以下、本発明の実施の形態による建設機械として、油圧ショベルを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図7は、第1の実施の形態を示している。図1において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に俯仰の動作が可能に設けられたフロント装置4とを含んで構成されている。この場合、下部走行体2と上部旋回体3とは、油圧ショベル1の車体を構成している。
下部走行体2は、ベースとなるトラックフレーム6を備えている。トラックフレーム6は、上側に旋回輪5を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されたセンタフレーム7と、センタフレーム7を挟んで左,右両側に配置され前,後方向に延びた左,右のサイドフレーム8(左側のみ図示)とにより構成されている。左,右のサイドフレーム8には、それぞれアイドラ9と、駆動輪10(スプロケット)と、履帯11とが設けられている。アイドラ9は、各サイドフレーム8の一端(前端)側に前,後方向に移動可能に設けられている。
駆動輪10は、各サイドフレーム8の他端(後端)側に設けられ、油圧モータである走行用油圧モータ(図示せず)により回転駆動される。履帯11は、アイドラ9と駆動輪10との間に巻回されている。各サイドフレーム8の上部には、前,後方向に間隔をもって複数(例えば3個)の上転輪12Aが回転可能に設けられている。一方、各サイドフレーム8の下部には、前,後方向に間隔をもって複数(例えば8個)の下転輪12Bが回転可能に設けられている。下部走行体2は、駆動輪10により履帯11を駆動することにより走行する。
作業装置とも呼ばれるフロント装置4は、土砂の掘削作業等を行う多関節構造の作業機であり、上部旋回体3の前部中央に俯仰の動作を可能に装着されている。具体的には、フロント装置4は、旋回フレーム13の前側に回動可能に設けられている。フロント装置4は、上部旋回体3の旋回フレーム13に回動可能に取付けられたブーム4Aと、ブーム4Aの先端部に回動可能に取付けられたアーム4Bと、アーム4Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット4Cと、ブーム4Aを駆動するブームシリンダ4Dと、アーム4Bを駆動するアームシリンダ4Eと、バケット4Cを駆動するバケットシリンダ4Fとにより構成されている。これら複数のシリンダ4D,4E,4Fは、それぞれフロント装置4を駆動する油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)に相当する。
車体フレームとしての旋回フレーム13は、下部走行体2上に旋回可能に搭載されている。旋回フレーム13は、上部旋回体3の支持構造体を形成する支持フレームである。即ち、旋回フレーム13は、トラックフレーム6のセンタフレーム7上に旋回可能に設置されており、上部旋回体3の底部を構成している。旋回フレーム13には、キャブ14と、カウンタウエイト16と、エンジン18、油圧ポンプ19等の各種機器とが搭載されている。これら各種機器は、上部旋回体3の外殻を形成する外装カバー17により覆われている。
図2に示すように、旋回フレーム13は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板13Aと、底板13A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びる左縦板13B,右縦板13Cと、各縦板13B,13Cの左,右の外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びる左サイドフレーム13D(図1),右サイドフレーム(図示せず)と、底板13A、各縦板13B,13Cから左,右方向に張出し、その先端部に左サイドフレーム13D,右サイドフレームを支持する複数本の張出しビーム(図示せず)とを含んで構成されている。各縦板13B,13Cの前側には、フロント装置4のブーム4Aが取付けられており、各縦板13B,13Cの後側にはエンジン18が搭載されている。
キャブ14は、旋回フレーム13の左前側(換言すれば、フロント装置4の左側)に設置されている。キャブ14の内部には、オペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー・ペダル、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。オペレータは、キャブ14に搭乗し、操作レバー、操作ペダル等を操作することにより、油圧ショベル1の走行、上部旋回体3の旋回、フロント装置4による掘削作業等を行うことができる。
