JP2020111530A - リグニンの製造方法、及びリグニン系分散剤 - Google Patents

リグニンの製造方法、及びリグニン系分散剤 Download PDF

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Abstract

【課題】クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液からリグニンを分離する際に、固形化段階を省略して液状リグニンを製造する方法を提供すること。【解決手段】限外濾過膜を用いてクラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液を限外濾過処理して濃縮液を回収する工程を有し、濃縮液中、重量平均分子量が3,000未満のリグニンの含有率が1〜50%である、リグニンの製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、リグニンの製造方法、及びリグニン系分散剤に関する。より詳細には、本発明は、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液からリグニンを分離して製造する方法、及び製造したリグニンを用いたリグニン系分散剤に関する。
リグニンは、樹木中に存在する天然高分子成分であり、木材を原料として使用する製紙産業で、大規模かつ商業的に発生している。例えば、クラフトパルプ廃液からはクラフトリグニンが得られ、亜硫酸パルプ廃液からはリグニンスルホン酸が得られる。クラフトリグニン、リグニンスルホン酸、クラフトリグニンを亜硫酸塩とホルムアルデヒドによりスルホメチル化したもの、リグニンスルホン酸又はその塩を部分的に脱スルホン化したもの、或いはリグニンスルホン酸又はその塩を限外濾過処理によって精製したものは、分散剤として染料、水硬性組成物(例えば、セメント、石膏)、無機及び有機顔料、石炭−水スラリー、農薬、窯業、油田掘削用泥水など広範囲な工業分野で多用されている。
一般的に、パルプ廃液(黒液)中にはリグニン以外に様々な不純物が含有されている。黒液からリグニンを分離する方法としては、例えば、特許文献1〜5に記載の方法が挙げられる。これらの方法は、いずれも以下のようにしてリグニンを得ている。まず、未処理の黒液あるいは酸化した黒液に対し、二酸化炭素を通気して黒液を酸性にする。次に、沈殿したリグニン粒子を分離する。分離したリグニン粒子を再度懸濁した後、硫酸を加えてリグニンケーキとしてリグニンを得ている。
米国特許第4521336号明細書 米国特許第4740591号明細書 国際公開第2006/038863号 国際公開第2006/031175号 国際公開第2011/150508号 特開平07−18595号公報
しかしながら、上記の方法は、いずれもリグニンの沈殿プロセスによる固形化段階が2回ある。そのため、黒液から得たリグニンを誘導体化する場合、再度溶解して反応を行う必要があり、非常に煩雑なプロセスとなっている。
従って、コストの削減の観点に加えて、省資源の観点からも、黒液から固形化段階を経ずにリグニンを製造する方法が望まれている。
ところで、サルファイト黒液の限外濾過処理は従来から行われている(例えば、特許文献6参照)。しかしながら、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液の限外濾過処理は、以下の理由で適用されていない。
クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液は、製造過程でのアルカリの作用で結合の開裂を伴うので、一般にリグニンの分子量が小さくなる傾向がある。そのため、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液に限外濾過処理を用いた場合、リグニンが限外濾過膜を通過して濃縮液中のリグニン量が低くなる、限外濾過膜の目詰まりを助長するという問題がある。
本発明の課題は、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液からリグニンを分離する際に、固形化段階を省略して液状リグニンを製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液に対して直接限外濾過膜を用いて限外濾過処理して濃縮液を回収する際に、濃縮液中の重量平均分子量が3,000未満のリグニンの含有率を所定の割合に限定することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕〜〔7〕を提供する。
