JP2020139446A - 動翼及び回転機械 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動強度の向上及びシール性の改善を図った動翼及び回転機械を提供する。【解決手段】ロータディスクの翼溝に挿入され、翼溝に形成されたフック部と接触する翼根部と、翼根部の径方向外側にフック部と軸方向に対向するネック部と、ネック部から径方向外側に延在する翼体部と、を有する動翼において、対向するフック部とネック部との間に径方向に移動するスライド部を備え、スライド部は、ロータディスクの回転に伴う遠心力により径方向外側に移動しフック部とネック部の隙間に収まる。回転機械の運転時にスライド部が遠心力の作用により径方向外側に移動して、ネック部とフック部の隙間に収まることで、動翼が径方向外側でも支持されるようになる。【選択図】図5

Description

本発明は、蒸気タービン等の回転機械に適用される動翼及び回転機械に関する。
蒸気タービン等の回転機械において、ケーシングと、ケーシングの内部に回転自在に設けられたロータディスクと、ケーシングの内周部に固定配置された静翼と、この静翼の下流側においてロータディスクに放射状に設けられた動翼と、を備えたものが知られている。この種の回転機械では、ロータディスクの外周面にTルート構造あるいはサイドエントリー構造を有する翼溝部が設けられている。動翼は、この翼溝部に対応した形状の翼根部を有し、翼根部を翼溝部に植え込むことでロータディスクに固定される。
Tルート構造を有する動翼に関する先行技術としては、例えば特許文献1がある。特許文献1に開示の動翼は、共振を回避できるTルート構造を有する。
特開平7−63004号公報
Tルート構造の動翼は、蒸気タービン等の中圧段や高圧段で用いられる短翼である。ここで、中圧段や高圧段の動翼の構造は、低圧段で用いる長翼であるISB(Integral Shroud Blade)翼のようなシュラウド部による制振構造を有していない。近年、タービン効率を向上させるために、タービン翼の長翼化が進んでいるが、長翼化が進むにつれて翼根や翼溝にかかる負荷が増大する。このため、制振構造を有していないTルート構造の動翼では、振動強度が成立しない虞がある。
また、翼根部と翼溝部との間には、ロータへ動翼を植え込むために必要な隙間が存在しており、回転機械の性能向上の為には、更なるシール性の改善を要する。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、振動強度の向上及びシール性の改善を図った動翼及び回転機械を提供することを目的とする。
この発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
即ち、本発明の第一態様に係る動翼は、ロータディスクの翼溝に挿入され、前記翼溝に形成されたフック部と接触する翼根部と、前記翼根部の径方向外側に前記フック部と軸方向に対向するネック部と、前記ネック部から径方向外側に延在する翼体部と、を有する動翼において、対向する前記フック部と前記ネック部との間に径方向に移動するスライド部を備え、前記スライド部は、前記ロータディスクの回転に伴う遠心力により径方向外側に移動し前記フック部と前記ネック部の隙間に収まる。
上記構成では、回転機械の運転時にスライド部が遠心力の作用により径方向外側に移動して、ネック部とフック部の隙間に収まることで、動翼が径方向外側でも支持されるようになる。このとき、動翼の振動数が高くなり、翼根部に作用する応力の低減が見込める振動モードに変化するため、動翼の振動強度を向上させることができる。
また、動翼が翼根部とネック部とでそれぞれ支持されることにより、動翼の振動に伴って応力が作用する箇所が分散されるため、局所的に過大な応力が作用するのを抑制することができ、動翼の振動強度を向上させることができる。
また、動翼が振動した際に、スライド部がネック部とフック部によって挟持されている箇所に摩擦が生じることで、動翼の振動を減衰する効果が得られるため、動翼の振動強度を向上させることができる。
また、スライド部は、ネック部の一部として形成されており、従来のネック部の寸法を維持できるため、翼溝部に動翼を挿入する際の作業性を低下させることなく、動翼の振動強度を向上させることができる。
また、スライド部が、フック部とネック部との間に形成された間隙の隙間に収まることにより、作動流体のシール性を向上させることができ、回転機械の性能を向上させることができる。
