JP2020115091A - 照合電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】主に屋外に持ち出して野外測定に用いる照合電極を、従来より小型化し、長期間にわたって使用できるようにする。【解決手段】金属電極11と、金属電極11と接触する電解質水溶液をゲル化した固体状電解質13と、固体状電解質13を収容し先端が開放された収容体12と、収容体12の先端を密封し、湿潤環境で導通を維持する栓体14と、を有する照合電極10を用いる。【選択図】図1

Description

この発明は、電位測定の基準として用いる照合電極に関する。
野外に設置されている亜鉛めっき鋼管は、風雨に曝されて時間経過とともに劣化していく。また、地面に埋もれている部分も地面内部の酸性度や地下水の影響を受けて徐々に劣化していく。劣化したものは適宜交換していかなければならないが、地中内部の状況を地上から目視で確認することは極めて難しい。これに対して、鋼管と、鋼管から少しずつ離れた地点の地面との間の電位差を測定することで、地表からの深さが異なる箇所の鋼管表面の状態を測定する手法が知られている(例えば非特許文献1)。
この電位差を測定する際には、基準となる照合電極を地面に当てて行う。照合電極は電位が安定していることが必要であり、様々な種類のものが用いられている。屋外に携帯して用いる照合電極としては、銅/硫酸銅水溶液の照合電極が用いられることが多い。図5(a)にその照合電極10aの形態例を示す。銅製の金属電極11が硫酸銅水溶液13aに浸漬され、収容体12aに収容されている。収容体12aの先端は石膏の栓体14で密封されている。硫酸銅水溶液13aは僅かずつ染み出して栓体14を導通させている。この栓体14の先端を地面に当てて電位差を測定する。
阿部 健、他6名、「土壌中に縦埋めされた亜鉛めっき鋼管柱の健全度評価法の開発」、さび、日本防食工業株式会社、平成29年1月、第150号、p.5-9
しかしながら、このような照合電極10aでは内部の硫酸銅水溶液が使用していくたびに徐々に漏れていく。このような状況の断面図を図5(b)に示す。このため、内部の硫酸銅水溶液の量を十分に確保しなければ長期間の使用はできなかった。具体的には、長さ15cmを超える大型の筒状の照合電極でも、一般的な使用法では1年程度で内部の硫酸銅水溶液が漏れ出て照合電極として役に立たなくなってしまった。
そこでこの発明は、主に屋外に持ち出して野外測定に用いる照合電極を、従来より小型化し、長期間にわたって使用できるようにすることを目的とする。
この発明は、
金属電極と、
前記金属電極と接触する電解質水溶液をゲル化した固体状電解質と、
前記固体状電解質を収容し先端が開放された収容体と、
前記収容体の先端を密封し、湿潤環境で導通を維持する栓体と、を有する照合電極により、上記の課題を解決したのである。
前記金属電極を構成する金属としては例えば銅が挙げられる。また、前記電解質水溶液を構成する電解質としては硫酸銅が挙げられる。前記電解質水溶液は、濃度の安定性の点から、飽和水溶液であることが望ましい。
前記栓体としては、コルクなどの有機多孔性素材、石膏、多孔性セラミックなどの無機多孔性素材などが挙げられる。
この発明により、電位測定の際に収容体と栓体との間や栓体から電解質水溶液が漏れ出て消耗することがほとんど無くなる。その上で、保存時には収容体の先端を栓体ごとキャップで覆っておけば栓体が乾燥して水分が失われることもほとんど無く、長期間にわたって照合電極としての機能を維持できる。具体的には、従来の電解質溶液の半分の容量の固体状電解質で、従来の倍以上の使用期間を確保することができる。
(a)この発明にかかる照合電極の実施形態例を示す断面図、(b)この発明にかかる照合電極の実施形態例を示す外観図 この発明にかかる照合電極の実物の外観を示す写真 この発明にかかる照合電極を用いて鋼管の電位を測定する際の概念図 実施例において電柱の電位を測定した際の実際の電柱の状態と電位を示す写真 (a)従来の銅/硫酸銅水溶液型照合電極の断面図、(b)(a)の使用期間経過後の断面図
以下、この発明について具体的な実施形態とともに詳細に説明する。この発明にかかる照合電極10の実施形態例を、図1を用いて説明する。図1(a)は断面図、図1(b)は外観図である。また、実施形態例の実物の外観写真を図2に示す。
