JP2020122550A - 自動車電装補機用転がり軸受及び増減速機用転がり軸受 - Google Patents

自動車電装補機用転がり軸受及び増減速機用転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】水素が浸入することに伴う水素脆性の発生を抑制することができる自動車電装補機用転がり軸受を提供する。【解決手段】自動車電装補機用転がり軸受は、回転駆動される軸を静止部材に対して回転可能に支持する。自動車電装補機用転がり軸受は、内輪と、外輪と、内輪と外輪の間に配置される転動体とを備える。内輪、外輪及び転動体は、鋼製である。内輪及び外輪の軌道面並びに転動体の転動面の少なくともいずれかには、焼入硬化層が設けられる。焼入硬化層における水素拡散係数は、2.6×10−11m2/sより小さい。焼入硬化層は、大きさが3μm以上の酸化物系介在物と、硫化マンガンとを含有する。少なくとも一部が硫化マンガンに覆われる酸化物系介在物の個数は、酸化物系介在物の全個数の40パーセントを超える。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車電装補機用転がり軸受及び増減速機用転がり軸受に関する。
近年、自動車の小型化、軽量化及び静粛性向上の要求に伴い、自動車の電装部品や補機部品(以下においては、「自動車電装補機」という)の小型化、軽量化及びエンジンルームの密閉化が図られている。他方で、自動車電装補機の高出力化及び高効率化の要求が増大している。エンジンルーム内の自動車電装補機部品においては、小型に伴う出力の低下が、軸を高速回転させることで補う手法が採用されている。
自動車電装補機部品用転がり軸受の潤滑剤には、主としてグリースが用いられている。自動車電装補機部品用転がり軸受が過酷な使用条件(例えば、軸が高速回転する使用条件等)の下で使用された場合、軌道面及び転動面に白色組織変化を伴った特異的な早期剥離が生じることがある。金属疲労により生じる剥離は、内輪、外輪及び転動体の内部から剥離が生じる。他方で、この特異的な早期剥離は、軌道面及び転動面の近傍から生じる破壊現象であり、潤滑剤の分解等で発生した水素が軌道面及び転動面から内部に侵入することによる水素脆性が原因となっていると考えられている。この早期剥離は、水が潤滑剤に混入しやすい条件下、すべりを伴う条件下及び通電が生じる条件下等において特に発生しやすい。これは、そのような条件下においては、水又は潤滑剤の分解によって水素が発生しやすいためである。
上記の特異的な早期剥離を抑制する手法として、例えば、特許文献1(特開平3−210394号公報)に記載の方法、特許文献2(特開2005−42102号公報)に記載の方法及び特許文献3(特開2000−282178号公報)に記載の方法が知られている。
特許文献1に記載の方法においては、潤滑剤に不動態化剤が添加される。特許文献2に記載の方法においては、潤滑剤にビスマスジオカーバメートが添加される。特許文献3に記載の方法においては、転がり軸受を構成する鋼にクロム(Cr)が多く添加される。
過酷な使用条件で用いられる増速機及び減速機(以下「増減速機」という)用転がり軸受に関しても、自動車電装補機用転がり軸受と同様の問題がある。
特開平3−210394号公報 特開2005−42102号公報 特開2000−282178号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法及び特許文献2に記載の方法は、自動車電装補機用転がり軸受及び増減速機用転がり軸受が過酷な使用条件下において使用される場合には、特異的な早期剥離を防ぐ対策としては不十分になってきている。
特許文献3に記載の方法においては、Crが多く添加されることにより炭化物が粗大化しやすい。粗大化した炭化物は、応力集中源となるおそれがある。また、不動態膜は、水素の拡散を遅らせる効果はあるが、水素の吸着量が増加するため、転がり軸受の使用状況によっては、かえって鋼中への水素の侵入量が増加するおそれがある。
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、水素が浸入することに伴う水素脆性の発生を抑制することができる自動車電装補機用転がり軸受及び増減速機用転がり軸受を提供するものである。
本発明の一態様に係る自動車電装補機用転がり軸受は、回転駆動される軸を静止部材に対して回転可能に支持する。この自動車電装補機用転がり軸受は、内輪と、外輪と、内輪と外輪の間に配置される転動体とを備える。内輪、外輪及び転動体は、鋼製である。内輪及び外輪の軌道面並びに転動体の転動面の少なくともいずれかには、焼入硬化層が設けられる。焼入硬化層における水素拡散係数は、2.6×10−11/sより小さい。焼入硬化層は、大きさが3μm以上の酸化物系介在物と、硫化マンガンとを含有する。少なくとも一部が硫化マンガンに覆われる酸化物系介在物の個数は、酸化物系介在物の全個数の40パーセントを超える。
上記の自動車電装補機用転がり軸受において、焼入硬化層は、窒素を含有していてもよい。上記の自動車電装補機用転がり軸受において、焼入硬化層中における窒素濃度は、0.05重量パーセント以上0.6重量パーセント以下であってもよい。
上記の自動車電装補機用転がり軸受において、焼入硬化層中におけるオーステナイト相の体積比率は10パーセント以上40パーセント以下であってもよい。