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る動翼では、前記フック部は、前記スライド部を有していても良い。
このように構成することで、スライド部の寸法、形状等がネック部の寸法、形状等の制約を受けないので、スライド部の設計の自由度が向上し、減衰効果の調整の幅を広くすることができる。
また、動翼が径方向外側でも支持されるようになるため、動翼の振動数が高くなり、翼根部に作用する応力の低減が見込める振動モードに変化するため、動翼の振動強度を向上させることができる。
また、動翼が翼根部とネック部とでそれぞれ支持されることにより、動翼の振動に伴って応力が作用する箇所が分散されるため、局所的に過大な応力が作用するのを抑制することができ、動翼の振動強度を向上させることができる。
また、動翼が振動した際に、スライド部がフック部とネック部によって挟持されている箇所に摩擦が生じることで、動翼の振動を減衰する効果が得られるため、動翼の振動強度を向上させることができる。
また、スライド部は、フック部の一部として形成されており、従来のフック部の寸法を維持できるため、翼溝部に動翼を挿入する際の作業性を低下させることなく、動翼の振動強度を向上させることができる。
また、スライド部が、フック部とネック部との隙間に収まることにより、作動流体のシール性を向上させることができ、回転機械の性能を向上させることができる。
この発明の第三態様によれば、第一態様に係る動翼では、前記ネック部は、前記スライド部を有し、前記フック部と対向する両側の面にそれぞれ複数の前記スライド部を有していても良い。
このように構成することで、スライド部がフック部とネック部によって挟持される面積が増加することにより、動翼の振動数が更に高くなるため、動翼の振動強度を更に向上させることができる。
また、動翼の支持位置が増えるため、翼根部に、局所的に過大な応力が作用するのを抑制することができ、動翼の振動強度を向上させることができる。
更に、スライド部がフック部とネック部によって挟持される面積が増加することで、フック部とネック部との間で生じる摩擦が増加し、摩擦による振動減衰効果が向上するため、動翼の振動強度を更に向上させることができる。
また、複数のスライド部がフック部とネック部で挟持されることにより、作動流体のシール性を更に改善することができる。
この発明の第四態様によれば、第一態様に係る動翼では、前記ネック部は、前記スライド部を有し、前記スライド部は、前記ネック部の周方向に亘って設けられていても良い。
このように構成することで、スライド部がネック部の周方向の一部に設けられている場合よりも、スライド部がフック部及びネック部によって挟持される面積を増加させることができ、動翼の振動数が更に高くなるため、動翼の振動強度を更に向上させることができる。また、翼根部に局所的に過大な応力が作用するのを抑制することができる。
また、動翼が振動した際にフック部とネック部との間の摩擦が増加し、摩擦による振動減衰効果が向上するため、動翼の振動強度を更に向上させることができる。
また、スライド部がフック部とネック部によって挟持される面積が増加することにより、作動流体のシール性を更に向上させることができる。
更に、スライド部は、ネック部の一部として形成されているため、従来のネック部の寸法を維持することができ、翼溝部に動翼を挿入する作業の作業性の低下を抑制することができる。
この発明の少なくとも一態様に係る回転機械は、第一態様から第四態様の何れか一態様に係る動翼を備える。
このように構成することで、振動強度の向上及びシール性の改善を図った動翼を有する回転機械を提供することができる。
本発明によれば、振動強度の向上及びシール性の改善を図った動翼及び回転機械を提供することができる。
本発明の第一実施形態に係る動翼の固定構造の概略を示す斜視図である。 本発明の第一実施形態に係る動翼の全体を示す概略図である。 図1の一部を拡大して概略的に示す部分拡大図である。 本発明の第一実施形態に係る動翼を示す斜視図である。 本発明の第一実施形態に係る動翼とロータディスクの一部を示す概略図である。 本発明の第一実施形態に係る動翼の振動数とロータディスクの回転数の関係を概略的に示すグラフである。 本発明の第一実施形態に係る動翼の支持位置と振動数の関係を概略的に示す図である。 本発明の第二実施形態に係るロータディスクと動翼の一部を示す要部拡大図である。 本発明の第二実施形態に係るロータディスクの一部を示す概略図である。 本発明の第二実施形態に係るロータディスクと動翼の一部を示す要部拡大図である。 本発明の第三実施形態に係る動翼を示す要部拡大図である。 本発明の第三実施形態に係る動翼の振動数とロータディスクの回転数の関係を概略的に示すグラフである。 本発明の第四実施形態に係る動翼を示す要部拡大図である。 本発明の第四実施形態に係る動翼を並べて示した図である。
