以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
実施形態1
本発明に係るバレル研磨機の工作物収納保持装置が図1〜図11に示されており、この工作物収納保持装置1は、研磨処理すべきワークW、W、…が充填収容されたバレル槽2に一定の運動を与えることにより上記ワークW、W、…の研磨作用をなすバレル研磨機において、上記バレル槽2を着脱可能に固定保持するものであって、具体的には図12〜図16に示されるバレル研磨機に装備されるものである。
このバレル研磨機は、図16に模式的に示されるように、バレル槽2、2、…に、研磨処理物であるワークW、W、…と研磨材(メディア)G、G、…および研磨助剤(コンパウンド)等を所定の割合で混合して充填収容し、これらバレル槽2、2、…が水平方向に公転されることにより、バレル槽2、2、…内のワークW、W、…、研磨材G、G、…および研磨助剤等に遠心力が与えられて、これらワークW、W、…と研磨材G、G、…の擦れ合いにより、ワークW、W、…を研磨する構成を備えた遠心バレル方式のものである。なお、この遠心バレル方式においては、上記バレル槽2、2、…に、ワークW、W、…と研磨助剤および水のみを充填収容して、研磨材を用いることなくワークW、W、…同士の擦れ合いにより、ワークW、W、…を研磨する共擦り研磨も実施可能である。
上記バレル研磨機は、図12〜図16に示すように、上記工作物収納保持装置1、公転手段3、自転手段4および制御部5を主要部として構成され、これら構成部1、3、4、5が装置ケース6内に装置されてなる。
工作物収納保持装置1は、その主要構成部材である上記バレル槽2を着脱可能に固定保持するもので、図示の実施形態のバレル研磨機においては、後述するように、バレル研磨機の回転テーブル55上に円周方向へ等間隔をもって複数台(図示の場合は4台)の工作物収納保持装置1、1、…が装着されている。
工作物収納保持装置1は、図1〜図10に示すように、上記バレル槽2と、このバレル槽2を着脱可能に収納保持する容器受け装置(容器受け手段)8と、この容器受け装置8に収納保持されたバレル槽2を取外し可能に固定支持する容器固定装置(容器固定手段)9とを主要部として構成されており、上記容器受け装置8は、形状寸法の異なる複数種類のバレル槽2(2A、2B、2C)(図示の場合は3種類)を選択的に収納保持する構造を備えてなる。
上記容器受け装置8は、具体的には、標準装備される標準バレル槽2Aに加えて、オプション装備品としての、標準バレル槽2Aよりも形状寸法の小さい第2のバレル槽2Bおよび第3のバレル槽2Cを選択的に収納保持可能な基本構成を備えている他、要望に応じて、他の形状寸法のバレル槽の収納保持にも対応可能な構成とされている。
バレル槽2は、研磨処理物であるワークW、W、…と研磨材(メディア)G、G、…および研磨助剤(コンパウンド)等を収容する槽本体10と、この槽本体10を開閉可能に密閉閉止する蓋体11とからなる密閉容器の形態とされている。図示の実施形態においては、バレル槽2は、上記工作物収納保持装置1、1、…を介してバレル研磨機の回転テーブル55上に4つ装着される配置構成とされている。
上記槽本体10は、開口10aが上記蓋体11により密閉状に閉止される筒形容器の形態とされている。図示の実施形態の槽本体10はウレタン製容器で、図11に示すようにその内周面が多角形とされた断面形状を有する多角柱形状輪郭の収容空間を有する円筒型容器、具体的には、内周面が断面八角形(八角柱形状輪郭)の収容空間を有する円筒型容器の形態とされている。
なお、槽本体10の内周面は、図示のような断面八角形以外の多角形とされたり、断面円形とされるなど、目的に応じて種々の輪郭形状を有する収容空間に設計変更可能である。
図示の実施形態のバレル槽2としては、3種類のバレル槽2A、2B、2Cが基本構成品として準備されている。これらのバレル槽2A、2B、2Cの形状寸法は、その大きさ、換言すれば、その容量つまりタンク容量の違いに対応した相似形またはほぼ相似形とされている。
具体的には、第1のバレル槽2Aは、標準寸法の標準バレルとしての標準装備品で、槽本体10Aは、2.5リットルの容量(タンク容量)を有し、外径φ1が176mm、内径(図示の場合は八角形断面の内周面の対向面間隔)φ2が146mm、高さHが150mm、深さDが142mmに設定されている。
第2のバレル槽2Bは、標準バレルに次ぐ大きさのオプション装備品で、槽本体10Bは、1.7リットルの容量(タンク容量)を有し、外径φ1が156mm、内径φ2が127mm、高さHが134mm、深さDが128mmに設定されている。
第3のバレル槽2Cは、基本構成品として最も小さいオプション装備品で、槽本体10Cは、1.0リットルの容量(タンク容量)を有し、外径φ1が130mm、内径φ2が106mm、高さHが115mm、深さDが107mmに設定されている。
各蓋体11A、11B、11Cも、対応する蓋本体10A、10B、10Cの形状寸法にそれぞれ対応して設定されている。
また、上記バレル槽2(2A、2B、2C)の蓋体11(11A、11B、11C)による施蓋構造は、後述するように、容器固定装置9の閉止部(閉止手段)25により、容器受け装置8の容器受け本体15に共締め固定する構成とされている。
蓋体11は、図2に示すように、その周縁部11aが施蓋時における槽本体10の開口部10a外周部分に被覆嵌合する嵌合部を構成するとともに、この周縁部11a内側の蓋体11の裏面つまり内側底面にはシール部材(図示の場合はライニング)12が貼設されて、施蓋時の密封性が確保されている。
上記容器受け装置8は、図4〜6に示すように、標準寸法の標準バレル槽2Aを取外し可能に収納保持する形状寸法を有する容器受け本体15と、この容器受け本体15内に選択的にかつ取外し交換可能に装着されて、上記標準バレル槽2Aと形状寸法の異なるバレル槽2B、2Cを上記容器受け本体15に取外し可能に収納保持する複数種類の容器アダプタ16(16B、16C)(図示の場合は2種類)とを備えてなる。
上記容器受け本体15は、図8に示すように、上記標準バレル槽2Aを直接的に収納保持するもので、図示の実施形態においては、薄肉鋼板が図1および図8に示すような形状に板金加工等により折曲形成されてなる筒型容器の形態とされている。
この容器受け本体15は、上記標準バレル槽2Aを上下方向へ取外し可能に収納保持する筒型容器の形態とされており、上記標準バレル槽2Aの外径寸法に対応した内径寸法と高さ寸法を有する収容空間を備えている。
容器受け本体15の具体的構造は、標準バレル槽2Aの下部全体を嵌合保持する下部本体部15aと、標準バレル槽2Aの上半部外周を支持する一対の起立保持部15b、15bとを主要部として構成されている。
上記下部本体部15aは、標準バレル槽2Aの下部全体を嵌合保持する形状寸法を有する平底円筒容器の形態とされ、標準バレル槽2Aの外径寸法に対応した内径寸法を有する。また、下部本体部15aの底部には、後述するバレル研磨機の回転支軸65(図8および図13参照)が所定の傾斜角度をもって一体的に設けられている。
