JP2020114918A - 多元共重合体、ゴム組成物、架橋ゴム組成物及びゴム物品 - Google Patents

多元共重合体、ゴム組成物、架橋ゴム組成物及びゴム物品 Download PDF

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Abstract

【課題】タイヤ、コンベアベルト、防振ゴム、免震ゴム等のゴム物品の製造に用いられるゴム組成物であって、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる多元共重合体を提供する。【解決手段】共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体であって、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が10,000〜10,000,000であり、前記芳香族ビニル単位全体のうち、前記共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合が50%以上であることを特徴とする、多元共重合体である。【選択図】なし

Description

本発明は、多元共重合体、ゴム組成物、架橋ゴム組成物及びゴム物品に関する。
一般に、タイヤ、コンベアベルト、防振ゴム、免震ゴム等のゴム物品の製造に用いられるゴム組成物には、高い耐久性が求められている。しかしながら、ゴム業界において従来より頻繁に用いられる、ブタジエンゴム(BR)やスチレン−ブタジエンゴム(SBR)等のジエン系ゴムは、オゾンや経時劣化などに起因する亀裂に対する耐性、即ち耐亀裂成長性が十分でない。このような状況下、様々なゴム成分やゴム組成物が開発されてきている。
例えば、特許文献1は、共役ジエン部分(共役ジエン化合物由来部分)のシス−1,4結合含量が70.5mol%より大きく、非共役オレフィンの含有量が10mol%以上である共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体を開示しており、また、この共重合体が、耐亀裂成長性等の性能が良好なゴムを製造するのに用いられることが開示されている。
国際公開2012/014455号
しかしながら、かかる共重合体は、高い耐亀裂成長性を有し得るものの、多くのゴム物品に要求されるウェット性(湿潤面におけるグリップ性)について、更に改良の余地があった。
そこで、本発明の目的は、上述した従来技術の問題点に鑑み、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる、多元共重合体、ゴム組成物及び架橋ゴム組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、上述した架橋ゴム組成物を用いた、耐亀裂成長性及びウェット性に優れるゴム物品を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、少なくとも3つの所定の単位を所定の態様で有する共重合体が、耐亀裂成長性及びウェット性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体であって、前記芳香族ビニル単位全体のうち、前記共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合が50%以上であることを特徴とする。かかる共重合体は、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる。
ここで、本明細書において、「共役ジエン単位」とは、共重合体における、共役ジエン化合物に由来する単位に相当する単位を指し、「非共役オレフィン単位」とは、共重合体における、非共役オレフィン化合物に由来する単位に相当する単位を指し、「芳香族ビニル単位」とは、共重合体における、芳香族ビニル化合物に由来する単位に相当する単位を指す。
また、本明細書において、「共役ジエン化合物」とは、共役系のジエン化合物を指し、「非共役オレフィン化合物」とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素−炭素二重結合を1個以上有する非共役系の化合物を指し、「芳香族ビニル化合物」とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を指す。また、「芳香族ビニル化合物」は、共役ジエン化合物には含まれないものとする。
そして、本明細書において、「多元共重合体」とは、3種類以上の単量体を重合してなる共重合体を指す。
本発明の多元共重合体は、前記共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が50%以上であることが好ましい。これにより、多元共重合体の耐久性を効果的に向上させることができる。
本発明の多元共重合体は、前記芳香族ビニル単位の含有量が5mol%以上であることが好ましい。これにより、十分な量の芳香族ビニル単位を非結晶部分に導入することができる。
また、本発明の多元共重合体は、前記芳香族ビニル単位の含有量が30mol%以下であることが好ましい。これにより、芳香族ビニル単位以外の単位を有することの効果を十分に得ることができる。
本発明の多元共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が20mol%以上であることが好ましい。これにより、より高い耐久性をもたらすことができる。
また、本発明の多元共重合体は、前記共役ジエン単位の含有量が60mol%以下であることが好ましい。これにより、共役ジエン単位以外の単位を有することの効果を十分に得ることができる。
本発明の多元共重合体は、前記非共役オレフィン単位の含有量が20mol%以上であることが好ましい。これにより、多元共重合体中により十分な量の結晶が生成され、耐亀裂成長性をより向上させることができる。
また、本発明の多元共重合体は、前記非共役オレフィン単位の含有量が80mol%以下であることが好ましい。これにより、非共役オレフィン単位以外の単位を有することの効果を十分に得ることができる。
本発明の多元共重合体は、補強材として良好に機能し得る結晶を生成させて耐亀裂成長性をより向上させる観点から、前記非共役オレフィン単位が、エチレン単位、プロピレン単位及び1−ブテン単位から選択される一種以上のみからなることが好ましい。
本発明の多元共重合体は、ガラス転移温度を効果的に上昇させる観点から、前記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含むことが好ましい。
本発明の多元共重合体は、多元共重合体を用いたゴム組成物やタイヤ等のゴム物品の耐久性を効果的に向上させる観点から、前記共役ジエン単位が、1,3−ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位を含むことが好ましい。
本発明の多元共重合体は、耐亀裂成長性及びウェット性をより良好なものとする観点から、共役ジエン単位としての1,3−ブタジエン単位、非共役オレフィン単位としてのエチレン単位、及び芳香族ビニル単位としてのスチレン単位のみからなる三元共重合体であることが好ましい。
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の多元共重合体を含有することを特徴とする。本発明のゴム組成物は、上述した本発明の多元共重合体を含むため、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる。
また、本発明の架橋ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物の架橋物であることを特徴とする。本発明の架橋ゴム組成物は、本発明の多元共重合体に由来するため、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる。
そして、本発明のゴム物品は、上述した本発明の架橋ゴム組成物を含むことを特徴とする。本発明のゴム物品は、本発明の多元共重合体を含むゴム組成物を架橋させたものを含むため、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる。
本発明のゴム物品は、好適にタイヤとすることができる。
本発明によれば、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる、多元共重合体、ゴム組成物及び架橋ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上述した架橋ゴム組成物を用いた、耐亀裂成長性及びウェット性に優れるゴム物品を提供することができる。
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
(多元共重合体)
本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有することを大きな特徴の一つとする。即ち、本発明の共重合体は、従来技術である共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体などとは異なり、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位に加えて、芳香族ビニル単位を有する。そして、本発明の共重合体においては、芳香族ビニル単位全体の50%以上が、共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在する。言い換えれば、本発明の共重合体は、芳香族ビニル単位全体の50%以上を、共役ジエン単位が主として連鎖した部分の中に導入させてなる構造を有する。そのため、本発明の共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が高く、一般にウェット性に重要であるとされる0℃でのエネルギーロスが向上しているものと考えられる。その一方で、本発明の共重合体は、結晶部分又は共役ジエン単位を含まない非結晶部分における芳香族ビニル単位の量が芳香族ビニル単位全体の50mol%未満に抑えられているため、共重合体中に一定の大きさ以上の結晶が維持され、この結晶が補強効果を奏し、耐亀裂成長性を向上させているものと考えられる。
また、本発明の多元共重合体は、以下にその製造方法を記述する通り、一の反応容器で行う合成、即ちワンポット合成が可能であり、簡略化されたプロセスによる製造が可能である。
なお、本明細書において、多元共重合体の「結晶部分」とは、多元共重合体をオゾン分解した後に得られる成分に相当する部分を指し、多元共重合体の「非結晶部分」とは、上述した結晶部分以外の部分を指すものとする。
更に、本発明の多元共重合体は、単量体として共役ジエン化合物を用いて重合され得るものであるため、例えば公知であるエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)のような、共役ジエン化合物を単量体として用いていない共重合体に比べ、架橋特性に優れる。従って、本発明の多元共重合体は、これを用いて製造されるゴム組成物やゴム物品の機械特性をより向上させることができるという利点も有する。
本発明の多元共重合体における共役ジエン単位は、通常、単量体としての共役ジエン化合物に由来する単位であり、また、この共役ジエン化合物は、炭素数が4〜8であることが好ましい。かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。前記共役ジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、本発明の多元共重合体における共役ジエン単位が由来する、単量体としての共役ジエン化合物は、多元共重合体を用いたゴム組成物やタイヤ等のゴム物品の耐久性を効果的に向上させる観点から、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンを含むことが好ましく、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンのみからなることがより好ましく、1,3−ブタジエンのみからなることが更に好ましい。別の言い方をすると、本発明の多元共重合体における共役ジエン単位は、1,3−ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位を含むことが好ましく、1,3−ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位のみからなることがより好ましく、1,3−ブタジエン単位のみからなることが更に好ましい。
