JP2020142748A - 固定具 - Google Patents
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Abstract
【課題】輸送機材の客室において意図しない手荷物の動きを防止する。【解決手段】固定具10は、輸送機材の客室52の床面54に設けられ、第1の凹条部14を有する第1固定部12と、この第1固定部12に対して、第1の凹条部14の延在方向と直交する方向に近接して床面54に設けられ、第1の凹条部14と直交する方向に延在する第2の凹条部32を有する第2固定部30とを含む。そして、手荷物が具備する複数の車輪のうち、少なくとも1つが第1の凹条部14に嵌まり込み、別の少なくとも1つが第2の凹条部32に嵌まり込むように、手荷物が載置される。すると、第1の凹条部14に嵌まり込んだ車輪は、第1の凹条部14の延在方向と直交する方向への移動が抑制され、第2の凹条部32に嵌まり込んだ車輪は、第2の凹条部32の延在方向と直交する方向への移動が抑制されるため、手荷物の意図しない動きを防止することが可能となる。【選択図】図1
Description
本発明は、旅客輸送を行う輸送機材に設けられる固定具に関するものである。
近年、鉄道車両やバス等の旅客を輸送する輸送機材の客室に、キャリーバックやスーツケースといった車輪(キャスター)付きの大型の手荷物を持ち込む旅客が増加している。予め旅行者等が利用することを想定している輸送機材の場合、そのような大型の手荷物のための専用の置き場が設置されていることが多いが、通勤等で利用される輸送機材には、スペースや防犯等の観点から、専用の置き場を設けることが難しい。一方、特許文献1には、ベビーカー等の運搬車の移動を防止する車輪止め構造が開示されている。
上述した大型の手荷物専用の置き場が設けられていない輸送機材では、客室に持ち込まれた車輪付きの手荷物が客室の床面に置かれるため、輸送機材の動き等に起因して手荷物が意図せずに動いてしまう虞がある。又、特許文献1の車輪止め構造は、様々な大きさの運搬車へ対応できないこと、複数の運搬車を同時に固定できないこと等について、改善の余地がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、輸送機材の客室において意図しない手荷物の動きを防止することにある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、輸送機材の客室において意図しない手荷物の動きを防止することにある。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)旅客輸送を行う輸送機材において、旅客により持ち込まれた複数の車輪付きの手荷物を固定するための固定具であって、前記輸送機材の客室の床面に設けられ、第1の凹条部を有する第1固定部と、該第1固定部に対して、前記第1の凹条部の延在方向と直交する方向に近接して前記床面に設けられ、前記第1の凹条部と直交する方向に延在する第2の凹条部を有する第2固定部と、を含む固定具(請求項1)。
本項に記載の固定具は、何れも旅客輸送を行う輸送機材の客室の床面に設けられる、第1固定部及び第2固定部を含んでいる。第1固定部は、直線状の溝を成す第1の凹条部を有すると共に、第2固定部は、同じく直線状の溝を成す第2の凹条部を有し、それら第1の凹条部と第2の凹条部とが、互いに直交する方向に延在している。又、第1固定部及び第2固定部は、第1固定部に対して、第1の凹条部の延在方向と直交する方向に第2固定部が近接する位置関係、換言すれば、第2の凹条部の延在方向に第1固定部及び第2固定部が互いに近接する位置関係で配置される。
このような構成の第1固定部及び第2固定部に対して、客室に持ち込まれた手荷物が具備する複数の車輪のうち、少なくとも1つが第1固定部の第1の凹条部に嵌まり込み、別の少なくとも1つが第2固定部の第2の凹条部に嵌まり込むように、手荷物が載置される。以下、このような状態を、固定具に対して手荷物が「セット」されたとも言う。すると、第1の凹条部に嵌まり込んだ車輪は、第1の凹条部の延在方向と直交する方向への移動が抑制され、第2の凹条部に嵌まり込んだ車輪は、第2の凹条部の延在方向と直交する方向への移動が抑制される。このとき、第1の凹条部の延在方向と第2の凹条部の延在方向とが互いに直交していることから、第1の凹条部と第2の凹条部との双方に車輪が嵌まり込んだ状態の手荷物は、意図しない動きが防止されることになる。
更に、手荷物の車輪に首振り機能が設けられていても、第1の凹条部及び第2の凹条部の断面の大きさや形状の調整により、車輪の首振り回転も抑制されることになるため、手荷物の不用意な動きがより強固に防止されるものとなる。加えて、手荷物自体に車輪の回転をロックするようなストッパー機能が付いている場合は、このストッパー機能と併せて固定具にセットされることで、手荷物の意図しない動きがより一層強固に防止されるものとなる。しかも、第1固定部及び第2固定部が上述したような位置関係にあるため、手荷物が固定具にセットされる際に、第2固定部の第1固定部側と反対側から第1固定部へ向かって手荷物が移動されることにより、第1の凹条部へ嵌まり込む車輪が、第2の凹条部によってガイドされながら転動されることになる。
(2)上記(1)項において、前記第1固定部は、前記第1の凹条部が前記輸送機材の進行方向と平行な方向に延在するように設けられる固定具(請求項2)。
本項に記載の固定具は、第1固定部の第1の凹条部が輸送機材の進行方向と平行な方向に延在するように、第1固定部が設けられるものである。このため、第2固定部は、必然的に、第2の凹条部が輸送機材の進行方向と直交する方向に延在するように設けられる。これにより、客室に持ち込まれた手荷物は、第1の凹条部及び第2の凹条部の夫々の延在方向と直交する方向、すなわち、輸送機材の移動中に特に懸念される、輸送機材の進行方向及びこの進行方向と直交する方向への、意図しない動きが防止されるものである。
