次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1を参照して、本発明に係る超微細気泡発生器の実施形態の基本構成と作用効果について説明する。
図1に示すように、実施形態の超微細気泡発生器10は、内部に流路11aを構成する流路構成体11と、この流路構成体11の内部に配置される流路内在体12とを具備する。流路構成体11は、流体導入部11Xの上流側に接続された気液導入口11bと、流体混合部11Zの下流側に形成された流体導出口11cとを有する。流路11a内に流路内在体12が配置されることにより、流路11aの上流側に内側流入口11ib及び外側流入口11obが構成されるとともに、流路11aの下流側に内側流出口11ic及び外側流出口11ocが構成される。また、流路内在体12の内面12iの内側には、内側流入口11ibから内側流出口11icへ向かう内側分流路11iaが構成されるとともに、流路内在体12の外面12oの周囲には、内側分流路11iaに並行し、外側流入口11obから外側流出口11ocへ向かう、環状の流路断面を備える外側分流路11oaが構成される。
流路11aは、流路内在体12の上流側に構成された、気体と液体からなる気液混合流体10xが導入される流体導入部11Xと、内側分流路11iaの気液混合流体10yinと外側分流路11oaの気液混合流体10youtとが分離した状態で並行して流れる流体分流部11Yと、流路内在体12の下流側に構成された、気液混合流体10yinと10youtが合流して気液混合流体10zとなる流体混合部11Zとを備える。
流路構成体11は、流体導入部11Xの上流側と、流体混合部11Zの下流側が共に閉鎖された筒状構造を備える。図示例では、流路構成体11は、流路方向に同径に構成された、断面円形の円筒状の容器によって構成される。流体導入部11Xには、気液導入口11bを介して気体と液体が供給される。なお、気液導入口11bの構造や態様については後に詳述する。上記の気体と液体の供給によって流体導入部11Xには気液混合流体10xが導入される。この気液混合流体10xには、上記気体と液体の供給態様に応じた大きさや密度の気泡10xaが含まれる。この気液混合流体10xは、上記の気体と液体の供給圧に応じて流体分流部11Yに圧送される。上記供給圧及び流体導入部11Xの内圧は、大気圧よりも高くすることが好ましく、2〜10気圧の範囲が望ましい。特に、3〜5気圧の範囲とすることが実際の供給系を考慮すると現実的である。
流体分流部11Yにおいては、流路内在体12が配置されることにより、内側流入口11ibと外側流入口11obとがそれぞれ上流側に開口しているため、上記気液混合流体10xは、内側流入口11ibを介して内側分流路11iaに流入する気液混合流体10yinと、外側流入口11obを介して外側分流路11oaに流入する気液混合流体10youtとに分かれる。内側分流路11iaと外側分流路11oaのそれぞれにおいては、上記の流体導入部11Xの内圧により、気泡の微細化に有効な十分な流速のジェット流が形成されることが好ましい。
流路内在体12の流路方向に沿った半径方向の断面形状は、上流側の端縁である前縁12aが凸曲線状(例えば、弧状)で下流側の端縁である後縁12bが尖鋭状とされた翼型形状である。また、この流路内在体12は、上記の断面形状を、当該形状から離間した流路方向に伸びる軸線11xの周りに回転させたときに構成される回転体構造を備える。ただし、流路内在体12は厳密な回転体構造である必要はなく、筒状構造体となっていればよい。このような流線形状構造を備えることにより、気液混合流体10xをスムーズに内側分流路11iaと外側分流路11oaに流入させることができる。また、後述するように、流体導入部11X内において気液混合流体10xが旋回流10xbを形成する場合には、当該旋回流10xbの下流側への伝搬を阻害しにくくなり、旋回流による気泡の微細化の促進作用を享受しやすくなる。図示例では、上記断面形状は流線形であり、流路内在体12の前縁12aを含めた内面12i及び外面12oは平滑面で構成される。しかし、本発明においては、上記各面は必ずしも平滑面である必要はなく、気泡のせん断作用をもたらすような凹凸状の表面に構成されても構わない。
