JP2021005475A - リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法、並びに、リチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法、並びに、リチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】中空構造で、NMC三元系のリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる正極活物質の出力特性をさらに改善する。【解決手段】母材である中空構造のリチウムNMC含有複合酸化物に、タングステン化合物を混合して、混合物を得る乾式混合工程、水噴霧混合工程、および、乾燥工程を備え、真空乾燥混合装置を用い、前記水噴霧混合工程において、5m/秒〜10m/秒の周速で攪拌しながら、50ml/分〜100ml/分の範囲の水噴霧速度で水噴霧を行い、その後、攪拌しながら、20分〜120分の範囲の時間で混合を継続し、さらに、30分〜180分の範囲の時間、前記混合物を静置し、および、前記乾燥工程において、真空雰囲気下で、前記混合物を攪拌することなく、100℃〜200℃の範囲にある温度で、60分〜180分の範囲にある時間で減圧乾燥を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質、より具体的には、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケル含有複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法、並びに、該リチウムイオン二次電池用正極活物質を正極材料として用いたリチウムイオン二次電池に関する。
近年、スマートフォン、タブレット端末、デジタルカメラ、ノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量な非水電解質二次電池の開発が強く望まれている。また、ハイブリット電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電池式電気自動車などの電気自動車用の電源として高容量で高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池は、負極、正極、非水電解質あるいは固体電解質などで構成され、その負極および正極の材料として用いられる活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が使用される。なお、非水電解質としては、支持塩であるリチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液があり、固体電解質としては、不燃性でリチウムイオン電導性を有する無機あるいは有機の固体電解質がある。
このリチウムイオン二次電池のうち、層状岩塩型またはスピネル型の構造を有するリチウム遷移金属含有複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として、研究開発および実用化が進められている。
このようなリチウムイオン二次電池の正極材料として、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5)などのリチウム遷移金属含有複合酸化物からなる正極活物質が提案されている。
近年、これらのリチウム遷移金属含有複合酸化物の中でも、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3)を含む、遷移金属として、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有する、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物(NMC)からなる三元系の正極活物質は、熱安定性に優れ、高容量で、電池容量のサイクル特性も良好で、かつ、低抵抗で高出力が得られる材料として注目されている。リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物やリチウムニッケル複合酸化物などと同じく、層状結晶構造を有する化合物である。
リチウム遷移金属含有複合酸化物に関しては、その内部抵抗の低減による高出力化にその開発の重点が置かれている。この観点から、リチウムニッケル複合酸化物の特性を改善した、リチウムニッケルコバルトアルミニウム含有複合酸化物(NCA)も着目されている。リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物は、このリチウムニッケルコバルトアルミニウム含有複合酸化物との比較においても、耐候性により優れ、かつ、より取り扱いやすい材料であることから、リチウム遷移金属含有複合酸化物の開発において、最重要視されている。
このように、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる三元系の正極活物質に対しては、特に、電気自動車用の電源用途において、さらなる内部抵抗の低減による高出力化が高いレベルで要求されている。
リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物の出力特性やサイクル特性を改善するためには、まず、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物が、3μm〜10μm程度の小粒径で、粒度分布が狭い粒子によって構成されていることが必要である。粒径が小さい粒子とすることにより、その比表面積が大きく、正極活物質として用いた場合に非水電解質との反応面積を十分に確保することができ、さらに、正極を薄く構成し、リチウムイオンの正極−負極間の移動距離を短くすることができるため、正極抵抗の低減を図ることが可能となる。また、粒度分布が狭い粒子とすることにより、電極内で粒子に印加される電圧を均一化できるため、微粒子の選択的な劣化による電池容量の低下を抑制することが可能となる。
また、出力特性のさらなる改善を図るために、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物の粒子構造の改善についても研究開発が進められている。たとえば、出力特性の改善には、正極活物質の形態を制御し、正極活物質の内部に、非水電解質が侵入可能な空間部を形成することが有効であると考えられる。このような構造を採用することにより、粒径が同程度である中実構造の正極活物質と比べて、非水電解質との反応面積を大きくすることができるため、正極抵抗を大幅に低減することが可能となる。なお、正極活物質は、その前駆体となる遷移金属含有複合水酸化物の粒子性状を引き継ぐことが知られている。すなわち、上述した正極活物質を得るためには、その前駆体である遷移金属含有複合水酸化物の二次粒子の粒径、粒度分布、および粒子構造などを適切に制御することが必要となる。
たとえば、特表2012/131881号公報には、少なくともニッケルを含有する金属化合物およびマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃基準で、pH値が12.0〜14.0となるように制御して、酸素濃度が1容量%を超える酸化性雰囲気中で核生成を行う核生成工程と、該核生成工程において形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が10.5〜12.0となるように制御するとともに、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して0〜40%の範囲で前記酸化性雰囲気から酸素濃度1容量%以下の酸素と不活性ガスの混合雰囲気に切り替えて、前記核を成長させる粒子成長工程とを備える、遷移金属含有複合水酸化物の製造方法が開示されている。
この方法によれば、小粒径で粒度分布が狭く、かつ、針状一次粒子が凝集して形成された中心部と、中心部の外側に板状一次粒子が凝集して形成された外殻部とを備える二次粒子からなる遷移金属含有複合水酸化物を得ることができる。このような構造の遷移金属含有複合水酸化物を前駆体とする正極活物質は、小粒径で粒度分布が狭く、凝集した一次粒子が焼結している外殻部と、その内側に存在する中空部とからなる中空構造を備える。このような中空構造の正極活物質を用いた二次電池では、中実構造の正極活物質を用いた場合との比較で、容量特性、サイクル特性とともに、出力特性を改善することが可能である。
一方、リチウムイオン電池における、さらなる内部抵抗の低減による高出力化を図るために、リチウム遷移金属含有複合酸化物にタングステン化合物を添加する方法が検討されている。
たとえば、特開2015−216105号公報では、ニッケル化合物とリチウム化合物を混合したリチウム混合物は、酸化性雰囲気中において700℃〜780℃の温度範囲で1時間〜6時間焼成し、一次粒子および一次粒子が凝集した二次粒子からなるリチウムニッケル含有複合酸化物を母材として得て、該母材の水洗処理中もしくは水洗処理後にタングステン化合物を添加して、母材の一次粒子の表面にWを分散させて、酸素雰囲気あるいは真空雰囲気中で100℃〜600℃の温度で熱処理することにより得られ、母材の一次粒子表面にWおよびLiを含む化合物の微粒子を有する、リチウムイオン二次電池用正極活物質が提案されている。
また、特開2017−084513号公報には、特開2015−216105号公報と同様にして得た母材の水洗処理中もしくは水洗処理後にタングステン化合物を添加して、母材の水分率を6.5質量%〜11.5質量%に制御した状態で、母材の一次粒子の表面にWを分散させて、酸素雰囲気あるいは真空雰囲気中で100℃〜600℃の温度で熱処理することにより得られ、母材の一次粒子表面にWおよびLiを含む1nm〜200nmの厚さの被膜を有する、リチウムイオン二次電池用正極活物質が提案されている。
母材のリチウム遷移金属含有複合酸化物を構成する一次粒子の表面に、タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子および/または被膜を存在させることにより、これらの微粒子あるいは被膜が、リチウム遷移金属含有複合酸化物と電解液の接触を防止し、リン酸塩などの堆積物の形成を抑制する保護膜として機能するとともに、これらの微粒子あるいは被膜が、Li拡散パスを有する結晶構造を有しているため、界面抵抗の低減が図られると考えられている。
タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子および/または被膜は、母材のリチウム遷移金属含有複合酸化物を構成する一次粒子の表面に均一に存在することが重要である。また、タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子および/または被膜は、リチウム遷移金属含有複合酸化物同士の間でも均一に形成されることが重要である。
このような観点から、特開2018−186065号公報では、母材のリチウム遷移金属含有複合酸化物と、酸化タングステンとを混合し、さらに水を噴霧して混合して、リチウム混合物を得て、該リチウム混合物を乾燥することにより、複数の一次粒子が凝集して構成された二次粒子、および、タングステン酸リチウムを含み、その表面に存在するタングステン量が、全体に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、その内部に存在するタングステン量が、全体に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下である、リチウムイオン二次電池用正極活物質を得ることが提案されている。このような方法により、水の存在下、母材のリチウム遷移金属含有複合酸化物の表面において、遊離した水酸化リチウムなどの余剰リチウムと酸化タングステンとの中和反応を、より均一に進めることが可能になるとされている。
特表2012/131881号公報 特開2015−216105号公報 特開2017−084513号公報 特開2018−186065号公報
本発明者らは、中空構造のリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる正極活物質のさらなる高出力化を図るため、母材となる中空構造のリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物と、タングステン化合物とを乾式混合し、さらに水を噴霧して混合することにより、混合物を得て、該混合物を乾燥することにより、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる正極活物質を得ることについて検討を行った。
その結果、二次粒子の表面にタングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する構造の正極活物質において、WおよびLiを含む化合物の微粒子の均一性のさらなる改善を図ることが可能であるとの知見が得られた。
本発明は、タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子をより均一に存在させることにより、中空構造のWおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物のさらなる高出力化を図ることを目的とする。
本発明は、遷移金属として、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有し、中空構造の二次粒子からなり、該二次粒子の少なくとも一部の表面にタングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する、中空構造のWおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物(NMC)からなる三元系のリチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法、並びに、該リチウムイオン二次電池用正極活物質を正極材料として用いたリチウムイオン二次電池に関する。
本発明の第1の態様に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる三元系の正極活物質であって、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子の少なくとも一部の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質では、前記二次粒子は、中空構造を備える。具体的には、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在する空間部とを備える。
特に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質では、走査型電子顕微鏡を用いた前記二次粒子の表面観察から求められる、前記二次粒子の表面に存在するWおよびLiを含む化合物の微粒子の粒子径が、5nm〜400nmの範囲にあることを特徴とする。該微粒子の粒子径は、10nm〜350nmの範囲にあることが好ましい。
前記微粒子の平均粒径は、平均粒径が、30nm〜200nmの範囲にあることが好ましい。
前記WおよびLiを含む化合物は、タングステン酸リチウムであることが好ましい。
前記二次粒子の平均粒径MVは、3μm〜10μmの範囲にあり、かつ、前記二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕は、0.7以下であることが好ましい。
前記二次粒子の外殻部の厚さは、0.5μm〜2.5μmの範囲にあることが好ましい。
本発明の非電解質二次電池用正極活物質は、一般式(A):Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+s+t=1、0.3≦x≦0.7、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.4、0.0005≦s≦0.03、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶層状岩塩構造の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなることが好ましい。
