JP2020142970A - 廃石膏ボードからのセメント原料用二水石膏の回収方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】廃石膏ボードから、セメント原料に適した二水石膏を簡便な方法で回収する方法の提供。【解決手段】廃石膏ボードを破砕し、二水石膏粒体中の紙片含有量が1mass%以下となるように、紙片と二水石膏粒体に篩い分ける。次いでか焼し、二水石膏粒体を半水及び/又は無水III型石膏に変化させ、水と混合してセメント原料用の二水石膏粒子を析出させる。回収した二水石膏中の水溶性有機物が、硬化後のモルタル等の強度に悪影響を及ぼすため、か焼前の二水石膏粒体での紙片含有量を1mass%以下とすることにより、水溶性有機物の悪影響を除去できる。【選択図】図2
Description
本発明は、廃石膏ボードからセメント原料用の二水石膏を回収する方法に関する。
廃石膏ボードからの二水石膏の回収では、石膏ボードを破砕し、二水石膏粒体と紙片に篩い分ける。次いで二水石膏粒体をか焼し、半水及び/又はIII型無水石膏に変化させ、水と混合し石膏スラリーとする。石膏スラリー中に二水石膏粒子を析出させ、固液分離により二水石膏を回収する。
発明者らは、廃石膏ボードをか焼すると強度が低下し破砕が容易になると共に、ボード原紙と石膏との分離も容易になることを見出した(特許文献1:特開2010-247027)。特許文献1では、か焼後に目開き10mmの振動篩で篩い分けると、石膏中の紙片濃度を0.1mass%以下にできることを報告している。
回収した二水石膏の用途の1つはセメント原料である。この点に関して発明者らは、セメント原料用では、廃石膏中の界面活性剤等の水溶性有機物含有量を低減する必要があることを指摘した(特許文献2:WO2012/176688A)。さらに水溶性有機物は、石膏スラリーから二水石膏粒子を析出させる過程でろ液に溶出し、空気と接触して分解されることを報告した(特許文献2)。
発明者は、石膏スラリーから析出させた二水石膏粒子に水溶性有機物が依然として含まれ、高濃度の水溶性有機物を含んだままセメント原料として使用すると、セメントの性能に悪影響を及ぼすことを見出した。本発明の課題は、セメント原料に適した二水石膏を簡便な方法で回収することにある。
本発明の二水石膏の回収方法では、廃石膏ボードを破砕し、篩い分けにより紙片と二水石膏粒体とに分離し、か焼により二水石膏粒体を半水及び/又は無水III型石膏に変化させる。次いで半水及び/又は無水III型石膏を水と混合し石膏スラリーとし、スラリー中に析出する二水石膏粒子をセメント原料用に回収する。本発明は、二水石膏粒体中の紙片含有量が1mass%以下となるように、紙片と二水石膏粒体をか焼前に篩い分けることを特徴とする。紙片含有量はか焼前の二水石膏粒体中の含有量を意味し、より好ましくは0.9mass%以下とする。
図2は、石膏ボード表面からボード内部へ向かっての、石膏中の水溶性有機物の分布を示す。石膏ボードの表裏を表面と平行に削って試料を採取し、石膏中の水溶性有機物濃度をTOC(全有機炭素)測定装置により測定した。単位はmassppmで、表面と裏面から厚さ0.2〜0.4mmの範囲はボード原紙である。石膏ボードの表裏とも、表面付近に水溶性有機物が偏析し、その成分はでんぷん等の糊と界面活性剤と考えられる。図2のデータから、廃石膏ボード中で、水溶性有機物はボード原紙が破砕された紙片とその周囲に偏って存在しているはずであることが分かる。
発明者は、回収した二水石膏中の水溶性有機物が、硬化後のモルタル等の強度に悪影響を及ぼすことを確認した。そしてか焼前の二水石膏粒体での紙片含有量を1mass%以下とすると、水溶性有機物の悪影響を除去できることを確認した(表1)。これは水溶性有機物が紙片とその周囲に偏析しているため、紙片を減らすと水溶性有機物も減少することを示している。また紙片含有量をさらに低下させても、セメント用原料として大きな性能向上は望めないことも確認した(表1)。
本発明では、か焼前の篩い分けにより、紙片含有量を1mass%以下とする。これに対して特許文献1のように、か焼後に篩い分けると、紙片含有量をさらに低くできる。しかしながら特許文献1では、破砕前の廃石膏ボードをか焼するため、大型のか焼機が必要である。これに対して本発明では、破砕後の篩い分けにより紙片を分離し、次いでか焼するので、大型のか焼機を必要としない。また表1から明らかなように、紙片含有量を例えば0.8mass%からさらに低下させても、大きな効果は望めない。従って本発明では、セメント原料用二水石膏への水溶性有機物の影響を、簡便な方法で低減できる。
