JP2020146889A - 光学用ポリエステルフィルムおよび光学用ポリエステルフィルムの製造方法 - Google Patents

光学用ポリエステルフィルムおよび光学用ポリエステルフィルムの製造方法 Download PDF

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Koji Noda
紘志 野田
正大 長谷川
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Abstract

【課題】干渉斑の抑制に優れた光学用ポリエステルフィルムおよび光学用ポリエステルフィルムの製造方法を提供する。【解決手段】少なくとも一方の表面が、質量分析計により測定されるポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)が0.15以下である光学用ポリエステルフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、フィルムの干渉斑抑制に優れた光学用ポリエステルフィルムおよび光学用ポリエステルフィルムの製造方法に関するものである。
ポリエーテルサルフォン、エポキシ、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリエステル等に代表される熱可塑性樹脂は、液晶をはじめとした光学分野でも広くフィルムとして利用されている。それらフィルムの中でも、ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、低価格性の観点から好ましく用いられ、特にフィルムの強度を飛躍的に向上させるため、フィルムの製膜走行方向もしくはその走行方向に対して垂直な方向に延伸する逐次二軸延伸が多く採用されている。また、その走行方向の延伸においては、複数の延伸ロールの周速差によって延伸する方法が採用され、その延伸ロールには、走行するフィルムを押圧させるためにニップロールが設けられ、ニップロールの表面には、製膜中の振動やフィルムムズレを抑制するために、ニップロールの表層にシリコ−ンゴムが被覆されたニップロールが提示されている(特許文献1)。
さらに、ポリエステルフィルムは、光学フィルムの中でも、近年、タッチパネル、液晶ディスプレイパネル(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等の表示部材用途をはじめ、各種用途に用いられている。
特にこのような用途においては、ポリエステルフィルム上にハードコート層が積層されたハードコートフィルムが使用されている。また、基材であるポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、これらの中間層として、接着性を有する塗布層が設けられるハードコートフィルムとする場合が多い。
また、基材であるポリエステルフィルム上にハードコート層を積層した場合、ハードコート層と基材であるポリエステルフィルムとの屈折率が異なる場合には界面反射による干渉斑が生じ、視認性が悪化することから、干渉斑の低減が求められている。そのため、ハードコート層上に屈折率を調整する塗布層(AR層、インデックスマッチング層)や、防汚性を有する塗布層を形成した後においても、画像表示装置などの視認性が悪化する場合や、高級感が損なわれる場合がある。
特に近年、さらなる大画面化、高精細化、高級化にともない、特に蛍光灯下での干渉斑の抑制、透明性に対する要求レベルが高くなってきている。
そういった要求の元、ハードコート層を設けた後の干渉斑を抑制するために、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の屈折率を調整し、最終製品となる干渉斑を抑制する提案がされている。(特許文献2)
特開平10−45292号公報 国際公開第2013/137101号パンフレット
しかしながら、特許文献1に記載されているニップロールを用いると、ニップロールから微量の析出物が発生するため、そのニップロールを用いて製膜するとフィルム表面にニップロールからの析出物が付着する結果、干渉斑が悪化するという課題を有していた。また、特許文献2では、フィルムの組成を調整して干渉斑の抑制をする手法であり、一定の干渉斑抑制効果は得られるものの、設備環境によるフィルムの干渉斑悪化を抑制することは検討がなされていなかった。
本発明は上記事情に鑑み、干渉斑抑制に優れた光学用ポリエステルフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムであれば、干渉斑の抑制に優れた光学ポリエステルフィルムを製造できることを見出した。
すなわち、上記目的を達成する本発明は以下により得ることができる。
(1)少なくとも一方の表面が、質量分析計により測定されるポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)が0.15以下である光学用ポリエステルフィルム。