〔1〕限外濾過膜(以下、「UF膜」ともいう)を用いてクラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液を限外濾過処理(以下、「UF処理」ともいう)して濃縮液を回収する工程を有し、前記濃縮液中、重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)が3,000未満のリグニンの含有率が1〜50%である、リグニンの製造方法。
〔2〕前記リグニンが、クラフトリグニン又はソーダリグニンである、上記〔1〕に記載のリグニンの製造方法。
〔3〕前記限外濾過膜の分画分子量が、5,000〜30,000である、上記〔1〕又は〔2〕に記載のリグニンの製造方法。
〔4〕前記クラフト蒸解黒液又は前記ソーダ蒸解黒液を、酸化処理及び酸性化処理の少なくともいずれかで処理する前処理工程をさらに有する、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のリグニンの製造方法。
〔5〕前記酸化処理が、空気、酸素、過酸化水素、及びオゾンからなる群から選ばれる1種類以上の酸化剤を用いた処理である、上記〔4〕に記載のリグニンの製造方法。
〔6〕前記酸性化処理が、酸性液体及び二酸化炭素を含有する気体の少なくともいずれかの酸性化剤を用いた処理である、上記〔4〕に記載のリグニンの製造方法。
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載されている製造方法によって製造されたリグニン、又はその誘導体化物を含有するリグニン系分散剤。
本発明によれば、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液からリグニンを分離する際に、固形化段階を省略して液状リグニンを製造することができる。
また、本発明によれば、製造した液状リグニンをそのまま誘導体化反応に使用し得るので、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液からその後の誘導体化まで全て液体で行うことができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。以下の本明細書中において、単に「黒液」と表記する場合は、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液を意味する。また、「AA〜BB」との表記は、AA以上BB以下を意味する。さらに、単に「リグニン成分」との表記は、濃縮液中のリグニン成分と、リグニンを誘導体化した後のリグニン成分の両方を示す。
[1.リグニンの製造方法]
本発明のリグニンの製造方法は、UF膜を用いて黒液をUF処理して濃縮液を回収する工程を有する。また、濃縮液中、Mwが3,000未満のリグニンの含有率は1〜50%である。
UF膜を用いて黒液をUF処理することにより、濃縮液の含有成分として液状リグニンを回収することができる。また、UF処理により、高分子のリグニンとそれ以外を分離し得る。即ち、黒液からUF膜を用いて液状リグニンを製造し得る。
本発明のリグニンの製造方法は、UF膜を用いて黒液をUF処理することにより、濃縮液の含有成分として液状リグニンを回収することができる。そのため、本発明のリグニンの製造方法は、従来のリグニンの分離方法と異なり、酸性条件で沈殿したリグニン粒子を分離する工程や、分離したリグニン粒子を再度懸濁した後、硫酸を加えてリグニンケーキとする工程を必要としない。従って、本発明のリグニンの製造方法は、固形化段階を省略して液状リグニンを製造し得る。
(黒液)
黒液としては、パルプ工場等で排出される、リグニンを含有するクラフト蒸解黒液、ソーダ蒸解黒液を用いることがより好ましい。
黒液はまた、酸化処理及び酸性化処理の少なくともいずれかで処理した黒液であってもよく、酸化処理及び酸性化処理の少なくともいずれかで処理したクラフト蒸解黒液であってもよい。
酸化処理の方法としては、空気、酸素、過酸化水素、及びオゾンからなる群から選ばれる1種類以上の酸化剤を用いて酸化する方法が好ましい。酸化剤が気体の場合、気体を黒液中に通気することによって酸化が行われる。酸化剤が液体の場合、液体を黒液に添加することによって酸化が行われる。なお、酸化処理は20〜100℃で行うことが好ましい。
酸性化処理は、酸性液体及び二酸化炭素を含有する気体の少なくともいずれかの酸性化剤を用いて酸性化する処理であることが好ましい。酸性液体としては、例えば、鉱酸、有機酸、各種工業プロセスにおける廃酸(トール油プラント又は脱塩プラントからの廃酸)が挙げられる。二酸化炭素を含有する気体としては、例えば、市販の二酸化炭素、石灰炉又は他の燃焼装置からの煙道ガス、或いは排水処理システム(例えば、UNOX)から放出されたガスが挙げられる。
