JP2020104036A - 細胞培養液用の濾材及び当該濾材を含んでなるデプスフィルター - Google Patents
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[1]熱可塑性繊維の集合体からなる濾材(フィルターと表記することがある。)であって、前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径が、前記濾材の上流側から下流側に連続的に小さくなっていることを特徴とする、細胞培養液の清澄化用の濾材。
[2]前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径は、最上流側の繊維径が10μmよりも大きく、最下流側の繊維径が7μm未満である、[1]に記載の濾材。
[3]前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径は、最上流側の繊維径が20〜10μmであり、最下流側の繊維径が3〜0.3μmである、[1]又は[2]に記載の濾材。
[4]前記熱可塑性繊維の集合体の目付けが、20〜100g/m2である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の濾材。
[5]前記熱可塑性繊維の集合体が、融点の異なる2種類以上の熱可塑性繊維を含む不織布である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の濾材。
[6]前記熱可塑性繊維の集合体が、混繊メルトブローン繊維の集合体、及び/又は、熱可塑性複合繊維の集合体である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の濾材。
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載の濾材と、珪藻土と熱可塑性複合繊維とが一体化された複合材である濾材とが組み合わされた、細胞培養液の清澄化用デプスフィルター。
[8]円筒形カートリッジフィルター、又は、平板型フィルターである、[7]に記載のデプスフィルター。
本発明の濾材は、濾材を構成する繊維の繊維径が、濾材の上流側から下流側に連続的に小さくなっている。ここで、繊維径が連続的に小さくなっているとは、繊維径が「段階的に」変化するものを含まない。すなわち、「連続的に」とは、異なる繊維径を有する複数種類の繊維層が積層されることによって段階的な繊維径の変化を生じている態様を含まない。本発明の濾材は、繊維径が濾材の上流側から下流側に連続的に小さくなっている少なくとも一つの層を含み、かかる層に加えて繊維径が一定である少なくとも一つの層を含んでもよい。本発明の濾材は、細胞培養液に含まれる細胞の大きさに近い範囲の細孔を有し、かつ、細孔が濾材の厚み方向(濾過対象物の流れ方向)に漸次小さくなる形態であるため、濾材全体で満遍なく細胞を捕捉することができると考えられている。このため、濾材の一部分のみに細胞が集中的に捕捉されて目詰まりを生じることが少なく、140kPa以下の低濾過圧力で、大量の細胞培養液を処理することが可能である。本発明の濾材によれば、遠心分離処理や化学的処理剤等を用いることなく、細胞培養液の一次清澄化を効率的に行うことができる。
近年、培養製造技術の向上により、細胞培養液は非常に濃厚化している。そのため、本発明の濾材ないしデプスフィルターを、プレフィルターの位置付けとして用いれば、一次清澄化において、粗大および数ミクロンオーダーの細胞およびデブリを含む夾雑物を除去することができ、次いでの二次清澄化で使用される珪藻土の表面閉塞を防止に繋がる。さらには、濾液の高清澄化に効果がある珪藻土を複合材中に多く含有することができるので、得られる濾液は非常に清澄であり、後工程である高価な除菌用フィルターの超寿命化にも寄与することができる。また、二次清澄濾過に際し、珪藻土を含有する複合材において、種々の細孔径を有する珪藻土を選び、多層化することで、効率的に深層濾過が行われ、その結果濾液を多く処理することもできる。
このように、清澄化プロセス全体を最適化することにより、一次清澄濾過、および、一次清澄濾過と二次清澄濾過との組み合わせのそれぞれの工程において、本発明の濾材を併用することで、清澄化工程全体を通して、大量の培養液の濾過を可能とし、かつ高い清澄度の濾液を得ることができる。