[第一実施形態]
以下、図1から図7を参照して本発明の第一実施形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る動翼の固定構造の概略を示す斜視図である。図2は、本発明の第一実施形態に係る動翼の全体を示す概略図である。図3は、図1の一部を拡大して概略的に示す部分拡大図である。図4は、本発明の第一実施形態に係る動翼を示す斜視図である。図5は、本発明の第一実施形態に係る動翼とロータディスクの一部を示す概略図である。図6は、本発明の第一実施形態に係る動翼の振動数とロータディスクの回転数の関係を概略的に示すグラフである。図7は、本発明の第一実施形態に係る動翼の支持位置と振動数の関係を概略的に示す図である。
まず、Tルート構造を有するロータディスクに形成された翼溝と動翼の構成について図1及び図2を参照して説明する。図1に示すように、回転機械1は、ロータディスク4と、動翼8と、を備えている。ロータディスク4は、外周に周方向からみた形状がT型の翼溝部11が周方向に亘って形成されている。そして、翼溝部11に動翼8が挿入されることにより、動翼8はロータディスク4に固定される。
翼溝部11は、フック部15と、拡大部13と、を有する。また、翼溝部11には、ロータディスク4の軸方向に突出して対向する二つのフック部15が周方向に亘って形成されている。二つのフック部15は、軸方向に対向するように配置される環状の部位である。
図3に示すように、二つのフック部15は、翼溝側ベアリング面67を有する。翼溝側ベアリング面67は、ロータディスク4の外周面よりも径方向内側に設けられるとともに、軸方向に所定の幅を有して、径方向内側を向く円筒面である。翼溝側ベアリング面67はそれぞれフック部15の径方向内側の面を構成する。
また、翼溝部11には、フック部15の径方向内側に、拡大部13が形成されている。拡大部13は、周方向に亘って設けられる環状の空間である。また、拡大部13の軸方向における幅は、対向する二つのフック部15の軸方向における間隔よりも大きい。また、翼溝側ベアリング面67は、拡大部13に面している。
これより、翼溝部11は、軸方向に突出して対向する二つのフック部15と、フック部15の径方向内側に設けられ、軸方向の幅が、二つのフック部15の軸方向における間隔よりも大きく形成された拡大部13と、を有する。そのため、翼溝部11は、周方向からみた形状がT型をなすように構成される。
図2に示すように、動翼8は、相互に一体に形成された翼体部31と、シュラウド部39と、プラットフォーム部75と、ネック部27と、翼根部23と、を有する。翼体部31は、高さ方向に伸びるとともに高さ方向に垂直な断面が翼形をなし、動翼8の本体を構成する。シュラウド部39は、翼体部31の高さ方向の先端に設けられる。プラットフォーム部75は、翼体部31の基端に設けられて、翼体部31を支持する部位である。動翼8が翼溝部11に挿入された状態では、プラットフォーム部75は、翼溝部11の径方向外側に配置される。
ネック部27は、プラットフォーム部75の高さ方向における基端に接続されて、プラットフォーム部75よりも軸方向の幅が小さく形成されている。動翼8が翼溝部11に挿入された状態では、ネック部27は、翼溝部11の内部に配置される。このとき、ネック部27は、二つのフック部15と軸方向に間隔を空けて対向する。
翼根部23は、ネック部27の高さ方向における基端に接続され、ネック部27よりも幅が大きく形成されている。動翼8が翼溝部11に挿入された状態では、翼根部23は、拡大部13に配置される。また、翼根部23は、動翼側ベアリング面71を有する。
動翼側ベアリング面71は、軸方向に所定の幅を有して、翼根部23の上面を構成している。また、動翼側ベアリング面71は、動翼8が翼溝部11に挿入された状態で、径方向外側を向いて、翼溝側ベアリング面67と対向する。そして、翼溝側ベアリング面67と動翼側ベアリング面71が当接することにより、動翼8が支持される。
次に、本発明の第一実施形態に係る動翼8のネック部27の構成について、図3から図6を参照して説明する。図3に示すように、動翼8のネック部27には、フック部15と対向する二つの面にそれぞれスライド部35が設けられている。スライド部35は、所定の機械加工によって設けられる。また、スライド部35は、スライド面87と、斜面91と、を有する。
