JP2020123507A - リチウム複合酸化物及びその製造方法 - Google Patents

リチウム複合酸化物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 電子移動抵抗(RCT)を低減し、電気化学的特性に優れたリチウム二次電池用正極活物質を得るためのリチウム複合酸化物及びその製造方法を提供することにある。【解決手段】 金属酸化物で被覆されたリチウム複合酸化物であって、少なくとも単斜晶系(空間群C2/m)結晶構造を有し、かつ、核となるリチウム複合酸化物が化学式Li1+xM1yM2zO2(式中、M1はMg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu及びZnからなる群より選択され、M2はTi,V,Cr,Mn,Fe,Ni及びCoからなる群より選択され、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.5,0≦y≦0.8,0≦z≦0.8であり、x+y+z=1.0である)で表されることを特徴とするリチウム複合酸化物。【選択図】 図7

Description

本発明は、リチウム複合酸化物及びその製造方法に関するものであり、より詳しくは、充放電電位、容量特性、寿命などの電気化学的特性及び劣化安定性を向上した金属酸化物で被覆されたリチウム複合酸化物及びその製造方法に関する。
リチウム二次電池用正極活物質はリチウム複合酸化物、リチウム複合硫化物、リチウム複合フッ化物、リチウム複合塩化物などが使用されている。リチウム複合酸化物の一つであるLiCoO(LCO)は全世界に流通されている民生用リチウム二次電池の正極活物質として多く使用されており、このようなLCOを代替する物質の開発に活発な研究が行われている。LCOを正極素材として用いたリチウム二次電池の寿命は比較的に優れており、放電電位の平坦性も優れているが、Coは毒性や高価、及びLCOの放電容量限界(〜140mAh/g)のため代替する物質の要求があり、多く研究が行われている(非特許文献1)。
高容量を目指すリチウム二次電池用正極活物質としてリチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)及び酸素(O)からなるNCM、Li、Ni、Co、アルミニウム(Al)及びOからなるNCAが使用されている。これらの材料はLCOよりCoの使用量を減らして放電容量の改良もあった。しかし、NCM、NCAは含まれるLiが80%以上を取り除くと結晶構造が不可逆に変化し、充放電容量が大きく低下する。このため、この材料も放電容量はNCMが〜165mAh/g、NCAが〜200mAh/gの利用できる上限があった。
一方、LiMnOはリチウム過剰組成であることを除くと同じ層状岩塩型結晶系に属する物質であり、同じ層状岩塩型結晶系の化合物と固溶体を形成されることが可能である。固溶体は化学式xLiMnO−(1−x)LiMO(0<x<1、M=Ni,Co,Mnなど)であり、LiMnOとNCMやLiNi0.5Mn0.5を組み合わせた固溶体正極材は初回サイクルで250mAh/gの高い放電容量が得られる(非特許文献1)。
しかし、xLiMnO−(1−x)LiMOはLCOやNCMに比べる充放電サイクルに対して容量の低下が大きく生じ、固溶体正極材にも劣化抑制が課題になっている。
このような正極材の劣化に対する改良法の一つとして、活物質の表面にLiMO(MはCo、Ni及びMnのうち一種以上の元素である、xは0.5乃至1.0である)、Mg,Al,Co,K,Na,Ca,Si,Ti,Sn,V,Ge,Ga,B,As,Zr及びこれからなる混合物からなる群より選択された一種以上の金属を被覆処理する方法が記載されている(特許文献1)。
上記以外金属酸化物の被覆効果としては、固溶体正極活物質表面にAl,Zr,Tiからなる金属酸化物被覆層を形成して負極の初回不可逆容量に起因する初期放電容量の減少を大幅に低減する作用が得られた。その結果固溶体正極活物質の高い容量特性を十分に活かしつつ、レート特性も満足する性能に達成可能になった(特許文献2)。
さらに、固溶体正極活物質表面にテトラエトキシシラン(TEOS)を用いてゾルゲル法からなるSiOの被覆をすることで、電極抵抗低下によるレート特性向上及び2000ppm加水条件でのHF置換・除去によるサイクル安定性向上する結果が得られた(非特許文献2)。
特開2009−218217号公報 WO2015−111189号公報
Chaofeng Liu et al.,Understanding electrochemical potentials of cathode materials in rechargeable batteries,Material Today,19(2),109−123(2016) Yujuan Zhao et al.,SiO2 coated Li1.2Ni0.2Mn0.6O2 as cathode materials with rate performance,HF scavenging and thermal properties for Li−ion batteries,Journal of Alloys and Compounds 715,105−111(2017)
リチウム二次電池は最近電子機器が小型、軽量化されるに伴って、ますます高容量、高電圧、高エネルギー、長寿命などの電気化学的特性に優れた電池を開発するための研究が進められている。また、背景技術に記載されているように、リチウム二次電池用正極は活物質の溶出からなる電池システムの劣化を抑えるために正極活物質の電気化学的安全性を向上させようという努力が加速化されている。