上記一対の起立保持部15b、15bは、上記下部本体部15aの上端縁から上方へ起立状に立ち上がって形成されてなり、これら起立保持部15b、15bの内側面が上記下部本体部15aの円筒内径面と面一の円筒湾曲面とされて、標準バレル槽2Aの上半部外周面の一部を摺動案内可能に支持する構成とされている。
このように、容器受け本体15の上半部が一対の起立保持部15b、15bにより構成されることにより、バレル槽2の容器受け本体15に対する着脱時の軸線つまり図2および図3における容器受け本体15の軸線Xに沿った上下方向への摺動案内作用と嵌装支持作用とが安定して確保されるとともに、上記両起立保持部15b、15b間の一対の開口部15c、15cが、標準バレル槽2Aの容器受け本体15に対する着脱操作部として機能する。
また、上記容器受け本体15に収納保持される標準バレル槽2Aは、図4に示すように、その軸線X1が容器受け本体15の軸線つまりつまり容器受け装置8の軸線X(図13)に一致ないしは平行となるように芯出し位置決めされる。これにより、上記容器受け装置8に収納保持されるバレル槽2の軸線X1の傾斜角度は、後述するように、回転主軸60の軸線(公転軸)X0(図13)に対して所定の傾斜角度αとなるように設定される。
この容器受け本体15の着脱操作部15c、15cとの関係で、標準バレル槽2Aの槽本体10Aの高さ方向中央部には、全周にわたって環状凹部10bが設けられて、標準バレル槽2Aの手持ち作業時の操作部を形成しており、この操作部10bと上記着脱操作部15c、15cとの協働作用により、標準バレル槽2Aの容器受け本体15に対する着脱操作の容易性が確保されている。
上記容器アダプタ16B、16Cは、上記標準バレル槽2Aよりも小さい形状寸法のバレル槽2B、2Cを位置決め支持する支持枠体の形態とされ、対象となるバレル槽2B、2Cを、上記標準バレル槽2Aに対応した条件下で、上記容器受け本体15内に位置決め保持する構造とされている。
容器アダプタ16Bは、図5に示すように、第2のバレル槽2Bを適用する場合に使用されるもので、容器受け本体15の内面に沿った外周形状寸法(つまり標準バレル槽2Aの外周形状寸法)を有するとともに、第2のバレル槽2Bの外径寸法に対応した内径寸法の側部支持面17aと、上記バレル槽2Bの底部を支持する底部支持面17bとを有する。
この容器アダプタ16Bの容器受け本体15に対する装着固定は、複数組の締付けボルト・ナット18、18、…(図示の場合は5組)によりなされるが、具体的には、容器アダプタ16Bおよび容器受け本体15の底部に、ボルト挿通孔22、22、…およびボルト挿通孔23、23、…がそれぞれ対応して設けられている。
そして、これら両ボルト挿通孔22、22、…および23、23、…がそれぞれ対向するようにして、容器アダプタ16Bを容器受け本体15内に位置決め配置させた状態で、締付けボルト・ナット18を各ボルト挿通孔22、23に挿通させて締め付けることにより、容器アダプタ16Bが容器受け本体15内の所定位置に装着固定され、これにより、容器受け本体15内における第2のバレル槽2Bの心出しと高さ方向位置の位置決めを行う構造が完成する。
容器アダプタ16Bが容器受け本体15内に装着された状態において、上記容器アダプタ16Bに嵌装保持されるバレル槽2Bは、図5に示すように、上記標準バレル槽2Aと同様に、その軸線X1が容器受け本体15の軸線つまり容器受け装置8の軸線X(図13)に平行となるように芯出し位置決めされる。これにより、上記容器受け装置8内に収納保持されるバレル槽2Bの軸線X1の傾斜角度は、回転主軸60の軸線(公転軸)X0(図13)に対して所定の傾斜角度αとなる。
容器アダプタ16Cは、図6に示すように、第3のバレル槽2Cを適用する場合に使用されるもので、容器受け本体15の内面に沿った外周形状寸法(つまり標準バレル槽2Aの外周形状寸法)を有するとともに、対象となるバレル槽2Cの外径寸法に対応した内径寸法の側部支持面19aと、上記バレル槽2Cの底部を支持する底部支持面19bとを有する。
この容器アダプタ16Cの容器受け本体15に対する装着固定は、複数組の締付けボルト・ナット20、20、…(図示の場合は5組)によりなされるが、具体的には、容器アダプタ16Cおよび容器受け本体15の底部に、ボルト挿通孔24、24、…および上記ボルト挿通孔23、23、…がそれぞれ対応して設けられている。
そして、これら両ボルト挿通孔24、24、…および23、23、…がそれぞれ対向するようにして、容器アダプタ16Cを容器受け本体15内に位置決め配置させた状態で、締付けボルト・ナット20を各ボルト挿通孔24、23に挿通させて締め付けることにより、容器アダプタ16Cが容器受け本体15内の所定位置に装着固定され、これにより、容器受け本体15内における第3のバレル槽2Cの心出しと高さ方向位置の位置決めを行う構造が完成する。
容器アダプタ16Cが容器受け本体15内に装着された状態において、上記容器アダプタ16Cに嵌装保持されるバレル槽2Cは、図6に示すように、上記標準バレル槽2Aと同様に、その軸線X1が容器受け本体15の軸線つまり容器受け装置8の軸線Xに平行となるように芯出し位置決めされる。これにより、上記容器受け装置8内に収納保持されるバレル槽2Cの軸線X1の傾斜角度は、回転主軸60の軸線(公転軸)X0(図13)に対して所定の傾斜角度αとなる。
なお、上記容器アダプタ16B、16Cを装着使用しない時は、上記容器受け本体15の内定部に設けられた上記締付けボルト・ナット18、18、…または20、20、…用のボルト孔は、閉塞用ボルト・ナット21により閉塞されている。
上記容器アダプタ16B、16Cの底部支持面17b、19bは、図5および図6に示すように、対象となるバレル槽2B、2Cをそれぞれ載置支持した状態において、上記容器受け本体15内における上記バレル槽2B、2Cの締付け高さ位置、具体的には蓋体11B、11Cにより施蓋閉止されたときの高さ位置が上記標準バレル槽2Aの標準締付け高さ位置HAに対応した高さ位置HB、HCとなるように設定されている。
上記高さ位置HB、HCは、対象となる上記バレル槽2B、2Cが上記容器アダプタ16B、16Cにより上記容器受け本体15内に収納保持された状態において、後述する容器固定装置9による固定支持動作が有効に作用する範囲に設定されている。
このような構成とされることにより、異なる種類のバレル槽2A、2B、2Cに対して、容器固定装置9の固定支持動作条件を変更調整することなく同一の基本操作のみで、形状寸法の異なるバレル槽2A、2B、2Cを容器受け本体15に固定保持することができ、バレル槽2A、2B、2Cの交換作業が容易かつ迅速に行える。
容器固定装置9は、閉止部(閉止手段)25および係合固定部(係合固定手段)26を主要部として構成されている。
