JP2020139093A - フッ素樹脂およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融成形加工性に優れ、加熱溶融後の黄変が抑制されたオキソラン環を含むフッ素樹脂およびその製造方法を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表される残基単位を含み、重量平均分子量Mwが5×104〜3×105の範囲であり、かつ280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度が6以下である、フッ素樹脂およびその製造方法。(式(1)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)【選択図】なし

Description

本発明は、フッ素樹脂およびその製造方法に関する。
フッ素樹脂は、耐熱性、電気特性、耐薬品性、防水性、撥液發油性、光学特性に優れるため半導体をはじめとする電子部品の保護膜、インクジェットプリンタヘッドの撥水膜、フィルタの防水防油コート、光学部材などに用いられている。
なかでもオキソラン環を含むフッ素樹脂は嵩高い環構造を有するため非晶質で高い透明性および高い耐熱性を有する。また炭素、フッ素、酸素からのみ構成されることで高い電気特性、耐薬品性、防水性、撥液發油性を有する。さらに非晶性であることから溶融成形加工が可能である。
非特許文献1には、オキソラン環を含むフッ素樹脂の1種である、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン(PFMMD)のポリマー(ポリPFMMD)の合成および特性に関する記載がある。ポリPFMMDは耐熱性に優れるが、本発明者らの検討によれば、溶融粘度が高く、溶融成形加工性に劣るうえ、加熱溶融時の脱泡性にも劣り、加熱溶融後の黄変が著しいものであった。
Macromolecules 2005,38,4237−4245
溶融粘度を下げて溶融成形加工性を改善するにはポリマーの低分子量化が有効である。非特許文献1によれば連鎖移動剤として4臭化炭素(CBr4)を用いることで低分子量化することが可能である。しかし、本発明者らが検討したところ、非特許文献1に記載の連鎖移動剤として4臭化炭素(CBr4)を用いて低分子量化したポリマーは、加熱溶融後の黄変が著しいという問題があることが判明した。
本発明は上記オキソラン環を含むフッ素樹脂における課題を解決することを目的とし、具体的には、溶融成形加工性に優れ、加熱溶融後の黄変が抑制されたオキソラン環を含むフッ素樹脂およびその製造方法を提供することを目的とする。
さらに、ポリマーを低分子量化するとガラス転移温度も低下する。ガラス転移温度が低下することで耐熱性が損なわれる。また、本発明者らが検討したところ、連鎖移動剤として4臭化炭素(CBr4)を用いて低分子量化すると加熱成形後の冷却時にクラックが生じるという問題があることも判明した。また、非特許文献1では、溶融粘度、溶融時の脱泡性、クラック発生について、何ら言及されていないうえ、溶融時の脱泡性およびクラック発生を両立する樹脂の特性について何ら明らかにされておらず、更に溶融時の脱泡性、クラック発生、耐熱性、溶融粘度の全てを満足する樹脂の特性についても何ら明らかにされていなかった。非特許文献1には4臭化炭素(CBr4)以外の連鎖移動剤を用いた重合例も記載されているが、本発明者らが検討したところ、溶融成形加工性に優れ、加熱溶融後の黄変が抑制された樹脂は無かった。また、更に、脱泡性およびクラック発生を両立する樹脂も無く、更に溶融時の脱泡性、クラック発生、耐熱性、溶融粘度の全てを満足する樹脂も無かった。
また、本発明者らが検討したところ、非特許文献1に記載の連鎖移動剤として4臭化炭素(CBr4)を用いた方法で低分子量化したポリマーは、300℃で一定時間保持した際の重量減少量の変化が大きく、加熱分解が生じやすいものとなるという問題があることも判明した。
本発明は、さらに、溶融成形加工性に優れ、加熱溶融後の黄変が抑制され、かつ溶融粘度が低く、耐熱性、溶融時の脱泡性にも優れ、加熱成形後の冷却時のクラック発生も小さいオキソラン環を含むフッ素樹脂を提供することも目的とする。
本発明は以下の通りである。
[1]
下記一般式(1)で表される残基単位を含み、重量平均分子量Mwが5×104〜3×105の範囲であり、かつ280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度が6以下である、フッ素樹脂。
(式(1)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
[2]
ガラス転移温度が125℃以上145℃以下である、[1]に記載のフッ素樹脂。
[3]
せん断速度10-2s、250℃における溶融粘度が1×102〜3×105Pa・sである、[1]又は[2]に記載のフッ素樹脂。
[4]
分子量分布Mw/Mnが1.2〜8である、[1]〜[3]のいずれかに記載のフッ素樹脂。
[5]
280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)のクラックの個数が10本以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のフッ素樹脂。
[6]
TG−DTAにてエアー中で10℃/minで300℃まで昇温した直後の重量減少量Aと、300℃まで昇温後300℃で30分間保持した後の重量減少量Bの差B−Aが1.0%以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載のフッ素樹脂。
[7]
280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)における泡の占める面積が成形品の面積に対して10%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のフッ素樹脂
[8]
280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)中の泡の個数が10個以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載のフッ素樹脂
[9]
重量平均分子量Mwが5×104〜2×105の範囲である、[1]〜[8]のいずれかに記載のフッ素樹脂。
[10]
せん断速度10-2s、250℃における溶融粘度が1×102〜5×104Pa・sである、[1]〜[9]のいずれかに記載のフッ素樹脂。
[11]
下記一般式(3)で表される残基単位を含む、[1]〜[10]のいずれかに記載のフッ素樹脂。
[12]
ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下、下記一般式(4)で表される単量体を重合させて下記一般式(5)で表される残基単位を含むフッ素樹脂を得ることを含み、前記連鎖移動剤が水素原子および塩素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物であり、前記フッ素樹脂は重量平均分子量Mwが5×104〜3×105の範囲であり、かつ280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度が6以下である、フッ素樹脂の製造方法。
(式(4)および(5)中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
[13]
連鎖移動剤の量が前記単量体と連鎖移動剤の合計に対し、3〜50重量%である、[12]に記載の製造方法。
[14]
前記重合は、一般式(4)で表される単量体を溶解し、かつ、一般式(5)で表される残基単位を含むフッ素樹脂を析出させる有機溶媒中で行う、[12]又は[13]に記載の製造方法。
[15]
前記連鎖移動剤が、塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物である、[12]〜[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]
