JP2017167317A - エレクトロクロミック素子、光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 - Google Patents

エレクトロクロミック素子、光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材 Download PDF

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和也 宮崎
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Abstract

【課題】広い温度範囲にわたって安定な動作が保証されたエレクトロクロミック素子を提供する。【解決手段】一対の基板(10a、10b)と、前記一対の基板の間に配置され、エレクトロクロミック材料と、溶媒と、を含むエレクトロクロミック媒体12と、を有し、エレクトロクロミック媒体12が封止材(13a、13b)によって封止されているエレクトロクロミック素子1であって、前記エレクトロクロミック材料が、フェナジン類化合物及びビピリジニウム塩類化合物であり、前記封止材の少なくとも一部(13b)が、エレクトロクロミック媒体12が配置される空間とエレクトロクロミック素子1の外部空間との間に充填される混練物の硬化物であり、前記混練物が、光重合開始剤であるオニウム塩を含む紫外線硬化型エポキシ樹脂と、酸素欠陥を有する酸化セリウムと、を有することを特徴とする、エレクトロクロミック素子1。【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロクロミック素子、並びにこれを用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置及び窓材に関する。
エレクトロクロミック素子(以下、EC素子ということがある。)は、一対の電極と、この一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック媒体を有する層(EC層)とを有する素子である。これら一対の電極から電圧を印加し、EC層内の化合物の透過率を変化させることで、一対の電極のいずれかを通過する光の光量を調整することができる。
近年、固体撮像素子を用いた動画撮影装置において、光学濃度を無段階に調整できる可変NDフィルタへの要求が高まっている。この用途の光学素子としては、これまでに液晶や無機エレクトロクロミック薄膜を用いたものが多く提案されているが、光量調整範囲や信頼性等の点で従来のNDフィルタより劣るため、広く普及するに至っていない。
一方、有機エレクトロクロミック化合物の分子を用いたEC素子は、光量調整範囲が広く、また分光透過率の設計が比較的容易であるという特徴を有する。このため、有機エレクトロクロミック化合物を有するEC素子は、撮像装置に搭載する可変NDフィルタ用の素子として特に有望である。
有機エレクトロクロミック化合物を用いたEC素子は、一対の電極の間に、電気化学的に活性なアノード性材料と電気化学的に活性なカソード性材料と、を有している。これら材料のうち少なくとも一つがエレクトロクロミック性、即ち、電気化学的な酸化還元により可視光領域に吸収帯を発現する材料として構成される。このとき一対の電極上では、アノード性材料の酸化反応とカソード性材料の還元反応とが同時に起こり、これによりEC素子に閉回路が形成されて電流が流れる。
EC素子を撮像装置の可変NDフィルタとして撮像装置内に設置する場合、当該EC素子は、撮像素子が発生する熱や回路基板からの熱、さらにレンズ系を通して集光された光による熱等に曝されることになる。これにより、EC素子の温度は100℃以上にまで上昇することがある。ここでEC素子の温度が高温になると、有機系材料によって封止した部分からEC層へ向けて酸素及び水の侵入が顕著となる。これが有機エレクトロクロミック化合物を用いたEC素子の劣化要因の一つとなっている。
特許文献1には、EC層の構成材料をEC層へ導入する際に用いられる開口部を紫外線硬化型接着剤によって封止した溶液型のEC素子が開示されている。また、特許文献2には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に、酸素欠陥を有する無機化合物(二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄)を含有させた樹脂組成物(例えば、包装体、フィルム等)が開示されている。
特開2004−192009号公報 特開2006−130717号公報
溶液型のEC素子に用いられる封止材としては、EC素子を構成する基板同士を貼り合せる際に用いられる周辺封止材と、エレクトロクロミック媒体のEC層への充填の際に用いられる開口部の封止に用いられる開口部封止材の二種類がある。これら封止材の構成材料は、それぞれ要求性能に合わせて適宜最適なものが選択される。ここで、周辺封止材はプロセス上の制限が比較的少ないため、接着性や低透湿性・低ガス透過性等の基本性能が良好な熱硬化型エポキシ樹脂を用いることが多い。一方、開口部封止材においては、封止材を形成する際に用いられる樹脂材料が未硬化の状態でエレクトロクロミック媒体と接触し、またエレクトロクロミック媒体と接触した状態で未硬化の樹脂材料を硬化させる、という事情がある。このため、開口部封止材は、周辺封止材と比較して特別な性能が要求されると共にプロセス上の制限が多くある。例えば、硬化前の段階でエレクトロクロミック媒体に含まれる材料や溶媒との反応性が無いこと、溶媒に溶解されることによってエレクトロクロミック媒体を汚染しないこと、低温で硬化できること等が挙げられる。これらの制限を考慮すると、開口部封止材を形成する際は、周辺封止材より封止材としての基本性能が劣った紫外線硬化型樹脂が用いられることが多い。