また、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位の含有量が20mol%以上であることが好ましい。共役ジエン単位の含有量が20mol%以上であれば、多元共重合体がエラストマーとして均一にふるまうことが可能となり、より高い耐久性をもたらすことができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位の含有量が30mol%以上であることがより好ましく、40mol%以上であることが更に好ましい。
一方、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位の含有量が60mol%以下であることが好ましい。共役ジエン単位の含有量が60mol%以下であれば、共役ジエン単位以外の単位を有することの効果を十分に得ることができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位の含有量が55mol%以下であることがより好ましく、50mol%以下であることが更に好ましい。
ここで、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が50%以上であれば、多元共重合体の耐久性(耐亀裂成長性や耐摩耗性等)を効果的に向上させることができる。
一方、前記共役ジエン単位全体におけるビニル結合(1,2ビニル結合、3,4ビニル結合など)含量は、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが一層好ましく、6%以下であることが特に好ましい。また、前記共役ジエン単位全体におけるトランス−1,4結合含量は、30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。
また、本発明の多元共重合体における非共役オレフィン単位は、通常、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する単位であり、また、この非共役オレフィン化合物は、炭素数が2〜10であることが好ましい。かかる非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、若しくは1−オクテン等のα−オレフィン、ピバリン酸ビニル、1−フェニルチオエテン、若しくはN−ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。前記非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、本発明の多元共重合体における非共役オレフィン単位が由来する、単量体としての非共役オレフィン化合物は、補強材として良好に機能し得る結晶を生成させて耐亀裂成長性をより向上させる観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン化合物は、α−オレフィンであることがより好ましく、エチレン、プロピレン及び1−ブテンから選択される一種以上のみからなることが更に好ましく、エチレンのみからなることが特に好ましい。別の言い方をすると、本発明の多元共重合体における非共役オレフィン単位は、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン単位は、α−オレフィン単位であることがより好ましく、エチレン単位、プロピレン単位及び1−ブテン単位から選択される一種以上のみからなることが更に好ましく、エチレン単位のみからなることが更に好ましい。
また、本発明の多元共重合体は、非共役オレフィン単位の含有量が20mol%以上であることが好ましい。非共役オレフィン単位の含有量が20mol%以上であれば、多元共重合体中により十分な量の結晶が生成され、耐亀裂成長性をより向上させることができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、非共役オレフィン単位の含有量が30mol%以上であることがより好ましく、40mol%以上であることが更に好ましい。
一方、本発明の多元共重合体は、非共役オレフィン単位の含有量が80mol%以下であることが好ましい。非共役オレフィン単位の含有量が80mol%以下であれば、非共役オレフィン単位以外のを有することの効果を十分に得ることができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、非共役オレフィン単位の含有量が70mol%以下であることがより好ましく、60mol%以下であることが更に好ましい。
更に、本発明の多元共重合体における芳香族ビニル単位は、通常、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する単位であり、また、この芳香族ビニル化合物は、炭素数が8〜10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等が挙げられる。前記芳香族ビニル化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、本発明の多元共重合体における芳香族ビニル単位が由来する、単量体としての芳香族ビニル化合物は、ガラス転移温度を効果的に上昇させる観点から、スチレンを含むことが好ましく、スチレンのみからなることがより好ましい。別の言い方をすると、本発明の多元共重合体における芳香族ビニル単位は、スチレン単位を含むことが好ましく、スチレン単位のみからなることがより好ましい。
また、本発明の多元共重合体は、芳香族ビニル単位の含有量が5mol%以上であることが好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が5mol%以上であれば、十分な量の芳香族ビニル単位を非結晶部分に導入することができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、芳香族ビニル単位の含有量が10mol%以上であることがより好ましく、15mol%以上であることが更に好ましい。
一方、本発明の多元共重合体は、芳香族ビニル単位の含有量が30mol%以下であることが好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が30mol%以下であれば、芳香族ビニル単位以外の単位を有することの効果を十分に得ることができる。同様の観点から、本発明の多元共重合体は、芳香族ビニル単位の含有量が25mol%以下であることがより好ましく、20mol%以下であることが更に好ましい。
なお、本発明の多元共重合体は、上述した共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位以外の、任意の単位を有していてもよい。但し、本発明の所望の効果を得る観点から、本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位以外の任意の単位の含有量が、0mol%である(即ち、含まない)ことがより好ましい。
ここで、本発明の多元共重合体が由来する単量体の種類の数としては、多元共重合体が共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する限り、特に制限はない。ただし、耐亀裂成長性及びウェット性をより良好なものとする観点から、本発明の多元共重合体は、単量体として、一種の共役ジエン化合物、一種の非共役オレフィン化合物、及び一種の芳香族ビニル化合物を少なくとも用いて重合してなる重合体であることが好ましい。別の言い方をすると、本発明の多元共重合体は、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位を有する多元共重合体であることが好ましい。そして、本発明の多元共重合体は、同様の観点から、一種の共役ジエン単位、一種の非共役オレフィン単位、及び一種の芳香族ビニル単位のみからなる三元共重合体であることがより好ましく、1,3−ブタジエン単位、エチレン単位、及びスチレン単位のみからなる三元共重合体であることが更に好ましい。ここで、「一種の共役ジエン単位」には、異なる結合様式(例えば、シス−1,4結合、トランス−1,4結合、1,2ビニル結合など)の共役ジエン単位が包括されていることとする。
ここで、本発明の多元共重合体は、上述した通り、耐亀裂成長性及びウェット性を向上させるため、前記芳香族ビニル単位全体のうち共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合が50%以上であることを要するが、上記割合は、ウェット性及び耐亀裂成長性をより向上させる観点から、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、上記割合の上限としては、特に制限されないが、過度に大きな結晶が生成して耐亀裂成長性などに悪影響を及ぼすことを抑制する観点から、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。
なお、多元共重合体における「芳香族ビニル単位全体のうち共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合」は、例えば、まず、多元共重合体における非共役オレフィン単位と芳香族ビニル単位との比率(A)をH−NMRスペクトルの積分比及び13C−NMRスペクトルの積分比から求め、次いで、多元共重合体に含まれるジエン部分をオゾン分解し、得られたジエン部分を含まない成分全体における非共役オレフィン単位と芳香族ビニル単位との比率(B)をH−NMRスペクトルの積分比及び13C−NMRスペクトルの積分比から求め、比率(A)及び比率(B)を用いて算出することができる。より具体的には、本明細書の実施例に記載された方法により、測定することができる。
また、本発明の多元共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることが好ましい。主鎖が非環状構造のみからなることにより、多元共重合体の耐亀裂成長性を向上させることができる。
ここで、共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環〜五員環については、10〜24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
なお、本明細書において、「主鎖」とは、共重合体における、各単位の結合末端を結んでなる長鎖部分を指し、共重合体の連鎖構造によっては、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよいものである。即ち、「主鎖」は、共重合体を構成する各単位における、隣接する単位とは結合しない分岐部分を含まない。
また、共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量、芳香族ビニル単位全体のうち共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合、多元共重合体の融点などの調整は、例えば、単量体を用いて重合させる際に、各単量体の投入量、投入の順番、投入回数や、重合触媒等の条件を適宜制御することによって、行うことができる。
