JP2020140976A - 圧電薄膜、圧電薄膜素子、圧電アクチュエータ、圧電センサ、ヘッドアセンブリ、ヘッドスタックアセンブリ、ハードディスクドライブ、プリンタヘッド、及びインクジェットプリンタ装置 - Google Patents

圧電薄膜、圧電薄膜素子、圧電アクチュエータ、圧電センサ、ヘッドアセンブリ、ヘッドスタックアセンブリ、ハードディスクドライブ、プリンタヘッド、及びインクジェットプリンタ装置 Download PDF

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純平 森下
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大和 風間
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【課題】大きい圧電定数g33を有する圧電薄膜を提供する。【解決手段】圧電薄膜は、金属酸化物を含み、金属酸化物が、Bi、K、Ti、及び元素Mを含み、元素Mが、Mg及びNiのうち少なくとも一種であり、少なくとも一部の金属酸化物が、ペロブスカイト構造を有する正方晶であり、少なくとも一部の正方晶の(001)面が、圧電薄膜の表面の法線方向dnにおいて配向しており、正方晶の(001)面の間隔が、cと表され、正方晶の(100)面の間隔が、aと表され、1.035以上1.060以下であり、金属酸化物が、下記化学式1で表され、下記化学式1中のMが、Mgγ>Ni1−γと表される。(1−x)(BiαK1−α)TiO3‐xBi(MβTi1−β)O3(1)、0.200≦x≦0.650、0<α<1、0<β<1、0≦γ≦1【選択図】図2

Description

本発明は、圧電薄膜、圧電薄膜素子、圧電アクチュエータ、圧電センサ、ヘッドアセンブリ、ヘッドスタックアセンブリ、ハードディスクドライブ、プリンタヘッド、及びインクジェットプリンタ装置に関する。
圧電体は、種々の目的に応じて様々な圧電素子に加工される。例えば、圧電アクチュエータは、圧電体に電圧を加えて圧電体を変形させる逆圧電効果により、電圧を力に変換する。また圧電センサは、圧電体に圧力を加えて圧電体を変形させる圧電効果により、力を電圧に変換する。これらの圧電素子は、様々な電子機器に搭載される。近年の市場では、電子機器の小型化及び性能の向上が要求されるため、圧電薄膜を用いた圧電素子(圧電薄膜素子)が盛んに研究されている。しかしながら、圧電体が薄いほど、圧電効果及び逆圧電効果が得られ難いため、薄膜の状態において優れた圧電特性を有する圧電体の開発が期待されている。
従来、圧電体として、ペロブスカイト型強誘電体であるジルコン酸チタン酸鉛(いわゆるPZT)が多用されてきた。しかしながら、PZTは、人体や環境を害する鉛を含むため、PZTの代替として、無鉛(Lead−free)の圧電体の開発が期待されている。例えば、下記の非特許文献1には、無鉛の圧電体として、チタン酸バリウム(BaTiO)が記載されている。チタン酸バリウムは、無鉛の圧電体の中でも比較例優れた圧電性を有するため、チタン酸バリウムの圧電薄膜素子への応用が期待されている。
Yiping Guo et al. "Thickness Dependence of Electrical Properties of Highly (100)‐Oriented BaTiO3 Thin Films Prepared by One‐Step Chemical Solution Deposition". Japanese Journal of Applied Physics, Vol.45, Part1, No.2A, 2006, pp.855‐859
圧電体の性能を示す主な指標は、圧電定数d33(圧電歪定数)、及び圧電定数g33(電圧出力定数)である。圧電定数d33は、単位電界あたりの歪量(発信能)の指標である。圧電定数d33が大きいほど、アクチュエータとしての圧電体の性能が高い。一方、圧電定数g33は、単位応力あたりの発生電界強度(受信能)の指標である。圧電定数g33が大きいほど、センサとしての圧電体の性能が高くなる。g33は、d33/εε又はd33/ε33εと表されてよい。ε及びε33其々は、圧電体の比誘電率である。εは、真空の誘電率である。従来のチタン酸バリウム系の圧電体の比誘電率は比較的高いため、チタン酸バリウム系の圧電体のg33は、比較的小さい。
本発明は、大きい圧電定数(g33)を有する圧電薄膜、圧電薄膜素子、並びに、圧電薄膜素子を用いた圧電アクチュエータ、圧電センサ、ヘッドアセンブリ、ヘッドスタックアセンブリ、ハードディスクドライブ、プリンタヘッド、及びインクジェットプリンタ装置を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る圧電薄膜は、金属酸化物を含む圧電薄膜であって、金属酸化物が、ビスマス、カリウム、チタン、及び元素Mを含み、元素Mが、マグネシウム及びニッケルのうち少なくとも一種であり、少なくとも一部の金属酸化物が、ペロブスカイト構造を有する正方晶であり、少なくとも一部の正方晶の(001)面が、圧電薄膜の表面の法線方向において配向しており、正方晶の(001)面の間隔が、cと表され、正方晶の(100)面の間隔が、aと表され、c/aが、1.035以上1.060以下であり、金属酸化物が、下記化学式1で表され、下記化学式1中のxは、0.200以上0.650以下であり、下記化学式1中のαは、0より大きく1未満であり、下記化学式1中のβは、0より大きく1未満であり、下記化学式1中のMが、MgγNi1−γと表され、γが、0以上1以下である。
(1−x)(Biα1−α)TiO‐xBi(MβTi1−β)O (1)
本発明の一側面に係る圧電薄膜は、上記化学式1で表される金属酸化物のみからなっていてよい。
圧電薄膜は、エピタキシャル膜であってよい。
圧電薄膜は、強誘電性薄膜であってよい。
本発明の一側面に係る圧電薄膜素子は、上記の圧電薄膜を備える。
圧電薄膜素子は、単結晶基板と、単結晶基板に重なる圧電薄膜と、を備えてよい。
圧電薄膜素子は、単結晶基板と、単結晶基板に重なる電極層と、電極層に重なる圧電薄膜と、を備えてよい。
圧電薄膜素子は、電極層と、電極層に重なる圧電薄膜と、を備えてよい。
圧電薄膜素子は、少なくとも一つの中間層を更に備えてよく、中間層が、単結晶基板と電極層との間に配置されていてよい。
圧電薄膜素子は、少なくとも一つの中間層を更に備えてよく、中間層が、電極層と圧電薄膜との間に配置されていてよい。
電極層が、白金の結晶を含んでよく、白金の結晶の(002)面が、電極層の表面の法線方向において配向していてよく、白金の結晶の(200)面が、電極層の表面の面内方向において配向していてよい。
本発明の一側面に係る圧電アクチュエータは、上記の圧電薄膜素子を備える。
本発明の一側面に係る圧電センサは、上記の圧電薄膜素子を備える。
本発明の一側面に係るヘッドアセンブリは、上記の圧電アクチュエータを備える。
本発明の一側面に係るヘッドスタックアセンブリは、上記のヘッドアセンブリを備える。
本発明の一側面に係るハードディスクドライブは、上記のヘッドスタックアセンブリを備える。
本発明の一側面に係るプリンタヘッドは、上記の圧電アクチュエータを備える。
本発明の一側面に係るインクジェットプリンタ装置は、上記のプリンタヘッドを備える。
本発明によれば、大きい圧電定数(g33)を有する圧電薄膜、圧電薄膜素子、並びに、圧電薄膜素子を用いた圧電アクチュエータ、圧電センサ、ヘッドアセンブリ、ヘッドスタックアセンブリ、ハードディスクドライブ、プリンタヘッド、及びインクジェットプリンタ装置が提供される。
図1中の(a)は、本発明の一実施形態に係る圧電薄膜素子の模式図であり、図1中の(b)は、図1中の(a)に示す圧電薄膜素子の斜視分解図であり、図1中の(b)では第一電極層、第一中間層、第二中間層及び第二電極層が省略されている。 図2は、ペロブスカイト構造を有する正方晶の単位胞の斜視図である。 図3は、本発明の一実施形態に係るヘッドアセンブリの模式図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る圧電アクチュエータの模式図である。 図5は、本発明の一実施形態に係るジャイロセンサの模式図(平面図)である。 図6は、図5に示すジャイロセンサのA−A線に沿った矢視断面図である。 図7は、本発明の一実施形態に係る圧力センサの模式図である。 図8は、本発明の一実施形態に係る脈波センサの模式図である。 図9は、本発明の一実施形態に係るハードディスクドライブの模式図である。 図10は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ装置の模式図である。 図11は、実施例1〜12及び比較例1〜4其々のx及びc/aを示すグラフである。 図12は、実施例1〜12及び比較例1〜4其々のx及びg33を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態の詳細が説明される。ただし、本発明は下記実施形態に限定されない。図面において、同一又は同等の要素は、同一の符号が付される。図1中の(a)及び図1中の(b)に示されるX軸,Y軸及びZ軸は、互いに直交する三つの座標軸である。