スライド面87は、フック部15と対向する面であり、図4に示すように、軸方向からみた形状が矩形状に形成されている。また、スライド面87は、スライド部35がネック部27に収容された状態で、ネック部27の外面と面一になっている。
斜面91は、スライド部35がネック部27の内部に収容された状態で、ネック部27の内部に位置し、スライド面87に接続される斜面である。斜面91は、スライド部35が径方向及び軸方向に移動可能なように、ネック部27からフック部15に向かう方向に沿って延びている。
上記構成の動翼8において回転機械1が静止しているとき、スライド部35は、ネック部27に収容されており、スライド面87とネック部27の外面とが面一となっている。この状態のスライド部35は、ネック部27の内部にあり、静止している。
そして、回転機械1が静止状態から運転を開始すると、ロータディスク4に固定された動翼8は、ロータディスク4と一体となって回転する。このとき、スライド部35には、図3に示す矢印の向きのように、径方向外側に遠心力が作用する。スライド部35に作用する遠心力がネック部27との摩擦力よりも小さいとき、スライド部35はネック部27に収容されている。
その後、回転機械1の回転数が上昇すると、スライド部35に作用する径方向外側への遠心力が大きくなる。そして、遠心力がスライド部35とネック部27の間に作用する最大摩擦力を超えると、図5に示すように、スライド部35が、軸方向及び径方向外側に移動して、ネック部27とフック部15との隙間に収まる。
図5に示す状態では、スライド面87とフック部15とが所定の摩擦係数を有して当接している。また、スライド部35の一部は、スライド部35が移動した後も、ネック部27の内部にある。
スライド部35がネック部27とフック部15との隙間に収まることで、動翼8は、動翼側ベアリング面71に加え、スライド部35が挟まった位置においても支持されるようになる。
図6の点線は、動翼側ベアリング面71と翼溝側ベアリング面67のみで動翼8を支持する場合の動翼8の振動数を示す基準線である。また、図6の実線は、動翼側ベアリング面71に加え、スライド部35で動翼8を支持する場合の動翼8の振動数を示している。図6より、動翼側ベアリング面71に加え、スライド部35で動翼8を支持する場合、動翼側ベアリング面71及び翼溝側ベアリング面67のみで動翼8を支持する場合と比較して、動翼8の振動数が高くなることが分かる。
これは、図7からも分かるように、動翼側ベアリング面71に加え、スライド部35で動翼8を支持することにより、動翼8が径方向外側の位置でも支持されるようになるためである。また、スライド部35が収まる位置が径方向外側になるほど、動翼8の振動数は高くなることが分かる。
したがって、本実施形態の動翼8によれば、回転機械1の運転時にスライド部35が遠心力の作用により径方向外側に移動して、ネック部27とフック部15との隙間に収まる。この時、動翼8が動翼側ベアリング面71に加え、スライド部35でも支持されるようになり、動翼8の振動数が高くなる。これより、動翼8の振動モードが、翼根部23に作用する応力の低減を見込める振動モードに変化するため、動翼8の振動強度を向上させることができる。
また、動翼8が動翼側ベアリング面71とスライド部35で支持されることにより、動翼8の支持位置が分散される。これより、翼根部23に局所的に過大な応力が作用するのを抑制することができ、動翼8の振動強度を向上させることができる。
更に、スライド部35がフック部15とネック部27の間に挟まっているとき、スライド部35が、フック部15及びネック部27によって所定の摩擦係数を有して挟持されている。このため、動翼8が振動した際に、スライド部35とフック部15、スライド部35とネック部27の間に摩擦が生じる。これより、動翼8の振動を減衰する効果が得られるため、動翼8の振動強度を向上させることができる。
加えて、スライド部35は、ネック部27の一部として形成されており、スライド部35がネック部27に収容された状態では、従来のネック部27の寸法を維持できる。そのため、翼溝部11に動翼8を挿入する作業の作業性の低下を抑制することができる。
そのうえ、スライド部35が、フック部15とネック部27との間に形成された間隙に収まることにより、間隙が埋められ、作動流体のシール性を向上させることができ、回転機械1の性能を向上させることができる。
なお、スライド部35の取り付け位置を径方向外側に移動させることで、動翼8の振動数をさらに高くして、動翼8の振動強度を向上させることが可能である。また、スライド部35の形状、寸法、材質、配置位置等を調整することにより、動翼8の振動強度を更に向上させることが可能である。
