以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
[第1実施形態]
<射出成型機1の説明>
図1を参照して、まず、本実施形態の射出成型機1の全体構成について説明する。図1は、第1実施形態の射出成型機1の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態の射出成型機1は、シリンダ2、ヒータ4、ホッパ5、スクリュ6、射出ミキシングノズル100、を備えている。シリンダ2は、樹脂通路2aを内部に有する略円筒状に形成されている。ヒータ4は、シリンダ2の外周面に巻かれている。ホッパ5は、シリンダ2の根元側の上部に貫通された状態で接続されている。スクリュ6は、シリンダ2の樹脂通路2aに配設されている。射出ミキシングノズル100は、シリンダ2の先端部分に取付金具2cを介して取付けられており、詳細については後述する。
ヒータ4は、樹脂通路2aを通過する樹脂材料Kを外部から加熱するものであり、シリンダ2と組合せることにより本実施形態の加熱シリンダとして機能している。なお、樹脂材料Kには、ヒータ4の熱だけではなく、スクリュ6の回転に伴う摩擦熱、及びシリンダ2の内周面との間で発生するせん断熱も加えられ、これらの熱により樹脂材料Kは溶融されながら溶融樹脂Yとして送られる。
ホッパ5は、固形状の樹脂材料K(例えば、樹脂ペレット)を貯えるとともに、底面に設けられた供給口(図示しない)からシリンダ2の根元側に、重力を利用して樹脂材料Kを供給するものである。つまり、ホッパ5の下方の樹脂通路2aに空隙が生じると、その部分に対して樹脂材料Kを落とし込むことにより、樹脂通路2a内に樹脂材料Kを充填させる。
スクリュ6は、表面に螺旋溝が形成されており、樹脂通路2aの略全域に亘って配置される長さに設定されている。また、スクリュ6は、回転可能で且つ軸方向に移動可能(進退可能)に支持されており、スクリュ6を回転させることで、ホッパ5から供給された樹脂材料Kをシリンダ2の先端部2bに送ることが可能な構成となっている。さらに、スクリュ6を前進させることで、先端部2bに貯留された樹脂材料(溶融樹脂Y)を射出ミキシングノズル100から所定の圧力で射出させることが可能な構成となっている。なお、スクリュ6には、射出ミキシングノズル100側に向かって所定の圧力(すなわち背圧)が加えられており、スクリュ6を回転させたときに、スクリュ6の推進力によってスクリュ6が後退しないように構成されている。
ここで、射出成型機1は、スクリュ6を回転させる手段としての回転用モータ9及び回転伝達機構10と、スクリュ6を軸方向に移動させる手段としての進退用モータ15及び軸方向移動機構16と、を備えている。
スクリュ6を回転させる手段である回転用モータ9は、その出力軸9aを一定方向に回転させるサーボモータからなり、第一モータ駆動回路(図示しない)によって回転制御される。また、回転伝達機構10は、回転用モータ9の回転をスクリュ6に伝達するものであり、スクリュ6の軸6cに接続された従動プーリ11と、回転用モータ9の出力軸9aに連結された駆動プーリ12と、駆動プーリ12及び従動プーリ11を繋ぐ無端ベルト13とから構成されている。
スクリュ6を軸方向に移動させる手段である進退用モータ15は、サーボモータからなり、第二モータ駆動回路(図示しない)によって、回転数及び回転方向が制御される。また、軸方向移動機構16は、進退用モータ15の回転運動をスクリュ6の軸方向への直線運動に変換するものであり、シリンダ2の根元部分に固定された第一ベース板17aと、これに対向して配設された第二ベース板17bと、二枚のベース板17a,17bを繋ぐ一対のガイド部材18と、ガイド部材18によってスクリュ6の軸方向に摺動可能に案内されるとともに内部に雌ネジ(図示しない)が形成されたスライド部材19と、この雌ネジに螺合されるとともに第二ベース板17bに対して回動可能に支持された送りネジ20と、送りネジ20の一端側に接続された従動プーリ21と、進退用モータ15の出力軸15aに接続された駆動プーリ22と、従動プーリ21及び駆動プーリ22を繋ぐ無端ベルト23とから構成されている。