黒液の酸性化は、リグニンが析出してこないpH値である10以上が好ましい。また、その上限は、UF膜の耐久pH以下とすることが好ましい。
(UF膜)
UF膜としては、公知のUF膜を用いることができる。例えば、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜、平膜が挙げられる。
UF膜の素材は公知のものを用いることができる。例えば、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セラミックが挙げられる。なお、UF膜は市販品であってもよい。
UF膜の分画分子量は、5,000〜30,000が好ましく、10,000〜25,000がより好ましく、15,000〜23,000がさらに好ましい。分画分子量が5,000以上のUF膜を用いると、黒液の分離速度が過度に遅くなることを防止し得る。また、分画分子量が30,000以下のUF膜を用いると、黒液からリグニンが分離されなくなることを防止し得る。
UF膜を用いたUF処理による濃縮倍率は任意に設定できる。すなわち、濃縮液の流出量が任意の量になった時に、UF処理を停止すれば良い。好ましくは2〜6倍に濃縮することが好ましい。2〜6倍に濃縮とは、原液(黒液)量が1/2〜1/6量になることを意味する。
(UF処理)
UF処理時の黒液の温度は特に限定されない。例えば、20〜80℃が好ましく、UF膜材質の耐熱面を考慮すると、20〜70℃がより好ましい。
UF処理時の黒液のpH値は、2〜11が好ましい。
UF処理時の黒液の固形分濃度(w/w)は、2〜30%が好ましく、5〜15%がより好ましい。
(濃縮液)
濃縮液中、Mwが3,000未満のリグニンの含有率は1〜50%である。Mwが3,000未満のリグニンの含有率が1〜50%であると、高分子量のリグニンを回収でき、その後の誘導体化を経ることで、リグニン系分散剤として利用し得る。
なお、リグニンは、クラフトリグニン又はソーダリグニンであることが好ましい。
UF処理後の濃縮液中のリグニンのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定し得る。GPCの測定は、プルラン換算する公知の方法にて、下記の条件にて行えばよい。
測定装置;東ソー製
使用カラム;Shodex Column OH−pak SB−806HQ、SB−804HQ、SB−802.5HQ
溶離液;四ホウ酸Na1.0%、イソプロピルアルコール0.3%の水溶液
溶離液流速;1.00ml/min
カラム温度;50℃
測定サンプル濃度;0.2質量%
標準物質;プルラン(昭和電工製)
検出器;RI検出器(東ソー製)
検量線;プルラン基準
UF処理後の濃縮液中のリグニンのMwは、好ましくは5,000〜30,000であり、より好ましくは5,000〜20,000である。また、Mwが3,000未満のリグニンの含有率は、1〜50%である。
濃縮液中のMwが3,000未満のリグニンの含有率は、以下のようにして算出し得る。まず、上述の条件にて濃縮液をGPCで測定し、ピーク強度(mV)を縦軸に、溶出時間(Retention Time)を横軸したGPCクロマトグラムを得る。ベースラインは通常、ポリマーピークの溶出開始時間から溶出終了時間までとする。溶出終了時間が明瞭に認められない場合、ベースラインを作成した後に、ピークとピークの谷の中間地点で区切り、その点をポリマーピークの溶出終了時間とする。リグニンのGPCクロマトグラムは、通常明瞭なピークを与えないので、ポリマーピークの溶出開始から、複数のピークを含むポリマー溶出曲線を一つのピークとし、Mw3,000の位置で垂直にピークを分割し、面積割合を計算して算出し得る。
(誘導体化)
リグニンの誘導体化は特に限定されず、リグニン系分散剤に用いられる従来公知の誘導体化であってよい。従来公知の誘導体化の例として、スルホメチル化を説明する。
(スルホメチル化リグニン)
UF処理後のリグニンは、スルホメチル化によりスルホン酸基を導入して誘導体化し得る。スルホメチル化リグニンは、分散剤として使用される。スルホン酸基を導入したリグニンは、−SOM(但し、Mは、水素原子、一価金属塩、又は二価金属塩を示す)で表されるスルホン酸(塩)基のS含量が、1.0〜6.0質量%であることが好ましい。
−SOM(但し、Mは、水素原子、一価金属塩、又は二価金属塩を示す)で表されるスルホン酸(塩)基のS含量とは、リグニンの固形物含量に対する−SOM(但し、Mは、水素原子、一価金属塩、又は二価金属塩を示す)に含有される硫黄原子の含量をいう。より詳細には、下記数式(1)から算出する値である。