上記の自動車電装補機用転がり軸受において、焼入硬化層の硬度は、58HRC以上64HRC以下であってもよい。
本発明の一態様に係る増減速機用転がり軸受は、入力軸の回転を遊星歯車を用いて増減速させて出力軸に伝える増減速機において油潤滑されながら遊星歯車を回転可能に支持する。この増減速機用転がり軸受は、内輪と、外輪と、内輪と外輪の間に配置される転動体とを備える。内輪、外輪及び転動体は、鋼製である。内輪及び外輪の軌道面並びに転動体の転動面の少なくともいずれかには、焼入硬化層が設けられる。焼入硬化層における水素拡散係数は、2.6×10−11/sより小さい。焼入硬化層は、大きさが3μm以上の酸化物系介在物と、硫化マンガンとを含有する。少なくとも一部が硫化マンガンに覆われる酸化物系介在物の個数は、酸化物系介在物の全個数の40パーセントを超える。
上記の増減速機用転がり軸受において、焼入硬化層は、窒素を含有していてもよい。上記の増減速機用転がり軸受において、焼入硬化層中における窒素濃度は、0.05重量パーセント以上0.6重量パーセント以下であってもよい。
上記の増減速機用転がり軸受において、焼入硬化層中におけるオーステナイト相の体積比率は10パーセント以上40パーセント以下であってもよい。
上記の増減速機用転がり軸受において、焼入硬化層の硬度は、58HRC以上64HRC以下であってもよい。
本発明の一態様に係る自動車電装補機用転がり軸受及び本発明の一態様に係る増減速機用転がり軸受によると、水素が浸入することに伴う水素脆性の発生を抑制することができる。
転がり軸受100の断面図である。 転がり軸受100を用いた自動車電装補機の断面図である。 水素拡散係数の測定装置70の模式図である。 転がり軸受100の構成部品の製造工程を示す工程図である。 転動疲労試験における回転条件を示すグラフである。 転がり軸受300の断面図である。 転がり軸受300が用いられた増速機400の断面図である。
本発明の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
以下に、第1実施形態に係る自動車電装補機部品用転がり軸受(以下においては、「転がり軸受100」という)の構成を説明する。
図1は、転がり軸受100の断面図である。図1に示されるように、転がり軸受100は、内輪1と、外輪2と、転動体3と、保持器4とを有している。内輪1は、その外周面に、軌道面11を有している。内輪1は、環状形状を有している。外輪2は、その内周面に、軌道面21を有している。外輪2は、環状形状を有している。外輪2は、軌道面21が軌道面11と対向するように、内輪1の外周側に配置されている。
転動体3は、球状の形状を有している。転動体3は、転動面31を有している。転動体3は、軌道面11と軌道面21との間に配置されており、転動面31において、軌道面11及び軌道面21とに接触している。転動体3の数は、複数である。複数の転動体3は、保持器4により、周方向に沿って所定のピッチで等間隔に配置されている。
内輪1、外輪2及び転動体3は、鋼製である。内輪1、外輪2及び転動体3を構成している鋼は、例えばJIS規格(JIS G 4805:2008)に定める高炭素クロム軸受鋼である。内輪1、外輪2及び転動体3を構成している鋼は、JIS規格(JIS G 4805:2008)に定めるSUJ2又はSUJ3であってもよい。
図2は、転がり軸受100を用いた自動車電装補機の断面図である。図2に示されるように、自動車電装補機は、例えばオルタネータ200である。なお、自動車電装補機は、アイドラプーリ、カーエアコン用電磁クラッチ、ファンカップリング装置、中間プーリ、電動ファンモータ等であってもよい。
オルタネータ200は、ロータ201と、ハウジング202と、シャフト203と、ステータ204と、プーリ205と、転がり軸受100とを有している。ハウジング202は、ロータ201を取り囲むように配置されている。シャフト203は、ロータ201の中央部を貫通し、かつハウジング202の壁面を貫通するように、シャフト203が配置されている。シャフト203は、エンジン(図示せず)等の動力源で発生した動力で回転駆動される。ハウジング202の内部においてロータ201の外周面と対向するように、ステータ204が配置されている。
シャフト203とハウジング202との間には、転がり軸受100が配置されている。シャフト203は、転がり軸受100により、ハウジング202に回転可能に支持されている。
シャフト203の一方端部には、ハウジング202の外部において、プーリ205が取り付けられている。プーリ205は、円環形状を有している。プーリ205の外周面には係合溝205aが形成されている。係合溝205aには、伝動ベルト(図示せず)が掛けられる。
伝動ベルトがエンジン(図示せず)等からの動力によって回転することにより、シャフト203が中心軸周りに回転駆動される。ロータ201は、シャフト203とともに、シャフト203の中心軸周りに回転する。その結果、ロータ201がステータ204に対して相対的に回転することになり、ロータ201とステータ204との間の電磁誘導によりステータ204のコイルに起電力が生じる。
図1に示されるように、軌道面11、軌道面21及び転動面31には、焼入硬化層5が形成されている。なお、焼入硬化層5は、軌道面11、軌道面21及び転動面31の少なくともいずれかに形成されていればよい。
