JP2020127387A - 栄養組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】速やかな胃内増粘性を有しつつ、乳化安定性を維持する栄養組成物の提供。【解決手段】総タンパク質量に対して75質量%以上のカゼインタンパク質を含み、かつ、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む、胃内増粘性の栄養組成物。カゼインタンパク質の含有量は1.0〜10.0g/100kcalであり、中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量は0.1〜5.0g/100kcalであることが好ましく、炭水化物の含有量が10〜25g/100kcalであり、水分含有量が100〜150g/100kcalであることがより好ましい。更に、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率が20質量%のときの20℃における粘度が4000mPa・s以上であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、栄養組成物に関する。より詳細には、乳化安定性を有しつつ、胃内への供給時に素早く増粘性を発揮する胃内増粘性の栄養組成物に関する。
必要な栄養素を過不足なく補給できる栄養組成物は、食事の経口摂取が困難な高齢者や入院患者の食事代替品として広く用いられている。中でも、天然の素材を人工的に処理又は合成したものは人工濃厚流動食と呼ばれ、窒素源の違いによって半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤とさらに分類される。
窒素源がタンパク質として配合される半消化態栄養剤は、現在、濃厚流動食の主流となっている。この場合、栄養素を吸収するために消化の過程を経る必要があることから、比較的良好な消化管機能を維持していることが適応の条件となる。
このような半消化態栄養剤は現在までに多数開発されており、そのほとんどが液状の製剤として提供されている。そして、これらのうち一部の製剤はpHの低下により増粘し、液状からゲル状へと変化する。これにより、胃食道からの逆流や下痢などの合併症を防止することが可能となる。
例えば特許文献1には、脂質、酸性領域でゲル化する増粘剤(アルギン酸ナトリウム、ペクチン、ジェランガム)、ガティガム、酸性領域で2価の金属イオンを遊離する不溶性の2価金属塩を含有し、pHが5.5以上9未満であり、胃内に入るとゲル化することを特徴とする乳化食品組成物が開示されている。
また、特許文献2には、タンパク質、脂質、ペクチン、アルギン酸塩等を含む液状栄養組成物が開示されている。特許文献3は、所定のアルギン酸ナトリウム又はペクチン、カルシウム、キレート剤を含有する濃厚流動食が、そして特許文献4は、カルシウムと結合してゲル化又は増粘する多糖類(ペクチン、アルギン酸塩、ジェランガム等)、カルシウム源、乳化性を有するタンパク質等を含有する濃厚流動食が、人工胃液への接触後に一定粘度以上に増粘することが記載されている。
このように、ペクチンやアルギン酸塩等を配合して酸性領域で2価金属イオンと結合させることによって胃内への供給時にゲル化又は増粘させる濃厚流動食が種々開発されている。
特許第5590638号公報 特開2017−169484号公報 特許第6378889号公報 再公表2015−159990号公報
しかしながら、ゲル化剤又は増粘剤を配合する従来の胃内増粘性の栄養組成物は、製造時の加熱工程により乳化破壊が促進されることに起因して、十分な乳化安定性が得られないという問題があった。
製品中の栄養成分が均一化されていることは臨床栄養学上重要であることから、乳化破壊によるタンパク質や油脂の凝集・沈殿を低減し、栄養組成物の乳化安定性を維持することが求められていた。
また従来から、加齢に伴い胃液分泌が低下した又は胃酸濃度が低い高齢者等の場合、胃内へ供給された栄養組成物の増粘が不十分となり、胃食道からの逆流や下痢などの合併症を起こし易いという問題があった。
このように、栄養組成物には、胃内への供給時の速やかな増粘に加えて、乳化安定性が求められていた。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、速やかな胃内増粘性を有しつつ、乳化安定性を有する栄養組成物を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究努力を重ねた末、栄養組成物中の主要タンパク源をカゼインタンパク質とし、かつ、油脂として中鎖脂肪酸トリグリセリドを用いることで、上記2つの課題を両立的に解決することが可能であることを見出すに至った。
すなわち、上記課題を解決する本発明は、総タンパク質量に対して75質量%以上のカゼインタンパク質を含み、かつ、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む、胃内増粘性の栄養組成物である。
本発明の栄養組成物は、乳化作用を有するカゼインタンパク質を主要タンパク源とし、かつ、油脂として中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有することで、乳化安定性を有する。
また、本発明の栄養組成物は、酸性領域に等電点を有するカゼインタンパク質を含有することで、胃内に供給された際に速やかに増粘性を発揮することができる。