EC素子の劣化要因の一つとして、素子の外部からの酸素の侵入があるが、上述した理由により、酸素は、主に、開口部封止材を通して素子の内部に侵入する。このとき開口部封止材から酸素が侵入するのを抑制する構成としては様々な構成が考えられるが、その一つとして開口部封止材に脱酸素剤を添加して酸素侵入を抑止する構成が有望である。開口部封止材に添加される脱酸素材には水分に依存して酸素吸収を行うものと、水分に依存せず自発反応で酸素吸収を行うものの二種類がある。これらのうち、湿度環境に依らず酸素吸収能を発揮できる後者が好適であり、その中でも酸素欠陥を有する無機化合物が特に有望である。しかしながら、酸素欠陥を有する無機化合物は反応性が非常に高く、例えば、水酸基を有する有機化合物との反応により水素ガスを発生する。開口部封止材の構成材料の少なくとも一部が、上記水酸基を含む場合、硬化前の段階から気泡が発生することになる。これによって密着性や低透湿性・低ガス透過性等のシール機能が大幅に低下するという課題があった。
本発明は、上述した課題を解決するためになされるものであり、その目的は、広い温度範囲にわたって安定な動作が保証されたエレクトロクロミック素子を提供することにある。
本発明のエレクトロクロミック素子は、一対の基板と、前記一対の基板の間に配置され、エレクトロクロミック材料と、溶媒と、を含むエレクトロクロミック媒体と、を有し、前記エレクトロクロミック媒体が封止材によって封止されているエレクトロクロミック素子であって、
前記エレクトロクロミック材料が、フェナジン類化合物及びビピリジニウム塩類化合物であり、
前記封止材の少なくとも一部が、前記エレクトロクロミック媒体が配置される空間と前記エレクトロクロミック素子の外部空間との間に充填される混練物の硬化物であり、
前記混練物が、光重合開始剤であるオニウム塩を含む紫外線硬化型エポキシ樹脂と、酸素欠陥を有する酸化セリウムと、を有することを特徴とする。
本発明によれば、広い温度範囲にわたって安定な動作が保証されたエレクトロクロミック素子を提供することができる。
本発明のエレクトロクロミック素子の実施形態を示す断面模式図である。 本発明の撮像装置の実施形態の例を表す断面図である。 酸化セリウムの添加量と光学濃度低下時間との関係を示すグラフである。
本発明は、一対の基板と、前記一対の基板の間に配置され、エレクトロクロミック材料と、溶媒と、を含むエレクトロクロミック媒体と、を有するエレクトロクロミック素子(EC素子)に関する。尚、このEC素子を構成する基板は、EC素子を駆動させるために必要な電極を備えている基板、即ち、電極付基板である。本発明において、エレクトロクロミック媒体は封止材によって封止されている。また本発明において、エレクトロクロミック材料は、フェナジン類化合物及びビピリジニウム塩類化合物である。本発明において、封止材の少なくとも一部は、上記エレクトロクロミック媒体が配置される空間と前記エレクトロクロミック素子の外部空間との間に充填される混練物の硬化物である。ここで、この混練物は、光重合開始剤であるオニウム塩を含む紫外線硬化型エポキシ樹脂と、酸素欠陥を有する酸化セリウムと、を有する。
1.EC素子
以下、図面を参照しながら本発明のEC素子の実施形態について詳しく説明する。ただし、以下に説明において特段説明がない構成、相対配置等は、特に説明がない限り、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
図1は、本発明のエレクトロクロミック素子(EC素子)の実施形態を示す断面模式図である。ここで、図1(a)は、第一の実施形態を示す図であり、図1(b)は、第二の実施形態を示す図である。尚、各実施形態において、共通する部材については共通の符号が付されている。
図1(a)のEC素子1は、電極を有する基板を二枚有している。具体的には、所定の面に電極11aが設けられている基板10aと、所定の面に電極11bが設けられている基板10bと、を有している。これら一対の基板(10a、10b)は、電極(11a、11b)同士が対向するように設置される。また図1(a)のEC素子1においては、一対の基板(10a、10b)の少なくともいずれかから光を透過させるのが好ましい。このため、これら基板(10a、10b)のうち少なくとも一つは、透明な基板であるのが好ましい。さらに一対の基板(10a、10b)のいずれもが透明な基板である場合、EC素子1は、少なくとも所定の波長の光、具体的には、着色状態にあるEC媒体12に吸収されない光を透過する素子として利用することができる。また一対の基板(10a、10b)のうち光を透過させる基板については、対応する基板に設けられる電極(11a、11b)は、光を透過する透明電極であることが好ましい。
またこれら二枚の基板(10a、10b)の間には、EC媒体12が、基板10aと基板10bとの間の空間を充填するように配置されている。EC媒体12には、少なくとも一種類のエレクトロクロミック材料(以下、EC材料ということがある。)及び溶媒が含まれている。
図1(a)において、EC媒体12は、二種類の封止材、即ち、第一の封止材13a及び第二の封止材13bによって、基板10aと基板10bとの間の空間からEC素子(1、2)の外部空間へ漏れ出ないように封止されている。ここで、第一の封止材13aにより、二枚の基板(10a、10b)同士が貼り合わさっている。また第一の封止材13aは、これら基板(10a、10b)の間隔を制御するための部材、例えば、ギャップ制御粒子(不図示)を有している。さらに第一の封止材13aは、例えば、基板(10a、10b)の縁部同士が貼り合わさるように設けられており、EC媒体12の周囲の少なくとも一部を取り囲んでいる。このため、第一の封止材13aは、周辺封止材とも呼ばれる部材である。一方、第二の封止材13bは、開口部14に充填され、かつ開口部14を塞ぐように設けられた封止材である。このため、第二の封止材13bは、開口部封止材とも呼ばれる部材である。尚、開口部14とは、二枚の基板(10a、10b)の貼り合せの際に形成され、基板10aと基板10bとの間の空間にEC媒体12を配置させるために用いられる注入口となる空間をいう。また第二の封止材13bは、開口部14に充填され、第一の封止材13aを形成する際に用いられる材料とは異なる材料である混練物の硬化物であるが、この混練物の詳細については、後述する。