なお、回転伝達機構10の従動プーリ11は、スライド部材19に対して回動可能に連結されており、スライド部材19がガイド部材18に沿って直線運動すると、それに従って回転伝達機構10及び回転用モータ9も移動するように構成されている。このため、進退用モータ15を一定方向に回転させると、送りネジ20によってスライド部材19及び従動プーリ11が前進し、スクリュ6が射出ミキシングノズル100側に向かって移動する。
また、スクリュ6の先端側には、小径の頸部7が形成されており、この頸部7にチェックリング8が遊嵌されている。チェックリング8は、スクリュ6の頸部7に対して回動可能で、且つスクリュ6の軸方向に頸部7の長さ分だけ移動可能な状態で支持されている。さらに、チェックリング8の内周面と頸部7の間には、溶融樹脂Yを通過させ得る溝Sが形成されており、樹脂通路2aにおいて、螺旋溝が形成されたスクリュ本体6a側の圧力が先端部2bの圧力よりも高い状態(すなわちスクリュ6が回転している状態)では、この圧力差によって、チェックリング8が先端部2b側に移動することで溝Sが開放され(図2(A)参照)、溶融樹脂Yを先端部2bに送ることが可能となる。一方、先端部2bに溶融樹脂Yが貯留された状態でスクリュ6の回転が停止すると、スクリュ本体6a側の圧力が先端部2bの圧力よりも低くなるため、その圧力差によってチェックリング8がスクリュ本体6a側に移動し、スクリュ本体6aに当接する(図2(c)参照)。これにより、溝Sが閉鎖され、先端部2bに貯留された溶融樹脂Yの逆流が防止される。
<射出成型機1における計量・貯留工程、および射出工程の説明>
図2を参照して、次に、射出成型機1における計量・貯留工程、および射出工程について説明する。図2は、第1実施形態の射出成型機1の各工程の説明を示す図であり、(A)は計量・貯留工程の説明を示す図であり、(B)は計量・貯留工程の説明を示す図であり、(C)は射出工程の説明を示す図である。
図2(A)に示すように、まず、計量・貯留工程では、ホッパ5から樹脂材料Kを供給しつつ、回転用モータ9(図1を参照。)及び回転伝達機構10によってスクリュ6を一定方向(矢印の方向)に回転させる。すると、ホッパ5から供給された樹脂材料Kは、シリンダ2の周囲に巻かれたヒータ4からの熱、スクリュ6の回転に伴う摩擦熱、及びせん断熱によって加熱されながら、シリンダ2の先端部2bに向かって送られる。
図2(B)に示すように、次に、計量・貯留工程では、先端部2bにおいて蓄積される溶融樹脂Yの樹脂圧がスクリュ6の背圧よりも高くなると、その樹脂圧によってスクリュ6が後退する。このため、スクリュ6の位置を検出することにより、先端部2bにおいて溶融樹脂Yを計量しながら貯留させることが可能になる。
図2(C)に示すように、そして、射出工程では、進退用モータ15(図1を参照。)及び軸方向移動機構16によってスクリュ6を軸方向に前進させる。すると、シリンダ2の先端部2bに貯留されている溶融樹脂Yが射出ミキシングノズル100から所定の圧力で射出され、型締めされた金型(図示しない)に対して所定の圧力で溶融樹脂Yを注入することが可能となる。そして、これらの計量・貯留工程、および射出工程を順次繰返し行うことにより、金型に対して溶融樹脂Yを所定量ずつ供給し、複数の成形品を連続的に成形することが可能となる。
<射出ミキシングノズル100の説明>
図3−1および図3−2を参照して、次に、本実施形態の射出ミキシングノズル100について説明する。図3−1は、第1実施形態の射出ミキシングノズル100の全体構成を示す断面図である。図3−2は、第1実施形態の圧力低減部材150の外観図であり、(A)は圧力低減部材150の斜視図であり、(B)は圧力低減部材150のA−A断面図である。
図3−1に示すように、本実施形態の射出ミキシングノズル100は、シリンダ2の先端部分に取付金具2cを介して着脱可能に取付けられるノズルボディ110と、ノズルボディ110の内部に配設される圧力低減部材150と、を備える。ノズルボディ110は、通路部120と、先端部130と、から構成されており、先端部130が通路部120に対して着脱可能に螺合するように構成されている。
通路部120は、溶融樹脂Yを通過させる樹脂通路122が中心部分を貫通して設けられた中空の略円筒形に形成された部材であって、一端にシリンダ2の取付金具2cに取付けられるフランジ121が形成されており、他端の内面に先端部130が装着されるように螺子溝125が形成されている。また、通路部120の樹脂通路122は、一端から他端に亘って略一定の内径となるように形成されている。
