法は、特殊なめっきマスキング治具を必要としない点で特許文献1と比較し有利のようではあるが、レーザ発振器や照射用ファイバー及び、光学レンズ系などの追加設備が必要であるほか、湿式の電気めっきを用いる点で、特許文献1と同様の問題がある。
また、特許文献3に記載されているように、銅、銅合金などの導電性金属基板を連続プレス加工により所定の端子金具の形状に成形した後、接点を形成する箇所に導電性を有する金粒子を含む金インキをインクジェット法などで高速で塗布し、塗布した金インキにパルスレーザ光を照射し、金めっき層を有する接点をプレス加工と連続したラインで形成する端子金具の製造方法の技術も開示されている。これは、プレス加工した銅、銅合金からなる金属端子金具を、電気ニッケル下地めっき処理を行うことなく、プレス加工に連続して金インキ塗布とパルスレーザ光照射工程を導入し、銅、銅合金上に直接に金めっき膜を形成する端子金具の製造方法である。
この特許文献3では、銅の融点は1083℃、金の融点は1064℃とほぼ同じなので、金めっき層を銅表面に容易に定着させることができると記載されている。また銅板の表面に錫めっきが施されている場合、錫の融点は232℃と低いために、金粒子は溶融せずにめっき層が溶融するので、金めっき層はろう付けのように錫めっき層の表面に定着されるとも記載されている。このように特許文献3の方法は、瞬間的にエネルギー密度の高いパルスレーザ光を用いて下地金属の融点まで温度を上昇させて金膜を形成する方法であるが、銅の表面を融点まで上げた場合、金は瞬時に銅の中に固溶するので金膜は形成されず、金と銅の合金膜となる。
また銅の融点まで表面温度を上げた場合には、局所的な銅の結晶組織の粗大化と機械的強度の低下(軟化)が起こる。下地が錫めっきの場合も同様であり、溶融した錫の中に金が瞬時に固溶して金と錫の合金被膜が形成される。また銅下地の場合には、銅‐金の二元系平衡状態図に見られるように、Cu3Auのような金属間化合物が形成される問題もある。金属間化合物は、物性的に脆弱なので金属間化合物層から金膜が剥離する問題もある。また金膜が合金化した場合には、接続電気抵抗は上昇し、電気的な導通性能に優れたコネクタが得られない。
以上説明したように、従来技術としての特許文献1、2、3には多くの問題がある。発明者等はこれらの問題を解決できるコネクタ用の金属めっき端子の製造方法を提供するものである。
本発明は、特許文献1〜3で掲げた問題を解決できるのみでなく、長時間の使用においても、接続電気抵抗が安定で、また腐食による接続電気抵抗の上昇が少なく、接続信頼性の高いコネクタ用金属めっき端子の製造方法を提供するものである。
背景技術で示した特許文献1〜3に記載の技術では、端子の接点表面にのみ金めっきを施しており、プレス加工による圧縮変形面(通常ダレ面)や、せん断面及び破断面については金めっきが施されていないため、圧縮変形面(通常ダレ面)、せん断面又は破断面から腐食が進行する。プレス加工による金属板の切断加工面は、図1に示すように、プレス金型のパンチの降下圧縮応力による圧縮変形面3、金属の塑性変形を伴うせん断面4、破断限界伸びを超えた破断面5の三箇所から構成されている。
接点部めっき面6は、通常、表面上にのみ形成される。この内、表面2は、金属の組織欠陥が少ないが、圧縮変形面3とせん断面4及び破断面5は、高倍率金属顕微鏡により、微細クラックなどの組織欠陥が観察される。またこれらの面は、高倍率の走査型電子顕微鏡(SEM)により、結晶粒界から進展した金属のミクロ組織欠陥が多く観察される。また、せん断面および破断面はプレス加工による高い加工残留応力が存在することでも知られている。そしてこのせん断面、破断面はまた、加工残留応力の影響で腐食が局所的に加速される応力腐食の問題も指摘されている。