以下に本発明を実施するための実施例を示す。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
図1に、セメント原料用の二水石膏の回収工程を示す。図の1は破砕機で、廃石膏ボードAを破砕し、粉砕篩機2で破砕した廃石膏ボードを粉砕し、内蔵の振動篩等によりボード原紙由来の紙片と二水石膏粒体とに篩い分けする。粉砕篩機2を単なる篩に変更し、粉砕せずに篩い分けのみを行っても良い。また篩の種類は任意で、振動篩に限らず、遠心篩等でも良い。篩い分けした紙片を梱包機3により梱包し、古紙原料として回収する。
粉砕篩機2で篩い分けした二水石膏粒体Bを、例えば一旦サイロ4に貯蔵し、か焼機5により例えば空気中130℃以上160℃以下に加熱し、半水石膏及び/又は無水III型石膏Dとする。次いでボールミル等の粉砕機6により粉砕する。サイロ4を設けず、篩い分けした二水石膏粒体Bを直接、か焼機5に供給しても良く、また粉砕機6による粉砕を省略しても良い。なお粉砕機6による粉砕後に再度振動篩等により紙片を分離しても良いが、後述の表1から明らかなように、か焼後に紙片を再分離してもセメント原料用二水石膏の品質の向上は見込めない。130℃程度のか焼温度では紙片の重量減は生じず、水溶性有機物多くは蒸発せずに紙片自体と紙片に付着した石膏とに残っているものと推定できる。
廃石膏ボードA中の原紙含有量は5mass%程度である。か焼前の二水石膏粒体中の紙片含有量を1mass%以下にするには、例えば粉砕篩機2での振動篩の目開きを10mm以下5mmとすることが好ましい。目開きが10mmで紙片含有量は1mass%程度となり、目開きが5mmで紙片含有量は0.7mass%程度に減少するが、紙片と共に失われる石膏分が多くなる。好ましくは振動篩の目開きを8mm以下5mmとし、紙片含有量を0.9mass%以下で0.7mass%以上とする。実施例では粉砕篩機2での振動篩の目開きを6mmとし、か焼前の二水石膏粒体中の紙片含有量を0.8mass%とした。
半水石膏及び/又は無水III型石膏Dを、固液分離装置9から還流させたろ液G、及び二水石膏スラリーEと共に、反応槽7に投入する。ここで、二水石膏換算での紙片含有量をか焼前に1mass%以下に低下させ、紙片に随伴する水溶性有機物濃度を低下させる。反応槽7は図示しない撹拌羽根を備え、二水石膏スラリーEを撹拌し、例えば重力移送により次の反応槽へと移動させる。反応槽7を循環する間に、二水石膏粒子が石膏スラリーE中に析出する。
例えば最終段の反応槽7から二水石膏スラリーEを抽出し、一部を図示しないポンプにより初段の反応槽7へ戻し、残りを振動篩8等の篩に供給する。振動篩8を通過したスラリーEをフィルタープレス等の固液分離装置9により固液分離し、セメント原料用の二水石膏Fを回収する。振動篩8の目開きは例えば0.5mmで、二水石膏F中の紙粉濃度は約0.5mass%である。振動篩8の目開きの好ましい範囲は0.3mm以上1mm以下で、振動篩8により紙片を篩い分けし、圧搾機10で水分を圧搾し、紙片Hを回収する。なお反応槽7は直列4段としたが1段等でも良く、反応槽7に投入する前に図示しない混合器で石膏Dをろ液Gと混合しても良い。また二水石膏粒子を析出させて固液分離する過程で失われる水を補うように、ろ液Gに水を補給する。反応槽7で紙片からスラリー中に水溶性有機物が溶出するので、振動篩8は回収した二水石膏F中の水溶性有機物濃度を低下させることにはほとんど寄与していないが、他方、二水石膏の純度を向上させる効果があるため設ける方が好ましい。
紙片含有量の測定法
紙片含有量は以下のように測定する。
・ か焼前の二水石膏粒体の質量W(紙片込み)を測定する。
・ 二水石膏粒体を空気中130℃でか焼し、半水及び/又は無水III型の石膏とする。
・ 上記の石膏を開口0.3mmの振動篩上で水洗し、石膏を完全に水に溶解させる。
・ 篩上には紙片と砂利等の夾雑物の混合物が残り、これを60℃で乾燥し、質量sを得る。
・ 乾燥後の混合物を空気中で800℃に加熱し、紙片を完全燃焼させて、残留分の質量tを得る。