本項に記載の固定具は、第1固定部の第1の凹条部が輸送機材の進行方向と平行な方向に延在するように、第1固定部が設けられるものである。このため、第2固定部は、必然的に、第2の凹条部が輸送機材の進行方向と直交する方向に延在するように設けられる。これにより、客室に持ち込まれた手荷物は、第1の凹条部及び第2の凹条部の夫々の延在方向と直交する方向、すなわち、輸送機材の移動中に特に懸念される、輸送機材の進行方向及びこの進行方向と直交する方向への、意図しない動きが防止されるものである。
(3)上記(1)(2)項において、前記第1固定部は、前記第1の凹条部を少なくとも2つ有し、該少なくとも2つの第1の凹条部は、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置されると共に、各々の延在方向と直交する方向の断面視で大きさが互いに異なっている固定具(請求項3)。
本項に記載の固定具は、第1固定部が第1の凹条部を少なくとも2つ有しており、これらの第1の凹条部が、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置されている。すなわち、第1固定部の第2固定部側からその反対側へ向かって、少なくとも2つの第1の凹条部が並べられて配置されることになる。
本項に記載の固定具は、第1固定部が第1の凹条部を少なくとも2つ有しており、これらの第1の凹条部が、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置されている。すなわち、第1固定部の第2固定部側からその反対側へ向かって、少なくとも2つの第1の凹条部が並べられて配置されることになる。
更に、それら少なくとも2つの第1の凹条部は、各々の延在方向と直交する方向の断面視で、大きさが互いに異なっているものである。これにより、少なくとも2つの第1の凹条部毎に、嵌まり込むことで移動が抑制される車輪の大きさが異なることになるため、例えば小型のキャリーバックや大型のスーツケース等の、車輪の大きさが異なる様々な手荷物の固定に対応するものとなる。しかも、それら少なくとも2つの第1の凹条部が、第1固定部の第2固定部側からその反対側へ向かって並べられているため、第2の凹条部にガイドされて第1固定部まで転動された車輪は、何れの位置にある第1の凹条部にも容易に嵌まり込むものである。
(4)上記(1)から(3)項において、前記第2固定部は、前記第2の凹条部を複数有し、該複数の第2の凹条部は、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置される固定具(請求項4)。
本項に記載の固定具は、第2固定部が第2の凹条部を複数有しており、これら複数の第2の凹条部が、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置されたものである。すなわち、複数の第2の凹条部は、第2固定部において、第1の凹条部の延在方向と平行な方向に並べられて配置されることとなる。これにより、第1の凹条部及び第2の凹条部の夫々に、少なくとも車輪が1つずつ嵌まり込むことで固定される手荷物の保管場所が、第1の凹条部の延在方向に沿って、第1の凹条部の長さ及び第2の凹条部の数に応じた複数個所に確保されることになる。このため、第1の凹条部の延在方向に沿って並べられて、複数の手荷物が同時に固定されるものである。
本項に記載の固定具は、第2固定部が第2の凹条部を複数有しており、これら複数の第2の凹条部が、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置されたものである。すなわち、複数の第2の凹条部は、第2固定部において、第1の凹条部の延在方向と平行な方向に並べられて配置されることとなる。これにより、第1の凹条部及び第2の凹条部の夫々に、少なくとも車輪が1つずつ嵌まり込むことで固定される手荷物の保管場所が、第1の凹条部の延在方向に沿って、第1の凹条部の長さ及び第2の凹条部の数に応じた複数個所に確保されることになる。このため、第1の凹条部の延在方向に沿って並べられて、複数の手荷物が同時に固定されるものである。
(5)上記(4)項において、前記複数の第2の凹条部は、各々の延在方向と直交する方向の断面視で大きさが互いに異なる2つ以上の第2の凹条部を含む固定具(請求項5)。
本項に記載の固定具は、第2固定部の複数の第2の凹条部が、各々の延在方向と直交する方向の断面視で、大きさが互いに異なる2つ以上の第2の凹条部を含むものである。これにより、大きさが互いに異なる2つ以上の第2の凹条部毎に、嵌まり込むことで移動が抑制される車輪の大きさが異なることになる。このため、例えば小型のキャリーバックや大型のスーツケース等の、車輪の大きさが異なる複数の様々な手荷物が、第1の凹条部の延在方向に沿って並べられて同時に固定されるものである。
本項に記載の固定具は、第2固定部の複数の第2の凹条部が、各々の延在方向と直交する方向の断面視で、大きさが互いに異なる2つ以上の第2の凹条部を含むものである。これにより、大きさが互いに異なる2つ以上の第2の凹条部毎に、嵌まり込むことで移動が抑制される車輪の大きさが異なることになる。このため、例えば小型のキャリーバックや大型のスーツケース等の、車輪の大きさが異なる複数の様々な手荷物が、第1の凹条部の延在方向に沿って並べられて同時に固定されるものである。
(6)上記(1)から(5)項において、前記第1の凹条部は、その延在方向と直交する断面形状が円弧状を成している固定具(請求項6)。
本項に記載の固定具は、第1の凹条部の、その延在方向と直交する断面形状が円弧状を成しているものである。このため、第2の凹条部によりガイドされながら、第1の凹条部の延在方向と直交する方向に転動される手荷物の車輪は、車輪の外周の下方側が、第1の凹条部の円弧に沿って配置されると共に、その円弧の少なくとも一部に接触する態様で、第1の凹条部に対して嵌まり込む。これにより、第1の凹条部に嵌まり込んだ車輪は、第1の凹条部の延在方向とそれに直交する方向との、双方の方向への不本意な移動が抑制されるものである。
