JP2020145194A - 導電性パターンの製造方法、及びプラズマ処理装置 - Google Patents

導電性パターンの製造方法、及びプラズマ処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】処理時間の短縮と低抵抗化とを図ることが可能な導電性パターンの製造方法及びプラズマ処理装置を提供する。【解決手段】チャンバー2と、チャンバー内に配置されたステージ3と、ステージと対向する位置に配置された、誘電体13と、金属からなる窓部材4と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器5と、マイクロ波発生器と窓部材4との間の導波管6と、チャンバー内にガスを供給するためのガス供給口8と、排気口9と、内圧調整バルブ14と、を有するプラズマ処理装置1による導電性パターンの製造方法において、酸化銅を分散させたインクを用いてスクリーン印刷等の方法で基板上にパターンを形成した被処理物7を、水が存在する状態でプラズマ処理を行う。このとき、水の量を、チャンバー内ガス分圧で3%から100%にする。プラズマ中で水が分解することで水素ラジカルが発生し、酸化銅を還元する。【選択図】図2

Description

本発明は、導電性パターンの製造方法、及びプラズマ処理装置に関する。
基材上に導電性パターンを形成する方法として、例えば、金属酸化物粒子を分散させたインクを、基材上に印刷や塗布法で描画してパターンを形成し、該パターンを、還元性雰囲気下で加熱して還元焼結させて、導電性パターンを形成する方法が知られている。
しかしながら、この方法では、必要とされる処理温度が高く、PETやPEN等の耐熱性の低い基板材料には適用し難い。更に、処理時間は数十分と長い。
これに対し、プラズマ処理による方法では、PETやPEN等、比較的耐熱性の低い基板に適用が可能であり、また、数分以内に導電性パターンを形成することができる(特許文献1参照)。
特許第6072709号公報
しかしながら、量産化に対応するためには、抵抗値を上昇させることなく、更なる処理時間の短縮が求められている。
処理に時間が必要な要因の一つとして、導体原料をインク化する際に添加される分散剤や界面活性剤等の有機化合物を分解除去するために時間を要することが考えられる。
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、処理時間の短縮と低抵抗化とを図ることが可能な導電性パターンの製造方法、及びプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
本発明における導電性パターンの製造方法は、酸化銅を分散させたインクを用いて基板上にパターンを形成した被処理物を、水が存在する状態でプラズマ処理を行い、このとき、水の量を、チャンバー内ガス分圧で3%から100%にすることを特徴とする。
また、本発明における導電性パターンの製造方法は、酸化銅を分散させたインクを用いて基板上にパターンを形成した被処理物を、減圧されたチャンバー内に収容し、水が存在する状態でプラズマ処理を行い、このとき、水の量を、チャンバー内ガス分圧で3%から100%にすることを特徴とする。
本発明では、更に、前記チャンバー内に、水素ガスが存在する状態でプラズマ処理を行うことが好ましい。
また、本発明では、前記水を、外部から前記チャンバー内に供給し、或いは、前記被処理物又は前記被処理物とは異なる材料に付帯させることが好ましい。
また、本発明では、前記酸化銅は、少なくとも、酸化第一銅を含有することが好ましい。
また、本発明では、前記被処理物に、前記酸化第一銅とリン酸基を有する有機化合物と、を含むことが好ましい。
また、本発明におけるプラズマ処理装置は、酸化銅を分散させたインクを用いて基板上にパターンを形成した被処理物を、収容可能なチャンバーと、前記チャンバー内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記チャンバー内に水の量をチャンバー内ガス分圧で3%から100%となるように供給可能な水供給手段と、を有し、前記被処理物は、減圧下の前記チャンバー内に前記水供給手段により前記水が供給された状態で、プラズマ処理されることを特徴とする。
本発明によれば、水が存在する状態でプラズマ処理を行うことにより、処理時間の短縮と低抵抗化とを図ることが可能になる。
本実施形態の導電性パターンの製造工程を示すフロー図である。 本実施形態のプラズマ処理装置の模式図である。 本実施例のプラズマ処理時間と比抵抗の関係を表す図である。 本実施例の供給ガス中の水の濃度と比抵抗の関係を表す図である。 本実施例のスクリーンインクの場合のプラズマ処理時間と抵抗の関係を表す図である。 本実施例のサンプルの加湿条件と比抵抗の関係を表す図である。
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[導電性パターンの製造工程]
図1は、本実施形態の導電性パターンの製造工程を示すフロー図である。まず、図1に示すように、インクの生成を行う(ステップST1)。本実施形態では、酸化銅を分散媒に分散させたインクを生成する。一例として、酸化第一銅の微粒子と、リン酸基を有する有機化合物を含有するインクを生成する。
続いて、インクを基板上に印刷や塗布等して、パターンを形成する(ステップST2)。本実施形態では、パターンの形成方法を限定するものでないが、例えば、スクリーン印刷、凹版ダイレクト印刷、凹版オフセット印刷、フレキソ印刷、平版オフセット印刷、反転転写印刷及び、インクジェット印刷等の印刷法や、ディスペンサー描画法を用いることができる。また、塗布法としては、ダイコート、スピンコート、スリットコート、バーコート、ナイフコート、スプレーコート、及びディップコート等の各種塗布法を用いることができる。