上記断面形状の姿勢は特に限定されないが、図示例では、流路11aの下流側に向けて外周側へ開くように傾斜角θ(軸線11xを基準とした角度)を有する。すなわち、図示左右方向である流路方向に対して、前縁12aと後縁12bを結ぶ翼弦線が角度θだけ傾斜している。傾斜角θは、3〜30度の範囲内であることが好ましく、特に、5〜20度の範囲内であることが望ましい。これによって、後述するように、内側分流路11iaの内側流入口11ibの流入速度よりも内側流出口11icの流出速度を低下させることができる。また、流路内在体12の上記翼形断面により、内側分流路11iaの上流側の内面12iの狭窄部12sの内側に設けられるスロート部(絞り)11isで一時的に流路断面が絞られるため、内側分流路11iaを流れる気液混合流体10yinは、このスロート部で一時的に高速化されるとともに圧力が低下する。一方、外側分流路11oaでは、当初は急激に流路断面積が低下し、その後、翼型形状の影響により、流路断面積の変化は小さくなるか、或いは、その後、流路断面積が増大する。翼型形状の断面を有する流路内在体12の上記傾斜角θを上記の範囲内に設定することにより、内側分流路11iaと外側分流路11oaの少なくとも一方の分流路を、流路方向に沿って、流路断面積がスロート部11is,11osで一旦減少してから、その後、増大するように構成することができる。特に、上記翼型形状と上記傾斜角θを適宜に設定することにより、内側分流路11iaと外側分流路11oaの双方が流路断面積の上述の流路方向に沿った変化態様(スロート部を有する分流路構造)を有するように構成することも可能である。
なお、流路内在体12は、流路構成体11の内部において支持体12dによって固定される。図示例では、支持体12dは流体の流れを妨げないように流路方向に沿った板状(より具体的には流線形状を備えた薄材状)に構成される。また、支持体12dを流路内在体12の周囲(軸線11xの周り)に複数個所設けることにより、流路構成体11に対する流路内在体12の取付剛性を高めることができる。
内側分流路11iaでは、前述のように、内側流入口11ibにおける流路断面積と、内側流出口11icにおける流路断面積とを比べると、内側流入口11ibにおける流路断面積が相対的に小さく、内側流出口11icにおける流路断面積が相対的に大きい。また、より詳細に述べると、内側分流路11iaの流路断面積は、流路11aの流路方向(軸線11xに沿った方向)に見ていくと、内側流入口11ibから徐々に小さくなっていき、内面12iの最も小さい内径を備える狭窄部12sの内側のノズル状のスロート部11isを通過すると、今度は内側流出口11icに向けてディフューザ状に徐々に増大していく。このような流路断面積の変化態様により、内側分流路11ia内の上記気液混合流体10yinは、一旦、上記スロート部11isで流速が増大して圧力が低下する。このとき、圧力低下により膨張した気泡が高い流速により微細化される。その後、内側流出口11icに向けて徐々に流速が低下しながら圧力は増大し、気泡は圧壊されていく。この内側分流路11iaでは、内側流入口11ibの流路断面積よりも内側流出口11icの流路断面積が大きいため、内側流出口11icでの流速は当初よりも小さく、圧力は当初よりも増大している。ここで、内側分流路11iaの流路断面積は、流路全長の半分を越える範囲(図示例では約80%)で流路方向(下流側)に向けて漸増している。
一方、外側分流路11oaでは、外側流入口11obにおける流路断面積と、外側流出口11ocにおける流路断面積とを比べると、外側流入口11obにおける流路断面積が相対的に大きく、外側流出口11ocにおける流路断面積が相対的に小さい。なお、外側分流路11oaの流路断面形状は環状である。外側分流路11oaの流路断面積は、流路11aの流路方向に沿って見ると、外側流入口11obから徐々に小さくなっていく。ここで、外側分流路11oaの流路断面積は、流路全長の半分を越える範囲(図示例では約65%)で流路方向(下流側)に向けて漸減している。