本発明の第2の態様に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、
複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在する空間部とを備えた中空構造を有している、母材であるリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物に、該複合酸化物の総質量に対して0.1質量%〜5質量%の範囲にある量のタングステン化合物を混合して、混合物を得る乾式混合工程、
前記混合物に、該混合物の総質量に対して1質量%〜30質量%の範囲ある量の水を噴霧して該混合物をさらに混合する水噴霧混合工程、および、
前記混合物を500℃以下の温度で熱処理して、該混合物を乾燥させ、前記一次粒子の表面にWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物を得る乾燥工程、
を備える。
特に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、
前記水噴霧工程および前記乾燥工程において、真空乾燥混合装置を用い、
前記水噴霧混合工程において、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、50ml/分〜100ml/分の範囲にある水噴霧速度で水噴霧を行い、その後、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、20分〜120分の範囲にある時間で混合を継続し、さらに、30分〜180分の範囲にある時間、前記混合物を静置し、および、
前記乾燥工程において、真空雰囲気下で、前記混合物を攪拌することなく、100℃〜200℃の範囲にある温度で、60分〜180分の範囲にある時間で減圧乾燥を行う、ことを特徴とする。
前記乾燥工程において、前記減圧乾燥の前に、前記混合物を攪拌することなく、50℃〜 150℃の範囲にある温度で、20分〜90分の範囲にある時間で熱処理を行うことが好ましい。また、前記乾燥工程において、前記減圧乾燥の後、真空雰囲気下で、1m/秒〜5m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、90分〜180分の範囲にある時間で前記混合物を 25℃まで冷却する減圧冷却を行うことが好ましい。
前記乾式混合工程を、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、5分〜25分の範囲の時間で行うことが好ましい。該乾式混合工程も、前記真空乾燥混合装置を用いて行うことが好ましい。
前記乾式混合工程から前記乾燥工程までを、前記真空乾燥混合装置を用いて行い、
前記乾式混合工程を、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、5分〜25分の範囲の時間で行い、
前記水噴霧混合工程において、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、50ml/分〜100ml/分の範囲にある水噴霧速度で水噴霧を行い、その後、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、20分〜120分の範囲にある時間で混合を継続し、さらに、30分〜180分の範囲にある時間、前記混合物を静置し、および、
前記乾燥工程において、前記混合物を攪拌することなく、50℃〜150℃の範囲にある温度で、20分〜90分の範囲にある時間で熱処理を行い、その後、真空雰囲気下で、前記混合物を攪拌することなく、100℃〜200℃の範囲にある温度で、60分〜180分の範囲にある時間で減圧乾燥を行い、さらに、真空雰囲気下で、1m/秒〜5m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、90分〜180分の範囲にある時間で前記混合物を25℃まで冷却する減圧冷却を行う、
ことが好ましい。
前記リチウムイオン二次電池用正極活物質は、一般式(A):Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+s+t=1、0.3≦x≦0.7、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.4、0.0005≦s≦0.03、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶層状岩塩構造の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物からなることが好ましい。
本発明の第3の態様に係るリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータ、および非水電解質を備え(非水電解質二次電池)、あるいは、正極、負極、および固体電解質を備え(固体電解質二次電池)、前記正極に用いられる正極活物質として、本発明の第1の態様に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質が用いられていることを特徴とする。
本発明により、母材である中空構造のリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物を構成する二次粒子の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子を、より微細にかつより均一に存在させた、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質が提供される。
本発明の正極活物質は、従来の中空構造のリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物よりも、三元系の組成であることによる優れた電池特性に加えて、二次粒子を構成する一次粒子の少なくとも一部の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子が、二次粒子の表面上に、より微細かつより均一に存在するように、形成されていることから、抵抗をより低減させることが可能となり、より高出力のリチウムイオン二次電池の提供を可能にできる。
よって、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質を、電気自動車の電源用のリチウムイオン二次電池の正極材料に適用することにより、従来との比較において、より耐久性に優れ、かつ、高い出力特性を提供することが可能となるため、その工業的な意義は大きい。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質を製造する工程の1例を示すチャート図である。 図2は、本発明の実施例1のリチウムイオン二次電池用正極活物質を構成する二次粒子の表面についてのSEM写真である。 図3は、比較例1のリチウムイオン二次電池用正極活物質の二次粒子の表面についてのSEM写真である。 図4は、電池評価に使用した2032型コイン電池の概略断面図である。 図5は、インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路の概略説明図である。
本発明について、リチウムイオン二次電池用正極活物質、その製造方法、および、リチウムイオン二次電池の順に説明する。
1.リチウムイオン二次電池用正極活物質
本発明の第1の態様は、リチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」という)、すなわち、中空構造の二次粒子により構成され、タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子が、二次粒子の少なくとも一部の表面に存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物(以下、「複合酸化物」という)に関する。
(1)粒子構造
本発明の正極活物質は、遷移金属として、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有する、三元系である。この正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成される。本発明の正極活物質では、二次粒子は、凝集した一次粒子からなる外殻部と、外殻部の内側に存在する空間部とを備えた中空構造を有している。
このような中空構造とすることにより、反応表面積を大きくすることができ、かつ、外殻部の一次粒子間の粒界あるいは空隙から電解液が浸入して、粒子内部の中空側の一次粒子表面における反応界面でもリチウムの挿脱入が行われるため、Liイオン、電子の移動が妨げられず、出力特性を高くすることができる。
現在、多孔質構造をはじめとして、種々の構造の正極活物質が提案されているが、中空構造の正極活物質は、中実構造の正極活物質との比較において、出力特性の向上を図れるとともに、多孔質構造との比較において、二次粒子の強度が高いため、特に正極活物質に強度と耐久性が要求される車載用や民生用リチウムイオン電池などの用途において、このような中空構造を有する正極活物質を正極材料に用いてリチウムイオン二次電池を構成することにより、その耐久性が向上し、その劣化による正極界面抵抗の抵抗に伴う、出力特性の悪化が防止され、電池容量やサイクル特性を損なうことなく、出力特性をさらに改善することが可能となる。
(2)WおよびLiを含む化合物の微粒子
本発明の正極活物質では、母材となる中空構造を有する複合酸化物の二次粒子の少なくとも表面の一部、より具体的には、二次粒子を構成する一次粒子の少なくとも一部の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する。
特に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質では、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた前記二次粒子の表面観察から求められる、前記二次粒子の表面に存在するWおよびLiを含む化合物の微粒子の粒子径が、5nm〜400nmの範囲にあることを特徴とする。
一般的に、正極活物質の表面が異種化合物により完全に被覆されてしまうと、リチウムイオンの移動(インターカレーション)が大きく制限されるため、結果的に三元系の複合酸化物の有する高容量という長所が消されてしまう。
これに対して、本発明では、複合酸化物の二次粒子の少なくとも一部の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子が存在している。
WおよびLiを含む化合物の微粒子は、リチウムイオン伝導性が高く、リチウムイオンの移動を促す効果がある。このため、二次粒子の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子を存在させることにより、電解液との界面でLiの伝導パスが形成されるため、正極活物質の反応抵抗(「正極抵抗」ともいう)を低減させて、その出力特性を向上させることが可能となる。
すなわち、正極抵抗が低減されることで、二次電池内で損失される電圧が減少し、実際に負荷側に印加される電圧が相対的に高くなるため、高出力が得られる。また、負荷側への印加電圧が高くなることで、正極でのリチウムの挿抜が十分に行われるため、電池容量も向上する。さらに、正極抵抗の低減により、充放電時における正極活物質の負荷も低減することから、サイクル特性も向上させることができる。
このようなWおよびLiを含む化合物の微粒子を二次粒子の表面(二次粒子の表面を構成する一次粒子の表面)に存在させることによる作用効果は、より微細な微粒子を二次粒子の表面により均一に存在させることにより、効果的に得られる。
本発明では、WおよびLiを含む化合物からなり、より微細な、すなわち、所定の粒子径を有する微粒子を、これらの微粒子が二次粒子の表面により均一に存在するように、形成することで、電極表面を過度に小さくしたり、電極のバルク抵抗を顕著に上昇させたりすることなく、リチウムイオン伝導を効果的に向上させて、充放電容量の低下を抑制するとともに、反応抵抗を低減させることを可能としている。
なお、正極活物質の二次粒子の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子を過度に存在させた場合には、正極活物質のBET比表面積の低下が起こるため、WおよびLiを含む化合物が高いリチウムイオン伝導性を有していたとしても、電解液との接触面積が小さくなり、これに伴って充放電容量の低下および反応抵抗の上昇を招きやすい。また、WおよびLiを含む化合物が存在することで、反応抵抗は低下するが、WおよびLiを含む化合物自体は、電子伝導性が低いため、電極の電子伝導性を低下させて、二次電池の出力特性の低下につながる。
このような観点から、本発明の正極活物質においては、WおよびLiを含む化合物の微粒子は、二次粒子の表面の一部に存在していれば十分であり、また、二次粒子の表面を構成する一次粒子の表面の一部に存在していればよい。そして、WおよびLiを含む化合物の量が同じであれば、WおよびLiを含む化合物の微粒子の粒子径を5nm〜400nmとして、従来のWおよびLiを含む化合物被覆正極活物質よりも、WおよびLiを含む化合物の微粒子をより微細なものとして、二次粒子の表面により均一かつより満遍なく存在させることが重要である。
粒子径が5nm未満では、微粒子が十分なリチウムイオン伝導性を有しない場合がある。また、粒子径が400nmを超えると、微粒子による被覆の形成が不均一になり、反応抵抗の低減効果が十分に得られない場合がある。
WおよびLiを含む化合物の微粒子の粒子径は、10nm〜350nmの範囲にあることが好ましく、20nm〜300nmの範囲にあることがより好ましい。なお、一次粒子の表面に形成された微粒子の全個数の50%以上が、10nm〜350nmの範囲にある粒子径を有することが好ましい。この場合、電池特性改善のより高い効果が得られる。
同様の理由から、WおよびLiを含む化合物の微粒子の平均粒径は、30nm〜200nmの範囲にあることが好ましく、50nm〜150nmの範囲にあることがより好ましく、60nm〜125nmの範囲にあることがさらに好ましい。このように平均粒径も規制することにより、従来のWおよびLiを含む化合物被覆正極活物質よりも、WおよびLiを含む化合物の微粒子をより微細なものとして、二次粒子の表面により均一かつより満遍なく存在させることが可能となる。
WおよびLiを含む化合物の微粒子の平均粒径は、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)などの走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察により、次のように求めることが可能である。すなわち、二次粒子の表面に存在する10個以上の微粒子の最大外径を測定し、その平均値を求め、この値を、この二次粒子における微粒子の粒子径とする。次に、10個以上の二次粒子について、同様に微粒子の粒子径を求める。最後に、これらの二次粒子について得られた微粒子の粒子径の平均を求めることにより、正極活物質全体における微粒子の平均粒径を算出する。
電解液との接触は、一次粒子の表面で起こるため、一次粒子の少なくとも一部の表面にWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在していることが重要である。ここで、本発明における一次粒子の表面とは、二次粒子の外面で露出している一次粒子表面をいう。基本的には、本発明では、WおよびLiを含む化合物の微粒子は、二次粒子の表面にのみ形成されるが、二次粒子外部と通じて電解液が浸透可能な二次粒子の表面近傍にWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する構成も、本発明に含まれる。
二次粒子の表面により均一かつ満遍なくWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在するように、二次粒子の少なくとも一部の表面に、より微細なWおよびLiを含む化合物の微粒子を形成することで、リチウムイオンの移動をさらに促し、正極活物質を構成する粒子の反応抵抗をより一層低減させることが可能となる。