図2に示すように、キャットウォーク15は、上部旋回体3に沿って前,後方向に延びて設けられ、旋回フレーム13の左側面に取付けられている。キャットウォーク15は、例えば上部旋回体3の外装カバー17内に収容された搭載機器の点検作業等を行うときに、作業者が歩行する足場となる。カウンタウエイト16は、旋回フレーム13を構成する左,右の縦板13B,13Cの後端部に取付けられている。カウンタウエイト16は、フロント装置4との重量バランスをとる重量物として形成されている。
外装カバー17は、キャブ14とカウンタウエイト16との間に位置して旋回フレーム13上に配設されている。外装カバー17は、上面カバー17Aと、エンジンカバー17Bと、左側面カバー17Cと、右側面カバー17Dと、足場カバー17Eとを含んで構成されている。外装カバー17は、エンジン18、油圧ポンプ19等の搭載機器を収容している。この場合、外装カバー17内には、エンジン18および油圧ポンプ19が上部旋回体3の幅方向(左,右方向)に直線上に並んで配置されている。また、外装カバー17の足場カバー17Eは、作動油タンク31と燃料タンク22との間に位置してフロント装置4の後方に配置されたコントロールバルブ(図示せず)等を上側から覆っている。
エンジン18は、旋回フレーム13の後部側に搭載されており、カウンタウエイト16の前側に位置して機械室20内に設けられている。エンジン18は、油圧ショベル1の原動機(駆動源)であり、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成されている。エンジン18の出力側には、油圧ポンプ19が取付けられている。油圧ポンプ19は、エンジン18の左側に位置して機械室20内に設けられている。油圧ポンプ19は、エンジン18によって駆動される。油圧ポンプ19は、作動油タンク31に貯溜された作動油を圧油として吐出する。油圧ポンプ19から吐出された圧油は、コントロールバルブを介して油圧アクチュエータ(例えば、ブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4F、旋回用油圧モータ、走行用油圧モータ)に供給される。
機械室20は、旋回フレーム13上の搭載機器の収容室(エンジン室)であり、旋回フレーム13の後部側に位置してカウンタウエイト16の前側に配置されている。機械室20は、キャブ14とカウンタウエイト16との間に位置して左,右方向に延びる直方体状の空間として形成され、外装カバー17によって覆われている。機械室20内には、エンジン18、油圧ポンプ19等の搭載機器が収容されている。制御弁室21は、フロント装置4と機械室20との間に配置されている。制御弁室21は、燃料タンク22と作動油タンク31との間で足場カバー17Eによって上方から覆われた空間として形成されている。制御弁室21内には、図示しない複数のコントロールバルブ(制御弁群)が設けられている。これらコントロールバルブは、下部走行体2(走行用油圧モータ)、フロント装置4(シリンダ4D,4E,4F)、図示しない旋回装置(旋回用油圧モータ)等に給排される圧油を制御する。
また、制御弁室21の左側には作動油タンク31が設置され、制御弁室21の右側には燃料タンク22が設置されている。即ち、燃料タンク22は、旋回フレーム13の右側に設置されている。燃料タンク22は、エンジン18の燃料を貯えている。これに対して、作動油タンク31は、フロント装置4を挟んで燃料タンク22はと反対側となる旋回フレーム13の左側に配置されている。
次に、第1の実施の形態による油圧ショベル1に搭載された作動油タンク31の構成および作動油の交換方法について説明する。
作動油タンク31は、旋回フレーム13の左側に設置されている。作動油タンク31は、油圧ショベル1に搭載された複数の油圧アクチュエータ(例えば、シリンダ4D、4E、4F)に供給される作動油を貯留する。図3ないし図6に示すように、作動油タンク31は、上,下方向に延びた円形柱体の密閉容器として形成されている。即ち、作動油タンク31は、上面板32と、側面板41と、下面板45と、蓋体36とにより構成されている。上面板32は、作動油タンク31の上部を覆う板体として形成されている。上面板32は、フィルタ用開口部32Aと、上部開口部32B(図5)とを有している。
フィルタ用開口部32Aは、上面板32の中心から水平方向の一側にずれた位置に設けられている。フィルタ用開口部32Aは、図示しないフィルタの取付け取外しを行うための挿通孔である。フィルタ用開口部32Aは、円形板体の開口部カバー33により上方から覆われている。開口部カバー33は、複数(例えば、6個)のボルト34によって固定されている。フィルタは、シリンダ4D,4E,4F等の油圧アクチュエータ(以下、油圧アクチュエータ4D,4E,4Fという)から作動油タンク31に戻る戻り油に含まれる異物、汚損物等のコンタミネーションを除去する。
