JP2020144156A - エレクトロクロミック素子、及びこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 - Google Patents
エレクトロクロミック素子、及びこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2020144156A JP2020144156A JP2019038287A JP2019038287A JP2020144156A JP 2020144156 A JP2020144156 A JP 2020144156A JP 2019038287 A JP2019038287 A JP 2019038287A JP 2019038287 A JP2019038287 A JP 2019038287A JP 2020144156 A JP2020144156 A JP 2020144156A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- electrode
- region
- hole
- substrate
- electrochromic
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Electrochromic Elements, Electrophoresis, Or Variable Reflection Or Absorption Elements (AREA)
Abstract
【課題】基板及び電極を貫通する貫通孔を設けたEC素子において、該貫通孔の近傍で生じる着色ムラを抑制したEC素子を提供する。【解決手段】電極11a,11bに挟まれたEC層13を有するEC素子1において、貫通孔12近傍において、EC層13と電極11a,11bとの接触を妨げる隔離部14を設けることにより、電極11a,11bの一方のみで酸化還元反応が生じることによる着色ムラの発生を抑制する。【選択図】図1
Description
本発明は反射光や透過光の光量を調整するエレクトロクロミック素子と、該素子を用いた光学部材、光学装置に関する。
電気化学的な酸化還元反応により物質の光学特性(吸収波長、吸光度等)が変化する化合物を、エレクトロクロミック(EC)化合物という。EC化合物を利用したEC素子は、表示装置、可変反射率ミラー、可変透過窓等に応用されている。EC化合物は、無機化合物と有機化合物の二つに分類されるが、このうち有機EC化合物は、吸収波長を比較的に自由度高く設計して変化させることが可能であり、高い着消色のコントラストを実現できるといった特徴を有する。
有機EC化合物を有するEC素子では、一対の電極の間に、有機EC化合物を含むEC層が配置されるが、その典型的な一つとして、相補型EC素子がある。相補型EC素子では、アノード性酸化還元物質とカソード性酸化還元物質を用い、その少なくとも一つがEC化合物である。相補型のEC素子では一対の電極間に電圧を印加することによりアノードでアノード性酸化還元物質の酸化反応が進行し、同時に対向するカソードでカソード性酸化還元物質の還元反応が進行し、電流が流れる。そのため、基本的にはEC素子全体ではアノード性酸化還元物質の反応量とカソード性酸化還元物質の反応量は等しくなる。
EC素子では電極間にEC化合物を含む溶液を充填するために、基板と該基板に接して形成された電極とを貫通する貫通孔を設けることがある。特許文献1では、それぞれに電極が形成された一対の基板の一方に、EC化合物を含む溶液を外部から電極間に充填する目的で二つの貫通孔を設けたEC素子が開示されている。
有機EC化合物を有するEC素子では、一対の電極の間に、有機EC化合物を含むEC層が配置されるが、その典型的な一つとして、相補型EC素子がある。相補型EC素子では、アノード性酸化還元物質とカソード性酸化還元物質を用い、その少なくとも一つがEC化合物である。相補型のEC素子では一対の電極間に電圧を印加することによりアノードでアノード性酸化還元物質の酸化反応が進行し、同時に対向するカソードでカソード性酸化還元物質の還元反応が進行し、電流が流れる。そのため、基本的にはEC素子全体ではアノード性酸化還元物質の反応量とカソード性酸化還元物質の反応量は等しくなる。
EC素子では電極間にEC化合物を含む溶液を充填するために、基板と該基板に接して形成された電極とを貫通する貫通孔を設けることがある。特許文献1では、それぞれに電極が形成された一対の基板の一方に、EC化合物を含む溶液を外部から電極間に充填する目的で二つの貫通孔を設けたEC素子が開示されている。
EC素子の重要な課題の一つとして、着色・消色時の応答性が挙げられる。この応答性を向上させる方法として、EC層中における酸化還元物質の濃度を高めることが知られている。しかしながら本発明者等が、応答速度を向上させるために酸化還元物質の濃度を高めたEC素子について検討を行ったところ、EC層のうち、貫通孔近傍の領域とそれ以外の領域とで着色の色や濃度に差が生じ、素子内の着色が不均一になることを見出した。このように素子内の着色に不均一性(着色ムラ)が生じると、同じ色調や強度を有した光であっても、EC素子を通過する位置によって、出射光の色調や強度が不均一となるため問題となる。
本発明の課題は、基板及び電極を貫通する貫通孔を設けたEC素子において、該貫通孔の近傍で生じる着色ムラを抑制したEC素子を提供し、該EC素子を用いた光学部材や光学装置における特性の向上を図ることにある。
本発明の課題は、基板及び電極を貫通する貫通孔を設けたEC素子において、該貫通孔の近傍で生じる着色ムラを抑制したEC素子を提供し、該EC素子を用いた光学部材や光学装置における特性の向上を図ることにある。
本発明の第一は、間隙を介して互いに対向配置する第一の基板と第二の基板と、前記第一の基板の内側に配置された第一の電極と、前記第二の基板の内側に配置された第二の電極と、前記第一の電極と前記第二の電極との間に配置されたエレクトロクロミック層と、を備え、
前記第一の基板及び前記第一の電極、又は前記第二の基板及び前記第二の電極を貫通する貫通孔を少なくとも一つ有し、
前記エレクトロクロミック層が、溶媒と、アノード性酸化還元物質と、カソード性酸化還元物質と、を有し、
前記アノード性酸化還元物質及びカソード性酸化還元物質の少なくとも一つがエレクトロクロミック化合物であるエレクトロクロミック素子であって、
前記第一の電極と前記第二の電極との間に、前記エレクトロクロミック層と、前記第一及び前記第二の電極との接触を阻害する隔離部を有し、
(1)前記隔離部はP1及びP2に接しており、
(2)A3がA1を含み、且つA3の面積がA1よりも大きく、
(3)A4がA2を含み、且つA4の面積がA2よりも大きく、
(4)C3及びC4のうちより大きい面積を有するものの面積が、A1及びA2のうちより小さい面積を有するものの面積以下である
(前記(1)乃至(4)において、
P1は、前記第一の電極の、前記第二の電極と対向する面を含む面
P2は、前記第二の電極の、前記第一の電極と対向する面を含む面
A1は、前記貫通孔における前記第一又は第二の基板の開口部をP1の法線方向からP1へ投影した領域、
A2は、前記貫通孔における前記第一又は第二の基板の開口部をP2の法線方向からP2へ投影した領域、
A3は、前記隔離部が前記P1に接する領域、
A4は、前記隔離部が前記P2に接する領域、
B3は、前記A3を前記P2に対しその法線方向から投影して得られる領域、
B4は、前記A4を前記P1に対しその法線方向から投影して得られる領域、
C3は、前記A3のうち前記B4と重ならない領域と、前記B4のうち前記A3と重ならない領域と、を合わせた領域、
C4は、前記A4のうち前記B3と重ならない領域と、前記B3のうち前記A4と重ならない領域と、を合わせた領域、である。)、
ことを特徴とする。
本発明の第二は、上記本発明のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続されており、前記エレクトロクロミック素子を駆動する能動素子と、を有することを特徴とする光学フィルタである。
本発明の第三は、上記本発明の光学フィルタと、複数のレンズを有する撮像光学系と、を有することを特徴とするレンズユニットである。
本発明の第四は、上記本発明の光学フィルタと、前記光学フィルタを透過した光を受光する受光素子と、を有することを特徴とする撮像装置である。
本発明の第五は、一対の透明板と、前記一対の透明板の間に配置されているエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続され、前記エレクトロクロミック素子を駆動する能動素子と、を有し、前記エレクトロクロミック素子が上記本発明のエレクトロクロミック素子であることを特徴とする窓材である。
前記第一の基板及び前記第一の電極、又は前記第二の基板及び前記第二の電極を貫通する貫通孔を少なくとも一つ有し、
前記エレクトロクロミック層が、溶媒と、アノード性酸化還元物質と、カソード性酸化還元物質と、を有し、
前記アノード性酸化還元物質及びカソード性酸化還元物質の少なくとも一つがエレクトロクロミック化合物であるエレクトロクロミック素子であって、
前記第一の電極と前記第二の電極との間に、前記エレクトロクロミック層と、前記第一及び前記第二の電極との接触を阻害する隔離部を有し、
(1)前記隔離部はP1及びP2に接しており、
(2)A3がA1を含み、且つA3の面積がA1よりも大きく、
(3)A4がA2を含み、且つA4の面積がA2よりも大きく、
(4)C3及びC4のうちより大きい面積を有するものの面積が、A1及びA2のうちより小さい面積を有するものの面積以下である
(前記(1)乃至(4)において、
P1は、前記第一の電極の、前記第二の電極と対向する面を含む面
P2は、前記第二の電極の、前記第一の電極と対向する面を含む面
A1は、前記貫通孔における前記第一又は第二の基板の開口部をP1の法線方向からP1へ投影した領域、
A2は、前記貫通孔における前記第一又は第二の基板の開口部をP2の法線方向からP2へ投影した領域、
A3は、前記隔離部が前記P1に接する領域、
A4は、前記隔離部が前記P2に接する領域、
B3は、前記A3を前記P2に対しその法線方向から投影して得られる領域、
B4は、前記A4を前記P1に対しその法線方向から投影して得られる領域、
C3は、前記A3のうち前記B4と重ならない領域と、前記B4のうち前記A3と重ならない領域と、を合わせた領域、
C4は、前記A4のうち前記B3と重ならない領域と、前記B3のうち前記A4と重ならない領域と、を合わせた領域、である。)、
ことを特徴とする。
本発明の第二は、上記本発明のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続されており、前記エレクトロクロミック素子を駆動する能動素子と、を有することを特徴とする光学フィルタである。
本発明の第三は、上記本発明の光学フィルタと、複数のレンズを有する撮像光学系と、を有することを特徴とするレンズユニットである。
本発明の第四は、上記本発明の光学フィルタと、前記光学フィルタを透過した光を受光する受光素子と、を有することを特徴とする撮像装置である。
本発明の第五は、一対の透明板と、前記一対の透明板の間に配置されているエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続され、前記エレクトロクロミック素子を駆動する能動素子と、を有し、前記エレクトロクロミック素子が上記本発明のエレクトロクロミック素子であることを特徴とする窓材である。
本発明によれば、EC層と電極との接触を阻害する隔壁部を貫通孔に対応する領域に設けたことにより、該貫通孔の近傍で生じる着色ムラを抑制したEC素子を提供することができる。よって、該EC素子を用いて、特性に優れた光学部材、光学装置を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明のEC素子及びこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材について、好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成、相対配置等は特に記載がない限り、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