照合電極10は、金属電極11を有する。銅/硫酸銅電極の場合、金属電極11の素材は銅となる。後述する固体状電解質13との導通を確実にするため、長さは3cm以上であると好ましい。一方で、この発明では固体状電解質13の消耗が抑えられるため、長すぎてもほとんど意味が無く、コストが嵩むことになる。また、金属電極11が長すぎると照合電極10自体が嵩張り、重量も増加してしまうため、できるだけコンパクトであることが望ましい。このため、金属電極11の長さは10cm以下であると好ましく、7cm以下であるとより好ましい。
金属電極11の形状は特に限定されないが、円柱形であると電極表面での異常な反応が起きにくいため好ましい。金属電極11の径は特に限定されないが、細すぎると衝撃に対して弱く折れてしまうおそれがあるため、3mm以上であると好ましい。一方、太すぎてもコストが嵩むことになるため、1cm以下であると好ましい。
金属電極11の周りには、固体状電解質13が配置されており、金属電極11と接触して導通がとれるように十分に接触していることが好ましい。固体状電解質13は、金属電極11との間の電極反応の電位が安定する電解質を有する水溶液を、ゲル化して固めたものが好適に用いられる。銅/硫酸銅電極の場合、電解質としては硫酸銅が好適に用いられるほか、その他の銅イオン水溶液が利用できる。電位の安定性の点から1N以上の高濃度の水溶液を用いるのが好ましく、飽和水溶液を用いるのがより好ましい。また調達の容易性の点から、銅の金属電極11に対しては硫酸銅の飽和水溶液を用いるのが最も好ましい。
固体状電解質13を形成させるにあたっては、ゼラチン、寒天、キサンタンガム、グアーガムなどの一般的なゲル化剤を電解質水溶液に添加してゲル化させることで固めることができる。固化した後の固さは、固体状電解質13が実用的な範囲で流動性を失い形状を維持できる程度であれば特に限定されない。
金属電極11及び固体状電解質13は、周囲を収容体12に包まれている。収容体12は先端(図の下方)が開放されており、他方の端部には金属電極11の先端が突き出てケーブル15に繋がっている。この実施形態では測定の際に手で持ちやすいように円筒状の収容体としているが特にこれに限定されない。ただし、前記先端を十分に密封するため、前記先端の開放形状は円形であることが望ましい。
収容体12に包まれた固体状電解質13を形成させるためには、固体状電解質13と栓体14の導通を十分に確保する為に、収容体12の先端に挿入された栓体14側を下にした状態で、差込口19から固化前の固体状電解質13を流し込み、次に金属電極11を差し込み、その後冷却する等して形状を安定させて固化させると好ましい。金属電極11を差し込む差込口19の周囲はOリングなどで密封されていてもよいし、差し込み後に樹脂などで密封してもよい。
収容体12の先端には、栓体14が挿入されて密封されている。これにより、固体状電解質13が外れて落下することがなくなる。また、栓体14は湿潤環境で導通を維持する必要がある。電位測定の際には栓体14の先を、電位を測定しようとする媒体に接触させて導通を取るため、栓体14の先端から金属電極11まで導通が取れなければならない。このため、栓体14は内部に電解質を包含できる多孔質素材を用いると好ましい。具体的には、コルクなどの有機多孔質素材や、石膏、多孔性セラミックなどの無機多孔質素材を用いることができる。
栓体14の形状としては、上方の径がわずかに小さい円錐台が挙げられる。この形態では、力を込めて収容体12の先端開口部に押し込むことで密封する。この形状はわずかながら手作業で弾性変形可能であるコルクなどの有機多孔質素材に適している。一方、無機多孔質素材を用いる場合には、ほとんど変形しないため、押し込む場合には十分な寸法精度が必要となる。この他、無機多孔質素材を用いる場合には、収容体12の先端の内径側に雌ねじを切っておき、栓体14の外周にこの雌ねじと嵌め合わされる雄ねじを切っておき、栓体14を捻じ込んで密封するようにしてもよい。
栓体14の素材や形状がいずれであっても、栓体14には少量の電解質水溶液を含ませて、栓体14の先端から内部まで導通が取れるようにする。電解質水溶液としては、固体状電解質13に用いた水溶液と同じものを用いるのが好ましい。
収容体12の先端には、栓体14ごと包むようにキャップ18が設けられていると好ましい。輸送時及び保管時に栓体14が乾燥して導通が取れなくなることを防ぐためのものである。測定時にはキャップ18を取り外して栓体14を対象に接触させる。