本発明の目的は、電子移動抵抗(RCT)を低減するという課題を解決することを目的とし、電気化学的特性に優れたリチウム二次電池用正極活物質を得るためのリチウム複合酸化物及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、リチウム化合物を含む固溶体コア及びコア表面上に被覆元素のアルコキシドまたはアミンから形成される金属酸化物層(特に、Al,MnO,Mn,NiO,Ni,SiO,SiO,TiO,V,ZrO及びZrO)群より選択される物質を含むリチウム複合酸化物を見出して、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、金属酸化物で被覆されたリチウム複合酸化物であって、少なくとも単斜晶系(空間群C2/m)結晶構造を有し、かつ、核となるリチウム複合酸化物が化学式Li1+x (式中、MはMg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu及びZnからなる群より選択され、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Ni及びCoからなる群より選択され、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.5,0≦y≦0.8,0≦z≦0.8であり、x+y+z=1.0である)で表されることを特徴とするリチウム複合酸化物、並びにその製造方法である。
本発明のリチウム複合酸化物を用いた正極活物質は、電極内のイオン電導性を改善して内部抵抗を小さくすることができるという顕著な効果を奏する。
また、本発明のリチウム複合酸化物を用いた正極活物質は、正極活物質成分の溶出が少なく、さらに放電容量、クーロン効率を向上させることができるという効果を奏する。さらに、本発明のリチウム複合酸化物を用いた正極活物質は、水分による劣化が起こりにくい構造のため、サイクル安定性が改善するという効果を奏する。
このような正極活物質を電池に適用することによって、電池の容量増加、エネルギー密度向上、高サイクル安定性、長寿命などの効果が期待される。
実施例3,4,8〜11のリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)及び比較例1,2のリチウム複合酸化物のXRDパターンを示した図である。 実施例1〜11のリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)及び比較例1,2のリチウム複合酸化物のSEM図である。 実施例1〜11のリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)及び比較例1,2のリチウム複合酸化物の粒度分布図である。 実施例1〜11及び比較例1,2における正極の交流インピーダンス測定図である。 実施例1〜11及び比較例1,2における正極の充電・放電サイクルを10回繰り返した充電・放電曲線である。 実施例16,17及び比較例1における正極の充電・放電サイクルを10回繰り返した充電・放電曲線である。 実施例11及び比較例2における正極のサイクル特性を示した図である。 実施例12〜15及び比較例3におけるリチウム二次電池のサイクル特性を示した図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリチウム複合酸化物は、金属酸化物で被覆されているものである。
リチウム複合酸化物を被覆する金属酸化物としては、特に限定するものではないが、例えば、Mg,Mn,Al,Co,K,Na,Ni,Ca,Si,Ti,Sn,V,Ge,Ga,B,As,Zr及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一種以上の金属からなる金属酸化物等があげられる。これらのうち、Al,MnO,Mn,NiO,Ni,SiO,SiO,TiO,V,ZrO及びZrOからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。被覆する金属酸化物の量は、特に限定するものではないが、リチウム複合酸化物の0.05〜20.0wt%であることが好ましく、0.1〜10.0wt%であることがより好ましく、0.1〜5.0wt%であることがさらに好ましい。また、当該金属酸化物の被膜は、その厚みが、0.1〜50.0nmであることが好ましく、2.0〜20.0nmであることがより好ましい。金属酸化物の被覆量は、リチウム複合酸化物のBET比表面積に比例して増減させることが好ましい。厚みは、薄すぎると被覆の効果が無くなり、充電・放電容量、クーロン効率の増加に期待できないし、厚すぎるとRCT又はイオン拡散抵抗が上昇し、容量減少の原因になる。
被覆する金属酸化物の量はICP発光分光分析から求めることができ、厚みはSEMまたは透過電子顕微鏡(TEM)のエネルギー分散型X線分光法(EDX)から求めることができる。
被覆する金属酸化物層は、非晶質構造でも、非晶質構造でなくても、特に限定するものではないが、イオン伝導性が優れるため、非晶質構造が好ましい。
本発明の化学式Li1+x におけるLi/(M+M)モル比値及びM/Mモル比値は本発明のリチウム複合酸化物の製造方法で使用される原料のモル比により決められる。化学式Li1+x の組成分析には誘電結合プラズマ(ICP)発光分光分析、原子吸光分析などから求めることができる。