続いて、基板上に形成されたパターンを乾燥させる(ステップST3)。この工程により、パターン中の分散媒を除去することができる。乾燥の方法を限定するものでないが、一般的に知られている乾燥方法を用いることができる。例えば、熱風加熱オーブン、赤外線加熱炉、ホットプレート、及び、真空乾燥機を用いて、溶媒を乾燥することができる。
続いて、パターン付き基板(被処理物)を、プラズマ処理装置1のチャンバー2内に収容する(ステップST4)。
次に、プラズマ処理装置について説明する。本実施形態の、水が存在する状態でプラズマ処理を行う方法では、水がプラズマ中で分解しラジカルを発生することができればよく、プラズマ発生方式や装置構造、構成に制限は無く、減圧法、常圧法等いずれかと、有電極法、無電極法等のいずれかを選択することができる。更に、プラズマ生成に必要な高周波の発生方法、周波数や機器構成選定は、機能が発揮できれば特定の方式や装置に限定されない。ここでは一例として、パターン付き基板(被処理物)をチャンバー内へ収容し、減圧下で誘電体を介し高周波エネルギーを供給する方式を用いて説明する。
図2は、本実施形態のプラズマ処理装置1の模式図である。図2に示すように、プラズマ処理装置1は、チャンバー2と、チャンバー2内に配置されたステージ3と、ステージ3と対向する位置に配置された、誘電体13と、金属からなる窓部材4と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生器5と、マイクロ波発生器(マグネトロン)5と窓部材4との間の導波管6と、チャンバー2内にガスを供給するためのガス供給口8と、排気口9と、内圧調整バルブ14と、を有して構成される。被処理物7は、ステージ3の表面に載置される。
被処理物7をチャンバー2内に収容した後、プラズマ処理を行う(ステップST5)。本実施形態で用いるプラズマ処理は、熱風や赤外線を用いた加熱法と比較し、より低い温度、及び短い時間での処理が可能である。したがって、耐熱性の低い樹脂フィルムを基板とする場合の焼成法としては、プラズマ処理法は、より好ましい方法の一つである。
図2では、マイクロ波発生器5から出力されたマイクロ波は、アイソレーター、パワーモニター、チューナーを経由し導波管6を介して、窓部材4に到達する。窓部材4にはスリット12がある。例えば、誘電体13は、石英である。この窓部材4のスリット12から、例えば、2455MHz±20MHzのマイクロ波が、排気口9からの排気にて減圧されたチャンバー2内に照射され、表面波プラズマを発生させる。被処理物7は、ステージ3の上に設置され処理される。ステージ3は、必要に応じサンプルを加熱もしくは冷却するための機能を設けても良い。なお、プラズマを発生させる方式は、上記に限定されるものではない。例えば、チャンバー2内に対向する電極を配置し、電極間に高周波電源を接続して、電極間にプラズマを生じせてもよい。このとき、被処理物7は、一方の電極の表面に載置されて、プラズマ処理が施される。
また、プラズマ処理の際、通常は、還元性ガスもしくは還元性ガスと、不活性ガスの混合ガスを、ガス供給口8からチャンバー2内に流し処理を行うが、本実施形態では、後述するように、還元性ガスと不活性ガスに加え、あらかじめこれらに水を混合するか、還元性ガスと不活性ガスを用いず水単体で流し、マイクロ波によりプラズマを発生させる。これにより、チャンバー2内の被処理物7は、還元反応が促進される。更には、インクに添加された分散剤や、界面活性剤等に含まれる有機物が適切に、分解除去されて、導電性に優れた導電性パターンを得ることができる(ステップST6)。
なお、酸化状態の粒子を導電性パターンとするためには、還元性気体として、水素が最も好ましく使用されるが、水素以外に一酸化炭素、アンモニア、メタン、エタン、プロパン、ブタン、アセチレン等の炭化水素系ガス、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ジメチルエーテール、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチレンオキサイド、オキセタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類、蟻酸等を挙げることができ、これらの中から一種で、又は二種以上混合して用いてもよい。
また、不活性ガスとして、プラズマの発生を容易にする効果のあるヘリウムガスを好ましく使用することができる。なお、ヘリウムガス以外にもネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス、窒素ガスなどを用いても良い。また、不活性ガスは、二種以上混合して用いても良い。
プラズマ処理装置1では、マイクロ波投入パワー、導入ガス流量、チャンバー内圧、プラズマ発生源から処理サンプルまでの距離、処理サンプル温度、処理時間等の調整が可能である。これらを適宜調整することで、プラズマ処理の強度を変えることができる。従って、上記した各調整項目の最適化を図ることにより、基板に無機材料の基板を用いる場合はもちろんのこと、有機材料の熱硬化性樹脂フィルムや、紙、耐熱性の低い熱可塑性樹脂フィルムとして、例えば、PETや、PEN等を基板として用いた場合でも、導電性パターンの形成が可能である。