焼入硬化層5は、酸化物系介在物と、硫化マンガン(MnS)とを含有している。酸化物系介在物には、例えばアルミニウムの酸化物(Al)やカルシウムの酸化物等が含まれる。酸化物系介在物には、大きさが基準値以上のものがある。酸化物系介在物の大きさは、顕微鏡やEDX(Energy Dispersive X-ray Spectrometry)により測定される。
MnSは、大きさが基準値以上の酸化物系介在物の少なくも一部を覆っている。ここで、MnSが酸化物系介在物の少なくとも一部を覆っているとは、MnSが酸化物系介在物の表面の少なくとも一部に接していることをいう。MnSが酸化物系介在物の少なくとも一部を覆っているか否かの判断は、焼入硬化層5の断面を光学顕微鏡で観察することにより行われる。
大きさが基準値以上で、かつ少なくとも一部がMnSにより覆われている酸化物系介在物の個数は、大きさが基準値以上の酸化物系介在物の全個数の40パーセントを超えている。このことを別の観点からいえば、大きさが基準値以上の酸化物系介在物の全個数をX、大きさが基準値以上であり、かつ少なくとも一部がMnSにより覆われている酸化物系介在物の個数をYとした場合に、Y/X>0.4との関係が満たされている。
Y/Xの値は、好ましくは0.5以上である。さらに好ましくは、Y/Xの値は0.9以上である。上記の基準値は、3μm以上である。上記の基準値は、5μm以上であってもよい。上記の基準値は、10μm以上であってもよい。
Y/Xの値は、以下の手順にしたがって測定される。第1に、焼入硬化層5の断面から30mm×30mmの領域(以下において、この領域を測定領域という)を特定する。この測定領域の位置は、任意である。第2に、この測定領域を光学顕微鏡で観察することにより、大きさが基準値以上の酸化物系介在物を、大きいものから順に17個特定する(以下において、これらの酸化物系介在物を測定対象介在物という)。
すなわち、Xの値を17とする。第3に、この測定対象介在物を光学顕微鏡で観察することにより、少なくとも一部がMnSで覆われている測定対象介在物を特定し、Yの値を得る。そして、このXの値及びYの値を用いて、Y/Xを決定する。
焼入硬化層5における水素拡散係数は、2.6×10−11/sより小さい。焼入硬化層5における水素拡散係数は、2.1×10−11/s以下であってもよい。焼入硬化層5における水素拡散係数は、1.9×10−11/s以下であってもよい。焼入硬化層5における水素拡散係数は、1.6×10−11/s以下であってもよい。焼入硬化層5における水素拡散係数は、1.4×10−11/s以下であってもよい。
水素拡散係数は、例えば、電気化学的水素透過法により測定される。図3は、水素拡散係数の測定装置70の模式図である。図3に示されるように、測定装置70は、アノード槽71と、カソード槽72と、アノード電極73と、カソード電極74と、ガルバノスタット75と、ポテンショスタット76とを有している。アノード槽71とカソード槽72は、試験片77により分断されている。試験片77は、厚さLを有している。厚さLは、例えば、1mmである。アノード電極73及びカソード電極74は、白金(Pt)により形成されている。
アノード槽71には、アノード液78が入れられている。アノード液78は、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液である。カソード槽72には、カソード液79が入れられている。カソード液79は、0.05mol/Lの硫酸にチオ尿酸を混ぜたものである。アノード電極73は、アノード液78に浸漬されている。カソード電極74は、カソード液79に浸漬されている。
ガルバノスタット75の端子の一方は、カソード電極74に接続されている。ガルバノスタット75の端子の他方は、試験片77に接続されている。ポテンショスタット76の端子の一方は、アノード電極73に接続されている。ポテンショスタット76の端子の他方は、試験片77に接続されている。
水素拡散係数の測定においては、ガルバノスタット75により、試験片77に電流が供給される。これにより、試験片77のカソード液79側に、水素が発生する。この発生した水素は、カソード液79側の表面から、試験片77の内部に侵入する。
試験片77の内部に侵入した水素は、試験片77中を拡散しながら移動する。試験片77のアノード液78側の面に到達した水素は、イオン化する。これにより、イオン化電流が流れる。イオン化電流が流れ始めるまでの時間をtb、試験片77の厚さをLとした場合に、水素拡散係数は、L/(15.3×tb)により求められる。なお、水素拡散係数の測定は、20℃以上25℃以下の範囲内において行われる。
焼入硬化層5は、マルテンサイト相と、オーステナイト相とを含んでいる。焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率は、10パーセント以上40パーセント以下であることが好ましい。
焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率の測定は、X線回折により行われる。すなわち、焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率は、焼入硬化層5におけるオーステナイト相の回折ピークとマルテンサイト相の回折ピークとの強度比を測定することにより、決定される。