WおよびLiを含む化合物の微粒子は、電解液と接触可能な二次粒子の表面を構成するすべての一次粒子の表面に存在している必要はない。図2に示すように、WおよびLiを含む化合物の微粒子が二次粒子の一部、すなわち、任意の一次粒子の表面に点在している状態で十分である。
また、WおよびLiを含む化合物の微粒子が二次粒子の表面に点在している状態で十分である。正極活物質を構成する二次粒子の外面に露出している一次粒子の少なくとも一部の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子が存在していれば、反応抵抗の低減効果が得られる。
ただし、二次粒子の表面あるいは一次粒子の表面における、これらの存在割合が高いほど、より反応抵抗の低減効果が得られやすい。この点で、本発明の正極活物質では、WおよびLiを含む化合物が同じとした場合に、図3に示す従来の正極活物質との比較では、より微細な微粒子がより均一に、二次粒子の表面あるいは一次粒子の表面に存在するため、このような効果を十分に得られる。
リチウムニッケル含有複合酸化物を構成する粒子間で、不均一に微粒子が存在していると、粒子間でのリチウムイオンの移動が不均一となるため、特定の粒子に負荷がかかり、サイクル特性の悪化や反応抵抗の上昇を招きやすい。したがって、リチウムニッケル含有複合酸化物を構成する粒子間においても、均一に微粒子が存在していることが好ましい。
なお、WおよびLiを含む化合物の微粒子が、WおよびLiを含む化合物の被膜と混在して、一次粒子の少なくとも一部の表面に形成されている場合にも、電池特性に対する高い効果は得られる。このような形態により、電解液との接触面積を十分なものとして、リチウムイオン伝導を効果的に向上できるため、充放電容量を向上させるとともに、反応抵抗をより効果的に低減させることができる。
WおよびLiを含む化合物の微粒子の粒子径および平均粒径を含む、一次粒子の表面の性状は、たとえば、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)などの走査型電子顕微鏡(SEM)による表面観察および断面観察、走査透過型電子顕微鏡(STEM)のEDX分析による断面元素マッピング、透過型電離顕微鏡による断面観察などによって判断できる。これらの手段により、本発明の正極活物質については、複合酸化物を構成する二次粒子の少なくとも一部の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子が形成されていることを確認することが可能である。
本発明における、WおよびLiを含む化合物の微粒子を構成するWおよびLiを含む化合物は、タングステン酸リチウムであることが好ましい。タングステン酸リチウムは、LiWO、LiWO、LiWO、Li13、Li、Li、Li、Li16、Li1955、Li1030、Li1815、および、これらの水和物から選択される少なくとも1種の形態であることが好ましい。このようなタングステン酸リチウムが形成されることで、リチウムイオン伝導性がさらに高まり、反応抵抗の低減効果がより大きなものとなる。
WおよびLiを含む化合物に含まれるWの原子数は、正極活物質を構成する粒子に含まれる、Li以外の金属、すなわち、Ni、Mn、Coおよび添加元素Mの原子数の合計に対して、0.05原子%〜3.0原子%となる範囲にあることが好ましく、0.05原子%〜1.0原子%となる範囲にあることがより好ましく、0.1原子%〜0.6原子%となる範囲にあることがさらに好ましい。これにより、高い充放電容量と出力特性を両立することができる。
W量が0.05原子%未満では、出力特性の改善効果が十分に得られない場合がある。W量が3.0原子%を超えると、WおよびLiを含む化合物の微粒子による被覆量が厚くなりすぎて、正極活物質のBET比表面積が低下し、電極のバルク抵抗が上がるため、十分な反応抵抗低減効果が得られないことがある。
また、WおよびLiを含む化合物の微粒子に含まれるLi量は、特に限定されることはなく、Liが含まれていればリチウムイオン伝導度の向上効果が得られる。ただし、このLi量は、タングステン酸リチウムを形成させるのに十分な量であることが好ましい。
(3)組成
本発明の正極活物質は、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有する三元系の組成を有する、リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなり、上述したWおよびLiを含む化合物の微粒子が二次粒子の少なくとも一部の表面に存在する構造を有する限り、その組成が制限されることはない。
ただし、WおよびLiを含む化合物の微粒子におけるW量が0.05原子%〜3.0原子%の範囲である場合、本発明の正極活物質は、一般式(A):Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+s+t=1、0.3≦x≦0.7、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.4、0.0005≦s≦0.03、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶層状岩塩構造の結晶構造を有する複合酸化物からなることが好ましい。なお、Wは、添加元素Mとして複合酸化物の内部に含有されることができるが、この場合、前記W量(組成式におけるs)には、添加元素Mとして含まれるWの量は含まれない。
リチウム(Li)の過剰量を示すuの値は、好ましくは−0.05〜0.50の範囲、より好ましくは0〜0.50の範囲、さらに好ましくは0〜0.35の範囲にあるようにする。uの値を上記範囲に規制することにより、この正極活物質を正極材料として用いた二次電池の出力特性および電池容量を向上させることができる。これに対して、uの値が−0.05未満では、二次電池の正極抵抗が大きくなるため、出力特性を向上させることができない。一方、0.50を超えると、初期放電容量が低下するばかりでなく、正極抵抗も大きくなってしまう。
ニッケル(Ni)は、二次電池の高電位化および高容量化に寄与する元素であり、高ニッケル比率の三元系の正極活物質とする観点から、その含有量を示すxの値は、好ましくは0.3〜0.7の範囲、より好ましくは0.4〜0.65の範囲、さらに好ましくは、0.5〜0.6の範囲にあるようにする。xの値が0.3未満では、二次電池のエネルギー密度を十分に向上させることができない。一方、xの値が0.7を超えると、他の元素の含有量が減少し、三元系の正極活物質としての効果を得ることができない。
マンガン(Mn)は、熱安定性の向上に寄与する元素であり、その含有量を示すyの値は、好ましくは0.15〜0.4の範囲、より好ましくは0.2〜0.35の範囲にあるようにする。yの値が0.15未満では、この正極活物質を用いた二次電池の熱安定性を向上させることができない。一方、yの値が0.4を超えると、高温作動時に正極活物質からMnが溶出し、充放電サイクル特性が劣化してしまう。
コバルト(Co)は、充放電サイクル特性の向上に寄与する元素であり、その含有量を示すzの値は、好ましくは0.15〜0.4の範囲、より好ましくは0.2〜0.35の範囲にあるようにする。zの値が0.4を超えると、二次電池の初期放電容量が大幅に低下してしまう。
本発明の正極活物質では、二次電池の耐久性や出力特性をさらに改善するため、上述した金属元素に加えて、添加元素Mを含有してもよい。このような添加元素Mとしては、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)から選択される1種以上を用いることができる。
添加元素Mの含有量を示すtの値は、好ましくは0〜0.1の範囲、より好ましくは0.001〜0.05の範囲にあるようにする。tの値が0.1を超えると、Redox反応に寄与する金属元素が減少するため、二次電池の電池容量が低下する。
このような添加元素Mは、複合酸化物の粒子内部に分散させてもよく、複合酸化物の粒子表面を被覆させてもよい。さらには、粒子内部に分散させた上で、その表面を被覆させてもよい。いずれにしても、添加元素Mの含有量が上記範囲となるように制御することが必要となる。
(4)平均粒径MV
本発明の正極活物質は、平均粒径MVが、3μm〜10μの範囲、好ましくは4μm〜9μmの範囲、より好ましくは4μm〜8μmの範囲となるように調整される。正極活物質の平均粒径がこのような範囲にあれば、この正極活物質を用いた二次電池の単位体積あたりの電池容量を増加させることができるばかりでなく、安全性や出力特性も改善することができる。これに対して、平均粒径MVが3μm未満では、この正極活物質の充填性が低下し、単位体積あたりの電池容量を増加させることができない。一方、平均粒径MVが10μmを超えると、この正極活物質の反応面積が低下し、非水電解質との界面が減少するため、出力特性を改善することが困難となる。
なお、正極活物質の平均粒径MVとは、体積基準平均粒径(Mean Volume Diameter)を意味し、たとえば、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
(5)粒度分布
本発明の正極活物質は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕が、0.70以下、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下であり、きわめて粒度分布が狭い二次粒子により構成される。このような正極活物質は、微細粒子や粗大粒子の割合が少なく、これを用いた二次電池は、安全性、サイクル特性および出力特性が優れたものとなる。
これに対して、〔(d90−d10)/平均粒径MV〕が0.70を超えると、正極活物質中の微細粒子や粗大粒子の割合が増加する。たとえば、微細粒子の割合が多いと、微細粒子の局所的な反応に起因して、二次電池が発熱しやすくなり、安全性が低下するばかりでなく、微細粒子の選択的な劣化により、サイクル特性が劣ったものとなる。また、粗大粒子の割合が多いと、非水電解質と正極活物質の反応面積を十分に確保することができず、出力特性が劣ったものとなる。
工業規模の生産を前提とした場合には、正極活物質として、〔(d90−d10)/平均粒径MV〕が過度に小さいものを用いることは現実的ではない。したがって、コストや生産性を考慮すると、〔(d90−d10)/平均粒径MV〕の下限値は、0.25程度とすることが好ましい。
なお、d10は、それぞれの粒子の体積を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径(全体体積を100%にして粒度分布の累積曲線を求めるとき、この累積曲線が10%となる点の粒径)を、d90は、同様に、それぞれの粒子の体積を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径(全体体積を100%にして粒度分布の累積曲線を求めるとき、この累積曲線が90%となる点の粒径)を意味する。d10およびd90は、平均粒径MVと同様に、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
(6)一次粒子
本発明の正極活物質において、外殻部および凝集部を構成する一次粒子は、平均粒径が0.02μm〜0.3μmの範囲にある大きさで形成される。一次粒子の大きさは、二次粒子を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などにより、その断面観察が可能な状態とした後、その断面について、FE−SEMなどのSEMを用いて観察し、二次粒子の断面に存在する10個以上の一次粒子の最大外径(長軸径)を測定し、その平均値を求めることにより得られる。一次粒子の平均粒径が0.02μmを下回ると、脆弱になり十分な電池性能が得られないという問題が生じうる。一方、一次粒子の平均粒径が0.3μmを上回ると、粒子内の固体内拡散距離が長くなり、十分な電池性能が得られないという問題が生じうる。本発明の正極活物質では、個々の一次粒子は、概ね均一な組成を有する。
(7)外殻部
ここで、外殻部の厚さは、正極活物質を構成する二次粒子の粒径に対する比率において5%〜45%であることが好ましく、8%〜38%であることがより好ましい。
絶対値においては0.5μm〜2.5μmの範囲にあることが好ましく、0.8μm〜2.0μmの範囲にあることがより好ましい。
外殻部の厚さの比率が5%未満、あるいは、0.5μm未満であると、正極活物質の強度が低下するため、粉体取扱時および電池の正極とするときに粒子が破壊され微粒子が発生し、特性を悪化させるため、正極活物質を中空構造とする利点が十分に得られない。一方、外殻部の厚さの比率が45%、あるいは、2.5μmを超えると、粒子内部の中空部へ電解液が侵入可能な上記粒界あるいは空隙から電解液が少なくなり、電池反応に寄与する表面積が小さくなるため、正極抵抗が上がり、出力特性が低下してしまう。
なお、二次粒子径に対する外殻部の厚さの比率は、正極活物質を構成する二次粒子の断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)などの走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることは可能である。具体的には、二次粒子の断面に存在する外殻部の最大厚さを測定し、その値を、この二次粒子における外殻部の厚さとする。次に、10個以上の二次粒子について、同様に外殻部の厚さを求める。最後に、これらの二次粒子について得られた外殻部の厚さの平均を求めることにより、正極活物質全体における外殻部の厚さを決定する。
(8)タップ密度
携帯電子機器の使用時間や電気自動車の走行距離を伸ばすために、二次電池の高容量化は重要な課題となっている。一方、二次電池の電極の厚さは、電池全体のパッキングや電子伝導性の問題から数μm程度とすることが要求される。このため、正極活物質として高容量のものを使用するばかりでなく、正極活物質の充填性を高め、二次電池全体としての高容量化を図ることが必要となる。
このような観点から、本発明の正極活物質では、少なくともニッケル、マンガン、およびコバルトを含有する三元系の組成を有し、かつ、中空構造を有していても、充填性(正極活物質を構成する二次粒子の球形性)の指標であるタップ密度が、1.2g/cm以上であることが好ましく、1.3g/cm〜2.1g/cmの範囲にあることがより好ましい。タップ密度が1.2g/cm未満のときは、BET比表面積を大きくしても、充填性が低く、二次電池全体の電池容量を十分に向上させることができない場合がある。一方、タップ密度の上限値は、特に制限されるものではないが、本発明の組成および粒子構造の場合、通常の製造条件での上限は、2.1g/cm程度となる。
なお、タップ密度とは、JIS Z−2504に基づき、容器に採取した試料粉末を、100回タッピングした後のかさ密度を表し、振とう比重測定器を用いて測定することができる。
(9)BET比表面積
本発明の正極活物質は、二次粒子の内部に形成された空間部の存在により比表面積を向上させている点に特徴がある。本発明における正極活物質の比表面積としては、たとえば窒素ガス吸着によるBET法により測定したBET比表面積が用いられる。本発明の正極活物質において、上述の二次粒子の構造が維持される限り、BET比表面積は可能な限り大きいことが好ましい。BET比表面積が大きくなるほど非水電解質との接触面積が大きく、これを用いた二次電池の出力特性を大幅に改善することができるためである。具体的には、本発明の正極活物質のBET比表面積は、1.5m/g〜4.5m/gの範囲にあることが好ましい。正極活物質の比表面積が1.5m/g未満では、この正極活物質を正極材料として二次電池を構成した場合に、非水電解質との反応面積を十分に確保することができず、出力特性を十分に向上させることが困難となる。BET比表面積は、1.8m/g〜3.2m/gであることがより好ましい。
2.リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
本発明の第2の態様は、リチウムイオン二次電池用正極活物質、すなわち、WおよびLiを含む化合物の微粒子が、二次粒子の少なくとも一部の表面に存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物の製造方法に関する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、WおよびLiを含む化合物の微粒子が存在することを除く、上述した中空構造を有する三元系の複合酸化物を母材として用いる。すなわち、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在する空間部とを備えた中空構造を有している、三元系の複合酸化物を母材として用いる。
