A.第1実施形態:
A−1.点火プラグの構成:
図1は本実施形態の点火プラグ100の断面図である。図1の一点破線は、点火プラグ100の軸線CO(軸線COとも呼ぶ)を示している。軸線COと平行な方向(図1の上下方向)を軸線方向とも呼ぶ。軸線COを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、軸線COを中心とする円の周方向を、単に「周方向」とも呼ぶ。図1における下方向を先端方向FDと呼び、上方向を後端方向BDとも呼ぶ。図1における下側を、点火プラグ100の先端側と呼び、図1における上側を点火プラグ100の後端側と呼ぶ。
点火プラグ100は、詳細は後述する中心電極20と接地電極30との間に形成される間隙(火花ギャップ)に、火花放電を発生させる。点火プラグ100は、内燃機関に取り付けられ、内燃機関の燃焼室内の燃料ガスに着火するために用いられる。点火プラグ100は、絶縁体としての絶縁体10と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50と、を備える。
絶縁体10は、アルミナ等を焼成して形成されている。絶縁体10は、軸線方向に沿って延び、絶縁体10を貫通する貫通孔である軸孔12を有する略円筒形状の部材である。絶縁体10は、鍔部19と、後端側胴部18と、先端側胴部17と、段部15と、脚長部13と、を備えている。後端側胴部18は、鍔部19より後端側に位置し、鍔部19の外径より小さな外径を有している。先端側胴部17は、鍔部19より先端側に位置し、鍔部19の外径より小さな外径を有している。脚長部13は、先端側胴部17より先端側に位置し、先端側胴部17の外径よりも小さな外径を有している。脚長部13は、点火プラグ100が内燃機関(図示せず)に取り付けられた際には、その燃焼室に曝される。段部15は、脚長部13と先端側胴部17との間に形成されている。
主体金具50は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼材)で形成され、内燃機関のエンジンヘッド(図示省略)に点火プラグ100を固定するための円筒状の金具である。主体金具50は、軸線COに沿って貫通する貫通孔59が形成されている。主体金具50は、絶縁体10の径方向の周囲(すなわち、外周)に配置される。すなわち、主体金具50の貫通孔59内に、絶縁体10が挿入・保持されている。絶縁体10の先端は、主体金具50の先端より先端側に突出している。絶縁体10の後端は、主体金具50の後端より後端側に突出している。
主体金具50は、点火プラグレンチが係合する六角柱形状の工具係合部51と、内燃機関に取り付けるための取付ネジ部52と、工具係合部51と取付ネジ部52との間に形成された鍔状の座部54と、を備えている。取付ネジ部52の呼び径は、例えば、M8(8mm(ミリメートル))、M10、M12、M14、M18のいずれかとされている。
主体金具50の取付ネジ部52と座部54との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌挿されている。ガスケット5は、点火プラグ100が内燃機関に取り付けられた際に、点火プラグ100と内燃機関(エンジンヘッド)との隙間を封止する。
主体金具50は、さらに、工具係合部51の後端側に設けられた薄肉の加締部53と、座部54と工具係合部51との間に設けられた薄肉の圧縮変形部58と、を備えている。主体金具50における工具係合部51から加締部53に至る部位の内周面と、絶縁体10の後端側胴部18の外周面との間に形成される環状の領域には、環状のリング部材6、7が配置されている。当該領域における2つのリング部材6、7の間には、タルク(滑石)9の粉末が充填されている。加締部53の後端は、径方向内側に折り曲げられて、絶縁体10の外周面に固定されている。主体金具50の圧縮変形部58は、製造時において、絶縁体10の外周面に固定された加締部53が先端側に押圧されることにより、圧縮変形する。圧縮変形部58の圧縮変形によって、リング部材6、7およびタルク9を介し、絶縁体10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。これにより、金属製の環状の板パッキン8を介して、主体金具50の取付ネジ部52の内周に形成された段部56(金具側段部)によって、絶縁体10の段部15(絶縁体側段部)が押圧される。この結果、内燃機関の燃焼室内のガスが、主体金具50と絶縁体10との隙間から外部に漏れることが、板パッキン8によって防止される。
中心電極20は、軸線方向に延びる棒状の中心電極本体21と、中心電極チップ29と、を備えている。中心電極本体21は、絶縁体10の軸孔12の内部の先端側の部分に保持されている。中心電極本体21は、電極母材21Aと、電極母材21Aの内部に埋設された芯部21Bと、を含む構造を有する。電極母材21Aは、例えば、ニッケルまたはニッケルを主成分とする合金(例えば、NCF600、NCF601)を用いて形成されている。芯部21Bは、電極母材21Aを形成する合金よりも熱伝導性に優れる銅または銅を主成分とする合金、本実施形態では、銅で形成されている。
また、中心電極本体21は、軸線方向の所定の位置に設けられた鍔部24(フランジ部とも呼ぶ。)と、鍔部24よりも後端側の部分である頭部23(電極頭部)と、鍔部24よりも先端側の部分である脚部25(電極脚部)と、を備えている。鍔部24は、絶縁体10の段部16に支持されている。脚部25の先端部分、すなわち、中心電極本体21の先端は、絶縁体10の先端より先端側に突出している。
中心電極チップ29は、略円柱形状を有する部材であり、中心電極本体21の先端(脚部25の先端)に、例えば、レーザ溶接を用いて、接合されている。中心電極チップ29の先端面は、後述する接地電極チップ39との間で火花ギャップを形成する第1放電面295である。中心電極チップ29は、高融点の貴金属を主成分とする材料で形成されている。中心電極チップ29は、例えば、イリジウム(Ir)やIrなどの貴金属、または、該貴金属を主成分とする合金を用いて形成された貴金属チップである。