(2)前記表面を有する表層が機能層である(1)に記載の光学用ポリエステルフィルム。
(3)フィルムを複数の延伸ロールの周速差でフィルムの走行方向に延伸する工程を有するポリエステルフィルムの製造方法であって、前記延伸ロールはフィルムを押圧する芯金上にシリコーンゴムが被覆されたニップロールを備えてなり、前記ニップロールは、ニップロール表面のポリジメチルシロキサンを除去したロールである光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
(4)前記ニップロール表面のポリジメチルシロキサンの除去が、ニップロールを加熱処理した後にニップロール表面に析出したポリジメチルシロキサンを除去する工程を含む(3)に記載の光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
(5)前記加熱処理が70℃以上で20日以上行う(4)に記載の光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
本発明によれば、干渉斑の抑制に優れた光学用ポリエステルフィルムおよびその製造方法を提供することができる。
本発明の光学ポリエステルフィルムを実施するための形態について、以下、説明する。
本発明のポリエステルフィルムは、透明性、干渉斑抑制の点から、ポリエステル樹脂を主成分とする。本発明において、ポリエステル樹脂を主成分とするとは、フィルムを構成する樹脂成分全体を100質量%としたときに、ポリエステル樹脂を90質量%以上含有することをいう。このとき、ポリエステル樹脂は1種類であっても複数種類を混合したものであってもよく、後者の場合は、全てのポリエステル樹脂を合算して含有量を算出するものとする。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート、及びこれらの共重合体等を上げることができ、単独で又は組み合わせて用いることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面が、ポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)が0.15以下であることが必要である。(P/K)はフィルム表面にポリジメチルシロキサン成分がどの程度存在しているかを測る指標であり、この値が大きいとポリジメチルシロキサン成分が多く存在していることを表す。(P/K)が0.15以下であることで、飛躍的に光学用ポリエステルフィルムの干渉斑の発生を抑制することができ、機能層を有する場合の干渉斑の発生も抑制することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、前記(P/K)が0.15以下である表面を有する表層が機能層であっても良い。ここで、機能層とは、例えば、ポリエステルフィルムとの密着性を付与するための易接着層、ポリエステルフィルムとハードコート層との屈折を調整するための屈折調整層、ハードコート層などがあげられ、これに限定されない。
(P/K)が0.15を超えると、ポリエステルフィルムの前記表層に機能層を有する際の干渉斑が発生しやすくなる。干渉斑自体は、ポリエステルフィルム単層である場合は目視では確認されにくいが、機能層を有する場合、ポリエステルフィルムの表面から機能層表面にまでポリシロジメチルシロキサンが析出し、干渉斑が確認されやすくなる。これは、最終製品とした場合の例えばハードコートフィルムとした場合は、ポリエステルフィルムよりも厚みを増し、さらには、機能層との屈折差が発生するために干渉斑が確認されやすくなるものと考えられる。本発明のポリジメチルシロキサンによる干渉斑は、フィルム上の一部分のみに線状もしくは円形状の干渉斑が局所的に確認されるものであり、従来から知られるフィルム全体に虹模様に見える干渉斑とは異なる。本発明の干渉斑の確認は、詳しくは後述するが、ナトリウムランプに照らされる元ではフィルムがオレンジ色ベースとなり、その上にやや黒色を帯びて干渉斑を確認することができる。
好ましいポリジメチルシロキサンに由来されるフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)は、0.10以下であり、さらには0.05以下である。機能層は、その組成のガラス転移温度、融点などによって加工条件が異なるところ、(P/K)を上記のより好ましい範囲とすると、様々な加工条件においてもポリジメチルシロキサンによる干渉斑の抑制に優れることから好ましい。
機能層を構成する材料は特に限定されるものではない。機能層として、易接着層を設ける場合は、フィルムと機能層の密着性を付与させるものであればよく、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂などを好適に用いることができ、異なる2種の樹脂、例えば、ポリエステル樹脂とウレタン樹脂、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂、あるいはウレタン樹脂とアクリル樹脂を組み合わせて用いてもよい。