本発明の栄養組成物は、製品中のカゼインタンパク質の含有量が1.0〜10.0g/100kcalとなるように調製することが好ましい。
カゼインタンパク質の含有量が上記範囲に調製された栄養組成物は、カゼインタンパク質の乳化作用によって乳化安定性が補強されつつ、胃内へ供給された際には速やかに増粘性を発揮する。
本発明の栄養組成物は、製品中の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が0.1〜5.0g/100kcalとなるように調製することが好ましい。
中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が上記範囲に調製された栄養組成物は、優れた乳化安定性を有する。
本発明の栄養組成物は、製品中の炭水化物の含有量が10〜25g/100kcalとなるように調製することが好ましい。
また、本発明の栄養組成物は製品中の水分含有量が100〜150g/100kcalとなるように調製されることが好ましい。
なお、本発明において「炭水化物」は、糖質、食物繊維、多糖類からなるゲル化剤や増粘剤を総称する意味として用いる。
本発明の栄養組成物は、炭水化物の含有量が低く、水分含有量が高いにもかかわらず、速やかな胃内増粘性を発揮することが可能であるとともに、乳化状態を安定して維持することが可能である。
本発明の栄養組成物は、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率が20質量%のときの20℃における粘度が4000mPa・s以上であるという特徴を有する。
本発明の栄養組成物は、胃内への供給初期の段階から速やかに増粘し、又は胃液濃度が低い場合にも優れた増粘性を有する。
本発明の栄養組成物は、経管流動食の形態で提供されることが好ましい。
本発明によれば、速やかな胃内増粘性という効果が得られるだけでなく、乳化安定性の高い栄養組成物を提供することができる。このような効果を有する栄養組成物は、胃食道からの逆流及びこれに起因する誤嚥性肺炎、並びに下痢などの合併症を防止することが可能であり、食事の経口摂取が困難な高齢者や入院患者の食事代替品として有用である。
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
本発明の栄養組成物は、胃内増粘性を有する。本発明において「胃内増粘性」は、胃食道又はこれを模した環境下においてゲル化又は増粘する性質を指す。同性質は、例えば人工胃液に接触した後のゲル化又は増粘性によって評価することができる。
本発明における「栄養組成物」には、医薬品及び食品の何れもが含まれる。したがって、本発明における栄養組成物には、経腸栄養剤、濃厚流動食、天然濃厚流動食、人工濃厚流動食、半消化態栄養剤、消化態栄養剤、半固形栄養剤、及び成分栄養剤などの種類が含まれる。本発明の栄養組成物は、胃内で増粘することを特徴とする栄養組成物である。
本発明の栄養組成物は、タンパク質、脂質、及び炭水化物を主な栄養成分として含むものである。これら3種の栄養成分の含有量をそれぞれ以下の範囲となるよう調製することで、栄養成分を十分量含む栄養組成物を提供することができる。含有量の測定は、それぞれ常法により行うことができる。すなわち、脂質含量は、レーゼ・ゴットリーブ法により測定することができる。タンパク質含量は、燃焼法により測定することができる。炭水化物は、差し引き法(100%から、脂質含量、タンパク質含量、灰分含量及び水分含量を差し引いて求められる値)により測定することができる。なお、灰分含量は直接灰化法により、水分含量は常圧加熱乾燥法によりそれぞれ測定することができる。
すなわち、本発明の栄養組成物は、製品中のタンパク質の含有量が1.5〜10.5g/100kcalとなるように調製することが好ましく、3.0〜8.0g/100kcalとなるように調製することがより好ましく、3.5〜5.5g/100kcalとなるように調製することがさらに好ましい。
また、本発明の栄養組成物は、製品中の脂質の含有量が1.5〜6.0g/100kcalとなるように調製することが好ましく、2.0〜3.5g/100kcalとなるように調製することがより好ましく、2.5〜3.1g/100kcalとなるように調製することがさらに好ましい。
また、本発明の栄養組成物は、製品中の炭水化物の含有量が10〜25g/100kcalとなるように調製することが好ましく、13〜20g/100kcalとなるように調製することがより好ましく、15〜18g/100kcalとなるように調製することがさらに好ましい。
また、製品中の水分含有量に関しては、100〜150g/100kcalとなるように調製することが好ましく、105〜140g/100kcalとなるように調製することがより好ましく、110〜135g/100kcalとなるように調製することがさらに好ましい。
また、本発明の栄養組成物は、100g当たりの熱量が50〜150kcalとなるように調製することが好ましく、55〜100kcalとなるように調製することがより好ましく、60〜80kcalとなるように調製することがさらに好ましい。なお、栄養組成物の熱量は、アトウォーター法により算出することができる。
これらの栄養成分等の含有量の絶対値としては、それぞれ以下の範囲となるよう調製することが好ましい。
すなわち、本発明の栄養組成物は、タンパク質の含有量が1〜10質量%となるように調製することが好ましく、2〜5質量%となるように調製することがより好ましく、2〜4質量%となるように調製することがさらに好ましい。