(圧電薄膜、及び圧電薄膜素子)
本実施形態に係る電薄膜素子は、圧電薄膜を備える。例えば、図1中の(a)に示されるように、本実施形態に係る圧電薄膜素子10は、単結晶基板1と、単結晶基板1に重なる第一電極層2(下部電極層)と、第一電極層2に重なる圧電薄膜3と、圧電薄膜3に重なる第二電極層4(上部電極層)と、を備えてよい。圧電薄膜素子10は第一中間層5を備えてよく、第一中間層5が単結晶基板1と第一電極層2との間に配置されてよく、第一電極層2が第一中間層5の表面に直接重なっていてよい。圧電薄膜素子10が第二中間層6を備えてよく、第二中間層6が第一電極層2と圧電薄膜3の間に配置されてよく、圧電薄膜3が第二中間層6の表面に直接重なっていてよい。単結晶基板1、第一中間層5、第一電極層2、第二中間層6、圧電薄膜3及び第二電極層4其々の厚みは均一であってよい。図1中の(b)に示されるように、圧電薄膜3の表面の法線方向dnは、単結晶基板1の表面の法線方向Dと略平行であってよい。
圧電薄膜素子10の変形例は、単結晶基板1を備えなくてよい。例えば、第一電極層2及び圧電薄膜3の形成後、単結晶基板1が除去されてよい。圧電薄膜素子10の変形例は、第二電極層4を備えなくてもよい。例えば、第二電極層を備えない圧電薄膜素子が、製品として、電子機器の製造業者に供給された後、電子機器の製造過程において、第二電極層が圧電薄膜素子に付加されてよい。単結晶基板1が電極として機能する場合、圧電薄膜素子10の変形例は、第一電極層2を備えなくてもよい。つまり圧電薄膜素子10の変形例は、単結晶基板1と、単結晶基板1に重なる圧電薄膜3と、を備えてよい。圧電薄膜3が単結晶基板1に直接重なっていてよい。圧電薄膜3が、第一中間層5及び第二中間層6のうち少なくとも一つの中間層を介して単結晶基板1に重なっていてもよい。
圧電薄膜3は、金属酸化物を含む。金属酸化物は、ビスマス(Bi)、カリウム(K)、チタン(Ti)及び元素Mを含む。元素Mは、マグネシウム(Mg)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも一種である。金属酸化物は、圧電薄膜3の主成分である。圧電薄膜3全体に対する金属酸化物の割合は、99%モル以上100モル%以下であってよい。圧電薄膜3は、金属酸化物のみからなっていてよい。圧電薄膜3は、強誘電性薄膜であってよい。
少なくとも一部の金属酸化物は、常温又はキュリー温度以下である温度において、ペロブスカイト構造を有する正方晶(tetragonal crystal)である。全ての金属酸化物が、ペロブスカイト構造を有する正方晶であってよい。ペロブスカイト構造を有する正方晶の単位胞は、図2に示される。単位胞ucのAサイトに位置する元素は、Bi又はKである。単位胞ucのBサイトに位置する元素、Ti、Mg又はNiである。圧電薄膜3は、上記ペロブスカイト構造を有する正方晶のみからなっていてよい。圧電薄膜3の圧電性が損なわれない限りにおいて、圧電薄膜3は、常温又はキュリー温度以下である温度において、上記ペロブスカイト構造を有する立方晶(cubic crystal)及び上記ペロブスカイト構造を有する菱面体晶(rhombohedral crystal)からなる群より選ばれる少なくとも一種を更に含んでもよい。
少なくとも一部の正方晶の(001)面は、圧電薄膜3の表面の法線方向dnにおいて配向している。つまり、正方晶の[001](結晶面の方位)が、圧電薄膜3の表面の法線方向dnと略平行であってよい。圧電薄膜3は、複数の正方晶を含んでよく、全ての正方晶の(001)面が、圧電薄膜3の表面の法線方向dnにおいて配向していてよい。Bi、K、Ti、元素M及び酸素からなる上記正方晶の自発分極方向は、[001]である。したがって、正方晶の(001)面が圧電薄膜3の表面の法線方向dnにおいて配向していることにより、圧電薄膜3が圧電薄膜3の表面の法線方向dnにおいて分極され易く、圧電薄膜3が大きい圧電定数g33を有することができる。以下に記載の結晶配向性とは、ペロブスカイト構造を有する正方晶の(001)面が、圧電薄膜3の表面の法線方向dnにおいて配向していることを意味する。
圧電薄膜3が大きい圧電定数(g33)を有し易いことから、正方晶の(001)面が他の結晶面よりも優先的に圧電薄膜3の表面の法線方向dnにおいて配向していることが好ましい。例えば、(001)面の配向度は、(110)面及び(111)面其々の配向度よりも高いことが好ましい。(001)面の配向の程度は、配向度によって定量化されてよい。(001)面の配向度は、(001)面に由来する回折X線のピークに基づいて算出されてよい。(001)面に由来する回折X線のピークは、圧電薄膜3の表面におけるOut оf Plane測定によって測定されてよい。(001)面の配向度は、100×I(001)/ΣI(hkl)と表されてよい。ΣI(hkl)は、I(001)+I(110)+I(111)である。I(001)は、(001)面に由来する回折X線のピークの最大値である。I(110)は、(110)面に由来する回折X線のピークの最大値である。I(111)は、(111)面に由来する回折X線のピークの最大値である。(001)面の配向度は、100×S(001)/ΣS(hkl)と表されてもよい。ΣS(hkl)は、S(001)+S(110)+S(111)である。S(001)は、(001)面に由来する回折X線のピークの面積(ピークの積分)である。S(110)は、(110)面に由来する回折X線のピークの面積(ピークの積分)である。S(111)は、(111)面に由来する回折X線のピークの面積(ピークの積分)である。(001)面の配向の程度は、ロットゲーリング(Lotgering)法に基づく配向度Fによって定量化されてもよい。(001)面の配向度が大きいほど圧電薄膜の圧電定数が大きいことから、(001)面の配向度は、70%以上100%以下、好ましくは80%以上100%以下、より好ましくは90%以上100%以下であってよい。
図2中のaは、正方晶の(100)面の間隔に相当する格子定数である。図2中のbは、正方晶の(010)面の間隔に相当する格子定数である。図2中のcは、正方晶の(001)面の間隔に相当する格子定数である。a及びbは互いに等しい。cはaよりも大きく、cはbよりも大きい。aは、例えば、約3.92Åであってよい。
圧電薄膜3の表面には面内応力が作用し易いため、圧電薄膜3は面内方向において収縮し易い。その結果、圧電薄膜3の面内方向における金属酸化物の格子定数a及びb其々が、圧電薄膜3の表面の法線方向dnにおける格子定数cよりも小さくなり易い。つまり、面内応力により、c/aが増加する。c/aの増加に伴い、圧電薄膜3は金属酸化物の正方晶を含み易く、圧電薄膜3が[001](法線方向dn)において分極され易く、圧電薄膜3の比誘電率が低下し易い。その結果、圧電薄膜3は優れた圧電性及び強誘電性を有することができる。
上記の結晶配向性は圧電薄膜3に固有の特徴である。薄膜とは、気相成長法又は溶液法によって形成される結晶質の膜である。圧電薄膜3とは対照的に、圧電体のバルクの組成が圧電薄膜3の組成と同じであったとしても、圧電体のバルクは圧電薄膜3と同様の結晶配向性を有することは困難であり、圧電体のバルクが結晶配向性に起因する圧電性を有することは困難である。圧電体のバルクとは、圧電体の必須元素を含む粉末の焼結体(セラミックス)である。圧電体のバルクの製造において、焼結体を構成する多数の結晶の構造及び配向性を制御することは困難である。また圧電体のバルクでは面内応力に起因する結晶構造の歪みが起き難い。
c/aは、1.035以上1.060以下である。c/aが1.035以上1.060以下であることにより、圧電薄膜3のd33が増加し易く、圧電薄膜3の比誘電率が低下し易く、圧電薄膜3は大きい圧電定数g33を有することができる。圧電薄膜3が大きい圧電定数g33を有し易いことから、c/aは、1.048以上1.060以下、1.052以上1.060以下、又は1.057以上1.060以下であってよい。