〔EC素子〕
図1を用いて、本発明のEC素子について説明する。図1のEC素子1は、外部から光を取り込んでEC層13を通過させることで、所定の波長領域において出射光の強度、及び色調を変化させるデバイスである。
本発明のEC素子1は、間隙を介して互いに対向配置された第一の基板10a、第二の基板10bを備え、さらに、第一の基板10aの内側には第一の電極11aを、第二の基板10bの内側には第二の電極11bを有している。第一の電極11a、第二の電極11bは、それぞれ第一の基板10a、第二の基板10bに接して配置されていてもよい。本発明のEC素子1では、第一の基板10aと第一の電極11a、又は、第二の基板10bと第二の電極11b、を貫通する貫通孔12が設けられている。また、本発明においては、第一の電極11aと第二の電極11bとの間に、EC層13、及び隔離部14が配置される。EC層13は、周辺封止材15によって外部と隔離されて保持されていることが好ましい。EC層13は、溶媒と、アノード性酸化還元物質と、カソード性酸化還元物質と、を有し、二種の酸化還元物質のうち少なくとも一つがEC化合物である。
以下、本発明のEC素子が有する構成要素について、それぞれ説明する。
図1を用いて、本発明のEC素子について説明する。図1のEC素子1は、外部から光を取り込んでEC層13を通過させることで、所定の波長領域において出射光の強度、及び色調を変化させるデバイスである。
本発明のEC素子1は、間隙を介して互いに対向配置された第一の基板10a、第二の基板10bを備え、さらに、第一の基板10aの内側には第一の電極11aを、第二の基板10bの内側には第二の電極11bを有している。第一の電極11a、第二の電極11bは、それぞれ第一の基板10a、第二の基板10bに接して配置されていてもよい。本発明のEC素子1では、第一の基板10aと第一の電極11a、又は、第二の基板10bと第二の電極11b、を貫通する貫通孔12が設けられている。また、本発明においては、第一の電極11aと第二の電極11bとの間に、EC層13、及び隔離部14が配置される。EC層13は、周辺封止材15によって外部と隔離されて保持されていることが好ましい。EC層13は、溶媒と、アノード性酸化還元物質と、カソード性酸化還元物質と、を有し、二種の酸化還元物質のうち少なくとも一つがEC化合物である。
以下、本発明のEC素子が有する構成要素について、それぞれ説明する。
〈基板及び電極〉
本発明においては、第一の電極11aと第二の電極11bのいずれか一方が透明である。ここで、「透明」とは、該当する電極が光を透過することを意味し、光の透過率が、50%以上100%以下であることが好ましい。第一の電極11a、第二の電極11bのうち少なくとも一方が透明電極であることによって、EC素子1の外部より効率的に光を取り込み、EC化合物と相互作用させて、EC化合物の光学的特性を出射光に反映させることができる。ここでいう「光」とは、EC素子1の対象とする波長領域における光のことである。例えば、EC素子1を可視光領域の撮像装置のフィルタとして使用するのであれば、可視光領域の光が対象となり、赤外線領域の撮像装置のフィルタとして使用するのであれば、赤外線領域の光が対象となる。
本発明においては、第一の電極11aと第二の電極11bのいずれか一方が透明である。ここで、「透明」とは、該当する電極が光を透過することを意味し、光の透過率が、50%以上100%以下であることが好ましい。第一の電極11a、第二の電極11bのうち少なくとも一方が透明電極であることによって、EC素子1の外部より効率的に光を取り込み、EC化合物と相互作用させて、EC化合物の光学的特性を出射光に反映させることができる。ここでいう「光」とは、EC素子1の対象とする波長領域における光のことである。例えば、EC素子1を可視光領域の撮像装置のフィルタとして使用するのであれば、可視光領域の光が対象となり、赤外線領域の撮像装置のフィルタとして使用するのであれば、赤外線領域の光が対象となる。
本発明において第一の基板10aと第二の基板10bとしては、第一の電極11aと第二の電極11bのうち透明な電極の外側に配置された側の基板は透明基板である。透明基板の素材としては、ガラス、透明性樹脂などが挙げられる。ガラスは、光学ガラス、石英ガラス、白板ガラス、青板ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、化学強化ガラス等を用いることができ、特に透明性や耐久性の点から無アルカリガラスを用いることができる。透明性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリノルボルネン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
また、第一の電極11aと第二の電極11bのうち、透明でない電極の外側に配置される不透明基板の素材としては、不透明性樹脂が挙げられる。不透明性樹脂はポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド等が挙げられる。
また、第一の電極11aと第二の電極11bのうち、透明でない電極の外側に配置される不透明基板の素材としては、不透明性樹脂が挙げられる。不透明性樹脂はポリプロピレン、高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタラート、ポリアミド等が挙げられる。
透明電極としては、透明導電性酸化物や、分散されたカーボンナノチューブ等の導電層や、透明基板上に部分的に金属線が配置された透明電極を用いることができる。透明導電性酸化物として、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオビウムドープ酸化チタン(TNO)等が挙げられる。これらの中でも、FTO又はITOが好ましい。透明導電性酸化物で電極を形成する場合、その膜厚は、好ましくは、10nm乃至10000nmである。特に、膜厚が10nm乃至10000nmであってFTO又はITOの層である透明導電性酸化物の層が好ましい。これにより、高透過性と化学的安定性を両立することが可能となる。
尚、上記透明導電性酸化物の層は、透明導電性酸化物のサブレイヤーが積み重なった構成をなしていてもよい。これにより、高導電性と高透明性を実現しやすくなる。
基板上に配置され得る金属線としては、特に限定されるものではないが、Ag,Au,Pt,Ti等の、電気化学的に安定な金属材料の線が好ましく用いられる。また、金属線の配置パターンとしては、グリッド状のものが好ましく用いられる。金属線を有する電極は、代表的には平面電極であるが、必要に応じて湾曲したものも使用することができる。
尚、上記透明導電性酸化物の層は、透明導電性酸化物のサブレイヤーが積み重なった構成をなしていてもよい。これにより、高導電性と高透明性を実現しやすくなる。
基板上に配置され得る金属線としては、特に限定されるものではないが、Ag,Au,Pt,Ti等の、電気化学的に安定な金属材料の線が好ましく用いられる。また、金属線の配置パターンとしては、グリッド状のものが好ましく用いられる。金属線を有する電極は、代表的には平面電極であるが、必要に応じて湾曲したものも使用することができる。
第一の電極11a、第二の電極11bのうち、上述の透明電極以外の電極としては、EC素子1の用途に応じて好ましいものが選択される。例えば、EC素子1を透過型のEC素子とする場合には、第一の電極11aも第二の電極11bも上述の透明電極である。
一方、EC素子1を反射型のEC素子とする場合には、第一の電極11a、第二の電極11bのうち、一方が上述の透明電極であり、他方が入射光を反射する電極であるのが好ましい。また、電極間に反射層又は散乱層を形成することで、上述の透明電極以外の電極の光学特性の自由度を向上させることができる。例えば、電極間に反射層又は散乱層を導入した場合には、その後方の電極として、不透明な電極や、光を吸収する電極も用いることができる。
本発明のEC素子1が、いずれの形態であっても、第一の電極11a、第二の電極11bの構成材料としては、EC素子1の動作環境において安定に存在し、外部からの電圧の印加に応じて速やかに酸化還元反応を進行させることのできる材料が好ましく用いられる。
第一の電極11a及び第二の電極11bの配置については、EC素子1の電極配置として一般的に知られている配置を用いることができる。代表的な例としては、基板10a、10bに接してそれぞれ配置された第一の電極11aと第二の電極11bとが対向し、1μm乃至500μm程度の電極間距離を設けた配置方式がある。電極間距離が長い場合、EC素子1として有効に機能させるために十分な量のEC化合物を配置することができる点で着色時の透過率を低減できる点で有利である。一方、電極間距離が短い場合、速い応答速度を達成することができる点で有利である。
〈周辺封止材〉
EC素子1を構成する基板10a、10bは、第一の電極11aの電極面と第二の電極11bの電極面とを対向させた配置で周辺封止材15によって接合されていることが好ましい。周辺封止材15は、第一の電極11aと第二の電極11bの空間的配置の保持の他、EC層13のEC素子外部へ漏えい防止、外部物質との接触からの保護、の役割を担う。
EC素子1を構成する基板10a、10bは、第一の電極11aの電極面と第二の電極11bの電極面とを対向させた配置で周辺封止材15によって接合されていることが好ましい。周辺封止材15は、第一の電極11aと第二の電極11bの空間的配置の保持の他、EC層13のEC素子外部へ漏えい防止、外部物質との接触からの保護、の役割を担う。
上記の観点から、周辺封止材15としては、化学的に安定で、低透湿性・低ガス透過性を有し、さらにEC層13に含まれる溶媒への溶解性が低い材料で構成されていることが好ましい。例えば、ガラスフリット等の無機材料、エポキシ系、アクリル系樹脂等の有機材料、金属等を用いることができる。尚、周辺封止材15は、スペーサー材料を含有するなどの手段を講じて第一の電極11aと第二の電極11bとの間の距離を規定する機能を有していてもよい。周辺封止材15が第一の電極11aと第二の電極11bとの間の距離を規定する機能を有していない場合は、別途スペーサーを配置して両電極間の距離を保持してもよい。スペーサーの素材としては、シリカビーズ、ガラスファイバー等の無機材料や、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジビニルベンゼン、フッ素ゴム、エポキシ樹脂等の有機材料を用いることができる。この場合、このスペーサーにより、EC素子1を構成する第一の電極11aと第二の電極11bとの間の距離を規定、保持することが可能となる。
〈EC層〉
本発明のEC素子1は、第一の電極11aと第二の電極11bとの間に、溶媒と、アノード性酸化還元物質と、カソード性酸化還元物質と、を含み、二種の酸化還元物質のうち少なくとも一つがEC化合物であるEC層13を有する。
本発明のEC素子1は、第一の電極11aと第二の電極11bとの間に、溶媒と、アノード性酸化還元物質と、カソード性酸化還元物質と、を含み、二種の酸化還元物質のうち少なくとも一つがEC化合物であるEC層13を有する。
(溶媒)
EC層13を構成する溶媒としては、EC化合物を始めとする溶質の溶解性、蒸気圧、粘性、電位窓等を考慮して、用途に応じて選択されるが、極性を有する溶媒であることが好ましい。具体的には、エーテル化合物、ニトリル化合物、アルコール化合物、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン等の有機極性溶媒や水が挙げられる。中でも、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、ジオキソラン等の環状エーテルを含む溶媒が、EC化合物の溶解性、沸点、蒸気圧、粘性、電位窓の観点から好ましく用いられ、中でも炭酸プロピレンを含む溶媒が最も好ましく用いられる。