前記連鎖移動剤が、塩素原子及び水素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物である、[12]〜[15]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、耐熱性および溶融成形加工性に優れ、加熱溶融後の黄変が抑制されたオキソラン環を含むフッ素樹脂を提供することができる。さらに本発明によれば、耐熱性および溶融成形加工性に優れ、加熱溶融後の黄変が抑制され、かつ溶融粘度が低く、溶融時の脱泡性にも優れ、加熱成形後の冷却時のクラック発生も小さいオキソラン環を含むフッ素樹脂を提供することもできる。
実施例1のフッ素樹脂の280℃24時間加熱溶融冷却後の写真である。 実施例4のフッ素樹脂の280℃24時間加熱溶融冷却後の写真である。 実施例5のフッ素樹脂の280℃24時間加熱溶融冷却後の写真である。 比較例1のフッ素樹脂の280℃24時間加熱溶融冷却後の写真である。 比較例2のフッ素樹脂の280℃24時間加熱溶融冷却後の写真である。 比較例3のフッ素樹脂の280℃24時間加熱溶融冷却後の写真である。
本発明のフッ素樹脂は、下記一般式(1)で表される残基単位を含み、重量平均分子量Mwが5×104〜3×105の範囲であり、かつフッ素樹脂を280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度が6以下である、フッ素樹脂に関する。
(式(1)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示す。前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよい。また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
以下に発明を詳細に説明する。
本発明は、特定の一般式(1)で表される残基単位を含むフッ素樹脂である。そして、本発明のフッ素樹脂は特定の一般式(1)に含まれる嵩高い環構造を有するため非晶質で高い透明性および高い耐熱性を有する。また炭素、フッ素、酸素からのみ構成されることで高い電気特性、耐薬品性、防水性、撥液發油性を有する。
本発明における一般式(1)で表される残基単位中のRf1、Rf2、Rf3、Rf4基はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基、または炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示す。前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよい。また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。
炭素数1〜7の直鎖状パーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ペンタデカフルオロヘプチル基等が挙げられる。炭素数3〜7の分岐状パーフルオロアルキル基としては、例えば、ヘプタフルオロイソプロピル基、ノナフルオロイソブチル基、ノナフルオロsec−ブチル基、ノナフルオロtert−ブチル基等が挙げられる。炭素数3〜7の環状パーフルオロアルキル基としては、例えば、ヘプタフルオロシクロプロピル基、ノナフルオロシクロブチル基、トリデカフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1〜7のエーテル性酸素原子を有していてもよい直鎖状パーフルオロアルキル基としては、例えば、−CF2OCF3基、−(CF22OCF3基、−(CF22OCF2CF3基等が挙げられる。炭素数3〜7のエーテル性酸素原子を有していてもよい環状パーフルオロアルキル基としては、例えば、2−(2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロ)−ピリニル基、4−(2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロ)−ピリニル基、2−(2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ)−フラニル基等が挙げられる。
Rf1、Rf2、Rf3、Rf4の少なくともいずれか1種が炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または炭素数3〜7環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種であるフッ素樹脂が、優れた耐熱性を示すという観点から好ましい。
一般式(1)で表される残基単位の具体例としては、例えば下記一般式(2)で表される残基単位が挙げられる。
このなかでも、耐熱性、成型加工性に優れるため、下記一般式(3)で表される残基単位を含むフッ素樹脂が好ましく、パーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)残基単位を含むフッ素樹脂がより好ましい。
本発明のフッ素樹脂は、重量平均分子量Mwが5×104〜3×105の範囲である。重量平均分子量Mwがこの範囲にあることで、せん断速度10-2s、250℃における溶融粘度が1×102〜3×105Pa・sであることができ、その結果、溶融成形加工性に優れる。さらに、溶融時の脱泡性にも優れる。また、重量平均分子量Mwがこの範囲にあることで、加熱冷却時のクラック発生の少ないものとなる。本発明のフッ素樹脂は、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れる観点から、好ましくは重量平均分子量Mwが5×104〜2×105の範囲であり、重量平均分子量Mwがこの範囲にあることで、せん断速度10-2s、250℃における溶融粘度が1×102〜2×104Pa・sであることができ、その結果、溶融成形加工性に優れ、更に脱泡性にも優れるため好ましい。溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れる観点から、更に好ましくは重量平均分子量Mwが5×104〜1.5×105の範囲であり、加熱冷却時のクラック発生の少ないものとなる観点から、更に好ましくは6×104〜1.5×105の範囲である。
本発明のフッ素樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、例えば標準試料として分子量既知の標準ポリメタクリル酸メチル、溶離液として標準試料とフッ素樹脂の両方を溶解可能な溶媒を用い、試料と標準試料の溶出時間、標準試料の分子量から算出することができる。前記溶液液としては、アサヒクリンAK−225(旭硝子株式会社製)に、AK−225に対して10wt%の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(和光純薬工業製)を添加したものを挙げることができる。
本発明のフッ素樹脂の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である分子量分布Mw/Mnには特に限定はないが、加熱溶融後の黄変が抑制され、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少ないものとなる観点から、分子量分布Mw/Mnは1.2〜8であることが好ましく、1.2〜5であることが更に好ましく、1.5〜3であることが更に好ましく、2.0〜3であることが更に好ましい。数平均分子量Mnは前述した重量平均分子量Mwの測定方法と同様の方法で測定でき、分子量分布Mw/Mnは重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割ることにより算出することができる。
本発明のフッ素樹脂は、280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度が6以下である。280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度の測定方法は以下の通りである。