但し、プラズマ処理の最適条件は、プラズマ処理装置1の構造やインクの組成、パターンの厚み、及び基板の材質等により異なる。したがって、各種状況に合わせて、プラズマ処理の最適条件を調整する必要がある。また、被処理物7をチャンバー2内に焼成毎に投入し取出しを行うバッチ方式であっても、ロールにより連続的に供給する方式でも良い。また、被処理物7を加熱もしくは冷却可能な機構を設けても良い。被処理物7の加熱温度については、通常、プラズマ処理を行うときは、温度が高い程、焼結が進みやすくなるため、被処理物7を加熱し処理を行う方法が知られている。しかし、温度が高過ぎると、基板の変形や溶融が起こる。そのため、基板の耐熱温度以下の設定とするのが好ましい。本実施の形態では、焼結能力が高いため、被処理物7を加熱せずに、温度設定が室温付近やそれ以下であっても、充分焼結が可能である。特に、基板の耐熱温度が低い場合は、室温以下に設定してもよい。被処理物7の加熱温度の上限は、基板の耐熱温度以下が好ましく、下限は処理後の抵抗値で決めればよい。
導電性パターンを形成後、被処理物7をチャンバー2から取り出す(ステップST7)。
[水が存在する状態でのプラズマ処理]
ところで、従来では、プラズマ処理に時間を要した。インクには、微粒子を分散させた分散体の凝集防止のために加えられる分散剤、ハジキなどの欠陥防止のために加えられる界面活性剤やレベリング材、パターン形成のための塗布や印刷性を良好にすることを目的に加えられる増粘のためのバインダーや流動性調整剤、その他、密着性を付与する密着性付与剤、安定剤など多種の添加剤が加えられる。
適切に金属酸化物粒子の焼結を促進させるためには、添加剤の分解除去が適切に行われなければならない。しかしながら、多種多様な添加剤を加えることで、分解除去に時間を要する。これが、プラズマ処理に時間を要する一つの原因として考えられる。
そこで、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、プラズマ処理を、水が存在する状態で行うことで、処理時間の短縮と抵抗値の低下という効果を得ることができることを見出した。
このような効果が得られる原因は定かではないが、水存在下でプラズマ処理を行うことで、水が分解され、酸素ラジカルやヒドロキシラジカル、及び水素ラジカルが発生する。
特に、酸素ラジカルやヒドロキシラジカルは、パターン中に存在する分散剤や、界面活性剤、増粘剤等の有機物と反応する。これにより、有機物が速やかに酸化分解により除去され、更に有機物が酸化分解する際の発熱や、プラズマによる発熱と相まって、その結果、焼結が促進される。一方、酸素ラジカルやヒドロキシラジカルと同時に発生した水素ラジカルは、金属酸化物の還元に寄与する。以上のメカニズムにより、処理時間の短縮及び抵抗値の低下を図ることができるものと推定される。
また、酸素ラジカルやヒドロキシラジカルは、有機物と反応した場合、最終的に、二酸化炭素と水になるが、反応で生じた二酸化炭素は結合乖離エネルギーが大きく還元されにくいため、酸素ラジカルやヒドロキシラジカルが優先的に消費され、水が分解することで生じた水素ラジカルが、酸化銅の還元に寄与する。そのため、チャンバー内に導入する還元性ガスを削減することが可能となる。また、インク中に含まれる有機成分以外に、樹脂基板も同様な酸素ラジカルやヒドロキシラジカルを消費する働きをするものと推定される。更に、実際にパターン形成に使われる樹脂基板以外の樹脂や有機材料、カーボンなど酸素を消費する材料をチャンバー2中に収容し処理を行っても良い。
なお、チャンバー2内の水の量は、チャンバー内ガス分圧で0.1%から100%、好ましくは0.2%から70%、より好ましくは0.3%から40%、更に好ましくは0.4%から30%、更により好ましくは0.5%から20%が好ましい。
[プラズマの発生方法と装置構造]
水導入方式の特徴は、水がプラズマ中で分解し、酸素ラジカルやヒドロキシラジカルが発生し、有機物の分解を促進し、一方、同時に発生した水素ラジカルが金属酸化物の還元に寄与し焼結が進むことである。従って、水が分解するエネルギーを与えることができればよく、プラズマの発生方法、装置構造に制限は無い。例えば、プラズマ発生環境の圧力が減圧又は常圧であってもよく、プラズマ発生に必要な高周波エネルギーの供給手段として電極を用いる方式や、誘電体を介して供給する無電極方式等を任意に選択でき、また、高周波の周波数等を任意に選択することが可能である。
[水の供給方法]
次に、プラズマ処理装置1への水の供給方法について説明する。ここでは、一例として、チャンバー2内に被処理物7を収容し、減圧下で誘電体を介してマイクロ波を供給し、プラズマを発生する方式で説明する。
水は、外部からチャンバー2内に供給しても、或いは、被処理物7に、又は被処理物7と別の材料をチャンバー2内に収容し、これに付帯させることもできる。
水を、外部からチャンバー2内に供給する場合、例えば、不活性ガスや還元性ガスにチャンバー2の外部で水を混合し、図2に示すガス供給口8を通じて供給することができる。或いは、図2に示すように、新たに水供給口10を設け、水供給口10から水蒸気としてチャンバー2内に供給することができる。または、ラインを通じてではなく、例えば、被処理物7をチャンバー2内に収容した際などに、作業者がチャンバー2内に、水を噴霧するなどして直接供給してもよい。
なお、プラズマ処理を行うときのチャンバー2の内圧力は、一般的には数十から数百Paである。よって、通常の室温環境下では、チャンバー2内部では、水は水蒸気として存在し、結露することはない。
上記のように、ガス中に水を含ませる場合、不活性ガス及び還元性ガスのいずれか一方、もしくは両方のガスに水を混合してチャンバー2内に供給する際、その混合比により、ガス中に含まれる水の割合をコントロールすることができる。このように混合比で水の割合をコントロールできるので、チャンバー2へのガス導入量を変更したとしても、ガス中に含まれる水の割合を略一定値に保持することができる。また、水蒸気だけを供給したい場合は、不活性ガスや還元性ガスの供給を止めればよい。