Figure 2020111530
(数式(1)中、S含量は、いずれもリグニンの固形物量に対するS含量を示す。)
数式(1)中、全S含量は、リグニンの誘導体化物に含まれる全てのS含量であり、ICP発光分光分析法により定量し得る。また、無機態S含量は、イオンクロマト法により定量したSO含量、S含量及びSO含量の合計量として算出し得る。但し、無機態S含量は、酸化物の含量そのものを基に算出するのではなく、酸化物中のSの含量を基に算出する。
クラフトリグニンのスルホメチル化反応では、一般的にリグニンのC−Cユニットに対して、下記一般式(1)に示す位置にスルホン酸(塩)基が導入される。一般式(1)は、リグニンの部分構造であるC−Cユニットを示す。即ち、左側の矢印の反応ではα位にスルホン酸(塩)基が導入されており、一般にスルホン化と呼ばれる。一方、右側の矢印の反応ではα位以外に芳香核の5位にホルムアルデヒドを介してスルホン酸(塩)基が導入される。
Figure 2020111530
(一般式(1)中、Mは、水素原子、一価金属塩、又は二価金属塩を示す)
スルホメチル化リグニンの製造は、公知の方法で行えばよく、例えば、リグニンと亜硫酸塩及びアルデヒド類を反応させることによって行い得る。なお、本発明においては、リグニンは上記した方法で製造した濃縮液に含まれており、濃縮液に亜硫酸塩及びアルデヒド類を添加して反応を行い得る。
リグニンをスルホメチル化する方法の一例が、米国特許第2,680,113号に開示されている。この方法において、リグニンのスルホメチル化反応は、50〜200℃の温度範囲で行われ、80〜170℃の温度範囲で行われることが好ましく、100〜160℃の温度範囲で行われることがさらに好ましい。また、スルホメチル化反応時のpHは、8以上が好ましい。
添加する亜硫酸塩の量は、リグニンに対して1〜50質量%が好ましい。亜硫酸塩の添加量がかかる範囲であると、リグニンの親水性が良好となり、分散媒への親和性が高くなる。そのため、布へのリグニンの定着が少なくなり、布への汚染性が低くなる。一方、過剰に亜硫酸塩が添加された場合、リグニンの純度が低下するため良好な染料分散性が得られない場合がある。
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドが好ましい。添加するアルデヒドの量は、リグニンに対して0.25〜12.5質量%が好ましい。ホルムアルデヒドがかかる範囲であると、上記一般式(1)の右側の矢印の反応が良好に進み、ホルムアルデヒドを介してスルホン酸(塩)基が導入される。
(リグニン成分)
リグニン成分の固形分あたりのメトキシル基含量は、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上がさらに好ましい。その上限は、20.0質量%以下が好ましく、19.5質量%以下がより好ましく、19.2質量%以下がさらに好ましい。メトキシル基含量が3質量%以上であると、高温での染料分散性が良好となる。一般にリグニン成分の構造中には、芳香核に結合したメトキシル基が存在する。そのため、メトキシル基含量は、リグニン含量の指標となる。
なお、メトキシル基含量は、Viebock及びSchwappach法によるメトキシル基の定量法(「リグニン化学研究法」、P.336〜340、平成6年、ユニ出版発行)によって測定した値である。
(無機塩)
リグニン成分は、通常、無機塩を含有する。無機塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫化ナトリウムが挙げられる。
リグニン成分の固形分に対する無機塩の含量は、通常、1〜25質量%である。
リグニン成分中のCa含量(固形分に対するカルシウム原子含量)は、通常、0.06質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以下である。その下限は、通常、0.001質量%以上であり、好ましくは0.005質量%以上である。
リグニン成分中のNa含量(固形分に対するナトリウム原子含量)は、通常、18質量%以下であり、好ましくは16質量%以下である。その下限は、通常、1質量%以上であり、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上である。
リグニン成分中のMg含量(固形分に対するマグネシウム原子含量)は、通常、0.300質量%以下であり、好ましくは0.200質量%以下である。その下限は、通常、0.001質量%以上であり、好ましくは0.002質量%以上である。
リグニン成分中の硫酸イオン含量(固形分に対する硫酸イオン含量)は、通常、10.0質量%以下であり、好ましくは8.0質量%以下である。その下限は、通常、0.5質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上である。