先端部130は、溶融樹脂Yを通過させる樹脂通路132が中心部分を貫通して設けられた略円錐台形の部材(先端側に向かって僅かに縮径するように形成された部材)であって、先端に溶融樹脂Yを射出する放出口131が形成されており、他端の外面に通路部120に装着できるように螺子溝135が形成されている。先端部130の樹脂通路132は、他端から先端に向かって漸次内径が小さくなるようにテーパ状に形成されたテーパ部137aと、テーパ部137aから放出口131までテーパ部137aの先端側の内径と略同じ内径で貫通された貫通部137bと、が形成されている。
このように構成された通路部120の樹脂通路122と先端部130の樹脂通路132とを通過して、シリンダ2の先端部2bから供給された溶融樹脂Yが放出口131から射出される。
圧力低減部材150は、樹脂通路122、132内に着脱可能に配設されることによって、シリンダ2側から加えられる溶融樹脂Yの樹脂圧を低減する部材である。つまり、圧力低減部材150の上流側の溶融樹脂Yにはスクリュ6(図2を参照。)の背圧に応じた圧力が加わるが、圧力低減部材150が抵抗となって圧力(樹脂圧)を降下させることで下流側の圧力(樹脂圧)を低くする。さらに、圧力低減部材150は、先端部130のテーパ部137aの内周面に嵌合するような形状であり、下流側(放出口131に向かう方向)への移動が規制されている。
図3−2(A)に示すように、圧力低減部材150は、上流側に配設される第一壁部152と、第一壁部152に対して下流側に配設される第二壁部157と、第一壁部152と第二壁部157とを連結する連結部155と、が一体成型された部材である。第一壁部152は、樹脂通路122を通過して流れてくる溶融樹脂Yが当接することによって、抵抗となって圧力(樹脂圧)を低減させるための壁として機能する。第二壁部157は、後述する第一壁部152と樹脂通路122との空隙(樹脂通路P11)を通過した溶融樹脂Yが当接することによって、抵抗となって圧力(樹脂圧)を低減させるための壁として機能する。また、第二壁部157には、側面の上流側から下流側に亘った溝である3つの溝部159a〜159cが形成されている。
図3−2(B)に示すように、第一壁部152は、溶融樹脂Yの流れる方向に対して略鉛直となるように配設される略円形をなす面である第一壁面部153aと、第一壁面部153aに対する側面となる第一側面部153bと、を備える。第一側面部153bは、第一壁面部153aから連結部155に向かって第一壁部152の径が漸次大きくなるようなテーパ状に形成されている。第二壁部157は、溶融樹脂Yの流れる方向に対して略鉛直となるように配設される略円形をなす面である第二壁面部158aと、第二壁面部158aに対する側面となる第二側面部158bと、を備える。第二側面部158bは、第二壁面部158aから離間するに従い第二壁部157の径が漸次小さくなるようなテーパ状に形成されている。また、第二壁部157は、断面の形状が第二壁面部158aから離間する方向に先細りとなった略台形となるような形状である。連結部155は、第一壁部152から第二壁部157に向かって径が漸次小さくなるようなテーパ状に形成されている。また、連結部155は、第一壁部152側の端部の径が第一側面部153bの最大の径と同じ大きさであり、第二壁部157側の端部の径が第二壁面部158aの直径よりも小さくなっている。なお、圧力低減部材150は、第一壁面部153aの面に対して鉛直をなすとともに面中心を通る線の延長上に、第二壁面部158aの面中心が設けられるような構造である。
図3−1を参照して、ここで、本実施形態の射出ミキシングノズル100において、ノズルボディ110の内部に圧力低減部材150が配設された状態について説明する。ノズルボディ110の内部に圧力低減部材150が配設されると、圧力低減部材150は、第二壁部157が先端部130のテーパ部137aに嵌合するとともに、第一壁部152と連結部155とが、通路部120の樹脂通路122内に配設されるように設けられる。このような状態であると、圧力低減部材150の第一壁部152における最大の径h(第一側面部153bにおける連結部155と連結された端部の径)が樹脂通路122の内径Hよりも小さい、つまりは、第一壁部152の外周の長さが樹脂通路122の内周の長さに比べて短いため、第一壁部152と樹脂通路122の壁面との間に空隙である樹脂通路P11が形成される。