プレス加工面は、微細クラック部に、転位欠陥や空孔が局在しているために、腐食の化学種が浸透しやすく、また圧縮、引っ張りの残留応力の影響が加わることで、結晶粒界が拡張して、腐食がさらに促進され、所謂応力腐食が発生する。発明者らはこの点に着目して、圧縮変形面3、せん断面4、破断面5にも金膜を形成し、腐食の進展を抑制することで、信頼性の非常に高い、金属めっき端子の製造方法を見出した。金と銅は標準電極電位が異なり(銅;+0.3V/NHE、金;+1.5V/NHE)、直接接触すると1.2Vの電位差が発生する。即ち金が正極、銅が負極になって、ガルバノ電池が構成されて銅の電気化学的な腐食(電食)が発生する。このため、圧縮変形面3、せん断面4、破断面5の欠陥部からの化学腐食反応や応力腐食にこの電食が加わることでさらに腐食が進展し、接続信頼性が低下する。
めっき金属には金に替りコストの安い銀めっきが行われる場合も多くある。この場合もプレス切断面の腐食が金めっき同様に発生する。銀の標準電極電位は、銅の+0.3V/NHEに対して+0.8V/NHEであり、このために0.5Vの電位差が発生し、銀が正極、銅が負極となり銅の腐食が促進される。
以下に本発明の金属めっき端子の製造方法の具体的な内容を詳述する。なお金属めっき端子の製造方法には、ニッケルなどの湿式電気めっきを施した後にプレス加工して接点部を形成する方法もあるが、この場合も同様である。
本発明の目的は、金属めっき端子のプレス加工による接点部のせん断面及び破断面にも金属ナノ粒子のレーザ焼結法により金属めっきを施し、接続信頼性の高いコネクタを提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明である金属めっき端子は、母材をプレス加工で打ち抜くことで、相手オス端子と接触する接点部を形成するコネクタ用メス端子であって、母材が打ち抜かれたときに形成された、圧縮変形面(ダレ面)、せん断面及び破断面にも図2に示す断面めっき層7が施されたことを特徴とするものである。図2は圧縮変形面3にもめっきが形成された図を示している。通常の湿式電気めっきでは、めっきマスキング治具の構造により、接点部の表面のみにめっきがなされている。
また、前記金属めっき端子において、前記メス端子は、前記母材をプレス成形することで接点が通常複数設けられるが、それぞれの接点が設けられる面の圧縮変形面、せん断面及び破断面に、金属めっきが施されたことを特徴とする。
さらに、本発明である金属めっき端子の製造方法は、あらかじめ相手端子と接触する接点に金属めっきが施された端子部の、凹凸状などに切り出されプレス成形加工された、圧縮変形面、せん断面及び破断面に、金属めっきを施すことを特徴とする。
また、前記金属めっき端子の製造方法は、前記圧縮変形面、せん断面及び破断面に金属めっきを施した後に、前記母材を再度プレス成形して前記接点を複数設ける、ことを特徴とする。
また、前記金属めっき端子の製造方法は、前記接点及び前記圧縮変形面、せん断面及び破断面に金属ナノ粒子インクを塗布し、塗布部に直接レーザ光を照射することで金属ナノ粒子を焼結し、金属焼結膜を施すことを特徴とする。
本発明の金属ナノ粒子部分塗布膜へのレーザ焼結法によれば、自動車などの電子回路を電気的に接続するためのコネクタ端子について、接点に隣接する、圧縮変形面、せん断面及び破断面にも金属めっきを施すことができる。端子の接点表面にのみだけでなく、プレス加工したときの圧縮変形面、せん断面及び破断面にも金属めっきを施すので、圧縮変形面、せん断面、破断面からの腐食(錆び)に起因する、電気的な接続抵抗の増加を伴う接続信頼性の低下を抑止することができる。また圧縮変形面、せん断面、破断面からの腐食にともなう、金属めっき端子の機械的な強度低下も防止できる。
金属めっき端子は、電気的な信号や電力を安定して伝達するために、金属めっき端子の接触圧力を安定に維持する必要があり、また挿抜を繰り返す場合には、さらに安定した機械的な強度(バネ圧の回復力など)が求められる。金属めっき端子は、金属めっきを施した後に、凹凸を設けて接点を複数形成するために、さらにプレス加工を繰り返す場合があるが、その際に生じた圧縮変形面、せん断面及び破断面についても金属めっきを施すことができるので、同様に圧縮変形面、せん断面又は破断面からの腐食を抑制することができる。従って金属めっき端子に要求される機械的特性を長期間維持できる。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
