JP2020104036A - 細胞培養液用の濾材及び当該濾材を含んでなるデプスフィルター - Google Patents

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Abstract

【課題】細胞培養液の一次清澄化にあたり、目詰まりを生じ難く、大量の培養液の処理が可能であり、低濾過圧力かつ高い清澄度の濾液を取得可能とするフィルターを提供することを課題とする。さらには、次工程の二次清澄濾過においても、濾過容量が多く、清澄効果が高いフィルターを用いることで、清澄化プロセス全体を最適化することも課題である。【解決手段】熱可塑性繊維の集合体からなる濾材であって、前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径が、前記濾材の上流側から下流側に連続的に小さくなっていることを特徴とする、細胞培養液の清澄化用の濾材である。濾材を構成する熱可塑性繊維の繊維径は、最上流側の繊維径が10μmよりも大きく、最下流側の繊維径が7μm未満であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、細胞培養液の清澄化工程において用いられる濾材、及び、当該濾材を含んでなるデプスフィルターに関する。
近年、疾病の治療における抗体医薬の使用が増加している。その需要に応えるために、抗体の培養製造技術は向上し、抗体の産生量は、この数十年でバッチ培養あたり数百mg/Lから、現在ではg/Lオーダーへ飛躍的に向上している(非特許文献1)。他方で、抗体の産生効率の向上に伴って細胞培養液の濃度が上昇した結果、抗体の精製工程前にあたる清澄化工程において、種々の技術的課題が浮上している。
抗体医薬の製造において、細胞培養工程に続いて行われる清澄化工程では、まず細胞や抗体を含む細胞培養液を遠心分離処理し、次いでデプスフィルターを用いて濾過することによって、細胞培養液に含まれる細胞や細胞残屑等の夾雑物を除去し、抗体を含んだ清澄化培養液を得ることが行われてきた(特許文献1)。しかしながら、遠心分離処理を行う場合、遠心分離装置を処理毎に厳密に洗浄する必要があり、製造の効率が悪いことから、遠心分離装置を用いることなく、フィルターのみによって清澄化を行うことが検討されている。
フィルターのみで清澄化を行う方法では、濾過容量の大きなデプスフィルターを用いることが公知であるが、これを用いて、高濃度の細胞培養液を濾過する場合には、とりわけ、フィルターの目詰まりが問題となる。フィルターの目詰まりが生じると、フィルターが使用不能になるだけでなく、濾過圧力の上昇によって細胞が破裂し、破裂した細胞からタンパク質分解酵素等の細胞内物質が培養液中に放出されて、抗体の品質に悪影響を及ぼす等の問題が生じる。
フィルターの目詰まりを防止するための方策として、比較的大きな懸濁物質や、細胞からより小さな夾雑物までを段階的に捕捉することが検討されており、これを実現するものとして、デプスフィルターを多層構造とし、複数種類の不織布層を積層して配置することが検討されている。特許文献2には、公称細孔径が異なる3種類の不織布を、細孔径が大きいものから小さいものの順にそれぞれ2層ずつ積層し、さらに下流にセルロースないし珪藻土を含む層を配置した、8層構造の清澄化用デプスフィルターが開示されている。
但し、特許文献2のデプスフィルターでは、濾過対象である細胞培養液に対して、化学的処理(酸処理)を行うか化学的凝集剤を添加することが特徴の一つである。特許文献2の方法では、化学的処理や化学的凝集剤を用いて細胞培養液中の細胞残屑等を軟凝集させることによって、効率的な清澄化を可能にしている。
一連の精製工程は密閉系での操作が基本となるところ、密閉系で処理剤や凝集剤を添加するためには、添加する操作のための装置が必要となる。また、細胞培養液のコンディションは常に一定ではないため、適切な添加量を調整するためのシステムも必要となる。さらに、工程操作上の理由から使用される添加剤は、可能な限り低減ないし回避することが好ましい。
また、細胞培養液の濾過では、粗大な夾雑物等を除去する一次清澄濾過に続いて、一次清澄濾過で得た濾液をより清澄にするため二次清澄濾過が行われる。二次清澄濾過用のフィルターは前工程の濾材よりも微細な網目構造もしくは孔を有している。そのため、二次清澄濾過用の濾材を表面閉塞させるようなサイズの夾雑物は、一次清澄濾過工程において取り除き、さらには一次清澄濾過工程後の細胞培養液をより清澄化することで、二次清澄濾過用のフィルターを長寿命化し、かつ高い清澄度の濾液を得ることができる。