フィルタは、フィルタケース35の内部に装着されている。フィルタケース35は、上面板32の下側でフィルタ用開口部32Aと対応する位置に溶接等により固定されている。フィルタケース35の側面には、流入管路42の下流端が接続されている。これにより、油圧アクチュエータ4D,4E,4Fからの戻り油は、流入管路42からフィルタを通過して作動油タンク31内に戻る。このとき、戻り油に含まれるコンタミネーションは、フィルタに捕集される。フィルタの交換は、フィルタ用開口部32Aから開口部カバー33を取外して行うことができる。
上部開口部32Bは、上面板32の中心から水平方向の他側(フィルタ用開口部32Aとは反対側)にずれた位置に設けられている。上部開口部32Bは、作動油タンク31内に作動油を給油するときの開口となる。上部開口部32Bは、蓋体36とエアブリーザ39とによって覆われている。蓋体36は、上部開口部32Bを上方から覆っている。蓋体36は、複数(例えば、6個)のボルト37によって固定されている。図5に示すように、蓋体36の底面部36Aには、ブラケット38が固定されている。ブラケット38には、ロッド50の上端側が接続(ガイド)される嵌合部38Aが設けられている。
図5および図6に示すように、エアブリーザ39は、蓋体36の上面に取付けられている。エアブリーザ39は、複数(3個のみ図示)のボルト40を用いて蓋体36に装着(固定)されている。エアブリーザ39は、密封性を有する作動油タンク31の内部圧力の変化を抑制する。即ち、エアブリーザ39は、作動油タンク31内の油量(液面)の変化等に伴って内部圧力が変化する傾向となったときに、作動油タンク31内の空気を放出または作動油タンク31外から空気を吸入することにより、内部圧力の変化を抑える。
側面板41は、上面板32と下面板45とを全周に亙って取囲んで接続している。即ち、側面板41は、作動油タンク31の筒部を形成している。筒状の側面板41の上端縁は、上面板32の下面に溶接により固着され、側面板41の下端縁は、下面板45の上面に溶接により固着されている。側面板41の上側には、流入管路42が接続される挿通孔(図示せず)が設けられている。挿通孔は、流入管路42の下流端とフィルタケース35との接続部に対応する位置に設けられている。
流入管路42は、作動油タンク31の側面板41の上部位置に溶接により接続(固定)されている。流入管路42は、作動油タンク31の側面板41に設けられた挿通孔に挿通され、作動油タンク31の内部に配設されたフィルタケース35に接続されている。即ち、流入管路42の一側(下流端側)は、作動油タンク31の側面板41の挿通孔を通じてフィルタケース35まで延びている。流入管路42は、油圧アクチュエータ4D,4E,4Fからの戻り油が流通する。即ち、作動油タンク31には、流入管路42を通じて油圧アクチュエータ4D,4E,4Fからの戻り油が流入する。
また、側面板41には、レベルゲージ43が設置されている。レベルゲージ43は、例えば、上,下方向に延びた透明の筒体として形成され、上端側と下端側とがボルト44,44により固定されている。レベルゲージ43は、ボルト44,44に形成された給油通路を通じて作動油タンク31内の作動油が流入することにより、作動油タンク31内の作動油の液面レベルを作動油タンク31外から視認することができる。レベルゲージ43は、油圧ショベル1のフロント装置4を予め定められた姿勢(例えば、図7に示す姿勢)にした状態での作動油タンク31内の作動油量の適正液面レベルに対応する位置に取付けられている。
下面板45は、作動油タンク31の下部を覆う板体として形成されている。下面板45は、下部開口部45Aを有している。下部開口部45Aは、流出管路46の一側(上流端側)が接続されるための開口として形成されている。下部開口部45Aは、上面板32の上部開口部32Bの下方側、即ち、下面板45のうち上面板32の上部開口部32Bと対向する位置に設けられている。これにより、後述するように、下部開口部45Aと対応する位置に設けられるストレーナ49を、作動油タンク31の上方から上部開口部32Bを通じて作動油タンク31内に挿入または作動油タンク31内から取出すことができる。