焼入硬化層5は窒素を含有していてもよい。焼入硬化層5中における窒素濃度は、0.05重量パーセント以上0.6重量パーセント以下であることが好ましい。焼入硬化層5中における窒素濃度は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)により測定される。
焼入硬化層5の硬度は、58HRC以上64HRC以下であることが好ましい。焼入硬化層5の硬度は、JIS Z2245:2016に定める方法にしたがって測定される。
以下に、転がり軸受100の製造方法を説明する。図4は、転がり軸受100の構成部品の製造工程を示す工程図である。図4に示されるように、転がり軸受100の構成部品(内輪1、外輪2及び転動体3)は、準備工程S1、焼き入れ工程S2、焼き戻し工程S3及び後処理工程S4により製造される。焼き入れ工程S2は、準備工程S1の後に行われる。焼き戻し工程S3は、焼き入れ工程S2の後に行われる。後処理工程S4は、焼き戻し工程S3の後に行われる。
準備工程S1においては、加工対象物が準備される。この加工対象物は、内輪1又は外輪2である場合、鋼製のリング状部材である。この加工対象物は、転動体3である場合、鋼製の球状部材である。
加工対象物を構成する鋼は、例えば軸受鋼である。好ましくは、加工対象物を構成する鋼は、JIS規格(JIS G 4805:2008)に定められる高炭素クロム軸受鋼である。加工対象物を構成する鋼は、JIS規格(JIS G 4805:2008)に定められるSUJ2又はSUJ3であってもよい。
転炉で精錬された溶鋼をスラブにする際の冷却速度が速い場合、MnSは、酸化物系介在物とは別々に析出する傾向がある。他方、転炉で精錬された溶鋼をスラブにする際の冷却速度が遅い場合、MnSは、酸化物系介在物を析出核として析出する傾向がある。そのため、転炉で精錬された溶鋼をスラブにする際の冷却速度を調整することにより、MnSにより被覆されている酸化物系介在物の比率を調整することができる。
焼き入れ工程S2においては、加工対象物を構成する鋼に対する焼き入れが行われる。焼き入れ工程S2は、加熱工程S21と冷却工程S22とを有している。加熱工程S21においては、加工対象物の加熱が行われる。加熱工程S21においては、加工対象物は、加工対象物を構成する鋼のA点以上の温度(以下においては、この温度を加熱温度という)まで加熱される。加熱温度は、例えば800℃以上900℃以下である。
加熱工程S21における加工対象物の加熱は、例えば加熱炉内で行われる。加熱炉内の雰囲気は、例えばRXガスである。加熱炉内の雰囲気には、窒素を含有するガスが添加されてもよい。窒素を含有するガスの具体例は、アンモニアガスである。加熱工程S21においては、加工対象物が加熱温度まで昇温された後、当該加熱温度で所定時間(以下においては、この時間を保持時間という)保持される。
保持時間が長くなるほど、又は加熱温度が高くなるほど、加熱工程S21において、加工対象物を構成する鋼材中の炭素がオーステナイト相に溶け出す。オーステナイト相中の炭素量が多いほど、残留オーステナイト相が多くなる傾向がある。そのため、保持時間及び加熱温度を制御することにより、焼入硬化層5中のオーステナイト相の体積比率を制御することができる。
鋼材中のオーステナイト安定化元素の量が増加すると、残留オーステナイト相が多くなる傾向にある。そのため、加工対象物を構成する鋼材にオーステナイト安定化元素である合金元素を多く含む鋼種を用いる又は加熱工程S21において加熱雰囲気に窒素を含有するガスを添加することにより、焼入硬化層5中のオーステナイト相の体積比率を制御することができる。
加工対象物を構成する鋼材中の窒素は、加工対象物を構成する鋼材中のCr等との間で窒化物を形成する。この窒化物は、加工対象物を構成する鋼材中に微細に分散することにより、加工対象物を構成する鋼材を硬化させる。また、窒化物は水素のトラップサイトになるため、水素拡散係数が小さくなる。そのため、加熱工程S21において、窒素を含有するガスの濃度、加熱温度及び保持時間を制御することにより、焼入硬化層5の硬度及び水素拡散係数を制御することができる。
冷却工程S22においては加工対象物の冷却が行われる。冷却工程S22においては、加工対象物は、加熱温度から加工対象物を構成する鋼のM点以下の温度(以下においては、冷却温度という)まで冷却される。冷却工程S22における加工対象物の冷却は、従来周知の任意の冷媒を用いて行われる。加工対象物の冷却に用いられる冷媒は、例えば油又は水である。
なお、冷却工程S22における冷却温度及び冷却速度は、冷却工程S22において生じるマルテンサイト相の量(別の観点からいえば、冷却工程S22後においてもオーステナイト相のまま残留する量)に影響する。そのため、冷却温度及び冷却速度を制御することによっても、焼入硬化層5中のオーステナイト相の体積比率を制御することができる。
焼き戻し工程S3においては、加工対象物を構成する鋼が焼き戻される。加工対象物の焼き戻しは、加工対象物をA点未満の温度(以下においては、焼き戻し温度という)で所定時間(以下においては、焼き戻し時間という)保持することにより行われる。焼き戻し温度は、例えば180℃である。焼き戻し時間は、例えば2時間である。