また、圧力低減部材150の連結部155の側面と第二壁部157(第二壁面部158a)と樹脂通路122の壁面とに囲まれた空間V1が形成される。さらに、樹脂通路132のテーパ部137aの壁面と第二壁部157の溝部159a〜159cとにより3つの樹脂通路P12a〜P12cが形成される。なお、圧力低減部材150は、第一壁面部153aと第二壁面部158aとの面中心が、樹脂通路122、132における溶融樹脂Yの流れる方向と鉛直をなす断面の中心と略一致するように配設されているため、樹脂通路P11は第一壁部152の周囲に亘って形成される。
図3−1を参照して、次に、本実施形態の射出ミキシングノズル100おいて、溶融樹脂Yの流れる状態について説明する。まず、樹脂通路122の上流側から流れてきた溶融樹脂Yは、圧力低減部材150の第一壁部152(第一壁面部153a)に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、樹脂通路P11を通過して下流側に流れていく。なお、第一壁部152(第一側面部153b)は上述のようにテーパ状に形成されているため、樹脂通路P11は、上流側から下流側に向かって漸次狭まるような形状である。つまり、樹脂通路P11を通過した溶融樹脂Yは、樹脂通路P11に進入したときに比べて流速が増すこととなる。そして、樹脂通路P11を通過した溶融樹脂Yは、空間V1に流れ込むこととなる。このように空間V1に流れ込んできた溶融樹脂Yは、空間V1を形成している面(第二壁面部158a、連結部155の側面、樹脂通路122の壁面)に当接することで対流し混錬されることとなる。つまり、空間V1は、溶融樹脂Yが混錬される混錬空間として機能する。なお、連結部155は上述のように第一壁部152から第二壁部157に向かって径が漸次小さくなるような(第一壁部152に近い部分の外周が第二壁部157に近い部分の外周に比べて長くなるような)テーパ状に形成されているため、空間V1は上流側から下流側に向かって広くなるような形状となっている。そして、空間V1にて混錬された溶融樹脂Yは、第二壁部157(第二壁面部158a)に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、樹脂通路P12a〜P12cを通過し、下流側の貫通部137bを通過して放出口131から射出される。このように放出口131から射出される溶融樹脂Yにおいては、圧力低減部材150により樹脂圧が低減されているため、放出口131から溶融樹脂Yが漏れ出ること、所謂、糸引きが抑制されている。
以上のような構成の射出ミキシングノズル100において、樹脂材料を変更したり洗浄したりするときの分解作業について説明する。まず、先端部130は通路部120に対して着脱可能に螺合されているため、先端部130を回転させると通路部120から取外すことができる。そして、圧力低減部材150は樹脂通路122内に配設された第一壁部152の径が樹脂通路122の略一定の内径に比べて小さいため、圧力低減部材150を通路部120の先端部130が取付けられていた側(下流側)から抜き出すことができる。このとき、先端部130を取外した状態でスクリュ6を回転させることによって、上流側から下流側に向かう方向の溶融樹脂Yによる樹脂圧を圧力低減部材150に作用させて、圧力低減部材150を下流側に押し込んで通路部120から抜き出すようにすることができる。なお、圧力低減部材150は、上流側から下流側に向かう方向の溶融樹脂Yからの樹脂圧によって、先端部130のテーパ部137に対して第二壁部157(第二側面部158b)が圧着されることとなり、先端部130と圧力低減部材150とが一体となるように取外されることもある。
[第2実施形態]
図4を参照して、次に、第2実施形態の射出ミキシングノズル200について説明する。図4は、第2実施形態の射出ミキシングノズル200の概略構成を示す図であり、(A)は射出ミキシングノズル200の全体構成を示す断面図であり、(B)は第2実施形態の圧力低減部材250の断面図である。なお、第2実施形態における射出成型機は、第1実施形態と同様のものであるため、<射出成型機1の全体構成について>の説明、および<計量・貯留工程、および射出工程について>の説明は省略する。