機能層として屈折率調整層を設ける場合、屈折率調整層を構成する材料は特に限定されるものではなく、フィルムと他部材との屈折率差を調整できるものであればよい。例えば、屈折率調整層の上にさらにハードコート層を設ける場合は、屈折率調整層を構成する樹脂としては、ポリエステルフィルムの屈折率と、ハードコート層の屈折率の中間の屈折率となる樹脂を選択することが好ましい。例えば、特開2004−107627号公報は、易接着、屈折率調整を1つの層で担っており、屈折率の異なる2種類の樹脂を用い、易接着層の表層から基材層へ向かって屈折率を連続的に向上させる方法がある。用いられる材料としては、上述した易接着層同様の樹脂を用いることができる。
機能層としてハードコート層を設ける場合、ハードコート層を構成する材料は特に限定されるものではなく、可視光線を透過するものであればよく、光線透過率が高いものが好ましい。用いられる材料としては、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、活性線硬化型樹脂などである。特に、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、活性線硬化型樹脂は、耐擦傷性、生産性などの点で好適に用いることができる。
機能層の厚みは、特に限定されないが、通常は0.01〜5μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.02〜2μm、最も好ましくは0.05μm〜0.5μmである。機能層の厚みが薄すぎるとそれぞれの目的とする機能不足となる場合がある。
本発明のポリエステルフィルムの層構成としては、機能層を除いて、単層、二種二層、二種三層、二種三層等のどのような層構成であってもよい。
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、10〜500μmである。
本発明のポリエステルフィルムは、ヘイズが3.0%以下であると、透明性に優れ、光学用途に好適に用いられるため好ましい。より好ましくは2.0%以下である。
本発明のポリエステルフィルムは、透明性に優れ干渉斑のない優れた品位を有するため、タッチパネル、液晶ディスプレイパネル(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)等の表示部材用途や、偏光子などの光学部材を保護する用途などの光学用フィルムとして好ましく用いることができる。
次に、本発明の光学用ポリエステルフィルムの製造方法について、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの例を用いて説明するが、これに限定されるものではない。
ポリエステルフィルムを構成する極限粘度0.5〜0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し260〜300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10〜60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作製する。
次に、未延伸フィルムをフィルムの走行方向(長手方向あるいは縦方向という場合がある)およびフィルムの走行方向と直交する方向(幅方向あるいは横方向という場合がある)に逐次あるいは同時に延伸して二軸延伸ポリエステルフィルムとする。逐次で二軸延伸を行う場合、機能層をポリエステルフィルム製膜時に同時に設けることができるという点で好ましい。
逐次で二軸延伸を行う場合、まずフィルムの走行方向に延伸した後、フィルムの走行方向と直交する方向に延伸を行うことが好ましい。フィルムの走行方向の延伸は、2本以上の複数の延伸ロールの周速差でフィルムの走行方向に延伸する。該延伸ロールの周速差でフィルムの走行方向に延伸するに際し、延伸ロールはフィルムを押圧する芯金上にシリコーンゴムが被覆されたニップロールを用いることが好ましい。シリコーンゴムで被覆することで、延伸時によるフィルムのズレによるキズの発生を抑制することができる。また、ニップロールは、ニップロール表面のポリジメチルシロキサンを除去したロールとすることが好ましい。ニップロールは、芯金上にシリコーンゴムが被覆されているため、フィルムの延伸温度領域付近(Tg±10℃)に加熱された延伸ロールからの伝熱と、延伸ロール間に設けられたラジエーションヒーターによって、ニップロール自体が輻射熱により加熱され、シリコーンゴムが温められることにより表面にポリジメチルシロキサンが析出されやすくなる。シリコーン樹脂には、ポリジメチルシロキサンが表層や、内部に多量に含まれている。そのため、ポリジメチルシロキサンは一定の熱量(70℃以上)を受けると、シリコーンゴムの内部に含有するポリジメチルシロキサンが表面に完全に析出されるまで、連続的に内部から表面に析出しやすくなり、フィルム表面に転写されてしまう。そのため、フィルム表面にポリジメチルシロキサンを付着しないようにするには、ニップロールの表面のポリジメチルシロキサンの除去を継続的に行う必要があるが、通常、フィルムの製膜は連続して生産されるため、逐一製膜を停止してニップロール表面に析出したポリジメチルシロキサンをふき取りなどで除去すると生産効率が低下してしまう。そのため、長期間、逐一製膜を停止する必要がなく、安定した干渉斑のない生産性を目的に、ニップロールは、被覆されたシリコーンゴムの内部に含有するポリジメチルシロキサンの多くが表面に析出するように加熱処理した後、ニップロール表面に析出したポリジメチルシロキサンを除去する工程を経たニップロールであることが好ましい。