接地電極30は、主体金具50の先端に接合された接地電極本体31と、四角柱形状の接地電極チップ39と、を備えている。接地電極本体31は、断面が四角形の棒状体である。接地電極本体31の一端は、自由端311であり、他端は、接続端312である。接続端312は、主体金具50の先端面50Aに、例えば、抵抗溶接によって、接合されている。これによって、主体金具50と接地電極本体31とは、電気的に、かつ、物理的に接続される。接地電極本体31は、自由端311を含み、軸線COと垂直な方向に伸びる先端部31aと、接続端312を含み、軸線方向に伸びる後端部31bと、を備えている。先端部31aと後端部31bとの間は、湾曲している部分である。
接地電極本体31は、例えば、ニッケルまたはニッケルを主成分とする合金(例えば、NCF600、NCF601)を用いて形成されている。接地電極本体31は、耐腐食性の高い金属(例えば、ニッケル合金)で形成された母材と、熱伝導性が高い金属(例えば、銅)を用いて形成され、母材に埋設された芯部と、を含む2層構造を有しても良い。接地電極チップ39は、中心電極チップ29と同様の合金を用いて形成された貴金属チップとすることができる。ただし、好適には、イリジウム(Ir)やIrを主成分とする合金、または、Ptを主成分としIrを含む合金を用いて形成された貴金属チップである。
端子金具40は、軸線方向に延びる棒状の部材である。端子金具40は、導電性の金属材料(例えば、低炭素鋼)で形成され、端子金具40の表面には、防食のための金属層(例えば、Ni層)がめっきなどによって形成されている。端子金具40は、軸線方向の所定位置に形成された鍔部42(端子顎部)と、鍔部42より後端側に位置するキャップ装着部41と、鍔部42より先端側の脚部43(端子脚部)と、を備えている。端子金具40のキャップ装着部41は、絶縁体10より後端側に露出している。端子金具40の脚部43は、絶縁体10の軸孔12に挿入されている。キャップ装着部41には、高圧ケーブル(図示外)が接続されたプラグキャップが装着され、火花放電を発生するための高電圧が印加される。
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40の先端(脚部43の先端)と中心電極20の後端(頭部23の後端)との間には、火花発生時の電波ノイズを低減するための抵抗体70が配置されている。抵抗体70は、例えば、主成分であるガラス粒子と、ガラス以外のセラミック粒子と、導電性材料と、を含む組成物で形成されている。軸孔12内において、抵抗体70と中心電極20との隙間は、導電性シール60によって埋められている。抵抗体70と端子金具40との隙間は、導電性シール80によって埋められている。導電性シール60、80は、例えば、B2O3−SiO2系等のガラス粒子と金属粒子(Cu、Feなど)とを含む組成物で形成されている。
A−2. 接地電極30の接地電極チップ39近傍の構成:
接地電極30の接地電極チップ39近傍の構成について、さらに、詳細に説明する。図2は、第1実施形態の接地電極30の接地電極チップ39近傍の構成を示す図である。図2(A)には、接地電極チップ39の第2放電面395の近傍を、軸線方向に沿って後端方向BDから先端方向FDに向かって見た図が示されている。図2(B)には、点火プラグ100の先端近傍を特定面で切断した断面CFが示されている。図2(A)の一点破線は、図2(A)の断面CFを示している。
接地電極チップ39の後端面は、中心電極チップ29の第1放電面295(図1)と対向する第2放電面395である。図2(B)の断面CFは、第2放電面395の重心GCを通り、かつ、第2放電面395と垂直で、かつ、棒状の接地電極本体31の軸線と平行な断面である。本実施形態では、第2放電面395の重心GCを通り、かつ、第2放電面395と垂直な線は、点火プラグ100の軸線COと一致する。
第2放電面395の重心GCから、第2放電面395に沿って自由端311に向かう方向、すなわち、図2(A)、(B)の左方向を、第1方向D1とする。第2放電面395の重心GCから、第2放電面395に沿って自由端311から離れる方向、すなわち、第1方向D1の反対方向を、第2方向D2とする。
接地電極本体31の自由端311(自由端面)と連接する4つの側面のうち、第1放電面295と対向する側面を、内側面315とする。接地電極本体31の4つの側面のうち、内側面315と連接する2個の側面、すなわち、図2(A)の上下方向に位置する側面を、側面313、314とする。そして、第2放電面395の重心GCから、側面313に向かう方向、すなわち、図2(A)の下方向を、第3方向D3とし、第3方向D3の反対方向を、第4方向D4とする。
接地電極チップ39は、四角柱状の部材である。すなわち、接地電極チップ39は、四角形の第2放電面395と、第2放電面395に連接する4つの側面391〜394とを備えている。4つの側面391〜394のうち、側面391は、自由端311の側(第1方向D1)を向いており、側面392は、接続端312の側(第2方向D2)を向いている。接地電極チップ39は、該四角形の第2放電面395の一辺の長さW、すなわち、接地電極チップ39の第1方向D1の長さ、および、第3方向D3の長さは、例えば、2.0mm以上であり、好適には2.5mm以上である。接地電極チップ39の軸線方向の平均の平均厚さ(軸線方向の長さの平均)は、例えば、0.2mm〜1.0mmである。
接地電極チップ39は、接地電極本体31の先端部31aにおいて、内側面315に沿って配置されている。接地電極チップ39は、接地電極本体31に対して、レーザ溶接によって接合されている。このために、接地電極チップ39と接地電極本体31との間には、レーザ溶接によって形成された溶融部35が配置されている。溶融部35は、溶接前の接地電極チップ39の一部分と、接地電極本体31の一部分と、が溶融・凝固した部分である。このために、溶融部35は、接地電極チップ39の成分と、接地電極本体31の成分と、を含んでいる。接地電極チップ39は、溶融部35を介して、接地電極本体31の内側面315に接合されている、と言うことができる。