本項に記載の固定具は、第1の凹条部の、その延在方向と直交する断面形状が円弧状を成しているものである。このため、第2の凹条部によりガイドされながら、第1の凹条部の延在方向と直交する方向に転動される手荷物の車輪は、車輪の外周の下方側が、第1の凹条部の円弧に沿って配置されると共に、その円弧の少なくとも一部に接触する態様で、第1の凹条部に対して嵌まり込む。これにより、第1の凹条部に嵌まり込んだ車輪は、第1の凹条部の延在方向とそれに直交する方向との、双方の方向への不本意な移動が抑制されるものである。
しかも、第1の凹条部の断面が円弧状であることで、車輪が第1の凹条部に嵌め込まれる際や、意図的に第1の凹条部から出される際の、車輪の移動が滑らかに行われる。このため、例えば、上記(3)項で言及したように少なくとも2つの第1の凹条部が設けられる場合に、隣接する第1の凹条部間で車輪が移動されるときや、固定具から手荷物が取り出されるときの、車輪から伝わる衝撃が抑制されるものである。加えて、第1の凹条部の断面が円弧状であることで、その円弧状の直径と略等しい直径を有する車輪だけでなく、円弧状の直径とある程度大きさが異なる直径の車輪、特に円弧状の直径よりも小さい直径を有する車輪に対しても、移動の抑制作用が発揮されることとなる。更に、上記(3)項で言及したように、大きさが互いに異なる少なくとも2つの第1の凹条部が設けられる場合は、固定に対応する手荷物の車輪の大きさの幅が、より一層広くなるものである。
(7)上記(1)から(6)項において、前記第2の凹条部が平坦な底面を有する固定具(請求項7)。
本項に記載の固定具は、第2の凹条部が平坦な底面を有することで、第2の凹条部によりガイドされて第1の凹条部に嵌まり込む車輪と、第2の凹条部に嵌まり込む車輪とが、第2の凹条部において容易に転動されるものとなる。
本項に記載の固定具は、第2の凹条部が平坦な底面を有することで、第2の凹条部によりガイドされて第1の凹条部に嵌まり込む車輪と、第2の凹条部に嵌まり込む車輪とが、第2の凹条部において容易に転動されるものとなる。
(8)上記(1)から(7)項において、前記第1固定部及び前記第2固定部は、前記第1固定部の前記第2固定部側と反対側が、前記輸送機材の客室の壁面と近接するように設置されている固定具(請求項8)。
本項に記載の固定具は、第1固定部の第2固定部側と反対側が、輸送機材の客室の壁面と近接するように、第1固定部及び第2固定部が設置されるものである。すなわち、第1固定部は、第1の凹条部の延在方向と直交する方向に関して、第2固定部と客室の壁面とに挟まれた配置になる。このような位置関係により、固定具に対してセットされる際に、第2固定部側から第1固定部側へ向かって移動される手荷物の移動位置の目安として、移動方向先で第1固定部に近接する壁面が利用されるものである。更に、このように固定具にセットされる際や、固定具にセットされた状態の手荷物の、第2固定部側から第1固定部側へ向かう方向への移動が、客室の壁面によって確実に抑止されるものである。
本項に記載の固定具は、第1固定部の第2固定部側と反対側が、輸送機材の客室の壁面と近接するように、第1固定部及び第2固定部が設置されるものである。すなわち、第1固定部は、第1の凹条部の延在方向と直交する方向に関して、第2固定部と客室の壁面とに挟まれた配置になる。このような位置関係により、固定具に対してセットされる際に、第2固定部側から第1固定部側へ向かって移動される手荷物の移動位置の目安として、移動方向先で第1固定部に近接する壁面が利用されるものである。更に、このように固定具にセットされる際や、固定具にセットされた状態の手荷物の、第2固定部側から第1固定部側へ向かう方向への移動が、客室の壁面によって確実に抑止されるものである。
(9)上記(1)から(8)項において、前記第1固定部及び前記第2固定部は、前記床面に取り付けられている固定具(請求項9)。
本項に記載の固定具は、第1固定部及び第2固定部の双方が、客室の床面に取り付けられていることで、第1の凹条部及び第2の凹条部が、床面の高さよりも高い位置に位置することになる。すなわち、第1固定部は、第1の凹条部の、その延在方向と直交する方向の両側に、床面から第1の凹条部の深さよりも大きく突出すると共に、第1の凹条部と平行に延在する突出部が形成される。そして、第1の凹条部は、2つの突出部の間にこれらの突出部と連続して、客室の床面に近い深さに形成される。上記(3)項で言及したように第1の凹条部が少なくとも2つ設けられる場合は、突出部と第1の凹条部とが交互に連続して配置されることになる。
本項に記載の固定具は、第1固定部及び第2固定部の双方が、客室の床面に取り付けられていることで、第1の凹条部及び第2の凹条部が、床面の高さよりも高い位置に位置することになる。すなわち、第1固定部は、第1の凹条部の、その延在方向と直交する方向の両側に、床面から第1の凹条部の深さよりも大きく突出すると共に、第1の凹条部と平行に延在する突出部が形成される。そして、第1の凹条部は、2つの突出部の間にこれらの突出部と連続して、客室の床面に近い深さに形成される。上記(3)項で言及したように第1の凹条部が少なくとも2つ設けられる場合は、突出部と第1の凹条部とが交互に連続して配置されることになる。
同様に、第2固定部は、第2の凹条部の、その延在方向と直交する方向の両側に、床面から第2の凹条部の深さよりも大きく突出すると共に、第2の凹条部と平行に延在する突出部が形成され、第2の凹条部が、そのような2つの突出部の間に突出部と連続して、客室の床面に近い深さに形成される。そして、上記(4)項で言及したように第2の凹条部が複数設けられる場合は、突出部と第2の凹条部とが交互に連続して配置されることになる。このような構成により、客室の床面を掘り下げる必要なく、第1固定部及び第2固定部を床面に取り付けるのみで、固定具が設置されるものである。このため、新規に製作される輸送機材の客室だけでなく、既存の輸送機材の客室に対しても、容易に後付けされるものである。
(10)上記(9)項において、前記第1固定部の前記第2固定部側の端縁に、前記第2固定部側へ向かって下方向に傾斜する傾斜面を備える固定具(請求項10)。