内径26.4mmのシャーレ(株式会社フラット製フラットシャーレのフタと受器のセットのうち受器のみ、底部のガラス厚み1mm)にフッ素樹脂2.0gを秤量し、イナートオーブン(ヤマト科学製DN411I)に入れ、エアー気流下(20L/min)で、室温で30分静置した後、30分かけて280℃まで昇温後、280℃で24h加熱した。その後、エアー気流下(20L/min)を維持しながら、オーブンの扉を閉めたままにして、イナートオーブンの電源を切り、12h放冷後、サンプルを取出すことで、シャーレ上に厚さ3mm、直径26.4mmのフッ素樹脂加熱溶融成型品を得た。この時、エアーとしては、コンプレッサーで圧縮した空気を除湿機に通したもの(露点温度−20℃以下)を用いた。得られたフッ素樹脂加熱溶融成形品をシャーレごと、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製U−4100)を用いて、波長200nm〜1500nmにおいて、1nm間隔で各波長における透過率を測定した。測定した透過率のデータから波長380nm〜780nmの5nm間隔のデータを抽出し、JIS Z8701の方法にのっとり、XYZ表色系の三刺激値X、Y、Zを計算し、JIS K7373の方法にのっとり、C光源(補助イルミナントC)における黄色度(YI)を計算し、フッ素樹脂成加熱溶融型品のシャーレ込みの黄色度(YI)を求めた。シャーレ単体(受器のみ)の黄色度(YI)を測定し、フッ素樹脂成型品のシャーレ込みの黄色度(YI)からシャーレ単体(受器のみ)の黄色度(YI)を引くことで、厚さ3mmのフッ素樹脂加熱溶融成型品の黄色度(YI)を求めた。なお、シャーレ単体(受器のみ)の黄色度(YI)は0.21であった。
一般に、溶融粘度を下げるには低分子量化が有効であるが、低分子量化するとガラス転移温度が低下する問題があった。本発明のフッ素樹脂は、好ましくは、重量平均分子量が上記範囲であるにも関わらずガラス転移温度が125℃以上145℃以下である。本発明のフッ素樹脂は、好ましくはガラス転移温度が125℃以上、140℃以下であり、更に好ましくは128℃以上、140℃以下であり、更に好ましくは129℃以上、135℃以下である。
本発明のフッ素樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、中間ガラス転移温度を求めることで測定することができる。測定条件としては、例えば、アルミニウム製サンプルパンに試料を入れ、窒素気流下で1回目:−80℃→200℃→−80℃(昇温速度:10℃/min)、2回目:−80℃→200℃(昇温速度:10℃/min)が挙げられる。2回目に昇温した際のチャートからJIS−K7121の記載に従って中間ガラス転移温度を求めることでガラス転移温度を算出することができる。この際、装置としては、インジウム、スズ等の標準物質で温度校正したものを用いることができる。
本発明のフッ素樹脂は、せん断速度10-2s、250℃における溶融粘度が1×102〜3×105Pa・sであることが、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、加熱溶融後の黄変が抑制されるという観点から好ましい。上記溶融粘度は、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、加熱溶融後の黄変が抑制されるという観点から、更に好ましくは1×102〜5×104Pa・sの範囲であり、更に好ましくは1×103〜5×104Pa・sの範囲であり、更に好ましくは1×103〜2×104Pa・sの範囲である。溶融粘度の測定方法は、例えば市販されている回転式レオメーターによる測定を例示することができ、JIS K 7244−10に記載の方法を例示できる。
本発明のフッ素樹脂は、280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)中の泡の占める面積が成形品の面積に対して10%以下であることが、良好な加熱成形性という観点から好ましい。280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)中の泡の占める面積は、成形品の面積に対して5%以下であり、更に好ましくは0%である。ここで、280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)中の泡の占める面積が成形品の面積に対して占める割合は、目視で明らかな場合には目視で判別できるほか、成形品の写真を撮影し、画像解析ソフトウェア等にて解析することによっても求めることができる。
本発明のフッ素樹脂は、280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)中の泡の個数が10個以下であることが、良好な加熱成形性という観点から好ましい。280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)中の泡の個数は、好ましくは5個以下であり、更に好ましくは0個である。
本発明のフッ素樹脂は、TG−DTAにてエアー中で10℃/minで300℃まで昇温した直後の重量減少量Aと、300℃まで昇温後300℃で30分間保持した後の重量減少量Bの差B−Aが1.0%以下であることが、優れた耐熱性を有するという観点から好ましい。より好ましくは、差B−Aが0.5%以下であり、更に好ましくは0.3%以下である。ここで、300℃まで昇温した直後の重量減少量A(重量%)は(300℃まで昇温した直後のサンプル重量)/(秤量したサンプル重量)×100で求められ、300℃まで昇温後300℃で30分間保持した後の重量減少量Bは(300℃まで昇温後300℃で30分間保持した後のサンプル重量)/(秤量したサンプル重量)×100で求められる。
本発明のフッ素樹脂には他の単量体残基単位が含まれていても良く、他の単量体残基単位としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロビニルエーテル、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF)、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール(PDD)、パーフルオロ(アリルビニルエーテル)およびペルフルオロ(ブテニルビニルエーテル)などが挙げられる。
次に本発明のフッ素樹脂の製造方法について説明する。
本発明のフッ素樹脂は、ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下、下記一般式(4)で表される単量体を重合させて、下記一般式(5)で表される残基単位を含むフッ素樹脂を得ることを含み、連鎖移動剤として水素原子および塩素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物を用いる方法により製造することができる。それにより、得られるフッ素樹脂は、重量平均分子量Mwが5×104〜3×105の範囲であり、かつ280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度が6以下となる。
(式(4)中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
(式(5)中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
式(4)および(5)中のRf5、Rf6、Rf7、Rf8は、式(1)および(3)中のRf1、Rf2、Rf3、Rf4とそれぞれ同義である。
本発明のフッ素樹脂の製造方法においては、連鎖移動剤として、水素原子および塩素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物を用いることで、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、フッ素樹脂の分子量を上記範囲に制御することができる。ここで連鎖移動剤とはフッ素樹脂のラジカル重合時に系中に存在していることにより分子量を低下させる効果を有する物質を表す。連鎖移動剤の具体例としては、トルエン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物;クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド、ペンタフルオロベンゾイルクロリド等の塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物等が挙げられる。なかでも、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、フッ素樹脂の分子量を制御でき、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れる観点から塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物であることが好ましく、一般式(A)で表されることが更に好ましい。