まず、本発明である金属めっき端子の接点に金属めっきを施すまでの加工について説明する。図3は、金属めっき端子を備えたコネクタのオス端子とメス端子とが接触している状態の一部を断面で示した図である。図4は、金属めっき端子を備えたコネクタのメス端子の断面を示す図である。
図3に示すように、コネクタ100は、オス端子200とメス端子300の先端同士を接触させることで電気的に接続するための器具又は部品である。コネクタ100の根元には、銅(Cu)やその合金などの導電体を線状に引き伸ばした電線を、絶縁体やシースなどで被覆したケーブル400が接続される。コネクタ100は、母材となる金属を加工した接続端子が、樹脂などで形成されたハウジングに収められ、オス端子200とメス端子300を嵌合させたときに、容易に外れないように係止される。なお、複数の電線を束状にしたハーネスにしても良い。
コネクタ100の接続端子の母材は、銅やその合金又はステンレス鋼などの金属であるが、接続端子は使用環境で空気に触れてその表面に酸化被膜が生ずる。また温度や湿度の高い環境では、先に述べた電気化学腐食や、プレス加工残留応力による応力腐食を生ずる。また着脱の繰り返し摩耗により不働態化酸化被膜が破壊されて、電気化学腐食や応力腐食が加速される問題もある。この対策としては、導電性が良好で耐食性及び耐摩耗性の高い金属で図4の接点330、340、350に対してめっき等の表面処理を施すことが現在行われている。
めっきに使用される金属としては、錫(Sn)、銀(Ag)、金(Au)などがある。錫は、導電性があり、酸化膜を容易に形成するが、接続端子の着脱により酸化膜が容易に破壊されて導通性能を回復する性質があるので、安価な金属でもあるために用いられている。銀はコストが高く、高電圧条件下でのエレクトロマイグレーション短絡(銀電子の移行による電気的な短絡)などの問題もあるが、低電圧環境下では安定した低い接続抵抗が得られる。金は、コストが高いが、最も導電性に優れ、耐食性が高いために高信頼性金属端子に最も多く使用されている。
図4は、コネクタ用めっき端子の構造図であるが、図に示すように、メス端子300は、オス端子200と接触するように接点部330、340、350が形成されている。また、根元側で電線を圧着等するための加締め部370を有する。母材が展開状態でプレス加工によって打ち抜かれ、それを所定の形状に折曲げ等されてメス端子300が形成される。
端子部310は、箱状に加工され、内部にオス端子200のピン状に成形された突片210を挿入できるように、中空なバネ隙間320が形成される。挿入される側から母材をバネ隙間320に折り込むようにして、上下から弾力性によってオス端子200の突片210を挟持可能にし、突片210と当接する部分に接点330、接点340及び接点350を形成する。接点330と接点340により二点支持で突片210を挟圧しても良いが、接点340の中間部に凹み360を設けて、接点330と接点340及び接点350により三点支持で突片210を挟圧した方が安定して保持される。
端子部310のバネ隙間320に突片210を嵌合させるときに、突片210と接点330、340、350とが摺動し、また、嵌合させた後も振動等により微摺動することもあり、さらに、突片210を着脱可能にしているために僅かな隙間も存在することから、接点330、340、350には、腐食を防止し導電性を確保するために、耐摩耗性のある金めっきを施す。
以下にプレス切断面への金被膜を、金ナノ粒子ペーストのレーザ焼結法によって形成するための、最良の実施形態を説明する。
図5は、図4の金属めっきメス端子の箱型に成形加工する前の、展開図を示す。図5(a)は、金属めっき端子の接点表面に金めっきを施した後に打ち抜いた状態の母材を示す図であり、図5(b)は、切断部340a、350aをプレス加工で形成した図である。切断部340a、350a及び図5(a)の380aに金ナノ粒子ペーストを塗布し、レーザ照射により金焼結膜を形成する方法を以下に説明する。