圧電薄膜3に含まれる金属酸化物は、下記化学式1で表される。下記化学式1は、下記化学式1aと実質的に同じである。圧電薄膜3が大きい圧電定数(g33)を有し易いことから、圧電薄膜3は、下記化学式1で表される金属酸化物のみからなっていてよい。
(1−x)(Biα1−α)TiO‐xBi(MβTi1−β)O (1)
(Biα1−α1−xBiTi1−x(MβTi1−β3±δ (1a)
上記化学式1中のxは、0.200以上0.650以下である。上記化学式1中のαは、0より大きく1未満である。上記化学式1中のβは、0より大きく1未満である。圧電薄膜3が大きいg33を有し易いことから、αは0.5であってよく、βは0.5であってよい。上記化学式1中のMは、MgγNi1−γと表される。γは、0以上1以下である。金属酸化物中のBi及びKのモル数の合計値が[A]と表されてよく、金属酸化物中のTi及び元素Mのモル数の合計値が[B]と表されてよく、[A]/[B]は1.0であってよい。金属酸化物がペロブスカイト構造を有し得る限りにおいて、[A]/[B]は1.0以外の値であってよい。つまり、[A]/[B]は1.0未満であってよく、1.0より大きくてもよい。上記化学式1aにおけるδは、0以上である。金属酸化物がペロブスカイト構造を有し得る限りにおいてδは、0以外の値であってよい。例えば、δは、0より大きく1.0以下であってよい。δは、例えば、ペロブスカイト構造のAサイトのイオン及びBサイトのイオン其々の価数から算出されてよい。各イオンの価数は、X線光電子分光(XPS)法により測定されてよい。圧電薄膜3の圧電性が損なわれない限りにおいて、圧電薄膜3は、Bi、K、Ti、元素M及びOに加えて、他の元素を含んでもよい。
上記化学式1中のxが0.200以上0.650以下であることにより、c/aが1.035以上1.060以下であることが可能である。その結果、圧電薄膜3が強誘電性に優れ、圧電薄膜3が大きい圧電定数(g33)を有することができる。同様の理由から、xは、0.344以上0.636以下、0.381以上0.603以下、又は0.432以上0.554以下であってもよい。
以下では、(Biα1−α)TiOは、BKTと表記される。Bi(MβTi1−β)Oは、BMTと表記される。上記化学式1で表される組成を有する金属酸化物は、BKT‐BMTと表記される。BKT、BMT、及びBKT‐BMT其々の結晶は、ペロブスカイト構造を有している。BKTの結晶は、常温において正方晶であり、BKTは強誘電体である。BMTの結晶は、常温において菱面体晶であり、BMTは強誘電体である。BKT‐BMTからなるバルクは、常温において疑似立方晶を含む。
xが0.05以上0.10以下である範囲において、BKT‐BMTからなるバルクは、モルフォトロピック相境界(Morphotropic PhaseBoundary,MPB)を有しており、バルクに含まれる結晶は疑似立方晶である。BKT‐BMTからなるバルクの場合、xの増加に伴ってc/aは減少する傾向があり、MPB近傍においてc/aは約1である。バルクとは対照的に、圧電薄膜3に含まれるBKT‐BMTは、xが0.200以上0.650以下である範囲全域において、正方晶であり易い。圧電薄膜3に含まれるBKT‐BMTの場合、0.200から約0.500までの範囲におけるxの増加に伴い、c/aは増加する傾向がある。MPBにおいて安定化されるバルクとは対照的に、圧電薄膜3に含まれるBKT‐BMTの結晶構造がc/aの増加に伴って不安定になることにより、圧電薄膜3の圧電性及び強誘電性が向上する。
圧電薄膜3の厚みは、例えば、10nm以上10μm以下であってよい。圧電薄膜3の面積は、例えば、1μm以上500mm以下であってよい。単結晶基板1、第一中間層5、第一電極層2、第二中間層6、及び第二電極層4其々の面積は、圧電薄膜3の面積と同じであってよい。
圧電薄膜の組成は、例えば、蛍光X線分析法(XRF法)又は誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法によって分析されてよい。圧電薄膜の結晶構造及び結晶配向性は、X線回折(XRD)法によって特定されてよい。
圧電薄膜3は、例えば、以下の方法により形成されてよい。
圧電薄膜3の原料としては、圧電薄膜3と同様の組成を有するターゲットが用いられてよい。ターゲットの作製方法は、次の通りである。
出発原料として、例えば、酸化ビスマス、炭酸カリウム、酸化チタン及び元素Mの酸化物其々の粉末が用いられてよい。元素Mの酸化物は、酸化マグネシウム及び酸化ニッケルのうち少なくともいずれかであってよい。出発原料として、上記の酸化物に代えて、炭酸塩又はシュウ酸塩等のように、焼成により酸化物になる物質が用いられてよい。これらの出発原料を100℃以上で十分に乾燥した後、Bi、K、Ti及び元素M其々のモル数が、上記化学式1で規定された範囲内になるように、各出発原料が秤量される。後述される気相成長法において、ターゲット中のビBi及びKは、他の元素に比べて揮発し易い。したがって、ターゲット中のBiのモル比は、圧電薄膜3中のBiのモル比よりも高い値に調整されてよい。ターゲット中のKのモル比は、圧電薄膜3中のBiのモル比よりも高い値に調整されてよい。
秤量された出発原料は、有機溶媒又は水の中で十分に混合される。混合時間は、5時間以上20時間以下であってよい。混合手段は、ボールミルであってよい。混合後の出発原料を、十分乾燥した後、出発原料はプレス機で成形される。成形された出発原料が仮焼き(calcine)されることより、仮焼物が得られる。仮焼きの温度は、750℃以上900℃以下であってよい。仮焼きの時間は、1時間以上3時間以下であってよい。仮焼物は、有機溶媒又は水の中で粉砕される。粉砕時間は、5時間以上30時間以下であってよい。粉砕手段は、ボールミルであってよい。粉砕された仮焼物の乾燥後、バインダー溶液が加えられた仮焼物を造粒することにより、仮焼物の粉が得られる。仮焼物の粉のプレス成形により、ブロック状の成形体が得られる。
ブロック状の成形体を加熱することにより、成形体中のバインダーを揮発させる。加熱温度は、400℃以上800℃以下であってよい。加熱時間は、2時間以上4時間下であってよい。
続いて、成形体を焼成(sinter)する。焼成温度は、800℃以上1100℃以下であってよい。焼成時間は、2時間以上4時間以下であってよい。焼成過程における成形体の昇温速度及び降温速度は、例えば50℃/時間以上300℃/時間以下であってよい。
以上の工程により、ターゲットが得られる。ターゲットに含まれる金属酸化物の結晶粒の平均粒径は、例えば、1μm以上20μm以下であってよい。
上記ターゲットを用いた気相成長法によって、圧電薄膜3が形成されてよい。気相成長法では、真空雰囲気下において、ターゲットを構成する元素を蒸発させる。蒸発した元素が、第二中間層6、第一電極層2、又は単結晶基板1のいずれかの表面に付着・堆積することにより、圧電薄膜3が成長する。気相成長法は、例えば、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、化学蒸着法(Chemical Vapor Deposition)法、又はパルスレーザー堆積(Pulsed−laser deposition)法であればよい。以下では、パルスレーザー堆積法が、PLD法と表記される。これらの気相成長法を用いることによって、原子レベルでの緻密な圧電薄膜3を形成することが可能であり、圧電薄膜3中における元素の偏析が抑制される。気相成長法の種類に依って、励起源が異なる。スパッタリング法の励起源は、Arプラズマである。電子ビーム蒸着法の励起源は、電子ビームである。PLD法の励起源は、レーザー光(例えば、エキシマレーザー)である。これらの励起源がターゲットに照射されると、ターゲットを構成する元素が蒸発する。
上記の気相成長法の中でも、以下の点において、PLD法が比較的に優れている。PLD法では、パルスレーザーにより、ターゲットを構成する各元素を、一瞬で斑なくプラズマ化させることができる。したがって、ターゲットとほぼ同じ組成を有する圧電薄膜3が形成され易い。またPLD法では、レーザーのパルス数(繰り返し周波数)を変えることで、圧電薄膜3の厚みを制御し易い。
圧電薄膜3はエピタキシャル膜であってよい。つまり、圧電薄膜3は、エピタキシャル成長によって形成されていてよい。エピタキシャル成長により、結晶配向性に優れた圧電薄膜3が形成され易い。圧電薄膜3がPLD法によって形成される場合、圧電薄膜3がエピタキシャル成長によって形成され易い。