EC媒体12をガラス基板10aとガラス基板10bとの間の空間へ導入し充填させるために用いられる開口部14を設ける態様は特に限定されない。例えば、図1(a)のようにEC素子1の側面の一部が開口部14になるようにしてもよい。
ところで、EC素子1の構成部材であって、EC媒体12及び第二の封止材(開口部封止材)13b以外の部材、即ち、基板(10a、10b)、電極(11a、11b)及び第一の封止材13aは、EC媒体12を収容するセル15を構成する。ところで、第二の封止材13bは、EC媒体12を配置する空間とEC素子1の外部空間との間に配置される混練物の硬化物である。尚、この混練物の詳細については、後述する。
図1(b)のEC素子2は、開口部14を設ける位置が異なること以外は、図1(a)のEC素子1と共通している。本発明においては、図1(b)のように、基板10bの一部に穿孔を形成することで開口部14を設けてもよい。尚、開口部14となる穿孔は、基板10a又は基板10bの少なくともいずれかに形成すればよいが、基板10a及び基板10bの両方に形成してもよい。また図1(b)のEC素子2のように、基板10a(又は基板10b)に開口部14を設ける場合、EC素子2の側面のうち基板10aと基板10bとの間の部分には、第一の封止材13aが基板10aと基板10bとの間を充填する態様で設けられている。
2.EC素子の製造方法
次に、本発明のEC素子の製造方法について説明する。本発明のEC素子は、例えば、真空注入法やODF(One Drop Fill)工法を利用して作製することができる。
(1)真空注入法を利用した製造方法
以下、真空注入法を利用した本発明のEC素子の製造方法を説明する。真空注入法を利用する場合、例えば、下記(1−1)乃至(1−4)の工程を経てEC素子が作製される。
(1−1)一対の基板を貼り合せて開口部を有するセルを形成する工程
(1−2)開口部よりセルの内部へエレクトロクロミック媒体を配置させる工程
(1−3)開口部に混練物を充填する工程
(1−4)混練物を硬化する工程
尚、以下の説明においては、各製造プロセスにおいて使用される部材及び材料についても詳細に説明する。
(1−1)開口部14を有するセル15の形成工程
真空注入法を利用してEC素子(1、2)を製造する場合は、まず、開口部14を有するセル15を作製する。
本発明において、セル15の構成部材である基板(10a、10b)は、特に限定されないが、光を透過させるのであるならば、ガラス基板のような光の透過性が良好な基板を用いるのが好ましい。本発明のEC素子で用いることができるガラス基板としては、光学ガラス、石英ガラス、白板ガラス、青板ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、化学強化ガラス等が挙げられる。これらガラス基板の中でも、特に、透明性や耐久性が良好である点から、無アルカリガラスが好ましい。
基板(10a、10b)からセル15を作製する場合、基板(10a、10b)同士を組み合わせる前の段階で、基板(10a、10b)の所定の面上に、それぞれ電極(11a、11b)を設けておく。本発明において、電極(11a、11b)は、光を透過する透明電極であってもよいし、光を透過しない電極であってもよい。ただし、光を透過させる基板側に設けられる電極は、透明電極とするのが好ましい。
本発明において、EC素子の構成部材として用いられる透明電極として、例えば、透明導電性酸化物を成膜してなる薄膜電極が挙げられる。この薄膜電極の構成材料となる透明導電性酸化物として、スズドープ酸化インジウム(ITO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオビウムドープ酸化チタン(TNO)、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
また本発明のEC素子において、光を透過しない電極を用いる場合、例えば、Au、Ag等の金属材料を成膜してなる反射電極を用いることができる。
また基板(10a、10b)には、電極(11a、11b)の他に、反射防止層、インデックスマッチング層等が形成されていてもよい。反射防止層やインデックスマッチング層を形成する場合、これらの層の形成位置として、例えば、基板の表面(電極が設けられている側の面の表面)、基板と電極との界面、電極とEC媒体との界面等が挙げられる。反射防止層やインデックスマッチング層を形成することによって、構成材料の屈折率の相違に起因する界面反射を低減して透過率を向上させることができる。さらに、図1(b)のEC素子2のように、基板(10a、10b)のいずれかに穿孔を形成することで開口部14を設ける場合、例えば、基板(10a、10b)の上に電極(11a、11b)等の必要な部材を一通り設けた後で穿孔を形成して開口部14を設けてもよい。また図1(b)のEC素子2の作製の際に基板(10a、10b)に形成される穿孔の数は、1つであってもよいし2つ以上であってもよい。また穿孔は、少なくとも基板10a又は10bのいずれかに設けられていればよい。
以上説明のように、基板(10a、10b)の所定の面に、それぞれ電極(11a、11b)等の必要な部材を形成した後、各基板(10a、10b)を、電極(11a、11b)が対向するように設置した上で、基板(10a、10b)同士を貼り合せる。基板(10a、10b)同士の貼り合せの際には、硬化すると第一の封止材(周辺封止材)13aとなる樹脂材料が用いられる。この樹脂材料としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられる。第一の封止材13aを形成する際に使用される樹脂材料(熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂等)は、後述するEC媒体の充填方法、即ち、EC素子の製造プロセスを考慮して適宜選択することができる。尚、第一の封止材13aは、第二の封止材13bと比較してプロセス上の制限が比較的少ないため、接着性や低透湿性・低ガス透過性等の封止材としての基本性能が良好な材料、具体的には、熱硬化型エポキシ樹脂や紫外線硬化型エポキシ樹脂を好適に用いることができる。また第一の封止材13aを形成する際には、使用する樹脂材料に、基板(10a、10b)間の間隔を規定するためのセルギャップ制御粒子を混練しておくのが好ましい。