図2(A)から解るように、軸線方向に沿って見た溶融部35の形状は、軸線方向に沿って見た接地電極チップ39の形状よりわずかに大きな略相似形(本実施形態では、四角形)である。そして、溶融部35の4つの方向D1〜D4の側面351〜354は、接地電極チップ39の対応する側面391〜394より径方向の外側に位置しており、外部に露出している。
溶融部35の後端方向BD側の面355(図2(B))は、接地電極チップ39の第2放電面395の反対側の面(先端方向FDの面)の全体と接触している。つまり、接地電極チップ39の第2放電面395の反対側の面(先端方向FDの面)の全てが、接地電極本体31に溶接されている。溶融部35の先端方向FD側の面356(図2(B))は、全体が接地電極本体31に接触している。なお、後端方向BDは、第2放電面395と垂直な方向のうち、接地電極本体31から接地電極チップ39に向かう特定方向である、ということができる。
図2(B)に示すように、側面351〜354近傍における溶融部35の厚さ(軸線方向の長さ)は、中央部(軸線COと交差する部分)よりも薄くなっている。
溶融部35は、接地電極チップ39の側面391〜394のうちの先端方向FD側の部分を覆う溶融ダレ35nを有している。溶融ダレ35nは、接地電極チップ39の全周に亘って形成されている。
図3、図4は、第1実施形態の接地電極チップ39の近傍の外観図である。図3(A)は、溶融部35の近傍を、第1方向D1側から第2方向D2に向かって見た図であり、図3(B)は、溶融部35の近傍を、第2方向D2側から第1方向D1に向かって見た図である。図4(A)は、溶融部35の近傍を、第3方向D3側から第4方向D4に向かって見た図であり、図4(B)は、溶融部35の近傍を、第4方向D4側から第3方向D3に向かって見た図である。
図3(A)に示すように、接地電極チップ39の側面391は、後端方向BDに沿う2つの辺部SDa、SDbを有する。図3(A)において、破線CL1は、2つの辺部SDa、SDbの中間の位置、換言すれば、側面391の第3方向D3の中心の位置を示している。側面391における溶融ダレ35nの後端方向BDの端(後端)は、2つの辺部SDa、SDbの中間の位置CL1において最も第2放電面395に近く、2つの辺部SDa、SDbに近づくにつれて第2放電面395から遠ざかる。
図3(A)の側面391において、辺部SDaにおける溶融ダレ35nの後端DTaから第2放電面395の角部AGaまでの長さをL1とする。辺部SDbにおける溶融ダレ35nの後端DTbから第2放電面395の角部AGbまでの長さをL2とする。2つの辺部SDa、SDbの中間の位置CL1における溶融ダレ35nの後端DT1から第2放電面395までの長さをL3とする。このとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす。
さらに、側面391において、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395までの後端方向BDの長さをL4とするとき、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。
同様に、図3(B)に示すように、接地電極チップ39の側面392は、後端方向BDに沿う2つの辺部SDc、SDdを有する。図3(B)において、破線CL2は、2つの辺部SDc、SDdの中間の位置を示している。側面392における溶融ダレ35nの後端方向BDの端(後端)は、中間の位置CL2において最も第2放電面395に近く、2つの辺部SDa、SDbに近づくにつれて第2放電面395から遠ざかる。
図3(B)の側面392において、辺部SDcにおける溶融ダレ35nの後端DTcから第2放電面395の角部AGcまでの長さをL1とする。辺部SDdにおける溶融ダレ35nの後端DTdから第2放電面395の角部AGdまでの長さをL2とする。中間の位置CL2における溶融ダレ35nの後端DT2から第2放電面395までの長さをL3とする。このとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす。
さらに、側面392において、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395までの後端方向BDの長さをL4とするとき、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。
同様に、図4(A)に示すように、接地電極チップ39の側面393は、後端方向BDに沿う2つの辺部SDc、SDbを有する。図4(A)において、破線CL3は、2つの辺部SDc、SDbの中間の位置を示している。側面393における溶融ダレ35nの後端は、中間の位置CL3において最も第2放電面395に近く、2つの辺部SDc、SDbに近づくにつれて第2放電面395から遠ざかる。
図4(A)の側面393において、辺部SDcにおける溶融ダレ35nの後端DTcから第2放電面395の角部AGcまでの長さをL1とする。辺部SDbにおける溶融ダレ35nの後端DTbから第2放電面395の角部AGbまでの長さをL2とする。中間の位置CL3における溶融ダレ35nの後端DT3から第2放電面395までの長さをL3とする。このとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす。
さらに、側面393において、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395までの後端方向BDの長さをL4とするとき、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。