図5(b)の切断面に金ナノ粒子ペーストを塗布するには、ノズルと非印刷物との距離2〜10mm、最小吐出量2nl、最大動作周波数150Hzの、非接触ジェットディスペンサーを用いる。ジェットディスペンサーを用いて、切断部340a、350a、380aに金ナノ粒子ペーストを塗布するには、図5(b)の端子を基板に対して垂直に立てて配置する必要は無く、平面に対して30°程度上部に傾けることで、端子上部から金ナノ粒子ペーストを吐出し、プレス切断面のみに塗布することが可能である。金ナノ粒子の塗布には例えば、ハリマ化成製の金ナノ粒子ペースト(平均粒子径5〜7nm、NPG‐J)を用いることができる。また他の塗布方法としては、インクジェットや接触式ディスペンサーなども使用できる。
金属めっき端子の母材にはリン青銅(Cu‐4Sn)やコルソン合金(Cu‐3.0Ni‐0.65Si‐0.15Mg)などの銅合金が多く使用されるが、電気ニッケルめっきを母材全面に厚さ3μm程度施した材料も用いられている。これは銅合金直上への電気金めっきでは、コネクタ用としてのめっき厚さ0.1μm程度の薄いめっきの場合に、ピンホール(めっき膜の微細孔)が非常に多く、このため金膜(1.5V/SHE)と母材の銅(0.3V/SHE)の標準電極電位の相違による電位差(1.2V)が生じ、電気化学的な腐食(電食)が起こる問題があるためである。この現象は金が正極、銅合金が負極となり銅合金の腐食が加速されて、ピンホールを通して銅の腐食生成物が拡散浮上して表面に堆積し、めっき金属端子の電気的な接続抵抗(電気抵抗)を増大させる問題である。この現象は通常硝酸曝気試験などによって試験され、信頼性の検証がなされるが、銅合金直上への電気金めっきや化学めっきでは、この試験をクリアできないことがすでに検証されている。
このために本発明は、金ナノ粒子のレーザ焼結膜が、ピンホールなどの膜欠陥が非常に少ない特徴を有することに着目し、銅合金を母材としたコネクタ用端子の表面接点部およびプレス切断面にも金膜を形成しコネクタの接続信頼性の向上を可能とするものである。電気金めっき膜は、原理的にめっき液中で金イオンを還元析出させるために、水素ガスの発生に伴うピンホールが多発する。これに対して平均粒子径5〜7nmの金ナノ粒子は、レーザエネルギーによりバルク金属化するために、水は介在せずピンホールを少なくできる。金ナノ粒子ペーストに含まれる分散剤(金属ナノ粒子を安定に維持するための表面被覆膜)や溶剤は、金ナノ粒子のバルク化前にレーザ光により分解あるいは蒸発し、容易に逸脱するので、原理的にピンホールは発生しない。
この原理を実現するためのレーザ線源には、発振周波数を持つパルスレーザではなく、CW(連続発振の定常波)レーザが好ましい。パルスレーザでは、短時間に高いエネルギーのレーザ光が金ナノ粒子に集光照射されるために、金ナノ粒子がバルク化する前に飛散する現象がある。パルスレーザの場合の他の問題は、瞬間的な高エネルギーのレーザ照射により、銅合金が高温に加熱されて、金属組織が軟化して機械的な強度特性が失われる問題である。
またレーザ光には金ナノ粒子ペースト塗布膜に対して透過率の高い900〜1100nmの波長のレーザ光を用いることが好ましい。この波長のレーザを用いることで、透過レーザ光により母材も加熱されて、金ナノ粒子ペースト塗布膜下の母材側からも分散剤の分解と溶剤の蒸発が開始され、金ナノ粒子のバルク化と、母材と金ナノ粒子間の金属原子の相互固相拡散が塗布膜と母材の境界で同時に生起して、密着性に優れた金ナノ粒子レーザ焼結膜を得ることができる。
平均粒子径が5〜7nmの金ナノ粒子は、数百℃でバルク金属化することが知られており、実際に市販されているハリマ化成製の金ナノ粒子の炉焼成温度は炉焼成による焼結温度が260℃となっている。バルク金の融点が1063℃であるのに対して、金ナノ粒子の融点が260℃の温度であることは、CWレーザの照射温度で十分に焼結できることを示している。以上の原理を金ナノ粒子について説明したが銀ナノ粒子や他の貴金属ナノ粒子についても同様である。