また、下部開口部45Aは、流出管路46に一体的に設けられたフランジ46Aによって下方から覆われている。即ち、流出管路46のフランジ46Aは、作動油タンク31の下部開口部45Aを取り囲むように設けられたフランジ31Aに取付けられている。流出管路46は、作動油タンク31の下面板45側に配置されている。流出管路46は、複数の油圧アクチュエータ4D,4E,4Fに作動油を供給するためのものである。流出管路46の一側(上流端側)は、下面板45の下部開口部45Aに下方から挿通され、下面板45よりも上側に突出している。流出管路46のフランジ46Aは、複数(3個のみ図示)のボルト48によって下面板45に固定されている。下面板45と流出管路46との接続口には、ストレーナ49が接続されている。即ち、流出管路46の上流端側で、作動油タンク31の内部に突出した部位には、ストレーナ49の嵌合部49Bが嵌着されている。一方、流出管路46の下流端側は、図示しない管路を介して油圧ポンプ19に接続されている。作動油タンク31内の作動油は、流出管路46を介して油圧ポンプ19に供給され(吸込まれ)、油圧ポンプ19から圧油となって油圧アクチュエータ4D,4E,4Fに供給される。
ストレーナ49は、作動油タンク31に備えられており、流出管路46と下面部49Aとの接続口に着脱可能に設けられている。ストレーナ49は、上,下方向に延びる円柱状に形成され、下面部49Aには、流出管路46の上流端側に嵌合される嵌合部49Bが設けられている。図6に示すように、ストレーナ49の下面部49Aは、下部開口部45Aに挿通されている。ストレーナ49は、作動油タンク31内から流出管路46を介して油圧ポンプ19に供給される作動油を清浄化する。即ち、作動油が油圧ポンプ19に供給されるときに、作動油中の異物、汚損物等のコンタミネーションは、ストレーナ49によって除去される。このために、ストレーナ49は、コンタミネーションを濾過(捕集)するスクリーン(図示せず)を内部に有している。ストレーナ49は、フィルタと同様に定期的な交換を必要とする。この場合、ストレーナ49の上端部には、ロッド50の他端(下端)側が接続(連結)されている。ストレーナ49を交換するときは、ロッド50を用いて流出管路46からストレーナ49を取外し、上部開口部32Bを通じて作動油タンク31内から取出すことができる。これにより、ロッド50を用いてストレーナ49を交換できる。
ロッド50は、作動油タンク31の内側に設けられており、上,下方向に延びている。ロッド50は、ストレーナ49の上面と蓋体36のブラケット38との間の離間寸法とほぼ同じ長さ寸法を有する棒状体として形成されている。ロッド50は、ストレーナ49の上面に連結され、ストレーナ49から上部開口部32Bに向けて上方に延びている。この場合、ロッド50の一端(上端)側は、蓋体36のブラケット38に接続、より具体的には、ブラケット38の嵌合部38Aに嵌合されている。一方、ロッド50の他端(下端)側は、ストレーナ49の上端部に接続(固定)されている。ロッド50は、上端側が上部開口部32B付近まで延びる長さを有している。従って、ストレーナ49の交換作業を行うときに、その作業者は、ロッド50の上側を把持することにより、作動油タンク31内からストレーナ49を取り出すことができる。
また、ロッド50の上端側には、蓋体36のブラケット38の下面と当接する大径部51が設けられている。大径部51は、ブラケット38の下面と当接することにより、ロッド50、延いては、ストレーナ49を下方に向けて押し付ける。ロッド50には、大径部51よりも下側に位置して環状部材として形成された目盛52,53が設けられている。
図6に示すように、目盛52,53は、ロッド50の上部側に位置して、上,下方向に所定の間隔をもって配置されている。目盛52,53は、作動油タンク31内に作動油を給油する作業者が上部開口部32Bから視認できる位置に設けられている。目盛52,53は、作動油タンク31内に貯留される作動油の適正液面レベル(上限、下限)を示している。目盛52,53の内側には、ロッド50が挿通されている。この場合、目盛52,53は、例えば、ロッド50に溶接により固定されている。ここで、目盛52,53は、レベルゲージ43と同じ高さ位置に設けられている。
即ち、目盛52,53は、レベルゲージ43と同様に、油圧ショベル1のフロント装置4の定められた姿勢(例えば、図7に示す姿勢)に応じた作動油量の適正液面レベルの上限、下限にそれぞれ対応している。上側に位置する上目盛52は、フロント装置4を図7に示す姿勢とした状態での作動油量の適正液面レベルの上限に対応する。下側に位置する下目盛53は、フロント装置4を図7に示す姿勢とした状態での作動油量の適正液面レベルの下限に対応する。作動油タンク31の作動油を交換するときは、フロント装置4を図7に示す姿勢にした状態で、作動油タンク31内から作動油を排出し、新たな作動油を給油する。このとき、作動油は、上目盛52と下目盛53との間に液面レベルが位置するまで作動油タンク31内に給油する。