(式(A)中、mは0〜3の整数、nは1〜3の整数であり、pは0〜1の整数であり、qは0〜1の整数であり、m+n+p+qは4である。R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1〜19の炭化水素基又は酸素原子であり、前記酸素原子は隣り合う炭素原子と2重結合を形成していても良い。R1及びR2の炭素数の合計は1〜19であり、前記炭化水素基は酸素原子、フッ素原子、塩素原子から選ばれる1以上の原子を有していても良く、水素原子を有していなくても良い。また炭化水素基は直鎖状であっても、分岐状であっても、脂環状であっても、芳香環状であっても良く、R1及びR2が互いに連結して炭素数3〜19の環を形成していても良い。)
なかでも、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、フッ素樹脂の分子量を制御でき、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れる観点から水素原子と塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物であることが更に好ましい。水素原子と塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物としては、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド等が挙げられる。また、水素原子と塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物において、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、フッ素樹脂の分子量を制御でき、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れる観点から、水素原子と塩素原子は個数比で水素原子:塩素原子=1:9〜9:1の範囲であることが好ましく、1:9〜5:5の範囲であることが更に好ましい。また、加熱溶融後の黄変を抑制しつつ、フッ素樹脂の分子量を制御でき、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れる観点から、水素原子と塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物は下記一般式(B)又は(C)で表されることが好ましく、一般式(B)で表されることが更に好ましい。
(式(B)中、m、nはそれぞれ独立して1〜3の整数であり、pは0〜1の整数であり、qは0〜1の整数であり、m+n+p+qは4である。R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1〜19の炭化水素基であり、R1 p及びR2 qの炭素数の合計は0〜19であり、前記炭化水素基は酸素原子、フッ素原子、塩素原子から選ばれる1以上の原子を有していても良く、水素原子を有していなくても良い。また炭化水素基は直鎖状であっても、分岐状であっても、脂環状であっても、芳香環状であっても良く、R1及びR2が互いに連結して炭素数3〜19の環を形成していても良い。)
(式(C)中、m、n、u、vはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、m+uは1〜5であり、n+vは1〜5であり、p、q、r、s、tはそれぞれ独立して0〜1の整数であり、m+n+p+qは3であり、r+s+u+vは3であり、R1、R2、R3、R4、R5はそれぞれ独立して炭素数1〜18の炭化水素基であり、R1、R2、R3、R4、R5の炭素数の合計は0〜18であり、前記炭化水素基は酸素原子、フッ素原子、塩素原子から選ばれる1以上の原子を有していても良く、水素原子を有していなくても良い。また炭化水素基は直鎖状であっても、分岐状であっても、脂環状であっても、芳香環状であっても良く、R1、R2、R3、R4、R5から選ばれる2以上の基は互いに連結して炭素数3〜19の環を形成していても良く、その環が複数あっても良い。)
一般式(A)で表される塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物としては、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド、ペンタフルオロベンゾイルクロリド等が挙げられる。一般式(B)で表される水素原子と塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物としては、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ベンジルクロリド、ペンタフルオロベンジルクロリド等が挙げられる。一般式(C)で表される水素原子と塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物としては、1,1,1−トリクロロエタン等が挙げられる。
さらに、溶融時の脱泡性およびクラック発生を両立し、更に溶融時の脱泡性、耐熱性に優れ、溶融粘度が低く、クラック発生が少ないフッ素樹脂が得られ、更に収率にも優れたものとなることから、連鎖移動剤の量が前記単量体と連鎖移動剤の合計に対し、3〜50重量%であることが好ましく、3〜30重量%であることが更に好ましく、4〜20重量%であることが更に好ましい。
本発明の樹脂の製造方法においては、加熱溶融後の黄変が抑制され、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れたものとなる観点から、重合溶媒として、一般式(4)で表される単量体を溶解し、一般式(5)で表される残基単位を含むフッ素樹脂を析出させる有機溶媒(以下、「沈殿重合溶媒」と記載する)を用いることが好ましい。
ある有機溶媒が、ある樹脂を析出させる有機溶媒であるかどうかは、該有機溶媒が有する極性がある特定の範囲にあるかどうかで判断できる。本発明においては、沈殿重合溶媒としてハンセン溶解度パラメーター(Hansensolubilityparameters)に基づいて、ある特定の範囲の極性を有する有機溶媒を選択することが好ましい。
ハンセン溶解度パラメーターは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、ハンセン(Hansen)が分散項δD、極性項δP、水素結合項δHの3成分に分割し、3次元空間に示したものである。分散項δDは、分散力による効果を示し、極性項δPは、双極子間力による効果を示し、水素結合項δHは、水素結合力の効果を示す。3次元空間において、ある樹脂の座標とある有機溶媒の座標とが離れるほど、該樹脂は該有機溶媒に溶解しにくい。
ハンセン溶解度パラメーターの定義および計算方法は、下記の文献に記載されている。CharlesM.Hansen著、「HansenSolubilityParameters:AUsersHandbook」、CRCプレス、2007年。また、文献値が知られていない有機溶媒については、コンピュータソフトウエア(HansenSolubilityParametersinPractice(HSPiP))を用いることによって、その化学構造から簡便にハンセン溶解度パラメーターを推算できる。
本発明においては、HSPiP 5th Edditionを用い、データベースに登録されている有機溶媒についてはその値を、登録されていない有機溶媒については推算値を用いる。
樹脂のハンセン溶解度パラメーターについては、樹脂を良溶媒に溶解した溶液をハンセン溶解度パラメーターが確定している数多くの異なる有機溶媒に加えた際に樹脂が析出するかを確認することによって決定することができる。具体的には、試験に用いた全ての有機溶媒のハンセン溶解度パラメーターの座標を3次元空間に示した際、樹脂Aが析出しない有機溶媒の座標がすべて球の内側に内包され、樹脂Aを析出させる有機溶媒の座標が球の外側になるような球(溶解度球)を探し出し、溶解度球の中心座標を樹脂のハンセン溶解度パラメーターとする。