本項に記載の固定具は、第1固定部の第2固定部側の端縁に、第2固定部側へ向かって下方向に傾斜する傾斜面を備えるものである。ここで、固定具に対して手荷物がセットされる際、第1の凹条部へ或いは第2の凹条部へ嵌め込まれるために、第2固定部上を移動される手荷物の車輪は、第2の凹条部の延在方向の端部から第2の凹条部に進入する。このため、床面と第2の凹条部の底部との間の比較的小さな段差のみを越えればよく、その乗り上げは容易である。
本項に記載の固定具は、第1固定部の第2固定部側の端縁に、第2固定部側へ向かって下方向に傾斜する傾斜面を備えるものである。ここで、固定具に対して手荷物がセットされる際、第1の凹条部へ或いは第2の凹条部へ嵌め込まれるために、第2固定部上を移動される手荷物の車輪は、第2の凹条部の延在方向の端部から第2の凹条部に進入する。このため、床面と第2の凹条部の底部との間の比較的小さな段差のみを越えればよく、その乗り上げは容易である。
これに対し、第1の凹条部へ嵌め込まれるために、更に第2固定部から第1固定部へと移動される車輪は、第2の凹条部から、第1固定部の第2固定部側の端部に位置する突出部に乗り上げるため、第2の凹条部の底部と第1固定部の突出部の上端との間の、比較的大きな段差を越えなくてはならない。仮に、第2固定部と第1固定部との間に隙間がある場合は、その隙間の床面から第1固定部の突出部に乗り上げるため、更に大きな段差を越えなくてはならない。そこで、上述したように、第1固定部の第2固定部側の端縁に、第2固定部側へ向かって下方向に傾斜する傾斜面が設けられていることで、第2の凹条部又は床面からの、第1固定部の突出部への乗り上げが容易になり、延いては、固定具に対する手荷物のセットが容易になるものである。
本発明は上記のような構成であるため、輸送機材の客室において意図しない手荷物の動きを防止することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体を通して、同一部分若しくは相当する部分は、同一の符号で示している。
図1に示す本発明の実施の形態に係る固定具10は、旅客輸送を行う鉄道車両50A等の輸送機材50(図5参照)において、旅客により持ち込まれた複数の車輪72付きの手荷物70(図4参照)を固定するためのものである。具体的に、図1は、輸送機材50としての鉄道車両50Aの客室52に設置された状態の固定具10を示しており、(a)が平面図、(b)が鉄道車両50Aの進行方向と直交する方向の断面図である。なお、図1(a)では、左右方向が鉄道車両50Aの進行方向、上下方向が鉄道車両50Aの幅方向に相当し、又、客室52の壁面56の図示を省略している。
図1に示す本発明の実施の形態に係る固定具10は、旅客輸送を行う鉄道車両50A等の輸送機材50(図5参照)において、旅客により持ち込まれた複数の車輪72付きの手荷物70(図4参照)を固定するためのものである。具体的に、図1は、輸送機材50としての鉄道車両50Aの客室52に設置された状態の固定具10を示しており、(a)が平面図、(b)が鉄道車両50Aの進行方向と直交する方向の断面図である。なお、図1(a)では、左右方向が鉄道車両50Aの進行方向、上下方向が鉄道車両50Aの幅方向に相当し、又、客室52の壁面56の図示を省略している。
図示のように、固定具10は、共に凹凸が設けられた大略板状を成し、輸送機材50(鉄道車両50A)の客室52の床面54に設けられた、第1固定部12及び第2固定部30を含んでいる。第1固定部12は、詳しくは図2も参照して、本実施形態では2つの第1の凹条部14(14A、14B)と、それらの両側に位置する3つの突出部16と、傾斜面18とを有している。2つの第1の凹条部14の各々は、本実施形態では鉄道車両50Aの進行方向と平行な方向(図1(a)における左右方向)に延在し、延在方向と直交する方向(図1(a)における上下方向、図1(b)及び図2(a)における左右方向)に互いに間隔を空けて平行に配置されている。又、これら2つの第1の凹条部14A、14Bは、各々の延在方向と直交する断面形状が、何れも円弧状を成しているものの、その大きさが互いに異なっている。具体的には、第1の凹条部14Aよりも第1の凹条部14Bの方が、円弧状の大きさが小さくなっている。
3つの突出部16の各々は、第1の凹条部14の各々と同じ方向に延在しており、これら3つの突出部16によって2つの第1の凹条部14を挟み込むようにして、図2(a)における左右方向について、突出部16と第1の凹条部14とが交互に配置されている。3つの突出部16の上面は、第1固定部12が客室52の床面54に設置された状態で、互いに略同じ高さに位置するものであり、床面54から突出部16の上面までの高さは、第1の凹条部14の深さよりも僅かに大きくなっている。又、3つの突出部16の各々には、延在方向に所定間隔を空けて複数のネジ穴20が設けられており、図1に示すように、これらのネジ穴20にネジ80が通されてネジ止めされることで、第1固定部12が客室52の床面54に対して取り付けられている。このとき、図1の例では、突出部16の下面と床面54との間に補強材22が設置された状態で、この補強材22を貫通して第1固定部12がネジ止めされている。
傾斜面18は、第1固定部12の一方の端縁(図2(a)における右側の端縁)に、突出部16の1つから連続して、下方向へ傾斜するように設けられている。そして、上述した2つの第1の凹条部14、3つの突出部16及び傾斜面18が、例えばステンレス製の板等が加工されることで、一体的に形成されている。更に、第1固定部12は、図2(b)で確認できるように、第1の凹条部14や突出部16の延在方向の両端部が、ふさぎ板24により塞がれた状態で、客室52の床面54に対して取り付けられている。又、本実施形態において、第1固定部12は、図1(b)に示すように、鉄道車両50Aの進行方向と平行に延在する、鉄道車両50Aの客室52の壁面56に沿って、この壁面56に近接(若しくは接触)して設置されている。このとき、第1固定部12は、第1の凹条部14の延在方向と直交する方向に関して、傾斜面18側が壁面56と反対側に位置するように設置され、第1固定部12の傾斜面18側には、第2固定部30が第1固定部12に近接(若しくは接触)して設置されている。