ここで、図7は、作動油の交換を行うときのフロント装置4の基本姿勢を示している。作動油の交換作業を行うときに、フロント装置4は、バケット4Cを接地させることが望ましい。一方で、古い作動油をより多く交換するために、フロント装置4の各シリンダ4D,4E,4Fは、内部の残油量が少なくなるように縮小させることが望ましい。そこで、第1の実施の形態では、図7に示すように、フロント装置4のバケット4Cを接地させ、かつ、アームシリンダ4Eを収縮させた姿勢(ブーム4Aおよびアーム4Bを前方に延ばし、かつ、バケット4Cをクラウドさせた姿勢)としている。即ち、各シリンダ4D,4E,4F内の作動油の総量(油量)を少なくでき、かつ、バケット4Cを地面に降ろした姿勢としている。このように、図7に示すような姿勢が、作動油の給油時の定められた基本姿勢(作動油を交換するときの姿勢の第1例)となっている。目盛52,53は、この姿勢で作動油を給油するときの適正液面レベルの上限と下限とにそれぞれ対応している。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
キャブ14に搭乗したオペレータがエンジン18を始動させると、エンジン18によって油圧ポンプ19が駆動される。これにより、作動油タンク31に貯溜された作動油は、油圧ポンプ19に吸込まれ、油圧ポンプ19から圧油として吐出される。圧油は、キャブ14内に設けられた走行用の操作レバー・ペダル、作業用の操作レバーの操作に応じて、走行油圧モータ、旋回油圧モータ、フロント装置4のブームシリンダ4D、アームシリンダ4E、バケットシリンダ4Fに向けて供給される。これにより、油圧ショベル1は、下部走行体2による走行動作、上部旋回体3の旋回動作、フロント装置4による掘削作業等を行うことができる。
ここで、油圧ショベル1の作動油タンク31内の油量は、フロント装置4の油圧アクチュエータ4D,4E,4Fの状態、即ち、それぞれのシリンダ4D,4E,4Fの長さ(伸長量、縮小量)により増減する。このため、作動油を交換するときは、各シリンダ4D,4E,4Fが動作しても作動油タンク31内の油量が超過または不足しないように、交換時のフロント装置4の姿勢に応じた適正量の作動油を作動油タンク31内に給油する必要がある。
作動油タンク31の作動油の交換は、次のように行う。まず、図7に示すように、油圧ショベル1のフロント装置4を定められた姿勢(基本姿勢)にする。次に、作動油タンク31内の作動油を排出する。作動油タンク31内の作動油を排出したら、新しい作動油を作動油タンク31内に給油する。この給油作業は、例えば、作動油タンク31の上面に立って行う。図3に示すように、作動油の給油は、蓋体36を取外した状態の上部開口部32Bに、液体注入ノズル54を差し込むことにより行う。
このとき、図4に示すように、作動油タンク31の上面から上部開口部32Bを覗くことにより、上部開口部32Bからロッド50に設けられた目盛52,53を確認することができる。これにより、作動油の交換時には、作動油タンク31の上面に設けられた上部開口部32Bから、作動油量の適正液面レベルを容易に視認することができる。
以上のように、第1の実施の形態によれば、作動油タンク31の内側には、上,下方向に延びるロッド50が設けられている。そして、ロッド50には、目盛52,53が設けられている。目盛52,53は、作業者が上部開口部32Bから視認できる位置に設けられており、作動油タンク31内に貯留される作動油の適正液面レベル(より具体的には、適正液面レベルの上限および下限)を示している。このため、作動油の交換時に、作動油タンク31の上部開口部32Bから作動油の液面と目盛52,53とを比較することで、作動油の給油を適正液面レベルで終了することができる。これにより、作動油タンク31の側面板41に設けられたレベルゲージ43を確認しなくても、適正液面レベルまで作動油を給油することができ、給油作業の手間を低減することができる。
第1の実施の形態によれば、ロッド50は、ストレーナ49に連結されている。このため、ストレーナ49を交換するときに把持するロッド50を、目盛52,53を設けるロッド50として用いることができる。即ち、目盛52,53を設けるために、ロッド50を新設しなくて済む。これにより、コストの上昇を抑制できる。
第1の実施の形態によれば、ロッド50には、環状部材として形成された目盛52,53が溶接により固定されている。これにより、適正液面レベルの識別が容易になると共に、複数の目盛があった場合でもフロント装置4の姿勢に応じた作動油量の適正液面レベルを識別できる。