特に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、
前記複合酸化物に、該複合酸化物の総質量に対して0.1質量%〜5質量%の範囲にある量のタングステン化合物を混合して、混合物を得る乾式混合工程、
前記混合物に、該混合物の総質量に対して1質量%〜30質量%の範囲ある量の水を噴霧して該混合物をさらに混合する水噴霧混合工程、および、
前記混合物を500℃以下の温度で熱処理して、該混合物を乾燥させ、前記一次粒子の表面にWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する、前記WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物を得る乾燥工程、
を備え、
前記水噴霧混合工程において、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、50ml/分〜100ml/分の範囲にある水噴霧速度で水噴霧を行い、その後、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、20分〜120分の範囲にある時間で混合を継続し、さらに、30分〜180分の範囲にある時間、前記混合物を静置し、および、
前記乾燥工程において、真空雰囲気下で、前記混合物を攪拌することなく、100℃〜200℃の範囲にある温度で、60分〜180分の範囲にある時間で減圧乾燥を行う、
ことを特徴とする。
以下、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法について、図1を参照しつつ、説明する。
(1)乾式混合工程
乾式混合工程は、複合酸化物と、タングステン化合物とを乾式混合して、複合酸化物の一次粒子の表面にタングステン化合物を分散させる工程である。水噴霧による混合前に、これらの粉末同士を乾式混合することより、複合酸化物中に、タングステン化合物をより均一に分散させることができる。
タングステン化合物の添加量は、複合酸化物の総質量に対して0.1質量%〜5質量%の範囲であることが好ましい。これにより、複合酸化物の表面に分散させるW量は、その複合酸化物に含まれる、リチウム以外の金属、すなわち、Ni、Mn、Co、および添加元素Mの原子数の合計に対して、0.05原子%〜3.0原子%の範囲とすることが可能となる。
すなわち、タングステン化合物の添加量が、複合酸化物の総質量に対して0.1質量%未満では、最終的に得られる正極活物質において、WおよびLiを含む化合物の微粒子が微細になりすぎて、十分なリチウムイオン伝導性を有しない場合や、微粒子による被覆の形成が不均一になり、反応抵抗の低減効果が十分に得られない場合がある。5質量%を超えると、最終的に得られる正極活物質において、WおよびLiを含む化合物の微粒子による被覆量が厚くなりすぎて、正極活物質のBET比表面積が低下し、電極のバルク抵抗が上がるため、十分な反応抵抗低減効果が得られない場合がある。
タングステン化合物の添加量は、複合酸化物の総質量に対して0.2質量%〜4質量%の範囲であることがより好ましく、0.2質量%〜2質量%の範囲であることがさらに好ましい。これにより、複合酸化物の表面に分散させるW量を、0.05原子%〜1.0原子%の範囲、さらには0.05原子%〜0.5原子%の範囲とすることができる。
この範囲でタングステン化合物を添加することにより、正極活物質の一次粒子の表面にWおよびLiを含む化合物の微粒子を、より均一に形成させることができ、電解液との界面でLiの伝導パスを形成して、正極活物質の反応抵抗をより低減することが可能となる。
タングステン化合物は、タングステン化合物を溶解させたアルカリ溶液(以下、「アルカリ溶液(W)」という。)の形態、あるいはタングステン化合物の形態のいずれでもよい。
アルカリ溶液(W)として添加する場合、タングステン化合物は、アルカリ溶液に溶解可能なものであればよく、酸化タングステン、タングステン酸リチウム、タングステン酸アンモニウムなど、アルカリに対して易溶性のタングステン化合物を用いることが好ましい。
アルカリ溶液(W)に用いるアルカリとしては、高い充放電容量を得るため、正極活物質にとって有害な不純物を含まない一般的なアルカリ溶液、たとえば、アンモニア、水酸化リチウムを用いることができる。WおよびLiを含む化合物を形成させるのに十分な量のLiを、余剰Liとアルカリ溶液(W)から供給することを可能にさせるため、および、Liのインターカレーションを阻害しない観点から、水酸化リチウムを用いることが好ましい。
一方、タングステン化合物の形態で添加する場合、タングステン化合物として、アルカリに対して可溶性のタングステン化合物を用いることが好ましく、リチウムを含むタングステン化合物を用いることがより好ましく、タングステン酸リチウムを用いることがさらに好ましい。タングステン酸リチウムとしては、LiWO、LiWO、Liから選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
いずれの場合でも、タングステン化合物の添加は、正極活物質を構成する粒子の表面上に形成される、タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子におけるW量が、本発明の範囲内となるように、その処理条件および添加手段を選択する必要がある。なお、これらの処理条件および添加手段については公知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
乾式混合工程を、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、5分〜25分の範囲にある時間で行うことが好ましい。乾式混合工程における、攪拌の周速と、工程時間とのいずれかが下限値を下回ると、複合酸化物の一次粒子の表面にタングステン化合物を十分かつ均一に分散させることができない可能性がある。一方、乾式混合工程における、攪拌の周速と、工程時間とのいずれかが上限値を上回ると、正極活物質が粉砕されて、粒径が小さくなりすぎるという問題が生ずる可能性がある。
乾式混合工程における、攪拌の周速は、6m/秒〜8m/秒の範囲にあることがより好ましい。乾式混合工程の工程時間は、10分〜15分の範囲にあることがより好ましい。
(2)水噴霧混合工程
水噴霧混合工程は、得られた複合酸化物とタングステン化合物との混合物に、水を噴霧して混合する工程である。これにより、水の存在下、複合酸化物の一次粒子の表面に遊離した水酸化リチウムなどの余剰リチウムと酸化タングステンなどのタングステン化合物との中和反応を、より均一に進めることができる。
水は、純水を用いることが好ましい。混合物中の水に、複合酸化物中に存在する、未反応のリチウム化合物や結晶中に存在する過剰リチウムなどの余剰リチウムが溶解するとともに、混合した酸化タングステンなどのタングステン化合物が溶解する。
噴霧する水の量(総量)は、複合酸化物全体に対して、1質量%〜30質量%の範囲にあることが好ましく、4質量%〜20質量%の範囲にあることがより好ましく、5質量%〜15質量%の範囲にあることがさらに好ましい。噴霧する水の量が1質量%未満であると、水添加による効果が十分に発揮されず、タングステン化合物が残留することがある。一方、噴霧する水の量が30質量%を超えると、水噴霧から乾燥に至るまでに、母材である複合酸化物から水へと溶出するリチウム量(余剰リチウム量)が過多となり、得られる正極活物質中のリチウム含有量が減少し、抵抗の低減効果が十分に得られなくなる場合がある。また、噴霧する水の量が30質量%を超えると、得られた正極活物質中の水分率を下げるために必要とされる乾燥時間が多く必要となり、生産性が低下する可能性がある。
噴霧する水の状態は、平均粒径100μm以下の霧状態であることが好ましい。霧状態の水を添加する場合、複合酸化物の一次粒子の表面における、余剰リチウムとタングステン化合物との中和反応をより均一に進めることができ、正極活物質を構成する一次粒子の表面に形成されるWおよびLiを含む微粒子の粒子径を好適な範囲とすることができる。噴霧する水の平均粒径が100μmよりも大きくなると、噴霧により水分が直接供給された二次粒子と、噴霧後の撹拌で水分が供給された二次粒子との間でリチウム溶出量が異なって、反応に不均一性が生じることがある。
なお、二次粒子の表面を構成する一次粒子の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子を形成するためには、水噴霧混合後乾燥前の粉末の水分率を3.0質量%以上6.5質量%未満とすることが好ましい。この水分率を上記範囲に規制することにより、WおよびLiを含む化合物の微粒子を、二次粒子の表面に形成することができる。なお、粉末の水分率を6.5質量%以上とすると、二次粒子の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子のほか、WおよびLIを含む化合物の被膜が形成される傾向となり、微粒子と被膜とが混在する。
水噴霧混合後乾燥前の粉末の水分率は、水噴霧混合後乾燥前の粉末の質量と、それを180℃で3時間乾燥させた後の粉末の質量から式:「水分率=(水噴霧混合後乾燥前の粉末の質量−乾燥後の粉末の質量)/(水噴霧混合後乾燥前の粉末の質量)」により求められる。
特に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、水噴霧混合工程において、真空乾燥混合装置を用い、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、50ml/分〜100ml/分の範囲にある水噴霧速度で水噴霧を行い、その後、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、20分〜120分の範囲の時間で混合を継続することに特徴がある。
このような処理を行うことで、複合酸化物の一次粒子の表面にタングステン化合物を十分かつ均一に存在させることが可能となり、かつ、水分率の規制も適切に行うことが可能となり、より微細かつより均一に分散したWおよびLiを含む化合物の微粒子による被覆が形成される。
水噴霧混合工程、特に、水噴霧後の水を伴った混合物の混合を継続する工程における、攪拌の周速と、工程時間とのいずれかが下限値を下回ると、WおよびLiを含む化合物の微粒子の平均粒径が、5nm〜400nmの範囲となるまで微細化させるに足りる程度まで、複合酸化物の一次粒子の表面にタングステン化合物を十分かつ均一に分散させることができない、あるいは、リチウムとの反応が不十分となって、酸化タングステンなどのタングステン化合物が大量に残存する可能性がある。一方、水噴霧混合工程における、攪拌の周速と、水噴霧速度とのいずれかが上限値を上回ると、正極活物質が粉砕され、かつ、水が均一に混合物に到達しないため、反応に偏りが生じて、WおよびLiを含む化合物の微粒子の偏析が生ずる可能性がある。
水噴霧混合工程において、水噴霧における攪拌の周速は、6m/秒〜9m/秒の範囲にあることが好ましく、6m/秒〜8m/秒の範囲にあることがより好ましい。水噴霧速度は、60ml/分〜90ml/分の範囲にあることが好ましく、65ml/分〜85ml/分の範囲にあることがより好ましい。
水噴霧を行う工程時間は、噴霧する水の量と水噴霧速度により規定されるが、5分〜25分の範囲であることが好ましく、10分〜26分の範囲であることがより好ましい。
また、その後に継続する混合における攪拌の周速は、6m/秒〜9m/秒の範囲にあることが好ましく、6m/秒〜8m/秒の範囲にあることがより好ましい。この混合を継続する工程時間は、25分〜90分の範囲であることがより好ましく、30分〜45分の範囲であることがさらに好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法における水噴霧混合工程では、30分〜180分の範囲にある時間、前記混合物を静置する。このように混合物を静置するのは、好ましい水添加量で中空粒子を酸化タングステンなどのタングステン化合物と反応させようとすると、中空粒子は凝集しやすく、槽内の混合物の粘性が上がる。このため、無理やり混合物を攪拌すると、槽内の抵抗が上がり、槽の底が削られて不純物が生じやすくなるためである。この静置の時間が30分未満では、反応が不十分となる可能性がある。この静置の時間が180分を超えると、タングステン化合物が肥大化し、最良の効果が得られにくいという問題が生ずる。
この静置の時間は、40分〜90分の範囲であることがより好ましく、50分〜70分の範囲であることがさらに好ましい。
(3)乾燥工程
乾燥工程は、複合酸化物と、タングステン化合物と、水とを混合して得られた混合物を乾燥して、WおよびLiを含む化合物被覆複合酸化物からなる正極活物質を得るための工程である。WおよびLiを含む化合物被覆複合酸化物は、基本的には、水の存在下、酸化タングステンなどのタングステン化合物と、母材の複合酸化物中の余剰リチウムとが反応して形成された、タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物からなる。
具体的には、乾燥工程では、前記混合物を500℃以下の温度で熱処理して、該混合物を乾燥させ、前記一次粒子の表面にWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する、前記WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物を得る。
乾燥工程の温度は、水分率が十分に低減されれば、特に限定されないが、500℃以下の温度で乾燥させることが好ましい。乾燥温度が500℃を超えると、一次粒子の内部からさらにリチウムが遊離するため、十分なスラリー安定性が得られない。乾燥温度の下限は、特に限定されないが、効率の観点から、100℃以上であることが好ましい。好ましい乾燥工程の温度は、100℃〜200℃の範囲の温度である。
特に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、真空乾燥混合装置を用いて、真空雰囲気下で、前記混合物を攪拌することなく、100℃〜200℃の範囲の温度で、60分〜180分の範囲の時間で減圧乾燥を行う。
このような処理を行うことで、複合酸化物の一次粒子の表面にタングステン化合物を十分かつ均一に反応させることが可能となり、かつ、水分率の規制も適切に行うことが可能となるため、より微細かつより均一に分散したWおよびLiを含む化合物の微粒子による被覆が形成される。
減圧乾燥時に、攪拌を行わないのは、中空構造の正極活物質の粒子強度が高すぎるため、水噴霧工程から継続して攪拌して混合物を混合すると、真空乾燥混合装置の容器が削り取られてしまい、装置の運営コストが上昇してしまうと同時に、削り取れた金属などの不純物が正極活物質中に入り込んでしまうという問題を生ずる。
減圧乾燥時における、処理温度および工程時間のいずれかが下限値を下回ると、複合酸化物の一次粒子の表面にタングステン化合物を十分かつ均一に反応させることができない可能性がある。一方、乾燥工程における、処理温度および工程時間のいずれかが上限値を上回ると、タングステン化合物が肥大化し、最良の効果が得られにくいという問題が生ずる可能性がある。
減圧乾燥時における、処理温度は、130℃〜180℃の範囲にあることがより好ましく、140℃〜160℃の範囲にあることがさらに好ましい。
減圧乾燥時の工程時間は、70分〜150分の範囲であることがより好ましく、80分〜 120分の範囲であることがさらに好ましい。
また、減圧乾燥時における真空雰囲気の圧力は0.5MPa以下、好ましくは0.1MPa以下、より好ましくは0.05MPa以下である。減圧乾燥時の圧力が0.5MPaよりも高いと、上記の範囲の工程時間において、混合物の水分率が十分に下がらないおそれがある。
好ましい実施形態においては、減圧乾燥前に、大気圧下で、前記混合物を攪拌することなく、50℃〜150℃の範囲にある温度で、20分〜90分の範囲にある時間で熱処理を行うことが好ましい。このような処理を行うことで、槽内の水を蒸発させてから減圧乾燥を行うことができるので、より効率的に正極活物質中の水を除去することができる。