また、本発明の多元共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が10,000〜10,000,000であることが好ましく、100,000〜9,000,000であることがより好ましく、150,000〜8,000,000であることが特に好ましい。前記多元共重合体のMwが10,000以上であることにより、ゴム物品の材料としての機械的強度を十分に確保することができ、また、Mwが10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。特に、本発明の多元共重合体における共役ジエン単位が1,3−ブタジエン単位のみからなる場合には、同様の観点から、Mwが100,000〜1,000,000であることが好ましい。
更に、本発明の多元共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、10.0以下であることが好ましく、9.0以下であることがより好ましく、8.0以下であることが特に好ましい。前記多元共重合体の分子量分布が10.0以下であることにより、前記多元共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。
なお、上述したポリスチレン換算重量平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求めることができる。
本発明の多元共重合体は、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位が直線的に連鎖した構造(直線構造)であってもよいし、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位の少なくともいずれかが分岐鎖を形成して連鎖した構造(分岐構造)であってもよい。なお、本発明の多元共重合体が分岐構造である場合には、分岐鎖も二元又は多元とすることができる(即ち、分岐鎖が、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位、及び芳香族ビニル単位のうちの少なくとも2つを含むことができる)。よって、本発明の多元共重合体の中でも、二元又は多元の分岐鎖を有する分岐構造である多元共重合体は、幹となる鎖と側鎖とが異なる1種類ずつの単位で形成される従来型のグラフト共重合体と明確に区別することができる。
(多元共重合体の製造方法)
次に、本発明の多元共重合体を製造する方法の例を詳細に説明する。本発明の多元共重合体を製造する方法の一例は、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体として用いることを前提とするものであり、少なくとも重合工程を含み、更に、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を適宜含むことができる。
<重合工程>
重合工程は、少なくとも共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物とを単量体とし、これらを重合する工程である。ここで、重合工程においては、触媒存在下で、共役ジエン化合物を添加せずに非共役オレフィン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物のみを添加し、これらを重合させる操作と、少なくとも共役ジエン化合物を添加しながら重合させる操作とを含むことが好ましい。また、多元共重合体における、「芳香族ビニル単位全体のうち共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合」を50%以上に調整する方法としては、例えば、触媒存在下で、共役ジエン化合物が単量体として存在する時間には適宜芳香族ビニル化合物の投入量を増やし、共役ジエン化合物が単量体として存在しない場合には適宜芳香族ビニル化合物の投入量を減らす方法、が挙げられる。
なお、後述の重合触媒組成物を使用する場合には、非共役オレフィン化合物及び芳香族ビニル化合物より共役ジエン化合物の方が反応性が高いことから、共役ジエン化合物の存在下で非共役オレフィン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を重合させることが困難となりやすい。また、先に共役ジエン化合物を重合させ、後に非共役オレフィン化合物及び/又は芳香族ビニル化合物を付加的に重合させることも、触媒の特性上困難となりやすい。
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等が挙げられる。
重合工程において、重合反応は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。また、上記重合反応の重合温度は、特に制限されないが、例えば、−100℃〜200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、重合温度を上げると、重合反応のシス−1,4選択性が低下することがある。また、上記重合反応の圧力は、共役ジエン化合物を十分に重合反応系中に取り込むため、0.1〜10.0MPaの範囲が好ましい。また、上記重合反応の反応時間も特に制限がなく、例えば、1秒〜10日の範囲が好ましいが、触媒の種類、重合温度等の条件によって適宜選択することができる。
また、前記共役ジエン化合物の重合においては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を用いて、重合を停止させてもよい。
ここで、上記の非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物の重合は、下記に示す第一の重合触媒組成物、第二の重合触媒組成物又は第三の重合触媒組成物の存在下行うことが好ましい。
−第一の重合触媒組成物−
第一の重合触媒組成物(以下、「第一重合触媒組成物」ともいう)について説明する。
第一重合触媒組成物は、
(A)成分:下記式(I)で表される希土類元素化合物
M-(AQ)(AQ)(AQ) ・・・(I)
(式中、Mは、スカンジウム、イットリウム又はランタノイド元素であり、AQ、AQ及びAQは、同一であっても異なっていてもよい官能基であり、Aは、窒素、酸素又は硫黄であり、但し、少なくとも1つのM−A結合を有する)を含むものである。
ここで、(A)成分におけるランタノイド元素とは、具体的には、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムであり、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。(A)成分は、反応系における触媒活性を向上させることができ、反応時間を短くし、反応温度を高くすることが可能な成分である。
また、前記Mについては、特に、触媒活性及び反応制御性を高める観点から、ガドリニウムが好ましい。
なお、前記(A)成分は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記式(I)で表される化合物は、少なくとも1つのM−A結合を有する。M−A結合を1つ以上有することにより、各結合が化学的に等価となるため構造が安定的であり、それゆえに取り扱いが容易であり、低コストで且つ効率良く多元共重合体を製造することができる。なお、上記式(I)で表される化合物は、M−A以外の結合、例えば、前記M以外の金属とOやS等のヘテロ原子との結合等についても含むことが可能である。
上記式(I)において、Aが窒素である場合、AQ、AQ及びAQ(即ち、NQ、NQ及びNQ)で表される官能基としては、アミド基等が挙げられる。
アミド基としては、例えば、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオベンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオベンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオベンチルフェニルアミド基、2,4,6−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、特に、脂肪族炭化水素に対する溶解性の観点から、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
上記官能基は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記式(I)において、Aが酸素である場合、AQ、AQ及びAQ(即ち、OQ、OQ及びOQ)で表される官能基としては、例えばアルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボキシル基等が挙げられる。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が好ましい。また、アシルオキシ基としては、アセトキシ基、バレロイル基、ピバロキシ基等が好ましい。
上記官能基は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記式(I)において、Aが硫黄である場合、AQ、AQ及びAQ(即ち、SQ、SQ及びSQ)で表される官能基としては、例えばアルキルチオ基、アルキルスルホニル基等が挙げられる。このアルキルチオ基としては、メチルチオ基、イソプロピルチオ基等が好ましい。また、アルキルスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、イソプロパンスルホニル基、ヘキサンスルホニル基等が好ましい。
上記官能基は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、重合反応系において、前記触媒組成物に含まれる(A)成分の濃度は、0.1〜0.0001mol/lの範囲であることが好ましい。
また、第一重合触媒組成物は、更に、
(B)成分:特定のイオン性化合物(B−1)、及び、特定のハロゲン化合物(B−2)よりなる群から選択される少なくとも一種と、
(C)成分:下記式(II):
YR ・・・ (II)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、R、R、Rはそれぞれ互いに同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される化合物と
を含むことが好ましい。
第一重合触媒組成物が(B)成分及び(C)を更に含むことにより、より効率的に、共役ジエン化合物と、非共役オレフィン化合物と、芳香族ビニル化合物との多元共重合体を製造することができる。
前記イオン性化合物(B−1)及び前記ハロゲン化合物(B−2)は、前記(A)成分へ供給するための炭素原子が存在しないため、該(A)成分への炭素供給源として、前記(C)成分が必要となる。また、前記第一触媒組成物は、通常の希土類元素化合物系の触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。
なお、前記第一触媒組成物における(B)成分の合計の含有量は、(A)成分に対して0.1〜50倍molであることが好ましい。
上記(B−1)のイオン性化合物としては、非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物であって、前記(A)成分の希土類元素化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物等を挙げることができる。
ここで、非配位性アニオンとしては、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられる。一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等を挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオンとして、より具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン(例えば、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン)等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。従って、イオン性化合物としては、上述の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物が好ましく、具体的には、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、これらのイオン性化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、前記触媒組成物におけるイオン性化合物(B−1)の合計の含有量は、(A)成分に対して0.1〜10倍molであることが好ましく、約1倍molであることが更に好ましい。