外側分流路11oaの途中で流路断面積の減少はほとんどなくなり、或いは、逆に僅かに増大していく。このとき、上記スロート部11isと同様の上記スロート部11osが存在する場合には、上記と同様に圧力低下により膨張した気泡が高い流速により微細化され、その後、圧力増大によりさらに圧壊される。全体としては、上記のような流路断面積の変化態様により、外側分流路11oa内の上記気液混合流体10youtは、内側流出口11icに向けて徐々に流速が増大し、圧力は低下していく。この外側分流路11oaでは、外側流入口11obの流路断面積よりも外側流出口11ocの流路断面積が小さいため、外側流出口11ocでの流速は当初よりも大きく、圧力は当初よりも低下している。
以上のように、気液混合流体10yinと気液混合流体10yout内の気泡は、内側分流路11iaと外側分流路11oaのの内部で、剪断作用、引断作用、圧壊作用などを受け、微細化されていく。特に、上記スロート部11is,iiosのノズル作用による流速の増大と圧力の低下がさらに大きくなれば、気泡の微細化がさらに生じやすくなると考えられる。内側分流路11iaと外側分流路11oaのいずれにおいても、スロート部11is,11osを備えた分流路形状により、気液混合流体10yin,10youtの流速が増大し、圧力が低下する程度は、スロート部11is,11osの流路断面積Asに依存する。一般的には、スロート部11is,11osの流路断面積Asが小さくなるほど、スロート部11is,11osにおける流速Vsは増大し、スロート部11is,11osにおける圧力Psは低下するので、上述の気泡の微細化作用も増大すると考えられる。なお、内側分流部11iaは前述のように多くの範囲にわたって下流側へ向けて流路断面積が増大することから、スロート部11isと内側流出口11icの流速差と圧力差を大きく設定できるため、気泡の微細化作用が特に高くなると考えられる。
スロート部11is,iiosの流路断面積Asを小さくすることにより、流速Vsを増大させ、圧力Psを低下させると、スロート部11is,iiosとその下流側の流路部分との間に大きな逆圧力勾配を備えた流域を形成することができる。このようにして、大きな流速Vsと大きな逆圧力勾配とを設けることにより、気泡が急膨張するとともに、剪断作用、引断作用、圧壊作用を受けやすくなるため、気泡の微細化を促進することができる。一方、流路断面積Asを小さくしすぎると、流量Qsが小さくなり、気泡を含む流体の生成量が低下する。このため、スロート部11is,11osの流路断面積Asは、気液供給系の能力や発生器10の内部構造などにより定まる条件に応じて、なるべく流速Vsが大きくなるとともに、必要な流量Qsが確保できる範囲に設定することが好ましい。
上述のように分流された気液混合流体10yinと気液混合流体10youtは内側流出口11icと外側流出口11ocから流出した後に流体混合部11Zにおいて合流する。このとき、気液混合流体10yinと気液混合流体10youtは、それぞれ内側流入口11ibと外側流入口11obでは相互にほとんど同様の速度及び圧力を持っていたとみなすことができるので、上述のような流入口から流出口への流路断面積の変化態様に伴う速度及び圧力の変化態様の差から、流出口では、気液混合流体10yinが気液混合流体10youtよりも速度が小さく、圧力が大きくなる。このため、上記流体混合部11Zにおいて、速度差と圧力差を有する気液混合流体10yinと気液混合流体10youtの合流により二重ジェット乱流が形成され、乱流渦運動により、強いせん断力が発生し、既に微細化されている気泡10zaがさらに微細化される。ここで、上記の速度差と圧力差が大きくなるほど二重ジェット乱流による干渉が強くなり、様々なスケールの渦を生じさせるため、気泡の微細化をさらに促進できる。なお、複数の分流路の流出口における各気液混合流体の速度差は、結果として乱流を生ずる態様で存在すればよい。例えば、内側分流路11iaの内側流出口11icにおける流れの向きと、外側分流路11oaの外側流出口11ocにおける流れの向きとが相違するに過ぎない場合にも乱流は発生する。