熱処理の処理温度は、80℃〜150℃の範囲にあることが好ましく、100℃〜130℃の範囲にあることがより好ましい。
熱処理を行う工程時間は、20分〜60分の範囲であることがより好ましく、25分〜40分の範囲であることがさらに好ましい。
また、前記減圧乾燥の後、真空雰囲気下で、1m/秒〜5m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、60分〜180分の範囲にある時間で前記混合物を25℃まで冷却する減圧冷却を行うことが好ましい。このような処理を行うことで、水分率を最小限に抑えることができるという利点がある。
真空雰囲気下での減圧冷却時の攪拌の周速は、2m/秒〜3m/秒の範囲にあることがより好ましい。この減圧冷却を行う工程時間は、90分〜120分の範囲であることがより好ましい。
(4)真空乾燥混合装置
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、混合物を混合するための装置として、真空乾燥混合装置を用いることが好ましい。
真空乾燥混合装置は、装置内において、複合酸化物とタングステン化合物を混合でき、水噴霧が可能であって、かつ、0.1MPa以下の真空雰囲気下まで減圧可能な装置であれば、任意の装置を適用することが可能である。
このような真空乾燥装置としては、ヘンシェルミキサー、バキュームミキシングドライヤーなどを挙げることができる。
本発明では、母材である、WおよびLiを含む化合物の微粒子が存在することを除く、上述した構造を有する中空構造で三元系の複合酸化物を母材として用いる。すなわち、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在する空間部とを備えた、比較的粒子強度の高い中空構造を有している、このように、中空構造の三元系の複合酸化物は、その粒子硬度や硬度が真空乾燥混合装置の使用に対して過度である傾向にある。
このため、従来の中空構造の正極活物質の製造工程では、真空乾燥混合装置を使用することは行われていなかった。このため、本発明者らは、各工程における設定条件を工夫することにより、水噴霧混合工程および乾燥工程において、連続して真空乾燥混合装置を適用することを可能にしている。
このように真空乾燥混合装置を用いることで、混合物の水噴霧混合および乾燥をいずれも混合しつつ連続的に行うことで、混合物の攪拌が十分になされるため、複合酸化物の一次粒子の表面にタングステン化合物を十分かつ均一に反応させることが可能となり、かつ、水分率の規制も適切に行うことが可能となり、より微細かつより均一に分散したWおよびLiを含む化合物の微粒子による被覆を形成することが可能となる。また、真空乾燥混合装置を用いて、混合物の混合を同じ条件で行うことにより、ロット毎の製品の品質のばらつきを抑えることができる。さらに、真空乾燥混合装置を用いることにより、水を噴霧中に、機械による混合が可能となるため、混合効率が向上し、タングステン化合物を均一に反応させることが可能となる。また、真空乾燥混合装置は、混合機と乾燥機が一体化した装置であり、乾燥中に混合することが可能な装置である。本発明では、この2つの特長を活かして、高い分散状態にあるWおよびLiを含む化合物の微粒子により被覆された、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物を得ることが可能となっている。これにより、従来の製造方法における、乾燥中において攪拌がなされなかったことに起因して低かった、被覆後におけるWおよびLiを含む化合物の微粒子の分散性について、飛躍的な改善が図られている。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、乾式混合工程、水噴霧混合工程、および、乾燥工程のすべてを、真空乾燥混合装置を用いて行うことが好ましい。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、乾燥工程の後、具体的には、減圧冷却工程の後で、最終的に得られた混合物を篩別することにより、WおよびLiを含む化合物の微粒子により表面が被覆された、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる正極活物質が、最終的に得られる。
(5)WおよびLiを含む化合物被覆の前後による二次粒子の平均粒径MVの差
本発明の製造方法を適用することにより、WおよびLiを含む化合物被覆前の複合酸化物を構成する二次粒子の平均粒径MVに対する、WおよびLiを含む化合物被覆後の正極活物質を構成する二次粒子の平均粒径MVの比率は、90%以上となる。この比率は、95%以上であることが好ましい。
本発明においては、母材にWおよびLiを含む化合物被覆を形成する際に、母材の二次粒子の粒子強度が高いため、真空乾燥混合装置を用いた、乾式混合工程、水噴霧混合工程、および、乾燥工程において、母材の二次粒子がほとんど粉砕されることがない。このため、母材の二次粒子の平均粒径MV、二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕、および、タップ密度は、母材の特性を概ね引き継ぎ、特に、平均粒径MVが低下することが抑制される。
(6)母材であるリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物の製造方法
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法では、母材として、中空構造で三元系の複合酸化物、すなわち、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在する空間部とを備えた中空構造を有している、三元系の複合酸化物を用いる点に特徴があるが、この複合酸化物の製造方法について限定されることはない。
ただし、このような中空構造の複合酸化物の製造方法について,以下、簡潔に説明する。
(6−1)ニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物の製造方法
このような中空構造の複合酸化物の粒子構造は、前駆体であるニッケルマンガンコバルト含有複合水酸化物(以下、「複合水酸化物」という)の粒子構造を引き継ぐ。この粒子構造を有する複合水酸化物は、以下のような晶析反応により製造することが好ましい。
(a)晶析反応
複合水酸化物は、反応槽内に、少なくとも遷移金属を含有する原料水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することで反応水溶液を形成し、晶析反応によって、得られる。
晶析反応を行う工程は、前記反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を12.0〜14.0の範囲となるように制御することにより、核生成を行う核生成工程と、該核生成工程で得られた核を含む反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を、前記核生成工程のpH値よりも低く、かつ、10.5〜12.0の範囲となるように制御することにより、前記核を成長させる、粒子成長工程とを備える。
さらに、晶析反応時の雰囲気を制御することにより、得られる複合水酸化物粒子の粒子構造を、微粒一次粒子からなる中心部と、中心部より大きな一次粒子からなる外殻部で構成された複合水酸化物が得られる。
[核生成工程]
核生成工程では、はじめに、この工程における原料となる遷移金属の化合物を水に溶解し、原料水溶液を調製する。同時に、反応槽内に、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給および混合して、液温25℃基準で測定するpH値が12.0〜14.0、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜25g/Lである反応前水溶液を調製する。なお、反応前水溶液のpH値はpH計により、アンモニウムイオン濃度はイオンメータにより測定することができる。
次に、この反応前水溶液を撹拌しながら、原料水溶液を供給する。これにより、反応槽内には、核生成工程における反応水溶液である核生用成水溶液が形成される。この核生成用水溶液のpH値は上述した範囲にあるので、核生成工程では、核はほとんど成長することなく、核生成が優先的に起こる。なお、核生成工程では、核生成に伴い、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオンの濃度は変化するので、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液を適時供給し、反応槽内液のpH値が液温25℃基準でpH12.0〜14.0の範囲に、アンモニウムイオンの濃度が3g/L〜25g/Lの範囲に維持するように制御することが必要となる。
核生成工程では、核生成用水溶液に、原料水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することにより、連続して新しい核の生成が継続される。そして、核生成用水溶液中に、所定量の核が生成した時点で、核生成工程を終了する。
この際、核の生成量は、核生成用水溶液に供給した原料水溶液に含まれる金属化合物の量から判断することができる。核生成工程における核の生成量は、特に制限されるものではないが、粒度分布の狭い複合水酸化物の二次粒子を得るためには、核生成工程および粒子成長工程を通じて供給する原料水溶液に含まれる金属化合物中の金属元素に対して、0.1原子%〜2原子%とすることが好ましく、0.1原子%〜1.5原子%とすることがより好ましい。なお、核生成工程における反応時間は、通常0.2分〜5分程度である。
[粒子成長工程]
核生成工程終了後、反応槽内の核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0に調整し、粒子成長工程における反応水溶液である粒子成長用水溶液を形成する。pH値は、アルカリ水溶液の供給を停止することでも調整可能であるが、粒度分布の狭い複合水酸化物の二次粒子を得るためには、一旦、すべての水溶液の供給を停止してpH値を調整することが好ましい。具体的には、すべての水溶液の供給を停止した後、核生成用水溶液に、原料となる金属化合物を構成する酸と同種の無機酸を供給することにより、pH値を調整することが好ましい。
次に、この粒子成長用水溶液を撹拌しながら、原料水溶液の供給を再開する。この際、粒子成長用水溶液のpH値は上述した範囲にあるため、新たな核はほとんど生成せず、核(粒子)成長が進行し、所定の粒径を有する複合水酸化物の二次粒子が形成される。なお、粒子成長工程においても、粒子成長に伴い、粒子成長用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度は変化するので、アルカリ水溶液およびアンモニア水溶液を適時供給し、pH値およびアンモニウムイオン濃度を上記範囲に維持することが必要となる。
なお、このような複合水酸化物の製造方法では、核生成工程および粒子成長工程において、金属イオンは、核または一次粒子となって析出する。このため、核生成用水溶液および粒子成長用水溶液中の金属成分に対する液体成分の割合が増加する。この結果、見かけ上、原料水溶液の濃度が低下し、特に、粒子成長工程においては、複合水酸化物の二次粒子の成長が停滞する可能性がある。したがって、液体成分の増加を抑制するため、核生成工程終了後から粒子成長工程の途中で、粒子成長用水溶液の液体成分の一部を反応槽外に排出することが好ましい。具体的には、原料水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給および攪拌を一旦停止し、粒子成長用水溶液中の核や複合水酸化物を沈降させて、粒子成長用水溶液の上澄み液を排出することが好ましい。このような操作により、粒子成長用水溶液における混合水溶液の相対的な濃度を高めることができるため、粒子成長の停滞を防止し、得られる複合水酸物の二次粒子の粒度分布を好適な範囲に制御することができるばかりでなく、二次粒子全体としての密度も向上させることができる。
[複合水酸化物の二次粒子の粒径制御]
複合水酸化物の二次粒子の粒径は、粒子成長工程や核生成工程の時間、核生成用水溶液や粒子成長用水溶液のpH値や、原料水溶液の供給量により制御することができる。たとえば、核生成工程を高いpH値で行うことにより、または、粒子生成工程の時間を長くすることにより、供給する原料水溶液に含まれる金属化合物の量を増やし、核の生成量を増加させ、得られる複合水酸化物の二次粒子の粒径を小さくすることができる。反対に、核生成工程における核の生成量を抑制することで、得られる複合水酸化物の二次粒子の粒径を大きくすることができる。
[晶析反応の別実施態様]
本発明の複合水酸化物の製造方法では、核生成用水溶液とは別に、粒子成長工程に適したpH値およびアンモニウムイオン濃度に調整された成分調整用水溶液を用意し、この成分調整用水溶液に、核生成工程後の核生成用水溶液、好ましくは核生成工程後の核生成用水溶液から液体成分の一部を除去したものを添加および混合して、これを粒子成長用水溶液として、粒子成長工程を行ってもよい。
この場合、核生成工程と粒子成長工程の分離をより確実に行うことができるため、それぞれの工程における反応水溶液を、最適な状態に制御することができる。特に、粒子成長工程の開始時から粒子成長用水溶液のpH値を最適な範囲に制御することができるため、得られる複合水酸化物の二次粒子の粒度分布をより狭いものとすることができる。
(6−2)供給水溶液
a)原料水溶液
本発明においては、原料水溶液中に含まれる金属元素の比率が、概ね、得られる複合水酸化物の組成比となる。
原料水溶液を調製するための、遷移金属の化合物は、特に制限されることはないが、取扱いの容易性から、水溶性の硝酸塩、硫酸塩、および塩化物などを用いることが好ましく、コストやハロゲンの混入を防止する観点から、硫酸塩を好適に用いることが特に好ましい。
また、複合水酸化物中に添加元素M(Mは、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)を含有させる場合には、添加元素Mを供給するための化合物としては、同様に水溶性の化合物が好ましく、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、硫酸ハフニウム、タンタル酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどを好適に用いることができる。
原料水溶液の濃度は、金属化合物の合計で、好ましくは1mol/L〜2.6mol/L、より好ましくは1.5mol/L〜2.2mol/Lとする。
また、原料水溶液の供給量は、粒子成長工程の終了時点において、粒子成長用水溶液中の生成物の濃度が、好ましくは30g/L〜200g/L、より好ましくは80g/L〜150g/Lとなるようにする。
b)アルカリ水溶液
反応水溶液中のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、好ましくは20質量%〜50質量%、より好ましくは20質量%〜30質量%とする。
なお、アルカリ水溶液の供給方法は、反応水溶液のpH値が局所的に高くならず、かつ、所定の範囲に維持される限り、特に制限されることはない。たとえば、反応水溶液を十分に撹拌しながら、定量ポンプなどの流量制御が可能なポンプにより供給すればよい。
c)アンモニウム供給体を含む水溶液
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液も、特に制限されることはなく、たとえば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、もしくは、フッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
アンモニウムイオン供給体として、アンモニア水を使用する場合には、その濃度は、好ましくは20質量%〜30質量%、より好ましくは22質量%〜28質量%とする。アンモニア水の濃度をこのような範囲に規制することにより、揮発などによるアンモニアの損失を最小限に抑制することができるため、生産効率の向上を図ることが可能となる。
