JP2020148189A - リングギヤ取付構造及び内燃機関のクランクギヤ取付構造 - Google Patents
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Abstract
Description
ところで、内燃機関において、クランク軸に二分割したクランクギヤを取り付けてカムシャフトに設けたカムギヤに動力を伝達する機構として、例えば下記に示すクランクギヤ取付構造が提案されている。
これによりクランクギヤ101はその内周面とクランク軸100の外周面との間の摩擦力により動力を伝達可能となる。なお、クランクギヤ101は不図示のアイドルギヤまたはタイミングベルトを介してカムシャフトに設けられたカムギヤに連結されて動力を伝達している。そして、シリンダ内の爆発によるクランク軸100の回転とカムシャフトによる吸排気弁の開閉のタイミングを合わせている。
この取付構造では半割のクランクギヤ101の分割面にシム106を装着してクランクギヤ101の分割位置のマタギ歯厚を調整している。しかしながら, この取付構造では、シム106とバンド105の装着作業が煩雑でマタギ歯厚の調整作業が困難であり、非常に工数を要するという不具合がある。
この取付構造では、固定ボルト109でクランクギヤ101を取り付ける構造のため、クランクギヤ101とギヤフランジ108の側面同士の接触面圧が高く且つ均一になり、高い伝達トルクを得られる。クランクギヤ101はギヤフランジ108の外周面に対してインロー構造で取付けられている(図14参照)。半割のクランクギヤ101同士の分割部近傍の4ヶ所のボルト穴に対して固定ボルト109としてリーマボルト109aを使用している。
これに伴い、カムシャフトに設けたカムギヤも大径化させるか、またはアイドルギヤを2段化する必要があるためコストアップにつながる。また、ギヤフランジ108のリーマボルト用のボルト穴108aは治具による加工を要するため、段取工程が必要になり加工を無人化できず、これもコストアップの要因になる。
本発明によれば、回転軸に形成したフランジを分割式のリングギヤと例えば分割式の固定部材で挟んで締結ボルトを挿通孔に挿通してフランジの溝部に装着することで位置決めし、固定部材と締結することでリングギヤを回転軸に固定できる。しかも、フランジに締結ボルトを位置決めする溝部を配設したため、フランジの外径寸法を自由に設計できてリングギヤを含む取付構造をコンパクトにできる等、設計の自由度が高まる。
本発明によれば、クランク軸に形成したギヤフランジを分割式のクランクギヤと固定部材で挟んで締結ボルトを挿通してギヤフランジの溝部に装着することで位置決めし、固定部材と締結することでクランクギヤをクランク軸に固定できる。しかも、ギヤフランジに締結ボルトを位置決めする溝部を配設したため、ギヤフランジの外径寸法を自由に設計できてクランクギヤを含む取付構造をコンパクトにできる等、設計の自由度が高まる。
なお、クランクギヤのボルト穴はねじ溝を有さない挿通穴とされ、固定部材のボルト穴にはねじ溝が設けられ、締結ボルトはクランクギヤのボルト穴から挿通され溝部を通されて固定部材に締結される構造とすることができる。またこれとは逆に、クランクギヤのボルト穴にはねじ溝が設けられ、固定部材のボルト穴はねじ溝を有さない挿通孔とされ、締結ボルトは固定部材のボルト穴から挿通され溝部を通されてクランクギヤに締結される構造とすることもできる。また、クランクギヤのボルト穴、固定部材のボルト穴は両方ともねじ溝を有さない挿通孔とされて、締結ボルト及びナットにより締結される構造とすることもできる。
クランクギヤをインローでギヤフランジに装着することでクランクギヤのマタギ歯厚は許容値内に納まるため調整が不要であり、組立工数を削減できる。
ギヤフランジに配列された複数の溝部に不等ピッチ部分を設けることで、クランクギヤの位相を誤って組み付けることがなくなり正しい位置に装着できる。
複数のクランクギヤの分割部近傍をリーマボルトで締結固定することで高精度に装着できる。
クランク軸の外周面とクランクギヤの内周面が接触しないためフレッティング摩耗を発生させずに駆動力を伝達でき、駆動トルクを上げる必要が有る場合等においても安全性の高い動力伝達を行える。
複数のクランクギヤの連結部と複数の当て板の分割部とを周方向に互いにずらすことで、取付け強度が高くなる。