次に、チャンバー2内に導入するガス中に含まれる水蒸気量或いは割合の具体的な調整方法について述べる。例としては、不活性ガス及び還元性ガスのいずれか一方、もしくは両方のガスに水を飽和させ、水を含まない不活性ガス及び還元性ガスのいずれか一方、もしくは両方のガスに混合させ、調整する方法が挙げられる。或いは、タンク等の減圧に耐える容器内に水を導入して、一旦真空ポンプで排気し、水の上の空間に存在する水以外のガス成分と、水に溶存しているガス成分を除去する。そして、真空ポンプ停止後は、水の温度に応じた蒸気圧の水蒸気が発生するため、これを流量制御しつつ、チャンバー2内へ水蒸気を導入する方法を挙げることができる。この方法であれば、水蒸気と不活性ガス及び還元性ガスのいずれか一方、もしくは両方のガスとの比率を調整すれば、水蒸気含有率を0%から100%の範囲で調整可能である(ただし、本実施形態においては、0%は含まれない)。なお、タンク内の水の温度を、例えば25℃に制御すれば、水蒸気圧は3170Paであり、チャンバー2の内圧力が数十から数百Paであるため、差圧を利用してチャンバー2に水蒸気を送り込むことが可能である。このとき、水の温度を環境中の温度以下に制御しておけば、配管等への結露を防ぐことができる。但し、温度を下げると蒸気圧が下がるため、必要な流量が確保できる範囲で設定する必要がある。
また、水蒸気量を制御する方法では、ニードルバルブなどの調整バルブ11(図2参照)を手動で調整する方法や、マスフローコントローラなど既知の方法などを用い自動で行う方法がある。
また、内圧をモニターし制御する方法でも、水の量を調整することができる。例えば、はじめに水蒸気を含めたガスの総流量を決め、その流量で、不活性ガス、及び、還元性ガスのいずれか一方、もしくは両方の混合ガスを流しつつ、内圧調整バルブ14を調整し、希望する圧力に調整する。次いで、水蒸気を除いたガス量を供給する。チャンバー2の内圧力が低下するが、希望する圧力になるまでニードルバルブ等の調整バルブ11を調整し、水蒸気を供給すればよい。或いは、圧力をモニターし、自動弁等で水の量を調整する方法等を用いることができる。
この他に、チャンバー2に、直接水を注入する方法として、設定した圧力に、インジェクションバルブを介して水を制御しながらチャンバー2内へ吐出する。或いは、インジェクションバルブの定量性を生かし、要求する水の量となるよう定量供給する方法を採ることもできる。
「インジェクションバルブ」とは、少量の液体を注入するために使用されるもので、圧力のかかった液体を、バルブの開時間と単位時間当たりの回数を制御することで、希望する量の水の注入が可能である。
バルブの開閉機構の例としては、ソレノイド方式や圧電体を用いる方式が知られており、電気的に制御することが可能である。また、この方法では、水に圧力をかけて使用するため、バルブが開かれているときは、液体が霧状に噴射されることとチャンバー2が低圧力であることと相まって、気化はスムーズに進む。
また、水を被処理物7に付帯する方法では、被処理物7の基板、例えば、PETやPEN、インク被膜などに事前に水を吸着させ、これをチャンバー2内に投入することができる。また、プラズマ処理環境下に水が存在すればよいので、必ずしも被処理物7へ吸水させる必要は無く、被処理物とは別に、水を吸着させた材料を、チャンバー2内へ入れても良い。この方法でもプラズマ環境下に水を供給することが可能であり、水を導入する効果は被処理物7に付帯させる方法同様に発現する。置く場所の例としては、例えばステージ3の上やステージ周辺が挙げられる。
被処理物7と別の材料としては、PET、PEN等の基板と同じもの、もしくはこれ以外の樹脂材料としてはPMMA、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ナイロン、又はセルロース等、形状としてはフィルム、シート、板材、不織布、布状の形態の物等を挙げることができる。また、これ以外にも水吸着性を有する材料であれば使うことが可能である。有機系の材料以外にも無機系の材料が使用可能であり、水を吸着させたシリカゲルやモレキュラシーブ等を挙げることができる。このような被処理物7以外の材料を、例えば、被処理物7とともに、ステージ3上に載置したり、或いは、チャンバー2内のステージ3以外の箇所に載置する。チャンバー2内の圧力は、通常数十から数百Paで処理が行われる。この結果、インク被膜、基板のPETやPENなどに吸着した水は、短時間で抜けることはなく、プラズマ処理を開始することで加熱され、水の放出が促進され、チャンバー2内に必要な水を供給することができる。
被処理物7の基板であるインク被膜、PETや、PENなどへの水の吸着は、一定の温度、湿度環境下への放置や水への浸漬といった方法を挙げることができる。この他に、分散インクに水を加え、分散粒子へ水を吸着させるという方法を採ることもできる。
なお、前記の一定の温度、湿度条件下で被処理物7へ水を吸着させる方法の場合、湿度条件がプラズマ処理後の抵抗に影響を与える。効果と湿度制御の容易さ、被処理物7への結露の観点から、湿度条件としては0%を超え100%まで効果があるが、好ましくは10%から95%、より好ましくは20%から80%、更に好ましくは40%から70%がよい。また、最大限に水を吸着させる方法として、被処理物7を水へ浸漬させるという方法を用いてもよい。
水を被処理物7に、又は被処理物7以外の物に付帯する方法では、水雰囲気で、プラズマ処理ができれば、特に、水供給のタイミングを問うものではない。すなわち、本実施形態では、水が抜ける前にプラズマ処理を行うことが必要である。これにより、プラズマ処理によりインク被膜、PETやPEN基板などが加熱されてから、急激に水がチャンバー2内へ放出され、水存在下でのプラズマ処理が可能となる。このように、プラズマ処理中に水が存在していればよく、水の供給が限られた時間であっても、処理時間の短縮と低抵抗化の効果を適切に発揮することができる。