そして、溶解度試験に用いられなかったある有機溶媒のハンセン溶解度パラメーターの座標が(δD、δP、δH)であった場合、該座標が溶解度球の内側に内包されれば、該有機溶媒は樹脂を析出させず、溶解すると考えられる。一方、該座標が溶解度球の外側にあれば、該有機溶媒は樹脂を析出させると考えられる。
本発明において樹脂粒子のハンセン溶解度パラメーターとしては、下記一般式(6)で表される化合物(一般式(5)で表される化合物の五量体)のハンセン溶解度パラメーターを、HSPiPを用いて推算した値を用いた。この方法により、たとえば、一般式(3)で表されるパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)残基単位を含む樹脂粒子のハンセン溶解度パラメーターδD、δP、δHは、それぞれ、11.6、3.5、1.4(MPa1/2)である。
(式(6)中、Rf9、Rf10、Rf11、Rf12はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示す。前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよい。また、Rf9、Rf10、Rf11、Rf12は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)。
そして本発明における沈殿重合溶媒としては、ハンセン溶解度パラメーターから式(7)によって計算される、樹脂との溶解指標Rが4以上である有機溶媒を選択することが好ましい。
R=4×{(δD1−δD22+(δP1−δP22+(δH1−δH220.5
・・・(7)
ここでδD1、δP1、δH1はそれぞれ前記樹脂粒子のハンセン溶解度パラメーターの分散項、極性項および水素項、δD2、δP2、δH2はそれぞれ前記有機溶媒のハンセン溶解度パラメーターの分散項、極性項および水素項である。
たとえば、パーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)残基単位を含む樹脂との親和性Raが4以上である有機溶媒として下記の有機溶媒を挙げることができる。
さらに、沈殿重合溶媒としては加熱溶融後の黄変が抑制され、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れたものとなる観点から分子内にフッ素原子と水素原子を含む有機溶媒が好ましい。具体的な、分子内にフッ素原子と水素原子を含む沈殿重合溶媒としては、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、2,2,2−トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、1,2,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1H,1H−ペンタフルオロプロパノール、1H,1H−ヘプタフルオロブタノール、2−パーフルオロブチルエタノール、4,4,4−トリフルオロブタノール、1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール、1H,1H,5H−オクタフルオロプロパノール、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノール、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチルエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテルなどが挙げられる。
なかでも、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、2,2,2−トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、1,2,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロシクロペンタンが好ましく、加熱溶融後の黄変が抑制され、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れたものとなる観点から、1,2,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロシクロペンタンが好ましい。沈殿重合溶媒の分子内のフッ素原子と水素原子の比率としては、加熱溶融後の黄変が抑制され、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少なく、収率にも優れたものとなる観点から原子の個数比でフッ素原子:水素原子=1:9〜9:1であることが好ましい。
前記有機溶媒が、一般式(5)で表される残基単位を含む樹脂を析出させる有機溶媒であるかどうかは、前記樹脂を良溶媒に溶解させた溶液を、該有機溶媒に滴下した際に前記樹脂が析出した場合、該有機溶媒が前記樹脂を析出させる有機溶媒であると判断することができる。前記良溶媒とは前記樹脂を溶解させる溶媒であり、例えば、パーフルオロヘキサンなどのパーフルオロカーボン、ヘキサフルオロベンゼンなどが挙げられる。
ラジカル重合を行う際のラジカル重合開始剤としては、例えば、ビス(パーフルオロベンゾイル)ペルオキシド(PFBPO)、(CF3COO)2、(CF3CF2COO)2、(C37COO)2、(C49COO)2、(C511COO)2、(C613COO)2、(C715COO)2、(C817COO)2等のパーフルオロ有機過酸化物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、パーフルオロ(ジ−trt−ブチルパーオキサイド)、ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーピバレート等の有機過酸化物;2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。なかでも、加熱溶融後の黄変が抑制され、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生の少ないものとなる観点から、パーフルオロ有機過酸化物が好ましく、ビス(パーフルオロベンゾイル)ペルオキシド(PFBPO)が更に好ましい。ここで、パーフルオロ有機過酸化物とは有機過酸化物の水素原子がフッ素原子に置換された構造の化合物を示す。
本発明の製造方法は、一般式(4)で表される単量体が一般式(8)で表されるパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)であり、一般式(5)で表される残基単位が一般式(9)で表されるパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)残基単位であることが好ましい。
本発明の方法により製造することで、得られるフッ素樹脂は加熱溶融後の黄変が抑制され、溶融成形加工性に優れ、溶融時の脱泡性に優れ、加熱冷却時のクラック発生が少なく、300℃で一定時間保持した際の重量減少量の変化が小さく、加熱分解が生じにくいものとなる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定される意図ではない。
<物性測定方法>
(1)重量平均分子量Mw、分子量分布Mw/Mn
東ソー(株)製のカラムTSKgel SuperHZM−M、RI検出器を備えたゲルパーミッションクロマトグラフィーを用いて測定を行った。溶離液としてアサヒクリンAK−225(旭硝子株式会社製)に、AK−225に対して10wt%の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(和光純薬工業製)を添加したものを用いた。標準試料としてAgilent製の標準ポリメタクリル酸メチルを用い、試料と標準試料の溶出時間からポリメタクリル酸メチル換算の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnを算出した。分子量分布Mw/Mnは重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割ることにより算出した。
(2)ガラス転移温度