EC層13を構成する溶媒としては、EC化合物を始めとする溶質の溶解性、蒸気圧、粘性、電位窓等を考慮して、用途に応じて選択されるが、極性を有する溶媒であることが好ましい。具体的には、エーテル化合物、ニトリル化合物、アルコール化合物、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン等の有機極性溶媒や水が挙げられる。中でも、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン、ジオキソラン等の環状エーテルを含む溶媒が、EC化合物の溶解性、沸点、蒸気圧、粘性、電位窓の観点から好ましく用いられ、中でも炭酸プロピレンを含む溶媒が最も好ましく用いられる。
(酸化還元物質)
本発明において、酸化還元物質とは、所定の電位範囲において、繰り返し酸化還元反応を起こすことが可能な化合物である。酸化還元物質には、無機化合物も有機化合物も含まれるが、本発明においては特に制限なく両者を使用することができる。中でも用いられるEC化合物の使用環境との適合性から、有機化合物の酸化還元物質が好ましく用いられる。
本発明において、酸化還元物質とは、所定の電位範囲において、繰り返し酸化還元反応を起こすことが可能な化合物である。酸化還元物質には、無機化合物も有機化合物も含まれるが、本発明においては特に制限なく両者を使用することができる。中でも用いられるEC化合物の使用環境との適合性から、有機化合物の酸化還元物質が好ましく用いられる。
本発明においては、酸化還元物質として、アノード性酸化還元物質とカソード性酸化還元物質とを併用する。アノード性酸化還元物質とは、通常、EC素子を駆動させていない状態では還元状態であるが、EC素子を駆動(特に着色)させた状態では酸化状態となる物質をいう。また、カソード性酸化還元物質とは、通常、EC素子を駆動させていない状態では酸化状態であるが、EC素子を駆動(特に着色)させた状態では還元状態となる物質をいう。尚、本明細書においては、カソード性酸化還元物質における還元状態と、アノード性酸化還元物質における酸化状態を、それぞれ「生成体」と表現する。また、本明細書においては、酸化還元物質について特に後述する「EC化合物」であると明示しない物質は、EC化合物としての性質を持たない酸化還元物質を意味する。
(EC化合物)
本発明において、EC化合物とは、酸化還元物質の一種であり、酸化還元反応により、EC素子の対象とする光波長領域において光吸収特性が変化する物質である。ここでいう光吸収特性とは、代表的には、光吸収状態と光透過状態とであり、EC化合物は、典型的には光吸収状態と光透過状態とが切り替わる材料である。
本発明のEC素子に使用されるEC化合物は、有機化合物であり、好ましくは、分子量が2000以下の低分子有機化合物である。本発明においては、酸化還元物質としてアノード性酸化還元物質とカソード性酸化還元物質とを併用するが、EC化合物である場合には、それぞれアノード性EC化合物、カソード性EC化合物と記載する。
本発明において、EC化合物とは、酸化還元物質の一種であり、酸化還元反応により、EC素子の対象とする光波長領域において光吸収特性が変化する物質である。ここでいう光吸収特性とは、代表的には、光吸収状態と光透過状態とであり、EC化合物は、典型的には光吸収状態と光透過状態とが切り替わる材料である。
本発明のEC素子に使用されるEC化合物は、有機化合物であり、好ましくは、分子量が2000以下の低分子有機化合物である。本発明においては、酸化還元物質としてアノード性酸化還元物質とカソード性酸化還元物質とを併用するが、EC化合物である場合には、それぞれアノード性EC化合物、カソード性EC化合物と記載する。
(アノード性EC化合物)
アノード性EC化合物とは、EC素子の対象とする光波長領域において、アノード上で通常EC化合物から電子が取り去られる酸化反応によって光吸収特性が変化する材料を言う。典型的な例としては、光透過状態から光吸収状態に変化する材料が挙げられる。本明細書においては、EC化合物の変化をイメージし易くするために、典型的な例である光透過状態から光吸収状態への変化を取り上げて記述することがある。また本明細書では、光透過状態にある分子を「消色体」、光吸収状態にある分子を「着色体」と記載する(つまり、酸化還元物質における「生成体」は、その酸化還元物質がEC化合物である場合、「着色体」と記載する)。その場合、EC素子の対象とする光波長領域において、アノード性EC化合物の還元体は光透過状態であり「消色体」と記載する。また、アノード性EC化合物の酸化体は光吸収状態であり「着色体」と記載する。
アノード性EC化合物とは、EC素子の対象とする光波長領域において、アノード上で通常EC化合物から電子が取り去られる酸化反応によって光吸収特性が変化する材料を言う。典型的な例としては、光透過状態から光吸収状態に変化する材料が挙げられる。本明細書においては、EC化合物の変化をイメージし易くするために、典型的な例である光透過状態から光吸収状態への変化を取り上げて記述することがある。また本明細書では、光透過状態にある分子を「消色体」、光吸収状態にある分子を「着色体」と記載する(つまり、酸化還元物質における「生成体」は、その酸化還元物質がEC化合物である場合、「着色体」と記載する)。その場合、EC素子の対象とする光波長領域において、アノード性EC化合物の還元体は光透過状態であり「消色体」と記載する。また、アノード性EC化合物の酸化体は光吸収状態であり「着色体」と記載する。
アノード性EC化合物の例として、例えば、チオフェン誘導体、芳香環を有するアミン類(例えば、フェナジン誘導体、トリアリルアミン誘導体)、ピロール誘導体、チアジン誘導体、トリアリルメタン誘導体、ビスフェニルメタン誘導体、キサンテン誘導体、フルオラン誘導体、スピロピラン誘導体が挙げられる。これらの中でも、アノード性EC化合物としては、低分子の芳香環を有するアミン類が好ましく、ジヒドロフェナジン誘導体が最も好ましい。
(カソード性EC化合物)
カソード性EC化合物とは、EC素子の対象とする光波長領域において、カソード上で通常電極からEC化合物に電子が供与される還元反応によって光吸収特性が変化する材料を言う。典型的な例としては、光透過状態から光吸収状態に変化する材料が挙げられる。本明細書においては、EC素子の対象とする光波長領域において、カソード性EC化合物の還元体は光吸収状態であり、「着色体」と記載する。また、カソード性EC化合物の酸化体は光透過状態であり、「消色体」と記載する。
カソード性EC化合物の例としては、ビオロゲン等のピリジン系化合物、キノン化合物等が挙げられる。中でも、ビオロゲン等のピリジン系化合物が最も好ましく用いられる。
カソード性EC化合物とは、EC素子の対象とする光波長領域において、カソード上で通常電極からEC化合物に電子が供与される還元反応によって光吸収特性が変化する材料を言う。典型的な例としては、光透過状態から光吸収状態に変化する材料が挙げられる。本明細書においては、EC素子の対象とする光波長領域において、カソード性EC化合物の還元体は光吸収状態であり、「着色体」と記載する。また、カソード性EC化合物の酸化体は光透過状態であり、「消色体」と記載する。
カソード性EC化合物の例としては、ビオロゲン等のピリジン系化合物、キノン化合物等が挙げられる。中でも、ビオロゲン等のピリジン系化合物が最も好ましく用いられる。
(EC化合物の濃度)
図2に、カソード性酸化還元物質とアノード性酸化還元物質がいずれもEC化合物であるEC素子における、EC化合物の濃度と貫通孔12に起因する着色ムラの程度の関係を示す。図2の横軸であるEC化合物の濃度とはEC層13中に含まれる、アノード性EC化合物の濃度とカソード性EC化合物の濃度の和を意味する。尚、図2に示すデータの取得においては、本発明に係る隔離部14を設けないEC素子を使用した。また、図2の縦軸である着色ムラの程度(ΔE00)に関しては後に説明する。ここから、EC化合物の濃度が0.2mol/L以上の濃度領域において、貫通孔12に起因する着色ムラの程度が大きくなることがわかる。本発明の目的は、貫通孔12の近傍で生じる着色ムラの程度を低減することであり、本発明の効果は、0.2mol/L以上の濃度領域において強く表れることになる。
図2に、カソード性酸化還元物質とアノード性酸化還元物質がいずれもEC化合物であるEC素子における、EC化合物の濃度と貫通孔12に起因する着色ムラの程度の関係を示す。図2の横軸であるEC化合物の濃度とはEC層13中に含まれる、アノード性EC化合物の濃度とカソード性EC化合物の濃度の和を意味する。尚、図2に示すデータの取得においては、本発明に係る隔離部14を設けないEC素子を使用した。また、図2の縦軸である着色ムラの程度(ΔE00)に関しては後に説明する。ここから、EC化合物の濃度が0.2mol/L以上の濃度領域において、貫通孔12に起因する着色ムラの程度が大きくなることがわかる。本発明の目的は、貫通孔12の近傍で生じる着色ムラの程度を低減することであり、本発明の効果は、0.2mol/L以上の濃度領域において強く表れることになる。
尚、EC素子1の着色濃度はEC化合物の濃度に比例する。よって、本発明において用いられたカソード性酸化還元物質とアノード性酸化還元物質の一方のみがEC化合物であった場合には、係る一方の濃度が0.2mol/L以上の濃度領域において、本発明の効果が強く表れることとなる。
(相補型EC素子について)
本発明のEC素子は、カソード性酸化還元物質とアノード性酸化還元物質とを併用した相補型のEC素子である。以下に相補型EC素子の特徴について説明する。
相補型EC素子では一対の電極間に配置されるEC層においてアノード上で酸化反応を生じるアノード性酸化還元物質、及びカソード上で還元反応を生じるカソード性酸化還元物質を含み、そのうち少なくとも一つがEC化合物である。一対の電極間にEC層に含まれる酸化還元物質の酸化還元反応を引き起こすことのできる大きさの電圧を印加すると、カソード上でカソード性酸化還元物質の生成体が生成すると同時に、アノード上でアノード性酸化還元物質の生成体が生成する。特に、アノード性酸化還元物質とカソード性酸化還元物質の両方にEC化合物を用いた構成では、電圧印加により両化合物が同時に着色するため、高い着消色のコントラストを得ることができる。
本発明のEC素子は、カソード性酸化還元物質とアノード性酸化還元物質とを併用した相補型のEC素子である。以下に相補型EC素子の特徴について説明する。
相補型EC素子では一対の電極間に配置されるEC層においてアノード上で酸化反応を生じるアノード性酸化還元物質、及びカソード上で還元反応を生じるカソード性酸化還元物質を含み、そのうち少なくとも一つがEC化合物である。一対の電極間にEC層に含まれる酸化還元物質の酸化還元反応を引き起こすことのできる大きさの電圧を印加すると、カソード上でカソード性酸化還元物質の生成体が生成すると同時に、アノード上でアノード性酸化還元物質の生成体が生成する。特に、アノード性酸化還元物質とカソード性酸化還元物質の両方にEC化合物を用いた構成では、電圧印加により両化合物が同時に着色するため、高い着消色のコントラストを得ることができる。
一方、相補型EC素子においては駆動時において両電極は電気的に閉回路を形成する。従って、カソード性酸化還元物質の生成体とアノード性酸化還元物質の生成体の量は基本的に等しくなる。
ここで、酸化還元物質の組み合わせとして、(a)カソード性酸化還元物質+アノード性EC化合物、(b)カソード性EC化合物+アノード性酸化還元物質、(c)カソード性EC化合物+アノード性EC化合物、の3つのケースを考える。(a)から(c)の3つのケース全てについて、EC層の全ての領域においてカソード性酸化還元物質とアノード性酸化還元物質の生成体の量が等しい時は、EC素子を素子面の法線方向から観察した時に、EC層の着色は均一に見える。このような状態を本明細書では「着色ムラ」のない状態と呼称する。