さらに、二次清澄濾過後のMF(精密ろ過)と言われている工程は、およそ0.2μm以上の夾雑物を捕捉するとともに、細菌を確実に除く必要があるため、フィルターには完全性が求められる。この工程で用いられる除菌用のフィルターはMFフィルターと呼ばれており、高価であることから、濾過に際しての長寿命化が望まれている。そのためには、前工程の二次清澄濾過工程において、夾雑物をできるだけ除去し、清澄度の高い濾液を得ることが考えられる。
このように、濾過の後段階になるにつれ、微小な夾雑物を除くために、微細な捕捉構造を有するフィルターが設置されるため、前段階の濾過プロセスにおいて、より清澄度の高い濾液を得ることが、清澄化プロセス全体として効率的な濾過を可能とする。
特表2008−503218号公報 特表2014−523247号公報
生物工学 2013年第91巻、511〜513頁、抗体医薬品生産培養技術の課題と展開;金子佳寛
上記のとおり、細胞培養液の清澄化、特に、不要な細胞等の比較的大きな懸濁物質を取り除く一次清澄化において、フィルターのみを用いて清澄化が可能で、かつ、添加剤を使用することなく十分な濾過容量および濾過精度が得られるものは未だ見出されていないのが現状である。この現状に鑑み、本発明は、細胞培養液の一次清澄化にあたり、目詰まりを生じ難く、大量の培養液の処理が可能であり、140kPa以下の低濾過圧力により、高い清澄度の濾液を取得可能とするフィルターを提供することを課題とする。さらには、次工程の二次清澄濾過においても、濾過容量が多く、清澄効果が高いフィルターを用いることで、清澄化プロセス全体を最適化することも課題である。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、上流から下流の方向に細孔径が大から小へと連続的に変化するデプスフィルターとすること、また、特に細胞の大きさに近い細孔径の範囲で細孔径が大から小へと連続的に変化する濾材とすることによって、従来よりも格段に目詰まりを生じ難く、濾過性能に優れたフィルターが得られることを見出した。そして、濾材の細孔径と濾材を構成する繊維の繊維径は比例するため、そのようなフィルターは、繊維径が連続的に変化する熱可塑性繊維からなる不織布を積層して得られる濾材によって構成されうること、特定の種類の繊維を用いると、より目詰まりが生じ難い濾材を得られることを見出し、本発明を完成した。
さらに、一次清澄濾過に次いで、珪藻土と熱可塑性複合繊維とが一体化された複合材である二次清澄化用フィルターを組み合わせて用いることによって、一次清澄濾過後の濾液をより多く濾過し、かつ高清澄な濾液を得ることを可能とした。一次清澄濾過の段階で粗大な夾雑物を除けるようにすることによって、二次清澄濾過用のフィルターには、濾液中の微小物を捕捉するために最適な孔を有する珪素土をより多く含有させることが可能となり、その結果、多くの濾液を濾過することができ、かつ清澄度の高い濾液を得ることを見出した。すなわち、本発明の一次清澄濾過用フィルターおよび二次清澄化用フィルターを併用することによって、清澄化工程を通じた濾過性能のさらなる向上を可能とした。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
[1]熱可塑性繊維の集合体からなる濾材(フィルターと表記することがある。)であって、前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径が、前記濾材の上流側から下流側に連続的に小さくなっていることを特徴とする、細胞培養液の清澄化用の濾材。
[2]前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径は、最上流側の繊維径が10μmよりも大きく、最下流側の繊維径が7μm未満である、[1]に記載の濾材。
[3]前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径は、最上流側の繊維径が20〜10μmであり、最下流側の繊維径が3〜0.3μmである、[1]又は[2]に記載の濾材。
[4]前記熱可塑性繊維の集合体の目付けが、20〜100g/mである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の濾材。
[5]前記熱可塑性繊維の集合体が、融点の異なる2種類以上の熱可塑性繊維を含む不織布である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の濾材。