図4(A)に示すように、射出ミキシングノズル200は、ノズルボディ110と、圧力低減部材250と、を備える。つまり、ノズルボディ110は、上述の第1実施形態と同様の構成である。したがって、ノズルボディ110の構成についての説明は省略する。圧力低減部材250は、第1実施形態の圧力低減部材150と同様に、樹脂通路122、132内に着脱可能に配設されることによって、シリンダ2側から加えられる溶融樹脂Yの樹脂圧を低減する部材である。また、圧力低減部材250は、第1実施形態の圧力低減部材150と同様に、先端部130のテーパ部137aの内周面に嵌合するような形状であり、下流側(放出口131に向かう方向)への移動が規制されている。
図4(B)に示すように、圧力低減部材250は、上流側から順に配設される第一壁部252a、第二壁部252b、第三壁部252c、第四壁部257と、これらの壁部252a〜252c,257の各々を連結する第一連結部255a、第二連結部255b、第三連結部255cと、が一体成型された部材である。なお、第一壁部252a、第二壁部252b、第三壁部252cは、各々が第1実施形態の圧力低減部材150における第一壁部152と同様の形状であるため、形状に関する詳細な説明を省略する。また、第四壁部257は、第1実施形態の圧力低減部材150における第二壁部157と同様の形状であるため、形状に関する詳細な説明を省略する。さらに、第一連結部255a、第二連結部255b、第三連結部255cは、各々が第1実施形態の圧力低減部材150における連結部155と同様の形状であるため、形状に関する詳細な説明を省略する。そして、第四壁部257には、第1実施形態の圧力低減部材150と同様に、3つの溝部259a〜259cが形成されている。
図4(A)を参照して、ここで、第2実施形態の射出ミキシングノズル200において、ノズルボディ110の内部に圧力低減部材250が配設された状態について説明する。ノズルボディ110の内部に圧力低減部材250が配設されると、圧力低減部材250は、第四壁部257が先端部130のテーパ部137aに嵌合するとともに、第一壁部252a、第二壁部252b、第三壁部252cと第一連結部255a、第二連結部255b、第三連結部255cとが、通路部120の樹脂通路122内に配設されるように設けられる。このような状態であると、第一壁部252aと樹脂通路122の壁面との間の樹脂通路P21a、第二壁部252bと樹脂通路122の壁面との間の樹脂通路P21b、第三壁部252cと樹脂通路122の壁面との間の樹脂通路P21c、が形成される。また、第一連結部255aの側面と第二壁部252bと樹脂通路122の壁面とに囲まれた空間V2a、第二連結部255bの側面と第三壁部252cと樹脂通路122の壁面とに囲まれた空間V2b、第三連結部255cの側面と第四壁部257と樹脂通路122の壁面とに囲まれた空間V2c、が形成される。さらに、樹脂通路132のテーパ部137aの壁面と第四壁部257の溝部259a〜259cとにより3つの樹脂通路P22a〜P22cが形成される。なお、圧力低減部材250においても、第一壁部252a、第二壁部252b、第三壁部252cにおける略円形の各壁面部の面中心が、樹脂通路122、132における溶融樹脂Yの流れる方向と鉛直をなす断面の中心と略一致するように配設されているため、樹脂通路P21a〜P21cは各壁部252a〜252cの周囲に亘って形成される。
図4(A)を参照して、次に、第2実施形態の射出ミキシングノズル200おいて、溶融樹脂Yの流れる状態について説明する。まず、樹脂通路122の上流側から流れてきた溶融樹脂Yは、第一壁部252aに当接することで樹脂圧が低減されるとともに、樹脂通路P21aを通過して空間V2aに流れ込み、空間V2aで混錬される。次に、空間V2aで混錬された溶融樹脂Yは、第二壁部252bに当接することで樹脂圧が低減されるとともに、樹脂通路P21bを通過して空間V2bに流れ込み、空間V2bで混錬される。次に、空間V2bで混錬された溶融樹脂Yは、第三壁部252cに当接することで樹脂圧が低減されるとともに、樹脂通路P21cを通過して空間V2cに流れ込み、空間V2cで混錬される。そして、空間V2cにて混錬された溶融樹脂Yは、第四壁部257に当接することで樹脂圧が低減されるとともに、樹脂通路P22a〜P22cを通過し、下流側の貫通部137bを通過して放出口131から射出される。