焼き戻し工程S3においては、冷却工程S22によってもマルテンサイト相とならなかったオーステナイト相が、フェライト相と炭化物相とに分解される。フェライト相及び炭化物相へと分解されるオーステナイト相の量は、焼き戻し温度及び焼き戻し時間を制御することにより、変化する。そのため、焼き戻し温度及び焼き戻し時間を制御することによっても、焼入硬化層5中のオーステナイト相の体積比率を制御することができる。
後処理工程S4においては、加工対象物に対する後処理が行われる。後処理工程S4においては、例えば、加工対象物の洗浄、加工対象物に対する研削、研磨等の機械加工等が行われる。以上により、以上により、転がり軸受100の構成部品の製造が行われる。上記の方法で製造された転がり軸受100の構成部品を保持器4とともに組み立てることにより、転がり軸受100が製造される。
以下に、転がり軸受100の効果を説明する。鋼中に侵入した水素は、引張応力場に集積する性質がある。大きさが3μm以上の酸化物系介在物の周囲には、応力集中が生じやすい。そのため、大きさが3μm以上の酸化物系介在物の周囲には、水素が集積されることによる水素脆性が生じやすい。
MnSは、柔らかい(MnSの硬度は、150Hv程度である)。そのため、MnSにより覆われている酸化物系介在物の周囲では、応力集中が緩和される。転がり軸受100においては、大きさが3μm以上であり、かつ少なくとも一部がMnSにより覆われている酸化物系介在物の個数は、大きさが3μm以上の酸化物系介在物の全個数の40パーセントを超えている。そのため、転がり軸受100においては、水素の集積が抑制されることにより、水素脆性の発生を抑制することができる。
転がり軸受100においては、焼入硬化層5における水素拡散係数が2.6×10−11/sより小さいため、表面から侵入した水素が焼入硬化層5の内部に拡散するために長時間を要する。そのため、転がり軸受100によると、表面から水素が浸入することに伴う水素脆性の発生を抑制することができる。
窒素は、内輪1、外輪2及び転動体3を構成する鋼中の合金元素との間で窒化物を形成する。そのため、焼入硬化層5が窒素を含有している場合には、焼入硬化層5中の窒化物の含有量が増加する結果、焼入硬化層5の水素拡散係数が低下するとともに、焼入硬化層5の硬度が上昇する。
焼入硬化層5中の窒素濃度が0.6重量パーセントを超えると、窒素と反応して窒化物となるCrが多くなる。窒素と反応して窒化物となったCrは、焼入硬化層5の焼入性の向上に寄与しない。他方で、焼入硬化層5中の窒素濃度が0.05重量パーセント未満では、窒化物の形成量が少なく、焼入硬化層5の硬度上昇及び水素拡散係数低減に与える影響が少ない。そのため、焼入硬化層5中の窒素濃度が、0.05重量パーセント以上0.6重量パーセント以下の場合、窒素導入に伴う硬度上昇及び水素拡散係数低減を行いつつ焼入硬化層5の焼入性を確保することができる。
オーステナイト相は、マルテンサイト相よりも水素拡散係数が小さい。そのため、焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率が大きいほど、焼入硬化層5の水素拡散係数が低下する。一方で、焼入硬化層5中のオーステナイト相は、転がり軸受100を使用している間にマルテンサイト相に変態する場合がある。焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率が大きすぎると、寸法安定性が低下する。したがって、焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率が10パーセント以上40パーセント以下である場合には、寸法安定性を維持しつつ、水素拡散係数を低下させることができる。
軌道面11、軌道面21及び転動面31は、接触応力を受けても変形しないことが求められる。そのため、軌道面11、軌道面21及び転動面31にある焼入硬化層5には、硬度が要求される。一方で、焼入硬化層5の硬度が過度に高い場合、靱性が低下する。したがって、焼入硬化層5の硬度が58HRC以上64HRC以下である場合、軌道面11、軌道面21及び転動面31における靱性を確保しつつ、接触応力が印加されることによる軌道面11、軌道面21及び転動面31の変形を抑制することができる。
以下に、供試材1〜供試材5に対する第1転動疲労試験を説明する。
<供試材>
表1に、第1転動疲労試験に供した供試材の作製条件、焼入硬化層5中における窒素濃度、焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率及び焼入硬化層5における水素拡散係数を示す。表1に示すように、供試材1〜供試材3に用いられた鋼種は、SUJ2である。供試材4及び供試材5に用いられた鋼種は、SUJ3である。
供試材1及び供試材4に対する加熱工程S21は、約850℃の加熱温度、RXガス雰囲気中において行われた。供試材2、供試材3及び供試材5に対する加熱工程S21は、約850℃の加熱温度、アンモニアガスを添加したRXガス雰囲気中において行われた。供試材2及び供試材5においては焼入硬化層5中の窒素濃度が0.2重量パーセントとなるようにアンモニアガスの濃度が調整され、供試材3においては焼入硬化層5中の窒素濃度が0.4重量パーセントとなるようにアンモニアガスの濃度が調整された。供試材1〜供試材5に対しては、焼き戻し工程S3は180℃の焼き戻し温度、2時間(120分)の焼き戻し時間で行われた。