本発明のリチウム複合酸化物は、化学式Li1+x (式中、MはMg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu及びZnからなる群より選択され、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Ni及びCoからなる群より選択され、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.5,0≦y≦0.8,0≦z≦0.8であり、x+y+z=1.0である)で表されるものである。
化学式中のx,y,zはそれぞれ0≦x≦0.5,0≦y≦0.8,0≦z≦0.8、x+y+z=1であり、好ましくは、0.1≦x≦0.3,0.15≦y≦0.3,0.4≦z≦0.7、x+y+z=1である。特に、Li/(M+M)モル比及びM/Mモル比である1+x/y+z及びy/zが、1.4≦1+x/y+z≦1.7及び0.1≦y/z≦0.4である方が好ましい。
また、本発明のリチウム複合酸化物の結晶構造は粉末X線回折測定(XRD)で同定することができる。
本発明のリチウム複合酸化物は、少なくとも単斜晶系(空間群C2/m)結晶構造を有することを特徴とする。放電容量に優れる点で、単斜晶系(空間群C2/m)結晶構造のみを有する、又は(空間群C2/m)結晶構造と六方晶系(空間群R−3m)結晶構造の両方を有することが好ましい。
本発明の化学式Li1+x における1+x値は電気化学的酸化・還元反応によるリチウムの挿入・脱離量に対応する電気量からクーロン法則により理論容量を算出できる。電気化学測定中リチウムの挿入・脱離メカニズムは不明であるが、本発明のリチウム複合酸化物の可逆的な充放電のためには活性化が必要である。
本発明のリチウム複合酸化物の一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)により直接観察から求めることができる。ここに一次粒子径とは、結晶子が緻密凝集して一つの粒子を成した粒子を示す。
本発明のリチウム複合酸化物のBET比表面積は、0.1〜20.0m/gが好ましく、0.2〜10.0m/gがさらに好ましい。SEMから求める一次粒子径は、0.2〜2.0μmが好ましい。リチウム複合酸化物のBET比表面積は物理ガス吸着から求めた吸着等温線をBETプロットに変換し、BET等温式を基づいて単分子層のガス吸着量Vを求め、物理吸着に使用したガスの分子大きさを基に比表面積を計算する、いわゆるBET法により求めることができる。
本発明のリチウム複合酸化物の粒径(一次粒子が凝集して形成される粒子又は二次粒子)は、レーザ回折・散乱法により粒度分布から算出される平均粒子径(D50)によって表される。本発明のリチウム複合酸化物の粒径は、特に限定するものではないが、0.2〜20.0μmであることが好ましく、0.5〜10.0μmがより好ましい。
本発明のリチウム複合酸化物は、化学式Li1+x (式中、MはMg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu及びZnからなる群より選択され、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Ni及びCoからなる群より選択され、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.5,0≦y≦0.8,0≦z≦0.8であり、x+y+z=1.0である)で表されるリチウム複合酸化物に、金属アルコキシド又は金属アミンを加え、加熱することで製造することができる。
本発明のリチウム複合酸化物の製造で使用するM、M原料に特に制限はない。例えば、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化塩、水酸化塩、酸化塩などが例示されるが、これに制限はない。
本発明のリチウム複合酸化物の製造では、好ましいM/Mモル比になるように原料を予め調製した化合物を使用することもできる。例えば、本発明に好ましいM/Mモル比に成るように予め調製した硫化物[(M・M)(SO]、水酸化物[(M・M)(OH)]、オキシ水酸化物[(M・M)(OOH)]、酸化物[(M・M)O]などが例示されるが、これらには制限されない。式中、a,b,c,dは原子価を満足する数値である。
本発明のリチウム複合酸化物の製造において、リチウム原料に特に制限はないが、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、ヨウ化リチウム、蓚酸リチウム、硫酸リチウム、酸化リチウム等が例示されるが、これらに制限はない。
リチウム複合酸化物を分散した溶液に金属アルコキシド又は金属アミン原料を加え、所定時間撹拌すると、金属アルコキシド又は金属アミン原料の加水分解縮合反応により、金属酸化物がリチウム複合酸化物の表面に被覆される。金属アルコキシドとは、化学式でM(OR(式中、Rは有機物、Mは金属)からなる化合物であり、R又は(OR)の一部が他の有機物に置換されるM(ORxーy(OR又はR M(OR1xーyなども該当する。金属アミンとは、化学式R M(NR 2−x,(RO)M(NR 2−x,R M(NR 2−x,(RO)M(NR 2−x(式中、Rは有機物、Mは金属、Xはハロゲン)などからなる化合物である。