同様に、図4(B)に示すように、接地電極チップ39の側面394は、後端方向BDに沿う2つの辺部SDa、SDdを有する。図4(B)において、破線CL4は、2つの辺部SDa、SDdの中間の位置を示している。側面394における溶融ダレ35nの後端は、中間の位置CL4において最も第2放電面395に近く、2つの辺部SDa、SDdに近づくにつれて第2放電面395から遠ざかる。
図4(B)の側面393において、辺部SDaにおける溶融ダレ35nの後端DTaから第2放電面395の角部AGaまでの長さをL1とする。辺部SDdにおける溶融ダレ35nの後端DTdから第2放電面395の角部AGdまでの長さをL2とする。中間の位置CL4における溶融ダレ35nの後端DT4から第2放電面395までの長さをL3とする。このとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす。
さらに、側面394において、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395までの後端方向BDの長さをL4とするとき、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。
A−3:製造方法
点火プラグ100の製造方法について、接地電極30の製造方法を中心に説明する。図5は、接地電極30の製造方法のフローチャートである。図6、図7は、接地電極30の製造方法の説明図である。先ず、曲げられる前の棒状の接地電極本体31が準備される。そして、接地電極本体31に溶接される前の接地電極チップ39が準備される。
S10では、接地電極本体31の内側面315に、図6(A)、図7に示すように、溶接前の四角柱状の接地電極チップ39が配置される。この状態では、接地電極チップ39の先端側の面39Sと、内側面315と、が互いに接触する。
S20では、押さえ部材500によって、接地電極本体31に対して、接地電極チップ39が固定される。具体的には、図7に示すように、押さえ部材500によって、接地電極チップ39が、第2放電面395側から先端方向FD(図7の下方向)に押さえられる。これによって、接地電極チップ39の先端側の面39Sと、接地電極本体31の内側面315と、を互いに接触させた状態で、接地電極チップ39と、接地電極本体31と、が固定される。この先端側の面39Sと接地電極本体31の内側面315との接触面、すなわち、接地電極チップ39と接地電極本体31との間の接合すべき面を、チップ接合面BSとも呼ぶ。
S30では、レーザ溶接のためのレーザを走査・出力して、チップ接合面BSのうち、第4方向D4側の約半分が溶接される。なお、本実施形態では、レーザとしてファイバレーザが用いられる。ファイバレーザは、例えば、YAGレーザと比較して、集光性が高いために、形成できる溶融部35の形状の自由度が高いので、図2に示すように、厚さが比較的薄く、かつ、軸線と垂直な方向(例えば、第1方向D1)の長さが比較的長い形状の溶融部35を形成できる。
図6(A)のレーザLZ1は、S30の溶接工程(第1溶接工程とも呼ぶ)の開始時点におけるレーザを示し、レーザLZ2は、第1溶接工程の終了時点におけるレーザを示している。レーザは、図6(A)に示すように、側面394より第4方向D4側から第3方向D3に照射される。図6(A)、図7の点P1は、第1溶接工程の開始時点におけるレーザの照射位置を示し、点P2は、第1溶接工程の終了時点におけるレーザの照射位置を示している。第1溶接工程では、側面394におけるチップ接合面BSより僅かに後端方向BD側の部位を、位置P1から位置P2まで第1方向D1に照射位置を移動しながら、レーザが連続して照射される。位置P1から位置P2までの間で、照射位置の移動速度およびレーザの照射のエネルギーは、接地電極チップ39の大きさや融点に応じて適宜に調整される。
図7に示すように、接地電極チップ39の側面394のうち、位置P1よりも第2方向D2側の範囲R1と、位置P2よりも第1方向D1側の範囲R2には、レーザは照射されない。範囲R1、R2では、位置P1から位置P2までに範囲に照射されたレーザの熱エネルギーによって溶融部35が形成される。このように、レーザは照射されない範囲R1、R2が設けられることで、側面391、392近傍における溶融部35の厚さは、中央部よりも薄く形成される。
図6(B)において、ハッチングされた溶融部35Aは、第1溶接工程にて形成された溶融部である。
第1溶接工程後のS40では、再び、レーザを走査・出力して、チップ接合面BSのうちの残りの約半分、すなわち、第3方向D3側の約半分が溶接される。
図6(B)のレーザLZ3は、S40の溶接工程(第2溶接工程とも呼ぶ)の開始時点におけるレーザを示し、レーザLZ4は、第2溶接工程の終了時点におけるレーザを示している。レーザは、図6(B)に示すように、側面393より第3方向D3側から第4方向D4に照射される。図6(B)の点P3は、第2溶接工程の開始時点におけるレーザの照射位置を示し、点P4は、第2溶接工程の終了時点におけるレーザの照射位置を示している。第2溶接工程では、側面393におけるチップ接合面BSより僅かに後端方向BD側の部位を、位置P3から位置P4まで第2方向D2に照射位置を移動しながら、レーザが連続して照射される。位置P3から位置P4までの間で、照射位置の移動速度およびレーザの照射のエネルギーは、接地電極チップ39の大きさや融点に応じて適宜に調整される。
第2溶接工程では、第1溶接工程と同様に、接地電極チップ39の側面393のうち、位置P3よりも第1方向D1側の範囲と、位置P4よりも第2方向D2側の範囲には、レーザは照射されない。レーザは照射されない範囲が設けられることで、側面391、392近傍における溶融部35の厚さは、中央部よりも薄く形成される。
溶融部35のうち、第4方向D4の中心部分(例えば、図2(A)や図6(B)の断面CFが位置する部分)は、第1溶接工程と第2溶接工程との両方にて形成される。このために、第4方向D4の中心部分の溶融部35の厚さは、側面394、393の近傍よりも厚くなる。