図1及び図3を参照して、第2固定部30は、複数(本実施形態では11個)の第2の凹条部32と、第2の凹条部32の両側に位置する複数(本実施形態では12個)の突出部34とを有している。複数の第2の凹条部32の各々は、本実施形態では鉄道車両50Aの進行方向と直交する方向(図1(a)における上下方向、図1(b)における左右方向)に延在し、延在方向と直交する方向(図1(a)及び図3における左右方向)に互いに間隔を空けて平行に配置されている。又、これら複数の第2の凹条部32は、本実施形態では、各々の延在方向と直交する方向の断面視で互いに大きさが等しくなっており、何れも平坦な底面を有している。なお、複数の第2の凹条部32に、各々の延在方向と直交する方向の断面視で大きさが互いに異なる、2つ以上の第2の凹条部32が含まれていてもよい。
複数の突出部34の各々は、第2の凹条部32の各々と同じ方向に延在しており、これらの突出部34によって第2の凹条部32の各々を挟み込むようにして、図3(a)における左右方向について、突出部34と第2の凹条部32とが交互に配置されている。複数の突出部34の上面は、第2固定部30が客室52の床面54に設置された状態で、互いに略同じ高さに位置するものであり、床面54から突出部34の上面までの高さは、第2の凹条部32の深さよりも僅かに大きくなっている。
上述した複数の第2の凹条部32及び複数の突出部34は、本実施形態において、例えばステンレス製のコルゲート加工された2枚の外板40により形成されている。具体的には、図3に示すように、2枚の外板40が左右に並べられて配置されており、図3に符号Aで示されている領域で、2枚の外板40の端部同士が重ねられている。そして、12個の突出部34のうち、図3(a)における左寄りに位置する6個の突出部34が、左側の一方の外板40により形成され、右寄りに位置する残り6個の突出部34が、右側のもう一方の外板40により形成されている。又、11個の第2の凹条部32のうち、図3(a)における左寄りに位置する5個の第2の凹条部32が、左側の一方の外板40により形成され、右寄りに位置する5個の第2の凹条部32が、右側のもう一方の外板40により形成され、中央近傍に位置する残り1つの第2の凹条部32が、2枚の外板40の双方により形成されている。なお、複数の第2の凹条部32及び複数の突出部34の全てが、1枚の外板40により形成されていてもよい。
本実施形態において、第2固定部30は、図3(b)に示すように、例えばステンレス製等の平坦な下板42を含み、この下板42を挟んで2枚の外板40が、客室52の床面54に対してネジ止めにより取り付けられている。すなわち、図3(a)に示すように、第2の凹条部32に相当する外板40の複数個所に、ネジ穴36が設けられており、それらには、2枚の外板40が重なっている領域Aに設けられた3箇所のネジ穴36も含まれている。そして、図1(a)に示すように、これらのネジ穴36にネジ80が通されて、下板42と共にネジ止めされることで、第2固定部30が客室52の床面54に対して取り付けられている。又、本実施形態において、第2固定部30は、図1で確認できるように、第2の凹条部32が、鉄道車両50Aの進行方向及び第1の凹条部14の延在方向と直交する向きで、床面54に設置されている。
続いて、図4には、図1に示した固定具10の使用例を示しており、図4に仮想線で示している手荷物70のうち、手荷物70Aは比較的大型のスーツケース等をイメージした手荷物70であり、手荷物70Bは比較的小型のキャリーバック等をイメージした手荷物70である。これらの手荷物70A、70Bは、双方とも複数の車輪72を有しているものの、小型の手荷物70Bの車輪72の方が、大型の手荷物70Aの車輪72よりも小さくなっている。図示のように、大型の手荷物70Aは、図4における右側から左側へと壁面56に向かって移動されて、固定具10にセットされ、図中左側の車輪72が第1の凹条部14Aに嵌まり込み、図中右側の車輪72が第2の凹条部32に嵌まり込んだ状態になっている。
同様に、小型の手荷物70Bは、図4における右側から左側へと壁面56に向かって移動されて、固定具10にセットされ、図中左側の車輪72が第1の凹条部14Aよりも小さい第1の凹条部14Bに嵌まり込み、図中右側の車輪72が第2の凹条部32に嵌まり込んだ状態になっている。なお、当然のことながら、2つの手荷物70A、70Bが同時にセットされる場合は、2つの手荷物70A、70Bの位置が図4における紙面と直交する方向に異なり、手荷物70Aの右側の車輪72が嵌まり込む第2の凹条部32と、手荷物70Bの右側の車輪72が嵌まり込む第2の凹条部32とは、図4における紙面と直交する方向に異なる位置にあるものである。又、固定具10にセットされる手荷物70には、スーツケースやキャリーバック以外にも、複数の車輪72を具備する様々な形状の鞄、ベビーカー、車椅子等が含まれる。
次に、図5には、乗降用の複数の扉58や複数の座席60等を備えた、鉄道車両50Aの客室52の平面イメージ図を示している。図1及び図4に示した固定具10は、第1固定部12の第1の凹条部14が、鉄道車両50Aの進行方向と平行な方向に延在する向きで、鉄道車両50Aの進行方向と平行な方向に延在する壁面56に沿って設置されている。このため、例えば図5に符号Bで示すような、扉58と座席60との間に鉄道車両50Aの側面と平行な壁面56に沿って設けられた領域や、図5に符号Cで示すような、客室52の隅近傍に鉄道車両50Aの側面と平行な壁面56に沿って設けられた領域に設置される。或いは、図5における左右方向に延在する座席60の中途部分に、座席60に替えて固定具10を設置してもよい。更に、例えば図5に符号Dで示すような、客室52の隅近傍に鉄道車両50Aの妻面と平行な壁面56に沿って設けられた領域に、固定具10を設置してもよく、この場合は、第1固定部12の第1の凹条部14が、鉄道車両50Aの進行方向と直交する方向に延在する向きで設置されることになる。