金属アルコキシドとしては、例えば、SiO被覆の原料として、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラプロポキシシラン(TPOS)、テトラブトキシシラン(TBOS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、メチルトリエトキシシラン(MTEOS)、メチルトリアセトキシシラン(MTAOS)等が例示され、TiO被覆の原料として、チタンテトラエトキシド(TTE)、チタンテトライソプロポキシド(TTiP)、チタンテトラブトキシド(TTB)等が例示され、Al被覆の原料として、アルミニウムトリエトキシド(ATE)、アルミニウムトリイソプロポキシド(ATiP)、アルミニウムトリs-ブトキシド(ATsB)等が例示される。特に、MTMOS、MTEOSなどの疎水性を持つ原料から製造される方法が好ましいが、これらに制限はない。
金属アルコキシドまたは金属アミンから製造された金属酸化物層には疎水性を持つ有機物は残ることもある。
金属酸化物の被覆は、特に限定するものではないが、核となるリチウム複合酸化物と金属酸化物の被覆の原料となる化合物を湿式混合した後、加熱して得ることができる。湿式混合において、使用可能な溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール、ヘキサン、又はアセトンなどが例示されるが、特に制限はない。有機溶媒と水系溶媒を混合して使用することもできる。
金属酸化物の原料によって加熱の条件及び雰囲気が異なる。雰囲気は酸素、空気、水素、アルゴン、水素とアルゴンの混合ガスなどが使われるが、リチウム複合酸化物にさらに酸化される物質が有る場合はアルゴンなどの不活性ガス雰囲気が好ましい。加熱温度は加熱雰囲気によってその条件が変わるが、高温で加熱を行うほど金属酸化物が緻密化して、リチウムイオンの透過が抑制され、リチウム二次電池の性能の影響を及ぼす。加熱温度は200〜1000℃でリチウム複合酸化物の加熱温度より高くない温度が好ましい。300〜700℃がより好ましい。
本発明の電極(正極)は、本発明のリチウム複合酸化物を含むことを特徴とし、当該リチウム複合酸化物のほかに、導電材及びバインダを含むことが好ましい。
前記の導電材とは電極の導電性を向上されるために添加するものである。導電材としては、特に限定するものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系が挙げられる。導電材が正極活物質の周辺に均一分布させて、電子が流れるネットワークを形成させることが、電池の出力特性向上の点で好ましい。
本発明のリチウム複合酸化物における導電材の含有量は、特に限定するものではないが、1〜10重量%であることが好ましく、1〜7重量%がより好ましい。
前記のバインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ塩化ビニル(PVC)カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)などが例示されるが、特に制限はない。
本発明のリチウム複合酸化物におけるバインダの含有量は、特に限定するものではないが、例えば、1〜10重量%であることが好ましく、1〜7重量%であることがより好ましい。
正極以外のリチウム二次電池の構成としては、次のようなものを挙げることができるが、特に制限はない。
負極には、Liを可逆に吸蔵放出する材料、例えば、炭素系材料、酸化錫系材料、酸化ケイ素系材料、LiTi12、Liと合金を形成そる材料などが例示される。
電解質には、例えば、有機溶媒にLi塩や各種添加剤を溶解した有機電解液や、イオン液体、Liイオン伝導性の固体電解質、これらを組み合わせたものなどが例示される。当該電解液の有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)が例示され、イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)テトラフルオロボラート(BF)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(BMI)ヘキサフルオロホスファート(PF)、(N,N−ジメチル−N−メチル−N−メトキシエチル)アンモニウム(DEME)トリフルオロメタンスルホニルイミド(TFSI)が例示され、Li塩としては、特に限定するものではないが、例えば、LiBF、LiPF、LiCFSO、Li(FSON、LiTFSIが例示される。
以下に、本発明の実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されて解釈されるものではない。
<結晶性の評価>
リチウム複合酸化物の結晶構造の結晶性の同定について粉末XRD(商品名:UltimaIV,Rigaku製)を用いて行った。計測条件は以下の通りとした。
・ターゲット:Cu/Kα
・出力:8.0kW(200mA−40kV)
・データ間隔:0.04°(2θ/θ)
・測定範囲:10〜90°(5°/min)
<組成分析>
調製したオキシ水酸化物前駆体及びリチウム複合酸化物正極活物質の組成は、ICP−AES(商品名:Optima5300DV,PerkinElmer製)で分析した。
<BET比表面積の測定>
試料1gをBET比表面積測定用のガラス製セルに入れ、窒素気流下で150℃、1時間脱水処理を行い、粉体粒子に付着した水分の除去を行った。処理後の試料をBET測定装置(商品名:Micromeritics FlowsorbIII,島津製作所製)で窒素ガスを用いて1点法でBET比表面積を測定した。
<一次粒子径の測定>
SEM(商品名:JSM―6390LV,日本電子製)を使用して、加速電圧20kVで観察を行い、倍率1万倍で観察した粒子画像から100個以上の一次粒子の垂直水平直径を測りその平均値から一次粒子径を求めた。