ここで、酸化還元物質の組み合わせとして、(a)カソード性酸化還元物質+アノード性EC化合物、(b)カソード性EC化合物+アノード性酸化還元物質、(c)カソード性EC化合物+アノード性EC化合物、の3つのケースを考える。(a)から(c)の3つのケース全てについて、EC層の全ての領域においてカソード性酸化還元物質とアノード性酸化還元物質の生成体の量が等しい時は、EC素子を素子面の法線方向から観察した時に、EC層の着色は均一に見える。このような状態を本明細書では「着色ムラ」のない状態と呼称する。
次に、EC層のある領域でカソード性酸化還元物質、アノード性酸化還元物質のうち一方の生成体が多い場合を考える。このような状態は何らかの要因により一方の物質の電極上での反応が他の領域に比べて阻害されているか、或いは全く進行していないような場合に生じる。このような場合はこの領域で生じた生成体のインバランスを補償するため、この領域で生成体の量が少ない方の酸化還元物質の生成体が、EC層の別な領域においてもう一方の酸化還元物質の生成体よりも多く生成される。具体的には、EC層のある領域でアノード性酸化還元物質の生成体が他方より多く発生する時、EC層の別な領域において、カソード性酸化還元物質の生成体が他方よりも多く発生する。また、EC層のある領域でカソード性酸化還元物質の生成体が他方より多く発生する時、EC層の別な領域において、アノード性酸化還元物質の生成体が他方よりも多く発生する。このような状態において、EC素子を素子面の法線方向から観察すると、(a)及び(b)のケースでは、EC層のうち両酸化還元物質の生成体の量が等しい領域と、一方の酸化還元物質の生成体の量が多い領域でEC化合物の着色体の量が異なることから、光学濃度が異なって見えることになる。また(c)のケースでは、EC層のうち両化合物の着色体の量が等しい領域と、一方の化合物の着色体の量が多い領域では吸収スペクトルの形状が違うため、色が異なって見えることになる。尚、吸収スペクトルの形状が違うとは、EC素子の対象とする光波長領域において、ある吸収スペクトルを吸光度の値について定数倍しても、比較する吸収スペクトルと一致しないことを示す。このようなEC層の各領域で光学濃度・吸収スペクトルが異なっている状態を本明細書では「着色ムラ」のある状態と記載する。
〈貫通孔〉
貫通孔12は、本発明のEC素子を作製する際に、EC素子内にEC化合物を含む溶液を導入する目的で設けられる。貫通孔12は基板10a及び電極11a、又は基板10b及び電極11bを穿孔して形成される。貫通孔12を形成する方法としては、例えば、サンドブラスト加工、レーザー加工、又はダイヤモンドドリルを用いた加工方法等が挙げられる。一つのEC素子に形成される貫通孔12の数は、一つであってもよいし、二つ以上であってもよい。また、二つ以上の場合、貫通孔12を形成する基板及び電極は、基板10aと電極11a、及び、基板10bと電極11b、のいずれか一方にのみ形成しても、一つの貫通孔12を一方に、他の貫通孔12を他方に形成しても構わない。
貫通孔12は、本発明のEC素子を作製する際に、EC素子内にEC化合物を含む溶液を導入する目的で設けられる。貫通孔12は基板10a及び電極11a、又は基板10b及び電極11bを穿孔して形成される。貫通孔12を形成する方法としては、例えば、サンドブラスト加工、レーザー加工、又はダイヤモンドドリルを用いた加工方法等が挙げられる。一つのEC素子に形成される貫通孔12の数は、一つであってもよいし、二つ以上であってもよい。また、二つ以上の場合、貫通孔12を形成する基板及び電極は、基板10aと電極11a、及び、基板10bと電極11b、のいずれか一方にのみ形成しても、一つの貫通孔12を一方に、他の貫通孔12を他方に形成しても構わない。
貫通孔12を介して、EC素子1内にEC化合物を含む溶液を導入する具体的な方法としては、例えば、真空注入法、大気注入法が挙げられる。EC素子1内にEC化合物を含む溶液を注入した後は、貫通孔12を封止することで当該溶液をEC素子1内に安定に保持することができる。
本発明者等は、図1の隔離部14を設けないEC素子において、EC層13のうち貫通孔12の近傍で、アノード性酸化還元物質の生成体又はカソード性酸化還元物質の生成体のいずれかが他方より優先して生じることがあることを見出した。ここで、「生成体が優先して生じる」とは、EC素子駆動時に当該の領域において、アノード性酸化還元物質又はカソード性酸化還元物質のいずれかの生成体が他方の生成体よりも多く存在していることを意味する。例えば、「貫通孔12の近傍においてアノード性酸化還元物質の生成体が優先して生じる」とは、貫通孔12の近傍においてアノード性酸化還元物質の生成体がカソード性酸化還元物質の生成体よりも多く存在していることを示す。これは具体的には以下のような現象として観測される。両酸化還元物質のうち、アノード性酸化還元物質のみがEC化合物である場合には、貫通孔12の近傍においてそれ以外の領域と比べてアノード性EC化合物の着色が強く発現している状態として観測される。また、両酸化還元物質のうち、カソード性酸化還元物質のみがEC化合物である場合には、貫通孔12の近傍においてそれ以外の領域と比べてカソード性EC化合物の着色の発現が弱くなっている状態として観測される。また、両酸化還元物質がEC化合物である場合には、アノード性EC化合物の着色体の色がカソード性EC化合物の着色体の色よりも強く発現されている状態として観測される。このように貫通孔12の近傍でアノード性酸化還元物質又はカソード性酸化還元物質が優先的に生じると、EC層13のうち貫通孔12の近傍と、それ以外の領域でEC素子駆動時の着色に差が生じ、素子面内に着色ムラが生じることとなる。
図3に、本発明に係る隔離部14を持たないEC素子について、その貫通孔12の近傍でみられる典型的な着色ムラ領域の分布を示す。ここで図3(a)はEC素子の厚さ方向の断面の端面図であり、図3(b)はEC素子を基板面に垂直な方向から俯瞰した図である。図3(b)に示すように着色ムラ領域は貫通孔最近傍21と貫通孔準近傍22の二つの領域に発生する。いずれもEC層13のうち、貫通孔12の近傍の領域であるが、そのうち貫通孔12により近い領域を「貫通孔最近傍」、他方を「貫通孔準近傍」と呼称する。これらの領域においてアノード性酸化還元物質と、カソード性酸化還元物質のどちらの生成体が優先して生じるかは、電極の極性によって変化する。表1は、電極の極性と各領域において優先的に生じる生成体との関係をまとめた表である。表1が示すように、貫通孔12が形成された側の電極がアノード、対向する側の電極がカソードである場合、貫通孔最近傍21ではカソード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じ、貫通孔準近傍22ではアノード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる。貫通孔12が形成された側の電極がカソード、対向する側の電極がアノードである場合、貫通孔最近傍21ではアノード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じ、貫通孔準近傍22ではカソード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる。
〈貫通孔近傍で発生する着色ムラの発現メカニズム〉
図3に示すように、貫通孔最近傍21にアノード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる場合には、同時に貫通孔準近傍22でカソード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる。また、貫通孔最近傍21にカソード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる場合には、同時に貫通孔準近傍22でアノード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる。
図3に示すように、貫通孔最近傍21にアノード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる場合には、同時に貫通孔準近傍22でカソード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる。また、貫通孔最近傍21にカソード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる場合には、同時に貫通孔準近傍22でアノード性酸化還元物質の生成体が優先的に生じる。
本発明者等はEC素子駆動時においてこのような生成体の分布不均一が生じる原因を特定するため、貫通孔近傍の電極表面について詳しく調べた。その結果、貫通孔最近傍21において次のことが明らかとなった。貫通孔最近傍21と貫通孔準近傍22の境界を貫通孔12形成側の電極面に対し、その法線方向から投影する。この時に貫通孔形成側の電極面上において投影した境界によって区画される領域には電極11aが存在しない。即ち、貫通孔最近傍21は、貫通孔形成側の基板10a上に電極11aが存在しない領域であることが明らかとなった。
この観察事実から導かれる発現メカニズムを図4に示す。図4は、EC素子の貫通孔近傍の厚さ方向断面の端面図である。ここで断面は素子面(電極面)と直交する面である。図4(a)は、貫通孔形成側の電極11aがアノード、対向側の電極11bがカソードの場合における着色ムラの発現メカニズムである。また、図4(b)は貫通孔形成側の電極11aがカソード、対向側の電極11bがアノードの場合における着色ムラの発現メカニズムである。また、図4中、Aは還元状態のアノード性酸化還元物質を、aは酸化状態のアノード性酸化還元物質を、Cは酸化状態のカソード性酸化還元物質を、cは還元状態のカソード性酸化還元物質を示す。
図4(a)に示すように、貫通孔形成側の電極11aがアノードの場合には、貫通孔最近傍21ではカソード性酸化還元物質の還元反応のみが生じる。従って、カソード性酸化還元物質がEC化合物である場合には、この領域では他の領域と比べてカソード性EC化合物の着色が強く発現する。またカソード性酸化還元物質がEC化合物でない場合は、この領域では他の領域と比べてアノード性EC化合物の着色が弱く発現する。ところで、EC素子駆動時にはアノード・カソードの両電極11a,11bは電気的に閉回路を形成しているため、EC素子全体では両酸化還元物質の生成体の量は等しくなる。従って、貫通孔最近傍21で発生した生成体のインバランスは補償される必要がある。これは、貫通孔最近傍21に最も近いEC層13の領域、即ち貫通孔準近傍22でアノード性酸化還元物質の生成体の量がカソード性酸化還元物質の生成体の量よりも多くなることで補償される。従って、アノード性酸化還元物質がEC化合物である場合、貫通孔準近傍22では他の領域に比べてアノード性EC化合物の着色が強く発現する。アノード性酸化還元物質がEC化合物でない場合は、この領域では他の領域と比べてカソード性EC化合物の着色が弱く発現する。
また、貫通孔形成側の電極11aがカソードの場合には、図4(b)に示すように、貫通孔最近傍21ではアノード性酸化還元物質の酸化反応のみが生じる。従って、アノード性酸化還元物質がEC化合物である場合には、この領域では他の領域と比べてアノード性EC化合物の着色が強く発現する。またアノード性酸化還元物質がEC化合物でない場合は、この領域では他の領域と比べてカソード性EC化合物の着色が弱く発現する。前述したように両電極11a,11bは電気的に閉回路を形成しているため、貫通孔最近傍21で発生した着色体のインバランスは補償される必要がある。これは、貫通孔準近傍22でカソード性酸化還元物質の生成体の量がアノード性酸化還元物質の生成体の量よりも多くなることで補償される。従って、カソード性酸化還元物質がEC化合物である場合には、この領域では他の領域と比べてカソード性EC化合物の着色が強く発現する。またカソード性酸化還元物質がEC化合物でない場合は、この領域では他の領域と比べてアノード性EC化合物の着色が弱く発現する。
(貫通孔近傍で発生する着色ムラの解決方法)