[6]前記熱可塑性繊維の集合体が、混繊メルトブローン繊維の集合体、及び/又は、熱可塑性複合繊維の集合体である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の濾材。
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載の濾材と、珪藻土と熱可塑性複合繊維とが一体化された複合材である濾材とが組み合わされた、細胞培養液の清澄化用デプスフィルター。
[8]円筒形カートリッジフィルター、又は、平板型フィルターである、[7]に記載のデプスフィルター。
本発明の濾材ないしデプスフィルターによれば、遠心分離処理を行わず、また、細胞培養液に添加剤を添加することなく、フィルターのみによって細胞培養液の一次清澄化を行うことが可能であり、十分な濾過容量および濾過精度が得られる。
本発明の濾材は、濾材を構成する繊維の繊維径が、濾材の上流側から下流側に連続的に小さくなっている。ここで、繊維径が連続的に小さくなっているとは、繊維径が「段階的に」変化するものを含まない。すなわち、「連続的に」とは、異なる繊維径を有する複数種類の繊維層が積層されることによって段階的な繊維径の変化を生じている態様を含まない。本発明の濾材は、繊維径が濾材の上流側から下流側に連続的に小さくなっている少なくとも一つの層を含み、かかる層に加えて繊維径が一定である少なくとも一つの層を含んでもよい。本発明の濾材は、細胞培養液に含まれる細胞の大きさに近い範囲の細孔を有し、かつ、細孔が濾材の厚み方向(濾過対象物の流れ方向)に漸次小さくなる形態であるため、濾材全体で満遍なく細胞を捕捉することができると考えられている。このため、濾材の一部分のみに細胞が集中的に捕捉されて目詰まりを生じることが少なく、140kPa以下の低濾過圧力で、大量の細胞培養液を処理することが可能である。本発明の濾材によれば、遠心分離処理や化学的処理剤等を用いることなく、細胞培養液の一次清澄化を効率的に行うことができる。
また、濾材の下流側にさらに珪藻土を含む複合材を組み合わせることによって、細胞培養液中の小さな懸濁物等を吸着捕捉することができ、より効率的に細胞培養液の濾過を行うことができる。
近年、培養製造技術の向上により、細胞培養液は非常に濃厚化している。そのため、本発明の濾材ないしデプスフィルターを、プレフィルターの位置付けとして用いれば、一次清澄化において、粗大および数ミクロンオーダーの細胞およびデブリを含む夾雑物を除去することができ、次いでの二次清澄化で使用される珪藻土の表面閉塞を防止に繋がる。さらには、濾液の高清澄化に効果がある珪藻土を複合材中に多く含有することができるので、得られる濾液は非常に清澄であり、後工程である高価な除菌用フィルターの超寿命化にも寄与することができる。また、二次清澄濾過に際し、珪藻土を含有する複合材において、種々の細孔径を有する珪藻土を選び、多層化することで、効率的に深層濾過が行われ、その結果濾液を多く処理することもできる。
このように、清澄化プロセス全体を最適化することにより、一次清澄濾過、および、一次清澄濾過と二次清澄濾過との組み合わせのそれぞれの工程において、本発明の濾材を併用することで、清澄化工程全体を通して、大量の培養液の濾過を可能とし、かつ高い清澄度の濾液を得ることができる。
(濾材)
本発明の濾材は熱可塑性繊維の集合体からなり、濾材を構成する熱可塑性繊維の繊維径が、濾過の上流側から下流側に連続的に小さくなっていることを特徴とする。濾材の形状は特に制限されず、円筒状で、円筒の外側が濾過の上流側、内側が濾過の下流側(すなわち、円筒の外から内に向かって濾液が移動する)であってもよく、円筒状で円筒の内側が濾過の上流側、外側が濾過の下流側(すなわち、円筒の内から外に向かって濾液が移動する)であってもよく、平板状の濾材で平板の一方面が上流側、他方面が下流側であってもよい。円筒状、平板状、その他の形状のいずれであるかを問わず、濾液の移動方向に沿って、濾材を構成する繊維の繊維径が連続的に小さくなることが好ましい。
濾材の厚みは、所望の性能や濾過対象となる細胞培養液の処理量、濃度および性状等によって適宜選択でき、特に制限されないが、例えばデプスフィルターである場合、1〜100mm程度とすることができ、3〜30mm程度であれば好ましく、5〜25mm程度であればより好ましい。また例えば、シリンジフィルターに用いる平板状フィルターである場合には0.1〜50mm程度とすることができる。