・ 紙片の質量 Δs=s−t を測定し、紙片含有量(mass%)=Δs/W×100 を求める。
紙片含有量は以下のように測定する。
・ か焼前の二水石膏粒体の質量W(紙片込み)を測定する。
・ 二水石膏粒体を空気中130℃でか焼し、半水及び/又は無水III型の石膏とする。
・ 上記の石膏を開口0.3mmの振動篩上で水洗し、石膏を完全に水に溶解させる。
・ 篩上には紙片と砂利等の夾雑物の混合物が残り、これを60℃で乾燥し、質量sを得る。
・ 乾燥後の混合物を空気中で800℃に加熱し、紙片を完全燃焼させて、残留分の質量tを得る。
・ 紙片の質量 Δs=s−t を測定し、紙片含有量(mass%)=Δs/W×100 を求める。
TOC(全有機炭素)の測定法
全有機炭素濃度は、島津製作所製のTOC測定装置TOC−V/CSNにより、接触酸化−赤外線分光法により測定した。回収した二水石膏Fを水と混合しろ過して、水溶性有機物を水により抽出した(石膏:水は質量比で1:3)。この水中のTOCを上記のTOC−V/CSNにより測定し、3倍して二水石膏中の水溶性有機物濃度(massppm単位)とした。
全有機炭素濃度は、島津製作所製のTOC測定装置TOC−V/CSNにより、接触酸化−赤外線分光法により測定した。回収した二水石膏Fを水と混合しろ過して、水溶性有機物を水により抽出した(石膏:水は質量比で1:3)。この水中のTOCを上記のTOC−V/CSNにより測定し、3倍して二水石膏中の水溶性有機物濃度(massppm単位)とした。
モルタル強度の測定
普通ポルトランドセメントクリンカー100質量部に、二水石膏3.5質量部を配合し、ボールミルで粉砕・混合することにより、ブレーン比表面積3200cm2/gの普通ポルトランドセメントを得た。このセメントを使用し、JIS R 5201に従い、材齢3日目と7日目及び28日目のモルタル強度を測定した。
普通ポルトランドセメントクリンカー100質量部に、二水石膏3.5質量部を配合し、ボールミルで粉砕・混合することにより、ブレーン比表面積3200cm2/gの普通ポルトランドセメントを得た。このセメントを使用し、JIS R 5201に従い、材齢3日目と7日目及び28日目のモルタル強度を測定した。
実験例1
実施例での二水石膏F中の水溶性有機物濃度と、この石膏を用いたモルタル強度を測定した。粉砕篩機2の篩の目開きは6mm、か焼温度は130℃、反応槽7での石膏スラリーEの平均滞留時間(反応槽7中の石膏スラリーの総体積/時間当たりに固液分離装置9へ供給する石膏スラリーEの体積)は15時間、石膏スラリーの温度は60℃、振動篩8の目開きは0.5mmであった。回収した二水石膏Fの体積平均粒径は42μm、水溶性有機物含有量は360massppmであった。この二水石膏を用いて、モルタル強度を測定した。
実施例での二水石膏F中の水溶性有機物濃度と、この石膏を用いたモルタル強度を測定した。粉砕篩機2の篩の目開きは6mm、か焼温度は130℃、反応槽7での石膏スラリーEの平均滞留時間(反応槽7中の石膏スラリーの総体積/時間当たりに固液分離装置9へ供給する石膏スラリーEの体積)は15時間、石膏スラリーの温度は60℃、振動篩8の目開きは0.5mmであった。回収した二水石膏Fの体積平均粒径は42μm、水溶性有機物含有量は360massppmであった。この二水石膏を用いて、モルタル強度を測定した。
比較例1
粉砕篩機2の篩の目開きを14mmとした他は実施例と同様にして、二水石膏を回収した。二水石膏中の水溶性有機物含有量は620massppmで、この二水石膏を用いて、モルタル強度を測定した。
粉砕篩機2の篩の目開きを14mmとした他は実施例と同様にして、二水石膏を回収した。二水石膏中の水溶性有機物含有量は620massppmで、この二水石膏を用いて、モルタル強度を測定した。
比較例2
排煙脱硫石膏を原料とする二水石膏(水溶性有機物濃度0)を用いて、モルタル強度を測定した。
排煙脱硫石膏を原料とする二水石膏(水溶性有機物濃度0)を用いて、モルタル強度を測定した。
表1
実施例 比較例1 比較例2
紙片含有量(mass%)*1 0.8 1.4 0
水溶性有機物濃度(massppm) 360 620 0
モルタル 材齢3日目 28.1 27.4 28.6
圧縮強度 材齢7日目 45.0 43.3 45.2
(N/mm 2 ) 材齢28日目 63.4 60.1 63.4
*1 紙片を篩い分け後か焼前の二水石膏粒体中の紙片濃度.