上記閉止部25は、上記容器受け本体15に収納保持された上記バレル槽2(2A、2B、2C)の蓋体11(11A、11B、11C)を閉止固定するもので、図1、図2および図7に示すように、上記容器受け本体15に橋絡状に位置決め係合する長尺な棒状体の形態とされた閉止部材30と、この閉止部材30の長手方向中央部に螺進退可能に設けられ、上記バレル槽2の蓋体11(11A、11B、11C)に当接係合可能な締付けボルト部材31を備えてなる。
上記棒状体の構成材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属材料が好適に使用され、図示の実施形態の閉止部材30は、ステンレス鋼製の直線棒状体からなる押え金具の形態とされている。
この押え金具30は矩形の断面形状を有し、その長手方向中央部に上記締付けボルト部材31が螺進退可能に設けられるとともに、両端部位が係合端部32、32とされている。
上記締付けボルト部材31は、図2に示すように、ボルト本体33とこのボルト本体33の基端に一体的に設けられた操作ノブ34からなる。上記ボルト本体33は、押え金具30に設けられたボルト孔35に上下方向へ螺進退可能に取付けられるとともに、その先端33aがバレル槽2の蓋体11に設けられた受け部材36上面に当接係合可能とされている。
係合端部32は、後述する係合固定部26の係合孔37、38に挿通係合する係合突部32aと、この係合突部32aの基部に設けられた位置決め部32bとからなる。
係合突部32aは、上記係合孔37、38の輪郭形状に対応した断面形状とされ、図示の実施形態においては、押え金具30の矩形の断面形状と同一の形状寸法とされている。
また位置決め部32bは、上記容器受け本体15の内側面に当接係合可能とされて、押え金具30の容器受け本体15に対する長手方向位置を位置決めするように配置設定されている。
図示の実施形態の位置決め部32bは、図示のごとく、六角穴付きボルトが押え金具30に螺合植設されて、その円筒形頭部の円筒外周面が上記位置決め部32bを形成している。両端部の位置決め部32b、32b間の距離寸法Dは、図2および図7に示すように、上記容器受け本体15の内側面の径寸法、具体的には、一対の起立保持部15b、15bの内側面間距離D0に対応して設定されている。
これにより、後述する蓋体11の施蓋時において、上記押え金具30の両係合端部32、32の係合突部32a、32aが上記係合固定部26の係合孔37、38にそれぞれ挿通係合する際に、両端部の位置決め部32b、32bが上記容器受け本体15の内側面に当接係合して、押え金具30の容器受け本体15に対する長手方向位置が位置決めされる。
係合固定部26は、上記閉止部25の閉止固定動作により、この閉止部25の押え金具30を上記容器受け本体15に一体的に係合固定するもので、上記容器受け本体15に設けられている。
上記係合固定部26は、具体的には、容器受け本体15の筒状開放縁部に対向して設けられた一対の上記係合孔37、38を備えてなり、これら係合孔37、38に、上述したように、上記押え金具30の係合端部32、32がそれぞれ挿通係合する構成とされている。
また、これら係合孔37、38の少なくとも一方の係合孔(図示の場合は係合孔38のみ)が、上記容器受け本体15に設けられた係合凹部40と、上記容器受け本体15の外側部に弾発的に揺動可能に設けられた仮止め部材41の係合孔部42とから構成されている。このような構成とされることにより、後述する蓋体11の施蓋時における上記押え金具30の係合固定部26に対する挿通係合操作が担保されるとともに、上記蓋体11がバレル研磨機の研磨動作中に上記バレル槽2から外れてしまう危険が有効に防止される。
図示の実施形態の係合固定部26は、上記容器受け本体15の筒状開放縁部、具体的には、上記起立保持部15b、15bの上端縁部に、一対の係合支持部45、46が対向してそれぞれ一体的に設けられ、これら両係合支持部45、46の一方の係合支持部45に、上記押え金具30の一方の係合端部32を挿通係合する上記係合孔37が設けられるとともに、他方の係合支持部46に、上記押え金具30の他方の係合端部32を挿通係合する上記係合孔38(40、42)が設けられている。
そして、この係合孔38は、上述したように、上記係合支持部46に設けられた係合凹部40と、上記係合支持部46の外側部に設けられた仮止め部材41の係合孔部42とからなり、後述する蓋体11の施蓋時における上記押え金具30の係合固定部26に対する挿通係合操作を担保しつつ、蓋体11がバレル研磨機の研磨動作中にバレル槽2から外れてしまう危険を有効に防止する。
上記仮止め部材41は金属製板材からなり、図9に具体的に示されているように、上記係合支持部46の外側面に取付け固定された取付基板47の軸受部47aに、上記係合孔部42を有する仮止め片48の基部48aが、支軸49を介して揺動可能に枢支されるとともに、弾発部材50により、上記仮止め片48が上記係合支持部46の外側面に向けて内方へ常時弾発付勢されている。
上記弾発部材50としては、ねじりコイルばねが好適に使用され、このねじりコイルばね50は、図9(a)に示すように、そのコイル部50aが上記支軸49に挿通支持されるとともに、その腕部50b、50cが上記取付基板47および仮止め片48にそれぞれ当接係止されている。そして、上記弾発部材50の弾発力は、上記仮止め片48を上記係合支持部46の外側面に向けて内方へ常時弾発付勢し、これにより、上記仮止め片48が係合支持部46の外側面に当接係合した状態(閉止状態)が保持されている。この仮止め片48の先端部つまり仮止め部材41の先端部41aは、図9(b)に示すように、外方へ所定の角度をもって傾斜されて、揺動操作部が形成されている。
また、上記仮止め片48の係合孔部42は、上記閉止状態において、上記係合支持部46の係合凹部40と重合一致するように位置決め設定され、これにより上記係合孔38が重合形成されている(図9(a)参照)。
しかして、以上のように構成された容器固定装置9により、バレル槽2(2A、2B、2C)を蓋体11(11A、11B、11C)で密閉状に施蓋しながらバレル槽2(2A、2B、2C)を容器受け本体15に固定し、また解放する方法は以下のとおりである(図10参照)。なお、図示の実施形態においては、バレル槽2として標準バレル槽2Aが使用される場合を例にとって説明される。
(1)研磨処理物であるワークW、W、…と研磨材(メディア)G、G、…および研磨助剤(コンパウンド)等が充填収容されたバレル槽2(2A)を上記容器受け本体15に収納保持した状態において、閉止部材30の両係合端部32、32の一方を、容器受け本体15に設けられた係合固定部26の一方の係合孔37に挿通係止させる(図10(a))。
(2)続いて、この係合孔37に挿通係止させた閉止部材30の係合端部32の部位(挿通係止部位)を揺動支点として、上記閉止部材30を揺動させ(図10(b)→(c))、閉止部材30の他方の係合端部32を、上記係合固定部26の他方の係合孔38に挿通係止させる。
この場合、この他方の係合孔38は、上述したように、上記容器受け本体15の係合支持部46に設けられた係合凹部40と、上記係合支持部46の外側部に設けられた仮止め部材41の係合孔部42とから構成されている。