以上説明した第1溶接工程と第2溶接工程との2回の工程によって、図2〜図4を参照して説明した溶融部35が形成され、接地電極本体31と接地電極チップ39との溶接が完了する。
なお、接地電極本体31と接地電極チップ39との溶接は、例えば、主体金具50に棒状の接地電極本体31が溶接された後に、行われても良い。また、接地電極本体31と接地電極チップ39とが溶接された後に、主体金具50に接地電極本体31が溶接されても良い。また、レーザは、第3方向D3と第4方向D4とに代えて、第1方向D1側と第2方向D2側とから照射されてもよい。
さらに、絶縁体10と中心電極20と導電性シール60と抵抗体70と導電性シール80と端子金具40とを有する組立体が、公知の方法で作成される。例えば、中心電極20、導電性シール60の材料、抵抗体70の材料、導電性シール80の材料を、絶縁体10の軸孔12に、後端方向BD側から、この順番に挿入する。そして、絶縁体10を加熱した状態で端子金具40を軸孔12に後端方向BD側から挿入することによって、組立体が製造される。
その後、主体金具50に組立体が固定される。具体的には、主体金具50の貫通孔59内に、組立体と、タルク9と、リング部材6、7とが配置される。絶縁体10の段部15と主体金具50の段部56との間には、板パッキン8が介在される。そして、主体金具50の加締部53を内側に折り曲げるように加締めることによって、主体金具50と絶縁体10とが組み付けられる。そして、棒状の接地電極30が曲げられて、中心電極チップ29と接地電極チップ39との間のギャップが形成される。以上により、点火プラグ100が完成する。
以上説明した第1実施形態の点火プラグ100によれば、上述したように、接地電極チップ39の側面(例えば、側面391)において、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす(図3(A))。四角形状の第2放電面395の角部(例えば、AGa、AGb(図3(A))は、電界が集中するので、該角部において、放電が発生しやすい。接地電極チップ39の側面391の辺部SDa、SDbにおいて、溶融ダレ35nと角部AGa、AGbが過度に近い場合には、溶融ダレ35nが放電に曝されやすい。溶融ダレ35nが放電に曝されると、溶融ダレ35nが損傷を受けて溶融部35が劣化(例えば、溶融部35の抉れ)し得る。溶融部35が劣化すると溶融部35による接地電極チップ39の保持力が低下する。一方で、溶融ダレ35nが第2放電面395から過度に離れている場合には、溶融ダレ35nの軸線方向の長さを十分に確保できないので溶融ダレ35nによる接地電極チップ39の保持力が低下し得る。本実施形態によれば、接地電極チップ39の側面391において、L3<L1、かつ、L3<L2を満たすので、辺部SDa、SDbにおいて溶融ダレ35nが放電に曝されることを抑制しつつ、2つの辺部SDa、SDbの中間の位置CL1において溶融ダレ35nの軸線方向の長さを確保できる。この結果、溶融部35の損傷を抑制して接地電極チップ39を保持する保持力を向上できる。したがって、例えば、接地電極チップ39の剥離や脱落を抑制できる。ここで、接地電極チップ39の第1方向D1の長さ、および、第3方向D3の長さが2.5mm以上であると、接地電極チップ39と溶融ダレ35nとの接触面積が十分確保されて、保持力をより向上できる。
さらに、本実施形態によれば、接地電極チップ39の4つの側面391〜394のそれぞれにおいて、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす(図3、図4)。この結果、四角柱である接地電極チップ39の4つの側面391のそれぞれにおいて、辺部SDa、SDb、SDc、SDdにおいて溶融ダレ35nが放電に曝されることを抑制しつつ、4つの側面のそれぞれの2つの辺部の中間の位置CL1〜CL4において溶融ダレ35nの軸線方向の長さを確保できる。この結果、溶融部35の損傷をさらに抑制して接地電極チップ39を保持する保持力をさらに向上できる。
さらに、本実施形態によれば、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395までの軸線方向の長さをL4とするとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす側面(例えば、側面391)において、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)を満たす(図3(A))。この結果、例えば、辺部SDaにおいてL1をさらに十分に確保することができるので溶融ダレ35nが放電に曝されることをさらに抑制することができる。また、側面391における2つの辺部SDa、SDbの中間の位置CL1においてL3をさらに十分に確保することができるので溶融ダレ35nの軸線方向の長さをさらに確保できる。したがって、溶融部35の損傷を抑制して接地電極チップ39を保持する保持力をさらに向上できる。
さらに、本実施形態によれば、接地電極チップ39の4つの側面391〜394のそれぞれにおいて、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)を満たす(図3、図4)。この結果、4つの側面391〜394のそれぞれの一方の辺部において溶融ダレ35nが放電に曝されることをさらに抑制することができる。また、4つの側面のそれぞれの中間の位置CL1〜CL4において溶融ダレ35nの軸線方向の長さをさらに確保できる。したがって、溶融部35の損傷を抑制して接地電極チップ39を保持する保持力をさらに向上できる。
さらに、本実施形態によれば、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす側面(例えば、側面391)において、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす(図3(A))。この結果、辺部SDbにおいても溶融ダレ35nが放電に曝されることをさらに抑制することができる。