前記(B−2)のハロゲン化合物は、ルイス酸、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物及び活性ハロゲンを含む有機化合物のうち少なくとも一種であり、前記(A)成分の希土類元素化合物と反応して、カチオン性遷移金属化合物やハロゲン化遷移金属化合物や遷移金属中心が電荷不足の化合物を生成することができる。
なお、前記触媒組成物におけるハロゲン化合物(B−2)の合計の含有量は、(A)成分に対して1〜5倍molであることが好ましい。
前記ルイス酸としては、B(C等のホウ素含有ハロゲン化合物、Al(C等のアルミニウム含有ハロゲン化合物を使用できる他、周期律表中の第3族、第4族、第5族、第6族又は第8族に属する元素を含有するハロゲン化合物を用いることもできる。好ましくは、アルミニウムハロゲン化物又は有機金属ハロゲン化物が挙げられる。また、ハロゲンとしては、塩素又は臭素が好ましい。上記ルイス酸として、具体的には、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジブチル錫ジクロライド、アルミニウムトリブロマイド、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化錫、四塩化チタン、六塩化タングステン等が挙げられ、これらの中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドが特に好ましい。
前記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
また、前記金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2−エチルヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2−エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2−エチルヘキシルアルコール、1−デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
前記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1mol当り、0.01〜30mol、好ましくは0.5〜10molの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、共重合体中に残存する金属を低減することができる。
なお、前記活性ハロゲンを含む有機化合物としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
これらのハロゲン化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記第一触媒組成物に用いられ得る前記(C)成分は、下記式(II):
YR ・・・ (II)
(式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、R、R、Rはそれぞれ互いに同一又は異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a,b及びcは1である)で表される化合物であり、好ましくは、下記式(III):
AlR ・・・ (III)
(式中、R及びRは炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、R、R、Rはそれぞれ互いに同一又は異なっていてもよい)で表される有機アルミニウム化合物である。式(III)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。以上に述べた(C)成分としての有機アルミニウム化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、前記触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、(A)成分に対して1〜50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
また、第一重合触媒組成物は、より高いシス−1,4結合含量の共重合体を高収率で合成することを可能にする、という点から、
(D)成分:配位子となり得る配位化合物
を更に含むことが好ましい。
前記(D)成分としては、前記(A)成分のAQ、AQ及びAQで表される官能基と交換可能なものであれば特に限定されないが、例えば、OH基、NH基、SH基のいずれかを有するものを挙げることができる。
具体的な化合物として、前記OH基を有するものとしては、脂肪族アルコール、芳香族アルコール等が挙げられる。具体的には2−エチル−1−ヘキサノール、ジブチルヒドロキシトルエン、アルキル化フェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチリルチオプロピオネート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。例えばヒンダードフェノール系のものとして、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等を挙げることができる。また、ヒドラジン系として、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等を挙げることができる。
前記NH基を有するものとしては、アルキルアミン、アリールアミン等の第1級アミンあるいは第2級アミンを挙げることができる。具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピロール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ビス(2−ジフェニルホスフィノフェニル)アミン等が挙げられる。
前記SH基を有するものとしては、脂肪族チオール、芳香族チオール等のほか、下記式(VI)、(VII)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2020114918
(式中、R、R及びRはそれぞれ独立して−O−C2j+1、−(O−C2k−)−O−C2m+1又は−C2n+1 で表され、R、R及びRの少なくとも1つが−(O−C2k−)−O−C2m+1であり、j、m及びnはそれぞれ独立して0〜12の整数であり、k及びaはそれぞれ独立して1〜12の整数であり、Rは炭素数1〜12の整数であって、直鎖、分岐、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、シクロアルケニルアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキルアルケニレン基、シクロアルケニルアルケニレン基、アリーレン基又はアラルキレン基である。)
上記式(VI)で示されるものの具体例として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
Figure 2020114918
(式中、Wは−NR−、−O−又は−CR10−(ここで、R及びRは−C2p+1であり、R10は−C2q+1であり、p及びqはそれぞれ独立して0〜20の整数である。)で表され、R及びRはそれぞれ独立して−M−C2r−(ここで、Mは−O−又は−CH−であり、rは1〜20の整数である。)で表され、Rは−O−C2j+1、−(O−C2k−)−O−C2m+1又は−C2n+1 で表され、j、m及びnはそれぞれ独立して0〜12の整数であり、k及びaはそれぞれ独立して1〜12の整数であり、Rは炭素数1〜12であって、直鎖、分岐、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、アルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、シクロアルケニルアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキルアルケニレン基、シクロアルケニルアルケニレン基、アリーレン基又はアラルキレン基である。)
式(VII)で示されるものの具体例として、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−メチルアザ−2−シラシクロオクタン、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−ブチルアザ−2−シラシクロオクタン、3−メルカプトプロピル(エトキシ)−1,3−ジオキサ−6−ドデシルアザ−2−シラシクロオクタンなどが挙げられる。
また、前記(D)成分の配位化合物は、シクロペンタジエン骨格を有する化合物であることが好ましい。
さらに、シクロペンタジエン骨格を有する化合物は、シクロペンタジエン骨格を有するものであれば特に限定はされないが、より高い触媒活性を得ることができる点からは、インデニル基を有する化合物であることがより好ましい。重合の際の溶媒として環境負荷の大きいトルエンを使用することなく、活性を高めることができるからである。
ここで、前記インデニル基を有する化合物としては、例えば、インデン、1−メチルインデン、1−エチルインデン、1−ベンジルインデン、2−フェニルインデン、2−メチルインデン、2−エチルインデン、2−ベンジルインデン、3−メチルインデン、3−エチルインデン、3−ベンジルインデン等が挙げられるが、その中でも、置換フェニルインデニル化合物を用いることが好ましい。
なお、前記(D)成分は、前記(A)成分の希土類元素化合物1molに対して、0.01〜10mol、特に0.1〜1.2mol添加するのが好ましい。添加量が0.01mol未満の場合、モノマーの重合が十分に進まないおそれがある。添加量を希土類元素化合物と等量(1.0mol)とすることが好ましいが、過剰量添加されていてもよい。しかし、また、添加量を10mol超とすると、試薬のロスが大きいため、好ましくない。
−第二の重合触媒組成物−
次に、第二の重合触媒組成物(以下、「第二重合触媒組成物」ともいう)について説明する。第二重合触媒組成物としては、下記式(IX):
Figure 2020114918
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cpは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、及び下記式(X):
Figure 2020114918
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cpは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、X’は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体、並びに下記式(XI):
Figure 2020114918
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示し、[B]は、非配位性アニオンを示す)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体からなる群より選択される少なくとも1種類の錯体を含む重合触媒組成物が挙げられる。