このように、第一の封止材(周辺封止材)13aになる樹脂材料を用いて基板(10a、10b)同士を貼り合せることにより、セル15が作製される。尚、図1(a)のように、EC素子1の側面の一部に開口部14を設ける場合、当該樹脂材料をいずれかの基板(10a、10b)に塗布する際に、当該樹脂材料の塗布領域を適宜調整して、側面の一部に開口部14が形成されているセル15を作製するのが好ましい。このときセル15が有する開口部14は、1つであってもよしい2つ以上であってもよい。一方、図1(b)のEC素子2のようにEC素子1の側面に開口部14を設けない場合は、例えば、いずれかの基板(10a、10b)の縁部にわたって当該樹脂材料を塗布する。
(1−2)開口部14よりセル15の内部へEC媒体12を配置させる工程
上記(1−1)の工程によりセル15を作製した後、EC媒体12をこのセル15の内部に配置させる。尚、ここでいう配置とは、セル15の内部を満たすようにEC媒体12を充填することと同意である。真空注入法を利用する場合、EC媒体12は、セル15が有する開口部14から充填される。
EC素子の構成部材であるEC媒体12は、少なくともEC材料と溶媒とを有しているが、本発明においては、EC媒体12に、支持電解質、増粘剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
EC媒体12に含まれるEC材料としては、酸化還元反応により可視光領域の透過率が変化する化合物を好適に使用することができる。本発明のEC素子においては、EC材料の中でもビピリジニウム塩類化合物(カソード性材料)とフェナジン類化合物(アノード性材料)とを使用することができる。
本発明において使用可能なビピリジニウム塩類化合物として、例えば、下記に示される化合物を挙げることができる。ただし、本発明において使用可能なビピリジニウム塩類化合物は、これら具体例に限定されるものではない。
Figure 2017167317
本発明において使用可能なフェナジン類化合物として、例えば、下記に示される化合物を挙げることができる。ただし、本発明において使用可能なフェナジン類化合物は、これら具体例に限定されるものではない。
Figure 2017167317
EC媒体12に含まれる溶媒として、基本的には、EC材料や支持電解質等を溶解する溶媒、好ましくは、極性が大きい溶媒を使用することができる。EC媒体12に含まれる溶媒として、例えば、水や、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオンニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジオキソラン等の有機極性溶媒が挙げられる。
尚、本発明においては、後述するように、EC媒体12の封止のために開口部14に充填される混練物に、酸素欠陥を有する酸化セリウムが含まれている。このため、酸素欠陥を有する酸化セリウムと反応しない溶媒を用いるのが好ましい。ここで、酸素欠陥を有する酸化セリウムは、水酸基を有する物質と反応し得るため、EC媒体12に含まれる溶媒としては、水酸基を有しない溶媒が好ましい。またEC媒体12の汚染の防止という観点から、EC媒体12に含まれる溶媒としては、当該混練物に含まれる未硬化のエポキシ樹脂を溶解し得ない溶媒が好ましい。ここで、未硬化のエポキシ樹脂を溶解し得る溶媒とは、未硬化のエポキシ樹脂の溶解度パラメータ(SP値)に近い溶解度パラメータを有する溶媒のことである。一方、本発明のEC素子を作製する際に、真空注入法、ODF(One Drop Fill)工法のどちらを採用するにしても減圧下又は真空条件下での作業が含まれているため、大気圧かつ常温の条件下で気化しやすい溶媒は使用しづらい。即ち、EC媒体12に含まれる溶媒としては、大気圧かつ常温の条件下で気化しにくい溶媒が好ましい。
このように、本発明においては、水酸基を有せず、未硬化のエポキシ樹脂を溶解せず、かつ大気圧かつ常温の条件下で気化しにくい、という特性を有する溶媒を用いるのが特に好ましい。これら特性を有する溶媒として、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の炭酸エステル等が挙げられる。
本発明において、EC媒体12には支持電解質が含まれていてもよい。EC媒体12に含まれ得る支持電解質としては、イオン解離性の塩であり、かつEC媒体12に含まれる溶媒に対して良好な溶解性を示すものであれば特に限定されないが、電子供与性を有する電解質が好ましく用いられる。電子供与性を有する電解質として、例えば、各種のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩等があげられる。より具体的には、LiClO4、LiSCN、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiPF6、LiI、NaI、NaSCN、NaClO4、NaBF4、NaAsF6、KSCN、KCl等のLi、Na、Kのアルカリ金属塩等や、(CH34NBF4、(C254NBF4、(n−C494NBF4、(n−C494NPF6、(C254NBr、(C254NClO4、(n−C494NClO4等の4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩等が挙げられる。
(1−3)開口部14に混練物を充填する工程