以上、図面を参照しながら、本発明の第一実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、スライド部35は、スライド構造であり、回転機械1の運転に伴って上記の作用効果を奏する構造であれば、形状、寸法、材質、配置位置等は特に制限されない。
[第二実施形態]
以下、本発明の第二実施形態について、図8から図10を参照して説明する。図8は、本発明の第二実施形態に係るロータディスクと動翼の一部を示す要部拡大図である。図9は、本発明の第二実施形態に係るロータディスクの一部を示す概略図である。図10は、本発明の第二実施形態に係るロータディスクと動翼の一部を示す要部拡大図である。なお、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、スライド部35がフック部15に設けられている点で第一実施形態と相違する。図8に示すように、ロータディスク4のフック部15に設けられたスライド部35は、回転機械1が静止しているとき、フック部15に収容されている。また、図9に示すように、スライド面87は、軸方向からみた形状が矩形状に形成されており、スライド部35がフック部15に収容された状態で、スライド面87とフック部15の壁面とは面一になっている。
また、スライド部35は、第一実施形態と同様に斜面91を有し、スライド部35が径方向及び軸方向に移動可能なように、フック部15からネック部27に向かう方向に沿って延びている。また、スライド部35は、一つの動翼8に対してフック部15の両側に一つずつ設けられる。図9は周方向に三つの動翼8を挿入する場合のスライド部35の配置を示しており、スライド部35は各動翼8に対応して一つずつ配置されるようにフック部15の壁面に設けられている。
回転機械1が静止しているとき、スライド部35は、フック部15に収容されており、スライド面87とフック部15のネック部27と対向する面とが面一となっている。この状態のスライド部35は、フック部15の内部にあり、静止している。
そして、回転機械1の回転数が上昇すると、スライド部35に作用する径方向外側への遠心力が大きくなる。スライド部35に作用する遠心力がスライド部35とフック部15の間に作用する最大摩擦力を超えると、図10に示すように、スライド部35が、軸方向及び径方向外側に移動して、ネック部27とフック部15によって挟持される。
図10に示す状態では、スライド面87とネック部27のフック部15と対向する面とが所定の摩擦係数を有して当接している。また、スライド部35の一部は、スライド部35が移動した後も、フック部15の内部にある。
このとき、実施形態1の時と同様に、動翼8は、動翼側ベアリング面71に加え、動翼側ベアリング面71の径方向外側に位置するスライド部35でも支持されるようになるため、動翼8の振動数が高くなる。これより、動翼8の振動モードが、翼根部23に作用する応力の低減を見込める振動モードに変化するため、動翼8の振動強度を向上させることができる。
また、本実施形態の場合、スライド部35をフック部15に設けるため、スライド部35の寸法、形状等がネック部27の寸法、形状等の制約を受けないので、スライド部35の設計の自由度を向上させることができる。
また、動翼8が動翼側ベアリング面71とスライド部35で支持されることにより、動翼8の支持位置が分散される。これより、翼根部23に局所的に過大な応力が作用するのを抑制することができ、動翼8の振動強度を向上させることができる。
更に、スライド部35がフック部15とネック部27の間に挟まっているとき、スライド部35が、フック部15及びネック部27によって所定の摩擦係数を有して挟持されている。このため、動翼8が振動した際に、スライド部35とフック部15、スライド部35とネック部27の間に摩擦が生じる。これより、動翼8の振動を減衰する効果が得られるため、動翼8の振動強度を向上させることができる。
加えて、スライド部35は、フック部15の一部として形成されており、スライド部35がフック部15に収容された状態では、従来のフック部15の寸法を維持できる。そのため、翼溝部11に動翼8を挿入する作業の作業性の低下を抑制することができる。
そのうえ、スライド部35が、フック部15とネック部27との間に形成された間隙に移動することにより、間隙が埋められ、作動流体のシール性を向上させることができ、回転機械1の性能を向上させることができる。