よって、この係合孔38に上記閉止部材30の他方の係合端部32を挿通係止するに際しては、まず、上記仮止め部材41の仮止め片48を、弾発部材50の弾発付勢力に抗して、係合支持部46の外方へ弾発的に揺動させながら、上記閉止部材30を上記バレル槽2の蓋体11上面に沿って揺動させ、より具体的には起立保持部15bの上端縁上を摺動させながら揺動させ(図10(b)参照)、これにより、上記閉止部材30の他方の係合端部32を上記係合凹部40に係合させる。
この後、上記仮止め部材41を容器受け本体15の外側面に向け内方へ揺動して弾性復帰させることで、この仮止め部材41の係合孔部42に上記閉止部材30の他方の係合端部32が挿通係止されて、係合孔38(40、42)に対する挿通係止が完了する(図10(c)参照)。
これにより、上記バレル槽2の上記容器受け本体15に対する収納保持状態および蓋体11によるバレル槽2の槽本体10の閉止状態が仮止めされる。
(3)続いて、この仮止め状態において、上記閉止部25の締付けボルト部材31を、操作ノブ34により締付け回転操作する、これにより、締付けボルト部材31のボルト本体33が上記閉止部材30を螺進して、その先端33aが上記蓋体11の受け部材36上面に当接係合し、さらなる螺進により蓋体11を槽本体10に対して押圧する。
この結果、上記閉止部材30と蓋体11は、上記締付けボルト部材31により、互いに離れる方向へ押されて共締め固定状態となり、この結果、蓋体11が槽本体10に締付け固定されて、バレル槽2が緊密に施蓋され、これにより、バレル槽2の高い密閉性が確保されると同時に、バレル槽2は上記容器受け本体15に締付け固定されることになる。
(4)逆に、上記(1)〜(3)とまったく逆の操作を行うことにより、蓋体11によるバレル槽2の密閉施蓋状態が解除されると同時に、バレル槽2は上記容器受け本体15から取り外し可能となる。
なお、これら一連の蓋体11の槽本体10に対する開閉着脱作業は、熟練を要することなく容易迅速に行うことができる。
続いて、上述した工作物収納保持装置1を装備するバレル研磨機の具体的な構成について説明する。
本実施形態のバレル研磨機は、具体的には、図12〜図16に示されている。このバレル研磨機は、前述したように、上記工作物収納保持装置1、公転手段3、自転手段4および制御部5を主要部として構成され、これら構成部1、3、4、5が装置ケース6内に装置されてなる。
公転手段3は、バレル槽2を水平方向へ公転させるもので、具体的には回転テーブル55および駆動源である駆動モータ56を主要部として構成されている。
回転テーブル55は、垂直な回転主軸60に対して水平に取り付けられるとともに、この回転主軸60が駆動モータ56に駆動連結されている。
図示の実施形態においては、装置ケース6の基台フレーム61の中心位置に主軸台62が設けられ、この主軸台62に、上記回転主軸60が、軸受63、63を介して垂直状態で回転可能に軸支されており、この回転主軸60の上端部に、上記回転テーブル55が水平状態で取付け支持されている。
また、回転主軸60の下部が軸支される上記主軸台62には、上記駆動モータ56が水平状態で取り付けられており、具体的には図示しないが、この駆動モータ56の出力軸に、上記回転主軸60の下部が直接的に歯車連結されている。
そして、駆動モータ56の回転駆動により、上記回転主軸60と共に、上記回転テーブル55が水平方向へ所定の回転速度をもって回転駆動される。この場合の回転テーブル55の回転速度つまり後述するバレル槽2(2A、2B、2C)の公転速度は、後述するように、制御部5の加工プログラムに従って、研磨工程の初期から仕上期に向けて低速から高速に変更するように自動制御される。
上記工作物収納保持装置1のバレル槽2は、上記工作物収納保持装置1を介して、上記回転テーブル55上の外周位置に円周方向へ等間隔をもって複数個(図示の場合は4つ)装着される配置構成とされている。
つまり、回転テーブル55の外周位置には、4本の回転支軸65、65、…が周方向へ等間隔をもって配置され、各回転支軸65は、軸受66、66により垂直状態で、つまり上記回転主軸60と平行状態で回転可能に軸支され、この回転支軸65の上端部に、上記バレル槽2を取外し可能に収容支持する上記容器受け本体15が傾斜状態で取付け固定されている。
この容器受け本体15にバレル槽2が収容された状態において、バレル槽2は、その軸線X1が上記回転主軸60の軸線(後述する公転軸)X0(図13)に対して所定角度αだけ傾斜するように構成されている。
自転手段4は、バレル槽2を自転させるもので、具体的には、回転テーブル55の回転速度つまりバレル槽2の公転速度よりも大幅に減速されたゆっくりした自転速度で自転する構成とされている。
図示の実施形態の自転手段4は遊星運動機構68の形態とされ、図示の実施形態においては、遊星歯車機構が採用されている。
この遊星歯車機構68は、図15に示すように、上記回転主軸60と同心状にかつ静止状に設けられた太陽歯車70と、上記回転支軸65に同心状にかつ一体的に設けられた遊星歯車71とを含んでなり、具体的には、上記太陽歯車70、上記遊星歯車71、およびこれら太陽歯車70および遊星歯車71の間に噛合状態で介装される中間歯車72とを備えてなる。この中間歯車72は、回転テーブル55に回転可能に支持されている。
すなわち、図14および図15を参照して、回転テーブル55の回転(矢符A方向)により、この回転テーブル55上に工作物収納保持装置1を介して配置支持された4つのバレル槽2、2、…も回転(公転)するところ、これらバレル槽2、2、…の回転支軸65、65、…には、上記遊星歯車機構68の遊星歯車71がそれぞれ取付け固定されている。この遊星歯車機構68において、太陽歯車70は上述のごとく静止固定されているから、これら両歯車60、61に噛合連結された中間歯車72を介して、上記遊星歯車71は太陽歯車70のまわりをA方向へ公転しながら、この公転速度よりも大幅に減速されたゆっくりした自転速度をもって公転方向と逆方向へ自転することになる。
制御部5は、上記公転手段3を自動制御するもので、具体的には、CPU、ROM、RAMおよびI/Oポートなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。
この制御部5には、バレル研磨加工を実行させるための加工プログラム等が組み込まれるとともに、公転手段3の駆動モータ56の駆動に必要な種々の情報、例えば、回転テーブル55の回転速度(バレル槽2の公転速度)、動作時間、速度変更タイミングあるいは研磨工程の加工時間等が、制御データとして予めまたは操作部の操作パネル(図示省略)により適宜選択的に入力設定されており、これらのデータに従って上記駆動モータ56を制御する。
上記制御部5には、種々の加工条件を考慮して、複数のバレル研磨加工を実行させるための加工プログラムが組み込まれており、これらの加工プログラムの選択は、上記操作部の操作パネルで所望のプログラム番号をタッチ指定することにより行われる。