すなわち、本発明の実施の形態に係る固定具10は、第1の凹条部14と第2の凹条部32とが互いに直交する方向に延在し、かつ、第1固定部12に対して第2固定部30が、第1の凹条部14の延在方向と直交する方向に近接して配置される位置関係で、客室52の床面54に設置されていればよいものである。このため、例えば、第1の凹条部14と第2の凹条部32との延在方向が、何れも鉄道車両50Aの進行方向と平行でない向きや、壁面56に沿っていない領域に、固定具10が設置されてもよい。又、固定具10が設置される輸送機材50は、鉄道車両50Aに限定されるものではなく、客室52を有するバスや船舶等であってもよい。
加えて、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図1〜図4に示したような構成に限定されるものではなく、例えば、第1の凹条部14及び第2の凹条部32の数量が、図示の例より多くても少なくてもよい。又、第1固定部12及び第2固定部30は、図示の例と異なる部材で構成されていてもよく、各部材の形成材料も、必要十分な強度を確保できるものであれば、ステンレス以外の金属や樹脂等の任意の材料であってよい。更に、床面54に対する第1固定部12及び第2固定部30の固定方法も、ネジ止めに限定されることなく、第1固定部12及び第2固定部30の形成材料に合わせた任意の固定方法を採用できる。又、床面54を掘り下げることで、第1の凹条部14及び第2の凹条部32が形成されるものであってもよい。
なお、図1(a)及び図4に図示されている壁面56は、何れも段差を有しているが、段差を有さない壁面56に沿って固定具10が設置されてもよい。又、壁面56の段差の有無や、固定具10にセットされた状態の手荷物70と壁面56との位置関係等を考慮して、壁面56と固定具10との間の距離や固定具10の大きさ等を調整してもよい。更に、壁面56は、客室52の床面54と直交又は略直交して上下方向に延在するものであればよく、例えば、客室52の内壁、袖仕切り板、客室52に設置される設備の一部であってもよい。
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図1に示すように、何れも旅客輸送を行う輸送機材50(図5参照)の客室52の床面54に設けられる、第1固定部12及び第2固定部30を含んでいる。第1固定部12は、直線状の溝を成す第1の凹条部14を有すると共に、第2固定部30は、同じく直線状の溝を成す第2の凹条部32を有し、それら第1の凹条部14と第2の凹条部32とが、互いに直交する方向に延在している。又、第1固定部12及び第2固定部30は、第1固定部12に対して、第1の凹条部14の延在方向と直交する方向に第2固定部30が近接する位置関係、換言すれば、第2の凹条部32の延在方向に第1固定部12及び第2固定部30が互いに近接する位置関係で配置される。
このような構成の第1固定部12及び第2固定部30に対して、図4に示すように、客室52に持ち込まれた手荷物70が具備する複数の車輪72のうち、少なくとも1つが第1固定部12の第1の凹条部14に嵌まり込み、別の少なくとも1つが第2固定部30の第2の凹条部32に嵌まり込むように、手荷物70が載置される。すると、第1の凹条部14に嵌まり込んだ車輪72は、第1の凹条部14の延在方向と直交する方向への移動が抑制され、第2の凹条部32に嵌まり込んだ車輪72は、第2の凹条部32の延在方向と直交する方向への移動が抑制される。このとき、第1の凹条部14の延在方向と第2の凹条部32の延在方向とが互いに直交していることから、第1の凹条部14と第2の凹条部32との双方に車輪72が嵌まり込んだ状態の手荷物70の、意図しない動きを防止することが可能となる。
更に、手荷物70の車輪72に首振り機能が設けられていても、第1の凹条部14及び第2の凹条部32の断面の大きさや形状の調整により、車輪72の首振り回転も抑制することができるため、手荷物70の不用意な動きをより強固に防止することができる。加えて、手荷物70自体に車輪72の回転をロックするようなストッパー機能が付いている場合は、このストッパー機能と併せて固定具10にセットすることで、手荷物70の意図しない動きをより一層強固に防止することが可能となる。しかも、第1固定部12及び第2固定部30が上述したような位置関係にあるため、手荷物70が固定具10にセットされる際に、第2固定部30の第1固定部12側と反対側(図4における右側)から第1固定部12へ向かって、手荷物70を移動させることにより、第1の凹条部14へ嵌まり込む車輪72を、第2の凹条部32によってガイドしながら転動させることができる。
又、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図1及び図4に示すように、第1固定部12の第1の凹条部14が、輸送機材50の進行方向と平行な方向に延在するように、第1固定部12が設けられるものである。このため、第2固定部30は、必然的に、第2の凹条部32が輸送機材50の進行方向と直交する方向に延在するように設けられる。これにより、客室52に持ち込まれた手荷物70の、第1の凹条部14及び第2の凹条部32の夫々の延在方向と直交する方向、すなわち、輸送機材50の移動中に特に懸念される、輸送機材50の進行方向及びこの進行方向と直交する方向への、意図しない動きを防止することができる。
又、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図2に示すように、第1固定部12が第1の凹条部14を2つ有しており、これらの第1の凹条部14A、14Bが、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置されている。すなわち、第1固定部12の第2固定部30側(図2(a)における右側)からその反対側へ向かって、2つの第1の凹条部14A、14Bが並べられて配置されることになる。更に、それら2つの第1の凹条部14A、14Bは、各々の延在方向と直交する方向の断面視で、大きさが互いに異なっており、図3の例では、第1の凹条部14Bよりも第1の凹条部14Aの方が大きくなっている。