プレス切断面にレーザ光を照射する場合も、金ナノ粒子ペーストの塗布と同様に、図5の端子を平面にして、30°程度上部に傾けることでレーザ照射可能である。このレーザ照射の概要を図6に示す。レーザ光ビーム8は、図6のように、焦点を下側にデフォーカスすることで、金ナノ粒子ペースト塗布膜9の全域に、一つのレーザ光ビームで照射することができる。
これら一連の金属めっき端子の製造方法は、プレス加工と連結したプレス工程へのインライン方式で行うことも可能である。湿式の電気めっき方式では、プレス工程への連結は、めっき工程の腐食性ガス発生の問題からプレスとの連結は行われていない。しかし本発明の方法はそれを可能とするばかりでなく、プレス切断面へのめっきもインライン工程で可能としたものである。このことによって、大幅なコスト低減とコネクタ用金属めっき端子の高信頼性化が達成できる。
図5の図面では、母材が銅合金の場合で説明したが、母材全面に湿式の電気ニッケルめっきを施した材料を用いる場合にも本発明は適用できる。全面に電気ニッケルめっきを施した母材の場合でも、プレス切断面には銅合金面が露出するので、露出したプレス断面は、接点部に形成された金めっき膜との電気化学的な電食が発生する。このためプレス切断面にも金めっきがなされていることが好ましい。なおニッケルの標準電極電位は、−0.25V/SHEであり、金の標準電極電位は1.5V/SHEであり、そのままでは1.75Vの高い電位差が生ずるが、ステンレスの合金元素であるニッケルは、容易に不働態化して腐食を停止させる機能を持っている。このために金めっきの下地として、通常3μm程度の電気ニッケルめっきや化学めっき膜が銅合金上に形成される。
以上述べた本発明の最良の実施形態を応用した実施例を、以下説明する。
厚さ0.25mmのコルソン合金C7025(Cu‐3.0Ni‐0.65Si‐0.15Mg)の長尺母材を、連続してプレスマシンに送り出しながら、順送プレス金型により図5(a)の形状にプレス加工する。プレス加工には潤滑剤としてプレスオイルを用いるので、プレスオイルを洗浄剤である炭化水素などにより洗浄してプレスオイルを除去してから、図5の接点部340、350、380の表面に、金ナノ粒子ペースト(ハリマ化成製金ナノ粒子ペーストNPG‐J、平均粒子径5〜7nm)を塗布して塗布膜を形成する。接点部への塗布形状は、図4のオス端子210が接触する範囲に部分的に形成するが、通常は□1.0〜1.5mmである。
塗布装置にはノードソン社の非接触式ディスペンサーであるジェットバルブP‐DoTを用いる。この装置は最小塗布面積がφ0.3mmであり、微細な形状の塗布が可能である。また最小塗布量は3nlの微量塗布が可能なばかりでなく、1秒間に150ドットの吐出が可能である。塗布膜厚は2μmの厚さになるように、単位面積当たりの吐出回数と塗布形状を入力することで、吐出ノズルがプログラム制御により移動する。塗布後、金ナノ粒子ペースト塗布膜中の余分な溶剤成分を乾燥除去するために、200℃程度の温度で1min程度加熱した後、塗布膜直上からレーザ照射する。
レーザ線源にはパルスレーザではなく連続発振のCWレーザを用いる。また波長が1064nmのYAGレーザ、または波長が915nmの半導体レーザを用いる。CWレーザは、金ナノ粒子塗布膜の飛散を防止でき、またパルスレーザのように、瞬間的な高い出力による母材の熱的なダメージを防止できる。また900〜1100nmの波長帯域では、金ナノ粒子ペーストは40〜60%の透過率を有しており、母材までレーザ光が到達することで、母材の温度上昇により、金ナノ粒子と母材原子の相互拡散が促進され、高い密着性が得られる。レーザビームのスポット径は、通常φ0.2〜0.4mmであるが、□1.0〜1.5mmの全面にレーザ照射する場合、ビームを下側にデフォーカスすることにより、照射面を広げることで照射範囲を調節できる。レーザ照射時間は、出力100Wの場合、0.1秒程度とする。この照射条件により最終的な金焼結膜の膜厚は平均0.2μmが得られる。
次に再度連続して金属端子をプレスマシンに送り出しながら、順送プレス金型により図5(b)の形状にプレス加工する。このプレス工程では図5(b)の様に、加締め部370を形成する。その結果、プレスによる切断面である340a、350a、380aの部分が形成される。この340a、350a、380aに隣接する表面の接点部には、図1のように金ナノ粒子レーザ焼結膜がすでに形成されている。