以上のような構成の射出ミキシングノズル200において、樹脂材料を変更したり洗浄したりするときの分解作業について説明する。まずは、第1実施形態の射出ミキシングノズル100と同様に、先端部130を回転させると通路部120から取外すことができ、圧力低減部材150を通路部120の先端部130が取付けられていた側(下流側)から抜き出すことができる。このときも、第1実施形態の射出ミキシングノズル100と同様に、先端部130を取外した状態でスクリュ6を回転させることによって、圧力低減部材150を下流側に押し込んで通路部120から抜き出すようにすることができる。
[第1実施形態および第2実施形態の効果]
上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200によれば、圧力低減部材150,250は、外周の長さが樹脂通路122の内周の長さに比べて短くなるように形成されているとともに、樹脂通路122を仕切る第一壁部152,252a、第二壁部252b、第三壁部252cと、第一壁部152,252a、第二壁部252b、第三壁部252cに比べて樹脂通路122,132の下流側に設けられ、外周面が樹脂通路132の内周面に当接することによって樹脂通路122,132を仕切る第二壁部157、第四壁部257と、を有する。また、圧力低減部材150,250がノズルボディ110に配設されることによって、第一壁部152,252a、第二壁部252b、第三壁部252cの外周面と樹脂通路122の内周面との間の樹脂通路P11,P21a〜P21cと、第一壁部152,252a、第二壁部252b、第三壁部252cと第二壁部157、第四壁部257とによって挟まれた空間であって、樹脂通路P11,P21a〜P21cを通過した溶融樹脂Yが混錬される空間V1,V2a〜V2cと、空間V1,V2a〜V2cから第二壁部157、第四壁部257の下流側に溶融樹脂Yが送出されるための樹脂通路P12a〜P12c,P22a〜P22cと、が形成される。
このような射出ミキシングノズル100,200であれば、圧力低減部材150,250を樹脂通路122,132に配設させる、といった簡易な構成で、溶融樹脂Yが混錬される空間V1,V2a〜V2cが形成されるため、このような空間が形成されていない従来品に比べて、複数の種類の溶融樹脂を十分に混錬することができる。また、このような射出ミキシングノズル100,200であれば、樹脂通路122,132内に圧力低減部材150,250が配設されて、加熱シリンダ2側から加えられる溶融樹脂Yの樹脂圧が低減されるため、金型から成形品を取出すときに、背圧によって圧力低減部材150,250の下流側に位置する放出口131から溶融樹脂Yが漏れ出ること、所謂、糸引きを抑制することができる。
また、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200によれば、圧力低減部材150,250は、樹脂通路P11,P21a〜P21cを第一壁部152,252a、第二壁部252b、第三壁部252cの周囲に亘って形成するように、第二壁部157、第四壁部257が樹脂通路132のテーパ部137aの内周面に嵌合されている。このような射出ミキシングノズル100,200であれば、樹脂通路P11,P21a〜P21cが第一壁部152,252a、第二壁部252b、第三壁部252cの周囲に亘って形成されているため、従来に比べて、溶融樹脂Yが混錬される空間V1,V2a〜V2cにおいて発生する対流を大きなものにして、空間内での対流を隅々まで満遍なく行き渡らせることができる、つまり、十分な混錬をすることができる。
なお、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200においては、樹脂通路P11,P21a〜P21cは上流側から下流側に向かって漸次狭まるような形状であるため、樹脂通路P11,P21a〜P21cを通過した溶融樹脂Yは、樹脂通路P11,P21a〜P21cに進入したときに比べて流速が増すこととなる。したがって、溶融樹脂を混錬する空間に繋がる樹脂通路の内径が一定であるものに比べて、空間V1,V2a〜V2cにおける混錬が十分になされることとなる。