また、本発明の栄養組成物は、脂質の含有量が0.1〜5質量%となるように調製することが好ましく、1〜3質量%となるように調製することがより好ましく、1.5〜2質量%となるように調製することがさらに好ましい。
また、本発明の栄養組成物は、炭水化物の含有量が1〜30質量%となるように調製することが好ましく、5〜20質量%となるように調製することがより好ましく、10〜15質量%となるように調製することがさらに好ましい。
また、本発明の栄養組成物は、水分含有量が50〜90質量%となるように調製することが好ましく、60〜85質量%となるように調製することがより好ましく、70〜85質量%となるように調製することがさらに好ましい。
本発明における「カゼインタンパク質」には、カゼイン及びその塩が含まれる。カゼインの塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩を例示することができる。ただし、本発明において、カゼインタンパク質の含有量は、前記に例示したカゼイン塩の質量ではなく、カゼインの質量として算出される。
カゼインタンパク質の含有量は、ウエスタンブロット法により測定することができる。
本発明の栄養組成物は、総タンパク質量に対して75質量%以上のカゼインタンパク質を含むことが好ましく、80質量%以上のカゼインタンパク質を含むことがより好ましく、85質量%以上のカゼインタンパク質を含むことがより好ましく、90質量%以上のカゼインタンパク質を含むことがさらに好ましく、100質量%のカゼインタンパク質を含むことが特に好ましい。
本発明の栄養組成物は、総タンパク質量に対して25質量%未満の範囲内であれば、カゼインタンパク質以外のタンパク質を含むことが許容されるものである。栄養組成物を構成するカゼインタンパク質以外のタンパク質は、特に制限されるものではないが、乳化安定性を高める観点から、乳化作用を有する乳由来のタンパク質であることが好ましい。このような乳由来のタンパク質としては、ホエイタンパク質を好ましく例示することができる。
本発明においてホエイタンパク質を含有する場合、カゼインタンパク質及びホエイタンパク質の含有質量比は、カゼインタンパク質量:ホエイタンパク質量=7.5:2.5〜9.5:0.5であることが好ましく、8:2〜9.5:0.5であることがより好ましく、9:1〜9.5:0.5であることがさらに好ましい。
ホエイタンパク質をタンパク源として含有する場合でも、カゼインタンパク質の含有質量比を上記範囲に調製することで、速やかな胃内増粘性と乳化安定性を両立することができる。
また、本発明の栄養組成物は、製品中のカゼインタンパク質の含有量が1.0〜10.0g/100kcalとなるように調製することが好ましく、2.0〜7.0g/100kcalとなるように調製することがより好ましく、3.0〜5.0g/100kcalとなるように調製することがさらに好ましい。
本発明における「中鎖脂肪酸トリグリセリド」とは、炭素数6〜12個の脂肪酸がグリセリンにエステル結合した脂質を指し、「Medium−Chain Triglycerols(MCT)」とも称される。
本発明における中鎖脂肪酸トリグリセリドは、加熱時における乳化破壊を低減し、栄養組成物の乳化安定性に寄与する。
中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量は、ガスクロマトグラフ法により測定することができる。
本発明において使用される中鎖脂肪酸トリグリセリドは、中鎖脂肪酸を含む天然由来の油脂原料をエステル交換などにより合成したものを使用することが好ましい。このような中鎖脂肪酸トリグリセリドは、市販されているものを使用することができる。
本発明の栄養組成物は、中鎖脂肪酸トリグリセリドを0.2質量%以上含むことが好ましく、0.3質量%以上含むことがより好ましく、0.4質量%以上含むことがさらに好ましい。
中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量を上記の下限値以上とすることで、栄養組成物の乳化安定性を向上させることができる。
また、本発明の栄養組成物は、中鎖脂肪酸トリグリセリドを0.8質量%以下含むことが好ましく、0.7質量%以下含むことがより好ましく、0.6質量%以下含むことがさらに好ましい。
中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量を上記の上限値以下とすることで、対象者への経管投与時にチューブ内壁に残渣が付着することを防止することができる。
また、本発明の栄養組成物は、製品中の中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が0.1〜5.0g/100kcalとなるように調製することが好ましく、0.3〜3.0g/100kcalとなるように調製することがより好ましく、0.5〜1.0g/100kcalとなるように調製することがさらに好ましい。
本発明の栄養組成物は、中鎖脂肪酸トリグリセリドに加え、他の油脂を配合することもできる。例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、落花生油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油又はハイオレイックヒマワリ油などの植物油脂;牛脂、ラード、魚油又は乳脂等の動物油脂などを例示することができる。