第二重合触媒組成物は、更に、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含んでいてもよい。ここで、メタロセン錯体は、一つ又は二つ以上のシクロペンタジエニル又はその誘導体が中心金属に結合した錯体化合物であり、特に、中心金属に結合したシクロペンタジエニル又はその誘導体が一つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体と称することがある。
なお、重合反応系において、第二重合触媒組成物に含まれる錯体の濃度は0.1〜0.0001mol/Lの範囲であることが好ましい。
上記式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体において、式中のCpは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpは、C7−x又はC11−xで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基である。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、式(IX)及び(X)における二つのCpは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
上記式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCpR’は、無置換もしくは置換の、シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルであり、これらの中でも、無置換もしくは置換のインデニルであることが好ましい。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’は、C5−xで示される。ここで、Xは0〜5の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’として、具体的には、以下のものが例示される。
Figure 2020114918
(式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。)
式(XI)において、上記インデニル環を基本骨格とするCpR’は、式(IX)のCpと同様に定義され、好ましい例も同様である。
式(XI)において、上記フルオレニル環を基本骨格とするCpR’は、C139−x又はC1317−xで示され得る。ここで、Xは0〜9又は0〜17の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
式(IX)、(X)及び(XI)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
式(IX)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(式(IX)におけるR〜R)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、R〜Rのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R〜Rのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になり、また、ケイ素まわりのかさ高さが低くなるため、非共役オレフィン化合物や芳香族ビニル化合物が導入され易くなる。同様の観点から、R〜Rのうち少なくとも一つが水素原子であり、R〜Rのうち少なくとも一つが水素原子であることが更に好ましい。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
式(X)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[−SiX’]を含む。シリル配位子[−SiX’]に含まれるX'は、下記で説明される式(XI)のXと同様に定義される基であり、好ましい基も同様である。
式(XI)において、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基及び炭素数1〜20の炭化水素基からなる群より選択される基である。ここで、上記アルコキシド基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシド基が挙げられ、これらの中でも、2,6−ジ−tert−ブチルフェノキシ基が好ましい。
式(XI)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec−ブトキシ基、チオtert−ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6−ジ−tert−ブチルチオフェノキシ基、2,6−ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6−ジネオペンチルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルチオフェノキシ基、2−tert−ブチル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2−イソプロピル−6−チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基が挙げられ、これらの中でも、2,4,6−トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
式(XI)において、Xが表すアミド基としては、ジメチルアミド基、ジエチルアミド基、ジイソプロピルアミド基等の脂肪族アミド基;フェニルアミド基、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルアミド基、2,6−ジイソプロピルフェニルアミド基、2,6−ジネオペンチルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−イソプロピルフェニルアミド基、2−tert−ブチル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2−イソプロピル−6−ネオペンチルフェニルアミド基、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニルアミド基等のアリールアミド基;ビストリメチルシリルアミド基等のビストリアルキルシリルアミド基が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミド基が好ましい。
式(XI)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
式(XI)において、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。また、Xが表す炭素数1〜20の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
式(XI)において、Xとしては、ビストリメチルシリルアミド基又は炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。
式(XI)において、[B]で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
上記式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体、並びに上記式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体、並びに上記式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
上記式(IX)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びビス(トリアルキルシリル)アミドの塩(例えば、カリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、式(IX)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
Figure 2020114918





(式中、X’’はハライドを示す。)
上記式(X)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びシリルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、式(X)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
Figure 2020114918
(式中、X’’はハライドを示す。)
上記式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
Figure 2020114918
ここで、式(XII)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシド基、チオラート基、アミド基、シリル基又は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す。また、式[A][B]で表されるイオン性化合物において、[A]は、カチオンを示し、[B]は、非配位性アニオンを示す。
[A]で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
上記反応に用いる式[A][B]で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、式[A][B]で表されるイオン性化合物は、メタロセン錯体に対して0.1〜10倍mol加えることが好ましく、約1倍mol加えることが更に好ましい。なお、式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる式(XII)で表される化合物と式[A][B]で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中で式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。また、式(IX)又は(X)で表されるメタロセン錯体と式[A][B]で表されるイオン性化合物とを組み合わせて使用することにより、反応系中で式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させることもできる。
上記式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体、並びに上記式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することが好ましい。
上記第二重合触媒組成物に用いることができる助触媒は、通常のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物の助触媒として用いられる成分から任意に選択され得る。該助触媒としては、例えば、アルミノキサン、有機アルミニウム化合物、上記のイオン性化合物等が好適に挙げられる。これら助触媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アルミノキサンとしては、アルキルアルミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、上記第二重合触媒組成物におけるアルミノキサンの含有量は、メタロセン錯体の中心金属Mに対する、アルミノキサンのアルミニウム元素Alの元素比率Al/Mが、10〜1000程度、好ましくは100程度となるようにすることが好ましい。
一方、上記有機アルミニウム化合物としては、式AlRR’R’’(式中、R及びR'はそれぞれ独立して炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子であり、R’’は炭素数1〜10の炭化水素基である)で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、トリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。なお、上記重合触媒組成物における有機アルミニウム化合物の含有量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