アルミ製サンプルパン(株式会社日立ハイテクサイエンス社製52−023Pにサンプル約10mgを秤量し、アルミ製のフタ(株式会社日立ハイテクサイエンス社製52−023C)をして電動サンプルシーラー(ダイス)(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)によりサンプルをシールすることでサンプルを調製した。DSC装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製DSC6220)にて、窒素気流下(500mL/min)で1回目:−80℃→200℃→−80℃(昇温速度:10℃/min)、2回目:−80℃→200℃(昇温速度:10℃/min)のプログラムで昇温した。この時、2回目に昇温した際のチャートから、JIS−K7121の記載に従って中間ガラス転移温度を求めることでガラス転移温度を算出した。また、DSC装置は、標準物質としてインジウム及びスズで温度校正したものを用いた。
(3)溶融粘度
Anton−Paar社製回転型レオメーターMCR−300を用いて、250℃にて周波数10-2(rad・s-1)における複素粘度を測定し、複素粘度の値を溶融粘度として表記した。
(4)重量減少
アルミ製サンプルパン(株式会社日立ハイテクサイエンス社製SSC000E030)にサンプル約10〜15mgを秤量し、TG/DTA装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA6200AST2)にて、エアー気流下(160mL/min)で40℃から300℃まで10℃/minで昇温し、300℃で1時間保持した。TG/DTAにてエアー中で10℃/minで300℃まで昇温した直後の重量減少量Aと、300℃まで昇温後300℃で30分間保持した後の重量減少量Bの差B−Aを求めた。ここで、300℃まで昇温した直後の重量減少量A(重量%)は(300℃まで昇温した直後のサンプル重量)/(秤量したサンプル重量)×100で求められ、300℃まで昇温後300℃で30分間保持した後の重量減少量Bは(300℃まで昇温後300℃で30分間保持した後のサンプル重量)/(秤量したサンプル重量)×100で求められる。この時、エアーとしては、コンプレッサーで圧縮した空気を除湿機に通したもの(露点温度−20℃以下)を用いた。
(5)脱泡性
内径26.4mmのシャーレ(株式会社フラット製フラットシャーレのフタと受器のセットのうち受器のみ、底部のガラス厚み1mm)にフッ素樹脂2.0gを秤量し、イナートオーブン(ヤマト科学製DN411I)に入れ、エアー気流下(20L/min)で、室温で30分静置した後、30分かけて280℃まで昇温後、280℃で24h加熱した。その後、エアー気流下(20L/min)を維持しながら、オーブンの扉を閉めたままにして、イナートオーブンの電源を切り、12h放冷後、サンプルを取出すことで、シャーレ上に厚さ3mm、直径26.4mmのフッ素樹脂加熱溶融成型品を得た。この時、エアーとしては、コンプレッサーで圧縮した空気を除湿機に通したもの(露点温度−20℃以下)を用いた。
フッ素樹脂加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)の外観を観察し、泡の個数を数え、また、泡の占める面積の成形品の面積に対する割合を算出し、以下の基準で判定した。
◎:泡が0個
○:泡が1〜10個かつ泡の占める面積が成形品の面積に対して10%以下
△:泡が11個以上かつ泡の占める面積が成形品の面積に対して10%以下
△’:泡が1〜10個かつ泡の占める面積が成形品の面積に対して11%以上
×:泡が11個以上かつ泡の占める面積が成形品の面積に対して11〜69%
××:泡が11個以上かつ泡の占める面積が成形品の面積に対して全体の70%以上
(6)280℃加熱溶融冷却後のクラック
内径26.4mmのシャーレ(株式会社フラット製フラットシャーレのフタと受器のセットのうち受器のみ、底部のガラス厚み1mm)にフッ素樹脂2.0gを秤量し、イナートオーブン(ヤマト科学製DN411I)に入れ、エアー気流下(20L/min)で、室温で30分静置した後、30分かけて280℃まで昇温後、280℃で24h加熱した。その後、エアー気流下(20L/min)を維持しながら、オーブンの扉を閉めたままにして、イナートオーブンの電源を切り、12h放冷後、サンプルを取出すことで、シャーレ上に厚さ3mm、直径26.4mmのフッ素樹脂加熱溶融成型品を得た。この時、エアーとしては、コンプレッサーで圧縮した空気を除湿機に通したもの(露点温度−20℃以下)を用いた。
フッ素樹脂加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)の外観を観察し、クラックの本数を数え、以下の基準で判定した。
○:クラックが3本以下
△:クラックが4〜10本
×:クラックが11〜49本
××:クラックが50本以上
(7)280℃24h加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度(YI)
内径26.4mmのシャーレ(株式会社フラット製フラットシャーレのフタと受器のセットのうち受器のみ、受器の底部のガラス厚み1mm)にフッ素樹脂2.0gを秤量し、イナートオーブン(ヤマト科学製DN411I)に入れ、エアー気流下(20L/min)で、室温で30分静置した後、30分かけて280℃まで昇温後、280℃で24h加熱した。その後、エアー気流下(20L/min)を維持しながら、オーブンの扉を閉めたままにして、イナートオーブンの電源を切り、12h放冷後、サンプルを取出すことで、シャーレ上に厚さ3mm、直径26.4mmのフッ素樹脂加熱溶融成型品を得た。この時、エアーとしては、コンプレッサーで圧縮した空気を除湿機に通したもの(露点温度−20℃以下)を用いた。得られたフッ素樹脂加熱溶融成形品をシャーレごと、分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製U−4100)を用いて、波長200nm〜1500nmにおいて、1nm間隔で各波長における透過率を測定した。測定した透過率のデータから波長380nm〜780nmにおける5nm間隔のデータを抽出し、JIS Z8701の方法にのっとり、XYZ表色系の三刺激値X、Y、Zを計算し、JIS K7373の方法にのっとり、C光源(補助イルミナントC)における黄色度(YI)を計算し、フッ素樹脂加熱溶融成型品のシャーレ込みの黄色度(YI)を求めた。シャーレ単体(受器のみ)の黄色度(YI)を測定し、フッ素樹脂成型品のシャーレ込みの黄色度(YI)からシャーレ単体(受器のみ)の黄色度(YI)を引くことで、厚さ3mmのフッ素樹脂加熱溶融成型品の黄色度(YI)を求めた。なお、シャーレ単体(受器のみ)の黄色度(YI)は0.21であった。
実施例1
磁気撹拌子を備えた直径30mmのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.0432g(0.000103モル)をヘキサフルオロベンゼン0.130gに溶解した溶液を入れ、単量体としてパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)5.0g(0.0205モル)、重合溶媒としてゼオローラ−H(日本ゼオン製、1,2,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロシクロペンタン)19.87g、連鎖移動剤としてクロロホルム(和光純薬製)0.556g(0.00465モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(連鎖移動剤の量:単量体と連鎖移動剤の合計に対し10重量%)。このアンプルが直立した状態で磁気撹拌子をスターラーにより撹拌しながら、55℃で24時間保持することにより沈殿重合を行ったところ、白濁し、樹脂が重合溶媒に析出したスラリーが得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、生成した樹脂粒子を含む液を濾別し、アセトンで洗浄し、真空乾燥することよりパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)樹脂粒子を得た(収率:82%)。分子量分布Mw/Mnは2.5であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
実施例2