なお、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給方法も、アルカリ水溶液と同様に、流量制御が可能なポンプにより供給することができる。
[pH値]
本発明の複合水酸化物の製造方法においては、反応水溶液の液温25℃基準におけるpH値を、核生成工程においては12.0〜14.0の範囲に、粒子成長工程においては10.5〜12.0の範囲に制御することが必要となる。なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は、±0.2以内に制御することが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合には、核生成量と粒子成長の割合が一定とならず、粒度分布の狭い複合水酸化物の二次粒子を得ることが困難となる。なお、反応水溶液のpH値はpH計により測定することができる。
[反応雰囲気]
本発明の複合水酸化物の粒子構造は、核生成工程および粒子成長工程における反応槽内の雰囲気制御により形成される。晶析反応中の反応槽内の雰囲気により、ニッケルマンガン複合水酸化物粒子を形成する一次粒子の成長が制御され、酸化性雰囲気では、微細な一次粒子により形成され空隙が多い低密度の粒子が形成され、弱酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気では、一次粒子が大きく緻密で高密度の粒子が形成される。
すなわち、核生成工程と粒子成長工程の初期の一部を酸化性雰囲気とすることで、微細一次粒子からなる中心部が形成され、その後の粒子成長工程において酸化性雰囲気から切り替えて弱酸化性から非酸化性の範囲の雰囲気とすることで、該中心部の外側に該微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子からなる外殻部を有する上記粒子構造を形成することができる。
上記雰囲気制御された晶析反応においては、通常、上記中心部の一次粒子は微細な板状および/または針状となり、外殻部の一次粒子は板状となる。しかしながら、上記ニッケルマンガン複合水酸化物の一次粒子は、その組成により、直方体、楕円、稜面体などの形状となることもある。
本発明における上記中心部を形成するための酸化性雰囲気は、反応槽内空間の酸素濃度が1容量%を超える雰囲気と定義される。酸素濃度が2容量%を超える酸化性雰囲気が好ましく、酸素濃度が10容量%を超える酸化性雰囲気がさらに好ましく、制御が容易な大気雰囲気(酸素濃度:21容量%)とすることが特に好ましい。酸素濃度が1容量%を超える雰囲気とすることで、一次粒子の平均粒径を0.01〜0.3μmとすることができる。酸素濃度が1容量%以下では、中心部の一次粒子の平均粒径が0.3μmを超えることがある。酸素濃度の上限は、特に限定されるものではないが、30容量%を超えると、上記一次粒子の平均粒径が0.01μm未満となる場合があり、好ましくない。
一方、本発明における上記外殻部を形成するための弱酸化性から非酸化性の範囲の雰囲気は、反応槽内空間の酸素濃度が1容量%以下である雰囲気と定義される。好ましくは酸素濃度が0.5容量%以下、より好ましくは0.2容量%以下となるように、酸素と不活性ガスの混合雰囲気に制御する。反応槽内空間の酸素濃度を1容量%以下にして粒子成長させることで、粒子の不要な酸化を抑制し、一次粒子の成長を促して、平均粒径0.3〜3μmの中心部より大きい一次粒子径で粒度が揃った、緻密で高密度の外殻部を有する二次粒子を得ることができる。
このような雰囲気に反応槽内空間を保つための手段としては、窒素などの不活性ガスを反応槽内空間部へ流通させること、さらには反応液中に不活性ガスをバブリングさせることがあげられる。
上記粒子成長工程における雰囲気の切り替えは、最終的に得られる正極活物質において、微粒子が発生してサイクル特性が悪化しない程度の中空部が得られるように、水酸化物粒子の中心部の大きさを考慮して、そのタイミングが決定される。たとえば、粒子成長工程時間の全体に対して、粒子成長工程の開始時から0〜40%、好ましくは0〜30%、さら好ましくは0〜25%の時間の範囲で行う。粒子成長工程時間の全体に対して40%を超える時点で上記切り替えを行うと、形成される中心部が大きくなり、上記二次粒子の粒径に対する外殻部の厚さが薄くなり過ぎる。一方、粒子成長工程の開始前、すなわち、核生成工程中に上記切り替えを行うと、中心部が小さくなりすぎるか、上記構造を有する二次粒子が形成されない。
このような晶析反応により、複数の板状一次粒子および該板状一次粒子よりも小さな微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、この二次粒子は、主として微細一次粒子が凝集して形成された中心部と、該中心部の外側に、主として板状一次粒子が凝集して形成された外殻部とを備えた構造を有する、複合水酸化物が得られる。
(7)母材であるリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物の製造方法
母材である複合酸化物は、前記複合水酸化物とリチウム化合物を混合して、リチウム混合物を形成する混合工程と、前記混合工程で形成された前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃〜920℃の範囲にある温度で焼成する焼成工程により得られる。
(7−1)熱処理工程
任意的な工程であり、リチウム化合物との混合の前に複合水酸化物を熱処理粒子(余剰水分を除去された複合水酸化物、および/または、酸化物に転換された複合酸化物)とする。
熱処理温度は、105℃〜750℃の範囲であり、これにより、熱処理粒子に焼成工程後まで残留する水分を一定量まで減少させることができ、得られる母材である複合酸化物の組成のばらつきを抑制することができる。
熱処理時間は、特に制限されないが、複合水酸化物中の余剰水分を十分に除去する観点から、少なくとも1時間とすることが好ましく、5時間〜15時間とすることがより好ましい。
(7−2)混合工程
混合工程は、複合水酸化物または熱処理粒子に、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
混合工程では、リチウム混合物中のリチウム以外の金属原子、具体的には、ニッケルマンガンコバルトおよび添加元素Mとの原子数の和(Me)と、リチウムの原子数(Li)との比(Li/Me)が、0.95〜1.5、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.35、さらに好ましくは1.0〜1.2となるように、複合水酸化物または熱処理粒子とリチウム化合物を混合する。
混合工程で使用するリチウム化合物は、特に制限されることはないが、入手の容易性から、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムまたはこれらの混合物を用いることが好ましい。特に、取り扱いの容易さや品質の安定性を考慮すると、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムを用いることが好ましい。
複合水酸化物または熱処理粒子とリチウム化合物は、微粉が生じない程度に十分に混合することが好ましい。混合が不十分であると、個々の粒子間でLi/Meにばらつきが生じ、十分な電池特性を得ることができない場合がある。なお、混合には、一般的な混合機を使用することができる。たとえば、シェーカーミキサー、レーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いることができる。
(7−3)仮焼工程
リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合には、混合工程後、焼成工程の前に、リチウム混合物を、後述する焼成温度よりも低温、かつ、350℃〜800℃、好ましくは450℃〜780℃で仮焼する仮焼工程を行ってもよい。これにより、複合水酸化物または熱処理粒子中に、リチウムを十分に拡散させることができ、より均一なリチウム複合酸化物を得ることができる。
上記温度での保持時間は、1時間〜10時間とすることが好ましく、3時間〜6時間とすることがより好ましい。また、仮焼工程における雰囲気は、後述する焼成工程と同様に、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましい。
(7−4)焼成工程
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を所定条件の下で焼成し、複合水酸化物または熱処理粒子中にリチウムを拡散させて、リチウム複合酸化物を得る工程である。
この焼成工程において、複合水酸化物および熱処理粒子の外殻部を構成する板状一次粒子は、中心部の微細一次粒子を吸収しつつ、焼結収縮し、焼結後の一次粒子が、正極活物質における外殻部を形成する。なお微細一次粒子は、板状一次粒子よりも低温域から焼結し始め、かつ、板状一次粒子よりも収縮量が大きいため、中心部は、焼結の進行が遅い外殻部に吸収され、二次粒子の外殻部の内側に適度な大きさの空間部が形成されて、中空構造の複合酸化物が得られる。
このような複合酸化物の粒子構造は、基本的に、前駆体である複合水酸化物の粒子構造に応じて定まるものであるが、その組成や焼成条件などの影響を受けることがあるため、予備試験を行った上で、所望の構造となるように、それぞれの条件を適宜調整することが好ましい。
なお、焼成工程に用いられる炉は、特に制限されないが、バッチ式あるいは連続式の電気炉を用いることが好ましい。熱処理工程および仮焼工程に用いる炉についても同様である。
a)焼成温度
リチウム混合物の焼成温度は、650℃〜920℃とすることが必要となる。焼成温度が650℃未満では、複合水酸化物または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物または熱処理粒子が残存したり、得られる正極活物質の結晶性が不十分なものとなったりする。一方、焼成温度が920℃を超えると、正極活物質の二次粒子中の気孔が潰れてしまう可能性があり、また、正極活物質の二次粒子間が激しく焼結し、異常粒成長が引き起こされ、不定形な粗大粒子の割合が増加することとなる。二次粒子を構成する凝集部および空間部をそれぞれ適切な大きさの範囲内に制御する観点からは、リチウム混合物の焼成温度を700℃〜920℃とすることが好ましく、750℃〜900℃とすることがより好ましい。
また、焼成工程における昇温速度は、2℃/分〜10℃/分とすることが好ましく、5℃/分〜10℃/分とすることがより好ましい。さらに、焼成工程中、リチウム化合物の融点付近の温度で、好ましくは1時間〜5時間、2時間〜5時間保持することがより好ましい。
b)焼成時間
焼成時間のうち、上述した焼成温度での保持時間は、少なくとも2時間とすることが好ましく、4時間〜24時間とすることがより好ましい。焼成温度における保持時間が2時間未満では、複合水酸化物または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物または熱処理粒子が残存したり、得られる正極活物質の結晶性が不十分なものとなったりするおそれがある。
なお、保持時間終了後、焼成温度から少なくとも200℃までの冷却速度は、2℃/分〜10℃/分とすることが好ましく、33℃/分〜77℃/分とすることがより好ましい。
c)焼成雰囲気
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましく、上記酸素濃度の酸素と不活性ガスの混合雰囲気(大気または酸素気流)とすることが特に好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、正極活物質の結晶性が不十分なものとなるおそれがある。
(7−5)解砕工程
焼成工程によって得られた複合酸化物を構成する二次粒子は、凝集または軽度の焼結が生じている場合に、凝集体または焼結体を解砕する任意的な工程である。これによって、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。
解砕には、公知の手段、たとえば、ピンミルやハンマーミルなどを使用して、二次粒子を破壊しないように解砕力を適切な範囲に調整することで行われる。
3.リチウムイオン二次電池
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレータ、および非水電解質などの構成部材を備える、一般的な非水電解質二次電池と同様の構成を採ることができる。あるいは、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極、負極、および固体電解質などの構成部材を備える、一般的な固体電解質二次電池と同様の構成を採ることができる。すなわち、本発明は、リチウムイオンの脱離および挿入により、充放電を行う二次電池であれば、非水電解液二次電池から全固体リチウム二次電池まで広く適用可能である。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明は、本明細書に記載されている実施形態に基づいて、種々の変更、改良を施した形態のリチウムイオン二次電池に適用することが可能である。
(1)構成部材
a)正極
上述した正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにしてリチウムイオン二次電池の正極を作製する。
まず、本発明の正極活物質に、導電材および結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの溶剤を添加し、これらを混練して正極合材ペーストを作製する。その際、正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、リチウムイオン二次電池の性能を決定する重要な要素となる。たとえば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合には、一般のリチウムイオン二次電池の正極と同様に、正極活物質の含有量を60質量部〜95質量部、導電材の含有量を1質量部〜20質量部および結着剤の含有量を1質量部〜20質量部とすることができる。
得られた正極合材ペーストを、たとえば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じて、電極密度を高めるべく、ロールプレスなどにより加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断などをして、電池の作製に供することができる。なお、正極の作製方法は、前記例示のものに限られることはなく、他の方法によってもよい。
導電材としては、たとえば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料を用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂またはポリアクリル酸を用いることができる。
このほか、必要に応じて、正極活物質、導電材および活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加することができる。溶剤としては、具体的に、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することもできる。
b)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金などを使用することができる。また、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用することができる。
負極活物質としては、たとえば、金属リチウムやリチウム合金などのリチウムを含有する物質、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる天然黒鉛、人造黒鉛、およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体ならびにコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
c)セパレータ
セパレータは、非水電解質二次電池において、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、非水電解質を保持する機能を有する。このようなセパレータとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されることはない。