本発明においては、あらかじめ、シリコーンゴムからポリジメチルシロキサンを除去するため、フィルムの製造前に、ニップロールを70℃以上20日以上加熱処理させ、表面に析出したポリジメチルシロキサンを排除しようとするものである。ニップロールの加熱処理温度は好ましくは80℃以上であり、さらに好ましくは90℃以上である。そのようにすれば、シリコーンゴムとフィルムが接触しても、フィルム表面にポリジメチルシロキサンが転写されず、干渉斑の抑制も可能となる。
また、本発明のポリエステルフィルムにおいて、易接着層や屈折調整層といった機能層を設ける場合、ポリエステルフィルムの製膜時に(インラインで)積層させる方法がある。この方法は、フィルムの走行方向に延伸した後、機能層を構成する樹脂を含む塗布液をフィルム上に塗設し、その後乾燥した後に走行方向とは垂直な方向に延伸、あるいは、フィルムの走行方向に延伸した後、機能層を構成する樹脂を含む塗布液をフィルム上に塗設した後、走行方向とは垂直な方向に延伸しながら塗布液を乾燥させ二軸延伸ポリエステルフィルムを得る方法である。
上記のインライン法で機能層を設ける場合、フィルムの表面がシリコーンゴムで被覆されたニップロールと接触するのは塗布液を塗布する前であるため、ニップロールから転写されるポリジメチルシロキサンは、ポリエステル層と機能層の間に介在する(機能層の表面には存在しない)はずであり、ポリエステル層と機能層の間に介在するポリジメチルシロキサンによっては干渉斑の問題を引きおこすことはないと考えていた。しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、このポリエステルフィルム表面と機能層の間に介在するポリジメチルシロキサンは、熱付与(フィルムが加熱されること)によって、機能層を通じて機能層表面に析出し、干渉斑を発生させる要因となることが判った。
この機能層を通じて機能層表面に析出するポリジメチルシロキサンは、ポリエステルフィルムの製造工程直後においては、確認されにくい。しかしながら、例えば、ハードコート層を構成するための塗布乾燥工程や、ハードコ−ト層を設ける前に、あらかじめ寸法安定性を付与するために、ポリエステルフィルムのアニール処理(熱付与処理)が行われる場合は、ポリエステル層と機能層の間に介在するポリジメチルシロキサンが機能層を通じて機能層の表面に析出することが判った。
ニップロール表面にポリジメチルシロキサンを析出させるためには、被覆されたシリコーンゴムの内部に含有するポリジメチルシロキサンの多くが表面に析出するように加熱処理した後、ニップロール表面に析出したポリジメチルシロキサンを除去する工程を有することが好ましい。具体的には、ニップロールを70℃以上で20日以上加熱処理した後、ニップロール表面に析出したポリジメチルシロキサンを除去する工程を有することが好ましい。好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上の加熱処理とすることが好ましい。特段に上限を設ける必要はないが、300℃を超えて、あるいは60日を超えて加熱すると、シリコーンゴムが熱劣化し、フィルムにキズが入りやすくなる場合がある。さらには、90℃以上で25日以上、加熱処理することが好ましい。ニップロール表面に析出したポリジメチルシロキサンを除去する方法は特に限られるものでは無く、サンドペーパーで表層を研磨する方法、不織布や、ガーゼなどの布類でニップロール表面を拭き取る方法、水洗浄やエタノールといった薬液でニップロール表面を洗い流す方法などが挙げられる。
このフィルムの走行方向への延伸は、未延伸フィルムを70〜100℃に加熱された延伸ロール間で2.5〜5.0倍延伸することが好ましい。このフィルムに必要に応じて空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面に機能層を構成する水系塗剤を塗布する。この塗布されたポリエステルフィルムをクリップで把持して乾燥ゾーンに導き、塗布層を乾燥させた後に70〜150℃の温度で加熱を行い、引き続き連続的に70〜150℃の加熱ゾーンで走行方向とは垂直な方向に2.5〜5.0倍延伸し、続いて200〜260℃の加熱ゾーンで5〜40秒間熱処理を施し、100〜200℃の冷却ゾーンを経て結晶配向の完了した逐次二軸延伸ポリエステルフィルムを得る。