上記(1−2)に説明するようにセル15の内部にEC媒体12を充填した後、このEC媒体12を封止するために、開口部14に混練物を充填する。尚、混練物を充填する際は、EC媒体12が充填されるセル15の内部に気泡が発生するのを防ぐために、EC媒体12に接触する態様で当該混練物を充填するのが好ましい。ここで、開口部14に充填される混練物は、硬化すると第二の封止材13bとなる。尚、第二の封止材13bは、EC媒体12をセル15の内部に確実に封止させるために用いられる。本発明のEC素子において、開口部14に充填される混練物は、光重合開始剤であるオニウム塩を含む紫外線硬化型エポキシ樹脂と、酸素欠陥を有する酸化セリウムとを有している。ここで、この混練物に含まれる材料について、詳細に説明する。
第二の封止材13bを形成する際に用いられる樹脂材料として、好ましくは、開口部14の形状がいかなる形状であってもこの開口部14を充填することができる程度の柔軟性(特に、常温における柔軟性)を有する樹脂材料である。この柔軟性を満たす樹脂材料のうち、好ましくは、エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は、アクリル樹脂、エポキシアクリル樹脂等の他の樹脂材料よりも、透湿性及びガス透過性が低い樹脂材料であるからである。そしてエポキシ樹脂の中でも以下に説明する第一の要件及び第二の要件を満たす材料が好ましい。
第二の封止材13bを形成する際に用いられるエポキシ樹脂が満たす方が好ましい第一の要件は、EC媒体12を汚染せず、かつEC材料との反応性が無いことである。具体的には、混練物が未硬化の状態においてEC媒体12に含まれる溶媒と接触しても当該溶媒に溶出されないこと、及びEC材料との酸化還元反応(呈色)が生じないことである。第二の封止材13bは、第一の封止材(周辺封止材)13aと異なり、硬化前の段階で溶媒やEC材料を有するEC媒体12と接触するため、上記第一の要件を満たすことが好ましい。
第二の封止材13bを形成する際に用いられるエポキシ樹脂が満たす方が好ましい第二の要件は、酸素欠陥を有する酸化セリウムとの反応性が無いことである。脱酸素剤として混練物中に含まれる酸素欠陥を有する酸化セリウムは、酸素との反応性が非常に高い化合物である。このため、例えば、水酸基を有する有機化合物との接触があると、水素ガスが発生する反応が生じる。酸素欠陥を有する酸化セリウムと反応し得る成分が混練物中に含まれていると、混練物を硬化させる前から混練物中に気泡等が発生し、これによって密着性、低透湿性、低ガス透過性等の第二の封止材13bが有すべきシール機能が大きく低下するため、この第二の要件を満たすことが好ましい。
混練物に含まれるエポキシ樹脂が、上述した第一の要件及び第二の要件をいずれも満足するか否かは、実際にEC素子を作製して確認を行う必要があり、結果を容易に推察することは難しい。そこで本発明者らは、エポキシ樹脂のタイプ、硬化方法、及び重合開始剤が異なる複数種のエポキシ樹脂を上記混練物として用いた素子サンプルを作製し、エポキシ樹脂が満たすのが好ましい要件について確認した。尚、この素子サンプルには、炭酸プロピレン(溶媒)と、下記式(A)のフェナジン類化合物(EC材料)と、下記式(B)のビピリジウム塩類化合物(EC材料)と、が混合されているEC媒体が充填されている。実験の結果、下記表1に示される結果が得られた。
Figure 2017167317
Figure 2017167317
エポキシ樹脂は、熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂(熱併用型を含む)との二種類に大別される。熱硬化型樹脂の場合、エポキシ樹脂の硬化の際に使用される重合開始剤として、例えば、アミン類及びフェノール樹脂類がある。ここで重合開始剤としてアミン類を用いると、第二の要件を満たしたものの第一の要件を満たさなかった。具体的には、混練物を硬化する前の段階でEC媒体が着色した。この着色は、重合開始剤とEC材料との反応によるものと考えられる。一方、重合開始剤としてフェノール樹脂類を用いると、第一の要件も第二の要件も満たしていなかった。具体的には、混練物を硬化する段階でEC媒体が着色し、混練物を硬化して得た硬化物中に気泡が多く発生していた。上記着色は、重合開始剤とEC材料との反応によるものと考えられ、気泡の発生は重合開始剤と酸素欠陥を有する酸化セリウムとの反応によるものと考えられる。
紫外線硬化型樹脂の場合、エポキシ樹脂は、通常、カチオン重合タイプであるため、重合開始剤として、例えば、オニウム塩類(ブレンステッド酸発生機構)及びジアゾニウム塩類(ルイス酸発生機構)がある。ここで開始剤としてジアゾニウム塩類を用いると、第二の要件を満たしたものの第一の要件を満たさなかった。具体的には、混練物を硬化する前の段階でEC媒体が着色した。この着色は、重合開始剤とEC材料との反応によるものと考えられる。一方、重合開始剤としてオニウム塩類を用いると、第一の要件も第二の要件も満たされていた。即ち、混練物を硬化させる過程でEC媒体が着色することがなく、また混練物を硬化して得た硬化物中に気泡が発生していなかった。
以上の実験結果から、第二の封止材13bを形成する際には、光重合開始剤であるオニウム塩を含む紫外線硬化型エポキシ樹脂と、酸素欠陥を有する酸化セリウムとの混練物を、開口部14に充填した態様で用いるのが好ましい。またオニウム塩を含む紫外線硬化型のエポキシ樹脂の中でも、好ましくは、フォトレックE(登録商標)である。
上記混練物に含まれる酸素欠陥を有する酸化セリウムは、エポキシ樹脂に対して30重量%以上70重量%未満含まれるのが好ましい。エポキシ樹脂に対する当該酸化セリウムの含有量が30重量%に満たないと、当該酸化セリウムを導入した際に現れる顕著な効果が見られにくくなる。また当該酸化セリウムの含有量が70重量%以上の場合、上記混練物の接着力が低下して封止材としての機能を発揮できなくなることがあり、その結果EC素子の特性が低下することがある。
本発明において、上記混練物を調製する際に利用される、上記混練物を組成する材料の混練方法としては、エポキシ樹脂の混練の際に通常用いられる方法、例えば、遠心脱泡等を利用することができる。
(1−4)混練物を硬化する工程