更に、上記重合触媒組成物においては、上記式(IX)及び(X)で表されるメタロセン錯体、並びに上記式(XI)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそれぞれ、適切な助触媒と組み合わせることで、シス−1,4結合含量や得られる共重合体の分子量を増大できる。
−第三の重合触媒組成物−
次に、第三の重合触媒組成物(以下、「第三重合触媒組成物」ともいう)について説明する。
第三重合触媒組成物としては、希土類元素含有化合物として、下記式(XIII):
MXQY・・・(XIII)
(式中、Rはそれぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、該RはMに配位しており、Mはランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位しており、Qは周期律表第13族元素を示し、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位しており、a及びbは2である)で表されるメタロセン系複合触媒を含む重合触媒組成物が挙げられる。
上記メタロセン系複合触媒の好適例においては、下記式(XIV):
Figure 2020114918
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cpは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該R及びRは、M及びAlにμ配位しており、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示す)で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
上記メタロセン系重合触媒を用いることで、重合体を製造することができる。また、上記メタロセン系複合触媒、例えば予めアルミニウム触媒と複合させてなる触媒を用いることで、重合体合成時に使用されるアルキルアルミニウムの量を低減したり、無くしたりすることが可能となる。なお、従来の触媒系を用いると、重合体合成時に大量のアルキルアルミニウムを用いる必要がある。例えば、従来の触媒系では、金属触媒に対して10当量以上のアルキルアルミニウムを用いる必要があるところ、上記メタロセン系複合触媒であれば、5当量程度のアルキルアルミニウムを加えることで、優れた触媒作用が発揮される。
上記メタロセン系複合触媒において、上記式(XIII)中の金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
上記式(XIII)において、Rは、それぞれ独立して無置換インデニル又は置換インデニルであり、該Rは上記金属Mに配位している。なお、置換インデニルの具体例としては、例えば、1,2,3−トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7−ヘキサメチルインデニル基等が挙げられる。
上記式(XIII)において、Qは、周期律表第13族元素を示し、具体的には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等が挙げられる。
上記式(XIII)において、Xはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
上記式(XIII)において、Yはそれぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
上記式(XIV)において、金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57〜71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
上記式(XIV)において、Cpは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpは、C7−X又はC11−Xで示され得る。ここで、Xは0〜7又は0〜11の整数である。また、Rはそれぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることが更に好ましく、1〜8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基はヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
置換インデニルとして、具体的には、2−フェニルインデニル、2−メチルインデニル等が挙げられる。なお、式(XIV)における二つのCpは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
上記式(XIV)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基を示し、該R及びRは、M及びAlにμ配位している。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
上記式(XIV)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の炭化水素基又は水素原子である。ここで、炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
なお、上記メタロセン系複合触媒は、例えば、溶媒中で、下記式(XV):
Figure 2020114918
(式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cpは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0〜3の整数を示す)で表されるメタロセン錯体を、AlRで表される有機アルミニウム化合物と反応させることで得られる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間〜数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンやヘキサンを用いればよい。なお、上記メタロセン系複合触媒の構造は、H−NMRやX線構造解析により決定することが好ましい。
上記式(XV)で表されるメタロセン錯体において、Cpは、無置換インデニル又は置換インデニルであり、上記式(XIV)中のCpと同義である。また、上記式(XV)において、金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムであり、上記式(XIV)中の金属Mと同義である。
上記式(XV)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[−N(SiR]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(R〜R基)は、それぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子である。また、R〜Rのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R〜Rのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になる。同様の観点から、R〜Rのうち少なくとも一つが水素原子であり、R〜Rのうち少なくとも一つが水素原子であることが更に好ましい。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
上記式(XV)で表されるメタロセン錯体は、更に0〜3個、好ましくは0〜1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
また、上記式(XV)で表されるメタロセン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
一方、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物は、AlRで表され、ここで、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の炭化水素基又は水素原子で、Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、但し、Rは上記R又はRと同一でも異なっていてもよい。炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ−n−プロピルアルミニウム、水素化ジ−n−ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n−プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。また、これら有機アルミニウム化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物の量は、メタロセン錯体に対して1〜50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
前記第三重合触媒組成物は、上記メタロセン系複合触媒と、ホウ素アニオンとを含んでもよく、更に、通常のメタロセン系触媒を含む重合触媒組成物に含有される他の成分、例えば助触媒等を含むことが好ましい。なお、上記メタロセン系複合触媒とホウ素アニオンとを合わせて2成分触媒ともいう。前記第三重合触媒組成物によれば、上記メタロセン系複合触媒と同様に、更にホウ素アニオンを含有するため、各単量体成分の重合体中での含有量を任意に制御することが可能となる。
上記第三重合触媒組成物において、2成分触媒を構成するホウ素アニオンとして、具体的には、4価のホウ素アニオンが挙げられる。例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
なお、上記ホウ素アニオンは、カチオンと組み合わされたイオン性化合物として使用することができる。上記カチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。従って、上記イオン性化合物としては、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。なお、ホウ素アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物は、上記メタロセン系複合触媒に対して0.1〜10倍mol加えることが好ましく、約1倍mol加えることが更に好ましい。
なお、上記式(XV)で表されるメタロセン錯体と有機アルミニウム化合物を反応させる反応系に、ホウ素アニオンが存在していると、上記式(XIV)のメタロセン系複合触媒を合成することができない。従って、上記第三重合触媒組成物の調製には、該メタロセン系複合触媒を予め合成し、該メタロセン系複合触媒を単離精製してからホウ素アニオンと組み合わせる必要がある。
上記第三重合触媒組成物に用いることができる助触媒としては、例えば、上述のAlRで表される有機アルミニウム化合物の他、アルミノキサン等が好適に挙げられる。上記アルミノキサンとしては、アルキルアミノキサンが好ましく、例えば、メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン等が挙げられる。また、修飾メチルアルミノキサンとしては、MMAO−3A(東ソーファインケム社製)等が好ましい。なお、これらアルミノキサンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
<カップリング工程>
カップリング工程は、前記重合工程において得られた多元共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。