なお、上記熱処理中に必要に応じて3〜12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は縦、横逐次延伸、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。得られた逐次二軸延伸ポリエステルフィルムの端部をカットした後に巻き取り中間製品とし、その後スリッターを用いて所望の幅にカット後、円筒状のコアに巻き付け所望の長さのポリエステルフィルムロールを得ることができる。なお、巻き取り時に巻姿改善のためにフィルム両端部にエンボス処理を施しても良い。
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。
本発明の測定方法、評価方向は次の通りである。
A.ポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度ピーク強度(P)
ポリエステルフィルムをA4サイズに切り出し、試料とした。試料表面のポリジメチルシロキサンピーク強度を飛行時間型2次イオン質量分析(TOF−SIMS)を用いて測定した。ポリエステルフィルムの基本骨格を表すフラグメントのピーク(ポリエチレンテレフタレート;C (Mass149)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート;C11)(Mass154)のピーク強度(K)とポリジメチルシロキサンの存在を示すフラグメントSi(CH (Mass73)のピーク強度(P)の比(P/K)をランダムに10点測定し、平均値をポリジメチルシロキサンピーク強度として評価した。
装置;Physical Electronics社製 TFS−2000
一次イオン;69Ga+
測定面積(ラスターサイズ);180μm角
測定時間;3分間
測定真空度;4×10−7Pa
ポリジメチルシロキサンピーク強度(P/K)=
ポリジメチルシロキサン(Si(CH (Mass73))のピーク強度(counts)/ポリエステルフィルムの骨格を表すピーク強度(counts)
B.干渉斑の評価
ポリエステルフィルムに易接着層を有さない場合は、オフラインにて下記塗材を乾燥後の厚みが100nmとなるように塗布乾燥し易接着層を設けた後、その上に、ポリエステルフィルムに易接着層がある場合は、その易接着層上に、ハードコート層を構成する活性線硬化型樹脂(日本合成化学工業(株)製紫光UV−1700B[屈折率:1.50〜1.51])をバーコーターを用いて硬化後の膜厚が1.5μmとなるように均一に塗布した。
次いで、ハードコート層の表面から9cmの高さにセットした120W/cmの照射強度を有する集光型高圧水銀灯(アイグラフィックス(株)製H03−L31)で、積算照射強度が300mJ/cmとなるように紫外線を照射し、硬化させ、ポリエステルフィルム上にハードコート層を積層したハードコートフィルムを得た。なお、紫外線の積算照射強度測定には工業用UVチェッカー(日本電池(株)製UVR−N1)を用いた。
なお、ハードコート層の屈折率はシリコンウエハー上にスピンコーターにて形成された塗膜について、位相差測定装置(ニコン(株)製NPDM−1000)で633nmの屈折率を測定した。結果、ハードコート層の屈折率は1.50であった。
次いで、得られたハードコートフィルムから、8cm(ポリエステルフィルムの走行方向とは垂直な方向)×10cm(ポリエステルフィルム走行方向)の大きさのサンプルを切り出し、ハードコート層の反対面に黒色光沢テープ(ヤマト(株)製ビニ−ルテープNo.200−50−21:黒)を気泡を噛み込まないように貼り合わせた。
このサンプルを暗室にてナトリウムランプ(フナテック株式会社製FNA−35)の直下30cmに置き、視角を変えながら目視により線上あるいは円形状の干渉縞の程度を観察し、以下の評価を行った。実用レベルのものはBとし、A,Sを良好とした。
S:干渉縞がほぼ見えない
A:干渉縞がわずかに見える
B:弱い干渉縞が見える。
C:干渉縞が強い。
<塗液>
ポリエステル樹脂固形分を100重量部とした時に以下成分を含有する、ポリエステル樹脂固形分換算の濃度が5.0重量%である水溶液とした。
ポリエステル樹脂(A1):40重量部
ポリエステル樹脂(B1):60重量部
メラミン系架橋剤(三和ケミカル社(株)製“ニカラック”MW12LF):40重量部(固形分換算)
オキサゾリン系架橋剤(日本触媒(株)製“エポクロス”WS500):10重量部(固形分換算)
粒径140nmのコロイダルシリカ:1.5重量部
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートペレット(PET)の調製として、酸成分としてテレフタル酸を、グリコール成分としてエチレングリコールを用い、三酸化アンチモン(重合触媒)を得られるポリエステルペレットに対してアンチモン原子換算で300ppmとなるように添加し、重縮合反応を行い、極限粘度0.63dl/g、カルボキシル末端基量40当量/トンのポリエチレンテレフタレートペレット(PET)を得た。