これにより、図4に示すように、2つの第1の凹条部14A、14B毎に、嵌まり込むことで移動が抑制される車輪72の大きさが異なることになるため、例えばスーツケース等の比較的大型の手荷物70Aや、キャリーバック等の比較的小型の手荷物70Bといった、車輪72の大きさが異なる様々な手荷物70の固定に対応することができる。しかも、それら2つの第1の凹条部14A、14Bが、第1固定部12の第2固定部30側からその反対側へ向かって並べられているため、第2の凹条部32にガイドされて第1固定部12まで転動された車輪72を、何れの位置にある第1の凹条部14にも容易に嵌め込むことができる。
更に、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図3に示すように、第2固定部30が第2の凹条部32を複数有しており、これら複数の第2の凹条部32が、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置されたものである。すなわち、図1(a)で確認できるように、複数の第2の凹条部32は、第2固定部30において、第1の凹条部14の延在方向と平行な方向に並べられて配置されることとなる。これにより、図4に示すように、第1の凹条部14及び第2の凹条部32の夫々に、少なくとも車輪72が1つずつ嵌まり込むことで固定される手荷物70の保管場所を、第1の凹条部14の延在方向(図1(a)における左右方向)に沿って、第1の凹条部14の長さ及び第2の凹条部32の数に応じた複数個所に確保することができる。このため、第1の凹条部14の延在方向に沿って並べて、複数の手荷物70を同時に固定することが可能となる。
又、本発明の実施の形態に係る固定具10は、第2固定部30の複数の第2の凹条部32が、各々の延在方向と直交する方向の断面視で、大きさが互いに異なる2つ以上の第2の凹条部32を含んでいてもよい。この場合は、大きさが互いに異なる2つ以上の第2の凹条部32毎に、嵌まり込むことで移動が抑制される車輪72の大きさが異なることになる。このため、例えばスーツケース等の比較的大型の手荷物70Aや、キャリーバック等の比較的小型の手荷物70Bといった、車輪72の大きさが異なる複数の様々な手荷物70を、第1の凹条部14の延在方向に沿って並べて同時に固定することができる。
更に、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図2に示すように、第1の凹条部14の、その延在方向と直交する断面形状が円弧状を成しているものである。このため、図4に示すように、第2の凹条部32によりガイドされながら、第1の凹条部14の延在方向と直交する方向に転動される手荷物70の車輪72は、車輪72の外周の下方側が、第1の凹条部14の円弧に沿って配置されると共に、その円弧の少なくとも一部に接触する態様で、第1の凹条部14に対して嵌まり込む。これにより、第1の凹条部14に嵌まり込んだ車輪72の、第1の凹条部14の延在方向とそれに直交する方向との、双方の方向への不本意な移動を抑制することができ、又、首振り機能を有している車輪72の首振り回転を抑制することもできる。
しかも、第1の凹条部14の断面が円弧状であることで、車輪72を第1の凹条部14に嵌め込む際や、意図的に第1の凹条部14から出す際の、車輪72の移動を滑らかに行うことができる。このため、本実施形態のように2つの第1の凹条部14A、14Bが設けられる場合に、それらの第1の凹条部14A、14B間で車輪72を移動させるときや、固定具10から手荷物70を取り出すときの、車輪72から伝わる衝撃を抑制することが可能となる。加えて、第1の凹条部14の断面が円弧状であることで、その円弧状の直径と略等しい直径を有する車輪72だけでなく、円弧状の直径とある程度大きさが異なる直径の車輪72、特に円弧状の直径よりも小さい直径を有する車輪72に対しても、移動の抑制効果を発揮することができる。更に、本実施形態のように、大きさが互いに異なる2つの第1の凹条部14A、14Bが設けられる場合は、固定に対応する手荷物70の車輪72の大きさの幅を、より一層広くすることができる。
又、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図3に示すように、第2の凹条部32が平坦な底面を有することで、第2の凹条部32によりガイドされて第1の凹条部14に嵌まり込む車輪72と、第2の凹条部32に嵌まり込む車輪72とを、第2の凹条部32において容易に転動させることができる。
更に、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図1(b)及び図4に示すように、第1固定部12の第2固定部30側と反対側(図中左側)が、輸送機材50の客室52の壁面56と近接するように、第1固定部12及び第2固定部30が設置されるものである。すなわち、第1固定部12は、第1の凹条部14の延在方向と直交する方向に関して、第2固定部30と客室52の壁面56とに挟まれた配置になる。
更に、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図1(b)及び図4に示すように、第1固定部12の第2固定部30側と反対側(図中左側)が、輸送機材50の客室52の壁面56と近接するように、第1固定部12及び第2固定部30が設置されるものである。すなわち、第1固定部12は、第1の凹条部14の延在方向と直交する方向に関して、第2固定部30と客室52の壁面56とに挟まれた配置になる。
上記のような位置関係により、固定具10に対してセットされる際に、第2固定部30側から第1固定部12側へ(図中右側から左側へ)向かって移動される手荷物70の移動位置の目安として、移動方向先で第1固定部12に近接する壁面56を利用することができる。このとき、固定具10と壁面56との間の距離に応じて、壁面56に接触するまで手荷物70を図中左側へ移動させた後、僅かに図中右側へ戻して固定具10にセットしてもよく、手荷物70が壁面56に接触した状態で固定具10にセットしてもよい。更に、このように固定具10にセットする際や、固定具10にセットされた状態の手荷物70の、第2固定部30側から第1固定部12側へ向かう方向への移動を、客室52の壁面56によって確実に抑止することができる。