前記カップリング工程においては、重合反応が100%に達した際にカップリング反応を行うことが好ましい。
前記カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸−1−オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、などが挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ビス(マレイン酸−1−オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)が、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
なお、カップリング反応を行うことにより、数平均分子量(Mn)を増加させることができる。
<洗浄工程>
洗浄工程は、前記重合工程において得られた多元共重合体を洗浄する工程である。なお、洗浄に用いる媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられるが、重合触媒としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(たとえば塩酸、硫酸、硝酸)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。これ以上では酸が共重合体中に残存してしまうことで混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼす可能性がある。
この洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、少なくとも本発明の多元共重合体を含有し、更に必要に応じて、充填剤、架橋剤、その他の成分や、本発明の多元共重合体以外のゴム成分を含有することができる。本発明のゴム組成物は、少なくとも本発明の多元共重合体を含有するため、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる。
なお、本発明のゴム組成物は、所望の効果をより確実に得る観点から、本発明の多元共重合体の含有量が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
本発明の多元共重合体以外のゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリイソプレン、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(EPDM)、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記ゴム組成物には、その補強性を向上させること等を目的として、必要に応じて、充填剤を用いることができる。前記充填剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、10〜100質量部が好ましく、20〜80質量部がより好ましく、30〜60質量部が特に好ましい。前記充填剤の配合量が10質量部以上であることにより、充填剤を配合したことによる補強性向上の効果が得られ、また、100質量以下であることにより、低発熱性の大幅な低下を回避しつつ、良好な作業性を保持することができる。
なお、前記充填剤としては、特に制限はなく、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられるが、これらの中でも、カーボンブラックを用いることが好ましい。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、FEF、GPF、SRF、HAF、N339、IISAF、ISAF、SAF、などが挙げられる。これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA、JIS K 6217−2:2001に準拠して測定する)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20〜100m/gが好ましく、35〜80m/gがより好ましい。前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が20m/g以上であることにより、ゴム組成物の耐久性が向上し、十分な耐亀裂成長性が得られ、また、100m/g以下であることにより、低発熱性の大幅な低下を回避しつつ、良好な作業性を保持することができる。
前記ゴム組成物には、必要に応じて、架橋剤を用いることができる。前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム−ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。なお、タイヤ用ゴム組成物としては、これらの中でも硫黄系架橋剤(加硫剤)がより好ましい。
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜20質量部が好ましい。前記架橋剤の含有量が0.1質量部未満であると、架橋がほとんど進行しないおそれがあり、一方、20質量部を超えると、一部の架橋剤により混練り中に架橋が進んでしまう傾向があり、また、加硫物の物性が損なわれるおそれがある。
前記加硫剤を用いる場合には、更に加硫促進剤を併用することもできる。前記加硫促進剤としては、グアジニン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が挙げられる。また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
(架橋ゴム組成物)
また、本発明の架橋ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物の架橋物である。本発明の架橋ゴム組成物は、本発明の多元共重合体に由来するため、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる。前記架橋の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加熱温度を120〜200℃とし、加熱時間を1分間〜900分間とすることが好ましい。かかる架橋ゴム組成物は、ゴム成分が由来する単量体の一つとして共役ジエン化合物を用いているため、EPDMのような、共役ジエン化合物を単量体として用いていない重合体を用いた場合に比べ、架橋特性が良好であり、従って機械特性がより高い。
(ゴム物品)
本発明のゴム物品は、本発明の架橋ゴム組成物を含むことを特徴とする。本発明のゴム物品は、本発明の多元共重合体を含むゴム組成物を架橋させたものを含むため、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる。なお、本発明のゴム物品の種類や製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ここで、ゴム物品としては、タイヤ、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホース等が挙げられる。なお、本発明の架橋ゴム組成物をタイヤに用いる場合、当該架橋ゴム組成物の適用部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トレッドゴム、キャップトレッドゴム、ベーストレッドゴム、サイドウォールゴム、サイド補強ゴム及びビードフィラーなどが挙げられる。これらの中でも、本発明のゴム組成物をキャップトレッドゴム、ベーストレッドゴムに用いることが、タイヤの耐亀裂成長性及びウェット性を効果的に向上させる観点で好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(合成例1:共重合体A)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、スチレン150g(1.92mol)を含むシクロヘキサン溶液300gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[1,3−(t−BuMe2Si)2C9H5Gd(N(SiHMe2)2)2]273μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]300μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド3.47mmolを仕込み、シクロヘキサン180mLに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量の触媒溶液を単量体溶液へ添加後、1,3−ブタジエン65g(1.20mol)を含む単量体溶液260gを導入し、エチレン圧下(0.5MPa)で、70℃で300分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、共重合体Aを得た。得られた共重合体Aの収量は210gであった。
(合成例2:共重合体B)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、スチレン60g(0.57mol)を含むシクロヘキサン溶液200gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[1,3−(t−BuMe2Si)2C9H5Gd(N(SiHMe2)2)2]135μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]149μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド3.25mmolを仕込み、シクロヘキサン90mLに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量の触媒溶液を単量体溶液へ添加後、1,3−ブタジエン54g(1.00mol)を含む単量体溶液220gを導入し、エチレン圧下(0.5MPa)で、70℃で270分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、共重合体Bを得た。得られた共重合体Bの収量は102gであった。
(合成例3:共重合体C)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、スチレン45g(0.43mol)を含むシクロヘキサン溶液200gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[1,3−(t−BuMe2Si)2C9H5Gd(N(SiHMe2)2)2]98μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]108μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド2.90mmolを仕込み、シクロヘキサン90mLに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量の触媒溶液を単量体溶液へ添加後、1,3−ブタジエン75g(1.38mol)を含む単量体溶液300gを導入し、エチレン圧下(0.5MPa)で、70℃で180分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、共重合体Cを得た。得られた共重合体Cの収量は131gであった。
(合成例4:共重合体D)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、スチレン90g(0.86mol)を含むシクロヘキサン溶液200gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[1,3−(t−BuMe2Si)2C9H5Gd(N(SiHMe2)2)2]254μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]279μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド3.15mmolを仕込み、シクロヘキサン165mLに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量の触媒溶液を単量体溶液へ添加後、1,3−ブタジエン55g(1.01mol)を含む単量体溶液250gを導入し、エチレン圧下(0.5MPa)で、70℃で360分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、共重合体Cを得た。得られた共重合体Dの収量は148gであった。