供試材1の焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率は、8.9パーセントであった。供試材2の焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率は、21.7パーセントであった。
供試材3の焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率は29.6パーセントであり、供試材4中の焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率は20.3パーセントであった。供試材5の焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率は31.8パーセントであった。
供試材1の焼入硬化層5の水素拡散係数は、2.63×10−11/sであった。供試材2の焼入硬化層5の水素拡散係数は、2.09×10−11/sであった。供試材3の焼入硬化層5の水素拡散係数は、1.60×10−11/sであった。供試材4の焼入硬化層5の水素拡散係数は、1.88×10−11/sであった。供試材5の焼入硬化層5の水素拡散係数は、1.40×10−11/sであった。
<転動疲労試験方法>
各供試材を用いてスラスト玉軸受を構成した。なお、このスラスト玉軸受の転動体は、SUS440C製の鋼球とした。このスラスト玉軸受には、潤滑剤として、グリコール系潤滑油に純水を混合したもの用いた。これにより、このスラスト玉軸受は、水素が軌道面から侵入しうる状況とされた。
転動疲労試験は、このスラスト玉軸受に4.9kNのアキシャル荷重を加えた状態(この状態において、軌道面と転動体との間における最大接触面圧は、弾性ヘルツ接触計算で2.3GPaとなる)で、内輪を外輪に対して相対的に回転させることにより行われた。図5は、転動疲労試験における回転条件を示すグラフである。図5に示すように、内輪の外輪に対する相対的な回転は、0.5秒間を1サイクルとして行われた。
この0.5秒間のうち、最初の0.1秒間においては、回転速度が0回転/分から2500回転/分まで直線的に増加した。次の0.3秒間においては、回転速度が2500回転/分で保持された。次の0.1秒間においては、回転速度が2500回転/分から0回転/分まで直線的に減少した。
<転動疲労試験結果>
表2に、転動疲労試験結果を示す。表2中において、L10及びL50は、各供試材を用いて構成したスラスト玉軸受の剥離寿命(軌道面にフレーキングが生じるまでの時間)を2母数ワイブル分布にあてはめて求めた10パーセント寿命及び50パーセント寿命であり、eは当該2母数ワイブル分布のワイブルスロープ(形状母数)である。
表2に示すように、供試材2〜供試材5を用いて構成したスラスト玉軸受は、供試材1を用いて構成したスラスト玉軸受よりも長い剥離寿命を示している。上記のとおり、供試材1においては、焼入硬化層5の水素拡散係数が2.6×10−11/s以上である一方で、供試材2〜供試材5においては、焼入硬化層5の水素拡散係数が2.6×10−11/s未満であった。この比較から、焼入硬化層5が2.6×10−11/s未満の水素拡散係数を有することにより、表面から水素が浸入することに伴う水素脆性の発生を抑制できることが実験的に明らかとされた。
上記のとおり、供試材1の焼入硬化層5は、オーステナイト相の体積比率が10パーセント未満である一方、供試材2〜供試材5の焼入硬化層5は、オーステナイト相の体積比率が10パーセント以上40パーセント以下の範囲内にあった。この比較から、焼入硬化層5中のオーステナイト相の体積比率が10パーセント以上40パーセント以下の範囲内にあることにより、表面から水素が浸入することに伴う水素脆性の発生を抑制できることが実験的に明らかとされた。
供試材5を用いて構成したスラスト玉軸受は、供試材4を用いて構成したスラスト玉軸受よりも長い剥離寿命を示していた。上記のとおり、供試材4の焼入硬化層5は、窒素を含んでいない一方、供試材5の焼入硬化層5は、窒素を含んでいる。この比較から、焼入硬化層5が窒素を含むことにより、表面から水素が浸入することに伴う水素脆性の発生をさらに抑制できることが実験的に明らかとされた。
以下に、介在物検査の結果を説明する。介在物検査においては、供試材6〜供試材9の断面における30mm×30mmの領域で検出された酸化物系介在物のうち、大きいものから順に17個(但し、最大径が3μm以上のもの)を選択し、それぞれの酸化物系介在物がMnSで覆われているかを確認した。供試材6〜供試材9に用いられた鋼種は、SUJ2である。
表3に、介在物検査結果を示す。表3に示されるように、供試材6においては、17個中4個の酸化物系介在物がMnSで覆われていた(被覆率24パーセント)。供試材7においては、17個中7個の酸化物系介在物がMnSで覆われていた(被覆率41パーセント)。供試材8においては、17個中9個の酸化物介在物がMnSで覆われていた(被覆率52パーセント)。供試材9においては、17個中16個の酸化物系介在物がMnSで覆われていた(被覆率94パーセント)。
以下に、供試材6、供試材7及び供試材10に対する第2転動疲労試験を説明する。なお、供試材7及び供試材10は、同一の材料であるが、後述する熱処理の条件が異なっている。
<供試材>