図1に示すように、プラズマ処理装置1に、被処理物7を収容する前の、水の供給のタイミング(ステップST8)としては、インクの生成時、パターン形成と乾燥工程の間、乾燥工程後等を選択できる。このように、水供給を乾燥工程前に行う場合、乾燥工程によって水が全て抜けてしまわないように乾燥温度や時間を適切に調節することが必要である。
また、プラズマ処理装置1に、被処理物7を収容した後の、水の供給タイミング(ステップST9)としては、被処理物7のチャンバー2内への収容工程とプラズマ処理工程との間、プラズマ処理工程中等を選択でき、また、プラズマ処理中、任意に供給タイミングと時間を変えてもよい。例えば、プラズマ処理中、常に供給する、或いは処理の途中で、任意のタイミングと時間で供給する、処理中に供給と停止を繰り返してもよい。
なお、ステップST8の水の供給工程では、上記した水を被処理物7に付帯する方法を採用することができ、ステップST9の水の供給工程では、上記したチャンバー2内への水の供給方法を採用することができる。
[本実施形態の効果]
上記したように、本実施形態では、プラズマ処理の処理時間の短縮と導電性パターンの低抵抗化とを図ることができる。
プラズマ処理時間を、15〜240秒程度、導電性パターンの抵抗値を、4〜90μΩcm程度とすることができる。また、水が存在しない状態でプラズマ処理を施した従来例と比較すると、プラズマ処理の処理時間を、本実施形態と比較例とで同じにし、比較例の導電パターンの抵抗値を1としたとき、本実施形態の導電パターンの抵抗値は、0.2〜0.5程度に低くすることができる。また、導電性パターンの抵抗値を、本実施形態と比較例とで同じにし、比較例のプラズマ処理の処理時間を1としたとき、本実施形態のプラズマ処理時間は、0.2〜0.5程度に短くすることができる。
なお、プラズマの処理時間は生産性の観点からは短ければ短いほどよいが、抵抗値のバラツキを小さくするという面からある程度は必要であり、抵抗値をより下げるという観点からは長い方がよいが、長すぎると被処理物7が加熱され過ぎるという恐れがある。このため、好ましくは15秒から240秒、より好ましくは25秒から210秒、更に好ましくは35秒から180秒がよい。
本実施形態では、酸化銅を分散させたインクを使用することができる。以下では、使用するインクについて詳しく説明する。
[使用するインク]
インクに含有される酸化銅は、金属酸化物の中でも還元が容易であり、更に、微粒子を得ることが可能であり、焼結が容易である。更に、酸化銅は、価格的にも銅であるがゆえに銀などの貴金属類と比較すると安価である。また、銀と比較すると、マイグレーションに対し有利であるといった特徴を有する。
酸化銅としては、酸化第一銅及び、酸化第二銅が入手可能であるが、酸化第一銅の方が還元されやすく好ましい。
酸化銅粒子の平均一次粒子径の好ましい範囲は、酸化銅を還元処理することにより得られる金属の緻密性、及び電気的特性の観点、及び、焼成時の基板へのダメージを低減すべく低温化の観点から、調整される。具体的には、平均一次粒子径の好ましい範囲は、キュムラント法で求めた平均一次粒子径が、100nm以下、より好ましくは、50nm以下、更に好ましくは、20nm以下である。
酸化銅粒子の一次粒子径を100nm以下とすることで、焼成処理において投入エネルギーを低減できる傾向にあり、基板へのダメージを回避することができる。酸化銅粒子の平均粒径の下限値は、特に制限値はないが、取り扱いの容易性から1nm以上が好ましい。これより小さいと、分散安定性を保つための分散剤使用量が増大し、焼成処理時に除去すべき分散剤成分が多くなる。その結果、分散剤を適切に除去しにくくなる。
インク中に分散された酸化銅粒子は、プラズマ処理により容易に還元され金属(導体)になる。そして、各金属粒子(銅粒子)が焼結することで、導電性を得ることが可能になる。
なお、本実施形態では、酸化銅を含むことが好ましいが、別の例としては、少なくとも酸化銀を用いる構成とすることができ、例えば、酸化銅とともに酸化銀を混ぜて使用することができる。
[酸化第一銅]
次に、酸化第一銅について説明する。酸化第一銅粒子に関しては、市販品を用いても良いし、合成して用いても良い。市販品として、(株)希少金属材料研究所製の一次粒径5〜50nmのものを用いることができる。
また、合成法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
(1)ポリオール溶剤中に、水と銅アセチルアセトナト錯体を加える。続いて、いったん有機銅化合物を加熱溶解させ、次に、反応に必要な水を後添加する。更に、昇温して有機銅の還元温度で加熱する加熱還元する。
(2)有機銅化合物(銅−N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン錯体)を、ヘキサデシルアミンなどの保護剤の存在下で、且つ不活性雰囲気中で、300℃程度の高温にて加熱する。
(3)水溶液に溶解した銅塩を、ヒドラジンで還元する。
上記のうち、(3)の方法は操作が簡便で、かつ、粒径の小さい酸化第一銅が得られるので好ましい。
[酸化第一銅の分散体の調整]
例えば、上記の(3)に記載したように、水溶液に溶解した銅塩を、ヒドラジンで還元して、酸化第一銅を合成する。得られた酸化第一銅は、軟凝集体である。このままでは、印刷や塗布に適さないため、分散媒に分散させた酸化第一銅の分散体を作成する。
まず、酸化第一銅の合成終了後、合成溶液と酸化第一銅の分離を行う。このとき、遠心分離などの既知の方法を用いて分離を行うことができる。得られた酸化第一銅を後述する分散剤や、分散媒、また、必要に応じて界面活性剤などを加え、ホモジナイザーなど既知の方法で攪拌し分散する。