d)電解質
非水電解質二次電池に用いられる非水電解質には、支持塩であるリチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液などが用いられる。
非水電解液に用いられる有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
なお、非水電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
一方、全固体リチウム二次電池などの固体電解質二次電池に用いられる固体電解質としては、Li1.3Al0.3Ti1.7(POやLiS−SiSなどを用いることができる。固体電解質は、高電圧に耐えうる性質を有する。固体電解質には、無機固体電解質および有機固体電解質がある。
無機固体電解質には、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質などがある。
酸化物固体電解質としては、酸素(O)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有する酸化物を用いることができる。たとえば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO−LiPO、LiSiO−LiVO、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B−ZnO、Li1+XAlTi2−X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2−X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3−XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4などを用いることができる。
硫化物固体電解質としては、硫黄(S)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有する硫化物を用いることができる。たとえば、LiS−P、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−Pなどを用いることができる。
酸化物固体電解質および硫化物固体電解質以外の無機固体電解質としては、たとえば、LiN、LiI、LiN−LiI−LiOHなどを用いることができる。
有機固体電解質としては、イオン伝導性を示す高分子化合物を用いることができる。たとえば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含むことができる。
なお、固体電解質を用いる場合には、電解質と正極活物質の接触を確保するため、正極材中にも固体電解質を混合させることができる。
(2)リチウムイオン二次電池の構成
リチウムイオン二次電池の構成は、特に限定されず、非水電解質二次電池における、正極、負極、セパレータ、非水電解質などからなる構成や、固体電解質二次電池における、正極、負極、固体電解質などからなる構成を採りうる。また、二次電池の形状は、特に限定されず、円筒形や積層形など、種々の形状に採ることができる。
非水電解質二次電池の場合、たとえば、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水電解質を含浸させ、正極集電体と外部に通じる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、リチウムイオン二次電池を完成させる。
(3)リチウムイオン二次電池の特性
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述したように、本発明のWおよびLiを含む化合物の微粒子がより微細かつより均一に二次粒子の少なくとも一部の表面に存在する、中空構造で三元系の正極活物質を正極材料として用いているため、容量特性、出力特性、およびサイクル特性に優れる。したがって、従来のWおよびLiを含む化合物被覆を備えない中空構造で三元系の正極活物質、あるいは、WおよびLiを含む化合物被覆を備えながら、中実構造である三元系の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池との比較において、より低抵抗で高出力という電池特性を発揮することが可能である。
(4)リチウムイオン二次電池の用途
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述のように、容量特性、出力特性、およびサイクル特性に優れており、これらの特性が高いレベルで要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピューター、スマートフォン、タブレット端末、デジタルカメラなど)の電源に好適に利用することができる。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、小型化および高出力化が可能であるばかりでなく、安全性および耐久性にも優れており、高価な保護回路を簡略することができるため、搭載スペースに制約を受ける電気自動車などの輸送用機器の電源としても好適に利用することができる。
以下、実施例および比較例を用いて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例では、特に断りがない限り、複合水酸化物および正極活物質の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の試料を使用した。また、核生成工程および粒子成長工程を通じて、反応水溶液のpH値は、pHコントローラー(株式会社日伸理化製、NPH−690D)により測定し、この測定値に基づき、水酸化ナトリウム水溶液の供給量を調整することで、それぞれの工程における反応水溶液のpH値の変動幅を±0.2の範囲に制御した。
(実施例1)
a)複合水酸化物の製造
[核生成工程]
はじめに、反応槽内に、水を14L入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。このときの反応槽内は、大気雰囲気(酸素濃度:21容量%)とした。続いて、反応槽内に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.6、アンモニウムイオン濃度が10g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を形成した。
同時に、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、および硫酸コバルトを、それぞれの金属元素のモル比がNi:Mn:Co=1:1:1となるように水に溶解し、2mol/Lの原料水溶液を調製した。
次に、原料水溶液を、反応前水溶液に115ml/分で供給することで、核生成工程用水溶液を形成し、1分間の核生成を行った。この際、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液と25質量%のアンモニア水を適時供給し、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度を上述した範囲に維持した。
[粒子成長工程]
核生成終了後、すべての水溶液の供給を一旦停止するとともに、硫酸を加えて、pH値が、液温25℃基準で11.2となるように調整することで、粒子成長用水溶液を形成した。pH値が所定の値になったことを確認した後、核生成工程と同様の115ml/分と一定の割合で、原料水溶液を供給し、反応水溶液(粒子成長用水溶液)に、再度、25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給を再開し、アンモニア濃度を上記値に保持して、pH値を液温25℃基準で11.2に制御したまま、30分間の晶析を継続し粒子成長を行った後、給液を一旦停止し、反応槽内空間の酸素濃度が0.2容量%以下となるまで窒素ガスを5L/minで流通させた。その後、給液を再開し、成長開始からあわせて2時間晶析を行った。
反応槽内が満液になったところで、晶析を停止するとともに、撹拌を止めて静置することで、生成物の沈殿を促した。その後、反応槽から上澄み液を半量抜き出した後、晶析を再開し、2時間晶析を行った後(計4時間)、晶析を終了させた。
そして、生成物を水洗、濾過、乾燥させて複合水酸化物を得た。なお、上記大気雰囲気から窒素雰囲気への切り替えは、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して12.5%の時点で行ったことになる。
上記晶析において、pHは、pHコントローラーにより水酸化ナトリウム水溶液の供給流量を調整することで制御され、変動幅は設定値の上下0.2の範囲内であった。
b)複合水酸化物の評価
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE−9000)を用いた分析により、この複合水酸化物の組成は、一般式:Ni0.33Mn0.33Co0.33(OH)で表されるものであることが確認された。
また、この複合水酸化物について、平均粒径および粒度分布を示す〔(d90−d10)/平均粒径〕値を、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した体積積算値から算出して求めた。その結果、平均粒径MVは5.3μmであり、〔(d90−d10)/平均粒径〕値は、0.49であった。
次に、得られた複合水酸化物粒子のSEM(株式会社日立ハイテクノロジース製、走査型電子顕微鏡S−4700)観察(倍率:1000倍)を行ったところ、この複合水酸化物粒子は、略球状であり、粒径がほぼ均一に揃っていることが確認された。
また、得られた複合水酸化物粒子の試料を、樹脂に埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工を行ったものについて、倍率を10,000倍としたSEM観察結果を行ったところ、この複合水酸化物粒子が二次粒子により構成され、該二次粒子は、針状、薄片状の微細一次粒子(粒径およそ0.3μm)からなる中心部と、該中心部の外側にこの微細一次粒子よりも大きい板状の一次粒子(粒径およそ0.6μm)からなる外殻部とにより構成されていることが確認された。この断面のSEM観察から求めた、二次粒子径に対する外殻部の厚さは、11%であった。
c)母材としての複合酸化物の作製
上述のようにして得られた複合水酸化物を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、120℃で12時間熱処理した後(熱処理工程)、Li/Meが1.10となるように、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて水酸化リチウムと十分に混合し、リチウム混合物を得た(混合工程)。
このリチウム混合物を、酸素(酸素濃度:100容量%)気流中、昇温速度を1.5℃/分として800℃まで昇温し、この温度で3時間保持することにより焼成し、冷却速度を約4℃/分として室温まで冷却した(焼成工程)。このようにして得られたリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物は、凝集または軽度の焼結が生じていた。このため、この複合酸化物を解砕し、平均粒径および粒度分布を調整した(解砕工程)。
d)複合酸化物の評価
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE−9000)を用いた分析により、この複合酸化物の組成は、一般式:Li1.10Ni0.33Mn0.33Co0.33で表されるものであることが確認された。
複合水酸化物粒子と同様の方法で、得られた正極活物質の粒度分布を測定したところ、平均粒径MVは4.8μmであり、〔(d90−d10)/平均粒径〕値は、0.49であった。
また、複合水酸化物と同様の方法で、正極活物質のSEM観察および断面SEM観察を行ったところ、得られた正極活物質は、略球状であり、粒径がほぼ均一に揃っていることが確認された。一方、断面SEM観察により、この正極活物質が、一次粒子が焼結して構成された外殻部と、その内部に中空部を備える中空構造となっていることを確認した。この正極活物質の断面SEM観察から求めた、正極活物質の粒子径に対する外殻部の厚さの比率は、12%、厚さは0.6μmであった。
得られた正極活物質について、流動方式ガス吸着法比表面積測定装置(ユアサアイオニクス社製、マルチソーブ)により比表面積を求めたところ、1.5m/gであった。
得られた正極活物質について、X線回折装置(パナリティカル社製、X’Pert PRO)を用いて、Cu−Kα線による粉末X線回折で分析したところ、この正極活物質の結晶構造が、六方晶の層状結晶リチウムニッケルマンガン複合酸化物単相からなることを確認した。
e)正極活物質の作製
上述のようにして得られた複合酸化物(3000g)を母材とし、該複合酸化物含まれるNi、Mn、およびCoの原子数の合計に対して、0.10原子%となるW量の酸化タングステン(16g)を添加し、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製、FM10C/I)を用い、大気圧下、ヘンシェルミキサーの周速を8m/秒として、10分間、複合酸化物と酸化タングステンとを十分に混合し、混合物を得た(乾式混合工程)。
乾式混合工程が終了した後、ヘンシェルミキサーの周速を8m/秒として、大気圧下、混合物の混合を行いつつ、5分間、水噴霧装置(ヤマト科学株式会社製、スプレードライヤーDL410)を用いて、水噴霧速度を50ml/分として、純水を混合物に対して、平均粒径100μm以下の霧状態で、混合物全体の質量に対して8.3質量%となる量だけ噴霧し、その後、さらに10分間、混合物の混合を継続し、さらに混合終了後、混合物を120分間、静置した(水噴霧混合工程)。水噴霧混合後、一部の混合物を試料として、その水分率の測定を行ったところ、その水分率は、5%であった。
水噴霧混合工程が終了した後、ヘンシェルミキサーを回転させることなく、大気圧下、120℃の温度で、30分間、混合物の熱処理を行った。その後、ヘンシェルミキサーの容器内が0.1MPa以下の真空雰囲気となるようにヘンシェルミキサーの設定を変更した後、真空雰囲気下、ヘンシェルミキサーを回転させることなく、150℃の温度で、90分間、混合物の減圧乾燥を行い、その後、ヘンシェルミキサーの周速を3m/秒に設定して、真空雰囲気下、攪拌混合を行いながら、90分で25℃まで混合物に減圧冷却を施した(乾燥工程)。
その後、篩目38μmの条件で、得られた正極活物質に対して篩別を施した。
f)正極活物質の評価
[平均粒径MVおよび粒度分布]
レーザ光回折散乱式粒度分析計(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3300EXII)を用いて、正極活物質の平均粒径MVを測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕を算出した。この結果、平均粒径MVは、4.6μm(WおよびLiを含む化合物被覆前の複合酸化物の平均粒径MVに対する比率:96%)であり、〔(d90−d10)/平均粒径MV〕は0,46であることが確認された。
[BET比表面積およびタップ密度]
流動方式ガス吸着法比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、マックソーブ1200シリーズ)によりBET比表面積を、タッピングマシン(株式会社蔵持科学器械製作所製、KRS−406)によりタップ密度を、それぞれ測定した。この結果、BET比表面積は2.0m/gであり、タップ密度は1.5g/cmであることが確認された。
[組成]
得られた正極活物質の組成をICP発光分析法により分析したところ、W含有量はNi、Mn、およびCoの原子数の合計に対して0.35原子%の組成であることを確認した。
[微粒子および被膜]
X線回折(XRD)装置(スペクトリス株式会社製、X‘Pert PRO)を用いた粉末XRD分析の結果から、一次粒子の表面にあるWおよびLiを含む化合物の微粒子は、タングステン酸リチウム(LiWO)からなることを確認した。