上記(1−3)の工程により開口部14に混練物を充填した後は、この混練物を硬化させることにより、第二の封止材13bが形成される。この第二の封止材13bが形成されることにより、セル15及び第二の封止材13bにより封止されたEC媒体12を有するEC素子(1、2)が得られる。本工程において、混練物を硬化させる際には、紫外線硬化型のエポキシ樹脂を硬化させる際に用いられる方法(例えば、特定波長の紫外線の照射等)が採用される。
(2)ODF(One Drop Fill)工法を利用したEC素子の製造方法
ODF(One Drop Fill)工法を利用してEC素子を製造する場合、例えば、下記(2−1)乃至(2−3)に示される工程によりEC素子が製造される。
(2−1)いずれかの基板(10a、10b)の上に、EC媒体と、樹脂材料と、を、樹脂材料がEC媒体を取り囲むようにして配置する工程
(2−2)真空条件下にて基板同士を貼り合せる工程
(2−3)樹脂材料を硬化させる工程
ODF(One Drop Fill)工法を利用してEC素子を製造する際に使用される材料としては、上述した真空注入法において列挙された材料と同じものを使用することができる。また上記工程(2−1)において、いずれかの基板(10a、10b)の上に配置される樹脂材料の少なくとも一部は、光重合開始剤であるオニウム塩を含む紫外線硬化型エポキシ樹脂と、酸素欠陥を有する酸化セリウムと、を有する混練物である。この混練物は、第二の封止材13bを形成する目的で基板10a又は基板10bの上に配置されるものであるが、本発明において、上記混練物を配置する際に、その配置領域については、特に限定されるものではない。
3.EC素子の用途
本発明のEC素子は、光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材等の構成部材として用いることができる。
本発明の光学フィルタは、本発明のEC素子と、このEC素子に電気接続される能動素子とを有している。本発明の光学フィルタに含まれる能動素子は、EC素子を駆動し、EC素子を通過する光の光量を調整する部材である。EC素子に電気接続される能動素子として、例えば、増幅素子、スイッチング素子等が挙げられ、より具体的には、トランジスタ、MIM素子等が挙げられる。
本発明のレンズユニットは、本発明のEC素子を有する光学フィルタと、撮像光学系とを有する。この光学フィルタにより撮像光学系を通過する光、又は通過した光の光量を調整することができる。撮像光学系は複数のレンズ要素を有するレンズ群である。レンズユニットを構成する光学フィルタは、レンズとレンズとの間に設けてもよいし、レンズの外側に設けてもよい。
本発明の撮像装置は、光学フィルタと、この光学フィルタを通過した光を受光する撮像素子とを有する。撮像装置を構成する撮像素子は、光学フィルタを透過した光を受光する素子であり受光素子とも呼ばれる素子である。
撮像装置として、具体的には、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等が挙げられる。撮像装置は、撮像光学系が着脱可能であること、即ち、撮像素子を有する本体と、レンズを有するレンズユニットとが分離できる形態であってもよい。
ここで撮像装置が、本体と、レンズユニットとで分離できる場合は、撮像時に撮像装置とは別体の光学フィルタを用いる形態も本発明に含まれる。尚、係る場合、光学フィルタの配置位置としては、レンズユニットの外側、レンズユニットと受光素子との間、複数あるレンズの間(レンズユニットが複数のレンズを有する場合)等が挙げられる。
本発明のEC素子をカメラ等の撮像装置に用いる場合、撮像素子のゲインを下げることなく、光量を低減することができる。
本発明の窓材は、一対の透明基板と、これら透明基板の間に設けられるEC素子と、このEC素子に接続されEC素子の透過率を制御するための能動素子とを有する。一対の透明基板を透過する光の光量は、EC素子により調整することができる。この窓材に、窓枠等の部材を取り付けることで、窓として使用することができる。窓材は、例えば、自動車の窓、飛行機の窓、建材の窓等に用いることができる。
図2は、本発明の撮像装置の実施形態の例を示す断面模式図である。
図2の撮像装置3は、レンズユニット21と、撮像ユニット22と、を有し、レンズユニット21はマウント部材(不図示)を介して撮像ユニット22に着脱可能に接続されている。撮像ユニット22内には光学フィルタ20が配置されている。
図2において、レンズユニット21は、複数のレンズあるいはレンズ群を有するユニットであり、絞りより撮像素子22側でフォーカシングを行うリアフォーカス式のズームレンズである。
図2において、レンズユニット21は、物体側より順に正の屈折力の第1のレンズ群23、負の屈折力の第2のレンズ群24、正の屈折力の第3のレンズ群25、正の屈折力の第4のレンズ群26の4つのレンズ群を有する。図2においては、第2のレンズ群24と第3のレンズ群25と、の間に開口絞り27を有する。図2の撮像装置3は、第2のレンズ群24と第3のレンズ群25との間隔を変化させて変倍を行い、第4のレンズ群26の一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行う。図2において、レンズユニット21を通過する光は、各レンズ群(23乃至26)、開口絞り27及び光学フィルタ20を通過して撮像素子29に受光されるように各部材が配置されている。撮像素子29が受光する光の光量は開口絞り27及び光学フィルタ20を用いて調整を行うことができる。図2において、撮像ユニット22は、ガラスブロック28と撮像素子29とを有する。またガラスブロック28と撮像素子29との間には光学フィルタ20が配置されている。
ガラスブロック28は、具体的には、ローパスフィルタやフェースプレートや色フィルタ等のガラスブロックである。
撮像素子29は、レンズユニット21を通過した光を受光するセンサ部であって、CCDやCMOS等の撮像素子を使用できる。また、フォトダイオードのような光センサであってもよく、光の強度あるいは波長の情報を取得し出力するものを適宜利用可能である。