表4に、第2転動疲労試験に供した供試材の作製条件、焼入硬化層5中における窒素濃度、焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率及び焼入硬化層5における水素拡散係数を示す。供試材6、供試材7及び供試材10に用いられた鋼種は、上記のとおりSUJ2である。
供試材6及び供試材7に対する加熱工程S21は、約850℃の加熱温度、RXガス雰囲気中において行われた。また、供試材10に対する加熱工程S21は、約850℃の加熱温度、アンモニアガスを添加したRXガス雰囲気中において行われた。供試材10においては、焼入硬化層5中の窒素濃度が0.4重量パーセントとなるようにアンモニアガスの濃度が調整された。供試材6、供試材7及び供試材10に対しては、焼き戻し工程S3は180℃の焼き戻し温度、2時間(120分)の焼き戻し時間で行われた。
<転動疲労試験方法>
転動疲労試験方法は、第1転動疲労試験と同一である。
<転動疲労試験結果>
表5に、転動疲労試験結果を示す。表5に示すように、供試材7及び供試材10を用いて構成したスラスト玉軸受は、供試材6を用いて構成したスラスト玉軸受よりも長い剥離寿命を示している。上記のとおり、供試材6においては、Y/X>0.4との関係が満たされていない。他方で、供試材7及び供試材10においては、Y/X>0.4との関係が満たされている。この比較から、Y/X>0.4との関係が満たされることにより、表面から水素が浸入することに伴う水素脆性の発生を抑制できることが実験的に明らかとされた。
供試材10を用いて構成したスラスト玉軸受は、供試材7を用いて構成したスラスト玉軸受よりも長い剥離寿命を示している。この比較から、窒化処理を行うことにより、表面から水素が浸入することに伴う水素脆性の発生をさらに抑制できることが実験的に明らかとされた。
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る増減速機用転がり軸受(以下においては、「転がり軸受300」という)を説明する。
図6は、転がり軸受300の断面図である。図6に示されるように、転がり軸受300は、内輪1と、外輪2と、転動体3と、保持器4とを有している。
内輪1、外輪2及び転動体3は、鋼製である。内輪1、外輪2及び転動体3を構成している鋼は、例えば、JIS規格(JIS G 4805:2008)に定める高炭素クロム軸受鋼である。内輪1、外輪2及び転動体3を構成している鋼は、JIS規格(JIS G 4805:2008)に定めるSUJ2又はSUJ3であってもよい。
軌道面11、軌道面21及び転動面31には、焼入硬化層5が形成されている。焼入硬化層5は、酸化物系介在物と、硫化マンガン(MnS)とを含有している。大きさが基準値以上の酸化物系介在物の全個数をX、大きさが基準値以上であり、かつ少なくとも一部がMnSにより覆われている酸化物系介在物の個数をYとした場合に、Y/X>0.4との関係が満たされている。Y/Xの値は、好ましくは0.5以上である。さらに好ましくは、Y/Xの値は0.9以上である。上記の基準値は、3μm以上である。上記の基準値は、5μm以上であってもよい。上記の基準値は、10μm以上であってもよい。
焼入硬化層5における水素拡散係数は、2.6×10−11/sより小さい。焼入硬化層5における水素拡散係数は、2.1×10−11/s以下であってもよい。焼入硬化層5における水素拡散係数は、1.9×10−11/s以下であってもよい。焼入硬化層5における水素拡散係数は、1.6×10−11/s以下であってもよい。焼入硬化層5における水素拡散係数は、1.4×10−11/s以下であってもよい。
焼入硬化層5中におけるオーステナイト相の体積比率は、10パーセント以上40パーセント以下であることが好ましい。焼入硬化層5中における窒素濃度は、0.05重量パーセント以上0.6重量パーセント以下であることが好ましい。焼入硬化層5の硬度は、58HRC以上64HRC以下であることが好ましい。以上の点に関して、転がり軸受300の構成は、転がり軸受100の構成と共通している。
図7は、転がり軸受300が用いられた増速機400の断面図である。図7に示されるように、増速機400は、入力軸401、中間出力軸402及び出力軸403と、一次増速機404と、二次増速機405と、ハウジング406と、転がり軸受300とを有している。
一次増速機404は、遊星歯車機構で構成されている。具体的には、一次増速機404は、キャリア404aと、遊星歯車404bと、リングギア404cと、太陽歯車404dとを有している。キャリア404aは、入力軸401と一体となっている。遊星歯車404bは、キャリア404aに設置されている。太陽歯車404dは、中間出力軸402と一体となっている。リングギア404cは、遊星歯車404b及び太陽歯車404dと噛み合わされている。このようにして、入力軸401の回転は、キャリア404a、遊星歯車404b及びリングギア404cを介して中間出力軸402に伝達される。
転がり軸受300は、遊星歯車404bの軸を回転可能に支持している。なお、転がり軸受300は、遊星歯車404bの軸以外の軸についても、同様に回転可能に支持していてもよい。転がり軸受300は、ハウジング406内の潤滑油貯留槽406aに貯留された潤滑油406bに浸漬される。潤滑油貯留槽406aに貯留されている潤滑油406bは、配管及びポンプ(図示せず)で循環させられる。
二次増速機405は、歯車405a〜歯車405dを有している。歯車405a〜歯車405dで構成される歯車列は、中間出力軸402の回転を出力軸403へと伝達する。以上により、増速機400は、入力軸401の回転を増速して出力軸403に伝達する。