リグニン成分中の亜硫酸イオン含量(固形分に対する亜硫酸イオン含量)は、通常、5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下である。その下限は特に限定されず、含有されない場合もある。
リグニン成分中のS含量(固形分に対するS含量)は、通常、5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下である。その下限は特に限定されず、含有されない場合もある。
無機塩含量、Ca含量、Na含量及びMg含量の測定は、以下のようにして行うことができる。まず、試料を10%塩酸溶液で100℃、15分間処理する。その後、各金属イオン(Ca2+、Na、Mg2+)に関して、誘導結合プラズマ(ICP)法により定量し、定量結果をそれぞれ、Ca含量、Na含量及びMg含量(質量%)に換算する。硫酸イオン、亜硫酸イオン及びSに関してはイオンクロマト法により定量する。
[2.リグニン系分散剤]
本発明のリグニン系分散剤は、[1.リグニンの製造方法]に記載されている製造方法によって製造されたリグニン、又はその誘導体化物を含有する。[1.リグニンの製造方法]に記載されている製造方法によって製造されたリグニンは、UF処理後の濃縮液の含有成分である。
なお、リグニンは、高分子のフェノール化合物として知られ、針葉樹、広葉樹でも構造が異なることが知られている。また、物として特定することが可能なほど、明確に区別し得る特性は知られていない。従って、リグニンの構造又は特性で直接特定することは不可能であるか、およそ非実際的な事情が存在するものである。
本発明のリグニンの製造方法で得られるリグニンは、濃縮液の含有成分であるので、濃縮液をそのまま誘導体化反応に利用することができ、再度の溶解を要しない。そのため、工程数の削減によるコスト削減や、省資源に資する。また、濃縮液中、Mwが3,000未満のリグニンの含有率が1〜50%であるので、高分子量のリグニンが存在し、誘導体化を経ることでも、リグニン系分散剤として利用し得る。以下、リグニン系分散剤として、リグニン系染料分散剤の例を記載する。
リグニン系染料分散剤と併用する染料としては、例えば、C.I.Disperse Red17などのアゾ系分散染料、C.I.Disperse Red60などのアントラキノン系分散染料等の、溶媒に分散させて用いられる分散染料が挙げられる。
被染色材料は特に限定されず、布、紙のいずれでもよい。但し、高温染着工程(例えば、100℃以上、110℃以上、120℃以上)を経て得る材料が好ましく、合成繊維(例えば、ポリエステル、アセテート、ナイロン)がより好ましい。高温染着工程の際の温度条件も特に限定されないが、リグニン系染料分散剤の染料への添加量は、染料溶液中の染料の重量に対し、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。上限は、100質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限されるものではなく、前・後記述の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例中、特に断りの無い限り、「%」は「質量%」を示し、「部」は「重量部」を示す。また、物性値の測定は、上記した方法による。
<黒液のUF処理>
<実施例1>
針葉樹(N材)クラフト蒸解黒液85L(固形分17.5%)を70℃に昇温した後、空気を通気し、空気酸化を行った。次いで、30%過酸化水素を550g添加し、90℃で1時間酸化処理を行った。その後、二酸化炭素を通気して黒液のpHを11まで下げる酸性化処理を行い、UF処理(分画分子量20,000)により4倍濃縮液(A−1)(固形分19.5%)を得た。
<実施例2>
針葉樹(N材)クラフト蒸解黒液85L(固形分19.0%)を70℃に昇温した後、空気を通気し、空気酸化を行った。次いで、30%過酸化水素を5500g添加し、90℃で1時間酸化処理を行った。その後、二酸化炭素を通気して黒液のpHを11まで下げる酸性化処理を行い、UF処理(分画分子量20,000)により6倍濃縮液(A−2)(固形分22.5%)を得た。
<リグニンの誘導体化>
<実施例3>
還流冷却器を付属した1Lオートクレーブに、実施例1で得た4倍濃縮液(A−1)(固形分19.5%)を500部、亜硫酸水素ナトリウム4部、37%ホルムアルデヒド溶液3部を仕込み、140℃で120分スルホメチル化反応を行った。室温まで冷却した後、スルホメチル化リグニン(B−1)を得た。