なお、分散媒によっては分散し難く、分散が不充分な場合がある。このような場合は一例として、分散しやすいアルコール類、例えば、ブタノールなどを用い分散させる。その後、所望の分散媒への置換と所望の濃度への濃縮を行う。例えば、UF膜による濃縮、所望の分散媒による希釈、及び、濃縮を繰り返す方法で分散体を得ることができる。
[分散剤]
本実施形態において分散剤を限定するものではないが、酸化銅として第一酸化銅を使用する場合、分散剤としてリン酸基を有する有機化合物を用いることが好ましい。リン酸基は、銅酸化物粒子に吸着し、立体障害効果により凝集を抑制する。
分散剤の数平均分子量は、特に制限はないが、300〜30000であることが好ましい。数平均分子量を300以上とすることで、得られる分散体の分散安定性が増す傾向がある。また、数平均分子量を30000以下とすることで、焼成しやすい効果がある。
分散剤の具体例としては、ビックケミー社製の「Disperbyk−102」、「Disperbyk−103」、「Disperbyk−110」、「Disperbyk−111」、「Disperbyk−118」、「Disperbyk−142」、「Disperbyk−145」、「Disperbyk−180」、「Byk−9076」、第一工業製薬製の「プラサーフM208F」、「プライサーフDBS」を挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。分散剤の必要量は、酸化銅の量に比例し、要求される分散安定性を考慮して調整する。
本実施形態の分散体に含まれるリン酸基を有する有機化合物と酸化銅との重量比率は、酸化銅を1とした時、0.001〜0.35であり、好ましくは0.02〜0.3、より好ましくは0.01〜0.25である。分散剤の量は、分散安定性に影響し、分散剤の量が少ないと凝集しやすく、分散剤の量が多いと、分散安定性が向上する傾向がある。但し、分散剤の含有率が35.0重量%を超えると、焼成して得られる導電体において分散剤由来の残渣が多くなり導電性が悪くなる傾向がある。
より長い期間の分散安定性を求めるのであれば分散剤を増やす方向で、短い期間でよければ減らす方向で混合比率を調整すれば良い。
[添加剤]
パターン形成に際し基板への濡れ性向上によるハジキなどの欠陥防止のために加えられる界面活性剤やレベリング材、パターン形成のための塗布や印刷性を良好にすることを目的に加えられる増粘のためのバインダーや流動性調整剤、密着性を付与、安定剤など多種の添加剤などを必要に応じ加えても良い。
[金属粒子]
導電性パターンの強度向上、導電性向上や印刷性向上のための粘度増加のために金属粒子を加えても良く、金属の種類としては、金、銀、銅、ニッケル、錫、亜鉛などいずれか一種もしくは二種類以上の粒子を加えることができる。粒子形状は球状、鱗片状、針状、樹枝状、その他多面体であっても良い。
[分散媒]
本実施形態に用いられる分散媒は、分散という観点からは、分散剤のリン酸基を有する有機化合物の溶解が可能なものの中から、分散可能なものを選択する。一方、分散体を用いてパターンを形成するという観点からは、分散媒の揮発性が作業性に影響を与えるため、パターンの形成方法、例えば印刷や塗布の方式に適するものである必要がある。従って、分散媒は分散性と印刷や塗布の作業性に合わせて下記の溶剤から選択すれば良い。
具体例としては、次の材料を挙げることができる。すなわち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2−ペンタンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、トリエチレングリコール、トリ−1,2−プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、2−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、2−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、テルピネオールが挙げられる。これら具体的に記載したもの以外にも、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、グリコールエステル類溶剤、水を分散媒に用いることができる。
これらは単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良く、印刷方式に応じ蒸発性や、印刷機材、被印刷基板の耐溶剤性を考慮し選択する。ただし、沸点は溶剤の作業性に影響を与える。沸点が低すぎれば揮発が速いため、固形物の析出による欠陥の増加や清掃頻度の増大により作業性が悪化する。したがって、塗布や、ディスペンサー方式では40℃以上とすることが好ましく、インクジェット方式、スクリーン方式、及びオフセット方式では120℃以上とすることが好ましく、150℃以上とすることがより好ましく、200℃以上とすることが更に好ましい。また、温度の上限値は、乾燥の観点から300℃以下とすることが好ましい。
[基板]
本実施形態の酸化銅を分散させたインクを塗布や印刷する基板については、特に制限されるものではないが、材質の一例を下記に記載する。
基板は、無機材料及び有機材料の別を問わないが、無機材料としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラスなどのガラスや、アルミナなどのセラミック材料が挙げられる。