本実施形態において、上記流体導入部11X内で気液混合流体10xaの旋回流10xbが発生する場合には、上記流体分流部11Yにおいて、上記内側分流路11ia及び上記外側分流路11oaの内部においても旋回流が伝搬し、さらに、上記流体混合部11Zにおいても旋回流が残存する。このため、これらの旋回流によるせん断作用も気泡10xa、10ya、10zaに作用することから、さらに微細化されやすくなる。この場合、旋回流10xbは、気液導入口11bを介した気体及び液体の供給方向を軸線11xの周りの旋回成分を持つように設定することで、生じさせることができる。ただし、旋回流10xbは流路11a(流体導入部11X)内に設置された旋回ファンなどによって強制的に発生させてもよい。また、この場合には、流路構成体11の流路方向と直交する断面形状を軸線11xの周りの円状とし、また、流路内在体12の同断面形状を軸線11xの周りの環状とすることが好ましい。これにより、旋回流が発生しやすくなるとともに、流路方向に旋回流が伝搬しやすくなる。
流路11aの下流端には、流体導出口11cが設けられるため、流体混合部11Z内の気液混合流体10zは、流体導出口11cを介して、流路構成体11の外部へ導出される。すなわち、相対的に高圧の流体混合部11Z内で上述の乱流の作用によって微細化された気泡10zaを含む気液混合流体10zは、流体導出口11cを介して相対的に低圧の流路構成体11の外部へと噴出する。そして、流体混合部11Zの内圧と、流体導出口11cの外側(下流側)の圧力との差圧によって、流体が高速で噴出することにより、気液混合流体10z中の微細な気泡がさらに崩壊し、さらなる微細化が生ずる。すなわち、本実施形態では、流体導出口11cは、内外の圧力差によって高速で噴出する流体噴出ノズルを構成するので、気液混合流体10z内の気泡10zaは流体導出口11cにおいてもさらに微細化され得る。
流体導出口11cは、図示のように、流体混合部11Zの内部側から外部側に向けて円錐状に広がる形状(円錐台形状、或いは、逆テーパー状)の傾斜面11dを備える。このような流体導出口11cの外部側に開いた構造により、流体導出口11cにおいて圧力が急激に解放されることによって気泡の微細化が促進される。このとき、傾斜面11dの軸線11xに対する傾斜角度である開き角φは、特に限定されるものではないものの、15〜75度の範囲内であることが好ましく、特に、25〜65度の範囲内であることが望ましい。さらに、30〜60度の範囲内であれば、より効果的である。開き角φが小さすぎると気泡の微細化作用が抑制されやすくなり、開き角φが大きすぎると開口縁の剛性が低下する。また、複数の流体導出口11cを設けることにより、流量が増加する。このことは、気泡密度を高める上でも効果的である。
以上は、本発明の実施形態の概略構成と、この概略構成による作用効果を示したものである。このような構成により、本実施形態では、従来よりも高密度の超微細気泡を生成することができる。特に、本実施形態では、数十[nm]〜1[μm]程度の径の気泡を、従来技術よりも高密度に生成することが可能になっている。気泡径は、50〜500[nm]の範囲が好ましく、特に、100〜400[nm]の範囲が望ましい。本実施形態の構成を備えた実施例では、後述するように、常圧(1atm)において、平均気泡径が150〜300[nm]の範囲内に入る超微細気泡を生成することができた。
ここで、流路構成体11の軸線11xに沿った長さは流路内在体12の軸線11xに沿った長さの2〜4倍の範囲内、或いは、サイズを考慮しなければそれ以上であることが好ましく、流体導入部11Xと流体混合部11Zの軸線11xに沿った長さが流路内在体12の軸線11xに沿った長さの0.5倍以上であることが望ましい。また、発生器10の内圧が2〜5気圧の範囲内にあるときには、前述のようにスロート部における流速の増大を図りつつ流量の低下を抑制するために、内側分流路11iaのスロート部11isの直径や外側分流路11oaのスロート部11osの径方向の隙間は1〜4mmの範囲内であることが好ましく、特に、1.5〜3.5mmの範囲内であることが好ましい。さらに、流体導出口11cの最も狭い開口断面の直径も、上記と同じ理由から、1〜4mmの範囲内であることが好ましく、特に、1.5〜3.5mmの範囲内であることが望ましい。