PLD法では、真空チャンバー内における単結晶基板1及び第一電極層2を加熱しながら、圧電薄膜3が形成されてよい。単結晶基板1及び第一電極層2の温度(成膜温度)は、例えば、300℃以上800℃以下、500℃以上700℃以下、又は500℃以上600℃以下であればよい。成膜温度が高いほど、単結晶基板1又は第一電極層2の表面の清浄度が改善され、圧電薄膜3の結晶性が高まり、その結晶面の配向度が高まり易い。成膜温度が高過ぎる場合、Bi又はKが圧電薄膜3から脱離し易く、圧電薄膜3の組成が制御され難い。
PLD法では、真空チャンバー内の酸素分圧は、例えば、10mTorrより大きく400mTorr未満、15mTorr以上300mTorr以下、又は20mTorr以上200mTorr以下であってよい。換言すると、真空チャンバー内の酸素分圧は、例えば、1Paより大きく53Pa未満、2Pa以上40Pa以下、又は3Pa以上30Pa以下であってよい。酸素分圧が上記範囲内に維持されることにより、単結晶基板1の上に堆積したBi,K、Ti及び元素Mが十分に酸化され易い。酸素分圧が高過ぎる場合、圧電薄膜3の成長速度が低下し易く、圧電薄膜3の結晶面の配向度が低下し易い。
PLD法で制御される上記以外のパラメータは、例えば、レーザー発振周波数、及び基板・ターゲット間の距離などである。これらのパラメータの制御によって、圧電薄膜3の結晶構造及び結晶配向性が制御され易い。例えば、レーザー発振周波数が10Hz以下である場合、圧電薄膜3の結晶面の配向度が高まり易い。
圧電薄膜3が成長した後、圧電薄膜3のアニール処理(加熱処理)が行われてよい。アニール処理における圧電薄膜3の温度(アニール温度)は、例えば、300℃以上1000℃以下、600℃以上1000℃以下、又は850℃以上1000℃以下であってよい。圧電薄膜3のアニール処理により、圧電薄膜3の圧電性が更に向上する傾向がある。特に850℃以上1000℃以下でのアニール処理により、圧電薄膜3の圧電性が向上し易い。ただし、アニール処理は必須でない。
単結晶基板1は、例えば、Siの単結晶からなる基板、又はGaAs等の化合物半導体の単結晶からなる基板であってよい。単結晶基板1は、MgO又はペロブスカイト型酸化物(例えばSrTiO)等の酸化物の単結晶からなる基板であってもよい。単結晶基板1の厚みは、例えば、10μm以上1000μm以下であってよい。単結晶基板1が導電性を有する場合、単結晶基板1が電極として機能するので、第一電極層2はなくてもよい。つまり、導電性を有する単結晶基板1は、例えば、ニオブ(Nb)がドープされたSrTiOの単結晶であってよい。
単結晶基板1の結晶方位は、単結晶基板1の表面の法線方向Dと等しくてよい。つまり、単結晶基板1の表面は、単結晶基板1の結晶面に平行であってよい。単結晶基板1は一軸配向基板であってよい。単結晶基板1(例えばSi)の(100)面が単結晶基板1の表面と平行である場合、圧電薄膜3中の正方晶の(001)面が、圧電薄膜3の表面の法線方向dnにおいて配向し易い。
上述の通り、第一中間層5が、単結晶基板1と第一電極層2との間に配置されていてよい。第一中間層5は、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、及び酸化ジルコニウム(ZrO)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。第一中間層5を介することにより、第一電極層2が単結晶基板1に密着し易い。第一中間層5は、結晶質であってよい。第一中間層5の結晶面が、単結晶基板1の表面の法線方向Dにおいて配向していてよい。単結晶基板1の結晶面と、第一中間層5の結晶面と、の両方が、単結晶基板1の表面の法線方向Dにおいて配向してよい。第一中間層5の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、印刷法、スピンコート法、又はゾルゲル法であってよい。
第一中間層5は、ZrO及び希土類元素の酸化物を含んでよい。第一中間層5が、ZrO及び希土類元素の酸化物を含むことにより、白金の結晶からなる第一電極層2が第一中間層5の表面に形成され易く、白金の結晶の(002)面が、第一電極層2の表面の法線方向において配向し易く、白金の結晶の(200)面が、第一電極層2の表面の面内方向において配向し易い。希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。第一中間層5は、イットリア安定化ジルコニア(Yが添加されたZrO)からなっていてよい。第一中間層5がイットリア安定化ジルコニアからなることにより、白金の結晶からなる第一電極層2が第一中間層5の表面に形成され易く、白金の結晶の(002)面が、第一電極層2の表面の法線方向において配向し易く、白金の結晶の(200)面が、第一電極層2の表面の面内方向において配向し易い。同様の理由から、第一中間層5は、ZrOからなる第一層と、Yからなる第二層とを有してよい。第一層は、単結晶基板1の表面に直接積層されてよく、第二層は、第一層の表面に直接積層されてよく、第一電極層2は、第二層の表面に直接積層されてよい。
第一電極層2は、例えば、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Rh(ロジウム)、Au(金)、Ru(ルテニウム)、Ir(イリジウム)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、及びNi(ニッケル)からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属からなっていてよい。第一電極層2は、例えば、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)、ニッケル酸ランタン(LaNiO)、又はコバルト酸ランタンストロンチウム((La,Sr)CoO)等の導電性金属酸化物からなっていてもよい。第一電極層2は、結晶質であってよい。第一電極層2の結晶面が、単結晶基板1の法線方向Dにおいて配向していてよい。第一電極層2の結晶面は、単結晶基板1の表面と略平行であってよい。単結晶基板1の結晶面と、第一電極層2の結晶面と、の両方が、単結晶基板1の法線方向Dにおいて配向していてよい。第一電極層2の結晶面が、圧電薄膜3中において配向する正方晶の(001)面と略平行であってよい。第一電極層2の厚みは、例えば、1nm以上1.0μm以下であってよい。第一電極層2の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、印刷法、スピンコート法、又はゾルゲル法であってよい。印刷法、スピンコート法、又はゾルゲル法の場合、第一電極層2の結晶性を高めるために、第一電極層2の加熱処理(アニーリング)が行われてよい。
第一電極層2が、白金の結晶を含んでよい。第一電極層2が、白金の結晶のみからなっていてよい。白金の結晶は、面心立方格子構造を有する立方晶である。白金の結晶の(002)面が、第一電極層2の表面の法線方向において配向していてよく、白金の結晶の(200)面が、第一電極層2の表面の面内方向において配向していてよい。換言すれば、白金の結晶の(002)面が、第一電極層2の表面に略平行であってよく、白金の結晶の(200)面が、第一電極層2の表面に略垂直であってよい。第一電極層2を構成する白金の結晶の(002)面及び(200)面が上記の配向性を有することにより、圧電薄膜3が、第一電極層2の表面においてエピタキシャルに成長し易く、圧電薄膜3がペロブスカイト型の正方晶を含み易く、正方晶の(001)面が圧電薄膜3の表面の法線方向dnにおいて優先的に配向し易い。第一電極層2の表面は、圧電薄膜3の表面に略平行であってよい。つまり、第一電極層2の表面の法線方向は、圧電薄膜3の表面の法線方向dnと略平行であってよい。
上述の通り、第二中間層6が、第一電極層2と圧電薄膜3との間に配置されていてよい。第二中間層6は、例えば、SrRuO、LaNiO及び(La,Sr)CoOからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。第二中間層6を介することにより、圧電薄膜3が第一電極層2に密着し易い。第二中間層6は、結晶質であってよい。第二中間層6の結晶面が、単結晶基板1の表面の法線方向Dにおいて配向していてよい。単結晶基板1の結晶面と、第一中間層の結晶面と、の両方が、単結晶基板1の表面の法線方向Dにおいて配向してよい。第二中間層6の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、印刷法、スピンコート法、又はゾルゲル法であってよい。