この例では、転がり軸受300は、増速機用転がり軸受として説明したが、減速機用転がり軸受としても用いることができる。このように、転がり軸受300は、増減速機用転がり軸受である点に関して、転がり軸受100と異なっている。
転がり軸受300の製造方法は、転がり軸受100の製造方法と同様であるため、ここではその説明を省略する。
転がり軸受300は、軌道面11、軌道面21及び転動面31に焼入硬化層5を有しているため、転がり軸受100と同様に、水素が浸入することに伴う水素脆性の発生を抑制することができる。
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
上記の実施形態は、自動車電装補機用転がり軸受及び増減速機用転がり軸受に特に有利に適用される。
1 内輪 11 軌道面、2 外輪、21 軌道面、3 転動体、31 転動面、4 保持器、5 焼入硬化層、70 測定装置、71 アノード槽、72 カソード槽、73 アノード電極、74 カソード電極、75 ガルバノスタット、76 ポテンショスタット、77 試験片、78 アノード液、79 カソード液、100 転がり軸受、200 オルタネータ、201 ロータ、202 ハウジング、203 シャフト、204 ステータ、205 プーリ、205a 係合溝、300 転がり軸受、400 増速機、401 入力軸、402 中間出力軸、403 出力軸、404 一次増速機、404a キャリア、404b 遊星歯車、404c リングギア、404d 太陽歯車、405 二次増速機、405a 歯車、405d 歯車、406a 潤滑油貯留槽、406b 潤滑油、L 厚さ、S1 準備工程、S2 焼き入れ工程、S21 加熱工程、S22 冷却工程、S3 焼き戻し工程、S4 後処理工程。

Claims (10)

  1. 回転駆動される軸を静止部材に対して回転可能に支持する自動車電装補機用転がり軸受であって、
    内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間に配置される転動体とを備え、
    前記内輪、前記外輪及び前記転動体は、鋼製であり、
    前記内輪及び前記外輪の軌道面並びに前記転動体の転動面の少なくともいずれかには、焼入硬化層が設けられ、
    前記焼入硬化層における水素拡散係数は、2.6×10−11/sより小さく、
    前記焼入硬化層は、大きさが3μm以上の酸化物系介在物と、硫化マンガンとを含有し、
    少なくとも一部が前記硫化マンガンに覆われる前記酸化物系介在物の個数は、前記酸化物系介在物の全個数の40パーセントを超える、自動車電装補機用転がり軸受。
  2. 前記焼入硬化層は、窒素を含有する、請求項1に記載の自動車電装補機用転がり軸受。
  3. 前記焼入硬化層中における窒素濃度は、0.05重量パーセント以上0.6重量パーセント以下である、請求項2に記載の自動車電装補機用転がり軸受。
  4. 前記焼入硬化層中におけるオーステナイト相の体積比率は10パーセント以上40パーセント以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の自動車電装補機用転がり軸受。
  5. 前記焼入硬化層の硬度は、58HRC以上64HRC以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の自動車電装補機用転がり軸受。
  6. 入力軸の回転を遊星歯車を用いて増減速させて出力軸に伝える増減速機において油潤滑されながら前記遊星歯車を回転可能に支持する増減速機用転がり軸受であって、
    内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪の間に配置される転動体とを備え、
    前記内輪、前記外輪及び前記転動体は、鋼製であり、
    前記内輪及び前記外輪の軌道面並びに前記転動体の転動面の少なくともいずれかには、焼入硬化層が設けられ、
    前記焼入硬化層における水素拡散係数は、2.6×10−11/sより小さく、
    前記焼入硬化層は、大きさが3μm以上の酸化物系介在物と、硫化マンガンとを含有し、
    少なくとも一部が前記硫化マンガンに覆われる前記酸化物系介在物の個数は、前記酸化物系介在物の全個数の40パーセントを超える、増減速機用転がり軸受。
  7. 前記焼入硬化層は、窒素を含有する、請求項6に記載の増減速機用転がり軸受。
  8. 前記焼入硬化層中における窒素濃度は、0.05重量パーセント以上0.6重量パーセント以下である、請求項7に記載の増減速機用転がり軸受。
  9. 前記焼入硬化層中におけるオーステナイト相の体積比率は10パーセント以上40パーセント以下である、請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の増減速機用転がり軸受。
  10. 前記焼入硬化層の硬度は、58HRC以上64HRC以下である、請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の増減速機用転がり軸受。
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