図2(a)には、第1実施形態の超微細気泡発生器の構造を模式的に示す。なお、図2及び図3に示す第1実施形態から第4実施形態までは、図1に示す実施形態の流体導入部11Xの気液導入口11bの構造に関するものであるので、当該気液導入口11bの構成以外については、図1に示すものと同じであるとして、或いは、第5実施形態〜第8実施形態のいずれかと同様であるとして、説明を省略する。この第1実施形態では、流体導入部11Xに対して気体と液体が一緒に供給される。すなわち、上記流路構成体11には、上記気液導入口11bとして、流体導入部11Xに連通する単一の供給口が流路構成体11の上流側の外周に形成される。この場合には、気液導入口11bを介して気体と液体の二相流が流体導入部11Xに供給される。気液導入口11bを介して供給される液体と気体の状態は様々であるが、単一のポンプなどの供給系により液体と気体を供給できるという利点がある。なお、図示例では、気液導入口11bの供給方向は、流路11aの軸線11xとは直交する方向に設定されているので、軸線11xの周りの圧力成分を有する方向に供給すれば、上記旋回流10xbを形成しやすいという利点もある。
図2(b)には、第2実施形態の超微細気泡発生器の構造を模式的に示す。この第2実施形態では、流体導入部11Xに対して気体と液体が別々に供給される。すなわち、上記流路構成体11には、上記気液導入口11bとして、流体導入部11Xに連通する液体供給口11b1と気体導入口11b2が流路構成体11の上流側の外周に別々に形成されている。この場合には、液体供給口11b1と気体供給口11b2に対してそれぞれ所定圧力により液体と気体を供給する必要がある。一方、液体と気体の供給量をそれぞれ個別に制御できるという利点がある。また、図示例では、液体供給口11b1と気体供給口11b2の供給方向は、流路11aの流路方向Fとは直交する方向に設定されているので、軸線11xの周りの圧力成分を有する方向で供給すれば、上記旋回流10xbを形成しやすいという利点もある。なお、図示例では、液体供給口11b1と気体導入口11b2が軸線11xに沿った方向に配列される位置関係で形成されているが、液体供給口11b1と気体導入口11b2が軸線11xの周りに配列される位置関係で形成されていてもよい。
図3(a)には、第3実施形態の超微細気泡発生器の構造を模式的に示す。この第3実施形態では、上記気液導入口11bとして、流路構成体11の上流側の外周に形成された外周供給口11b3と、流路構成体11の上流側の端部の内周側に形成された内周供給口11b4とが設けられる点で先の例とは異なる。内周供給口11b4は流路構成体11の上流側の端部において、外周供給口11b3よりも内周側に設けられていればよい。図示例のように、内周供給口11b4は流路構成体11の軸線11xに対向する中央部に形成されることが望ましいが、供給される流体を旋回流10xbに乗せるために、内周供給口11b4を中央部以外の偏心位置に形成してもよい。この実施形態では、外周供給口11b3と内周供給口11b4のうちの一方の供給口を介して液体を供給し、他方の供給口を介して気体を供給することにより、流体導入部11Xに気体と液体を導入することができる。このようにすると、供給方向の相違により気体と液体の撹拌作用を高めることができる。また、内周供給口11b4を介して軸線11x(流路方向)に向けて高速に気体又は液体を供給できるとともに、外周供給口11b3を介して軸線11x周りに旋回流を形成することも可能になる。このため、流体中の気泡の微細化にも効果があると考えられる。