さらに、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200によれば、圧力低減部材150,250は、第一壁部152、第三壁部252cに近い部分の外周が第二壁部157、第四壁部257に近い部分の外周に比べて長くなるように形成されており、第一壁部152、第三壁部252cと第二壁部157、第四壁部257とを連結する連結部155,255c、を有している。このような射出ミキシングノズル100,200であれば、連結部155,255cは第一壁部152、第三壁部252cから第二壁部157、第四壁部257に向かって径が漸次小さくなるようなテーパ状に形成されているため、溶融樹脂Yが混錬される空間V1、V2cは上流側から下流側に向かって広くなるような形状となる。そのため、例えば連結部の外周が一定となるように形成されている圧力低減部材による空間に比べて、連結部のテーパ状の面によって、空間内での溶融樹脂の対流が発生し易くなり、溶融樹脂が十分に混錬されることとなる。
そして、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200によれば、ノズルボディ110は、樹脂通路122を形成する通路部120と、通路部120に対して着脱可能に設けられ、通路部122から連通されることで樹脂通路122,132を形成するとともに放出口131が形成された先端部130と、を有し、圧力低減部材150,250は、第二壁部157、第四壁部257が先端部130のテーパ部137aの内周面に当接するように構成されている。このような射出ミキシングノズル100,200であれば、目詰まりが発生したときや樹脂材料を変更するときには、圧力低減部材150,250が樹脂通路122内に配設された第一壁部152,252a、第二壁部252b、第三壁部252cの径が樹脂通路122の略一定の内径に比べて小さいため、先端部130を取外すと圧力低減部材150,250を通路部120の先端部130が取付けられていた側(下流側)から抜き出すことができる。つまり、目詰まりが発生したときや樹脂材料を変更するときに、射出ミキシングノズル100,200を容易に分解できるため、従来に比べて交換作業や清掃作業を容易に行うことができる。
[その他の実施形態]
上述した実施形態の射出ミキシングノズル100,200において、樹脂通路P12a〜P12c,P22a〜P22cは、樹脂通路132のテーパ部137aに圧力低減部材150,250が嵌合することによって、テーパ部137aの壁面と溝部159a〜159c,259a〜259cとにより形成されるものとしたが、溶融樹脂Yが通過できる樹脂通路であればどのような構造であってもよい。このような構造の一例としては、図5(A)に示すような圧力低減部材350が考えられ、以下に、図5(A)を参照して、この圧力低減部材350の構成について説明する。図5(A)は、その他の実施形態としての圧力低減部材350の斜視図である。
図5(A)に示すように、圧力低減部材350は、上流側に配設される第一壁部352と、第一壁部352に対して下流側に配設される第二壁部357と、第一壁部352と第二壁部357とを連結する連結部355と、が一体成型された部材である。なお、第一壁部352は第1実施形態の圧力低減部材150における第一壁部152と同様の形状であり、連結部355は圧力低減部材150の連結部155と同様の形状であるため、各部の形状に関する詳細な説明を省略する。また、第二壁部357は、第1実施形態の圧力低減部材150における第二壁部157と同様に断面の形状が略台形となるような形状であるものの、第二壁部157と異なり、上流側から下流側に亘った貫通孔である3つの孔部359a〜359cが形成されている。このような圧力低減部材350を備える射出ミキシングノズルによれば、上流側から流れてきて混錬された溶融樹脂Yは、孔部359a〜359cを通過し、下流側の樹脂通路を通過して放出口から射出される。したがって、このような射出ミキシングノズルであっても、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200と同様の作用および効果を奏することができ、つまりは、従来品に比べ簡易な構成で十分な混錬を行うことができるとともに、糸引き等の不具合の発生を抑制することができる。。