前述したように、貫通孔最近傍21は貫通孔形成側の電極11aが存在しない領域であり、EC素子駆動時において当該領域で、貫通孔12と対向する側の電極11b上でのみ酸化反応、或いは還元反応が進行することが、着色ムラの発現要因である。そこで本発明者等は、EC層13のうち貫通孔形成側の電極11aが存在しない領域に、EC層13と当該領域の接触を阻止する隔離部14を配置することで、着色ムラを抑制することを考案した。即ち、貫通孔形成側の電極11aが存在しない領域において、対向する電極11bでも酸化反応、或いは還元反応が起こらないようにすることにより、酸化還元物質の一方のみの生成体が生じることを抑制する。これにより、生成体のインバランスにより生じていた貫通孔準近傍22での着色ムラをも抑制することができる。以下、具体的に解決策を説明する。
前述したように、貫通孔最近傍21は貫通孔形成側の電極11aが存在しない領域であり、EC素子駆動時において当該領域で、貫通孔12と対向する側の電極11b上でのみ酸化反応、或いは還元反応が進行することが、着色ムラの発現要因である。そこで本発明者等は、EC層13のうち貫通孔形成側の電極11aが存在しない領域に、EC層13と当該領域の接触を阻止する隔離部14を配置することで、着色ムラを抑制することを考案した。即ち、貫通孔形成側の電極11aが存在しない領域において、対向する電極11bでも酸化反応、或いは還元反応が起こらないようにすることにより、酸化還元物質の一方のみの生成体が生じることを抑制する。これにより、生成体のインバランスにより生じていた貫通孔準近傍22での着色ムラをも抑制することができる。以下、具体的に解決策を説明する。
〈隔離部の配置〉
隔離部14の配置方法について、図5を参照しながら説明する。図5(a)は隔離部14とEC素子を構成する要素の位置関係をEC素子の厚さ方向断面の端面図により説明した図である。図5(b−1)、(b−2)は後述する電極面P1上における隔離部14の接触領域A3と第一の基板10aの開口部12aの投影領域A1との内包関係、及び電極面P2上における隔離部14の接触領域A4と第一の基板10aの開口部12aの投影領域A2との内包関係を示した図である。図5(c−1)、(c−2)は後述する電極面P1における隔離部14の接触領域A3と、A4の投影領域B4の二つの領域により指定される領域C3の模式図、及び後述する電極面P2における隔離部14の接触領域A4と、A3の投影領域B3の二つの領域により指定される領域C4の模式図である。尚、図5(a)中、図1と同じ部位には同じ符号を付した。また、C3,C4は図中に斜線のハッチングで示す領域である。以下の説明におけるP1,P2,A1乃至A4、B3,B4、C3,C4の定義は以下の取りである。
P1:第一の電極11aの、第二の電極11bと対向する面を含む面
P2:第二の電極11bの、第一の電極11aと対向する面を含む面
A1:貫通孔12における第一の基板10aの開口部12aをP1の法線方向からP1へ投影した領域
A2:貫通孔12における第一の基板10aの開口部12aをP2の法線方向からP2へ投影した領域
A3:隔離部14がP1に接する領域
A4:隔離部14がP2に接する領域
B3:A3をP2に対しその法線方向から投影して得られる領域
B4:A4をP1に対しその法線方向から投影して得られる領域
C3:A3のうちB4と重ならない領域と、B4のうちA3と重ならない領域と、を合わせた領域
C4:A4のうちB3と重ならない領域と、B3のうちA4と重ならない領域と、を合わせた領域
隔離部14の配置方法について、図5を参照しながら説明する。図5(a)は隔離部14とEC素子を構成する要素の位置関係をEC素子の厚さ方向断面の端面図により説明した図である。図5(b−1)、(b−2)は後述する電極面P1上における隔離部14の接触領域A3と第一の基板10aの開口部12aの投影領域A1との内包関係、及び電極面P2上における隔離部14の接触領域A4と第一の基板10aの開口部12aの投影領域A2との内包関係を示した図である。図5(c−1)、(c−2)は後述する電極面P1における隔離部14の接触領域A3と、A4の投影領域B4の二つの領域により指定される領域C3の模式図、及び後述する電極面P2における隔離部14の接触領域A4と、A3の投影領域B3の二つの領域により指定される領域C4の模式図である。尚、図5(a)中、図1と同じ部位には同じ符号を付した。また、C3,C4は図中に斜線のハッチングで示す領域である。以下の説明におけるP1,P2,A1乃至A4、B3,B4、C3,C4の定義は以下の取りである。
P1:第一の電極11aの、第二の電極11bと対向する面を含む面
P2:第二の電極11bの、第一の電極11aと対向する面を含む面
A1:貫通孔12における第一の基板10aの開口部12aをP1の法線方向からP1へ投影した領域
A2:貫通孔12における第一の基板10aの開口部12aをP2の法線方向からP2へ投影した領域
A3:隔離部14がP1に接する領域
A4:隔離部14がP2に接する領域
B3:A3をP2に対しその法線方向から投影して得られる領域
B4:A4をP1に対しその法線方向から投影して得られる領域
C3:A3のうちB4と重ならない領域と、B4のうちA3と重ならない領域と、を合わせた領域
C4:A4のうちB3と重ならない領域と、B3のうちA4と重ならない領域と、を合わせた領域
ここで開口部12aを各面に投影する操作について図6を参照しながらより具体的に説明する。尚、図6は、本発明のEC素子の貫通孔12付近の厚さ方向断面の端面図であり、図中の符号は図1及び図5と同じである。
今、基板10aの開口部12aが設けられた基板面と平行な面S0を考える。面S0の法線方向をZ軸とし、基板面からEC層13に向かう方向を負の方向と規定した時に、開口部12aの存在する領域の最大のZ値をZmax、最小のZ値をZminと規定する。面S0をZminからZmaxまで移動することを考えると、各Z値において開口部12aと重なる面S0上の領域S1が存在する。このうち最も小さな面積を有するS1をP1、P2に投影することで、本発明において規定する開口部12aの投影領域A1、A2を得ることができる。図6において、最小のS1はZminの位置で得られる。
今、基板10aの開口部12aが設けられた基板面と平行な面S0を考える。面S0の法線方向をZ軸とし、基板面からEC層13に向かう方向を負の方向と規定した時に、開口部12aの存在する領域の最大のZ値をZmax、最小のZ値をZminと規定する。面S0をZminからZmaxまで移動することを考えると、各Z値において開口部12aと重なる面S0上の領域S1が存在する。このうち最も小さな面積を有するS1をP1、P2に投影することで、本発明において規定する開口部12aの投影領域A1、A2を得ることができる。図6において、最小のS1はZminの位置で得られる。
上記のようにP1、P2、A1乃至A4、B3,B4,C3,C4を規定した時に、隔離部14は以下の(1)乃至(4)の4条件により位置、及びサイズが指定される。
(1)隔離部14はP1及びP2と接する。
(2)A3がA1を含み、且つA3の面積がA1よりも大きい。
(3)A4がA2を含み、且つA4の面積がA2よりも大きい。
(4)C3及びC4のうちより大きい面積を有するものの面積が、A1及びA2のうちより小さい面積を有するものの面積以下である。
(1)隔離部14はP1及びP2と接する。
(2)A3がA1を含み、且つA3の面積がA1よりも大きい。
(3)A4がA2を含み、且つA4の面積がA2よりも大きい。
(4)C3及びC4のうちより大きい面積を有するものの面積が、A1及びA2のうちより小さい面積を有するものの面積以下である。
上記(1)〜(3)の3条件によって明示されるように、隔離部14が接触する領域は、基板10aの開口部12aの投影領域を含み、且つそれよりも大きくならなければならない。その理由は以下の通りである。
予めその表面に電極11aを形成した基板10aに貫通孔12を形成する際、その形成過程において貫通孔近傍の電極11aの欠損を全く生じさせることなく貫通孔12を形成するのは非常に困難である。貫通孔近傍の電極11aに欠損が生じた場合には、貫通孔形成側の電極11aを含む面上における電極11aの開口部12bと、当該面に基板10aの開口部12aを投影して得られる領域は一致せず、前者のほうが後者よりも大きくなる。従って、隔離部14がP1に接触する領域A3を基板10aの開口部12aの投影領域A1よりも大きくすることで、より生成体のインバランスが発生する領域での酸化反応、或いは還元反応を抑制することができる。
予めその表面に電極11aを形成した基板10aに貫通孔12を形成する際、その形成過程において貫通孔近傍の電極11aの欠損を全く生じさせることなく貫通孔12を形成するのは非常に困難である。貫通孔近傍の電極11aに欠損が生じた場合には、貫通孔形成側の電極11aを含む面上における電極11aの開口部12bと、当該面に基板10aの開口部12aを投影して得られる領域は一致せず、前者のほうが後者よりも大きくなる。従って、隔離部14がP1に接触する領域A3を基板10aの開口部12aの投影領域A1よりも大きくすることで、より生成体のインバランスが発生する領域での酸化反応、或いは還元反応を抑制することができる。
次に、基板10aに開口部12aを設けた後にその表面に電極11aを形成する場合を考える。この時、電極形成前の基板10aにおいて貫通孔近傍の領域に同様な欠損が生じうる。このような基板10aに電極11aを形成することを考えると、貫通孔近傍の欠損領域に形成された電極11aの表面積は、欠損領域を対向電極11bに投影した時に得られる領域の表面積よりも大きくなる。このような領域は、表面積が大きい側での酸化反応、或いは還元反応が他方よりも優先して生じ、着色ムラの発生源となりうる。従って、隔離部14がP2に接触する領域A4を基板10aの開口部12aの投影領域A2よりも大きくすることで、より生成体のインバランスが発生する領域での酸化反応、或いは還元反応を抑制することができる。
電極11aの欠損の程度は貫通孔12の加工方法により様々であるが、欠損を低減すべく精密な加工を選択した場合は、加工のコストが問題となる。上述の理由から、隔離部14を、基板10aの開口部12aの投影領域A1,A2を含み、且つそれよりも大きい接触領域A3,A4を有するように配置することにより、隔離部14が電極11aの開口部12bの投影領域のみに接触する場合と比べて、より着色ムラを低減することが可能となる。
また、上記(4)の条件によって示されるように、隔離部14が電極11a,11bの一方のみに接触する領域C3,C4の面積は基板10aの開口部12aのP1,P2への投影領域A1,A2の面積以下でなければならない。この理由は、隔離部14が電極11a,11bの一方のみに接触する領域C3,C4では貫通孔12と同様、一方の電極上でのみ酸化反応、或いは還元反応が進行するため、着色ムラの要因となる。このような領域の面積は、例えばP1上では、P1にA4を投影して得られるB4とA3を合わせた領域のうち、B4とA3領域が重ならない領域の面積と等しい。これがC3として規定される。また、P2上では、隔離部14が電極11a,11bの一方のみと接触する領域の面積は、P2にA3を投影して得られるB3とA4を合わせた領域のうち、B3とA4領域が重ならない領域の面積と等しい。これがC4として規定される。従って、C3、C4のうちより大きな面積を有するものの面積が、開口部12aの投影領域A1とA2のうちより小さい面積を持つものの面積以下である時に、隔離部14の形成によって新たに生じる着色ムラ発生領域の面積を、隔離部14によって着色ムラの発生を抑制する領域の面積が上回ることなるため、全体として隔離部形成が着色ムラ抑制に寄与することになる。
さらに、以下の(A)及び(B)の2条件で規定される隔離部14は上記(1)乃至(4)の4条件で規定される隔離部14よりもさらに、着色ムラの観点から好ましいものとなる。
(A)A3がa1を含み、且つA3の面積がa1よりも大きい。
(B)A4がa2を含み、且つA4の面積がa2よりも大きい。
上記(A)及び(B)において、a1、a2は以下の通りである。