しかして、以上のように構成されたバレル研磨機において、多数のワークW、W、…と研磨材G、G、…および研磨助剤等を充填収容したバレル槽2、2、…が、それぞれ工作物収納保持装置1により密閉状に固定保持された状態で、上記操作部の操作パネルで所望の加工プログラムを選択した後、起動スイッチを起動操作することにより、制御部5により公転手段3の駆動モータ56が自動制御されて、回転テーブル55が所定の加工パターンをもって回転駆動される研磨工程が実行される。
すなわち、上記制御部5による公転手段3の駆動モータ56の駆動により、上記回転テーブル55が水平回転するとともに、この回転テーブル55の回転に上記遊星歯車機構68が連動して、上記バレル槽2は、垂直な回転主軸(公転軸)60まわりに水平方向に所定の公転速度をもって公転されて、バレル槽2内のワークW、W、…と研磨材G、G、…に遠心力が与えられて、これらワークW、W、…と研磨材G、G、…の擦れ合いによりワークW、W、…が研磨されることとなる。
この場合、バレル槽2、2、…は、その軸線X1を上記回転主軸60に対して所定角度αだけ傾斜した状態で回転支軸65にそれぞれ取付けられるとともに、上記公転運動に伴う遊星歯車機構68の減速自転作用により、非常にゆっくりした自転速度をもって公転方向Aと逆方向へ自転される。
この結果、各バレル槽2内に充填収容されたワークW、W、…と研磨材G、G、…の挙動、特に研磨材G、G、…の挙動は、図16(a)に示すように、バレル槽2の傾斜内面に当たってランダムに跳ね返り立体的に動き、研磨材G、G、…は、矢符図示のごとく中央部へ向けて中へ中へと練り込まれるように流動する。
換言すれば、バレル槽2は、図16(b)→図16(c)→図16(b)のように、ゆっくりと揺動しながら公転するため、バレル槽2内では研磨材G、G、…とワークW、W、…がランダムに立体的な動きとなって、バレル槽2の中央へ練り込まれるような状態となり、ワークW、W、…が常に研磨材G、G、…の中に存在することになる。
このような挙動は、バレル槽2の公転により生じる遠心力が、研磨材G、G、…とワークW、W、…に対して単なる水平方向の動きに止まらず、さらにバレル槽2の傾きによる傾斜内面との協働作用による上下方向の動きも誘発し、その結果、研磨材G、G、…とワークW、W、…は自重の違いも有効に作用して、互いに分離することなく渾然一体となってバレル槽2内を上下左右方向へ流動(3次元相対運動)すると考えられる。
以上の制御部5による所定の研磨工程が完了すると、工作物収納保持装置1の容器固定装置9による各バレル槽2の密閉施蓋状態が、上述した要領で解除されると同時に、各バレル槽2が容器受け本体15から取り外されて、研磨処理を完了したワークW、W、…と研磨材G、G、…がバレル槽2、2、…から取り出され、代わりに、新たに研磨処理されるべきワークW、W、…と研磨材G、G、…がバレル槽2、2、…に充填収容された後、再び上記工作物収納保持装置1により密閉状に収容保持された状態で、新たな研磨工程が実行される。以下、同様の工程が繰り返される。
以上のように、本実施形態の工作物収納保持装置1は、研磨処理すべきワークW、W、…が充填収容されたバレル槽2(2A、2B、2C)を着脱可能に収納保持する容器受け装置8と、この容器受け装置8に収納保持されたバレル槽2(2A、2B、2C)を取外し可能に固定支持する容器固定装置9とを備えてなり、上記容器受け装置8が、形状寸法の異なる複数種類のバレル槽2(2A、2B、2C)を選択的に収納保持する構造を備えてなるから、以下に列挙されるような効果が有効に発揮される。
(1)上記容器受け装置8が、形状寸法の異なる複数種類のバレル槽2(2A、2B、2C)を選択的に収納保持する構造を備えてなることにより、ユーザの多様な要求に柔軟に対応することができる。
すなわち、ユーザによって研磨処理すべきワークの量は一定せず、多量のワークを研磨処理する必要のあるユーザ、少量のワークのみを研磨処理する必要のあるユーザ、あるいは同一のユーザでも、研磨処理するワークの種類等によって、多量の研磨処理をする必要がある場合と、少量の研磨処理で足りる場合とがある。
例えば、バレル槽内にワークと研磨助剤および水のみを充填して、研磨材を用いることなくワーク同士の擦れ合いによりワークを研磨する共擦り研磨では、ワークをバレル槽の内容積の1/3〜2/3程度まで投入充填しないと所望の研磨効果が得られ難い。このような場合には、ユーザにとって、従来一般の工作物収納保持構造では、バレル槽の内容積が必要以上に大きいという事態を招くことにもなり、このことは、必然的にワークを不必要に多く研磨処理するという事態をも招くことになり、不経済な生産工程を行う必要がある等の問題を生じていた。
これに対して、本実施形態の工作物収納保持装置1によれば、上記容器受け装置8が、形状寸法の異なる複数種類のバレル槽2(2A、2B、2C)を選択的に収納保持する構造を備えてなるから、ユーザの多様な要求に柔軟に対応することができる。
(2)上記容器受け装置8が、標準寸法の標準バレル槽2Aを収納保持する形状寸法を有する容器受け本体15と、この容器受け本体15内に選択的にかつ取外し交換可能に装着されて、上記標準バレル槽2Aと形状寸法の異なるバレル槽2B、2Cを上記容器受け本体15に取外し可能に収納保持する容器アダプタ16B、16Cとを備えてなることにより、使用するバレル槽2(2A、2B、2C)を形状寸法の異なるバレル槽2(2A、2B、2C)に交換するに際しては、例えば標準バレル槽2Aに替えて、形状寸法の異なる他のバレル槽2B、2Cを使用する場合には、この他のバレル槽2B、2Cに対応した容器アダプタ16B、16Cを選択して、上記容器本体15内に装着するだけで(図5または図6参照)、この他のバレル槽2B、2Cを使用することができ、異なる形状寸法のバレル槽2(2A、2B、2C)の交換使用が容易かつ迅速に行える。
(3)上記容器アダプタ16B、16Cは、対象となるバレル槽2B、2Cを、標準バレル槽2Aに対応した条件下で、上記容器受け本体15内に位置決め保持する構造とされていることにより、装置の基本構成に変更を加えることなく、形状寸法の異なるバレル槽2(2A、2B、2C)を常に同一条件下で安定して固定保持することができ、汎用性に富む。
(4)上記容器アダプタ16B、16Cは、対象となるバレル槽2B、2Cの底部を支持する底部支持面17b、19bを有し、この底部支持面17b、19bは、対象となるバレル槽2B、2Cを載置支持した状態において、上記容器受け本体15内におけるバレル槽2B、2Cの締付け高さ位置が標準バレル槽2Aの標準締付け高さ位置HA(図4)に対応した高さ位置HB、HC(図5または図6参照)となるように設定されていることにより、上記容器固定装置9の固定支持動作条件を調整することなく、形状寸法の異なるバレル槽2(2A、2B、2C)を容器受け本体15に固定保持することができ、バレル槽2(2A、2B、2C)の交換作業が容易かつ迅速に行える。
実施形態2
本実施形態は図17に示されており、実施形態1における容器アダプタ(16、16B、16C)の容器受け本体15に対する装着固定構造が若干改変されたものである。