さらに、本実施形態によれば、4つの側面391〜394のうち、接地電極本体31の接続端312の側を向く側面392を除く3つの側面391、393、394のそれぞれにおいて、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす(図3、図4)。接続端312の側では、燃焼室内のガスの流れが接地電極本体31(特に後端部31b)によって妨げられるので、接続端312の側を向く側面392には、放電が吹き流れにくい。これに対して、他の3つの側面391、393、394には、放電が吹き流れやすい。本実施形態によれば、放電が吹き流れやすい3つの側面391、393、394の辺部SDa、SDb、SDc、SDdにおいて、溶融ダレ35nが放電に曝されることを効果的に抑制しつつ、該3つの側面391、393、394のそれぞれの2つの辺部の中間の位置CL1、CL3、CL4において溶融ダレ35nの軸線方向の長さをさらに確保できる。
さらに、本実施形態によれば、さらに、接続端312の側を向く側面392においてもL3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす(図3(B))。すなわち、4つの側面391〜394のそれぞれにおいて、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。この結果、放電が吹き流れやすい側面391、393、394だけでなく、側面392の辺部SDc、SDdにおいても溶融ダレ35nが放電に曝されることを抑制しつつ、該側面392の2つの辺部SDc、SDdの中間の位置CL2においても溶融ダレ35nの軸線方向の長さをさらに確保できる。
B.第2実施形態
図8は、第2実施形態の接地電極30Bの接地電極チップ39B近傍の構成を示す図である。図8には、図2(A)と同様に、接地電極チップ39B近傍を軸線方向に沿って後端方向BDから先端方向FDに向かって見た図が示されている。
図8に示すように、第2実施例の接地電極チップ39Bの第2放電面395Bは、4本の長辺と、4本の長辺のうちの2本の間にそれぞれ位置する4本の短辺と、を有する八角形である。そして、接地電極チップ39Bは、第2放電面395Bの4本の長辺に対応する4つの側面391B〜394Bと、4本の短辺に対応する4つの側面396B〜399Bと、を有する八角柱である。4本の長辺に対応する4つの側面391B〜394Bのうち、側面391Bは、自由端311の側(第1方向D1)を向いており、側面392Bは、接続端312の側(第2方向D2)を向いている。接地電極チップ39Bは、第1実施形態の接地電極チップ39と同様に、溶融部35Bを介して、接地電極本体31の内側面315に接合されている。
図9、図10は、第2実施形態の接地電極チップ39Bの近傍の外観図である。図9(A)は、溶融部35Bの近傍を、第1方向D1側から第2方向D2に向かって見た図であり、図9(B)は、溶融部35Bの近傍を、第2方向D2側から第1方向D1に向かって見た図である。図10(A)は、溶融部35Bの近傍を、第3方向D3側から第4方向D4に向かって見た図であり、図10(B)は、溶融部35の近傍を、第4方向D4側から第3方向D3に向かって見た図である。
図9(A)に示すように、接地電極チップ39Bの側面391Bは、後端方向BDに沿う2つの辺部SDf、SDgを有する。図9(A)において、破線CL1Bは、2つの辺部SDf、SDgの中間の位置を示している。側面391Bにおける溶融ダレ35nBの後端端は、位置CL1Bにおいて最も第2放電面395Bに近く、2つの辺部SDf、SDgに近づくにつれて第2放電面395Bから遠ざかる。
図9(A)の側面391Bにおいて、辺部SDfにおける溶融ダレ35nBの後端DTfから第2放電面395Bの角部AGfまでの長さをL1とする。辺部SDgにおける溶融ダレ35nBの後端DTgから第2放電面395Bの角部AGgまでの長さをL2とする。位置CL1Bにおける溶融ダレ35nBの後端DT1Bから第2放電面395Bまでの長さをL3とする。このとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす。
さらに、側面391Bにおいて、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395Bまでの後端方向BDの長さをL4とするとき、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。
同様に、図9(B)に示すように、接地電極チップ39の側面392Bは、後端方向BDに沿う2つの辺部SDj、SDkを有する。図9(B)において、破線CL2Bは、2つの辺部SDj、SDkの中間の位置を示している。側面392Bにおける溶融ダレ35nBの後端方向BDの端(後端)は、中間の位置CL2において最も第2放電面395Bに近く、2つの辺部SDj、SDkに近づくにつれて第2放電面395Bから遠ざかる。
図9(B)の側面392Bにおいて、辺部SDjにおける溶融ダレ35nBの後端DTjから第2放電面395Bの角部AGjまでの長さをL1とする。辺部SDkにおける溶融ダレ35nBの後端DTkから第2放電面395Bの角部AGkまでの長さをL2とする。中間の位置CL2Bにおける溶融ダレ35nBの後端DT2Bから第2放電面395Bまでの長さをL3とする。このとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす。
さらに、側面392Bにおいて、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395Bまでの後端方向BDの長さをL4とするとき、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。