有機材料としては、高分子材料や、紙が挙げられる。高分子材料としては、樹脂フィルムを用いることができ、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ガラス−エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、液晶高分子化合物などを挙げることができる。紙としては、一般的なパルプを原料とした上質紙、中質紙、コート紙、ボール紙、段ボールなどの洋紙やセルロースナノファイバーを原料としたものが挙げられる。紙の場合は、高分子材料を溶解したもの、もしくはゾルゲル材料などを含浸硬化させたものを使うことができる。また、これらの材料は、ラミネートするなど貼り合わせて使用しても良い。
更に、これらの上に平滑化層、バリア層、易接着層などとして、高分子材料としては、ポリイミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ、ポリビニルフェノール、等を単独もしくは組み合わせて使用しても良く、シリカ等の無機材料等の粒子などを混合して用いても良い。また無機系材料としては、シリカ、アルミナなどを、スパッタ法や、蒸着法で形成しても良い。また、ゾルゲル系材料でシリカや、アルミナ系の膜を塗布法で形成することができる。
以下、実施例によって、本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
水3670g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)1696gの混合溶媒中に、酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)391.5gを溶かした。そして、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)114gを加えて攪拌した後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物200gに、分散剤として、Disperbyk−118(ビッグケミー製)27.6g、界面活性剤としてS−611(セイミケミカル製)6.9g及びエタノール(和光純薬製)455.5gを加え、ホモジナイザーを用いて分散し、インクとした。
このインクを、PEN基板に、No.4バーを用いてコートし、室内環境24℃湿度30%で乾燥し、プラズマ処理用のサンプルとした。続いて、プラズマ処理装置にて、ステージの温度を28℃とし、マイクロ波電力を1.50kw、水の濃度3%、水素濃度3%、ヘリウム濃度94%からなるガス200sccmをチャンバー内へ供給しつつ、チャンバー内圧力を110Paに調整し、前記のサンプルを、処理時間だけを違えた条件で複数点プラズマ処理を行い、比抵抗を測定した。プラズマ処理後のパターンの膜厚は、0.25μmであった。なお、ここに記載したsccmとは、温度0℃、圧力101.3kPaに換算した流量(ml/分)を表すものである。
[実施例2]
実施例1と同様な方法で、プラズマ処理用サンプルを得た。チャンバー内圧力を80Paとした以外は、実施例1と同じ条件とし、前記のサンプルを処理時間だけを違えた条件で、複数点プラズマ処理を行い、比抵抗を測定した。
[比較例1]
実施例1と同様な方法で、プラズマ処理用サンプルを得た。続いて、プラズマ処理装置に水の濃度0%、ヘリウム濃度を97%とした以外は、実施例1と同じ条件で複数点プラズマ処理を行い、比抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2020145194
以上の結果を図3に示す。図3から、チャンバー内に水を存在させることにより、処理時間の短縮と抵抗を低減させることが可能であることがわかった。
[実施例3]
実施例1と同様な方法で、プラズマ処理用サンプルを得た。続いて、プラズマ処理装置にて、水の濃度を0.1%から増やす方向に濃度を違えた条件で、水素濃度3%、残りをヘリウムに調整した。そして、処理時間を120秒とした以外は、実施例1と同じ条件で複数点プラズマ処理を行い、比抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
[比較例2]
水の濃度を0%とした以外は、実施例3と同様な方法でプラズマ処理を行い、比抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2020145194
表2に示す結果を図4に示す。図4から、チャンバー内に水を存在させれば、少ない量であっても抵抗を低下させることが可能であることがわかった。
[実施例4]
実施例1と同様な方法で、プラズマ処理用サンプルを得た。続いて、プラズマ処理装置にて、ステージの温度を28℃とし、マイクロ波電力を0.63kwとし、水蒸気200sccmをチャンバー内へ供給し、チャンバー内圧力を110Paに調整し、120秒処理を行い、比抵抗を測定した。比抵抗は14.4×10−6Ωcmであり、プラズマ処理後のパターンの膜厚は0.25μmであった。以上の結果から、チャンバー内へ水の供給があれば、水素を供給しなくとも、上記インクを導通させることが可能であることがわかった。
[実施例5]
水3670g、1,2−プロピレングリコール(和光純薬製)1696gの混合溶媒中に酢酸銅(II)一水和物(和光純薬製)391.5gを溶かした。そして、ヒドラジン一水和物(和光純薬製)114gを加えて攪拌した後、遠心分離で上澄みと沈殿物に分離した。
得られた沈殿物200gに、Disperbyk−118(ビッグケミー製)27.6g及びエタノール(和光純薬製)462.4gを加え、ホモジナイザーを用いて分散した。次いで、UF膜モジュールによる濃縮とエタノールによる希釈を繰り返した。更に、テルピネオールによる希釈とUF膜による濃縮を繰り返し、酸化第一銅124gを含有する分散体225.4gを得た。