図3(b)には、第4実施形態の超微細気泡発生器の構造を模式的に示す。この第4実施形態では、上記気液導入口11bとして、流路構成体11の上流側の外周に形成された外周供給口11b3と、流路構成体11の上流側の端部の内周側に形成された内周供給口11b4とが設けられる点で第3実施形態と同様である。また、内周供給口11b4は流路構成体11の上流側の端部において、外周供給口11b3よりも内周側に設けられていればよい点も第3実施形態と同様である。そして、図示例のように、内周供給口11b4は流路構成体11の軸線11xに対向する中央部に形成されることが望ましいが、供給される流体を旋回流10xbに乗せるために、内周供給口11b4を中央部以外の偏心位置に形成してもよい。この第4実施形態では、外周供給口11b3と内周供給口11b4のうちの少なくとも一方の供給口において気体と液体を共に供給する。例えば、気液二相流をポンプなどにより圧送する。また、両方の供給口において気体と液体を共にを供給することが望ましい。これにより、流体導入部11Xに気体と液体を導入することができる。このようにすると、軸線11xに向けて高速に気液混合流体を供給できるとともに、軸線11x周りに気液混合流体の旋回流を形成することもできる。このとき、両供給口11b3,11b4にいずれも気液混合流体が供給される場合には、双方の気液混合流体が異なる方向に供給されるため、流体導入部11X内の混合状態を高めることができる。このため、流体中の気泡の微細化にも効果があると考えられる。
図4には、第5実施形態の超微細気泡発生器の構造を模式的に示す。この第5実施形態では、流路構成体11の内側寸法(内径)が流路方向に変化することにより、流体導入部11Xの流路断面積が、それよりも下流側の流体分流部11Yや流体混合部11Zの流路断面積よりも大きく構成されている点で先の例とは異なる。なお、図4においては、気液導入口11bや流体導出口11cの構造などは特に限定されず、他の実施形態のいずれかと同様に構成することができるという意味で、二点鎖線で示してある。このように構成すると、流体導入部11Xから流体分流部11Yへ気液混合流体10xが流入するときに流路11a全体の流路断面積が低下するため、内側分流路11iaと外側分流路11oaに流れる気液混合流体10yin及び10youtの流速が増大し、流体混合部11Zでの乱流も激しくなると考えられることから、流体混合部11Zにおける気泡の微細化がさらに促進されると考えられる。
図5には、第6実施形態の超微細気泡発生器の構造を模式的に示す。この第6実施形態では、流路構成体11の外形(外径)が流路方向に変化することにより、流体分流部11Yの流路断面積が途中で低下している点で先の例とは異なる。このようにすると、外側分流路11oaの流路断面積が途中で減少することとなるため、気液混合流体10youtの流速が途中で増加し、これにより、内側流出口11icにおける気液混合流体10yinの流速に対する外側流出口11ocにおける流速差がさらに大きくなることから、流体混合部11Zにおける気泡の微細化がさらに促進されると考えられる。
図6には、第7実施形態の超微細気泡発生器の構造を模式的に示す。この第7実施形態では、流路構成体11の外形(外径)が流路方向に変化することにより、流体混合部11Zの流路断面積が途中で低下している点で先の例とは異なる。このようにすると、外側分流路11oaの外側流出口11ocから流入する気液混合流体10youtの流速が流体混合部11Zの内部で増加し、また、気液混合流体10youtの流体混合部11Z内での流れの向きも内側にずれることから、内側分流路11iaの内側流出口11icから流入する気液混合流体10yinに対する巻き込み作用がさらに増大する。このことから、流体混合部11Zにおける気泡の微細化がさらに促進されると考えられる。
図7には、第8実施形態の超微細気泡発生器の構造を模式的に示す。この第8実施形態では、流路構成体11の下流側の端部に複数の流体導出口11cが設けられる点で先の例とは異なる。すなわち、流体混合部11Z内から気液混合流体10zを噴出する噴出ノズルが複数設けられることで、噴出時に生ずる気泡の微細化の態様が変化するものと考えられる。図示例では、軸線11xの周囲に等間隔で4つの流体導出口11cを形成した。それぞれの流体導出口11cは上述と同様に外部側に開いた構造を備える。流体導出口11cを複数設けることにより、導出される気液混合流体の流量を増大させることができる。ただし、発生器10の内部圧力が低下すると、上述の圧力の解放による流体の高速の噴出作用が変化し、この噴出による気泡の微細化の態様も変化するので、内部圧力を維持する必要があると考えられる。