この正極活物質を、走査透過型電子顕微鏡(STEM:株式会社日立ハイテクノロジース製、走査型電子顕微鏡S−4700)による表面観察が可能な状態とした後、二次粒子の表面付近をSTEMにより観察したところ、一次粒子の表面に均一に、平均粒径が122nm、粒子径が105nm〜147nmの範囲にある微粒子が存在していることが確認された。なお、得られたSEM画像を図2に示す。
g)二次電池の作製
図4に示すような2032型コイン電池を作成した。具体的には、上述のようにして得られた正極活物質:52.5mgと、アセチレンブラック:15mgと、PTEE:7.5mgを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成形した後、真空乾燥機中、120℃で12時間乾燥することにより、正極11を作製した。
次に、この正極11を用いて2032型コイン電池を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。この2032型コイン電池の負極12には、直径17mm、厚さ1mmのリチウム金属を用い、非水電解液には、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。また、セパレータ13には、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。このようにして、ガスケット14を有し、正極缶15と負極缶16とを備える、2032型コイン電池を組み立てた。
f)電池評価
[正極界面抵抗]
正極界面抵抗の測定は、インピーダンス測定法を用い、2032型コイン電池を充電電位4.4Vで充電し、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用することで、図5に示すナイキストプロットを得た。図5に示すナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗(界面抵抗)とその容量を示す特性曲線の和として表されているため、このナイキストプロットに基づき、図5に示す等価回路を用いてフィッティング計算して、正極界面抵抗の値を算出した。なお、正極界面抵抗については、後述する比較例1の正極活物質を基準とし、これに対する抵抗減少率を示す。その結果、正極界面抵抗は、比較例1に対して8%低減していた。
[放電容量維持率]
2032型コイン電池を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとして、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行なって、初期放電容量を求めた。さらに、充電と放電を繰り返し100回行い、初期放電容量に対する2回目の放電容量の比率を放電容量維持率とした。その結果、放電容量維持率は、85%であった。
乾式混合工程、水噴霧混合工程、および乾燥工程の条件、正極活物質の二次粒子の表面に存在する微粒子の平均粒径および粒径範囲、並びに、得られたリチウムイオン二次電池の正極界面抵抗の低減率および放電容量維持率について、表1および表2に示す。なお、これらについて、実施例2〜6、並びに、比較例1〜3についても、同様に表1および表2に示す。
(実施例2)
水噴霧混合工程において、ヘンシェルミキサーの周速を5m/秒として水噴霧を行い、その後、ヘンシェルミキサーの周速を5m/秒に維持して、3分間混合を継続したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得て、その評価を行った。
(実施例3)
水噴霧混合工程において、水噴霧時のヘンシェルミキサーの周速を10m/秒とし、水噴霧速度を100ml/分として、4分間の水噴霧(混合物全体の質量に対して13.1質量%)を行い、その後、ヘンシェルミキサーの周速を10m/秒に維持して、30分間混合を継続したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得て、その評価を行った。
(実施例4)
水噴霧混合工程において、水噴霧時のヘンシェルミキサーの周速を6m/秒とし、水噴霧速度を75ml/分として、5分間の水噴霧(混合物全体の質量に対して12.3質量%)を行い、その後、ヘンシェルミキサーの周速を7m/秒として、5分間混合を継続したこと、静置時間を100分としたこと、および、乾燥工程における熱処理時間を20分間としたこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得て、その評価を行った。
(実施例5)
乾燥工程において、大気圧下、50℃の温度で、30分間、混合物の熱処理を行い、その後、真空雰囲気下、100℃の温度で、60分間、混合物の減圧乾燥を行ったこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得て、その評価を行った。
(実施例6)
乾燥工程において、大気圧下、150℃の温度で、60分間、混合物の熱処理を行い、その後、真空雰囲気下、200℃の温度で、180分間、混合物の減圧乾燥を行ったこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得て、その評価を行った。
(比較例1)
水噴霧混合工程において、水噴霧を静置状態の混合物に対して行い、混合物全体の質量に対して10質量%となる量だけ噴霧し、その後、ゴムヘラを使って手で混合した。その後、混合物を60分間静置して、上記混合物を大気圧下、120℃で12時間乾燥して、大気圧下、90分間で25℃まで冷却したこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質を得て、その評価を行った。
得られた二次粒子の表面付近をSTEMにより観察したところ、一次粒子の表面に均一に、平均粒径が680nm、粒子径が62nm〜700nmの範囲にある微粒子が存在していることが確認された。なお、得られたSTEM画像を図3に示す。
(比較例2)
水噴霧混合工程において、水噴霧時のヘンシェルミキサーの周速を4m/秒とし、水噴霧速度を120ml/分として、約3分間の水噴霧(混合物全体の質量に対して11.8質量%)を行い、その後、ヘンシェルミキサーの周速を4m/秒に維持して、10分間混合を継続したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得て、その評価を行った。
(比較例3)
水噴霧混合工程において、水噴霧時のヘンシェルミキサーの周速を16m/秒とし、水噴霧速度を40ml/分として、約9分間の水噴霧(混合物全体の質量に対して11.8質量%)を行い、その後、ヘンシェルミキサーの周速を16m/秒に維持して、10分間混合を継続したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得て、その評価を行った。
本発明の範囲にある実施例1〜6の正極活物質では、その二次粒子を構成する一次粒子の表面に、タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子が、より微細であって、かつ、均一に存在しているため、比較例1の正極活物質との比較で、正極界面抵抗が顕著に減少しており、高出力化が実現されるとともに、放電容量維持率も改善されていることが理解される。比較例2および3の正極活物質では、タングステン酸リチウムなどのWおよびLiを含む化合物の微粒子が大きすぎるか、あるいは、小さすぎることに起因して、正極界面抵抗の改善効果が十分に得られていないことが理解される
11 正極(評価用電極)
12 負極
13 セパレータ
14 ガスケット
15 正極缶
16 負極缶

Claims (15)

  1. 複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子を構成する一次粒子の少なくとも一部の表面に、WおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する、WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質であって、
    前記二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在する空間部とを備えた、中空構造を有し、
    走査型電子顕微鏡を用いた前記二次粒子の表面観察から求められる、前記二次粒子の表面に存在するWおよびLiを含む化合物の微粒子の粒子径が、5nm〜400nmの範囲にある、
    リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 前記微粒子の粒子径は、10nm〜350nmの範囲にある、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 前記微粒子の平均粒径は、30nm〜200nmの範囲にある、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 前記WおよびLiを含む化合物は、タングステン酸リチウムである、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  5. 前記二次粒子の平均粒径MVは、3μm〜10μmの範囲にあり、かつ、前記二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径MV〕は、0.7以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  6. 前記二次粒子の外殻部の厚さは、0.5μm〜2.5μmの範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  7. 一般式(A):Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+s+t=1、0.3≦x≦0.7、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.4、0.0005≦s≦0.03、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶層状岩塩構造の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなる、請求項1〜6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  8. WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成され、該二次粒子は、前記凝集した一次粒子により形成された外殻部と、該外殻部の内側に存在する空間部とを備えた中空構造を有している、母材であるリチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物に、該複合酸化物の総質量に対して0.1質量%〜5質量%の範囲にある量のタングステン化合物を混合して、混合物を得る乾式混合工程、
    前記混合物に、該混合物の総質量に対して1質量%〜30質量%の範囲ある量の水を噴霧して該混合物をさらに混合する水噴霧混合工程、および、
    前記混合物を500℃以下の温度で熱処理して、該混合物を乾燥させ、前記一次粒子の表面にWおよびLiを含む化合物の微粒子が存在する、前記WおよびLiを含む化合物被覆リチウムニッケルマンガンコバルト含有複合酸化物を得る乾燥工程、
    を備え、
    前記水噴霧混合工程および前記乾燥工程において、真空乾燥混合装置を用い、
    前記水噴霧混合工程において、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、50ml/分〜100ml/分の範囲にある水噴霧速度で水噴霧を行い、その後、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、20分〜120分の範囲にある時間で混合を継続し、さらに、30分〜180分の範囲にある時間、前記混合物を静置し、および、
    前記乾燥工程において、真空雰囲気下で、前記混合物を攪拌することなく、100℃〜200℃の範囲にある温度で、60分〜180分の範囲にある時間で減圧乾燥を行う、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  9. 前記乾燥工程において、前記減圧乾燥の前に、前記混合物を攪拌することなく、50℃〜150℃の範囲にある温度で、20分〜90分の範囲にある時間で熱処理を行う、請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  10. 前記乾燥工程において、前記減圧乾燥の後、真空雰囲気下で、1m/秒〜5m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、90分〜180分の範囲にある時間で前記混合物を 25℃まで冷却する減圧冷却を行う、請求項9に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  11. 前記乾式混合工程を、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、5分〜25分の範囲の時間で行う、請求項8〜10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  12. 前記乾式混合工程を、前記真空乾燥混合装置を用いて行う、請求項8〜11のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  13. 前記乾式混合工程から前記乾燥工程までを、前記真空乾燥混合装置を用いて行い、
    前記乾式混合工程を、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、5分〜25分の範囲の時間で行い、
    前記水噴霧混合工程において、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、50ml/分〜100ml/分の範囲にある水噴霧速度で水噴霧を行い、その後、5m/秒〜10m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、20分〜120分の範囲にある時間で混合を継続し、さらに、30分〜180分の範囲にある時間、前記混合物を静置し、および、
    前記乾燥工程において、前記混合物を攪拌することなく、50℃〜150℃の範囲にある温度で、20分〜90分の範囲にある時間で熱処理を行い、その後、真空雰囲気下で、前記混合物を攪拌することなく、100℃〜200℃の範囲にある温度で、60分〜180分の範囲にある時間で減圧乾燥を行い、さらに、真空雰囲気下で、1m/秒〜5m/秒の範囲にある周速で攪拌しながら、90分〜180分の範囲にある時間で前記混合物を25℃まで冷却する減圧冷却を行う、
    請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  14. 前記リチウムイオン二次電池用正極活物質は、一般式(A):Li1+uNiMnCo(−0.05≦u≦0.50、x+y+z+s+t=1、0.3≦x≦0.7、0.15≦y≦0.4、0.15≦z≦0.4、0.0005≦s≦0.03、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Al、Si、Ca、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶層状岩塩構造の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物からなる、
    請求項7〜12のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  15. 正極、負極、セパレータ、および非水電解質を備え、あるいは、正極、負極、および固体電解質を備え、前記正極に用いられる正極活物質として、請求項1〜6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質が用いられている、リチウムイオン二次電池。
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