すなわち、図示の容器アダプタ16Bは、第2のバレル槽2Bを適用する場合に使用されるものであり、実施形態1の図5に示される装着固定構造に対応している。
この容器アダプタ16Bの容器受け本体15に対する装着固定は、複数本の固定ボルト75、75、…(図示の場合は3本)によりなされるが、具体的には、容器受け本体15および容器アダプタ16Bの両側部に、ボルト孔76、76、…およびボルト孔77、77、…がそれぞれ対応して設けられている。
そして、これら両ボルト孔76、76、…および77、77、…がそれぞれ対向するようにして、容器アダプタ16Bを容器受け本体15内に位置決め配置させた状態で、固定ボルト75を各ボルト孔76、77に螺合させることにより、容器アダプタ16Bが容器受け本体15内の所定位置に装着固定され、これにより、容器受け本体15内における第2のバレル槽2Bの心出しと高さ方向位置の位置決めを行う構造が完成する。
なお、具体的には図示しないが、第3のバレル槽2Cを適用する場合に使用される容器アダプタ16Cについても、容器受け本体15に対する装着固定構造は同様である。
その他の構成および作用は実施形態1と同様である。
実施形態3
本実施形態は図18〜図20に示されており、実施形態1における容器受け装置(容器受け手段)8において、容器アダプタ16の具体的構成が改変され、ないしは容器アダプタ16に加えて新たな容器アダプタ116が追加採用されたものである。
すなわち、実施形態1の容器受け装置8は、標準寸法の標準バレル槽2Aを取外し可能に収納保持する形状寸法を有する容器受け本体15に対して、この標準バレル槽2Aと相似形またはほぼ相似形のバレル槽2B、2Cを選択的に収納保持する構成の容器アダプタ16B、16Cを備えてなるが、本実施形態の容器受け装置8においては、上記容器受け本体15に対して、標準バレル槽2Aと外観形状の異なる複数のバレル槽2Dを収納保持する容器アダプタ116が採用され、ないしは既存の上記容器アダプタ16(16B、16C)に加えて追加されている。
上記容器アダプタ116は、標準バレル槽2Aよりも細い長い形状寸法のバレル槽2Dを複数個(図示の実施形態においては3個)上記容器受け本体15に取外し可能に収納保持する構造とされている。
上記バレル槽2Dは、上記標準バレル槽2Aよりも小さい形状寸法を有する、具体的には、ワークWとして針等の細長い線材を収納保持するのに適した形状寸法を有する小径の細長い円筒容器の形態とされており、研磨処理物である上記ワークW、W、…等を収容する槽本体110と、この槽本体110を開閉可能に密閉閉止する蓋体111とからなる密閉容器の形態とされている。
上記バレル槽2Dの具体的構造は実施形態1のバレル槽2(2A、2B、2D)と同様で、上記槽本体110は、図示のごとく、開口110aが上記蓋体111により密閉状に閉止される筒形容器の形態とされている。図示の実施形態の槽本体110はウレタン製容器で、図20に示すようにその内周面が多角形とされた断面形状を有する多角柱形状輪郭の収容空間を有する円筒型容器、具体的には、内周面が断面八角形(八角柱形状輪郭)の収容空間を有する円筒型容器の形態とされている。
なお、槽本体110の内周面は、図示のような断面八角形以外の多角形とされたり、断面円形とされるなど、目的に応じて種々の輪郭形状を有する収容空間に設計変更可能である点は、実施形態1のバレル槽2の槽本体11と同様である。
上記槽本体110の収容空間の形状寸法は、対象となるワークW、W、…が倒れて互いに交差することなく起立状に収容保持されるように、内径φと深さDが設定されている(図18参照)。槽本体110の収容空間がこのような形状寸法とされることにより、対象となるワークW、W、…がバレル槽2Dに充填収納された状態において、バレル槽2Dに所定の研磨作用をなす運動が与えられても、ワークW、W、…に倒れが生じることはなく、よってワークW、W、…同士が互いに交差したり、ワークW、W、…の端部がバレル槽2Dの内周面に衝突するなどして、バレル槽2Dの研磨作用によりワークW、W、…自身が傷ついてしまうというおそれはない。
上記容器アダプタ116は、複数のバレル槽2D、2D、2D(図示の場合は3つ)を上下から位置決め支持する底部支持枠体117および上部押え部材118から構成されている。
上記底部支持枠体117は、容器受け本体15の底部に取外し可能に装着固定されて、上記細長い複数のバレル槽2D、2D、2D(図示の場合は3つ)の底部をそれぞれ位置決め支持するもので、各バレル槽2D、2D、2Dの底部をそれぞれ位置決め収納する複数の収納ポケット120、120、…(図示の場合は3つ)を有する。
図示の底部支持枠体117は、上記容器受け本体15の底部に固定される円形平板状の支持基板121上に、上記収納ポケット120、120、120が設けられてなる。
上記支持基板121は、容器受け本体15の内面に沿った外周形状寸法(つまり標準バレル槽2Aの外周形状寸法)に対応した円形輪郭を有し、上記収納ポケット120は、図19に示すように、支持基板121に周方向へ等間隔をもって3つ配置形成されている(3等配)。
各収納ポケット120は、上記支持基板121上に一体的に固定された円環状の起立板122からなり、上記バレル槽2Dの外径寸法に対応した内径寸法を有する内周面122aを有するとともに、支持基板121の上面121aが上記バレル槽2Dの底部を支持する底部支持面を形成する。
この容器アダプタ116の容器受け本体15に対する装着固定は、実施形態1と同様に、複数組の締付けボルト・ナット123、123、…(図示の場合は3組)によりなされるが、具体的には、容器アダプタ116の支持基板121および容器受け本体15の底部に、ボルト挿通孔124、124、124およびボルト挿通孔125、125、125がそれぞれ対応して設けられている。
そして、これら両ボルト挿通孔125、125、125および124、124、124がそれぞれ対向するようにして、容器アダプタ116を容器受け本体15内に位置決め配置させた状態で、締付けボルト・ナット123を各ボルト挿通孔125、124に挿通させて締め付けることにより、容器アダプタ116が容器受け本体15内の所定位置に装着固定され、これにより、容器受け本体15内におけるバレル槽2Dの心出しと高さ方向位置の位置決めを行う構造が完成する。
容器アダプタ116が容器受け本体15内に装着された状態において、上記収納ポケット120に嵌装保持されるバレル槽2Dは、その軸線X1が容器受け本体15の軸線つまり収納容器保持部5の軸線Xに平行となるように芯出し位置決めされる。これにより、上記容器受け本体15内に収納保持されるバレル槽2Dの軸線X1の回転主軸60の軸線X0(図13)に対する傾斜角度も所定の傾斜角度αとなる。
上記上部押え部材118は、上記底部支持枠体117に位置決め支持された前記複数のバレス槽2D、2D、2Dの頂部、具体的には蓋体111、111、111を一体に位置決め支持するものである。