第二電極層4は、例えば、例えば、Pt、Pd、Rh、Au、Ru、Ir、Mo、Ti、Ta、及びNiからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属からなっていてよい。第二電極層4は、例えば、LaNiO、SrRuO及び(La,Sr)CoOからなる群より選ばれる少なくとも一種の導電性金属酸化物からなっていてよい。第二電極層4は、結晶質であってよい。第二電極層4の結晶面が、単結晶基板1の法線方向Dにおいて配向していてよい。第二電極層4の結晶面は、単結晶基板1の表面と略平行であってよい。第二電極層4の結晶面は、圧電薄膜3中において配向する正方晶の(001)面と略平行であってよい。第二電極層4の厚みは、例えば、1nm以上1.0μm以下であってよい。第二電極層4の形成方法は、スパッタリング法、真空蒸着法、印刷法、スピンコート法、又はゾルゲル法であってよい。印刷法、スピンコート法、又はゾルゲル法の場合、第二電極層4の結晶性を高めるために、第二電極層4の加熱処理(アニーリング)が行われてもよい。
第三中間層が、圧電薄膜3と第二電極層4との間に配置されていてよい。第三中間層を介することにより、第二電極層4が圧電薄膜3に密着し易い。第三中間層の組成、結晶構造及び形成方法は、第二中間層と同じであってよい。
圧電薄膜素子10の表面の少なくとも一部又は全体が、保護膜によって被覆されていてよい。保護膜による被覆により、例えば圧電薄膜素子10の耐湿性が向上する。
本実施形態に係る圧電薄膜素子の用途は、多岐にわたる。圧電薄膜素子は、例えば、圧電アクチュエータに用いられてよい。圧電アクチュエータは、例えば、ヘッドアセンブリ、ヘッドスタックアセンブリ、又はハードディスクドライブに用いられてもよい。圧電アクチュエータは、例えば、プリンタヘッド、又はインクジェットプリンタ装置に用いられてもよい。圧電薄膜素子は、例えば、圧電センサに用いられてもよい。大きいg33を有する圧電薄膜3は、圧電センサに適している。圧電センサは、例えば、ジャイロセンサ、圧力センサ、脈波センサ、又はショックセンサであってよい。圧電薄膜素子は、例えば、マイクロフォンへ適用されてもよい。圧電薄膜素子は、微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems;MEMS)の一部に応用されてよい。
(圧電アクチュエータ)
図3は、ハードディスクドライブ(HDD)に搭載されるヘッドアセンブリ200を示す。ヘッドアセンブリ200は、ベースプレート9、ロードビーム11、フレクシャ17、第1及び第2の圧電薄膜素子100、及びヘッドスライダ19を備えている。第1及び第2の圧電薄膜素子100は、ヘッドスライダ19用の駆動素子である。ヘッドスライダ19は、ヘッド素子19aを有する。
ロードビーム11は、ベースプレート9に固着された基端部11bと、この基端部11bから延在する第1の板バネ部11c及び第2の板バネ部11dと、板バネ部11c及び11dの間に形成された開口部11eと、板バネ部11c及び11dに連続して直線的に延在するビーム主部11fと、を備えている。第1の板バネ部11c及び第2の板バネ部11dは、先細りになっている。ビーム主部11fも、先細りになっている。
第1及び第2の圧電薄膜素子100は、所定の間隔をもって、フレクシャ17の一部である配線用フレキシブル基板15上に配置されている。ヘッドスライダ19は、フレクシャ17の先端部に固定されており、第1及び第2の圧電薄膜素子100の伸縮に伴って回転運動する。
図4は、プリンタヘッド用の圧電アクチュエータ300を示す。圧電アクチュエータ300は、基体20と、基体20に重なる絶縁膜23と、絶縁膜23に重なる単結晶基板14と、単結晶基板14に重なる圧電薄膜25と、圧電薄膜25に重なる上部電極層26(第二電極層)と、を備える。単結晶基板14は導電性を有し、下部電極層としての機能も有する。下部電極層とは、上記の第一電極層と言い換えてよい。上部電極層とは、上記の第二電極層と言い換えてよい。
所定の吐出信号が供給されず、単結晶基板14(下部電極層)と上部電極層26との間に電界が印加されていない場合、圧電薄膜25は変形しない。吐出信号が供給されていない圧電薄膜25に隣り合う圧力室21内では、圧力変化が生じず、そのノズル27からインク滴は吐出されない。
一方、所定の吐出信号が供給され、単結晶基板14(下部電極層)と上部電極層26との間に一定電界が印加された場合、圧電薄膜25が変形する。圧電薄膜25の変形によって絶縁膜23が大きくたわむので、圧力室21内の圧力が瞬間的に高まり、ノズル27からインク滴が吐出される。
(圧電センサ)
図5及び図6は、圧電センサの一種であるジャイロセンサ400を示す。ジャイロセンサ400は、基部110と、基部110の一面に接続される一対のアーム120及び130と、を備える。一対のアーム120及び130は、音叉振動子である。つまり、ジャイロセンサ400は、音叉振動子型の角速度検出素子である。このジャイロセンサ400は、上述の圧電薄膜素子を構成する圧電薄膜30、上部電極層31、及び単結晶基板32を、音叉型振動子の形状に加工して得られたものである。基部110とアーム120及び130は、圧電薄膜素子と一体化されている。単結晶基板32は、導電性を有し、下部電極層としての機能も有する。
一方のアーム120の第一の主面には、駆動電極層31a及び31bと、検出電極層31dとが、形成されている。同様に、他方のアーム130の第一の主面には、駆動電極層31a及び31bと、検出電極層31cとが形成されている。各電極層31a、31b、31c、31dは、上部電極層31をエッチングにより所定の電極の形状に加工することにより得られる。
単結晶基板32(下部電極層)は、基部110、並びにアーム120及び130のそれぞれの第二の主面(第一の主面の裏面)の全体に形成されている。単結晶基板32(下部電極層)は、ジャイロセンサ400のグランド電極として機能する。
アーム120及び130其々の長手方向をZ方向と規定し、アーム120及び130の主面を含む平面をXZ平面と規定することにより、XYZ直交座標系が定義される。
駆動電極層31a、31bに駆動信号を供給すると、二つのアーム120、130は、面内振動モードで励振する。面内振動モードとは、二つのアーム120、130の主面に平行な向きに二つのアーム120、130が励振するモードである。例えば、一方のアーム120が−X方向に速度V1で励振しているとき、他方のアーム130は+X方向に速度V2で励振する。
この状態で、ジャイロセンサ400にZ軸を回転軸とする角速度ωの回転が加わると、アーム120、130のそれぞれに対して、速度方向に直交する向きにコリオリ力が作用する。その結果、アーム120、130が、面外振動モードで励振し始める。面外振動モードとは、二つのアーム120、130の主面に直交する向きに二つのアーム120、130が励振するモードである。例えば、一方のアーム120に作用するコリオリ力F1が−Y方向であるとき、他方のアーム130に作用するコリオリ力F2は+Y方向である。
コリオリ力F1、F2の大きさは、角速度ωに比例するため、コリオリ力F1、F2によるアーム120、130の機械的な歪みを圧電薄膜30によって電気信号(検出信号)に変換し、これを検出電極層31c、31dから取り出すことにより、角速度ωが求められる。
図7は、圧電センサの一種である圧力センサ500を示す。圧力センサ500は、圧電薄膜素子40と、圧電薄膜素子40を支える支持体44と、電流増幅器46と、電圧測定器47とから構成されている。圧電薄膜素子40は、共通電極層41と、共通電極層41に重なる圧電薄膜42と、圧電薄膜42に重なる個別電極層43とからなる。共通電極層41は、導電性の単結晶基板である。共通電極層41と支持体44とに囲まれた空洞45は、圧力に対応する。圧力センサ500に外力がかかると圧電薄膜素子40がたわみ、電圧測定器47で電圧が検出される。
図8は、圧電センサの一種である脈波センサ600を示す。脈波センサ600は、圧電薄膜素子50と、圧電薄膜素子50を支える支持体54と、電圧測定器55とから構成されている。圧電薄膜素子50は、共通電極層51と、共通電極層51に重なる圧電薄膜52と、圧電薄膜52に重なる個別電極層53とからなる。共通電極層51は、導電性の単結晶基板である。脈波センサ600の支持体54の裏面(圧電薄膜素子50が搭載されていない面)を生体の動脈上に当接させると、生体の脈による圧力で支持体54と圧電薄膜素子50がたわみ、電圧測定器55で電圧が検出される。