濾材を構成する熱可塑性繊維の繊維径は、上流側から下流側に連続的に小さくなっていればよいが、最上流側での繊維径が10μmよりも大きく、最下流側の繊維径が7μm未満であることが好ましい。最上流側の繊維径が20〜10μmであり、最下流側の繊維径が3〜0.3μmであることがより好ましい。最上流側での繊維径が10μmよりも大きいと、濾材の表面において、粗大な夾雑物を捕捉し、それよりも微小なものは内層側に通すため、表面閉塞が生じ難くなり、効率的に深層濾過を行えるので有利であり、最下流側の繊維径が7μm未満であれば、微小な夾雑物を捕捉できるため、清澄度の高い濾液が得られるため好ましい。
熱可塑性繊維の繊維径の勾配は一定であってもよいし、あるいは、例えば、細繊維側では繊維径の変化が相対的に小さく、太繊維側では繊維径の変化が相対的に大きくなる等、繊維径の勾配が変化する態様でもよい。なお、熱可塑性繊維の繊維径の測定は、電子顕微鏡による観察など公知の方法によることができ、実施例に詳述される方法を用いることが好ましい。
本発明の濾材は、濾材を構成する熱可塑性繊維の繊維径が大から小へと連続的に変化することに従って、濾材の細孔径も大から小へと連続的に変化し、それによって様々な大きさの夾雑物を濾材の全体で捕捉することが可能となると考えられている。さらに、熱可塑性繊維の繊維径と、熱可塑性繊維の集合体の目付けが最適な範囲にあることで、濾材として有用であることが確認されている。例えば、熱可塑性繊維の集合体の目付けが、20〜100g/m程度が好ましく、30〜70g/m程度がより好ましく、35〜60g/mがさらに好ましい。この範囲にすることで、細胞培養液に含まれる夾雑物のサイズに応じた繊維層での捕捉ができ、かつ、濾材表面での閉塞も抑制できるため、効率的な深層濾過を行うことができる。
濾材を構成する熱可塑性繊維としては、所望の繊維径を得られる限り特に制限されないが、例えばポリアミド、ポリエステル、低融点共重合ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、共重合ポリプロピレン(例えば、プロピレンを主体として、エチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1等との二元または三元重合体)等の熱可塑性樹脂を原料とする繊維が挙げられる。
上述の熱可塑性繊維は、濾材中に1種類のみ含まれていてもよく、2種類以上の熱可塑性繊維が含まれていることが好ましく、融点の異なる2種類以上の熱可塑性繊維が含まれることがより好ましい。融点の異なる2種類以上の熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、具体的に、ポリプロピレンとポリエステル、ポリプロピレンとポリエチレンの組み合わせが例示でき、特に、軽量性、耐薬品性および熱接着性に優れている点から、種類の異なるポリプロピレンの組み合わせ、ポリプロピレンとポリエチレンの組み合わせが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが例示できる。また、ポリプロピレンとしては、プロピレンを主体するエチレンまたはαオレフィンとプロピレンとの共重合体、プロピレンの単独重合体などが例示できる。また、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が例示できる。2種類の樹脂の融点の差は、10℃以上が好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であればさらに好ましい。
本発明の濾材は、熱可塑性繊維の集合体からなる濾材であり、上述の熱可塑性繊維から構成される不織布からなることが好ましい。この不織布を繊維径が連続的に変化するものとし、かかる不織布を巻回して濾材を形成することによって、濾材の繊維径を連続的に変化させることができる。繊維径が連続的に変化する不織布を作製するための紡糸法としては、例えば、溶融紡糸法を用いることができる。溶融紡糸法では吐出量や延伸比等を変えることにより、比較的容易に繊維径を連続的に変化させることができるからである。このように連続的に繊維径を変えることのできる溶融紡糸法の例としては、通常の溶融紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法等をあげることができ、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布であることが好ましい。