磁気撹拌子を備えた直径30mmのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.0432g(0.000103モル)をヘキサフルオロベンゼン0.130gに溶解した溶液を入れ、単量体としてパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)5.0g(0.0205モル)、重合溶媒としてゼオローラ−H(日本ゼオン製、1,2,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロシクロペンタン)19.87g、連鎖移動剤としてクロロホルム(和光純薬製)1.250g(0.0105モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(連鎖移動剤の量:単量体と連鎖移動剤の合計に対し20重量%)。このアンプルが直立した状態で磁気撹拌子をスターラーにより撹拌しながら、55℃で24時間保持することにより沈殿重合を行ったところ、白濁し、樹脂が重合溶媒に析出したスラリーが得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、生成した樹脂粒子を含む液を濾別し、アセトンで洗浄し、真空乾燥することよりパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)樹脂粒子を得た(収率:80%)。分子量分布Mw/Mnは2.7であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
実施例3
磁気撹拌子を備えた直径30mmのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.0432g(0.000103モル)をヘキサフルオロベンゼン0.130gに溶解した溶液を入れ、単量体としてパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)5.0g(0.0205モル)、重合溶媒としてゼオローラ−H(日本ゼオン製、1,2,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロシクロペンタン)19.87g、連鎖移動剤としてクロロホルム(和光純薬製)0.435g(0.00364モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(連鎖移動剤の量:単量体と連鎖移動剤の合計に対し8.0重量%)。このアンプルが直立した状態で磁気撹拌子をスターラーにより撹拌しながら、55℃で24時間保持することにより沈殿重合を行ったところ、白濁し、樹脂が重合溶媒に析出したスラリーが得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、生成した樹脂粒子を含む液を濾別し、アセトンで洗浄し、真空乾燥することよりパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)樹脂粒子を得た(収率:81%)。分子量分布Mw/Mnは2.4であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
実施例4
磁気撹拌子を備えた直径30mmのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.0432g(0.000103モル)をヘキサフルオロベンゼン0.130gに溶解した溶液を入れ、単量体としてパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)5.0g(0.0205モル)、重合溶媒としてゼオローラ−H(日本ゼオン製、1,2,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロシクロペンタン)19.87g、連鎖移動剤としてクロロホルム(和光純薬製)0.236g(0.00197モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(連鎖移動剤の量:単量体と連鎖移動剤の合計に対し4.5重量%)。このアンプルが直立した状態で磁気撹拌子をスターラーにより撹拌しながら、55℃で24時間保持することにより沈殿重合を行ったところ、白濁し、樹脂が重合溶媒に析出したスラリーが得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、生成した樹脂粒子を含む液を濾別し、アセトンで洗浄し、真空乾燥することよりパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)樹脂粒子を得た(収率:83%)。分子量分布Mw/Mnは2.8であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
実施例5
磁気撹拌子を備えた直径30mmのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.0432g(0.000103モル)をヘキサフルオロベンゼン0.130gに溶解した溶液を入れ、単量体としてパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)5.0g(0.0205モル)、重合溶媒としてゼオローラ−H(日本ゼオン製、1,2,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロシクロペンタン)19.87g、連鎖移動剤としてクロロホルム(和光純薬製)0.155g(0.00130モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(連鎖移動剤の量:単量体と連鎖移動剤の合計に対し3.0重量%)。このアンプルが直立した状態で磁気撹拌子をスターラーにより撹拌しながら、55℃で24時間保持することにより沈殿重合を行ったところ、白濁し、樹脂が重合溶媒に析出したスラリーが得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、生成した樹脂粒子を含む液を濾別し、アセトンで洗浄し、真空乾燥することよりパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)樹脂粒子を得た(収率:74%)。分子量分布Mw/Mnは2.5であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
比較例1
非特許文献1のTable 2のSample92および93記載の重合条件に準拠して行った。但し、重合開始剤の仕込み量をSample92と93の間の量とした。容量75mLのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.017g(0.0000407モル)、単量体としてパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)5.0g(0.0205モル)、重合溶媒としてヘキサフルオロベンゼン8.2gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル溶液重合を行ったところ、樹脂が溶解した粘稠な液が得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、粘度調整のため樹脂溶液をヘキサフルオロベンゼン36gで希釈して樹脂希釈溶液を作成した。アンカー翼を備えたビーカー中にクロロホルム1Lを加え、攪拌下、前記の樹脂希釈溶液を前記クロロホルム中に加えることで樹脂を析出させ、真空乾燥することにより、パーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)樹脂を得た(収率:66%)。280℃24h加熱後の成形品は泡多数であったが、着色は目視観察で実施例5より強く着色しており、比較例2よりは着色の弱いものであった。分子量分布Mw/Mnは1.9であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
比較例2