中鎖脂肪酸トリグリセリドと上記の油脂を併用する場合、植物油脂及び/又は魚油と組み合わせて使用することが好ましい。植物油脂及び/又は魚油を使用することで、必須脂肪酸を効率よく摂取することができる。
この場合、中鎖脂肪酸トリグリセリドに対する他の油脂の含有質量比は、好ましくは1〜5であり、より好ましくは1.5〜4.5であり、さらに好ましくは2〜3である。
このような比率で油脂を配合することにより、十分な栄養価を有しつつ、乳化安定性に優れる栄養組成物を提供することができる。
また、本発明の栄養組成物は、油脂全体における中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が15質量%以上となるように調製することが好ましく、20質量%以上となるように調製することがより好ましく、25質量%以上となるように調製することがさらに好ましい。
中鎖脂肪酸トリグリセリドに加えて上述した他の油脂を配合する際に、中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量を上記範囲となるよう調製することで、栄養組成物の乳化安定性を向上させることができる。
栄養組成物の粘度は、B型回転粘度計を用いて測定することができる(測定温度:20℃、ローター回転数:6rpm)。また、栄養組成物の胃内増粘性は、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物の粘度を測定することで評価することができる。
人工胃液は、第十七改正日本薬局方の「6.09崩壊試験法」に基づいて調製することができる(pH1.2、塩化ナトリウム2.0g/L、塩酸7.0ml/L)。
栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率としては、例えば15質量%、20質量%、及び25質量%とすることができる。このような比率で栄養組成物と人工胃液とを混合した後の混和物の粘度は、胃液の分泌が少ない又は胃液濃度が低い対象者が本発明の栄養組成物を摂取した場合における粘度の目安とすることができる。
また、前記の比率で栄養組成物と人工胃液とを混合した後の混和物の粘度は、それぞれ栄養組成物の摂取後15〜25分、30〜40分、及び45〜60分における粘度の目安とすることもできる。
後述する実施例に示すように、本発明の栄養組成物は、その人工胃液との混和物において人工胃液の比率が前記のように小さいながらも、優れた胃内増粘性を発揮するものである。
なお、人工胃液と混合せずに栄養組成物の粘度を測定することで、栄養組成物を対象者に投与する前の、すなわち製品としての粘度を評価することができる。
本発明の栄養組成物は、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率が15質量%のときの20℃における粘度が、好ましくは1000mPa・s以上であり、より好ましくは2000mPa・s以上であり、さらに好ましくは3000mPa・s以上である。
人工胃液の比率が上記であるときの、栄養組成物のpHは、6.5〜4.5であることが好ましく、6.0〜4.8であることがより好ましく、5.8〜5.3であることがさらに好ましい。
本発明の栄養組成物は、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率が20質量%のときの20℃における粘度が、好ましくは3000mPa・s以上であり、より好ましくは3500mPa・s以上であり、さらに好ましくは4000mPa・s以上である。
人工胃液の比率が上記であるときの、栄養組成物のpHは、好ましくは6.0〜4.0であり、より好ましくは5.8〜4.5であり、さらに好ましくは5.5〜5.0である。
本発明の栄養組成物は、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率が25質量%のときの20℃における粘度が、好ましくは3000mPa・s以上であり、より好ましくは4000mPa・s以上であり、さらに好ましくは5000mPa・s以上である。
人工胃液の比率が上記であるときの、栄養組成物のpHは、5.5〜4.0であることが好ましく、5.3〜4.3であることがより好ましく、5.0〜4.6であることがさらに好ましい。
栄養組成物を対象者に投与する前の20℃における粘度は、50mPa・s以上となるように調製することが好ましく、75mPa・s以上となるように調製することがより好ましく、100mPa・s以上となるように調製することがさらに好ましい。
また、栄養組成物を対象者に投与する前の20℃における粘度は、600mPa・s以下となるように調製することが好ましく、500mPa・s以下となるように調製することがより好ましく、400mPa・s以下となるように調製することがさらに好ましい。
栄養組成物を対象者に投与する前の粘度を上記の上限値及び下限値の範囲に調製することで、製品の保管時にも、通液性を維持することが可能な範囲で粘性が付与され、後述する不溶性の2価金属塩の沈殿を低減することができる。
本発明の栄養組成物の胃内増粘性は、栄養組成物と人工胃液とを混合する前の栄養組成物の粘度と、栄養組成物と人工胃液とを混合した後の混和物の粘度とを測定し、その混合前後における粘度増加率として表すこともできる。