図1乃至図3に示すエンジンのクランクギヤ取付構造1において、図示しないシリンダの連接棒の往復運動を回転運動に変換するクランク軸2が設置されている。クランク軸2の一端部にはリング状の出力フランジ3が一体に形成され、出力フランジ3には周方向に所定間隔で挿通孔3aが形成されている。出力フランジ3の挿通孔3aは例えばエンジンから出力を取り出すための弾性継手取付用のボルト穴である。
この取付位置で、当て板10の側面に形成したボルト穴10aはギヤフランジ5の溝部6に対向する位置にそれぞれ形成されている。また、ギヤフランジ5に形成された溝部6はクランクギヤ7の挿通孔7cに対向する位置にそれぞれ形成されている。しかも、当て板10はギヤフランジ5とは異なる方向で二分割されている。
クランクギヤ7の取り付けに際し、図4に示すように、二分割のクランクギヤ7の段付き部7bをインローでギヤフランジ5の肩部に乗せて位置決めし、ギヤフランジ5に対してクランクギヤ7と反対側の側面に当て板10を当接させてクランク軸2に設置する。そして、締結ボルト11またはリーマボルト12をクランクギヤ7側の挿通孔7cから挿入してギヤフランジ5の溝部6を通して当て板10のボルト穴10aにねじ込み固定する。
これにより、二分割されたクランクギヤ7と当て板10はそれぞれ不等ピッチの有無により誤組立を防止できる。なお、溝部6、挿通孔7c、ボルト穴10aの不等ピッチは1か所に限定されることなく、複数個所に設定してもよい。
なお,クランクギヤ7の位置がクランク軸2の位置とずれるとシリンダの吸排気弁及び燃料噴射ポンプを作動するためのカムを回転させるタイミングがずれるため、図示しないクランクギヤ,アイドルギヤ,カムギヤには基準となる噛み合い部にアイマークを設けてギヤフランジ5の溝部6と位置決めする。これによって、シリンダ内の爆発による連接棒の往復動と燃料噴射タイミング及び吸排気弁の開閉のタイミングを合わせることができる。
また、組み立て状態で、図4に示すように、クランクギヤ7の内周面とクランク軸2の外周面(ジャーナル)は接触しない様に全周に隙間kを設けることで,運転中のフレッティング摩耗による損傷を防止している。隙間kがなく、クランクギヤ7の内周面とクランク軸2の外周面(ジャーナル)が接触するとクランクギヤ7に駆動トルクがかかり、フレッティング摩耗が生じてクランク軸2が損傷するおそれがある。
クランクギヤ取付構造1の組み立てに先立って、図6に示すようにクランク軸2のギヤフランジ5の外周面5aに例えばNC加工機を用いてエンドミル14によって溝部6を所定間隔で周方向に切削加工する。その際、溝部6の加工間隔は角度θ1に設定するとし、一部の溝部6の間隔を不等ピッチの角度θ2に設定する。
クランクギヤ7の挿通孔7cとギヤフランジ5の溝部6と当て板10のボルト穴10aとは少なくとも1か所不等ピッチに形成されているため、溝部6に対して二分割のクランクギヤ7の挿通孔7cと二分割の当て板10のボルト穴10aとを一致させることで、クランクギヤ7と当て板10を誤り無く位置決めできる。
エンジンの運転時に、シリンダブロック内のピストンの往復運動を連接棒を介して伝達されて回転するクランク軸2から、クランクギヤ7を介して不図示のアイドルギヤを介してカムギヤ及びカムシャフトに回転を伝達する。その際、クランクギヤ7の内周面とクランク軸2の外周面(ジャーナル)とは隙間kによって非接触であるため、フレッティング摩耗によるクランク軸2の損傷や折損を防止できる。
図7(a)で示す例は本願のクランクギヤ取付構造を用いた実施例であり、シリンダブロック120にクランクギヤ121、アイドルギヤ122、カムギヤ123が配置されている。この例では、クランクギヤ121、アイドルギヤ122、カムギヤ123の歯数は、例えばそれぞれ46、85、92である。カムギヤ123はクランクギヤ121の2倍の直径となり、この例ではシリンダブロック120からカムギヤ123がはみ出るものの、カムギヤを覆う為の図示しないギヤケースを必要最小限のサイズとすることができる。なお、アイドルギヤ122はクランクギヤ121からカムギヤ123に回転を伝えるためのものであり、ギヤの配置に応じた適切な歯数とされる。