<粒径の測定>
粒度分布測定装置(商品名:MT3000IIシリーズ,MicrotracBEL製)を使用して、粒子径分布図から粒径(平均粒子径(D50))を求めた。測定は、20ml純水に正極活物質20mgを入れて、5分間超音波分散をかけた後に行った。
<電池の作製>
実施例、比較例で得られたリチウム複合酸化物と導電材(Denka black)とバインダ(10wt.%PvdF/N−Methyl−2−Pyrrolidone溶液)を重量比88:6:6でメノウ乳鉢を使用して混合し、さらに混合器(AR−100,Thinky製)で均一化して、正極材インクを作製した。得られた正極材インクはアルミニウムホイルに160μmの厚さで塗布し、80℃で2時間乾燥後直径16mmに切った。切った電極は4ton/cmで一軸プレスし、150℃で2時間減圧乾燥して正極とした。
上記の正極以外のリチウム二次電池の構成には、電解液としてECとDMCを1:2の容積比で混合した溶液中にLiPFを1.0Mの濃度となる溶液を、セパレータとして(直径26mm,セルガード2400,セルガード製)を、負極としてリチウム箔(直径18mm,厚さ200μm,本城金属製)又は市販黒鉛負極(直径19.3mm,4.68mAh,PIOTREK製)を用いた。
<交流インピーダンス試験>
交流インピーダンス測定装置(商品名:SI1260/SI1287,Solartron製)を用いて、開回路電位(OCV)状態で、1.0MHz〜0.1Hzの周波数で、10mV振幅条件でセル内部抵抗の測定を行った。
<充電・放電サイクル試験>
作製した正極及び電池の性能評価は充放電評価装置(商品名:BTS2004W,NAGANO製)を用いて298K(25℃)で行った。測定は4.8V−75mA/g及び4.8V−4時間の条件で充電後、2.0V−75mA/g(正極評価−対極:リチウム金属)又は2.5V−75mA/g(電池評価−負極:黒鉛)の条件で放電を行った。C−rateでは250mAh/gを理論放電容量と基準し、75mA/gは0.3Cであった。
実施例1
硫酸ニッケル及び硫酸マンガンを純水に溶解し、0.5mol/L(リットル)の硫酸ニッケル及び1.5mol/Lの硫酸マンガンを含む水溶液を得て、これを金属塩水溶液とした。なお金属水溶液中の全金属の合計濃度は2.0mol/Lであった。
1.0Lの反応容器に200gの純水を入れた後、80℃で昇温、撹拌・維持した。上記金属塩水溶液を、供給速度0.28g/minで反応容器に添加した。また、上記の供給操作中、酸化剤として空気を供給速度1.0L/minで反応容器中にバブリングし続けた。さらに、混合液がpH10.0程度となるように、2.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を断続的に添加して混合した。反応によって得られた沈殿したスラリーをろ過、洗浄後、150℃で10時間乾燥することで、MnとNiを含むオキシ水酸化物(理論組成Ni0.2Mn0.6OOH)を得た。
上記で調製したMnとNiを含むオキシ水酸化物はICPから求めたMn/Niモル比が0.33±0.02であった。この結果から、Li/(Ni+Mn)モル比が1.6になるようにMnとNiを含むオキシ水酸化物2.0gと市販の炭酸リチウム(レアメタリック製)1.39gを乳鉢で20分間乾式混合した。得られた混合粉を焼成皿に入れて、900℃で12時間加熱を行い、室温まで冷却して試料(リチウム複合酸化物)を取り出した。昇温速度と降温速度は300℃/hrとした。
得られたリチウム複合酸化物の結晶性と組成分析から、結晶は単斜晶系(空間群C2/m)結晶構造のみを有し、Ni/Mnモル比は0.33±0.02であり、Li/(Ni+Mn)モル比は1.5±0.2のLi1.2±αNi0.2±β0.6±γ(α=0.04、β=0.01、γ=0.02)組成であった。
得られたリチウム複合酸化物のBET比表面積、一次粒子径、及び平均粒子径を測定した。比表面積は0.81m/gであり、一次粒子径は0.855μmであり、平均粒子径は6.84μmであった。
得られたリチウム複合酸化物(平均粒子径:6.84μm)1.0gを純水20mLに入れて30分間超音波分散後、60℃,300rpmで撹拌を行った。撹拌中にpH10.5となるようにNHOHを添加後、テトラエトキシシラン(TEOS) 40μLを添加後、2時間反応させた。得られた溶液をろ過、洗浄し、空気中150℃で2時間乾燥した後、350℃で4時間加熱し、リチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を得た。さらに、得られたリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を用い、上記の<電池の作製>に従って正極を作製し、リチウム箔の負極を用いて電池を作製した。
実施例2
TEOS 40μLの代わりにTEOS 80μLを用いたこと以外は実施例1と同様の方法でリチウム複合酸化物を製造し、さらに、電池を作製した。
実施例3
TEOS 40μLの代わりにTEOS 120μLを用いたこと以外は実施例1と同様の方法でリチウム複合酸化物を製造し、さらに、電池を作製した。
実施例4