図8には、超微細気泡発生装置1に関する第9実施形態の全体構成を模式的に示す。この第9実施形態では、前述の超微細気泡発生器10に気体及び液体を供給する流体供給ポンプ2と、この供給ポンプ2と超微細気泡発生器10とを接続する供給路3と、流体供給ポンプ2を制御する制御部4と、超微細気泡発生器10から放出される流体を収容する流体槽5と、超微細気泡発生器10と流体槽5とを接続する導出路6とを備える。また、排出弁8は、流体槽5からの流体の取り出しに用いる。ここで、制御部4は、流体供給ポンプ2の稼働の有無や供給圧などを制御する。この流体供給ポンプ2と、これを制御する制御部4は、上記超微細気泡発生器10に前記気液導入口を介して気体と液体を供給する気液供給機構20を構成する。なお、上記超微細気泡発生器10に開閉弁や調圧弁などの制御対象が含まれる場合には、図示点線で示すように、制御部4により超微細気泡発生器10を制御するように構成してもよい。
上記の超微細気泡発生装置1では、流体供給ポンプ2によって気体と液体の二相流を所定圧力で供給することができる。このとき、気体と液体の比率は流体供給ポンプ2に設けられた気体導入弁の制御によって調整することができる。また、前述のように気体と液体を別々に供給する場合には、上記気液供給機構20において、個々の供給のためのポンプや調整弁などを設けることができる。
また、図示のように、流体槽5に収容された流体を上記流体供給ポンプ2へ戻す循環路7を設けることが好ましい。このようにすると、循環路7により既に気泡が形成された流体を超微細気泡発生器10に再度導入することができるため、繰り返し超微細気泡発生器10内を通過させることにより、流体中の気泡密度をさらに高めることができる。
図9には、超微細気泡発生装置に関する第10実施形態の全体構成を模式的に示す。この第10実施形態の超微細気泡発生装置1では、上記第9実施形態と同様の、流体供給ポンプ2、供給路3、制御部4、流体槽5、及び、必要に応じて設けられる循環路7や排出弁8を備えているが、上述と同様であるので、それらの説明は省略する。この第10実施形態では、超微細気泡発生器10の流体導出口11cが流体槽5内の流体中に直接配置されている点で、第9実施形態とは異なる。このように、流体導出口11cが流体(液体)中に直接露出することで、流体混合部11Z内の気液混合流体10zが噴出する際に流体導出口11cの前後で受ける圧力差が大きくなり、気泡が受ける微細化作用も増大するため、超微細気泡の密度が向上すると考えられる。
図10には、実施例により得られた気泡プロファイルを比較した結果を示す。ここで、実施例1は、流体導入部11Xの気液導入口11bとして上記第1実施形態の基本構成を有し、流路方向に同径の流路断面を有する流路構成体11を備えるとともに、単一の流体導出口11cを設けた超微細気泡発生器10を用い、図9に示す全体構成を有する超微細気泡発生装置1により気泡を生成させた。上記開き角φは30度である。また、実施例2では、上記の実施例1と同様の全体構成を有するとともに上記第6実施形態のように4つの流体導出口11cを有する超微細気泡発生器10を用いて気泡を生成させた。上記開き角φは30度である。さらに、実施例3では、上記の実施例1と同様の全体構成を有するとともに、上記第6実施形態のように4つの流体導出口11cを設けた超微細気泡発生器10を用い、図9に示す全体構成を有する超微細気泡発生装置1により気泡を生成させた。上記開き角φは60度である。
このとき、実施例1〜3においては、いずれも蒸留水を使用し、図9に示す全体構成の上記超微細気泡発生装置1を、流体槽5内の流体を循環路7により3回循環させた場合に相当する時間だけ稼働させることによって得られた流体をサンプルとした。また、気液導入口11bに供給される気液混合流体の供給圧を調整し、発生器10の内圧を4〜5気圧の範囲内に維持した。因みに、各実施例のスロート部11isの直径とスロート部11osの隙間はいずれも2〜3mmの間とし、流体導出口11bの最小直径も2〜3mmの間の値に設定した。さらに、上記各実施例では、流路構成体11の軸線11xに沿った長さは流路内在体12の3倍とし、流体導入部11Xと流体混合部11Zの軸線11xに沿った長さが相互に等しい値とした。そして、超微細気泡生成後5日目に、粒子追跡法で気泡径と気泡密度を測定した。そして、図10では、これらの各実施例1〜3の結果を示した。