次に、図8および図9は、第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、目盛の位置を第1の実施の形態の目盛よりも下側に配置したことにある。なお、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ロッド61は、第1の実施の形態のロッド50と同様に、ストレーナ49に連結され、ストレーナ49から上部開口部32Bに向けて上方に延びている。ロッド61には、環状部材として形成された目盛62,63(上目盛62、下目盛63)が溶接により固定されている。目盛62,63は、第1の実施の形態の目盛52,53よりも下側に配置されている。即ち、目盛52,53は、ロッド61の中央寄りに設けられている。
ここで、第2の実施の形態の目盛62,63の位置は、図9に示すフロント装置4の姿勢に対応して設定されている。即ち、油圧ショベル1の駐機場所が狭くても、作動油の交換作業を行うことができるように、図9に示す一般的な駐機姿勢(作動油を交換するときの姿勢の第2例)での適正液面レベルに対応する位置に目盛62,63を設けている。
第2の実施の形態は、上述のようなロッド61に目盛62,63を取付けたもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。第2の実施の形態では、第1の実施の形態よりも狭い場所で、作動油の交換作業を行うことができる。即ち、第2の実施の形態では、第1の実施の形態の姿勢(基本姿勢)以外でも、作動油を適正液面レベルまで給油することができる。
次に、図10および図11は、第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、目盛の位置を第1の実施の形態の目盛よりも上側に配置したことにある。なお、第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
ロッド71には、目盛72,73(上目盛72、下目盛73)が固定されている。目盛72,73は、第1の実施の形態の目盛52,53よりも上側に配置されている。ここで、第3の実施の形態の目盛72,73の位置は、図11に示すフロント装置4の姿勢(作動油を交換するときの姿勢の第3例)での作動油量の適正液面レベルの上限と下限とにそれぞれ対応している。第3の実施の形態では、フロント装置4のバケット4Cを接地させ、かつ、アームシリンダ4Eおよびバケットシリンダ4Fを収縮させた姿勢(即ち、ブーム4Aおよびアーム4Bを前方に延ばし、かつ、バケット4Cをダンプさせた姿勢)としている。即ち、第3の実施の形態では、第1の実施の形態の基本姿勢(図7)よりも、バケットシリンダ4Fを収縮させている。図11に示すフロント装置4の姿勢は、平地でシリンダ4D,4E,4Fを最も縮小した姿勢に相当する。これにより、第3の実施の形態では、第1の実施の形態よりも、シリンダ4D,4E,4F内に残る作動油の総量を少なくでき、交換できる作動油量を増加させることができる。
第3の実施の形態は、上述のようなロッド71に目盛72,73を取付けたもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。第3の実施の形態では、第1の実施の形態よりも交換できる作動油量を増加させることができる。
なお、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態では、フロント装置4の1つの姿勢に対応して1つのロッド50,61,71に1組(上限、下限)の目盛52,53,62,63,72,73を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図12に示す第1の変形例のように、フロント装置4の複数の姿勢(例えば、2つの姿勢)に対応して1つのロッド81に2組の目盛、即ち、円筒状の目盛82,83(環状部材)および角筒状の目盛84,85(環状部材)を設ける構成としてもよい。
この場合、目盛82,83(第1の上目盛82、第1の下目盛83)は、例えばフロント装置4の基本姿勢(図7)に対応した作動油量の適正液面レベル(上限、下限)に相当する。また、目盛84,85(第2の上目盛84、第2の下目盛85)は、例えばフロント装置4の駐機姿勢(図9)に対応した作動油量の適正液面レベル(上限、下限)に相当する。即ち、図12に示す第1の変形例では、各目盛(目盛82,83、目盛84,85)は、2通りの姿勢(基本姿勢、駐機姿勢)に対応している。換言すれば、ロッド81には、フロント装置4の複数の姿勢(基本姿勢、駐機姿勢)毎に複数の油圧アクチュエータ4D,4E,4F(即ち、シリンダ4D,4E,4F)内に残る作動油量に対応して複数の目盛(目盛82,83、目盛84,85)が設けられている。これにより、周囲の状況に応じて、異なるフロント装置4の姿勢をとっても、そのときの姿勢に応じた適正液面レベルに給油することができる。さらに、図示は省略するが、3つ以上(3組以上)の姿勢に対応する目盛を1つのロッドに設ける構成としてもよい。この場合、例えば、図7の姿勢と、図9の姿勢と、図11の姿勢との3つの姿勢に対応して3つ(3組)の目盛をロッドに設けることができる。