なお、スライド部35の取り付け位置を径方向外側に移動させることで、動翼8の振動数をさらに高くして、動翼8の振動強度を向上させることが可能である。また、スライド部35の形状、寸法、材質、配置位置等を調整することにより、動翼8の振動強度を更に向上させることが可能である。
以上、図面を参照しながら、本発明の第二実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、スライド部35は、スライド構造であり、回転機械1の運転に伴って上記の作用効果を奏する構造であれば、形状、寸法、材質、配置位置等は特に制限されない。
[第三実施形態]
以下、本発明の第三実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。図11は、本発明の第三実施形態に係る動翼を示す要部拡大図である。図12は、本発明の第三実施形態に係る動翼の振動数とロータディスクの回転数の関係を概略的に示すグラフである。なお、上記実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図11に示すように、本実施形態では、ネック部27のフック部15と対向する面に、二つのスライド部35が設けられている点で、上記の各実施形態と相違する。二つのスライド部35は、遠心力の作用に伴って、径方向及び軸方向に移動した際に、互いに干渉しないように、径方向に所定の間隔を空けて配置される。二つのスライド部35は、フック部15に対向するネック部27の二つの面にそれぞれ二つずつ配置される。
上記構成の動翼8では、回転機械1の回転数が上昇し、スライド部35に作用する遠心力がスライド部35に作用する最大摩擦力を超えると、二つのスライド部35が、それぞれ径方向及び軸方向に移動して、ネック部27とフック部15との隙間に収まる。この時、二つのスライド部35がネック部27とフック部15によって挟持されているため、スライド部35が、ネック部27とフック部15によって挟持される面積が増加する。
図12の点線は、動翼側ベアリング面71と翼溝側ベアリング面67のみで動翼8を支持する場合の動翼8の振動数を示す基準線である。一点鎖線は、フック部15に対向するネック部27の面に一つのスライド部35を設けて、一つのスライド部35がフック部15とネック部27によって挟持される場合の動翼8の振動数を示している。そして、実線は、本実施形態における動翼8の振動数を示している。図12より、本実施形態のように、二つのスライド部35がネック部27とフック部15によって挟持されている場合の方が、一つのスライド部35がネック部27及びフック部15によって挟持されている場合と比較して、動翼8の振動数が高くなることが分かる。
したがって、上記構成の動翼8によれば、スライド部35をネック部27のフック部15と対向する二つの面にそれぞれ二つずつ設けることにより、動翼8の振動数を更に高めることができるため、翼根部23に作用する応力の低減効果を更に高めることができ、動翼8の振動強度を向上させることができる。
また、スライド部35を一つ設ける場合よりも動翼8の支持位置が増えるため、翼根部23に局所的に過大な応力が作用するのをさらに抑制することができ、動翼8の振動強度を向上させることができる。
さらに、スライド部35がフック部15とネック部27によって挟持される面積が増加することにより、摩擦による振動減衰効果がさらに高まるので、動翼8の振動強度をさらに向上させることができる。
加えて、二つのスライド部35は、ネック部27の一部として形成されており、スライド部35がネック部27に収容された状態では、従来のネック部27の寸法を維持できる。そのため、翼溝部11に動翼8を挿入する作業の作業性の低下を抑制することができる。
そのうえ、二つのスライド部35が、フック部15とネック部27との間に形成された間隙に収まることにより、作動流体のシール性をさらに向上させることができ、回転機械1の性能をさらに向上させることができる。
以上、図面を参照しながら、本発明の第三実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、ネック部27に設けるスライド部35の個数は必ずしも二つに限られず、寸法や形状、配置次第で、二つ以上のスライド部35を配置することができる。
[第四実施形態]
以下、本発明の第四実施形態について、図13及び図14を参照して説明する。図13は、本発明の第四実施形態に係る動翼を示す要部拡大図である。図14は、本発明の第四実施形態に係る動翼を並べて示した図である。なお、上記実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