図2において、撮像ユニット22には、光学フィルタ20が、撮像ユニット22内のガラスブロック28と、撮像素子29と、の間に配置されている。本発明の撮像装置において、光学フィルタ20の配置位置は特に限定されるものではなく、例えば、第2のレンズ群24と第3のレンズ群25との間に配置されてもよいし、レンズユニット21の外側に配置されていてもよい。
尚、光の収束する位置に光学フィルタ20を配置すると、光学フィルタ20の面積を小さくできる等の利点がある。また、本発明の撮像装置では、レンズユニット21の形態も適宜選択可能であり、リアフォーカス式の他、絞りより前でフォーカシングを行うインナーフォーカス式であってもよく、その他方式であってもよい。また、ズームレンズ以外にも魚眼レンズやマクロレンズ等の特殊レンズも適宜選択可能である。
このような撮像装置は、光量調整と撮像素子の組合せを有する製品等が挙げられ、例えば、カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話やスマートフォン、PC、タブレット等の撮像部位であってもよい。
以下、実施例により本発明のエレクトロクロミック素子について説明する。
[実施例1]
図1(a)に示されるEC素子を、以下に説明する方法により作製した。まず厚さ0.7mmのガラス基板(Corning社製、EAGLE−XG)を二枚用意した。次に、これらガラス基板の上に、それぞれシート抵抗が10Ω/□のITO透明電極を形成した。これにより、二枚の透明電極付基板を得た。尚、以下の説明において、基板10aの上に設けられる電極(透明電極)を符号11aの電極とし、基板10bの上に設けられる電極(透明電極)を符号11bの電極とする。
次に、ギャップ制御粒子(積水化学工業社製、ミクロパール−SP(直径50μm))と、熱硬化型エポキシ樹脂(三井化学製、ストラクトボンドHC−1850)と、を混練して、樹脂αを調製した。次に、基板10a又は基板10bの電極(11a又は11b)が設けられている側の面の上に、ディスペンサ装置を使用して樹脂αを塗布した。このとき樹脂αは、エレクトロクロミック媒体12をセル15内に注入するための開口部14があるシールパターンを描画するように塗布した。次に、樹脂αを塗布した基板ともう一方の基板とを、電極(11a、11b)が対向するように貼り合わせてセル15を作製した。このとき電極11aと電極11bとの間隔は50μmであった。
次に、下記式(A)のアノード性エレクトロクロミック材料(フェナジン類化合物)と、下記式(B)のカソード性エレクトロクロミック材料(ビピリジニウム塩類化合物)と、炭酸プロピレンと、を混合し、エレクトロクロミック媒体(EC媒体)12を調製した。このとき、エレクトロクロミック媒体に含まれるアノード性エレクトロクロミック材料及びカソード性エレクトロクロミック材料の濃度は、いずれも100mMとなるようにした。
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次に、光重合開始剤であるオニウム塩を含むカチオン重合性の紫外線硬化型エポキシ樹脂(積水化学工業製、フォトレックE−1220B)と、脱酸素剤である酸素欠陥を有する酸化セリウム(三井金属鉱業製)と、を混練して混練物を得た。このとき混練物中に含まれる酸素欠陥を有する酸化セリウムの含有量を、混練物全体に対して30重量%となるようにした。
次に、真空注入法により、開口部14よりセル15内へEC媒体12を導入することで、セル15内にEC媒体12を充填した。次に、開口部14に上記混練物を充填した後、この混練物を硬化させた。これにより、樹脂αを硬化させることにより形成される封止材(第一の封止材13a)及び上記混練物を硬化させることにより形成される封止材(第二の封止材13b)によってEC媒体12が封止されているEC素子1を得た。
(比較例1)
実施例1において、混練物を調製する際に酸素欠陥を有する酸化セリウムを添加しないことを除いては、実施例1と同様の方法によりEC素子を得た。
(素子の評価)
実施例1及び比較例1でそれぞれ得られたエレクトロクロミック素子について、電気化学測定と透過率測定とを同時に行うことができる加熱機構付きの評価系に配置して、作製したEC素子の電気特性及び光学特性の評価を行った。
下記表2は、実施例1及び比較例1でそれぞれ得たEC素子の光学濃度が初期値に対して20%低下するまでの時間(以下、光学濃度低下時間ということがある。)を示す表である。
Figure 2017167317
表2より、開口部14に充填される混練物の中に酸素欠陥を有する酸化セリウムが含まれるEC素子(実施例1)の方が、この酸素欠陥を有する酸化セリウムが含まれていないEC素子(比較例1)に対して光学濃度低下時間が長いことがわかった。このため開口部14に充填される混練物の中に酸素欠陥を有する酸化セリウムを含ませることにより、EC素子の外部からの酸素侵入抑止に関して大きな効果があることが分かった。
[実施例2]
実施例1において、混練物に含ませる酸素欠陥を有する酸化セリウムの含有量を適宜変更したことを除いては、実施例1と同様の方法によりEC素子を作製した。尚、酸素欠陥を有する酸化セリウムの含有量は、混練物全体に対して10重量%以上70重量%以下の範囲に収めるようにした。得られたEC素子について、実施例1と同様の方法によりEC素子の評価を行った。
図3は、酸化セリウムの添加量と光学濃度低下時間との関係を示すグラフである。尚、図3に示される酸化セリウムは、酸素欠陥を有する酸化セリウムであり、また図3では、参考のために、酸化セリウムの含有量が0の系(比較例1)も併せて示されている。
図3より、混練物中に含まれる酸素欠陥を有する酸化セリウムの量を増加させることで、光学濃度低下時間が長くなることがわかった。ただし、酸素欠陥を有する酸化セリウムの添加量が混練物全体の50重量%を超えると光学濃度低下時間の伸長の効果が頭打ちになり、逆に混練物を硬化させてなる硬化物の特性が低下する傾向があることがわかった。具体的には、酸素欠陥を有する酸化セリウムの添加量が混練物全体の10%未満では光学濃度低下時間の伸長の効果が十分とはいえない一方で、当該添加量が混練物全体の70重量%以上の場合では、封止材としての機能が低下して特性が低下し得ることがわかった。従って、混練物全体に対する、酸素欠陥を有する酸化セリウムの添加量の好適な範囲は、10重量%以上70重量%未満となることがわかった。