a1:貫通孔12における電極11aの開口部12bを、P1に法線方向から投影して得られる領域
a2:貫通孔12における電極11aの開口部12bを、P2に法線方向から投影して得られる領域
(A)A3がa1を含み、且つA3の面積がa1よりも大きい。
(B)A4がa2を含み、且つA4の面積がa2よりも大きい。
上記(A)及び(B)において、a1、a2は以下の通りである。
a1:貫通孔12における電極11aの開口部12bを、P1に法線方向から投影して得られる領域
a2:貫通孔12における電極11aの開口部12bを、P2に法線方向から投影して得られる領域
上記a1、a2は、光学顕微鏡・電子顕微鏡を用いた直接観察、エネルギー分散型X線分析による表面元素分析などにより貫通孔12が形成された側の電極面を観測することにより、電極11aの開口部12bを規定し、それに基づいて決定することができる。またより簡易な方法としては以下の方法がある。EC素子に隔離部14を形成せずにEC化合物を含む溶液を充填した後に、EC素子を駆動する。すると、上述した着色ムラの発現メカニズムにより、電極11aの開口部12bは、貫通孔最近傍21として観測される。これを第一の電極面を含む面P1の法線方向から、第一の基板10aからEC層13に向かう向きに観察した時に、貫通孔最近傍21として観察される領域はa1と等しい。さらに、第二の電極面を含む面P2の法線方向から、第二の基板10bからEC層13に向かう向きに観察した時に、貫通孔最近傍21として観察される領域はa2と等しい。
上記(A)及び(B)の条件の規定により、(1)乃至(4)の条件よりも着色ムラが抑制される理由は以下の通りである。上述した着色ムラの発現メカニズムによって説明されたように、貫通孔12における電極11aの開口部12bが着色ムラの発生源となる。この領域をP1に投影して得られる領域がa1であるが、a1は基板10aの開口部12aをP1に投影して得られるA1を含み、且つその面積はA1よりも大きい。同様に、電極11aの開口部12bをP2に投影して得られる領域がa2であるが、a2は基板10aの開口部12aをP2に投影して得られるA2を含み、且つその面積はA2よりも大きい。すなわち(A)及び(B)の条件を設定することにより、着色ムラの発生源となる領域での酸化還元反応を隔離部14によってより抑制することができるため、着色ムラ抑制の観点からはより好ましい。
〈隔離部の形成方法〉
隔離部14はEC層13に含まれるEC化合物や溶媒との反応性が低く、また溶媒に溶解されることでEC層13を汚染しないものであることが好ましい。具体的には、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが挙げられる。また、未硬化の状態でEC層13の構成成分と反応せず、また、該構成成分に溶解しない樹脂材料を隔離部14として規定される位置に配置した後に硬化を行うことで、隔離部14とすることもできる。
隔離部14はEC層13に含まれるEC化合物や溶媒との反応性が低く、また溶媒に溶解されることでEC層13を汚染しないものであることが好ましい。具体的には、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが挙げられる。また、未硬化の状態でEC層13の構成成分と反応せず、また、該構成成分に溶解しない樹脂材料を隔離部14として規定される位置に配置した後に硬化を行うことで、隔離部14とすることもできる。
前者の不活性ガスを隔離部14として利用する場合は以下のような操作で、隔離部14を形成することができる。先ず、不活性ガス環境下で素子へEC材料を含む溶液を充填する。その後、EC素子を構成する両基板10a,10bに基板10a,10bからEC層13方向へ圧力を印加し、基板10a,10bを歪ませる。この圧力はEC層13の体積を減少させる方向に働く。これにより、体積減少分の溶液が貫通孔12を通ってEC層13から外部へと移動するので、これを吸引した後に、基板10a,10bに印加した圧力を解放する。これにより圧力を印加した時の体積減少分と等しい体積の不活性ガスが貫通孔近傍に充填される。これを隔離部14として利用することができる。
また、後者のように樹脂材料を隔離部14として利用する場合は以下のような操作で、隔離部を形成することができる。まず、素子へEC材料を含む溶液を充填する。その後、EC素子を構成する両基板10a,10bに基板10a,10bからEC層13方向へ圧力を印加し、基板を歪ませる。この圧力はEC層13の体積を減少させる方向に働く。これにより、体積減少分の溶液が貫通孔12を通ってEC層13から外部へと移動するので、これを吸引すると共に基板面の貫通孔近傍に未硬化の樹脂材料を塗布する。その後、基板10a,10bに印加した圧力を解放する。これにより圧力を印加した時の体積減少分と等しい体積の樹脂材料が貫通孔近傍に充填される。これを樹脂材料の適切な硬化条件に基づいて硬化を行い、隔離部14として利用することができる。
〈着色ムラの評価方法〉
EC素子内の着色ムラの評価方法について、図7を参照しながら説明する。図7(a)は評価系の構成要素とその配置を示す。図7(b)はこれにより得られる取得画像と解析領域の関係を模式的に示した図である。
EC素子内の着色ムラの評価方法について、図7を参照しながら説明する。図7(a)は評価系の構成要素とその配置を示す。図7(b)はこれにより得られる取得画像と解析領域の関係を模式的に示した図である。
透過型のEC素子1に対し、光軸33が素子面に対し垂直となるように面照明32と撮像装置31を配置する。EC素子1の駆動直後から24時間の間、経時的に画像34を取得する。画像の内、EC層13の存在する領域を長方形に近似し、この長方形に対し、(イ)長辺が0.8倍、(ロ)短辺が0.74倍、(ハ)重心が一致、(ニ)長辺が元の長方形の長辺と平行、の4つの条件により決定される長方形領域を解析領域35とした。解析領域35に含まれる全ピクセルのR値、B値、G値それぞれを平均化して基準のRGB値を取得した。さらに解析領域35を縦16×横16の計256の長方形領域に分割し、各領域における平均のRGB値と基準とRGB値の色差ΔE00をCIEDE2000の定義に基づく色差式を用いて算出した。尚、CIEDE2000の色差式はSharma,Gaurav;Wu,Wencheng;Dalal,Edul N.“The CIEDE2000 color−difference formula:Implementation notes,supplementary test data,and mathematical observations”Color Research & Applications 30(1),21−30(2005)を参照した。このようにして得られた各点の色差ΔE00のうちの最大値を各時間における着色ムラの絶対値とした。
本発明のEC素子の応用用途としては、表示装置、可変反射率ミラー、可変透過窓、光学フィルタ等を挙げることができる。これらの応用用途において着色ムラが発生した場合には、EC素子面の各点で透過光又は反射光の色のバランス、及び光強度の関係が意図せず変化することになり、いずれの用途においても好ましくない。
ΔE00の値について、本発明のEC素子をカメラの光学フィルタ、特にNDフィルタとして使用する場合について考える。NDフィルタとして使用するEC素子に着色ムラが生じると、非被写体が均一な明るさ、均一な色を有する場合であっても、撮像して得られる画像の各点で色味や明るさが変化することとなる。具体的に、貫通孔形成側の電極がアノードである場合を考える。この時、アノード性酸化還元物質がEC化合物である場合には、貫通孔準近傍では他の領域と比べてアノード性EC化合物の着色が強く発現する。またアノード性酸化還元物質がEC化合物でない場合は、貫通孔準近傍では他の領域と比べてカソード性EC化合物の着色が弱く発現する。一方、貫通孔形成側の電極がカソードである場合を考える。この時、カソード性酸化還元物質がEC化合物である場合には、貫通孔準近傍では他の領域と比べてカソード性EC化合物の着色が強く発現する。またカソード性酸化還元物質がEC化合物でない場合は、貫通孔準近傍では他の領域と比べてアノード性EC化合物の着色が弱く発現する。これにより貫通孔近傍で発生する着色ムラの程度が大きい場合には、取得される画像の品位が著しく低下するため、好ましくない。
このように、EC素子を光学フィルタ等の用途に用いる際には、着色ムラの程度が抑制されていることが求められる。具体的には、色差ΔE00が6.5以下となる事が好ましい。この色差の値が小さいほど着色ムラが抑制されていると言えるが、その指標として広く知られている日本電色工業株式会社の表において、色差ΔE00が6.5以下の範囲はB級許容差より小さいことを意味している。このB級許容差は、印象レベルでは同じ色として扱える範囲である。即ち、EC素子を光学フィルタとして用いる場合においても、取得される画像の品位を保つためには面内のΔE00の最大値が6.5以下の条件を満たす事が重要となる。これにより、例えば画面のうち、貫通孔近傍の部分で画像がそれ以外の領域と比べて色味や明るさが違って見えるといったことを抑制することができる。
〈本発明の効果について〉
本発明では、アノード性酸化還元物質、及びカソード性酸化還元物質を含み、少なくともそのうち一つがEC化合物であるEC層が対向する二つの電極間に配置されている。即ち、酸化還元物質が電極において酸化還元反応する相補型のEC素子である。このEC素子では、駆動時において貫通孔の近傍でアノード性酸化還元物質、及びカソード性酸化還元物質の一方の生成体が優先的に生じ、素子面内に着色ムラが生じる事がある。応答性と光学濃度の観点からはEC化合物濃度を増大させることが求められるが、このような貫通孔近傍で発生する着色ムラの程度は、EC層中のEC化合物濃度の増大と共に大きくなる。本発明では、対向する電極に挟まれた領域のうち、貫通孔近傍の領域に前記した条件(1)乃至(4)を満たす隔離部を設けることで、貫通孔近傍で発生する着色ムラを抑制することが可能である。よって、本発明においては、EC化合物濃度をより高くした場合にも貫通孔近傍で発生する着色ムラを低減することが可能となる。
本発明では、アノード性酸化還元物質、及びカソード性酸化還元物質を含み、少なくともそのうち一つがEC化合物であるEC層が対向する二つの電極間に配置されている。即ち、酸化還元物質が電極において酸化還元反応する相補型のEC素子である。このEC素子では、駆動時において貫通孔の近傍でアノード性酸化還元物質、及びカソード性酸化還元物質の一方の生成体が優先的に生じ、素子面内に着色ムラが生じる事がある。応答性と光学濃度の観点からはEC化合物濃度を増大させることが求められるが、このような貫通孔近傍で発生する着色ムラの程度は、EC層中のEC化合物濃度の増大と共に大きくなる。本発明では、対向する電極に挟まれた領域のうち、貫通孔近傍の領域に前記した条件(1)乃至(4)を満たす隔離部を設けることで、貫通孔近傍で発生する着色ムラを抑制することが可能である。よって、本発明においては、EC化合物濃度をより高くした場合にも貫通孔近傍で発生する着色ムラを低減することが可能となる。
〔光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置〕
本発明の光学フィルタは、本発明のEC素子と、該EC素子に接続され、該EC素子を駆動する能動素子と、を有している。能動素子は、EC素子を透過する光量を調整する素子であり、具体的には、EC素子の透過率を制御するためのスイッチング素子が挙げられる。スイッチング素子として、例えば、TFTやMIM素子が挙げられる。TFTは、薄膜トランジスタとも呼ばれ、その構成材料としては、半導体や酸化物半導体が用いられる。具体的には、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、InGaZnOを構成材料とする半導体等が挙げられる。