本発明の濾材は熱可塑性繊維の集合体からなり、濾材を構成する熱可塑性繊維の繊維径が、濾過の上流側から下流側に連続的に小さくなっていることを特徴とする。濾材の形状は特に制限されず、円筒状で、円筒の外側が濾過の上流側、内側が濾過の下流側(すなわち、円筒の外から内に向かって濾液が移動する)であってもよく、円筒状で円筒の内側が濾過の上流側、外側が濾過の下流側(すなわち、円筒の内から外に向かって濾液が移動する)であってもよく、平板状の濾材で平板の一方面が上流側、他方面が下流側であってもよい。円筒状、平板状、その他の形状のいずれであるかを問わず、濾液の移動方向に沿って、濾材を構成する繊維の繊維径が連続的に小さくなることが好ましい。
本発明の濾材は、他の濾材と組み合わせて用いることも好ましい。特に、本発明の濾材を一次清澄濾過用フィルターとし、珪藻土含有複合材(珪藻土を含有する複合材)を用いた二次清澄濾過用フィルターと組み合わせて用いるデプスフィルターによれば、二次清澄濾過の濾過効率が顕著に向上することが見出された。珪藻土含有複合材は、珪藻土と、熱可塑性複合繊維とが一体化されてなるものであることが好ましく、融点の異なる少なくとも2種類の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性複合繊維と、珪藻土とが一体化されてなる複合材であることがより好ましい。
本発明の濾材と、珪藻土含有複合材との組み合わせにおいては、別々に用意した本発明濾材と珪藻土含有複合材とを用いてもよいし、本発明の濾材と珪藻土含有複合材とを一体的に成形したデプスフィルターも好ましい。一体的に成形する場合としては、例えば、それぞれ円筒形で径の異なる本発明の濾材と珪藻土含有複合材とを作製し、本発明の濾材の内側に珪藻土含有複合材を嵌め込んで一体化することができる。また、それぞれ平板状の本発明の濾材と珪藻土含有複合材とを作製し、重ね合わせて固定することで一体化することも可能である。
本発明はまた、前述の濾材を有してなるカートリッジフィルターに関する。カートリッジフィルターの形状は特に制限されないが、一つの例として、例えば長さ246〜254mmの円筒形カートリッジフィルターを挙げることができる。カートリッジフィルターの両端はシール剤を用いてエンドキャップが取り付けられていることが好ましい。シール剤及びエンドキャップとしては、公知の素材及び構成のものを適宜選択して用いればよい。例えば、エンドキャップとしてポリプロピレン製成形体を用いることができ、シール剤としてエポキシ系接着剤を用いることができる。また、カートリッジフィルターは、樹脂製または金属製のコア部材を備えていてもよい。また、細胞培養液の濾過についてスケールアップする際は、まず、小スケールの濾過実験にて、濾過面積あたりの細胞培養液の処理量を見積もる。例えば、円筒形カートリッジフィルターの長さを10mmとし、カートリッジフィルターの両端を、シール剤を用いてエンドキャッピングすることで、小スケールの濾過実験用のフィルターを作ることもできる。細胞培養液の処理量に応じた、カートリッジフィルターの長さを選択することが可能である。例えば、長さ252mmの円筒形濾材を電動カッターなどで切断し、それ以下の所望の濾材長さに調整することもできる。
本発明のカートリッジフィルターが円筒形カートリッジフィルターである場合、概略的には、予め、長さ方向に連続的に繊維径が変化する熱可塑性繊維からなる長尺の不織布を製造しておき、かかる不織布を加熱しながら金属製の芯棒に巻回することによって、円筒の径方向に熱可塑性繊維の繊維径が連続的に変化する濾材を得る。このとき、必要に応じて基材層や表層など、本発明の濾材からなる層以外の層を作製することもできる。このようにして得られる成形体を所望の長さにカットし、エンドキャップ部材をシール剤で接着させることで、カートリッジフィルターを製造することができる。
<熱可塑性繊維の平均繊維径>
電子顕微鏡で撮影した繊維の断面より、1本当たりの繊維の長さ方向と直角方向の長さ(直径)を100本計測し、算術平均値を平均繊維径とした。この計算は、Scion Corporation社の画像処理ソフト「Scion Image」(商品名)を使用して行った。
非発現チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株由来の細胞を1.4Lの動物細胞培養装置(バイオット社)を用いて、1.97〜3.12×107細胞/mLの密度まで増殖させ、70〜90%の生存度で収集した。清澄化されていない細胞培養液のpHは7.1であった。
[実施例1]
ノズル孔が2種類の樹脂を孔の交互の位置から押し出すように配置されたメルトブロー用混合繊維紡糸ノズルを用いて、エチレン−プロピレン共重合体(MFR:61、商品名SOWO279、日本ポリプロ社製)とポリプロピレン(プロピレン単独重合体、MFR:68、商品名SA08A、日本ポリプロ社製)を用いて、メルトブロー用紡糸ノズル(ホール径0.3mm、1.0mmピッチ、501ホール)より、紡糸温度250℃で押し出し、360℃の加熱空気を用いてメルトブロー紡糸した。メルトブローの捕集コンベアには、綾織のネットを使用し、フィルター表面に微細な凹凸構造を設けた。