図7(b)に示す例は従来の第三のクランクギヤ取付構造を用いた比較例である。この比較例では、クランクギヤ131、アイドルギヤ132、カムギヤ133の歯数は、例えばそれぞれ64、57、128である。上述した実施例に比べて比較例ではクランクギヤ131の径が大きくなり、それと同じ比率でカムギヤ133の径も大きくなるため、シリンダブロック130から大きくはみ出す。同様にギヤケースが肥大化して機関側面側に大きく張り出す為,機関室空間をいたずらに圧迫する原因となる。
しかも、クランク軸2の外周面(ジャーナル)とクランクギヤ7の内周面が隙間kによって非接触に保持されるため駆動力伝達の際にフレッティング摩耗が発生しない。そのため、カム軸の駆動トルクを上げる必要が有る場合等においても安全性の高い製品を提供可能である。
また、クランクギヤ7の伝達トルクについてもギヤフランジ5をクランクギヤ7と当て板10で挟み込む形で固定したため、上述した第三のクランクギヤ取付構造と同等レベルの高い許容伝達トルクが得られる。
しかも、二分割したクランクギヤ7の連結部におけるギヤ7aのマタギ歯厚は、クランクギヤ7の段付き部7bをインローでギヤフランジ5の外周面5aに載置させて連結することで、自ずと許容値内に納まるため調整が不要で組立工数を削減できる。
また、上述の実施形態では、クランクギヤ7を段付き部7bでギヤフランジ5の外周面5aにインローで装着したが、インロー構造でなくてもよい。例えば、クランクギヤ7の側面をギヤフランジ5の側面に当接させて、その内周面をクランク軸2の外周面に装着してもよい。
上述した実施形態では、舶用のエンジンに用いる内燃機関のクランクギヤ取付構造1について説明したが、これに代えて発電用エンジンやその他の種類のリングギヤ取付機構に用いてもよい。この場合、クランク軸2に代えて回転軸に二分割のリングギヤ(クランクギヤ7)を装着する。その際、ギヤフランジに代えてフランジにリングギヤを装着する。
2 クランク軸
5 ギヤフランジ
6 溝部
7 クランクギヤ
7a ギヤ
7b 段付き部
7c 挿通孔
10 当て板
10a ボルト穴
11 締結ボルト
12 リーマボルト
14 エンドミル
Claims (7)
- 回転軸と、
前記回転軸に形成されていて外周面に沿って複数の溝部が形成されたフランジと、
前記回転軸に装着されることでリング状のギヤを形成すると共に周方向に沿って複数のボルト穴が形成された分割式のリングギヤと、
前記フランジに対して前記リングギヤと反対側に配設されて前記リングギヤのボルト穴に対応する位置にボルト穴が形成された固定部材と、
前記溝部に配置されて前記フランジを挟んで前記リングギヤと前記固定部材を締結する締結ボルトと、
を備えたことを特徴とするリングギヤ取付構造。 - クランク軸と、
前記クランク軸に形成されていて外周面に沿って複数の溝部が形成されたギヤフランジと、
前記クランク軸に装着されることでリング状のギヤを形成すると共に周方向に沿って複数のボルト穴が形成された分割式のクランクギヤと、
前記ギヤフランジに対して前記クランクギヤと反対側に配設されていて前記クランクギヤのボルト穴に対応する位置にボルト穴が形成された固定部材と、
前記溝部に配置されて前記ギヤフランジを挟んで前記リングギヤと前記固定部材を締結する締結ボルトと、
を備えたことを特徴とする内燃機関のクランクギヤ取付構造。 - 前記クランクギヤは前記ギヤフランジとインロー構造に装着されている請求項2に記載された内燃機関のクランクギヤ取付構造。
- 前記ギヤフランジに配列された複数の前記溝部は周方向に不等ピッチ部分を有している請求項2または3に記載された内燃機関のクランクギヤ取付構造。
- 前記複数のクランクギヤの分割部近傍に締結された前記締結ボルトはリーマボルトである請求項2から4のいずれか1項に記載された内燃機関のクランクギヤ取付構造。
- 前記クランクギヤの内周面と前記クランク軸の外周面との間に全周に亘って隙間が形成されている請求項2から5のいずれか1項に記載された内燃機関のクランクギヤ取付構造。
- 前記固定部材は組み合わせることでリング状に形成される分割式の当て板であり、
前記当て板の分割部は前記クランクギヤの分割部と周方向に位置がずれている請求項2から6のいずれか1項に記載された内燃機関のクランクギヤ取付構造。
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