実施例1で得られたリチウム複合酸化物(平均粒子径:6.84μm)1.0gを純水20mLに入れて30分間超音波分散後、60℃,300rpmで撹拌を行った。撹拌中にpH10.5となるようにNHOHを添加後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES) 20μLを添加後、0.5時間反応させ、次いでTEOS 40μLを添加後、2時間順次的に反応させた。得られた溶液をろ過、洗浄し、空気中150℃で2時間乾燥した後、350℃で4時間加熱し、リチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を得た。さらに、得られたリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を用い、上記の<電池の作製>に従って正極を作製し、リチウム箔の負極を用いて電池を作製した。
実施例5
TEOS 40μLの代わりにTEOS 80μLを用いたこと以外は実施例4と同様の方法でリチウム複合酸化物を製造し、さらに、電池を作製した。
実施例6
TEOS 40μLの代わりにTEOS 120μLを用いたこと以外は実施例4と同様の方法でリチウム複合酸化物を製造し、さらに、電池を作製した。
実施例7
実施例1で得られたリチウム複合酸化物(平均粒子径:6.84μm)1.0gを純水20mLに入れて30分間超音波分散後、60℃,300rpmで撹拌を行った。撹拌中にpH10.5となるようにNHOHを添加後、メチルトリエトキシシラン(MTEOS) 40μLを添加後、3時間反応させた。得られた溶液をろ過、洗浄し、空気中150℃で2時間乾燥した後、350℃で4時間加熱し、リチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を得た。さらに、得られたリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を用い、上記の<電池の作製>に従って正極を作製し、リチウム箔の負極を用いて電池を作製した。
実施例8
MTEOS 40μLの代わりにMTEOS 80μLを用いたこと以外は実施例7と同様の方法でリチウム複合酸化物を製造し、さらに、電池を作製した。
実施例9
実施例1で得られたリチウム複合酸化物(平均粒子径:6.84μm)1.0gを純水20mLに入れて30分間超音波分散後、60℃,300rpmで撹拌を行った。撹拌中にpH10.5となるようにNHOHを添加後、APTES 20μLを添加後、0.5時間反応させ、次いで、MTEOS 80μLを添加後、3時間順次的に反応させた。得られた溶液をろ過、洗浄し、空気中150℃で2時間乾燥した後、350℃で4時間加熱し、リチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を得た。さらに、得られたリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を用い、上記の<電池の作製>に従って正極を作製し、リチウム箔の負極を用いて電池を作製した。
実施例10
硫酸ニッケル及び硫酸マンガンを純水に溶解し、0.5mol/L(リットル)の硫酸ニッケル及び1.5mol/L硫酸マンガンを含む水溶液を得て、これを金属塩水溶液とした。なお金属水溶液中の全金属の合計濃度は2.0mol/Lであった。
1.0Lの反応容器に200gの純水を入れた後、80℃で昇温、撹拌・維持した。上記金属塩水溶液を、供給速度0.70g/minで反応容器に添加した。また、上記の供給操作中、酸化剤として空気を供給速度1.0L/minで反応容器中にバブリングし続けた。さらに、混合液がpH9.25となるように、2.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を断続的に添加して混合した。反応によって得られた沈殿したスラリーをろ過、洗浄後、150℃で10時間乾燥することで、MnとNiを含むオキシ水酸化物(理論組成Ni0.2Mn0.6OOH)を得た。
上記で調製したMnとNiを含むオキシ水酸化物はICPから求めたMn/Niモル比が0.33±0.02であった。この結果から、Li/(Ni+Mn)モル比が1.6になるようにMnとNiを含むオキシ水酸化物 2.0gと市販の炭酸リチウム(レアメタリック製)1.39gを乳鉢で20分間乾式混合した。得られた混合粉を焼成皿に入れて、900℃で12時間加熱を行い、室温まで冷却して試料(リチウム複合酸化物)を取り出した。昇温速度と降温速度は300℃/hrとした。
得られたリチウム複合酸化物の結晶性と組成分析から、結晶は六方晶系(空間群R‐3m)及び単斜晶系(空間群C2/m)が共存しており、Ni/Mnモル比は0.33±0.02であり、Li/(Ni+Mn)モル比は1.5±0.2のLi1.2±αNi0.2±β0.6±γ(α=0.04、β=0.01、γ=0.02)組成であった。
得られたリチウム複合酸化物のBET比表面積、一次粒子径、及び平均粒子径を測定した。比表面積は4.18m/gであり、一次粒子径は0.543μmであり、平均粒子径は1.3μmであった。
得られたリチウム複合酸化物(平均粒子径:1.3μm)1.0gを純水20mLに入れて30分間超音波分散後、60℃,300rpmで撹拌を行った。撹拌中にpH10.5となるようにNHOHを添加後、MTEOS 160μLを添加後、4時間反応させた。得られた溶液をろ過、洗浄し、空気中150℃で2時間乾燥した後、350℃で4時間加熱し、リチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を得た。さらに、得られたリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を用い、上記の<電池の作製>に従って正極を作製し、リチウム箔の負極を用いて電池を作製した。
実施例11
MTEOS 160μLの代わりにMTEOS 300μLを用いたこと以外は実施例10と同様の方法でリチウム複合酸化物を製造し、さらに、電池を作製した。