一方、収容体12の上方に突き出た金属電極11には、端子16に繋がるケーブル15が取り付けられており、一般的な銅線などのケーブルを用いることができる。端子16はテスターやその他の測定器に直接接続させたり、他のケーブルに接続できたりする一般的な形状を採用することができる。
この発明にかかる照合電極10は、様々な環境での照合電極として用いることができる。特に、持ち運びが容易であり、長期間保存可能で電位を維持しやすく、電解質水溶液の漏洩も抑えられることから、屋外に持ち出して測定する状況に好適に用いることができる。
この照合電極10を用いて電位を測定する測定の例を、図3を用いて説明する。図3に記載された鋼管1は、固定のために一部が地中に埋没させられた亜鉛めっき鋼管である。鋼管1は亜鉛めっきによって耐久性を向上させているが、時間経過とともに亜鉛が剥がれたり、剥がれた部分に鉄錆が生じたりしている。この状況を地上から測定する。電位計20から伸びる一方のケーブルを鋼管1に固定する固定端子21に繋げる。この固定端子21は鋼管1と導通が取れるとともに、測定の間中は接触部分がほぼ変化せず、電位を安定させるものであることが望ましい。電位計20から伸びる他方のケーブルは照合電極10に通じる。
測定の際には、照合電極10のキャップ18を外し、栓体14を地面に接触させる。地面は多少の湿気を有していれば基本的に導通が確保できる。接触させる箇所を、鋼管1から徐々に離していき、それぞれの地点での電位を測定する。地中には図中破線で示すような等電位線が生じており、測定点を鋼管1から離していくにつれて、鋼管1のより深い箇所の状況を電位として測定することができる。
また、この照合電極10を地面に接触させて電位差によって対象の状況を測定する手法は、鋼管に限らず一般的な電柱や、その他目視での確認が難しい状況の測定に用いることができる。
西日本各地に設置された電柱について、目視で状況を確認するとともに電位による観測を行った。電位計の一方の端子を図2に示す照合電極10に接続し、他方の端子を電柱に設置された足かけ部分の金属部に接続して測定した。電位の観測位置は電柱から50cm以内の距離である。
図4中、銅/飽和硫酸銅水溶液電極電位に対して−0.75V以下の電位を示した例(f)(g)(h)では、いずれも地際に腐食が見られず、電柱の状況は健全であることが確認された。
次に、図4中、銅/飽和硫酸銅水溶液電極電位に対して−0.5V前後の電位を示した例(d)(e)では、地際に表面錆程度の軽い腐食が生じており、電柱表面の保護が剥がれることで、電位が上昇することが確認された。これは軽微ではあるものの、補修されることが望ましい。
さらに、図4中、銅/飽和硫酸銅水溶液電極電位に対して−0.4V以上の電位を示した(b)(c)では、地際に減肉腐食が発生していたり、穴空きが確認されたりして、表面のみならず内部にまで腐食が進んでいることが確認された。これは補修がされないとさらに腐食が進行する危険な状態である。
さらにまた、図4中、銅/飽和硫酸銅水溶液電極電位に対して−0.2V以上の電位を示した(a)では、地際に著しい減肉腐食が発生していた。これは速やかな補修が必要となる状態である。
以上の結果から、銅/飽和硫酸銅水溶液を用いた照合電極10に対して、−0.75V以下の電位であれば、電柱の対応する深さ部分の状態は健全であると判断できることが確かめられた。また、段階的に電位が上がるにつれて、電柱の状態が悪化しており、補修の必要性を確認する指標として確認できることが確かめられた。
1 鋼管
10,10a 照合電極
11 金属電極
12,12a 収容体
13 固体状電解質
13a 硫酸銅水溶液
14 栓体
15 ケーブル
16 端子
18 キャップ
19 差込口
20 電位計
21 固定端子

Claims (4)

  1. 金属電極と、
    前記金属電極と接触する電解質水溶液をゲル化した固体状電解質と、
    前記固体状電解質を収容し先端が開放された収容体と、
    前記収容体の先端を密封し、湿潤環境で導通を維持する栓体と、を有する照合電極。
  2. 前記金属電極が銅であり、前記電解質水溶液が硫酸銅飽和水溶液である、請求項1に記載の照合電極。
  3. 前記栓体が、コルク、石膏、又は多孔性セラミックである請求項1又は2に記載の照合電極。
  4. 前記収容体の先端内周に雌ねじが形成されており、前記栓体の外周に雄ねじが形成されている、請求項3に記載の照合電極。
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