すなわち、本発明の栄養組成物は、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率が15質量%のときの20℃における粘度増加率が、好ましくは10倍以上であり、より好ましくは20倍以上であり、さらに好ましくは30倍以上である。
また、本発明の栄養組成物は、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率が20質量%のときの20℃における粘度増加率が、好ましくは20倍以上であり、より好ましくは30倍以上であり、さらに好ましくは40倍以上である。
また、本発明の栄養組成物は、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率が25質量%のときの20℃における粘度増加率が、好ましくは20倍以上であり、より好ましくは30倍以上であり、さらに好ましくは40倍以上である。
本発明は、酸性領域に等電点を有するカゼインタンパク質を含有することで、胃内に供給された際に速やかに増粘性を発揮するという特徴を有するものである。本発明の栄養組成物は、さらにゲル化剤又は増粘剤を配合することで、胃内増粘性を高めることができる。このようなゲル化剤又は増粘剤としては、酸性領域で2価金属イオンと結合してゲル化又は増粘する多糖類を使用することが好ましい。より具体的には、ペクチン及びアルギン酸塩を使用することが好ましい。なお「酸性領域」とは、少なくともpH5.5以下の領域を指す。
ペクチン及びアルギン酸塩の種類は、特に制限されるものではないが、ペクチンについては、メチルエステル化度(DM)を減少させたローメトキシルペクチン(LMペクチン)を使用することが好ましい。食品添加物として使用可能なものであれば原料も制限されず、市販のペクチン製剤を使用することもできる。
また、アルギン酸塩については、中性領域で可溶性のものを使用することが好ましい。より具体的には、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムを使用することが好ましい。これらは、食品添加物として使用可能なものを適宜使用することができる。
本発明の栄養組成物は、酸性領域で2価金属イオンと結合してゲル化又は増粘する多糖類の含有量が、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下である。
本発明の栄養組成物は、カゼインタンパク質を含むことにより速やかに胃内増粘性を発揮する。そのため、乳化破壊を促進する上記多糖類の含有量は、上限値以下に減らすことが好ましい。
また、下限値は特に制限されないが、十分な胃内増粘性を得るため、少なくとも0.5質量%以上含まれることが好ましい。
本発明の栄養組成物は、安定剤を含むことが好ましい。安定剤としては、ジェランガム、グァーガム、発酵セルロースの1又は複数を使用することが好ましい。
これらの安定剤を使用することで、栄養組成物を対象者へ投与する前の20℃における粘度として好ましい範囲の粘性を付与することができるため、保管時や経管投与する際の流通時において、後述する不溶性の2価金属塩の沈殿を低減することができる。
この場合、本発明におけるジェランガムの含有量は、0.001〜0.1質量%であることが好ましく、0.005〜0.05質量%であることがより好ましく、0.01〜0.03質量%であることがさらに好ましい。
また、本発明におけるグァーガムの含有量は、0.001〜0.3質量%であることが好ましく、0.01〜0.1質量%であることがより好ましく、0.02〜0.07質量%であることがさらに好ましい。
このような含有量でジェランガム及び/又はグァーガムを含有することで、栄養組成物を対象者へ投与する前の20℃における粘度として好ましい範囲の粘性を付与することができる。
また、本発明における発酵セルロースの含有量は、0.002〜0.06質量%であることが好ましく、0.01〜0.04質量%であることがより好ましく、0.02〜0.03質量%であることがさらに好ましい。
このような含有量で発酵セルロースを含有することで、栄養組成物の保管時や経管投与する際の流通時における不溶性の2価金属塩の沈殿を低減することができる。
酸性領域で遊離してゲル化剤又は増粘剤と結合する2価金属イオンを構成する塩としては、可溶性の2価金属塩及び不溶性の2価金属塩を例示することができる。本発明の栄養組成物では、不溶性の2価金属塩を使用することが特に好ましい。
不溶性の2価金属塩を使用することで、栄養組成物の製造時に2価金属イオンがゲル化剤又は増粘剤と結合して増粘することを防止することができる。
また、不溶性の2価金属塩を使用した場合、キレート剤を不使用又は極少量とすることができる。これにより、キレート剤との反応により消費される2価金属イオンが減り、ゲル化剤又は増粘剤との結合に消費される2価金属イオンが増加することから、栄養組成物の胃内増粘性を向上させることが可能になる。
キレート剤を使用する場合、本発明の栄養組成物におけるキレート剤の含有量は、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
不溶性の2価金属塩としては、リン酸三カルシウム及び/又はリン酸三マグネシウムを使用することが好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよいが、栄養学的観点から、組み合わせて使用することがより好ましい。