実施例12
実施例3に負極として、リチウム箔に代えて黒鉛を用いて電池を作製した。
実施例13
実施例5に負極として、リチウム箔に代えて黒鉛を用いて電池を作製した。
実施例14
実施例8に負極として、リチウム箔に代えて黒鉛を用いて電池を作製した。
実施例15
実施例9に負極として、リチウム箔に代えて黒鉛を用いて電池を作製した。
実施例16
実施例1で得られたリチウム複合酸化物(平均粒子径:6.84μm)1.0gを純水5mL、2−プロパノール5mLと3.6mol/L塩酸水溶液10mLに入れて30分間超音波分散後、60℃,300rpmで撹拌を行った。撹拌中にチタンテトライソプロポキシド(TTiP) 200μLを添加後、2時間反応させた。得られた溶液をろ過、洗浄し、空気中150℃で2時間乾燥した後、350℃で4時間加熱し、リチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を得た。さらに、得られたリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を用い、上記の<電池の作製>に従って正極を作製し、リチウム箔の負極を用いて電池を作製した。
実施例17
実施例1で得られたリチウム複合酸化物(平均粒子径:6.84μm)1.0gを純水10mLと3.6mol/L硝酸水溶液10mLに入れて30分間超音波分散後、60℃,300rpmで撹拌を行った。撹拌中にアルミニウムトリイソプロポキシド(ATiP) 450mgを添加後、2時間反応させた。得られた溶液をろ過、洗浄し、空気中150℃で2時間乾燥した後、350℃で4時間加熱し、リチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を得た。さらに、得られたリチウム複合酸化物(金属酸化物被覆)を用い、上記の<電池の作製>に従って正極を作製し、リチウム箔の負極を用いて電池を作製した。
比較例1
実施例1で得られたリチウム複合酸化物(平均粒子径:6.84μm)について金属酸化物を被覆しなかった以外は実施例1と同様の方法でリチウム箔負極と電池を作製した。
比較例2
実施例10で得られたリチウム複合酸化物(平均粒子径:1.3μm)について金属酸化物を被覆しなかった以外は実施例10と同様の方法でリチウム箔負極と電池を作製した。
比較例3
リチウム箔に代えて黒鉛を用いた以外は比較例1と同様の方法で黒鉛負極と電池を作製した。
実施例1〜17及び比較例1〜3の作製条件を表1に示した。
<リチウム複合酸化物の結晶性>
実施例3,4,8〜11及び比較例1,2のリチウム複合酸化物粉末に対してXRD結晶構造を分析し、その結果を図1に示した。図1の実施例3,4,8〜11により、リチウム複合酸化物は単斜晶系からなるC2/mが示された。図1のように実施例3,4及び8,9によるリチウム複合酸化物のXRDパターンが比較例1のXRDパターンと殆ど差異がないと示された。この結果から、本発明の金属酸化物表面被覆処理ではリチウム複合酸化物の結晶構造は変化させていないことが確認できた。この結果は六方晶系(空間群R−3m)が共存する実施例10,11と比較例2からなるXRDパターンの関係でも同じであった。実施例3,4及び8〜11の結果から金属酸化物被覆はリチウム複合酸化物の結晶構造に変化を与えることはなかった。
<金属酸化物の担持量>
実施例1〜11及び比較例1,2で得られたリチウム複合酸化物の粉末を用いてICP−AESにより各金属成分の質量比及びモル比を算出した。本発明に実施された工程では、金属酸化物の仕込量に対して約10wt%がリチウム複合酸化物表面に被覆された。
<リチウム複合酸化物の一次粒子径>
実施例1〜11及び比較例1,2で得られたリチウム複合酸化物のSEM写真を図2に示した。SEM写真から、本発明の実施例による金属酸化物の被覆は比較例の表面から殆ど差異がないと示された。SEM写真から各正極活物質の一次粒子サイズを計測し、その平均を求めた結果を表2に示した。結果から、金属酸化物の被覆により一次粒子径の変化は殆どなかった。
<リチウム複合酸化物の粒度分布>
実施例3,4,8〜11及び比較例1,2で製造されたリチウム複合酸化物の粒度分布測定を行い、その結果を図3に示した。XRD,SEMの結果と同様に本発明工程で作製した金属酸化物被覆は粒度分布に変化されていないことが確認できた。粒度分布測定から求めた平均粒子径(D50)を表2に示した。実施例10,11と比較例2の比較から平均粒子径の減少は金属酸化物被覆工程にある超音波分散の影響で正極活物質凝集体が離れることが原因であった。
<リチウム複合酸化物のBET比表面積>
実施例3,4,8〜11及び比較例1,2で製造されたリチウム複合酸化物のBET比表面積の測定を行い、その結果を表2に示した。金属酸化物被覆によりBET比表面積の増加はリチウム複合酸化物表面にある金属酸化物の微細孔(ナノポア)からなる表面積増加が原因であった。
<電極抵抗>
実施例1〜11及び比較例1,2で製造されたリチウム複合酸化物を正極活物質として用いた正極の交流インピーダンス測定方法から内部抵抗を確認し、そのナイキスト・プロットを図4に示した。図4の結果よりプロットの半円から求めたRCTを表3に示した。表3及び図4より、実施例1〜11により金属酸化物の被覆原料に関わらず、RCTは比較例に比べて減少する傾向を示した。実施例の工程範囲内で金属酸化物を被覆したリチウム複合酸化物はリチウム複合酸化物の粒子径、金属酸化物の被覆量、被覆原料の親水・疎水性など物性に関わらず、RCTは比較例より減少した。
<電池特性及びサイクル安定性>