同様に、図10(A)に示すように、接地電極チップ39の側面393Bは、後端方向BDに沿う2つの辺部SDh、SDiを有する。図10(A)において、破線CL3Bは、2つの辺部SDh、SDiの中間の位置を示している。側面393Bにおける溶融ダレ35nBの後端は、中間の位置CL3Bにおいて最も第2放電面395Bに近く、2つの辺部SDh、SDiに近づくにつれて第2放電面395Bから遠ざかる。
図10(A)の側面393Bにおいて、辺部SDiにおける溶融ダレ35nBの後端DTiから第2放電面395Bの角部AGiまでの長さをL1とする。辺部SDhにおける溶融ダレ35nBの後端DThから第2放電面395Bの角部AGhまでの長さをL2とする。中間の位置CL3Bにおける溶融ダレ35nBの後端DT3Bから第2放電面395Bまでの長さをL3とする。このとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす。
さらに、側面393Bにおいて、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395Bまでの後端方向BDの長さをL4とするとき、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。
同様に、図10(B)に示すように、接地電極チップ39の側面394Bは、後端方向BDに沿う2つの辺部SDe、SDlを有する。図10(B)において、破線CL4Bは、2つの辺部SDe、SDlの中間の位置を示している。側面394Bにおける溶融ダレ35nBの後端は、中間の位置CL4Bにおいて最も第2放電面395Bに近く、2つの辺部SDe、SDlに近づくにつれて第2放電面395Bから遠ざかる。
図10(B)の側面393Bにおいて、辺部SDeにおける溶融ダレ35nBの後端DTeから第2放電面395Bの角部AGeまでの長さをL1とする。辺部SDlにおける溶融ダレ35nBの後端DTlから第2放電面395Bの角部AGlまでの長さをL2とする。中間の位置CL4Bにおける溶融ダレ35nBの後端DT4Bから第2放電面395Bまでの長さをL3とする。このとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす。
さらに、側面394Bにおいて、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395Bまでの後端方向BDの長さをL4とするとき、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。
第2実施形態の点火プラグのその他の構成は、図1、図2を参照して説明した第1実施形態の点火プラグ100の構成と同じであるので、その説明を省略する。図8〜図10において第1実施例と同じ構成を有する接地電極本体31については、第1実施形態の接地電極本体31と同一の符号を付している。
第2実施形態の点火プラグの製造方法は、図5〜図7を参照して説明した第1実施形態の点火プラグ100の製造方法と同じである。例えば、接地電極本体31への接地電極チップ39Bの接合(溶融部35の形成)は、第1実施形態と同様に、第3方向D3と第4方向D4の両方から、あるいは、第1方向D1と第2方向D2の両方からレーザ溶接を行うことによって行われる。
以上説明した第2実施形態の点火プラグによれば、八角形の第2放電面395Bの長辺に対応する側面(例えば、側面391B)において、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす(図9(A))。この結果、第1実施形態の点火プラグ100と同様に、溶融部35Bの損傷を抑制して接地電極チップ39Bを保持する保持力を向上できる。したがって、例えば、接地電極チップ39Bの剥離や脱落を抑制できる。ここで、接地電極チップ39Bの第1方向D1の長さ、および、第3方向D3の長さが2.5mm以上であると、接地電極チップ39Bと溶融ダレ35nBとの接触面積が十分確保されて、保持力をより向上できる。
さらに、本実施形態によれば、八角形の第2放電面395Bの4本の長辺に対応する4つの側面391B〜394Bのそれぞれにおいて、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす。この結果、4つの側面391B〜394Bのそれぞれの辺部SDe、SDf、SDg、SDh、SDi、SDj、SDk、SDlにおいて溶融ダレ35nBが放電に曝されることを抑制しつつ、4つの側面のそれぞれの2つの辺部の中間の位置CL1B〜CLBにおいて溶融ダレ35nBの軸線方向の長さを確保できる。この結果、第1実施形態の点火プラグ100と同様に、溶融部35Bの損傷を抑制して接地電極チップ39Bを保持する保持力をさらに向上できる。
さらに、本実施形態によれば、接地電極本体31の内側面315から第2放電面395Bまでの軸線方向の長さをL4とするとき、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす側面(例えば、側面391B)において、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)を満たす(図9(A))。この結果、第1実施形態の点火プラグ100と同様に、溶融部35Bの損傷をさらに抑制して接地電極チップ39Bを保持する保持力をさらに向上できる。
さらに、本実施形態によれば、八角形の第2放電面395Bの4本の長辺に対応する4つの側面391B〜394Bのそれぞれにおいて、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)を満たす(図9、図10)。この結果、4つの側面391〜394Bのそれぞれの一方の辺部において溶融ダレ35nBが放電に曝されることをさらに抑制することができる。また、4つの側面のそれぞれの中間の位置CL1B〜CL4Bにおいて溶融ダレ35nBの軸線方向の長さをさらに確保できる。したがって、溶融部35Bの損傷を抑制して接地電極チップ39Bを保持する保持力をさらに向上できる。