次に、切断部340a、350a、380aに金ナノ粒子ペーストを接点部同様に塗布する。塗布は、プレス切断部を示す図1の、圧縮変形面3、せん断面4、破断面5のすべてに対して、図5の340a、350a、380aに行う。また既に金ナノ粒子焼結膜を形成した、接点部340、350、380との間に隙間が生じないように、図2のように隙間なく塗布する。切断面への塗布は、表面の接点部と同様にディスペンサーを用いるが、メス端子300を平面に対して30°程度傾けて行うことで塗布が可能である。
次に切断部340a、350a、380aの金ナノ粒子塗布膜を200℃で1min程度乾燥し余分な溶剤成分を除去してから、乾燥した塗布膜直上から図6のように、レーザ照射を行う。レーザの照射は接点部表面と同じ条件で行う。レーザビームのスポット径は、通常φ0.2〜0.4mmなので、切断面全面に1回のレーザ照射で焼結を行う場合、図6のように、ビームを下側にデフォーカスすることにより、照射面を広げることで調節する。レーザ照射時間は、出力100Wの場合、0.1秒程度とする。レーザ照射後の金ナノ粒子ペーストの焼結膜は、残存溶媒や分散剤が分解除去されて、バルク金属化し無欠陥の金膜となる。平均粒子径5〜7nmの金ナノ粒子は、260℃程度の温度でバルク金属化するので、母材への熱的なダメージはほとんど無い。
実施例1において、母材表面にあらかじめ湿式の電気ニッケルめっきが厚さ3μm施された電気ニッケルめっき材料を用いる。電気ニッケルめっきには、通常ワット浴が用いられるが、スルファミン酸浴でも構わない。また無電解ニッケルめっきも可能である。プレス加工された切断面には実施例1同様にコルソン合金の面が露出する。
このコルソン合金露出面に対して実施例1の様に、金ナノ粒子ペースト塗布、乾燥、レーザ照射を順次実施例1と同じ条件で行う。この場合、接点部表面には下地ニッケルめっきが存在し、プレス切断面には下地ニッケルめっきの無い構造となるが、金属めっき端子の機能として何ら問題はない。
実施例1において、金ナノ粒子ペーストの替りに、ハリマ化成製銀ナノ粒子ペースト(NPS‐J、平均粒子径12nm)を用いる。銀ナノ粒子ペーストの塗布、乾燥レーザ照射条件は実施例1と同じ条件を適用できる。
実施例1において、図6に示すように、予めプレス前の母材を溶剤洗浄などにより表面清浄化前処理を行った材料に対して、金ナノ粒子ペーストを部分塗布した後、金ナノ粒子ペースト塗布膜へのレーザ照射により、部分金ナノ粒子焼結膜を形成した材料を用いる。金ナノ粒子ペーストの塗布、乾燥、レーザ焼結の条件は、実施例1と同様に行うことができる。この方法では図6に示すように、プレスによる破断面へのめっき後に、再度プレス加工して、新たに生ずる破断面に対して、金焼結膜を連続したプレス工程内で形成することができる。
実施例1において、プレス前の母材として、接点部に予め湿式の電気金めっき法により金めっき膜が形成された母材を用い、その母材のプレス加工によって形成されたプレス切断面の圧縮変形面、せん断面、破断面に金ナノ粒子ペーストを塗布して換装し、その後レーザ照射により金ナノ粒子焼結膜を形成する。本実施例においても、金ナノ粒子ペーストの塗布や乾燥、レーザ焼結の条件は、実施例1と同様に行うことができる。
以上の実施例1から実施例5におけるプロセスは、長尺の銅合金母材(通常厚さ0.1〜0.5mm、幅10〜50mm、長さ300m程度)を連続してプレスマシンに送り出しながら、連続してプレス加工と金ナノ粒子ペーストの塗布、乾燥、レーザ照射を行うものであり、極めて効率的である。またプレス加工による切断面にもレーザ焼結膜を形成できるので、高信頼性のコネクタを製造することができる。
1:金属めっき端子
2:表面
3:圧縮変形面
4:せん断面
5:破断面
6:接点部めっき面
7:断面めっき層
8:レーザ光ビーム
9:金ナノ粒子ペースト塗布膜
10:傾斜角
100:コネクタ
200:オス端子
210:突片
300:メス端子