実施例1〜11,16,17及び比較例1,2で製造されたリチウム複合酸化物を正極活物質として用いた正極の充電・放電測定から求めた1サイクル目の充電容量・放電容量、10サイクル目の放電容量・クーロン効率を表3に纏めて示した。さらに10サイクル目で行った充電・放電測定の結果を図5に示した。表3から1サイクル目の充電及び放電容量は粒子径が小さい方が大きい容量が現れ、全ての実施例で80〜110mAh/gの不可逆容量が現れた。この不可逆容量は固溶体正極活物質の特徴であり、比較例1と2の結果から粒子径が小さい正極活物質の方が大きい不可逆容量を示された。しかし、実施例10,11と比較例2の比較から、金属酸化物の被覆は粒子径が小さい正極活物質の方でもっと不可逆容量に対する改良性が示された。
表3で示された10サイクル目のクーロン効率結果から、実施例1〜3、実施例7,8及び実施例10〜11の単一層金属酸化物被覆は被覆量が増量するほどクーロン効率が改良した。さらに実施例1〜3と実施例7,8の比較から疎水性がある被覆原料から製造された正極活物質でもっと改良性があった。固溶体正極活物質は水分と接触・反応により劣化が現れるので正極活物質の表面に疎水性を持つ金属酸化物を被膜する方が好ましい。
表3及び図5の結果からリチウム複合酸化物に金属酸化物を被覆する工程にはリチウム複合酸化物の平均粒径、被覆原料の種類、金属酸化物の被覆量などの被覆条件に最適値があることが示された。
表3及び図6の実施例16〜17の結果からリチウム複合酸化物にSiO以外の金属酸化物を被覆する工程でも10サイクル目のクーロン効率は改良した。
実施例11と比較例2で製造された正極活物質の充電・放電サイクル測定により、電極寿命の確認を行った結果を図7に示した。図7から、50サイクル目の放電容量及びクーロン効率は実施例10が240.6mAh/g(99.3%)であり、比較例204.5mAh/g(98.4%)より高い放電容量及びクーロン効率を示した。
実施例12〜15と比較例3で製造された正極と黒鉛負極を用いて作製した電池で充電・放電サイクル測定を行い、電池寿命の確認を行った結果を表4及び図8に示した。実施例12〜15で製造された正極を用いて作製した電池は測定条件中の全サイクルで放電容量が比較例3より改良された結果が確認できた。50サイクル目の容量維持率及びクーロン効率も比較例3より上回って、高容量で高サイクル安定性を持つ長寿命リチウム二次電池を達成した。
本発明のリチウム複合酸化物は、低価・高活性・高寿命の正極活物質として、リチウム二次電池用正極活物質の分野で使用が期待される。

Claims (9)

  1. 金属酸化物で被覆されたリチウム複合酸化物であって、少なくとも単斜晶系(空間群C2/m)結晶構造を有し、かつ、核となるリチウム複合酸化物が化学式Li1+x (式中、MはMg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu及びZnからなる群より選択され、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Ni及びCoからなる群より選択され、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.5,0≦y≦0.8,0≦z≦0.8であり、x+y+z=1.0である)で表されることを特徴とするリチウム複合酸化物。
  2. 金属酸化物で被覆されたリチウム複合酸化物が、単斜晶系(空間群C2/m)結晶構造のみを有する、又は単斜晶系(空間群C2/m)結晶構造と六方晶系(空間群R−3m)結晶構造の両方を有することを特徴とする請求項1に記載のリチウム複合酸化物。
  3. 粒径が、0.2〜20.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム複合酸化物。
  4. 金属酸化物が、Al,MnO,Mn,NiO,Ni,SiO,SiO,TiO,V,ZrO及びZrOからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウム複合酸化物。
  5. 金属酸化物の量が、0.05〜20.0wt%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリチウム複合酸化物。
  6. 金属酸化物の被膜厚みが、0.1〜50.0nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属酸化物で被覆されたリチウム複合酸化物。
  7. 化学式Li1+x (式中、MはMg,Al,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu及びZnからなる群より選択され、MはTi,V,Cr,Mn,Fe,Ni及びCoからなる群より選択され、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.5,0≦y≦0.8,0≦z≦0.8であり、x+y+z=1.0である)で表されるリチウム複合酸化物に、金属アルコキシド又は金属アミンを加え、加熱することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のリチウム複合酸化物の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載のリチウム複合酸化物を含むことを特徴とする電極。
  9. 請求項8に記載の電極を正極に使用したことを特徴とするリチウム二次電池。
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