1(2):エレクトロクロミック(EC)素子、10a(10b):基板、11a(11b):電極、12:エレクトロクロミック(EC)媒体、13a:第一の封止材、13b:第二の封止材、14:開口部、15:セル

Claims (15)

  1. 一対の基板と、前記一対の基板の間に配置され、エレクトロクロミック材料と、溶媒と、を含むエレクトロクロミック媒体と、を有し、前記エレクトロクロミック媒体が封止材によって封止されているエレクトロクロミック素子であって、
    前記エレクトロクロミック材料が、フェナジン類化合物及びビピリジニウム塩類化合物であり、
    前記封止材の少なくとも一部が、前記エレクトロクロミック媒体が配置される空間と前記エレクトロクロミック素子の外部空間との間に充填される混練物の硬化物であり、
    前記混練物が、光重合開始剤であるオニウム塩を含む紫外線硬化型エポキシ樹脂と、酸素欠陥を有する酸化セリウムと、を有することを特徴とする、エレクトロクロミック素子。
  2. 前記一対の基板の少なくともいずれかから光を透過させることを特徴とする、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
  3. 前記混練物が、前記エレクトロクロミック媒体を前記一対の基板の間に配置させるための開口部に充填されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のエレクトロクロミック素子。
  4. 前記紫外線硬化型エポキシ樹脂が、フォトレックE(登録商標)であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  5. 前記酸素欠陥を有する酸化セリウムが、前記紫外線硬化型エポキシ樹脂に対して30重量%以上70重量%未満含まれることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  6. 前記溶媒が炭酸エステルであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  7. 一対の基板と、前記一対の基板の間に配置され、エレクトロクロミック材料と、溶媒と、を含むエレクトロクロミック媒体と、を有し、前記エレクトロクロミック媒体が封止材によって封止されているエレクトロクロミック素子の製造方法であって、
    一対の基板を貼り合せて開口部を有するセルを形成する工程と、
    前記開口部より前記セルの内部へエレクトロクロミック媒体を配置させる工程と、
    前記開口部に混練物を充填する工程と、
    前記混練物を硬化する工程と、を有し、
    前記エレクトロクロミック媒体に含まれるエレクトロクロミック材料が、フェナジン類化合物及びビピリジニウム塩類化合物であり、
    前記混練物が、光重合開始剤であるオニウム塩を含む紫外線硬化型エポキシ樹脂と、酸素欠陥を有する酸化セリウムと、を有することを特徴とする、エレクトロクロミック素子の製造方法。
  8. 一対の基板と、前記一対の基板の間に配置され、エレクトロクロミック材料と、溶媒と、を含むエレクトロクロミック媒体と、を有し、前記エレクトロクロミック媒体が封止材によって封止されているエレクトロクロミック素子の製造方法であって、
    いずれかの基板の上に、エレクトロクロミック媒体と、樹脂材料と、を、前記樹脂材料が前記エレクトロクロミック媒体を取り囲むようにして配置する工程と、
    真空条件下にて基板同士を貼り合せる工程と、
    前記樹脂材料を硬化させる工程と、を有し、
    前記エレクトロクロミック媒体に含まれるエレクトロクロミック材料が、フェナジン類化合物及びビピリジニウム塩類化合物であり、
    前記樹脂材料の少なくとも一部が、光重合開始剤であるオニウム塩を含む紫外線硬化型エポキシ樹脂と、酸素欠陥を有する酸化セリウムと、を有する混練物であることを特徴とする、エレクトロクロミック素子の製造方法。
  9. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続されている能動素子と、を有することを特徴とする光学フィルタ。
  10. 前記能動素子が、前記エレクトロクロミック素子を駆動し、かつ前記エレクトロクロミック素子を通過する光の光量を調整することを特徴とする、請求項9に記載の光学フィルタ。
  11. 複数のレンズを有する撮像光学系と、請求項9又は10に記載の光学フィルタと、を有することを特徴とする、レンズユニット。
  12. 複数のレンズを有する撮像光学系と、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子を通過した光を受光する撮像素子と、を有することを特徴とする、撮像装置。
  13. レンズユニットと撮像ユニットとを有し、前記レンズユニットが複数のレンズを含む撮像光学系を有し、前記レンズユニットが前記撮像ユニットに着脱可能である撮像装置であって、
    前記撮像ユニットが、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子を通過した光を受光する撮像素子と、を有することを特徴とする、撮像装置。
  14. 一対の透明基板と、前記一対の透明基板の間に配置される請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続されている能動素子と、を有し、
    前記エレクトロクロミック素子により前記一対の透明基板を透過する光の光量を調整することを特徴とする、窓材。
  15. 前記能動素子が、前記エレクトロクロミック素子を駆動し、かつ前記エレクトロクロミック素子を通過する光の光量を調整することを特徴とする、請求項14に記載の窓材。
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