(ハードディスクドライブ)
図9は、図3に示すヘッドアセンブリが搭載されたハードディスクドライブ700を示す。図9のヘッドアセンブリ65は、図3のヘッドアセンブリ200と同じである。
ハードディスクドライブ700は、筐体60と、筐体60内に設置されたハードディスク61(記録媒体)と、ヘッドスタックアセンブリ62と、を備えている。ハードディスク61は、モータによって回転させられる。ヘッドスタックアセンブリ62は、ハードディスク61へ磁気情報を記録したり、ハードディスク61に記録された磁気情報を再生したりする。
ヘッドスタックアセンブリ62は、ボイスコイルモータ63と、支軸に支持されたアクチュエータアーム64と、アクチュエータアーム64に接続されたヘッドアセンブリ65と、を有する。アクチュエータアーム64は、ボイスコイルモータ63により、支軸周りに回転自在である。アクチュエータアーム64は、複数のアームに分かれており、各アームそれぞれにヘッドアセンブリ65が接続されている。つまり、複数のアーム及びヘッドアセンブリ65が支軸に沿って積層されている。ヘッドアセンブリ65の先端部には、ハードディスク61に対向するようにヘッドスライダ19が取り付けられている。
ヘッドアセンブリ65(200)は、ヘッド素子19aを2段階で変動させる。ヘッド素子19aの比較的大きな移動は、ボイスコイルモータ63によるヘッドアセンブリ65及びアクチュエータアーム64の全体の駆動によって、制御される。ヘッド素子19aの微小な移動は、ヘッドアセンブリ65の先端部に位置するヘッドスライダ19の駆動により制御する。
(インクジェットプリンタ装置)
図10は、インクジェットプリンタ装置800を示す。インクジェットプリンタ装置800は、プリンタヘッド70と、本体71と、トレイ72と、ヘッド駆動機構73と、を備えている。図10のプリンタヘッド70は、図4の圧電アクチュエータ300を有している。
インクジェットプリンタ装置800は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの計4色のインクカートリッジを備えている。インクジェットプリンタ装置800によるフルカラー印刷が可能である。インクジェットプリンタ装置800の内部には、専用のコントローラボード等が搭載されている。コントローラボード等は、プリンタヘッド70によるインクの吐出のタイミング、及びヘッド駆動機構73の走査を制御する。本体71の背面にはトレイ72が設けられ、トレイ72の一端側にはオートシートフィーダ(自動連続給紙機構)76が設けられている。オートシートフィーダ76が、記録用紙75を自動的に送り出し、正面の排出口74から記録用紙75を排紙する。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1の圧電薄膜素子の作製には、Siからなる単結晶基板が用いられた。Siの(100)面は、単結晶基板の表面と平行であった。単結晶基板は、20mm×20mmの正方形であった。単結晶基板の厚みは、500μmであった。
真空チャンバー内で、ZrO及びYからなる結晶質の第一中間層が、単結晶基板の表面全体に形成された。第一中間層は、スパッタリング法により形成された。第一中間層の厚みは、30nmであった。
真空チャンバー内で、Ptの結晶からなる第一電極層が、第一中間層の表面全体に形成された。第一電極層は、スパッタリング法により形成された。第一電極層の厚みは、200nmであった。第一電極層の形成過程における単結晶基板の温度(成膜温度)は、500℃に維持した。
第一電極層の表面におけるOut оf Plane測定により、第一電極層のX線回折(XRD)パターンが測定された。第一電極層の表面におけるIn Plane測定により、第一電極層のXRDパターンが測定された。これらのXRDパターンの測定には、株式会社リガク製のX線回折装置(SmartLab)が用いられた。XRDパターン中の各ピーク強度がバックグラウンド強度に対して少なくとも3桁以上高くなるように、測定条件が設定された。Out оf Plane測定により、Ptの結晶の(002)面の回折X線のピークが検出された。つまり、Ptの結晶の(002)面が、第一電極層の表面の法線方向において配向した。In Plane測定により、Ptの結晶の(200)面の回折X線のピークが検出された。つまり、Ptの結晶の(200)面が、第一電極層の表面の面内方向において配向していた。
真空チャンバー内で、圧電薄膜が第一電極層の表面全体に形成された。圧電薄膜は、PLD法により形成された。圧電薄膜の厚みは、2000nmであった。圧電薄膜の形成過程における単結晶基板の温度(成膜温度)は、500℃に維持した。圧電薄膜の形成過程における真空チャンバー内の酸素分圧は、10Paに維持された。圧電薄膜の原料には、ターゲット(原料粉末の焼結体)が用いられた。ターゲットの作製の際には、目的とする圧電薄膜の組成に応じて、原料粉末(酸化ビスマス、炭酸カリウム、酸化チタン、及び酸化マグネシウム)の配合比が調整された。目的とする圧電薄膜の組成は、下記化学式1Aで表されるものであった。下記化学式1A中のxは、下記表1に示す値であった。
(1−x)Bi0.50.5TiO‐xBiMg0.5Ti0.5 (1A)
圧電薄膜の組成が、蛍光X線分析法(XRF法)により分析された。分析には、日本フィリップス株式会社製の装置PW2404を用いた。分析の結果、実施例1の圧電薄膜の組成は、上記化学式1Aで表され、上記化学式1Aにおけるxは、下記表1に示す値であった。つまり圧電薄膜の組成は、ターゲットの組成とほぼ一致した。
圧電薄膜の表面におけるOut оf Plane測定により、圧電薄膜のXRDパターンが測定された。圧電薄膜の表面におけるIn Plane測定により、圧電薄膜のXRDパターンが測定された。XRDパターンの測定装置及び測定条件は、上記と同様であった。
圧電薄膜のXRDパターンは、圧電薄膜がペロブスカイト型結晶から構成されていることを示していた。Out оf Plane測定により、ペロブスカイト型結晶の(001)面の回折X線のピークが検出された。つまり、ペロブスカイト型結晶の(001)面が、圧電薄膜の表面の法線方向において配向していた。XRDパターンに基づき、ペロブスカイト型結晶の(001)面の配向度が算出された。(001)面の配向度は、100×I(001)/ΣI(hkl)と表される。配向度の定義の詳細は上述の通りである。実施例1の(001)面の配向度は下記表1に示される。
Out оf Plane測定により、圧電薄膜の表面の法線方向におけるペロブスカイト型結晶の格子定数cが得られた。格子定数cは、圧電薄膜の表面に平行な結晶面の間隔であり、ペロブスカイト型結晶の(001)面の間隔である。In Plane測定により、圧電薄膜の表面に平行な方向におけるペロブスカイト型結晶の格子定数a及びbが得られた。格子定数a及びbは、圧電薄膜の表面に垂直な結晶面の間隔である。格子定数aは、ペロブスカイト型結晶の(100)面の間隔であり、格子定数bは、ペロブスカイト型結晶の(010)面の間隔である。a及びbは互いに略等しかった。a及びbのいずれも、cより小さかった。つまり、圧電薄膜に含まれるペロブスカイト型結晶は正方晶であった。実施例1のc/aは、下記表1に示される。
以上の方法で、単結晶基板と、単結晶基板に重なる第一中間層と、第一中間層に重なる第一電極層と、第一電極層に重なる圧電薄膜と、を備える積層体が作製された。この積層体を用いて更に以下の工程が実施された。
真空チャンバー内で、Ptからなる第二電極層が、圧電薄膜の表面全体に形成された。第二電極層は、スパッタリング法により形成された。第二電極層の形成過程における単結晶基板の温度は500℃に維持した。第二電極層の厚みは、200nmであった。
以上の工程により、単結晶基板と、単結晶基板に重なる第一中間層と、第一中間層に重なる第一電極層と、第一電極層に重なる圧電薄膜と、圧電薄膜に重なる第二電極層と、を備える積層体が作製された。続くフォトリソグラフィにより、単結晶基板上の積層構造のパターニングが行われた。パターニング後、積層体がダイシングにより切断された。