また、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100,200において、圧力低減部材150,250は、樹脂通路132のテーパ部137aに嵌合する第二壁部157、第四壁部257の断面の形状が略台形となるような形状であるものとしたが、先端部の樹脂通路に嵌合する形状であれば当該樹脂通路の形状に応じて種々の形状を採用してもよい。このような種々の形状の一例としては、図5(B)に示すような圧力低減部材450が考えられ、以下に、図5(B)を参照して、この圧力低減部材450の構成について説明する。図5(B)は、その他の実施形態としての圧力低減部材450の斜視図である。
図5(B)に示すように、圧力低減部材450は、上流側に配設される第一壁部452と、第一壁部452に対して下流側に配設される第二壁部457と、第一壁部452と第二壁部457とを連結する連結部455と、が一体成型された部材である。なお、第一壁部452は第1実施形態の圧力低減部材150における第一壁部152と同様の形状であり、連結部455は圧力低減部材150の連結部155と同様の形状であるため、各部の形状に関する詳細な説明を省略する。また、第二壁部457は、第1実施形態の圧力低減部材150における第二壁部157と同様に側面の上流側から下流側に亘った溝である3つの溝部459a〜459cが形成されているものの、第二壁部157と異なり、全体が略円柱状となるような形状である。このような圧力低減部材450を備える射出ミキシングノズルによれば、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200と同様に、第二壁部457が先端部の内周面に嵌合することにより下流側への移動が規制されていても、圧力低減部材450を通路部の先端部が取付けられていた側(下流側)から抜き出すことができる。したがって、このような射出ミキシングノズルであっても、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200と同様の作用および効果を奏することができ、特に、従来品に比べ樹脂材料を変更するときの作業を容易にすることができる。
さらに、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100,200において、樹脂通路P12a〜P12c,P22a〜P22cは3つとしたが、4つ以上の複数の樹脂通路が形成されていてもよく、延いては、最も下流側に配設される壁部が網目状の構造となっていてもよい。例えば、射出ミキシングノズルにおいて、最も下流側に配設される壁部よりも上流側に配設される壁部により十分に溶融樹脂Yの樹脂圧が低減されていれば、最も下流側に配設される壁部にて樹脂圧を低減させる必要性を低くすることができ、最も下流側に配設される壁部に4つ以上の樹脂通路を形成したり、綱目状の構造としたりしてもよい。このような射出ミキシングノズルであっても、上述の実施形態の射出ミキシングノズル100,200と同様の作用および効果を奏することができ、特に、糸引き等の不具合の発生を抑制することができる。
またさらに、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100,200において、圧力低減部材100,200は、複数の壁部152,157,252a〜252c,257と、1つまたは複数の連結部155,255a〜255cと、が一体成型されたものとして説明したが、各壁部と連結部とは各々成型されたものであって、組み合されて一体として構成されたものであってもよい。またそして、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100,200において、圧力低減部材100は壁部が2つであり、圧力低減部材200は壁部が4つであったが、この壁部の数はこれに限定されず、樹脂部材や射出成型機等に応じて、3つまたは5つ以上であってもよい。さらにそして、上述した実施形態の射出ミキシングノズル100,200において、圧力低減部材150,250の第一壁部152,252a、第二壁部252b、第三壁部252cの側面部に、上流側から下流側に亘った複数の溝部(例えば、3つの溝部)が形成されていてもよい。このような溝部が形成されていると、これらの壁部と樹脂通路122との空隙が大きくなり、より多くの溶融樹脂Yを下流側に供給することができる。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。