図10に示すように、上記各実施例1〜3ではいずれも気泡径が10〜300[nm]を中心とした超微細気泡が生成されている。また、実施例1〜3の気泡密度は、従来の値を大幅に上回る15億個以上の数値となった。また、各実施例の気泡径分布は基本的に5〜500[nm]の範囲を主体とし、さらに20〜300[nm]の範囲に集中している。特に、40〜200[nm]の領域では高い気泡密度を示している。このように、実施例1〜3の気泡密度は、気泡径が100[nm]付近を中心として高い集中度を備え、高品質の超微細気泡(ナノバブル)が効率的に生成されていることがわかる。特に、実施例3の気泡径分布は分散が極めて小さく、100[nm]付近を中心に極めて高い集中度を示した。以上のように、各実施例1〜3では、従来技術に比べて大幅に気泡密度を高くすることができるとともに、特定の気泡径に集中した高品質の超微細気泡を生成することができた。
また、微細気泡の生成時における流量は、実施例1では8.0[l(リットル)/min]、実施例2では12.0[l(リットル)/min]、実施例3では12.5[l(リットル)/min]となり、いずれも従来技術よりも大きな流量を得ることができた。したがって、各実施例1〜3では、低いランニングコストで効率的に気泡を生成することができることがわかる。
図11及び図12には、実施例1及び2によって生成した気液混合流体を保管し、気泡の平均気泡径と、平均個数密度の変化を観察した結果を示した。これらを見ると、超微細気泡の安定性に関して、常に高い密度が31日間にわたり維持されていることがわかる。また、実施例では、従来技術よりも微細な気泡径が長期間にわたり確実に保存されていることが示されている。
図13には、各実施例1〜3において生成された気泡のゼータ電位の測定結果を示す。ここで、ゼータ電位は、顕微鏡電子泳動法により測定した。このゼータ電位(Zeta Potential)とは、溶液中の微粒子の周りに形成される電気二重層において、流体流動が起こり始めるすべり面の電位として定義される。ゼータ電位の絶対値が低いと微粒子は不安定になり、凝集しやすいのに対して、ゼータ電位の絶対値が高くなると、微粒子は安定し、分散した状態が維持されやすい。従来技術における微細気泡のゼータ電位は一般に−50[mV]程度であるのに対して、各実施例1〜3では、いずれもゼータ電位として−100[mV]前後の値が得られている。したがって、各実施例で生成された超微細気泡は、従来よりも極めて高い安定性を備えていることがわかる。
以上のように、本実施形態によれば、従来技術に比べて極めて高い密度の超微細気泡を効率的に生成することができる。また、集中した気泡径分布を備える極めて高品質の超微細気泡が得られ、その高い持続性や安定性も確認されている。さらに、このような超微細気泡を簡易な装置により従来よりも大流量で生成することができるため、従来装置よりもランニングコストを低減することが可能である。そして、このように従来技術に比べて高品質、高密度の微細気泡を生成することができるので、微細気泡の種々の効果、例えば、物質搬送機能、衝撃圧力作用、表面活性作用、生理活性作用、酸化力維持効果、浸透力作用、表面積増加効果などを、より効率的、効果的に発揮することができる。
なお、本発明の超微細気泡発生器及び超微細気泡発生装置は、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、超微細気泡発生器10の流体分流部11Yにおいて、内外二重の内側分流路11iaと外側分流路11oaとが設けられているが、三つ以上の分流路に分かれていても構わない。また、複数の分流路は並行して設けられていればよく、必ずしも内外に同軸状に設けられている必要はない。さらに、気体としては、空気の他に、オゾン、水素、酸素、窒素、二酸化炭素などの種々のものを用いることができるとともに、液体としては、水の他に、アルコール、灯油などの燃料類、各種溶剤などの種々のものを用いることができる。