さらに、本実施形態によれば、L3<L1、かつ、L3<L2を満たす側面(例えば、側面391)において、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす(図9(A))。この結果、例えば、辺部SDgにおいても溶融ダレ35nが放電に曝されることをさらに抑制することができる。
さらに、本実施形態によれば、八角形の第2放電面395Bの4本の長辺に対応する4つの側面391B〜394Bのうち、接地電極本体31の接続端312の側を向く側面392Bを除く3つの側面391B、393B、394Bのそれぞれにおいて、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす(図9、図10)。この結果、第1実施形態の点火プラグ100と同様に、放電が吹き流れやすい3つの側面391B、393B、394Bの辺部SDe、SDf、SDg、SDh、SDi、SDlにおいて、溶融ダレ35nBが放電に曝されることを効果的に抑制しつつ、該3つの側面のそれぞれの2つの辺部の中間の位置CL1B、CL3B、CL4Bにおいて溶融ダレ35nの軸線方向の長さをさらに確保できる。
さらに、本実施形態によれば、さらに、接続端312の側を向く側面392BにおいてもL3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす(図9(B))。すなわち、4つの側面391B〜394Bのそれぞれにおいて、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす。この結果、放電が吹き流れやすい側面391B、393B、394Bだけでなく、側面392Bの辺部SDj、SDkにおいても溶融ダレ35nBが放電に曝されることを抑制しつつ、該側面392Bの2つの辺部SDj、SDkの中間の位置CL2Bにおいても溶融ダレ35nBの軸線方向の長さをさらに確保できる。
B.変形例:
(1)上記第1実施形態の点火プラグ100において、接地電極本体31と接地電極チップ39との接合(溶融部35の形成)の上述した方法(図6、図7)は、一例であり、これに限られない。第2実施形態の点火プラグについても同様である。図11は、変形例における接地電極本体31と接地電極チップ39との接合の説明図である。
第1実施形態では、図5のS30の第1溶接工程において、位置P1から位置P2まで1回のレーザの照射が行われている。これに代えて、図11の変形例では、S30の第1溶接工程において、位置P1から位置P2までのレーザの照射と、位置P2から位置P1までのレーザの照射と、の2回のレーザの照射が行われる。S40の第2溶接工程については図示を省略するが、同様に、位置P3から位置P4までのレーザの照射と、位置P4から位置P3までのレーザの照射と、の2回のレーザの照射が行われる。
以上説明した変形例の方法でも、第1実施形態と同様に、第1方向D1および第4方向D4の中心部分の溶融部35の厚さを、側面391〜394の近傍よりも厚く形成することができる。この結果、側面391〜394のそれぞれにおいて、L3<L1、かつ、L3<L2や、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)を満たす溶融部35を形成できる。
(2)上記第1実施形態では、4つの側面391〜394のそれぞれでL3<L1、かつ、L3<L2が満たされている。これに限らず、4つの側面391〜394の少なくとも1つの側面でL3<L1、かつ、L3<L2が満たされていれば良い。例えば、4つの側面391〜394のうち、任意の3つの側面でL3<L1、かつ、L3<L2が満たされていても良く、任意の2つまたは1つの側面でL3<L1、かつ、L3<L2が満たされていても良い。第2実施形態の4つの長辺に対応する4つの側面391B〜394Bについても同様である。
(3)上記第1実施形態では、L3<L1、かつ、L3<L2が満たされている4つの側面391〜394のそれぞれで、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)が満たされる。これに限らず、L3<L1、かつ、L3<L2が満たされている1以上の側面の少なくとも1つの側面でL3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)が満たされていても良いし、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)だけが満たされていても良い。第2実施形態の4つの長辺に対応する4つの側面391B〜394Bについても同様である。
(4)上記各実施形態では、接地電極30、30Bの4つの側面391〜394、391B〜394Bについて説明した。これに限らず、例えば、中心電極チップが四角柱や八角柱などの角柱が用いられ、該中心電極チップと中心電極本体とが溶融部を介して接合される場合には、該中心電極チップの少なくとも1つの側面において、L3<L1、かつ、L3<L2や、L3<(L4/2)、かつ、L1>(L4/2)、かつ、L2>(L4/2)が満たされても良い。こうすれば、中心電極チップを中心電極本体に接合するための溶融部の損傷を抑制して中心電極チップを保持する保持力をさらに向上できる。
(5)上記実施形態の点火プラグ100の具体的な構成は、一例であり、適宜に変形され得る。例えば、接地電極チップ39は、五角柱形状などの他の形状を有してもよい。また、接地電極30、主体金具50、中心電極20、絶縁体10等の材質、寸法、形状等は、様々に変更可能である。例えば、主体金具50の材質は、亜鉛めっきまたはニッケルめっきされた低炭素鋼でも良いし、めっきがなされていない低炭素鋼でも良い。また、絶縁体10の材質は、アルミナ以外の様々な絶縁性セラミックスでもよい。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。