図示の実施形態の上部押え部材118は、図19および図20に示すように、三又構造の押え部材本体130のアーム131、131、131の先端部下面に、上記3つのバレル槽2D、2D、2Dの頂部をそれぞれ揺動可能に枢支する押え係合部132、132、132が設けられている。
これに対応して、各バレル槽2Dの頂部、つまり槽本体110に施蓋される蓋体111の上面中央部には、上記押え係合部132に揺動可能に枢支係合される係合球部133が設けられている。
上記押え係合部132は、図18および図20に示すように、上記係合球部133を揺動可能に嵌合支持する係合凹部の形態とされるとともに、この押え係合部132は上記アーム131の先端に臨んで、つまり押え部材本体130の放射方向へ解放されている。このような構造とされることにより、押え係合部132は、バレル槽2Dの係合球部133との係脱作業を容易にするとともに、係合球部133との係合状態において係合球部133を揺動可能に嵌合支持する。
さらに、上部押え部材118のアーム131、131、131の押え係合部132、132、132が3つのバレル槽2D、2D、2Dの頂部をそれぞれ揺動可能に枢支することにより、3つのバレル槽2D、2D、2Dの高さ位置が何らかの原因により均等でなく不揃いであっても、後述するように、容器固定装置9の締付けボルト部材31を締付け回転操作することにより、バレル槽2D、2D、2Dの高さ位置の不均一が上記押え部材118の揺動支持作用により吸収相殺されて、均一な押圧力をもって締付け固定されることとなる。
また、上記押え部材本体13の中央部上面つまりアーム131、131、131の結合基部上面は、上記容器固定装置9の締付けボルト部材31の先端33aが当接係合する受け部134とされている。
そして、上記容器アダプタ116は、容器受け本体15内に装着された状態において、上記3つのバレル槽2D、2D、2Dを、上記標準バレル槽2Aに対応した条件下で、上記容器受け本体15内に起立状態で位置決め保持する構造とされている。
すなわち、上記容器アダプタ116の底部支持枠体117と上部押え部材118が3つのバレル槽2D、2D、2Dを上下から起立状に支持した状態において、容器受け本体15内におけるバレル槽2D、2D、2Dの締付け高さ位置つまり上記押え部材本体130の上面高さ位置HDが標準バレル槽2Aの標準締付け高さ位置HA(図4)に対応した高さ位置となるように設定されている。
上記締付け高さ位置HDは、対象となる上記バレル槽2D、2D、2Dが上記容器アダプタ116により上記容器受け本体15内に収納保持された状態において、上記容器固定装置9による固定支持動作が有効に作用する範囲に設定されている。
このような構成とされることにより、異なる種類のバレル槽2A、2Dまたはバレル槽2A、2B、2C、2Dに対して、容器固定装置9の固定支持動作条件を変更調整することなく同一の基本操作のみで、形状寸法の異なるバレル槽2A、2Dまたはバレル槽2A、2B、2C、2Dを容器受け本体15に固定保持することができ、バレル槽2A、2Dまたはバレル槽2A、2B、2C、2Dの交換作業が容易かつ迅速に行える。
しかして、以上のように構成された工作物収納保持装置1において、バレル槽2D、2D、2Dは、容器受け本体15内に装着された容器アダプタ116の底部支持枠体117の収納ポケット120、120、120に、その底部をそれぞれ嵌装保持されることにより、その軸線X1、X1、X1が容器受け本体15の軸線つまり収納容器保持部5の軸線Xに平行となるように芯出し位置決めされる(図18)。この状態で、上部押え部材118により、バレル槽2D、2D、2Dの蓋体111の係合球部133、133、133をそれぞれ揺動可能に枢支することで、バレル槽2D、2D、2Dは、上記底部支持枠体117と上部押え部材118により上下から一体に支持されて、上記芯出し位置決め状態が固定される。
このようにバレル槽2D、2D、2Dが上記容器受け本体15に収納保持した状態において、前述した要領で容器固定装置9により、上記バレル槽2D、2D、2Dの容器受け本体15に対する収納保持状態および蓋体211によるバレル槽2D、2D、2Dの槽本体210の閉止状態が仮止めした後、最後に、上記容器固定装置9の締付けボルト部材31を締付け回転操作することにより、締付けボルト部材31の先端33aが上記上部押え部材118の受け部材36上面に当接係合し、さらなる螺進により押え部材118を介して3つの蓋体211、211、211が槽本体210、210、210に対して押圧される結果、蓋体211、211、211が槽本体210,210、210に同時に締付け固定されて、3つのバレル槽2D、2D、2Dが緊密に施蓋され、これにより、バレル槽2D、2D、2Dの高い密閉性が確保されると同時に、バレル槽2D、2D、2Dは上記容器受け本体15に締付け固定される。
この場合、上記3つのバレル槽2D、2D、2Dの頂部が上部押え部材118の押え係合部132、132、132によりそれぞれ揺動可能に枢支されていることにより、上述したように、3つのバレル槽2D、2D、2Dの高さ位置が均等でなく不揃いであっても、上記締付けボルト部材31を締付け回転操作することにより、バレル槽2D、2D、2Dの高さ位置の不均一が上記押え部材118の揺動支持作用により吸収相殺されて、均一な押圧力をもって締付け固定される。
その他の構成および作用は実施形態1と同様である。
実施形態4
本実施形態は図21および図22に示されており、実施形態1における容器固定装置9の係合固定部26の構造が若干改変されたものである。
すなわち、本実施形態の係合固定部26において、仮止め部材41の揺動操作部41aにおける内側面80が、閉止部材30の係合端部32の操作案内面として作用するように構成されている。
具体的には、図21に示すように、仮止め部材41における仮止め片48の先端部分が折曲げ形成されてなる揺動操作部41aは、実施形態1に比較して長さが延長されるとともに、その外方への傾斜角度θも大きく設定されている。
換言すれば、閉止部材30の両係合端部32、32の一方を、容器受け本体15に設けられた係合固定部26の一方の係合孔37に挿通係止させた状態で、この係合孔37に挿通係止させた係合端部32の部位(挿通係止部位)を揺動支点として、上記閉止部材30の他方の係合端部32を、上記係合固定部26の他方の係合孔38の係合凹部40に向けて揺動させる場合に、この他方の係合端部32が上記仮止め部材41の揺動操作部41aの内側面80に摺接可能に当接する構成とされている(図21(a)の二点鎖線および図21(b)参照)。
しかして、このような構成とされた容器固定装置9においては、バレル槽2(2A、2B、2C)を蓋体11(11A、11B、11C)により密閉状に閉止するに際して(図示の場合は、バレル槽2として標準バレル槽2Aを使用)、上記係合固定部26の係合孔37に閉止部材30の一方の係合端部32を挿通係止させた後、閉止部材30をこの係合端部32の部位を揺動支点として揺動して、他方の係合端部32が上記他方の係合孔38の係合凹部40に向けて移動接近すると、まず、上記仮止め部材41の揺動操作部41aの内側面80に当接する(図22(a)参照)。