本発明の光学フィルタは、本発明のEC素子と、該EC素子に接続され、該EC素子を駆動する能動素子と、を有している。能動素子は、EC素子を透過する光量を調整する素子であり、具体的には、EC素子の透過率を制御するためのスイッチング素子が挙げられる。スイッチング素子として、例えば、TFTやMIM素子が挙げられる。TFTは、薄膜トランジスタとも呼ばれ、その構成材料としては、半導体や酸化物半導体が用いられる。具体的には、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、InGaZnOを構成材料とする半導体等が挙げられる。
本発明のレンズユニットは、上記本発明の光学フィルタと、複数のレンズを有する撮像光学系と、を有し、本発明の撮像装置は、上記本発明の光学フィルタと、該光学フィルタを透過した光を受光する受光素子とを備えている。
図8(a)は、本発明のレンズユニットを用いた本発明の撮像装置の実施形態の構成を模式的に示す図であり、図8(b)は本発明の撮像装置の他の実施形態の構成を示す図であり、いずれもレンズの光軸を含む断面図である。図中の40がレンズの光軸であり、42がレンズユニット、44が本発明の光学フィルタ、50が受光素子である。図8(a)の実施形態では、本発明の光学フィルタ41がレンズユニット42に含まれるが、図8(b)の実施形態では、本発明の光学フィルタ41がレンズユニット42に含まれない構成である。レンズユニット42はマウント部材(不図示)を介して撮像ユニット43に着脱可能に接続されている。
図8(a)の撮像装置において、撮像光学系は、好ましくは複数のレンズを有するレンズ群である。光学フィルタ41は、該光学フィルタ41を通過した光が撮像光学系を通過するように配置されていてもよいし、撮像光学系を通過した光が光学フィルタ41を通過するように配置されていてもよい。また、光学フィルタ41は、複数あるレンズとレンズとの間に配置されていてもよい。光学フィルタ41は、レンズの光軸40上に設けられることで、撮像光学系を通過する光、又は通過した光の光量が調整される。
レンズユニット42は、複数のレンズ或いはレンズ群を有するユニットである。例えば、図8(a)において、レンズユニット42は、絞りより後でフォーカシングを行うリアフォーカス式のズームレンズを表している。レンズユニット42は、被写体側(紙面左側)より順に正の屈折力の第1のレンズ群44、負の屈折力の第2のレンズ群45、正の屈折力の第3のレンズ群46、正の屈折力の第4のレンズ群47の4つのレンズ群を有する。第2のレンズ群45と第3のレンズ群46の間隔を変化させて変倍を行い、第4のレンズ群47の一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行う。レンズユニット42は、例えば、第2のレンズ群45と第3のレンズ群46の間に開口絞り48を有し、また、第3のレンズ群46と第4のレンズ群47の間に本発明の光学フィルタ41を有する。レンズユニット42を通過する光は、各レンズ群44乃至47、開口絞り48及び光学フィルタ41を通過するよう配置されており、開口絞り48及び光学フィルタ41を用いて光量の調整を行うことができる。
また、レンズユニット42内の構成は適宜変更可能である。例えば、光学フィルタ41は開口絞り48の前(被写体側)或いは後(撮像ユニット43側)に配置でき、また、第1のレンズ群44よりも前に配置しても良く、第4のレンズ群47よりも後に配置しても良い。光の収束する位置に配置すれば、光学フィルタ41の面積を小さくできるなどの利点がある。また、レンズユニット42の形態も適宜選択可能であり、リアフォーカス式の他、絞りより前でフォーカシングを行うインナーフォーカス式であっても良く、その他の方式であっても構わない。また、ズームレンズ以外にも魚眼レンズやマクロレンズなどの特殊レンズも適宜選択可能である。
撮像ユニット43は、ガラスブロック49と受光素子50を有する。ガラスブロック49は、ローパスフィルタやフェースプレートや色フィルタ等のガラスブロックである。また、受光素子50は、レンズユニット42を通過した光を受光するセンサ部であって、CCDやCMOS等の撮像素子が使用できる。また、フォトダイオードのような光センサであっても良く、光の強度或いは波長の情報を取得し出力するものを適宜利用可能である。
図8(a)のように、光学フィルタ41がレンズユニット42に組み込まれている場合、能動素子等の駆動手段はレンズユニット42内に配置されても良く、レンズユニット42外に配置されても良い。レンズユニット42外に配置される場合は、配線を通してレンズユニット42内外のEC素子と駆動手段を接続し、駆動制御する。
図8(b)に示す様に、撮像ユニット43が光学フィルタ41を有していても良い。光学フィルタ41は撮像ユニット43内部の適当な箇所に配置され、受光素子50は光学フィルタ41を通過した光を受光するよう配置されていれば良い。図8(b)においては、例えば光学フィルタ41は受光素子50の直前に配置されている。撮像ユニット43が光学フィルタ41を内蔵する場合、接続されるレンズユニット42が光学フィルタ41を持たなくても良いため、既存のレンズユニットを用いた調光可能な撮像装置を構成することが可能となる。
このような撮像装置は、光量調整と受光素子の組合せを有する製品に適用可能である。例えばカメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラに使用可能であり、また、携帯電話やスマートフォン、PC、タブレットなど撮像装置を内蔵する製品にも適用できる。これら装置において、本発明の光学フィルタを調光部材として用いることで、調光量を一つのフィルタで適宜可変させることが可能となり、部材点数の削減や省スペース化といった利点がある。本発明の光学フィルタ、レンズユニット及び撮像装置によれば、EC素子における貫通孔近傍で発生する着色ムラを抑制することができるため、光学フィルタを透過又は反射させた光を撮像して得られる画像の品位の低下を抑制することができる。
〔窓材〕
本発明の窓材は、一対の透明板と、該一対の透明板の間に配置された本発明のEC素子と、該EC素子に接続され、該EC素子を駆動する能動素子とを有する。図9は、本発明の窓材の一実施形態の構成を模式的に示す図であり、図9(a)は斜視図、図9(b)は図9(a)のA−A’断面図である。
本発明の窓材は、一対の透明板と、該一対の透明板の間に配置された本発明のEC素子と、該EC素子に接続され、該EC素子を駆動する能動素子とを有する。図9は、本発明の窓材の一実施形態の構成を模式的に示す図であり、図9(a)は斜視図、図9(b)は図9(a)のA−A’断面図である。
図9に示す窓材は調光窓であり、本発明のEC素子1と、それを挟持する透明板61a,61bと、全体を囲繞して一体化するフレーム62とからなる。能動素子(不図示)は、EC素子1を透過する光量を調整する素子であり、EC素子1に直接接続されていてもよいし、間接的に接続されていてもよい。また、能動素子は、フレーム62内に一体化されていても良く、フレーム62外に配置され配線を通してEC素子1と接続されていても良い。
透明板61a,61bは光透過率が高い材料であれば特に限定されず、窓としての利用を考慮すればガラス素材であることが好ましい。図9において、EC素子1は透明板61a,61bと独立した構成部材であるが、例えば、EC素子1の基板10a,10bが透明板61a,61bを兼ねても構わない。
フレーム62は材質を問わないが、EC素子1の少なくとも一部を被覆し、一体化された形態を有するもの全般をフレームとして見なして構わない。
係る調光窓は、電子カーテンを有する窓材と呼ぶこともでき、EC素子1が消色状態では入射光に対して充分な透過光量が得られ、また着色状態では入射光を確実に遮光及び変調した光学的特性が得られる。本実施形態に係る窓材は、例えば日中の太陽光の室内への入射量を調整する用途に適用できる。太陽の光量の他、熱量の調整にも適用できるため、室内の明るさや温度の制御に使用することが可能である。また、シャッターとして、室外から室内への眺望を遮断する用途にも適用可能である。このような調光窓は、建造物用のガラス窓の他に、自動車や電車、飛行機、船など乗り物の窓、時計や携帯電話の表示面のフィルタにも適用可能である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔EC素子の作製〕
図1に示される構造を有するEC素子1を以下の方法により作製した。
インジウムドープ酸化スズ(ITO)膜(電極11a,11b)が成膜されている透明導電性ガラス基板(基板10a,10b)を2枚用意した。片方の基板について、ダイヤモンドドリルを用いて二箇所の貫通孔12を形成した。
図1に示される構造を有するEC素子1を以下の方法により作製した。
インジウムドープ酸化スズ(ITO)膜(電極11a,11b)が成膜されている透明導電性ガラス基板(基板10a,10b)を2枚用意した。片方の基板について、ダイヤモンドドリルを用いて二箇所の貫通孔12を形成した。
次に、ギャップ制御粒子(直径50μm)と熱硬化性エポキシ樹脂混合物とを混練して、周辺封止材15を調製した。次に、電極11a又は11bの面上に、ディスペンサ装置を使用して周辺封止材15を塗布した。この時の塗布パターンは、後述する基板を貼り合わせる工程の後に、片方の基板に設けた二箇所の貫通孔12が周辺封止材で囲まれた領域内に配置されるように描画した。次に、周辺封止材15を塗布した基板を加熱し熱硬化性エポキシ樹脂混合物に含まれる溶媒を揮発させた。次に、周辺封止材15を塗布した基板と、もう一方の基板とを、電極11aと電極11bとが対向するように貼り合わせた後、高温下で二時間エポキシ樹脂の本硬化を行った。このようにして作製したEC溶液を含まない状態の素子を3つ作製した。
次に、アノード性EC化合物(ジヒドロフェナジン誘導体)と、カソード性EC化合物(ビオロゲン誘導体)をそれぞれ233[mmol/L]の濃度になるように炭酸プロピレンに溶解し、EC溶液を調製した。次に、窒素雰囲気下において、EC溶液を、対向する電極11a、11bと周辺封止材15とによって区画された空間に貫通孔12を経由して充填し、EC層13を得た。この後、3つの素子のうち二つの素子に対して隔離部14の形成を行った。具体的には、基板10a、10bに対し基板10a、10bからEC層13への方向に圧力を印加し、貫通孔12から外部へと移動したEC溶液を吸引した後に圧力を解放した。これにより貫通孔近傍において隔離部14を得た。尚、二つの素子において、基板10a,10bに加える圧力の程度を変えることにより、それぞれに形成される隔離部14の大きさを変えた。残る一つの素子については隔離部14を形成しなかった。
次に、紫外線硬化型アクリル樹脂を貫通孔12の周辺に塗布した後、貫通孔12を塞ぐように成形し、UV照射により硬化させた。さらに、紫外線硬化型エポキシ樹脂を同部位に塗布し、UV照射により硬化させ、EC素子を3種類作製した。このようにして得た3つのEC素子において、上述したA1、A2、A3、A4の各領域の関係を図10及び表2に、A1、A2、C3、C4の面積の実測値を表2に示す。
〔着色ムラの評価〕
上記で作製したEC素子を素子面が水平となるように配置した。次いで、図7(a)に示すように、光軸33が素子面に対し垂直となるようにEC素子1の上方に撮像装置31(Canon Eos kiss x5)を、素子の下方に面照明32(FUJICOLOR HR−2)を配置した。EC素子1を貫通孔が形成された側の電極をアノード、対向する電極をカソードとして両電極間に0.7Vの電圧をかけることで駆動させ、EC素子駆動直後から24時間の間、30分間隔で画像34を取得した。前記した、着色ムラの評価方法に従い、図7(b)に示すように、取得した画像34を200px×134pxにリサイズし、解析領域35に含まれる全ピクセルのR値、B値、G値それぞれを平均化して基準のRGB値を取得した。さらに解析領域35を縦16個×横16個の計256個の長方形領域に分割し、各領域における平均のRGB値と基準とRGB値の色差ΔE00をCIEDE2000の定義に基づく色差式を用いて算出した。このようにして得られた各点の色差ΔE00のうちの最大値を各時間における着色ムラの絶対値とし、24時間後の着色ムラの絶対値で評価を行った。