第1の実施の形態では、目盛52,53としてロッド50とは別体の環状部材をロッド50に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、図13および図14に示す第2の変形例のように、目盛としてロッド86にノッチ87,88(上限、下限)を形成してもよい。この場合、ノッチ87,88(上目盛に対応する上ノッチ87,下目盛に対応する下ノッチ88)は、作業者が上部開口部32Bから作動油タンク31内を覗いて視認できるサイズとする。これにより、適正液面レベルの識別が容易になると共に、複数の目盛があった場合でもフロント装置4の姿勢に応じた作動油量の適正液面レベルを識別できる。
また、例えば、図15および図16に示す第3の変形例のように、目盛としてロッド89に平面部90を形成してもよい。この場合、ロッド89には、外周面から凹むと共にロッド89の長さ方向に延びる溝部91が設けられている。この溝部91の底面部91Aが平面部90となっている。平面部90は、作動油量の液面レベルの適正範囲を示す目盛であり、平面部90の上端は給油の上限(上目盛)に対応し、下端は給油の下限(下目盛)に対応する。この場合、平面部90は、作業者が上部開口部32Bから作動油タンク31内を覗いて視認できるサイズとする。
また、例えば図17に示す第4の変形例のように、ロッド92に目盛93,94(上限、下限)を着色(ペイント)してもよい。太線の上目盛93は、作動油量の上限を示している。一方、ハッチング(斜めの平行線)の如き縞模様を付した下目盛94は、作動油量の下限を示している。目盛93,94は、給油される作動油(新品の作動油)に対して見やすい色(例えば、赤色)にする。
また、例えば図18に示す第5の変形例のように、ロッド95に目盛96,97(上目盛96、下目盛97)として識別可能な文字(例えば、上限として「F」、下限として「L」)を記入(ペイント)してもよい。この場合、目盛96,97は、給油される作動油(新品の作動油)に対して見やすい色(例えば、赤色)にする。
また、例えば図19に示す第6の変形例のように、ロッド98に目盛99,100(上目盛99、下目盛100)としてナットを用いてもよい。目盛99,100は、ロッド98に溶接により固定することができる。これらのことは、第2の実施の形態および第3の実施の形態についても同様である。
各実施の形態および各変形例では、作動油量の上限および下限に対応する目盛52,53,62,63,72,73,82,83,84,85,93,94,96,97,99,100をそれぞれ1組(即ち、上限と下限)とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば目盛は、作動油量の下限のみ、上限のみ、または、下限と上限との中間位置に1個だけ設ける構成としてもよい。
第1の実施の形態では、目盛52,53となる環状部材をロッド50に溶接により固定する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ロッドに目盛となる環状部材を接着、焼き付け等の溶接以外の固定手段を用いて固定してもよい。このことは、第2の実施の形態および第3の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、環状部材の目盛52,53を円筒状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、楕円筒状、角筒状等の円筒状以外の筒体により形成してもよい。このことは、第2の実施の形態および第3の実施の形態についても同様である。
第1の実施の形態では、目盛52,53を設けるロッド50としてストレーナ49に連結されたロッド50を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ストレーナに連結しないロッド、例えば、ストレーナに連結されたロッドとは別に作動油タンク内に設けたロッドに目盛を設けてもよい。このことは、第2の実施の形態、第3の実施の形態、および、各変形例についても同様である。
各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等、各種の建設機械に広く適用することができる。さらに、各実施の形態および各変形例は例示であり、異なる実施の形態および変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。