(合成例5:共重合体a)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、スチレン45g(0.43mol)を含むシクロヘキサン溶液150gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[1,3−(t−BuMe2Si)2C9H5Gd(N(SiHMe2)2)2]80μmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]88μmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド1.20mmolを仕込み、シクロヘキサン100mLに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量の触媒溶液を単量体溶液へ添加後、1,3−ブタジエン45g(0.83mol)を含む単量体溶液200gを導入し、エチレン圧下(1.5MPa)で、80℃で170分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを加えて反応を停止させ、さらに大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し、共重合体aを得た。得られた三元共重合体aの収量は97gであった。
(合成例6:共重合体b)
十分に乾燥した2Lステンレス反応器に、スチレン30g(0.28mol)を含むシクロヘキサン溶液150gを添加した。一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に1,3−ビス(t−ブチルジメチルシリル)インデニルガドリニウムビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)[1,3−(t−BuMe2Si)2C9H5Gd(N(SiHMe2)2)2]70μmol、ジイソブチルアルミニウムハイドライド2.0mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Me2NHPhB(C6F5)4]77μmolを仕込み、シクロヘキサン60mLに溶解させて触媒溶液とした。その後、グローブボックスから触媒溶液を取り出し、全量を反応容器へ添加後、1,3−ブタジエン45g(0.43mol)を含む単量体溶液180gを導入し、エチレン圧下(1.5MPa)で、70℃で200分間、重合を行った。重合後、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(NS−5)5質量%の2−プロパノール溶液2mLを加えて反応を停止させ、さらに大量の2−プロパノールで共重合体を分離し、60℃で真空乾燥し共重合体bを得た。得られた重合体bの収量は86gであった。
(共重合体cの準備)
旭化成株式会社製のスチレン−ブタジエン共重合体(製品名:タフデン1000)を準備し、これを共重合体cとした。
(各共重合体の同定)
まず、上述のようにして得られた共重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー−屈折率曲線(GPC−RI曲線)を測定して、各単量体由来の特徴的なピークを確認するとともに、H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルを測定して、芳香族ビニル化合物由来の芳香環骨格を確認して、三元共重合体であるか否かを確認した。
このようにして、共重合体A〜D及びa〜bが三元共重合体であることを確認した。
次に、各共重合体について、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、ミクロ構造、芳香族ビニル単位全体のうち共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合を、下記の方法で測定・評価した。その結果を表1に示す。
<ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー株式会社製HLC−8321GPC/HT、カラム:東ソー製GMHHR−H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、トリクロロベンゼンを溶媒として用い、各共重合体のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は140℃である。
<ミクロ構造>
各共重合体のミクロ構造を、H−NMRスペクトル(1,2ビニル結合の結合含量)及び13C−NMRスペクトル(シス−1,4結合とトランス−1,4結合の含量比)の積分比等により求めた。表1に、共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量(%)、トランス−1,4結合含量(%)、及び1,2ビニル結合含量(%)、共役ジエン単位の含有量(mol%)、非共役オレフィン単位の含有量(mol%)、及び芳香族ビニル単位の含有量(mol%)を示す。
例えば、共重合体Aについて、エチレン単位(Et)/ブタジエン単位(Bd)/スチレン単位(St)のモル比を、測定したH−NMRスペクトルの0.50〜1.75ppmの積分値と、4.75〜5.10ppm及び5.20〜5.50ppmの積分値の和と、6.75〜7.50ppmのピーク積分値から下記の通りに算出した。
Et:Bd:St=1.35/4:(0.02+0.44)/2:1.0/5=44:30:26
<芳香族ビニル単位全体のうち共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合>
多元共重合体における非共役オレフィン単位と芳香族ビニル単位との比率(A)をH−NMRスペクトルの積分比及び13C−NMRスペクトルの積分比から求め、次いで、多元共重合体に含まれるジエン部分をオゾン分解し、得られたジエン部分を含まない成分(非共役オレフィン単位及び/又は芳香族ビニル単位からなる成分)全体における非共役オレフィン単位と芳香族ビニル単位との比率(B)をH−NMRスペクトルの積分比及び13C−NMRスペクトルの積分比から求め、比率(A)及び比率(B)を用いて算出した。
(ゴム組成物の調製及び評価)
また、各共重合体を用い、表2に示す配合処方で、常法に従ってゴム組成物を調製した。次いで、このゴム組成物を160℃で30分間架橋(加硫)して架橋ゴム組成物を得、この架橋ゴム組成物に対し、ウェット性及び耐亀裂成長性を下記の方法により測定した。その結果を表2に示す。
<ウェット性>
ポータブルウェットスキッドテスターを用い、表面を水で濡らしたコンクリート路面上で、室温にて滑り抵抗を測定した。比較例3の実測値を100として、指数表示した。この指数値が大きいほど、ウェット性が良好であることを意味する。
<耐亀裂成長性>
JIS K6257に従って、各加硫ゴム組成物のサンプルを、80℃2週間熱老化させた後、JIS3号試験片の中心部に0.5mmの亀裂を入れ、40℃にて0〜50%の歪で繰り返し疲労を与え、サンプルが切断するまでの回数を測定した。比較例3の実測値を100として、指数表示した。この指数値が大きいほど、耐亀裂成長性に優れることを意味する。

Figure 2020114918
Figure 2020114918
※1 シリカ:東ソー・シリカ社製、「NIPSIL AQ」
※2 シランカップリング剤:信越化学社製、「ABC−856」
※3 老化防止剤:大内新興化学工業株式会社製、「ノクラック6C」
※4 ワックス:精工化学株式会社製、「サンタイトA」
※5 オイル:JX日鉱日石エネルギー社製、「JOMO PROCESS NC300BN」
※6 加硫促進剤A:大内新興化学株式会社製、「ノクセラーD」
※7 加硫促進剤B:大内新興化学株式会社製、「ノクセラーDM−P」
※8 加硫促進剤C:大内新興化学株式会社製、「ノクセラーNS−P」
表1,2より、共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有するとともに、芳香族ビニル単位全体のうち共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合を50%以上とした共重合体及び当該共重合体を含む実施例1〜4のゴム組成物は、耐亀裂成長性及びウェット性に優れることが分かる。
本発明によれば、耐亀裂成長性及びウェット性に優れる、多元共重合体、ゴム組成物及び架橋ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上述した架橋ゴム組成物を用いた、耐亀裂成長性及びウェット性に優れるゴム物品を提供することができる。

Claims (16)

  1. 共役ジエン単位と、非共役オレフィン単位と、芳香族ビニル単位とを有する多元共重合体であって、
    前記芳香族ビニル単位全体のうち、前記共役ジエン単位を含む非結晶部分に存在するものの割合が50%以上であることを特徴とする、多元共重合体。
  2. 前記共役ジエン単位全体におけるシス−1,4結合含量が50%以上である、請求項1に記載の多元共重合体。
  3. 前記芳香族ビニル単位の含有量が5mol%以上である、請求項1又は2に記載の多元共重合体。
  4. 前記芳香族ビニル単位の含有量が30mol%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の多元共重合体。
  5. 前記共役ジエン単位の含有量が20mol%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の多元共重合体。
  6. 前記共役ジエン単位の含有量が60mol%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の多元共重合体。
  7. 前記非共役オレフィン単位の含有量が20mol%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の多元共重合体。
  8. 前記非共役オレフィン単位の含有量が80mol%以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の多元共重合体。
  9. 前記非共役オレフィン単位が、エチレン単位、プロピレン単位及び1−ブテン単位から選択される一種以上のみからなる、請求項1〜8のいずれかに記載の多元共重合体。
  10. 前記芳香族ビニル単位がスチレン単位を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の多元共重合体。
  11. 前記共役ジエン単位が、1,3−ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の多元共重合体。
  12. 共役ジエン単位としての1,3−ブタジエン単位、非共役オレフィン単位としてのエチレン単位、及び芳香族ビニル単位としてのスチレン単位のみからなる三元共重合体である、請求項9〜11に記載の多元共重合体。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の多元共重合体を含有することを特徴とする、ゴム組成物。
  14. 請求項13に記載のゴム組成物の架橋物であることを特徴とする、架橋ゴム組成物。
  15. 請求項14に記載の架橋ゴム組成物を含むことを特徴とする、ゴム物品。
  16. タイヤである、請求項15に記載のゴム物品。
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