これらの配合量は、臨床栄養学又はゲル化剤若しくは増粘剤との配合バランスに基づいて決定することができるが、不溶性の2価金属塩の総量としては、0.1〜1.0質量%であることが好ましく、0.15〜0.8質量%であることがより好ましく、0.2〜0.5質量%であることがさらに好ましい。
この場合、リン酸三カルシウムの含有量は、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.07〜0.3質量%であることがより好ましく、0.1〜0.2質量%であることがさらに好ましい。
また、リン酸三マグネシウムの含有量は、0.05〜0.5質量%であることが好ましく、0.07〜0.3質量%であることがより好ましく、0.1〜0.2質量%であることがさらに好ましい。
本発明の栄養組成物は、カゼインタンパク質及び不溶性の2価金属塩を含み、酸性領域で2価金属イオンと結合してゲル化又は増粘する多糖類の含有量が2質量%以下である形態とすることができる。
このような形態の栄養組成物は、上述したように、不溶性の2価金属塩を含むことで十分な胃内増粘性を得ることができるため、乳化破壊を引き起こす上記多糖類の含有量を少量に留めることが可能となる。これにカゼインタンパク質の乳化作用も相まって、本発明の栄養組成物は、乳化安定性に優れたものとなる。
本発明の栄養組成物は、乳化剤として、レシチン及び有機酸モノグリセリドを含むことが好ましい。レシチン及び有機酸モノグリセリドを組み合わせて用いることにより、栄養組成物の乳化安定性を向上させることができる。
本発明において用いられるレシチンは、動植物に広く含まれるリン脂質であり、大豆、コーン等から得られる植物レシチン、卵黄レシチン及びそれらの精製物、酵素分解レシチン等、酵素処理レシチン等の何れを用いることもできる。これらは、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。
乳化安定性の観点から、好ましくは、大豆レシチン、卵黄レシチンなどを用いることができる。
本発明におけるレシチンの含有量は、0.025〜0.1質量%であることが好ましく、0.05〜0.08質量%であることがさらに好ましい。
本発明において用いられる有機酸モノグリセリドとしては、コハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリドなどを例示することができる。その中でも、コハク酸モノグリセリドを用いることが特に好ましい。また、これらは単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。
本発明における有機酸モノグリセリドの含有量は、0.025〜0.1質量%であることが好ましく、0.05〜0.08質量%であることがさらに好ましい。
本発明におけるレシチンと有機酸モノグリセリドの合計含有量は、0.05〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.2質量%であることがさらに好ましい。
このような含有量でレシチンと有機酸モノグリセリドとを使用することにより、栄養組成物の乳化安定性をより向上させることができる。
本発明の栄養組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、他の栄養成分を含有することができる。このような栄養成分としては、ミネラル、ビタミン、及び食物繊維などが挙げられる。
ミネラルとしては、ナトリウム、カリウム、リン、鉄、亜鉛、銅などを例示することができる。ミネラルを含む原料として、有機酸塩(グルコン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩等)、無機塩(塩化物塩、水酸化物塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等)、炭酸塩、ミネラル酵母、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、珊瑚カルシウム、乳清ミネラル及びドロマイト等を使用することができる。
ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、葉酸などを例示することができる。
食物繊維としては、難消化性デキストリン、グァーガム分解物などを例示することができる。
本発明の栄養組成物は、甘味料、香料、消泡剤として常用される微量添加物をさらに含むことができる。
本発明の栄養組成物は、人に対して経腸的に、すなわち経口的に又は経管的に投与することができるが、経管的に投与される経管流動食の形態で提供されることが特に好ましい。
<試験例1>
タンパク質の種類の相違、及びカゼインタンパク質とホエイタンパク質の混合割合が栄養組成物の乳化安定性及び胃内増粘性に与える影響を評価した。
(1)サンプル調製
表1に示す配合にしたがい、カゼインタンパク質とホエイタンパク質の混合割合及び各サンプルの熱量の総計が異なる液状の栄養組成物を調製した。
カゼインナトリウム(タツア社製、Tatua100、カゼインタンパク質含量91%)、WPI(フォンテラ社製、WPI895、ホエイタンパク質含量94%)、デキストリン(松谷化学工業社製、TK−16)、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸三マグネシウム、及び発酵セルロース製剤(発酵セルロース含量20%)を60℃の溶解水に添加して混合溶解した。ここへ、植物油脂、精製魚油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、レシチン、及びコハク酸モノグリセリドをさらに添加して撹拌混合した。その後、高圧均質機(APV社製)を用いて50MPaの圧力で均質化処理した。均質化した溶解液にゲル化剤を添加して十分に混合した後、レトルトパウチ(東洋製罐社製)に200gずつ充填し、密封し、レトルト殺菌機(日阪製作所社製)を用いて123℃で15分間殺菌処理し、液状の栄養組成物を調製した。