以上の工程により、短冊状の実施例1の圧電薄膜素子を得た。圧電薄膜素子は、単結晶基板と、単結晶基板に重なる第一中間層と、第一中間層に重なる第一電極層と、第一電極層に重なる圧電薄膜と、圧電薄膜に重なる第二電極層と、を備えていた。圧電薄膜の可動部分の面積は、20mm×1.0mmであった。
[圧電定数d33,fの測定]
実施例1の圧電薄膜素子を用いて圧電薄膜の圧電定数d33,fが測定された。測定には、原子間顕微鏡(AFM)と強誘電体評価システムとを組み合わせた装置が用いられた。原子間顕微鏡は、セイコーインスツル株式会社製のSPA−400であり、強誘電体評価システムは、株式会社東陽テクニカ製のFCEであった。圧電定数d33,fの測定における交流電界(交流電圧)の周波数は5Hzであった。圧電薄膜に印加される電圧の最大値は20Vであった。d33,fの単位はpm/Vである。実施例1の圧電定数d33,fは、下記表1に示される。
[比誘電率ε及び圧電定数g33の算出]
実施例1の圧電薄膜素子の容量Cを測定した。容量Cの測定の詳細は以下の通りであった。
測定装置:HEWLETT PACKERD社製のLCRメーター(4284A)
周波数:1kHz
電界:1V/μm
下記数式1に基づき、容量Cの測定値(3点測定平均値)から、比誘電率εを算出した。
数式1中のεは、真空の誘電率である。数式1中のSは、第一電極層及び第二電極層其々と接する圧電薄膜の面積である。数式1中のdは、圧電薄膜の厚みである。比誘電率εを、近似的にε33とみなした。g33=d33,f/ε33εに基づき、d33,f及びε33から圧電定数g33(単位:×10−3V・m/N)を算出した。実施例1のε及びg33は下記表1に示される。
(実施例2〜12及び比較例1〜4)
圧電薄膜の形成に用いたターゲットの組成が異なることを除いて実施例1と同様の方法で、実施例2〜12及び比較例1〜4其々の圧電薄膜素子が作製された。
実施例1と同様の方法により、実施例2〜12及び比較例1〜4其々の第一電極層のXRDパターンが測定された。実施例2〜12及び比較例1〜4のいずれの場合も、第一電極層を構成するPtの結晶の(002)面が、第一電極層の表面の法線方向において配向しており、Ptの結晶の(200)面が、第一電極層の表面の面内方向において配向していた。
実施例1と同様の方法により、実施例2〜12及び比較例1〜4其々の圧電薄膜の組成が分析された。実施例2〜12及び比較例1〜4のいずれの場合も、圧電薄膜の組成は、ターゲットの組成とほぼ一致した実施例2〜12及び比較例1〜4其々の圧電薄膜の組成(xの値)は、下記の表1に示される。
実施例1と同様の方法により、実施例2〜12及び比較例1〜4其々の圧電薄膜のXRDパターンが測定された。実施例2〜12及び比較例1〜4のいずれのXRDパターンも、圧電薄膜がペロブスカイト型結晶から構成されていることを示していた。実施例2〜12及び比較例1〜4のいずれの場合も、ペロブスカイト型結晶の(001)面が、圧電薄膜の表面の法線方向において配向していた。実施例2〜12及び比較例1〜4のいずれの場合も、圧電薄膜に含まれるペロブスカイト型結晶は正方晶であった。実施例2〜12及び比較例1〜4其々の(001)面の配向度は、下記表1に示される。実施例2〜12及び比較例1〜4其々のc/aは、下記表1に示される。
実施例1と同様の方法により、実施例2〜12及び比較例1〜4其々の圧電薄膜の圧電定数d33,fが測定された。実施例2〜12及び比較例1〜4其々の圧電定数d33,fは、下記表1に示される。実施例1と同様の方法により、実施例2〜12及び比較例1〜4其々の圧電薄膜の比誘電率ε及び圧電定数g33が算出された。実施例2〜12及び比較例1〜4其々の比誘電率ε及び圧電定数g33は、下記表1に示される。実施例1〜12及び比較例1〜4其々のx及びc/aは、図11においてプロットされる。実施例1〜12及び比較例1〜4其々のx及びg33は、図12においてプロットされる。
(比較例5)
比較例5の圧電薄膜の形成過程における真空チャンバー内の酸素分圧は、0.1Paに維持された。
圧電薄膜の形成過程における酸素分圧を除いて実施例8と同様の方法で、比較例5の圧電薄膜素子が作製された。
実施例1と同様の方法により、比較例5の第一電極層のXRDパターンが測定された。比較例5の第一電極層を構成するPtの結晶の(002)面が、第一電極層の表面の法線方向において配向しており、Ptの結晶の(200)面が、第一電極層の表面の面内方向において配向していた。
実施例1と同様の方法により、比較例5の圧電薄膜の組成が分析された。比較例5の圧電薄膜の組成は、ターゲットの組成とほぼ一致した。比較例5の圧電薄膜の組成(xの値)は、下記の表2に示される。
実施例1と同様の方法により、比較例5の圧電薄膜のXRDパターンが測定された。比較例5のXRDパターンは、比較例5の圧電薄膜はペロブスカイト型結晶から構成されていることを示していた。
比較例5の場合、ペロブスカイト型結晶の特定の結晶面が圧電薄膜の表面の法線方向において配向していなかった。つまり比較例5の場合、いずれの結晶面の配向度も50%未満であった。比較例5のc/aは、下記表2に示される。
実施例1と同様の方法により、比較例5の圧電薄膜の圧電定数d33,fが測定された。比較例5の圧電定数d33,fは、下記表2に示される。実施例1と同様の方法により、比較例5の圧電薄膜の比誘電率ε及び圧電定数g33が算出された。比較例5の比誘電率ε及び圧電定数g33は、下記表2に示される。
(実施例13〜15)
実施例13のターゲットの作製の際には、目的とする圧電薄膜の組成に応じて、原料粉末(酸化ビスマス、炭酸カリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム及び酸化ニッケル)の配合比が調整された。目的とする圧電薄膜の組成は、下記化学式1Bで表されるものであった。下記化学式1B中のx及びγ其々の値は、下記表3に示す値であった。
(1−x)Bi0.50.5TiO‐xBi(MgγNi1−γ0.5Ti0.5 (1B)
圧電薄膜の形成に用いたターゲットの組成が異なることを除いて実施例1と同様の方法で、実施例13の圧電薄膜素子が作製された。
実施例14の場合、上記化学式1B中のγは、1/3であった。実施例15の場合、上記化学式1B中のγは0であった。つまり実施例15の場合、ターゲットの原料粉末として、酸化マグネシウムが用いられなかった。γを除いて実施例13と同様の方法で、実施例14及び15其々の圧電薄膜素子が作製された。
実施例1と同様の方法により、実施例13〜15其々の第一電極層のXRDパターンが測定された。実施例13〜15のいずれのXRDパターンも、第一電極層を構成するPtの結晶の(002)面が、第一電極層の表面の法線方向において配向しており、Ptの結晶の(200)面が、第一電極層の表面の面内方向において配向していた。
実施例1と同様の方法により、実施例13〜15其々の圧電薄膜の組成が分析された。実施例13〜15のいずれの場合も、圧電薄膜の組成は、ターゲットの組成とほぼ一致した。実施例13〜15其々の圧電薄膜の組成(x及びγ其々の値)は、下記の表3に示される。
実施例1と同様の方法により、実施例13〜15其々の圧電薄膜のXRDパターンが測定された。実施例13〜15のいずれのXRDパターンも、圧電薄膜がペロブスカイト型結晶から構成されていることを示していた。実施例13〜15のいずれの場合も、ペロブスカイト型結晶の(001)面が、圧電薄膜の表面の法線方向において配向していた。実施例13〜15のいずれの場合も、圧電薄膜に含まれるペロブスカイト型結晶は正方晶であった。実施例13〜15其々の(001)面の配向度は、下記表3に示される。実施例13〜15其々のc/aは、下記表3に示される。
実施例1と同様の方法により、実施例13〜15其々の圧電薄膜の圧電定数d33,fが測定された。実施例13〜15其々の圧電定数d33,fは、下記表3に示される。実施例1と同様の方法により、実施例13〜15其々の圧電薄膜の比誘電率ε及び圧電定数g33が算出された。実施例13〜15其々の比誘電率ε及び圧電定数g33は、下記表3に示される。
(実施例16)
実施例16の場合、第二中間層が第一電極層の表面全体に形成され、圧電薄膜が第二中間層の表面全体に形成された。実施例16の第二中間層は、結晶質のSrRuOからなっていた。実施例16の第二中間層の厚みは、50nmであった。
第二中間層が形成されたことを除いて実施例8と同様の方法で、実施例16の圧電薄膜素子が作製された。
実施例1と同様の方法により、実施例16の第一電極層のXRDパターンが測定された。実施例16の第一電極層を構成するPtの結晶の(002)面が、第一電極層の表面の法線方向において配向しており、Ptの結晶の(200)面が、第一電極層の表面の面内方向において配向していた。