<実施例4>
還流冷却器を付属した1Lオートクレーブに、実施例2で得た6倍濃縮液(A−2)を20%となるよう500部仕込み、亜硫酸ナトリウム20部、37%ホルムアルデヒド溶液14部を仕込み、140℃で120分スルホメチル化反応を行った。室温まで冷却した後、スルホメチル化リグニン(B−2)を得た。
実施例1〜4で得られたリグニン及びその誘導体化物の無機塩量及び物性値を下記表1に記す。なお、表1中の%は、各製造例で得られたリグニン成分(サンプル全体)の固形分に対する質量%を表す。
Figure 2020111530
実施例1及び2、並びに表1の結果から、本発明のリグニンの製造方法によれば、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液からリグニンを分離する際に、固形化段階を省略して液状リグニンを製造することができることがわかる。
また、実施例3及び4、並びに表1の結果から、本発明のリグニンの製造方法によれば、製造した液状リグニンをそのまま誘導体化反応に使用し得るので、クラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液からその後の誘導体化まで全て液体で行うことができることがわかる。
<実施例1〜4、比較例1>
実施例1〜4のリグニン及びその誘導体化物、並びに比較例として針葉樹(N材)クラフト蒸解黒液について、分散染料液(リグニン系分散剤)を作製し、評価試験を行った。分散染料液の作製方法と、評価試験の方法を下記に示す。また、評価試験の結果を表2に示す。
<分散染料液の作製>
C.I.Disperse Red60に対して、実施例の混合液又は比較例の蒸解黒液を固形分添加率40%となるように混合し、水を加えて固形分35%に調整した。これを、ビーズミル(粒径1mmのガラスビーズを使用)により破砕して、分散染料液を作製した。
<分散染料液の高温分散性>
分散染料液を計量し、染料として0.24%となるよう純水で希釈し、染色液250ml(pH5.0)を調製した。10gのポリエステル布を、115℃に昇温した後10分間染色機で染色した。染色後の布を軽く水洗し、目視で5段階評価した。評価ポイントが高い方が良好な分散性を有していると評価される。評価ポイントを下記に記す。
(評価ポイント)
5:均一に染色されている
4:均一性がやや悪い
3:黒色の点が見える
2:黒色の点が多い
1:黒色の点がかなり多い
<分散染料液の布汚染性>
分散染料液を0.24%となるよう純水で希釈し、分散剤溶液250ml(pH5.0)を調製した。10gのポリエステル布を、130℃に昇温後60分間染色機で染色した。染色後の布を軽く水洗し、アイロンで乾燥して、布の白色度を測定した。白色度が高い方が、汚染性が低く良好な性能を有していると評価される。なお、白色度の測定は、ISO白色度・不透明度測定器(CMS-35SPXM,MURAKAMI COLORLAB.)により行った。
Figure 2020111530
表2に示すように、本発明の製造方法で製造したリグニンを用いると、染料の高温分散性が高く、白色度が高いため布への汚染性が低い分散染料液(リグニン系分散剤)とし得ることが分かる。

Claims (7)

  1. 限外濾過膜を用いてクラフト蒸解黒液又はソーダ蒸解黒液を限外濾過処理して濃縮液を回収する工程を有し、
    前記濃縮液中、重量平均分子量が3,000未満のリグニンの含有率が1〜50%である、リグニンの製造方法。
  2. 前記リグニンが、クラフトリグニン又はソーダリグニンである、請求項1に記載のリグニンの製造方法。
  3. 前記限外濾過膜の分画分子量が、5,000〜30,000である、請求項1又は2に記載のリグニンの製造方法。
  4. 前記クラフト蒸解黒液又は前記ソーダ蒸解黒液を、酸化処理及び酸性化処理の少なくともいずれかで処理する前処理工程をさらに有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニンの製造方法。
  5. 前記酸化処理が、空気、酸素、過酸化水素、及びオゾンからなる群から選ばれる1種類以上の酸化剤を用いた処理である、請求項4に記載のリグニンの製造方法。
  6. 前記酸性化処理が、酸性液体及び二酸化炭素を含有する気体の少なくともいずれかの酸性化剤を用いた処理である、請求項4に記載のリグニンの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載されている製造方法によって製造されたリグニン、又はその誘導体化物を含有するリグニン系分散剤。
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