なお、ゲル化剤としては、ペクチン製剤(ペクチン含量75%)を使用した。
調製した実施例1〜4のサンプルについて、100g当たりの熱量及び成分組成、並びにタンパク質の含有質量比(カゼインタンパク質量:ホエイタンパク質量)は、表2のとおりであった。
(2)乳化安定性評価試験
実施例1〜4のレトルト殺菌後のサンプルを用いて、脂肪浮上の有無を目視で観察した。評価方法は、以下に示す5段階の評点方式とした。結果を表3に示す。
<乳化性>
5点:油脂の分離や浮上物が全く認められない。
4点:上部に浮上物が僅かに認められる。
3点:上部に浮上物が認められるが、混合により再懸濁が可能である。
2点:上部に油脂の分離や浮上物が認められ、混合しても再懸濁ができない。
1点:著しく油脂が分離し、油層の形成が認められ、混合しても再懸濁できない。
表3に示すとおり、総タンパク質量に対するカゼインタンパク質の含有量が75質量%以上であり、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む実施例1〜4は、何れも乳化安定性が許容できるものであった。
また、実施例1及び2、並びに実施例3及び4を比較した結果、カゼインタンパク質を多く配合することで、乳化安定性がより向上することがわかった。
(3)胃内増粘性評価試験
実施例2及び4のサンプルを用いて、栄養組成物の胃内増粘性を評価した。胃内増粘性は、人工胃液及び栄養組成物を1:4又は1:3の質量比で混合して37℃で30分間静置した際の粘度として評価した。人工胃液は、第十七改正日本薬局方の「6.09崩壊試験法」に基づいて調製した(pH1.2、塩化ナトリウム2.0g/L、塩酸7.0ml/L)。粘度は、B型回転粘度計(東機産業株式会社製)を使用し、測定温度20℃、ローター回転数6rpmの条件で測定した。結果を表4に示す。
表4に示すとおり、実施例2及び4のサンプルともに、人工胃液と混合しない状態の粘度(混合無し)に比して、少量の人工胃液濃度である1:4及び1:3でも速やかに粘度が上昇することが確認された。この結果から、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質の含有質量比を10:0とした実施例では、胃液の分泌が少ない又は胃液濃度が低い対象者が摂取した場合でも、そして栄養組成物の摂取後30〜40分及び45〜60分という短い時間でも、特に優れた胃内増粘性を発揮することがわかった。
<試験例2>
油脂の種類が栄養組成物の乳化安定性及び胃内増粘性に与える影響を評価した。
(1)サンプル調製
試験例1と同様の手順で、表5に示す配合にしたがい、油脂の種類が異なる液状の栄養組成物を調製した。
調製した実施例5、並びに比較例1及び2について、100g当たりの熱量及び成分組成、並びにタンパク質の含有質量比(カゼインタンパク質量:ホエイタンパク質量)は、表6のとおりであった。
(2)乳化安定性評価結果
実施例5、並びに比較例1及び2のレトルト殺菌後のサンプルを用いて、試験例1と同様の評価基準にしたがい、脂肪浮上の有無を目視で観察した。結果を表7に示す。
表7に示すとおり、中鎖脂肪酸トリグリセリドを使用していない比較例1及び2も乳化安定性は許容できるものであったが、中鎖脂肪酸トリグリセリドを使用した実施例5の方が、より乳化安定性が向上することが確認された。
また、試験例1の実施例3と、試験例2の比較例1及び2を比較すると、これらはタンパク質の構成や成分組成が同等であるにもかかわらず、中鎖脂肪酸トリグリセリドの有無によって、乳化安定性に差異が現れることが確認された。
これらの結果から、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含むことで、乳化安定性がより向上することがわかった。
(3)胃内増粘性評価試験
実施例5、並びに比較例1及び2のサンプルを用いて、試験例1と同様の条件により、栄養組成物の胃内増粘性を評価した。結果を表8に示す。
表8に示すとおり、実施例5のサンプルは、人工胃液と混合しない状態の粘度(混合無し)に比して、少量の人工胃液濃度である1:4及び1:3でも速やかに粘度が上昇することが確認された。この結果から、カゼインタンパク質:ホエイタンパク質の含有質量比を9:1とした実施例5のサンプルは、胃液の分泌が少ない又は胃液濃度が低い対象者が摂取した場合でも、そして栄養組成物の摂取後30〜40分及び45〜60分という短い時間でも、優れた胃内増粘性を発揮することがわかった。
<試験例3>
カゼインタンパク質の含有量が栄養組成物の乳化安定性に与える影響を評価した。
(1)サンプル調製
試験例1と同様の手順で、表9に示す配合にしたがい、試験例1及び2よりも熱量が高い液状の栄養組成物を調製した。
なお、ゲル化剤としては、ペクチン製剤(ペクチン含量32%)を使用した。
調製したサンプルA及びBについて、100g当たりの熱量及び成分組成、並びにタンパク質の含有質量比(カゼインタンパク質量:ホエイタンパク質量)は、表10のとおりであった。
(2)乳化安定性評価結果