実施例1と同様の方法により、実施例16の圧電薄膜の組成が分析された。実施例16の圧電薄膜の組成は、ターゲットの組成とほぼ一致した。実施例16の圧電薄膜の組成(xの値)は、下記の表4に示される。
実施例1と同様の方法により、実施例16の圧電薄膜のXRDパターンが測定された。実施例16のXRDパターンは、実施例16の圧電薄膜がペロブスカイト型結晶から構成されていることを示していた。実施例16のペロブスカイト型結晶の(001)面が、圧電薄膜の表面の法線方向において配向していた。実施例16の圧電薄膜に含まれるペロブスカイト型結晶は正方晶であった。実施例16の(001)面の配向度は、下記表4に示される。実施例16のc/aは、下記表4に示される。
実施例1と同様の方法により、実施例16の圧電薄膜の圧電定数d33,fが測定された。実施例16の圧電定数d33,fは、下記表4に示される。実施例1と同様の方法により、実施例16の圧電薄膜の比誘電率ε及び圧電定数g33が算出された。実施例16の比誘電率ε及び圧電定数g33は、下記表4に示される。
(実施例17)
実施例17の圧電薄膜素子の作製過程では、第一中間層が形成されなかった。実施例17の圧電薄膜素子の作製過程では、結晶質のSrRuOからなる第一電極層が単結晶基板の表面全体に直接形成された。実施例17の第一電極層の厚みは、200nmであった。これらの事項を除いて実施例8と同様の方法で、実施例17の圧電薄膜素子が作製された。
実施例1と同様の方法により、実施例17の第一電極層のXRDパターンが測定された。実施例17の第一電極層の結晶面は、第一電極層の表面の面内方向において配向してなかった。つまり、実施例17の第一電極層の結晶の面内配向性がなかった。
実施例1と同様の方法により、実施例17の圧電薄膜の組成が分析された。実施例17の圧電薄膜の組成は、ターゲットの組成とほぼ一致した。実施例17の圧電薄膜の組成(xの値)は、下記の表5に示される。
実施例1と同様の方法により、実施例17の圧電薄膜のXRDパターンが測定された。実施例17のXRDパターンは、実施例17の圧電薄膜がペロブスカイト型結晶から構成されていることを示していた。
実施例17のペロブスカイト型結晶の(001)面が、圧電薄膜の表面の法線方向において配向していた。実施例17の(001)面の配向度は、下記表5に示される。実施例17のc/aは、下記表5に示される。
実施例1と同様の方法により、実施例17の圧電薄膜の圧電定数d33,fが測定された。実施例17の圧電定数d33,fは、下記表5に示される。実施例1と同様の方法により、実施例17の圧電薄膜の比誘電率ε及び圧電定数g33が算出された。実施例17の比誘電率ε及び圧電定数g33は、下記表5に示される。
本発明に係る圧電薄膜は、例えば、圧電アクチュエータ及び圧電センサに応用される。
10,40,50,100…圧電薄膜素子、1…単結晶基板、2…第一電極層、3,25,30,42,52…圧電薄膜、4…第二電極層、5…第一中間層、6…第二中間層、D…単結晶基板の表面の法線方向、dn…圧電薄膜の表面の法線方向、uc…ペロブスカイト構造の単位胞、a…単位胞の(100)面の面間隔、b…単位胞の(010)面の面間隔、c…単位胞の(001)面の面間隔、200…ヘッドアセンブリ、9…ベースプレート、11…ロードビーム、11b…基端部、11c…第1板バネ部分、11d…第2板バネ部分、11e…開口部、11f…ビーム主部、15…フレキシブル基板、17…フレクシャ、19…ヘッドスライダ、19a…ヘッド素子、300…圧電アクチュエータ、20…基体、21…圧力室、23…絶縁膜、24…単結晶基板、26…上部電極層(第一電極層)、27…ノズル、400…ジャイロセンサ、110…基部、120,130…アーム、31…上部電極層(第一電極層)、31a,31b…駆動電極層、31c,31d…検出電極層、32…単結晶基板、500…圧力センサ、41…共通電極層、43…個別電極層、44…支持体、45…空洞、46…電流増幅器、47…電圧測定器、600…脈波センサ、51…共通電極層、53…個別電極層、54…支持体、55…電圧測定器、700…ハードディスクドライブ、60…筐体、61…ハードディスク、62…ヘッドスタックアセンブリ、63…ボイスコイルモータ、64…アクチュエータアーム、65…ヘッドアセンブリ、800…インクジェットプリンタ装置、70…プリンタヘッド、71…本体、72…トレイ、73…ヘッド駆動機構、74…排出口、75…記録用紙、76…オートシートフィーダ(自動連続給紙機構)。

Claims (18)

  1. 金属酸化物を含む圧電薄膜であって、
    前記金属酸化物が、ビスマス、カリウム、チタン、及び元素Mを含み、
    前記元素Mが、マグネシウム及びニッケルのうち少なくとも一種であり、
    少なくとも一部の前記金属酸化物が、ペロブスカイト構造を有する正方晶であり、
    少なくとも一部の前記正方晶の(001)面が、前記圧電薄膜の表面の法線方向において配向しており、
    前記正方晶の(001)面の間隔が、cと表され、
    前記正方晶の(100)面の間隔が、aと表され、
    c/aが、1.035以上1.060以下であり、
    前記金属酸化物が、下記化学式1で表され、
    下記化学式1中のxは、0.200以上0.650以下であり、
    下記化学式1中のαは、0より大きく1未満であり、
    下記化学式1中のβは、0より大きく1未満であり、
    下記化学式1中のMが、MgγNi1−γと表され、
    γが、0以上1以下である、
    圧電薄膜。
    (1−x)(Biα1−α)TiO‐xBi(MβTi1−β)O (1)
  2. 前記化学式1で表される前記金属酸化物のみからなる、
    請求項1に記載の圧電薄膜。
  3. エピタキシャル膜である、
    請求項1又は2に記載の圧電薄膜。
  4. 強誘電性薄膜である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧電薄膜。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電薄膜を備える、
    圧電薄膜素子。
  6. 単結晶基板と、
    前記単結晶基板に重なる前記圧電薄膜と、
    を備える、
    請求項5に記載の圧電薄膜素子。
  7. 単結晶基板と、
    前記単結晶基板に重なる電極層と、
    前記電極層に重なる前記圧電薄膜と、
    を備える、
    請求項5に記載の圧電薄膜素子。
  8. 電極層と、
    前記電極層に重なる前記圧電薄膜と、
    を備える、
    請求項5に記載の圧電薄膜素子。
  9. 少なくとも一つの中間層を更に備え、
    前記中間層が、前記単結晶基板と前記電極層との間に配置されている、
    請求項7に記載の圧電薄膜素子。
  10. 少なくとも一つの中間層を更に備え、
    前記中間層が、前記電極層と前記圧電薄膜との間に配置されている、
    請求項7又は8に記載の圧電薄膜素子。
  11. 前記電極層が、白金の結晶を含み、
    前記白金の結晶の(002)面が、前記電極層の表面の法線方向において配向しており、
    前記白金の結晶の(200)面が、前記電極層の表面の面内方向において配向している、
    請求項7〜10のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子。
  12. 請求項5〜11のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子を備える、
    圧電アクチュエータ。
  13. 請求項5〜11のいずれか一項に記載の圧電薄膜素子を備える、
    圧電センサ。
  14. 請求項12に記載の圧電アクチュエータを備える、
    ヘッドアセンブリ。
  15. 請求項14に記載のヘッドアセンブリを備える、
    ヘッドスタックアセンブリ。
  16. 請求項15に記載のヘッドスタックアセンブリを備える、
    ハードディスクドライブ。
  17. 請求項12に記載の圧電アクチュエータを備える、
    プリンタヘッド。
  18. 請求項17に記載のプリンタヘッドを備える、
    インクジェットプリンタ装置。

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