上記で作製したEC素子を素子面が水平となるように配置した。次いで、図7(a)に示すように、光軸33が素子面に対し垂直となるようにEC素子1の上方に撮像装置31(Canon Eos kiss x5)を、素子の下方に面照明32(FUJICOLOR HR−2)を配置した。EC素子1を貫通孔が形成された側の電極をアノード、対向する電極をカソードとして両電極間に0.7Vの電圧をかけることで駆動させ、EC素子駆動直後から24時間の間、30分間隔で画像34を取得した。前記した、着色ムラの評価方法に従い、図7(b)に示すように、取得した画像34を200px×134pxにリサイズし、解析領域35に含まれる全ピクセルのR値、B値、G値それぞれを平均化して基準のRGB値を取得した。さらに解析領域35を縦16個×横16個の計256個の長方形領域に分割し、各領域における平均のRGB値と基準とRGB値の色差ΔE00をCIEDE2000の定義に基づく色差式を用いて算出した。このようにして得られた各点の色差ΔE00のうちの最大値を各時間における着色ムラの絶対値とし、24時間後の着色ムラの絶対値で評価を行った。
〔評価結果〕
図11は、上述した3種類の素子について、着色ムラの指標であるΔE00を上述の方法に基づいて測定した結果を示すグラフである。図11から、隔離部14を形成しなかった素子No.1に比べて、隔離部14を形成した素子No.2,3では色差がそれぞれ0.4倍、0.2倍となり着色ムラが大幅に減少することが確認された。さらに、本発明で規定した条件を満たす隔離部14を配置した素子No.3ではΔE00は5.0程度となり、前述のΔE00≦6.5の条件が満たされることが確認された。
図11は、上述した3種類の素子について、着色ムラの指標であるΔE00を上述の方法に基づいて測定した結果を示すグラフである。図11から、隔離部14を形成しなかった素子No.1に比べて、隔離部14を形成した素子No.2,3では色差がそれぞれ0.4倍、0.2倍となり着色ムラが大幅に減少することが確認された。さらに、本発明で規定した条件を満たす隔離部14を配置した素子No.3ではΔE00は5.0程度となり、前述のΔE00≦6.5の条件が満たされることが確認された。
1:エレクトロクロック素子(EC素子)、10a,10b:基板、11a,11b:電極、12:貫通孔、12a,12b:開口部、13:エレクトロクロミック層(EC層)、14:隔離部、41:光学フィルタ、42:レンズユニット、50:受光素子、61a,61b:透明基板
Claims (8)
- 間隙を介して互いに対向配置する第一の基板と第二の基板と、前記第一の基板の内側に配置された第一の電極と、前記第二の基板の内側に配置された第二の電極と、前記第一の電極と前記第二の電極との間に配置されたエレクトロクロミック層と、を備え、
前記第一の基板及び前記第一の電極、又は前記第二の基板及び前記第二の電極を貫通する貫通孔を少なくとも一つ有し、
前記エレクトロクロミック層が、溶媒と、アノード性酸化還元物質と、カソード性酸化還元物質と、を有し、
前記アノード性酸化還元物質及びカソード性酸化還元物質の少なくとも一つがエレクトロクロミック化合物であるエレクトロクロミック素子であって、
前記第一の電極と前記第二の電極との間に、前記エレクトロクロミック層と、前記第一及び前記第二の電極との接触を阻害する隔離部を有し、
(1)前記隔離部はP1及びP2に接しており、
(2)A3がA1を含み、且つA3の面積がA1よりも大きく、
(3)A4がA2を含み、且つA4の面積がA2よりも大きく、
(4)C3及びC4のうちより大きい面積を有するものの面積が、A1及びA2のうちより小さい面積を有するものの面積以下である
(前記(1)乃至(4)において、
P1は、前記第一の電極の、前記第二の電極と対向する面を含む面
P2は、前記第二の電極の、前記第一の電極と対向する面を含む面
A1は、前記貫通孔における前記第一又は第二の基板の開口部をP1の法線方向からP1へ投影した領域、
A2は、前記貫通孔における前記第一又は第二の基板の開口部をP2の法線方向からP2へ投影した領域、
A3は、前記隔離部が前記P1に接する領域、
A4は、前記隔離部が前記P2に接する領域、
B3は、前記A3を前記P2に対しその法線方向から投影して得られる領域、
B4は、前記A4を前記P1に対しその法線方向から投影して得られる領域、
C3は、前記A3のうち前記B4と重ならない領域と、前記B4のうち前記A3と重ならない領域と、を合わせた領域、
C4は、前記A4のうち前記B3と重ならない領域と、前記B3のうち前記A4と重ならない領域と、を合わせた領域、である。)、
ことを特徴とするエレクトロクロミック素子。 - さらに、
(A)A3がa1を含み、且つA3の面積がa1よりも大きく、
(B)A4がa2を含み、且つA4の面積がa2よりも大きい
(前記(A)及び(B)において、
a1は貫通孔における電極の開口部を、P1に法線方向から投影して得られる領域、
a2は貫通孔における電極の開口部を、P2に法線方向から投影して得られる領域、である。)
ことを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。 - 前記エレクトロクロミック層における前記エレクトロクロミック化合物の濃度が0.2mol/L以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック素子。
- 前記隔離部は、不活性ガス、或いは、未硬化時に前記エレクトロクロミック層の構成成分との反応性がなく、且つ、前記構成成分に溶解しない樹脂材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
- 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続されており、前記エレクトロクロミック素子を駆動する能動素子と、を有することを特徴とする光学フィルタ。
- 請求項5に記載の光学フィルタと、複数のレンズを有する撮像光学系と、を有することを特徴とするレンズユニット。
- 請求項5に記載の光学フィルタと、前記光学フィルタを透過した光を受光する受光素子と、を有することを特徴とする撮像装置。
- 一対の透明板と、前記一対の透明板の間に配置されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続され、前記エレクトロクロミック素子を駆動する能動素子と、を有することを特徴とする窓材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019038287A JP2020144156A (ja) | 2019-03-04 | 2019-03-04 | エレクトロクロミック素子、及びこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019038287A JP2020144156A (ja) | 2019-03-04 | 2019-03-04 | エレクトロクロミック素子、及びこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2020144156A true JP2020144156A (ja) | 2020-09-10 |
Family
ID=72354091
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019038287A Pending JP2020144156A (ja) | 2019-03-04 | 2019-03-04 | エレクトロクロミック素子、及びこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2020144156A (ja) |
-
2019
- 2019-03-04 JP JP2019038287A patent/JP2020144156A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US10437127B2 (en) | Electrochromic apparatus and method of driving electrochromic device, as well as optical filter, lens unit, imaging apparatus and window member | |
US11194215B2 (en) | Electrochromic device, optical filter using same, lens unit, image taking device, window member, and driving method for electrochromic element | |
JP2013213873A (ja) | カラーフィルタおよび有機el表示装置 | |
CN211979380U (zh) | 一种滤光装置、摄像头及发光光源 | |
WO2020175235A1 (ja) | 表示装置及び電子機器 | |
US9946137B2 (en) | Electrochromic element, lens unit, imaging device, and window member | |
CN111487830A (zh) | 一种滤光装置、摄像头及发光光源 | |
US10539852B2 (en) | Electrochromic element, optical filter, lens unit, imaging device, and window component | |
WO2017181455A1 (zh) | 一种智能滤光片及其制备工艺与应用 | |
US11366369B2 (en) | Electrochromic element | |
JP2020144156A (ja) | エレクトロクロミック素子、及びこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 | |
US20220197098A1 (en) | Electrochromic device, optical filter, lens unit, image pickup apparatus, window member, and electrochromic mirror | |
JP7247054B2 (ja) | エレクトロクロミック素子 | |
JP2017167317A (ja) | エレクトロクロミック素子、光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 | |
US20210200050A1 (en) | Electrochromic element | |
WO2020059597A1 (ja) | エレクトロクロミック素子 | |
US11442324B2 (en) | Electrochromic element, imaging apparatus and transmittance variable window using the same | |
JP2021076624A (ja) | エレクトロクロミック素子、及びこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 | |
JP2017198941A (ja) | エレクトロクロミック素子およびそれを有する光学系、撮像装置、レンズ装置 | |
JP2020148993A (ja) | エレクトロクロミック素子 | |
US20230041311A1 (en) | Electrochromic element | |
JP2019204079A (ja) | エレクトロクロミック素子及びこれを用いた撮像装置、透過率可変窓 | |
JP2006145723A (ja) | エレクトロクロミック素子、光学デバイス及び撮影ユニット | |
WO2022126365A1 (zh) | 显示基板、显示装置及显示基板的制作方法 | |
JP2017090601A (ja) | エレクトロクロミック素子、レンズユニット、撮像装置、窓材 |