非特許文献1のTable 3のSample84に記載の重合条件に従って行った。但し、非特許文献1には重合時間の記載はなく、本例では24時間とした。容量75mLのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.0578g(0.000137モル)、単量体としてパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)10.0g(0.0410モル)、重合溶媒としてヘキサフルオロベンゼン16.32g、連鎖移動剤として4臭化炭素(CBr4)0.0341g(0.000286モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(連鎖移動剤の量:単量体と連鎖移動剤の合計に対し0.34重量%)。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル溶液重合を行ったところ、樹脂が溶解した粘稠な液が得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、粘度調整のため樹脂溶液をヘキサフルオロベンゼン64gで希釈して樹脂希釈溶液を作成した。アンカー翼を備えたビーカーにクロロホルム1Lを入れ、攪拌下、前記の樹脂希釈溶液をビーカーに加えることで樹脂を析出させ、析出した樹脂をろ過により回収後、真空乾燥することにより、パーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)樹脂を得た(収率:54%)。分子量分布Mw/Mnは3.7であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
比較例3
非特許文献1のTable 3のSample78に記載の重合条件に従って行った。但し、非特許文献1には重合時間の記載はなく、本例では24時間とした。容量75mLのガラスアンプルに開始剤としてビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンゾイル)パーオキサイド0.0539g(0.000128モル)、単量体としてパーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)10.0g(0.0410モル)、重合溶媒としてヘキサフルオロベンゼン16.32g、連鎖移動剤として4臭化炭素(CBr4)0.1143g(0.000957モル)を入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した(連鎖移動剤の量:単量体と連鎖移動剤の合計に対し1.13重量%)。このアンプルを60℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル溶液重合を行ったところ、樹脂が溶解した粘稠な液が得られた。室温まで冷却後アンプルを開封し、粘度調整のため樹脂溶液をヘキサフルオロベンゼン36gで希釈して樹脂希釈溶液を作成した。アンカー翼を備えたビーカー中にクロロホルム1Lを加え、攪拌下、前記の樹脂希釈溶液を前記クロロホルム中に加えることで樹脂を析出させ、真空乾燥することにより、パーフルオロ(4−メチル−2−メチレン−1,3−ジオキソラン)樹脂を得た(収率:40%)。分子量分布Mw/Mnは2.5であった。フッ素樹脂の評価結果を表2に示す。
本発明のフッ素樹脂の製造方法は、非特許文献1に記載の方法に比べて収率が高く、実施例1〜5に示すように、70%以上の収率でフッ素樹脂を製造することができ、条件によっては75%以上の収率でフッ素樹脂を製造することができる。
本発明は、フッ素樹脂に関連する分野において有用である。

Claims (16)

  1. 下記一般式(1)で表される残基単位を含み、重量平均分子量Mwが5×104〜3×105の範囲であり、かつ280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度が6以下である、フッ素樹脂。
    (式(1)中、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf1、Rf2、Rf3、Rf4は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
  2. ガラス転移温度が125℃以上145℃以下である、請求項1に記載のフッ素樹脂。
  3. せん断速度10-2s、250℃における溶融粘度が1×102〜3×105Pa・sである、請求項1又は2に記載のフッ素樹脂。
  4. 分子量分布Mw/Mnが1.2〜8である、請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素樹脂。
  5. 280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)のクラックの個数が10本以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素樹脂。
  6. TG−DTAにてエアー中で10℃/minで300℃まで昇温した直後の重量減少量Aと、300℃まで昇温後300℃で30分間保持した後の重量減少量Bの差B−Aが1.0%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のフッ素樹脂。
  7. 280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)における泡の占める面積が成形品の面積に対して10%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のフッ素樹脂
  8. 280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚、直径26.4mm)中の泡の個数が10個以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のフッ素樹脂
  9. 重量平均分子量Mwが5×104〜2×105の範囲である、請求項1〜8のいずれかに記載のフッ素樹脂。
  10. せん断速度10-2s、250℃における溶融粘度が1×102〜5×104Pa・sである、請求項1〜9のいずれかに記載のフッ素樹脂。
  11. 下記一般式(3)で表される残基単位を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のフッ素樹脂。
  12. ラジカル重合開始剤および連鎖移動剤の存在下、下記一般式(4)で表される単量体を重合させて下記一般式(5)で表される残基単位を含むフッ素樹脂を得ることを含み、前記連鎖移動剤が水素原子および塩素原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物であり、前記フッ素樹脂は重量平均分子量Mwが5×104〜3×105の範囲であり、かつ280℃24時間加熱溶融成型品(3mm厚)の黄色度が6以下である、フッ素樹脂の製造方法。
    (式(4)および(5)中、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8はそれぞれ独立してフッ素原子、炭素数1〜7の直鎖状のパーフルオロアルキル基、炭素数3〜7の分岐状のパーフルオロアルキル基または、炭素数3〜7の環状のパーフルオロアルキル基からなる群の1種を示し、前記パーフルオロアルキル基はエーテル性酸素原子を有していてもよく、また、Rf5、Rf6、Rf7、Rf8は互いに連結して炭素数4以上8以下の環を形成してもよく、該環はエーテル性酸素原子を含む環であってもよい。)
  13. 連鎖移動剤の量が前記単量体と連鎖移動剤の合計に対し、3〜50重量%である、請求項12に記載の製造方法。
  14. 前記重合は、一般式(4)で表される単量体を溶解し、かつ、一般式(5)で表される残基単位を含むフッ素樹脂を析出させる有機溶媒中で行う、請求項12又は13に記載の製造方法。
  15. 前記連鎖移動剤が、塩素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物である、請求項12〜14のいずれかに記載の製造方法。
  16. 前記連鎖移動剤が、塩素原子及び水素原子を含有する炭素数1〜20の有機化合物である、請求項12〜15のいずれかに記載の製造方法。
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