さらに他方の係合端部32が上記他方の係合孔38の係合凹部40に移動接近すると、この他方の係合端部32が上記揺動操作部41aの内側面80に摺接しながら、仮止め部材41の仮止め片48を、ねじりコイルばね50(図9(a)参照)の弾発付勢力に抗して外方へ揺動させて押し広げる。
さらに続いて、他方の係合端部32が上記係合凹部40に移動接近していき、この他方の係合端部32が上記仮止め部材41における係合孔38の係合孔部42に突入すると(図22(b)参照)、仮止め部材41は、上記ねじりコイルばね50の弾発付勢力により、容器受け本体15の外側面に向け内方へ揺動して弾性復帰しはじめる。
そして、上記他方の係合端部32が係合凹部40に係合するまで閉止部材30が揺動すると、これと同時に、上記仮止め片48も容器受け本体15の外側面に当接係合するまで内方へ弾性復帰し、これにより、この仮止め片48の係合孔部42に上記他方の係合端部32が挿通係止されて、係合孔38(40、42)に対する挿通係止が完了する(図22(c)参照)。
その結果、上記バレル槽2(2A)の上記容器受け本体15に対する嵌装支持状態および蓋体11(11A)によるバレル槽2(2A)の閉止状態が仮止めされる。
逆に、この仮止め状態から、上記他方の係合端部32の係合孔38(40、42)に対する挿通係止状態を解除するには、実施形態1の場合と同様に、上記仮止め部材41の仮止め片48を、手指により、係合支持部46の外方へ弾発的に揺動させて行う。
その他の構成および作用は実施形態1と同様である。
実施形態5
本実施形態は図23および図24に示されており、工作物収納保持装置1の主要構成部材であるバレル槽2の構造が若干改変されたものである。
すなわち、本実施形態のバレル槽2(2A、2B、2C)は、図23および図24に示すように、その内周面が、研磨処理すべきワークW、W、…の付着を防止する付着防止構造200を備えている。
具体的には、この付着防止構造200は、上記ワークW、W、…との全面接触を防止するための表面構造の形態とされている。
図示の実施形態においては、バレル槽2の槽本体210(210A、210B、210C)の内周面全体と、蓋体211(211A、211B、211C)の裏面つまり内側底面全体の表面構造(付着防止構造)200が、所定のパターン模様を呈する凹凸面からなる。
具体的には、上記表面構造200は、図示のごとく、断面が矩形の凹凸状とされた直線状ストライプのパターン模様の凹凸面から形成されてなる(図23(b)および図24(a)における一点鎖線円内の拡大図、および図24(b)参照)。
この場合の表面構造200における上記凹凸面の形状寸法は、上記研磨処理すべきワークW、W、…の外表面が完全密着しないように設定されている。
上記以外のバレル槽2の基本構造は、図11に示される実施形態1のバレル槽2と同様とされている。
例えば、上記槽本体210は、開口210aが上記蓋体211により密閉状に閉止されるウレタン製の筒形容器の形態とされており、図23に示すように、その内周面が円形断面形状を有する円柱または円筒形状輪郭の収容空間を有する円筒型容器の形態とされている。
なお、槽本体210の内周面は、図示のような円柱形状輪郭の収容空間を有するほか、実施形態1の槽本体10のように、断面多角形とされるなど、目的に応じて種々の輪郭形状を有する収容空間に設計変更可能であるのは実施形態1と同様である。
また蓋体211は、図24に示すように、その周縁部211aが施蓋時における槽本体210の開口部210a外周部分に被覆嵌合する嵌合部を構成するとともに、この周縁部211a内側の蓋体211裏面には施蓋時の密封性を確保するためのシール部材(図示の場合はライニング)212が貼設されており、このシール部材212のほぼ表面全体に、上記表面構造付着防止構造200が形成されている。
しかして、以上のような構成とされたバレル槽2において、多数のワークW、W、…と研磨材G、G、…および研磨助剤等が充填収容された状態でバレル研磨機による所定の研磨工程が実行された後、研磨処理を完了したワークW、W、…と研磨材G、G、…がバレル槽2から取り出される場合でも、バレル槽2の内周面が、研磨処理すべきワークW、W、…との全面接触を防止するための表面構造200を備えていることにより、ワークW、W、…はバレル槽2の内周面に貼りつくことなく、すべてのワークW、W、…が円滑に排出され得る。
その他の構成および作用は実施形態1のバレル槽2と同様であり、また前述の実施形態1〜4のいずれのバレル槽としても使用可能である。
なお、上述した実施形態1〜5はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能であり、例えば以下のような改変が可能である。
実施形態1〜5においては、容器受け装置8が、標準装備される標準バレル槽2Aと、オプション装備品としてのバレル槽2B、2C、2Dを選択的に収納保持可能な基本構成を備えているが、要望に応じて、他の形状寸法のバレル槽の収納保持にも対応可能である。
すなわち、容器受け本体15内に選択的にかつ取外し交換可能に装着される容器アダプタを、対象となるバレル槽の形状寸法に応じて、このバレル槽が容器受け本体15内に、上記標準バレル槽2Aに対応した条件下で位置決め保持する構造とすることにより、図示の実施形態のような円筒型容器のほか、異形断面を有する筒型容器の形態とされた種々の形状寸法のバレル槽を本発明のバレル槽として採用可能である。
実施形態1〜5においては、閉止部材30の係合端部32、32を挿通係合する係合固定部26の一対の係合孔37、38のうち、一方の係合孔38のみが、容器受け本体15に設けられた係合凹部40と、容器受け本体15の外側部に弾発的に揺動可能に設けられた仮止め部材41の係合孔部42とから構成される構成とされているが、他方の係合孔37についても同様の構成とすることが可能である。このような構成とすることにより、蓋体11の施蓋時における閉止部材30の係合固定部26に対する挿通係合操作が、閉止部材30の両係合端部32、32のいずれからでも行うことができる。
実施形態1〜5においては、バレル研磨機のバレル槽2(2A、2B、2C、2D)を自転させる自転手段4を構成する遊星運動機構が遊星歯車機構68の形態とされているが、上記回転主軸60と同心状にかつ静止状に設けられた太陽プーリと、上記回転支軸65、65、…に同心状にかつ一体的に設けられた遊星プーリと、これら太陽プーリおよび遊星プーリを駆動連結する伝動ベルトとを備えてなる遊星ベルト機構の形態とされても良い。
実施形態1〜5の工作物収納保持装置1は、研磨処理物であるワークW、W、…等が充填収容されたバレル槽2、2、…が水平方向に公転されることにより、ワークW、W、…が研磨される遠心バレル方式のバレル研磨機に装備されるものであるが、本発明の工作物収納保持装置は、これ以外の研磨方式、例えば、回転バレル方式、振動バレル方式および渦流バレル方式などの他の研磨方式のバレル研磨機にも採用可能である。