得られたポリエチレンテレフタレートペレット(極限粘度0.63dl/g)を真空中160℃で4時間乾燥した後、押出機に供給し285℃で溶融押出を行った。ステンレス鋼繊維を焼結圧縮した平均目開き5μmのフィルターで、次いで平均目開き14μmのステンレス鋼粉体を焼結したフィルターで濾過した後、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。なお、この時キャスティングドラムの反対面から温度10℃の冷風を長手方向に8段設置した間隙2mmのスリットノズルから風速20m/sでフィルムに吹き付け、両面から冷却を実施した。
この未延伸フィルムを予熱ロールにて70℃に予熱後、上下方向からラジエーションヒーターを用いて90℃まで加熱しつつニップロールで押圧しながら二本の延伸ロール間の周速差を利用して長手方向に3.1倍延伸し、引き続き冷却ロールにて25℃まで冷却し、一軸配向(一軸延伸)フィルムとした。
ニップロールは、二本の延伸ロールにおいて、前段延伸ロールに対応するニップロールをニップロール1、後段延伸ロールに対応するニップロールをニップロール2とし、それぞれのニップロールについて表1に記載の事前に加熱処理した後、エタノールを染み込ませた不織布でニップロール表面に析出したポリジメチルシロキサンを除去したものを用いた。
次いで、機能層(易接着層)を形成するために、下記塗液を上記一軸延伸フィルムの両面にバーコーターを用いて塗布した。なお、メタリングワイヤーバーは直径13mm、ワイヤー径0.1mm(#4)のものを用いた。
<塗液>
ポリエステル樹脂固形分を100重量部とした時に以下成分を含有する、ポリエステル樹脂固形分換算の濃度が5.0%である水溶液。
ポリエステル樹脂(A1):40重量部
ポリエステル樹脂(B1):60重量部
メラミン系架橋剤(三和ケミカル社(株)製“ニカラック”MW12LF):40重量部(固形分換算)
オキサゾリン系架橋剤(日本触媒(株)製“エポクロス”WS500):10重量部(固形分換算)
粒径140nmのコロイダルシリカ:1.5重量部。
易接着層を塗布した1軸延伸フィルムをクリップで把持してオーブン中にて雰囲気温度120℃で乾燥・予熱し、引き続き連続的に120℃の延伸ゾーンで幅方向に3.7倍延伸した。得られた二軸配向(二軸延伸)フィルムを230℃の加熱ゾーンで10秒間熱処理を実施後、230℃から120℃まで冷却しながら5%の弛緩処理を施し、続けて50℃まで冷却した。引き続き幅方向両端部を除去した後に巻き取り、ポリエステルフィルムに、100nmの易接着層が積層された厚さ188μm、ヘイズ0.9%(JISK7105(1981))のポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
(実施例2)
易接着層を設けないこと以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
(実施例3〜実施例9、比較例1〜比較例4)
ニップロールの事前加熱処理条件を表1に変更すること以外は実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
Figure 2020146889

Claims (5)

  1. 少なくとも一方の表面が、質量分析計により測定されるポリエステル基本骨格に由来するフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)が0.15以下である光学用ポリエステルフィルム。
  2. 前記表面を有する表層が機能層である請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
  3. フィルムを複数の延伸ロールの周速差でフィルムの走行方向に延伸する工程を有するポリエステルフィルムの製造方法であって、前記延伸ロールはフィルムを押圧する芯金上にシリコーンゴムが被覆されたニップロールを備えてなり、前記ニップロールは、ニップロール表面のポリジメチルシロキサンを除去したロールである光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
  4. 前記ニップロール表面のポリジメチルシロキサンの除去が、ニップロールを加熱処理した後にニップロール表面に析出したポリジメチルシロキサンを除去する工程を含む請求項3に記載の光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
  5. 前記加熱処理が70℃以上で20日以上行う請求項4に記載の光学用ポリエステルフィルムの製造方法。
JP2019045450A 2019-03-13 2019-03-13 光学用ポリエステルフィルムおよび光学用ポリエステルフィルムの製造方法 Pending JP2020146889A (ja)

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