この分散体40gに、平均粒径4.9μmの鱗片状銅粉88gを加え、自公転ミキサーで混合し分散体を得た。この分散体を用いてスクリーン印刷で、1mm×100mmのパターンを紙基板に印刷し、60℃のホットプレート上で、5分間乾燥を行いプラズマ処理用のサンプルとした。
続いて、プラズマ処理装置にて、ステージ3の温度を28℃とし、マイクロ波電力を1.5kw、水の濃度3%、水素濃度3%、ヘリウム濃度94%からなるガスを、流量150sccmでチャンバー内へ供給し、チャンバー内圧力を56Paに調節し、処理時間だけを違えた条件で、複数点プラズマ処理を行い、抵抗を測定した。その結果を表3に示す。なおプラズマ処理後のパターンの膜厚は、17μmであった。
[比較例3]
実施例5と同様な方法で、プラズマ処理用サンプルを得た後、水の濃度を0%、水素濃度3%、ヘリウム濃度97%とした以外は、実施例5と同じとし、処理時間だけを違えた条件で複数点プラズマ処理を行い、抵抗を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 2020145194
以上の結果を図5に示す。図5から、チャンバー内に水を存在させることにより、短時間でより抵抗を下げることが可能であることがわかった。
[実施例6]
実施例5と同様な方法で、プラズマ処理用サンプルを得た。続いて、プラズマ処理装置にて、ステージの温度を28℃とし、マイクロ波電力を1.50kwとし、水蒸気150sccmをチャンバー内へ供給し、チャンバー内圧力を58Paに調整し、45秒処理を行い、抵抗を測定した。抵抗値は1.1Ωであり、プラズマ処理後のパターンの膜厚は17μmであった。以上の結果から、金属粒子を含むインクであっても、チャンバー内へ水の供給があれば、水素を供給しなくとも、導通させることが可能であることがわかった。
[実施例7]
実施例1と同様な方法でプラズマ処理用サンプルを得た。これを24℃湿度30%、24℃湿度40%、24℃湿度60%、24℃湿度75%、24℃湿度95%、24℃水浸漬の各々の条件で1日放置し吸湿させ、これとは別に、プラズマ処理直前に10分間水に浸漬したサンプルを準備した。前記各サンプルをプラズマ処理装置内にて、ステージ3の温度を28℃とし、マイクロ波電力を1.5kw、チャンバー内圧力を110Paに調節すると共に、水の濃度0%、水素濃度3%、ヘリウム濃度97%からなるガスを、流量200sccmで供給し、120秒間のプラズマ処理後、比抵抗を測定した。その結果を表4に示す。
[比較例4]
実施例1と同様にインクをPEN基板にコートし、24℃湿度略0%の条件で1日放置し乾燥させた後、吸湿させること無く実施例7と同様にプラズマ処理を行い、比較例とした。比抵抗を測定した結果を表4に示す。
Figure 2020145194
表4の結果を、図6に示す。なお、水に浸漬したサンプルは、図6に湿度100%として表示した。以上の結果から、被処理物に吸水させておけば、プラズマ処理装置のチャンバーに水を供給する方法と同様に抵抗を低下させることが可能であることがわかった。
本発明の導電性パターンは、配線基板、アンテナ、メッシュ方式透明電極、電磁波シールド、電磁波反射、フラットディスプレイ用配線、電極、太陽電池の配線などで用いることができ、生産性の向上に寄与する。
1 プラズマ処理装置
2 チャンバー
3 ステージ
4 窓部材
5 マイクロ波発生器
6 導波管
7 被処理物
8 ガス供給口
9 排気口
10 水供給口
11 調整バルブ
12 スリット
13 誘電体
14 内圧調整バルブ

Claims (7)

  1. 酸化銅を分散させたインクを用いて基板上にパターンを形成した被処理物を、水が存在する状態でプラズマ処理を行い、このとき、水の量を、チャンバー内ガス分圧で3%から100%にすることを特徴とする導電性パターンの製造方法。
  2. 酸化銅を分散させたインクを用いて基板上にパターンを形成した被処理物を、減圧されたチャンバー内に収容し、水が存在する状態でプラズマ処理を行い、このとき、水の量を、チャンバー内ガス分圧で3%から100%にすることを特徴とする導電性パターンの製造方法。
  3. 更に、前記チャンバー内に、水素ガスが存在する状態でプラズマ処理を行うことを特徴とする請求項2に記載の導電性パターンの製造方法。
  4. 前記水を、外部から前記チャンバー内に供給し、或いは、前記被処理物又は前記被処理物とは異なる材料に付帯させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の導電性パターンの製造方法。
  5. 前記酸化銅は、少なくとも、酸化第一銅を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の導電性パターンの製造方法。
  6. 前記被処理物に、前記酸化第一銅とリン酸基を有する有機化合物と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の導電性パターンの製造方法。
  7. 酸化銅を分散させたインクを用いて基板上にパターンを形成した被処理物を、収容可能なチャンバーと、
    前記チャンバー内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、
    前記チャンバー内に水の量をチャンバー内ガス分圧で3%から100%となるように供給可能な水供給手段と、を有し、
    前記被処理物は、減圧下の前記チャンバー内に前記水供給手段により前記水が供給された状態で、プラズマ処理されることを特徴とするプラズマ処理装置。
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