実施例 比較例1 比較例2
紙片含有量(mass%)*1 0.8 1.4 0
水溶性有機物濃度(massppm) 360 620 0
モルタル 材齢3日目 28.1 27.4 28.6
圧縮強度 材齢7日目 45.0 43.3 45.2
(N/mm 2 ) 材齢28日目 63.4 60.1 63.4
*1 紙片を篩い分け後か焼前の二水石膏粒体中の紙片濃度.
実施例及び比較例1,2の結果を表1に示す。比較例2では水溶性有機物の影響が無く、実施例はこれとほぼ同等のモルタル強度を示した。実施例1及び比較例2と比べると、比較例1では実用上問題となる程度にモルタル強度が低かった。また二水石膏中の水溶性有機物濃度は、か焼前の紙片含有量にほぼ比例していた。
これらのことから、か焼前の紙片含有量で0.8mass%と1.4mass%の間に(二水石膏中の水溶性有機物濃度としては360massppmと620massppmの間に)、二水石膏中の水溶性有機物がモルタル強度に悪影響を及ぼし始める閾値が存在することが分かる。そこでこの発明では、か焼前の二水石膏粒体中の紙片含有量を1mass%以下(二水石膏中の水溶性有機物濃度としては450massppm以下)とし、より好ましくは紙片含有量を0.9mass%以下(二水石膏中の水溶性有機物濃度としては400massppm以下)とする。なおか焼前の紙片含有量の下限に特に意味はないが、篩い分けにより失われる石膏分を少なくするため、0.7mass%以上が好ましい。
か焼前の紙片含有量を低下させること以外に、反応槽7での石膏スラリーの滞留時間を長くすることにより、水溶性有機物を微生物等により消化させることも可能である。また回収した二水石膏Fの在庫期間を長くしても、微生物による水溶性有機物の消化を期待できる。しかしこれらは何れも非効率である。また回収した二水石膏Fを水洗し、水溶性有機物を除くことも可能である。しかしこの方法では水洗工程が追加され、洗浄に用いた水の処理が必要になる。実施例では、簡便な方法で、セメント原料としての二水石膏での水溶性有機物の影響を除くことができる。
1 破砕機
2 粉砕篩機
3 梱包機
4 サイロ
5 か焼機
6 粉砕機
7 反応槽
8 振動篩
9 固液分離装置
10 圧搾機
A 廃石膏ボード
B 二水石膏粒体
C 原紙
D 半水及び/又はIII型無水石膏
E 二水石膏スラリー
F 二水石膏
G ろ液
H 紙片
2 粉砕篩機
3 梱包機
4 サイロ
5 か焼機
6 粉砕機
7 反応槽
8 振動篩
9 固液分離装置
10 圧搾機
A 廃石膏ボード
B 二水石膏粒体
C 原紙
D 半水及び/又はIII型無水石膏
E 二水石膏スラリー
F 二水石膏
G ろ液
H 紙片
Claims (1)
- 廃石膏ボードを破砕し、篩い分けにより紙片と二水石膏粒体とに分離し、か焼により二水石膏粒体を半水及び/又は無水III型石膏に変化させ、次いで前記半水及び/又は無水III型石膏を水と混合した石膏スラリー中に析出する二水石膏粒子を回収する、セメント原料用の二水石膏の回収方法において、
前記二水石膏粒体中の紙片含有量が1mass%以下となるように、紙片と二水石膏粒体をか焼前に篩い分けることを特徴とする、セメント原料用の二水石膏の回収方法。
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JP2019042235A JP2020142970A (ja) | 2019-03-08 | 2019-03-08 | 廃石膏ボードからのセメント原料用二水石膏の回収方法 |
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Citations (3)
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---|---|---|---|---|
JP2003128416A (ja) * | 2001-10-19 | 2003-05-08 | Tokuyama Corp | 再生石膏の製造方法 |
JP2010100446A (ja) * | 2008-10-21 | 2010-05-06 | Taiheiyo Cement Corp | 石膏ボード廃材の処理方法及びセメント |
WO2012176688A1 (ja) * | 2011-06-21 | 2012-12-27 | 株式会社トクヤマ | 石膏ボード廃材から石膏を再生する方法 |
-
2019
- 2019-03-08 JP JP2019042235A patent/JP2020142970A/ja active Pending
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