サンプルA及びBのレトルト殺菌後のサンプルを用いて、試験例1と同様の評価基準にしたがい、脂肪浮上の有無を目視で観察した。結果を表11に示す。
表11に示すとおり、サンプルA及びBを比較すると、総タンパク質量に対するカゼインタンパク質の含有量が75質量%以上であるサンプルBの方が、より乳化安定性が向上することが確認された。
なお、ゲル化剤として、ペクチン製剤に代えて、アルギン酸ナトリウムを使用した場合にも同様の傾向が確認された。
試験例1及び2の結果を総合的に評価すると、栄養組成物の総タンパク質量に対するカゼインタンパク質の含有量を75質量%以上とした実施例は、何れも速やかな胃内増粘性と乳化安定性を有するものであった。特に胃内増粘性について、タンパク質の種類をカゼインタンパク質のみとした試験例1の実施例2及び4は、ホエイタンパク質を含む試験例2の実施例5に比して、人工胃液と栄養組成物の混合比率が1:4の時点における粘度が顕著に高く、粘度の立ち上がりがより早いことがわかった。
また、油脂の種類を植物油脂から中鎖脂肪酸トリグリセリドに置き換えた試験例2の実施例5は、速やかな胃内増粘性に加え、より向上された乳化安定性を有するものであった。
したがって、総タンパク質量に対して75質量%以上のカゼインタンパク質を含み、かつ、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む栄養組成物は、速やかな胃内増粘性と乳化安定性を両立的に発揮するものであるといえる。
さらに、試験例3では、試験例1及び2に比して熱量の高い、すなわち固形分の割合が高くペクチン含量が多いサンプルを使用したため、乳化安定性がやや悪化した。しかしながら、総タンパク質量に対して75質量%以上のカゼインタンパク質を含むサンプルでは、上部に浮上物は認められたものの、混合により再懸濁が可能であった。
したがって、総タンパク質量に対して75質量%以上のカゼインタンパク質を含む栄養組成物は、より優れた乳化安定性を発揮するものであるといえる。
<処方例1>
表12に示す原料の配合割合にしたがい、カゼインナトリウム(タツア社製、Tatua100、カゼインタンパク質含量91%)、デキストリン(松谷化学工業社製、TK−16)、難消化性デキストリン、グァーガム分解物、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸三マグネシウム、食塩、塩化カリウム、グルコン酸銅、乾燥酵母及び発酵セルロース製剤(発酵セルロース含量20%)を60℃の溶解水に添加して混合溶解した。ここへ、植物油脂、精製魚油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、レシチン、コハク酸モノグリセリドをさらに添加して撹拌混合した。その後、高圧均質機(APV社製)を用いて50MPaの圧力で均質化処理した。均質化した溶解液に、ペクチン製剤、グァーガム、ネイティブ型ジェランガム、水溶性ビタミンミックス、香料、及び甘味料を添加して十分に混合した後、レトルトパウチ(東洋製罐社製)に200gずつ充填し、密封し、レトルト殺菌機(日阪製作所社製)を用いて123℃で15分間殺菌処理し、100g当たりの熱量が64kcalの栄養組成物を調製した。得られた組成物の成分組成は表13に示すとおりであり、アミノ酸組成は表14に示すとおりであった。
<処方例2>
処方例1と同様の原料を使用し、表12に示す原料の配合割合にしたがい、100g当たりの熱量が73kcalの栄養組成物を調製した。得られた組成物の成分組成は表13に示すとおりであり、アミノ酸組成は表14に示すとおりであった。
いずれの処方例も、栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、人工胃液の比率が20質量%のときの20℃における粘度が4000mPa・s以上であり、かつ、油脂の分離や浮上物が全く認められない乳化安定性に優れたものであった。
本発明によれば、速やかな胃内増粘性及び乳化安定性を有する胃内増粘性の栄養組成物を提供することができる。

Claims (7)

  1. 総タンパク質量に対して75質量%以上のカゼインタンパク質を含み、かつ、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含む、胃内増粘性の栄養組成物。
  2. 前記カゼインタンパク質の含有量が1.0〜10.0g/100kcalである、請求項1に記載の胃内増粘性の栄養組成物。
  3. 前記中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有量が0.1〜5.0g/100kcalである、請求項1又は2に記載の胃内増粘性の栄養組成物。
  4. 炭水化物の含有量が10〜25g/100kcalである、請求項1〜3の何れか一項に記載の胃内増粘性の栄養組成物。
  5. 水分含有量が100〜150g/100kcalである、請求項1〜4の何れか一項に記載の胃内増粘性の栄養組成物。
  6. 前記栄養組成物と人工胃液とを混合した混和物において、前記人工胃液の比率が20質量%のときの20℃における粘度が4000mPa・s以上である、請求項1〜5の何れか一項に記載の胃内増粘性の栄養組成物。
  7. 経管流動食である、請求項1〜6の何れか一項に記載の胃内増粘性の栄養組成物。
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