加熱空気の圧力、吐出量、不織布搬出速度を調節することで、目付50g/m2のメルトブロー不織布を作製した。この不織布は、18μmから2μmの熱可塑性繊維の繊維径勾配を有していた。
まず、直径30mmの金属製中心に基材層となる太い繊維径のメルトブロー不織布を巻きつけ、基材層を形成した。次いで、前記で得られたメルトブロー不織布を150℃に加熱し、加熱溶融しながら、細い繊維から太い繊維へと繊維径勾配を形成するように巻き付け、外径68mm、内径30mm、長さ245mmの円筒状である濾材1を得た。
この円筒形状の濾材を長さ10mmに切断し、得られた筒状の成形体の上下の端面部分を低密度ポリエチレンフィルムで加熱接着し、次いで発泡ポリエチレンのガスケットを熱溶着することで、評価用の円筒形カートリッジフィルターの形状とした。本発明の円筒形カートリッジフィルターの1次側(外径側)の表面積は21cm2であった。
(材料)
・熱可塑性繊維A(珪藻土と複合化用):高密度ポリエチレンと結晶性ポリプロピレンとからなる並列型複合繊維(繊度33.33dtex(約30d/f)、カット長3mm)。
・熱可塑性繊維B(内層用及び/又は表層用):高密度ポリエチレンと結晶性ポリプロピレンとからなる並列型複合繊維(繊度22.22dtex(約20d/f)、カット長51mm)、カード機にて目付30g/m2のウェブとした。
(作製方法)
1.表層(繊維径勾配層)の作製
実施例1と同様に、繊維径勾配層として、繊維径勾配のあるメルトブロー不織布(18μmから2μm)を製造した。この不織布を繊維径の細い側から金属製中心に巻き、得られた円筒状の濾材を長さ10mmに切断した。さらに、表層の濾材内径が60mmになるようにカッターナイフで切り抜き、表層を作製した。
2.濾過層の作製
熱可塑性繊維Aを用い、珪藻土として濾過一番4号;土田食品工業株式会社製を用い、熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番4号とを、重量比15:85で混合した。珪藻土の脱落防止のため、濾材の内径に接触する金型の円柱に、熱可塑性繊維Bを巻きつけ、そこに熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番4号の混合物を充填し、これを電気焼結炉にて焼結することで濾過層を製造した。濾過層の寸法は、外径60mm、内径28mmであった。加熱は150℃、2時間行った。加熱後、室温(20℃)で、30分の冷却を行った後、成形された濾過層を金型から取り出した。
その後、繊維径勾配層である表層に、得られた濾過層を嵌め込むことで、濾材2を得た。
さらに、得られた筒状の成形体の上下の端面部分を覆うように、樹脂成形品を接着し、円筒形のカートリッジフィルターの形状とした。本発明の円筒形カートリッジフィルターの1次側の表面積は21cm2であった。
[参考例1]
表層に配置する濾材として、熱可塑性繊維Aを用い、珪藻土として濾過一番2号;土田食品工業株式会社製を用い、熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番3号とを、重量比60:40で混合した。得られた混合物を円の外径68mmから内径65mmに位置するように、治具を用いて金型に充填した。
次いで、中間層に配置する濾材として、熱可塑性繊維Aを用い、珪藻土として濾過一番3号;土田食品工業株式会社製を用い、熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番3号とを、重量比20:80で混合した。得られた混合物を円のおよそ外径65mmから内径へ30mmに位置するように、治具を用いて金型に充填した。
さらに、内層に配置する濾材として、熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番3号とを、重量比60:40で混合した。珪藻土の脱落防止のため、金型の円柱に熱可塑性繊維Bを巻きつけ、そこに得られた混合物を円のおよそ外径30mmから内径へ28mmに位置するように、治具を用いて金型に充填した。
これを電気焼結炉にて、150℃で加熱し、2時間焼結した。加熱後、室温(20℃)で、30分の冷却を行った後、成形体を金型から取り出した。
高融点成分として結晶性ポリプロピレン、低融点成分としてプロピレン/エチレン/ブテン−1三元系共重合体を、それぞれ紡糸温度290℃、混繊比50:50で紡糸し、380℃の加熱空気を圧力0.08MPaでブローした、目付40g/m2の混繊メルトブロー不織布を製造し、得られた成形体の表面に巻きつけることで、濾材を得た。