又、本発明の実施の形態に係る固定具10は、第1固定部12及び第2固定部30の双方が、客室52の床面54に取り付けられていることで、第1の凹条部14及び第2の凹条部32が、床面54の高さよりも高い位置に位置することになる。すなわち、第1固定部12は、図1及び図2に示すように、第1の凹条部14の、その延在方向と直交する方向の両側に、床面54から第1の凹条部14の深さよりも大きく突出すると共に、第1の凹条部14と平行に延在する突出部16が形成される。そして、第1の凹条部14は、2つの突出部16の間にこれらの突出部16と連続して、客室52の床面54に近い深さに形成される。本実施形態のように2つの第1の凹条部14A、14Bが設けられる場合は、突出部16と第1の凹条部14とが交互に連続して配置されることになる。
同様に、第2固定部30は、図1及び図3に示すように、第2の凹条部32の、その延在方向と直交する方向の両側に、床面54から第2の凹条部32の深さよりも大きく突出すると共に、第2の凹条部32と平行に延在する突出部34が形成され、第2の凹条部32が、そのような2つの突出部34の間に突出部34と連続して、客室52の床面54に近い深さに形成される。そして、本実施形態のように第2の凹条部32が複数設けられる場合は、突出部34と第2の凹条部32とが交互に連続して配置されることになる。このような構成により、客室52の床面54を掘り下げる必要なく、第1固定部12及び第2固定部30を床面54に取り付けるのみで、固定具10を設置することができる。このため、新規に製作される輸送機材50の客室52だけでなく、既存の輸送機材50の客室52に対しても、固定具10を容易に後付けすることができる。
加えて、本発明の実施の形態に係る固定具10は、図1及び図2に示すように、第1固定部12の第2固定部30側の端縁に、第2固定部30側へ向かって下方向に傾斜する傾斜面18を備えるものである。ここで、図1(b)及び図4を参照して、固定具10に対して手荷物70がセットされる際、第1の凹条部14へ或いは第2の凹条部32へ嵌め込まれるために、第2固定部30上を移動される手荷物70の車輪72は、第2の凹条部32の延在方向の図中右側端部から第2の凹条部32に進入する。このため、床面54と第2の凹条部32の底部との間の比較的小さな段差のみを越えればよく、その乗り上げは容易である。
これに対し、第1の凹条部14へ嵌め込まれるために、更に第2固定部30から第1固定部12へと移動される車輪72は、第2の凹条部32から、第1固定部12の第2固定部30側の端部に位置する突出部16に乗り上げるため、第2の凹条部32の底部と第1固定部12の突出部16の上端との間の、比較的大きな段差を越えなくてはならない。仮に、第2固定部30と第1固定部12との間に隙間がある場合は、その隙間の床面54から第1固定部12の突出部16に乗り上げるため、更に大きな段差を越えなくてはならない。そこで、上述したように、第1固定部12の第2固定部30側の端縁に、第2固定部30側へ向かって下方向に傾斜する傾斜面18が設けられていることで、第2の凹条部32又は床面54からの、第1固定部12の突出部16への乗り上げを容易にすることができ、延いては、固定具10に対する手荷物70のセットを容易にすることができる。
10:固定具、12:第1固定部、14(14A、14B):第1の凹条部、18:傾斜面、30:第2固定部、32:第2の凹条部、50:輸送機材、52:客室、54:床面、56:壁面、70(70A、70B):手荷物、72:車輪
Claims (10)
- 旅客輸送を行う輸送機材において、旅客により持ち込まれた複数の車輪付きの手荷物を固定するための固定具であって、
前記輸送機材の客室の床面に設けられ、第1の凹条部を有する第1固定部と、
該第1固定部に対して、前記第1の凹条部の延在方向と直交する方向に近接して前記床面に設けられ、前記第1の凹条部と直交する方向に延在する第2の凹条部を有する第2固定部と、を含むことを特徴とする固定具。 - 前記第1固定部は、前記第1の凹条部が前記輸送機材の進行方向と平行な方向に延在するように設けられることを特徴とする請求項1記載の固定具。
- 前記第1固定部は、前記第1の凹条部を少なくとも2つ有し、
該少なくとも2つの第1の凹条部は、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置されると共に、各々の延在方向と直交する方向の断面視で大きさが互いに異なっていることを特徴とする請求項1又は2記載の固定具。 - 前記第2固定部は、前記第2の凹条部を複数有し、
該複数の第2の凹条部は、各々の延在方向と直交する方向に互いに間隔を空けて平行に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の固定具。 - 前記複数の第2の凹条部は、各々の延在方向と直交する方向の断面視で大きさが互いに異なる2つ以上の第2の凹条部を含むことを特徴とする請求項4記載の固定具。
- 前記第1の凹条部は、その延在方向と直交する断面形状が円弧状を成していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の固定具。
- 前記第2の凹条部が平坦な底面を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の固定具。
- 前記第1固定部及び前記第2固定部は、前記第1固定部の前記第2固定部側と反対側が、前記輸送機材の客室の壁面と近接するように設置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の固定具。
- 前記第1固定部及び前記第2固定部は、前記床面に取り付けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の固定具。
- 前記第1固定部の前記第2固定部側の端縁に、前記第2固定部側へ向かって下方向に傾斜する傾斜面を備えることを特徴とする請求項9記載の固定具。
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