310:端子部
320:バネ隙間
330:接点部
330a:切断部
340:接点部
340a:切断部
350:接点部
350a:切断部
360:凹み
370:加締め部
380:接点部
380a:切断部
400:ケーブル
2:表面
3:圧縮変形面
4:せん断面
5:破断面
6:接点部めっき面
7:断面めっき層
8:レーザ光ビーム
9:金ナノ粒子ペースト塗布膜
10:傾斜角
100:コネクタ
200:オス端子
210:突片
300:メス端子
310:端子部
320:バネ隙間
330:接点部
330a:切断部
340:接点部
340a:切断部
350:接点部
350a:切断部
360:凹み
370:加締め部
380:接点部
380a:切断部
400:ケーブル
Claims (7)
- 母材のプレス加工により形成された、電気的接続のための金属めっき膜が施された接点部を有するコネクタ用金属めっき端子であって、前記接点部に隣接して形成されたプレス切断面の、圧縮変形面、せん断面及び破断面にも金属めっき膜が施されたことを特徴とする、金属めっき端子。
- 前記接点部に施される金属めっき膜は、湿式の電気めっき膜または金ナノ粒子レーザ焼結膜であることを特徴とする、請求項1記載の金属めっき端子。
- 前記母材は、銅または銅合金であることを特徴とする、請求項1又は2記載の金属めっき端子。
- 請求項1乃至3の何れか一に記載の金属めっき端子の製造方法であって、前記プレス切断面の圧縮変形面、せん断面及び破断面に金属ナノ粒子ペーストを塗布してから、前記金属ナノ粒子ペースト中の溶剤を乾燥し、その後定常波レーザ照射により前記金属ナノ粒子ペーストを焼結して、前記プレス切断面の圧縮変形面、せん断面及び破断面に金属めっき膜を形成することを特徴とする、金属めっき端子の製造方法。
- 前記金属ナノ粒子ペーストは、金または銀からなることを特徴とする、請求項4記載の金属めっき端子の製造方法。
- 前記金属めっき端子を平面に対して傾斜させて、前記プレス切断面の圧縮変形面、せん断面及び破断面への金属ナノ粒子ペースト塗布およびレーザ照射を行う、ことを特徴とする請求項4又は5記載の金属めっき端子の製造方法。
- 長尺の前記母材のプレス加工、金属ナノ粒子ペースト塗布、乾燥、レーザ照射をそれぞれ独立した工程、または連続したインラインプロセスで行う、ことを特徴とする請求項4乃至6の何れか一に記載の金属めっき端子の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019043368A JP2020149770A (ja) | 2019-03-11 | 2019-03-11 | 金属めっき端子及びその製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2020149770A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2022162913A (ja) * | 2021-04-13 | 2022-10-25 | Jx金属株式会社 | コネクタ用オスピン及びコネクタ用オスピンの製造方法 |
WO2024106508A1 (ja) * | 2022-11-16 | 2024-05-23 | 国立大学法人東北大学 | 金属被覆繊維強化プラスチックおよびその製造方法 |
-
2019
- 2019-03-11 JP JP2019043368A patent/JP2020149770A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2022162913A (ja) * | 2021-04-13 | 2022-10-25 | Jx金属株式会社 | コネクタ用オスピン及びコネクタ用オスピンの製造方法 |
JP7394086B2 (ja) | 2021-04-13 | 2023-12-07 | Jx金属株式会社 | コネクタ用オスピン及びコネクタ用オスピンの製造方法 |
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