さらに、得られた筒状の濾材の上下の端面部分を覆うように、低密度ポリエチレンフィルムで加熱接着し、次いで発泡ポリエチレンのガスケットを熱溶着することで、評価用の円筒形のカートリッジフィルターの形状とした。本発明の円筒形カートリッジフィルターの1次側の表面積は21cm2であった。
寸法は、外径68mm、内径28mm、長さ1cmであった。
比較例として、メルクミリポア社製のMillistak+(登録商標)DOHC23CL(比較例1)およびAOHC23CL(比較例2)を用いた。
上記の実施例1及び比較例1の濾材を用いて、濾液の濁度(OD600)が3〜5の範囲に到達するまで、細胞培養液を濾過した(1次清澄濾過)。得られた濾液の量を濾材の面積で割り、濾材の面積あたりの処理効率(L/m2)を算出した。また、得られた濾液全体の濁度(OD600)を測定した。結果を表1に示す。なお、評価に供した細胞培養液の濃度は、1.97×107cells/mL、細胞の生存率は90%であった。
1次清澄濾過について、実施例2及び比較例1の濾材を用いて濾過圧力がおよそ140Kpaに到達するまで細胞培養液を濾過した。得られた濾液の量を濾材の面積で割り、濾材面積あたりの処理効率(L/m2)を算出した。また、得られた濾液全体の濁度(OD600)を測定した。結果を表2に示す。なお、評価に供した細胞培養液の濃度は、3.12×107cells/mL、細胞の生存率は86%であった。
試験例1の実施例1で得られた1次清澄濾過濾液に対し、参考例1のフィルターで濾過(2次清澄濾過)を行った。
一方で、試験例1の比較例1で得られた1次清澄濾過濾液に対し、比較例2で濾過(2次清澄濾過)を行った。
それぞれ、2次清澄濾過後の濾液の濁度(OD600)を測定した。また、2次清澄濾過における濾材面積当たりの濾液通過量(処理効率)を算出した。結果を表3に示す。
そのため、本発明はバイオプロセスの分野において貢献できることが期待できる。
1次清澄濾過工程において、濾材全体が珪藻土複合体からなるフィルターを作製し、濾過結果を比較することで、繊維径勾配層の有無による効果の違いを調べた。
細胞培養液として、試験例1と同様に、細胞の濃度が1.97×107cells/mL、細胞の生存率が90%である細胞培養液を用いた。
上記の比較例3で作製した濾材を用いて、濾過圧力を行ったところ、得られた濾液の濁度は高い清澄度であったものの、濾過圧力が140kPaまで到達したため、その時点で送液を中止した。
その時点までで得られた濾液の量を濾材の面積で割り、濾材の面積あたりの処理効率(L/m2)を算出した。また、得られた濾液全体の濁度(OD600)を測定した。結果を表4に示す。
すなわち、濃厚な細胞培養液を濾過するにあたっては、本発明にあるような、繊維径勾配層を一次濾過層として設けることが、非常に有用であると結論づけられた。
Claims (8)
- 熱可塑性繊維の集合体からなる濾材であって、
前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径が、前記濾材の上流側から下流側に連続的に小さくなっていることを特徴とする、細胞培養液の清澄化用の濾材。 - 前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径は、最上流側の繊維径が10μmよりも大きく、最下流側の繊維径が7μm未満である、請求項1に記載の濾材。
- 前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径は、最上流側の繊維径が20〜10μmであり、最下流側の繊維径が3〜0.3μmである、請求項1又は2に記載の濾材。
- 前記熱可塑性繊維の集合体の目付けが、20〜100g/m2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の濾材。
- 前記熱可塑性繊維の集合体が、融点の異なる2種類以上の熱可塑性繊維を含む不織布である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の濾材。
- 前記熱可塑性繊維の集合体が、混繊メルトブローン繊維の集合体、及び/又は、熱可塑性複合繊維の集合体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の濾材。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の濾材と、珪藻土と熱可塑性複合繊維とが一体化された複合材である濾材とが組み合わされた、細胞培養液の清澄化用デプスフィルター。
- 円筒形カートリッジフィルター、又は、平板型フィルターである、請求項7に記載のデプスフィルター。
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