本実施形態では、スライド部35が、ネック部27の周方向に亘って設けられている点で、上記の各実施形態と相違する。スライド部35は、ネック部27のフック部15と対向する面に一つ設けられ、軸方向からみた形状が矩形状である。スライド面87は、スライド部35がネック部27に収容された状態で、ネック部27の壁面と面一となっている。
上記構成の動翼8では、スライド部35がネック部27及びフック部15によって挟持される面積を増加させることができるので、スライド部35をネック部27の周方向の一部に設ける場合に比較して、動翼8の振動数が高くなる。したがって、翼根部23に作用する応力の低減効果を更に高めることができ、動翼8の振動強度を向上させることができる。
また、スライド部35が、フック部15とネック部27によって挟持される面積が増加するため、翼根部23に局所的に過大な応力が作用するのをさらに抑制することができ、動翼8の振動強度を向上させることができる。
更に、スライド部35がネック部27とフック部15によって挟持される面積が増加することにより、摩擦による振動減衰効果が更に高まるので、動翼8の振動強度を更に向上させることができる。
また、スライド部35は、ネック部27の一部として形成されており、スライド部35がネック部27に収容された状態では、従来のネック部27の寸法を維持できる。そのため、翼溝部11に動翼8を挿入する作業の作業性の低下を抑制することができる。
そのうえ、スライド部35が、フック部15とネック部27によって挟持される面積が増加することにより、作動流体のシール性をさらに向上させることができ、回転機械1の性能をさらに向上させることができる。図14に示すように、本実施形態のスライド部35を備えた動翼8を周方向に隣接して複数配置することで、一つの動翼8のみにスライド部35を設ける場合と比較して、作動流体のシール性をさらに向上させることができる。
以上、図面を参照しながら本発明の第四実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更を施すことが可能である。例えば、本実施形態と第三実施形態を組み合わせて、周方向に亘って、形成されたスライド部35を複数設けることも可能である。この場合、上述の翼根部23に作用する応力の低減効果、摩擦による振動減衰効果及び作動流体のシール性の更なる向上を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、第一実施形態、第三実施形態及び第四実施形態において、ネック部27にスライド部35を設ける場合、動翼8の振動特性に応じて、スライド部35の個数、形状、寸法、材質、配置位置等は異なっていても良い。また、第二実施形態において、ネック部27と対向する二つのフック部15の壁面に設けられるスライド部35の個数、形状、寸法、材質、配置位置等は異なっていても良い。
1 回転機械
4 ロータディスク
8 動翼
11 翼溝部
13 拡大部
15 フック部
23 翼根部
27 ネック部
31 翼体部
35 スライド部
39 シュラウド部
67 翼溝側ベアリング面
71 動翼側ベアリング面
75 プラットフォーム部
87 スライド面
91 斜面

Claims (5)

  1. ロータディスクの翼溝に挿入され、前記翼溝に形成されたフック部と接触する翼根部と、
    前記翼根部の径方向外側に前記フック部と軸方向に対向するネック部と、
    前記ネック部から径方向外側に延在する翼体部と、を有する動翼において、
    対向する前記フック部と前記ネック部との間に径方向に移動するスライド部を備え、
    前記スライド部は、前記ロータディスクの回転に伴う遠心力により径方向外側に移動し前記フック部と前記ネック部の隙間に収まる、動翼。
  2. 前記フック部は、前記スライド部を有している、請求項1に記載の動翼。
  3. 前記ネック部は、前記スライド部を有し、
    前記フック部と対向する両側の面にそれぞれ複数の前記スライド部を有する、請求項1に記載の動翼。
  4. 前記ネック部は、前記スライド部を有し、
    前記スライド部は、前記ネック部の周方向に亘って設けられている、請求項1に記載の動翼。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の動翼を備える、回転機械。
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