通常の溶融紡糸法で繊維径が連続的に変化する熱可塑性繊維からなるウェブを得るには、溶融紡糸時に吐出量を連続的に変化させ、これを延伸、カットしてカード機に投入すれば繊維径が機械方向または長さ方向に変化したステープルファイバ一のウェブができる。また、他の方法として、スパンボンド法を用い、その牽引力を連続的に変化させることにより、繊維径が連続的に変化した熱可塑性繊維からなるスパンボンドウェブを得ることができる。また特に有効な紡糸法は、メルトブロー法である。メルトブロー法とは、機械方向または長さ方向に紡糸孔より押し出された溶融した熱可塑性樹脂を、紡糸孔の周囲より吹き出される高温高速気体により捕集コンベアネットまたは回転する中空心棒上に吹き付け、極細繊維ウェブを得る方法である。この際、樹脂の押し出し量、ブローイング気流の噴出速度等の紡糸条件を連続的に変化させることによって、作製される不織布に適した平均繊維怪が長さ方向に変化した極細繊維からなるウェブを得ることができる。特に、ブローイング気流の噴出速度を連続的に変える方法は、ウェブの目付を変えることなく繊維径を変化させることができるので好ましい。
濾材を構成する不織布は、10℃以上の融点差がある熱可塑性樹脂からなる高融点成分と低融点成分とを混在して構成されることが好ましい。高融点成分と低融点成分とを混在させる方法としては、不織布の構成繊維を高融点樹脂と低融点樹脂との複合繊維としてもよく、または紡糸段階で高融点樹脂からなる繊維と低融点樹脂からなる繊維とを混織してもよく、または高融点樹脂からなる繊維と低融点樹脂からなる繊維とを紡糸後に混綿してもよい。不織布中での低融点成分の混在比は、高融点成分と低融点成分との総量に対して10〜90重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%であると、濾材として成形したときに優れた強度や形態保持性を持つようになり好ましい。低融点成分の含有量が10重量%を超えると、繊維ウェブを熱処理する際に繊維の熱接合点が充分であり、毛羽立ちが抑えられるとともに、強度も確保される。また、低融点成分の含有量が90重量%以内であれば、熱処理により繊維形態を失った低融点成分が繊維間に形成される細孔を閉塞させる、あるいは孔径が広がる等の弊害が回避される。
低融点成分と高融点成分の組合せの例としては、ポリエチレン/ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、低融点共重合ポリエステル/ポリエステル、ポリエチレン/ポリエステルを示すことができる。この中でも、共重合ポリプロピレン/ポリプロピレン、低融点共重合ポリエステル/ポリエステルの組合せは、熱処理による繊維同士の接合力が強く、強度のある濾材が得られるので好ましい。
本発明の濾材は、繊維径が連続的に変化する熱可塑性繊維からなる層(以下、繊維径勾配層ということがある。)を有することが特徴であるが、繊維径勾配層以外に各種の目的で繊維径が一定である熱可塑性繊維からなる層を備えてもよい。例えば、濾材の形状を保持する目的や濾材の保護の目的で、繊維径勾配層以外に基材層や表皮層を備えていてもよい。
繊維径勾配層以外の層として、例えば、円筒状濾材の最下流側に繊維径勾配層とは別途、基材層を設けることができる。基材層は例えば、金属棒状の芯材に、不織布を巻回することによって作製できる。基材層に用いる不織布としては、熱融着が可能で、熱融着後に濾材に必要な保形性を確保できれば特に制限されず、メルトブロー不織布、スルーエア不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。濾過性能には原則的に関与しない層であり、繊維径勾配層を構成する繊維の繊維径よりも太い繊維径の繊維を用いることができる。
また繊維径勾配層以外の層として、例えば、円筒状濾材の表面に繊維径勾配層とは別途、表皮層を設けることができる。表皮層は特に大粒径の凝集物や夾雑物が濾過層内に侵入しないようにブロックするほか、濾過を担う繊維径勾配層を保護し、フィルター形態を保持することを主な目的とする層である。
表皮層は不織布を含む層であり、不織布からなる層であることが好ましい。表皮層に用いる不織布は特に制限されないが、その繊維径は、繊維径勾配層を構成する繊維の繊維径よりも大きいことが好ましい。不織布の材質も特に制限されず、平均繊維径、材質ともに、基材層用不織布で例示したのと同様のものが使用できる。表皮層用不織布として、基材層用不織布と同じ不織布を用いることができる。具体的には例えば、表皮層用不織布及び基材層用不織布として、ポリオレフィン系繊維のメルトブロー不織布を用いることができる。
(珪藻土含有複合材)
本発明の濾材は、他の濾材と組み合わせて用いることも好ましい。特に、本発明の濾材を一次清澄濾過用フィルターとし、珪藻土含有複合材(珪藻土を含有する複合材)を用いた二次清澄濾過用フィルターと組み合わせて用いるデプスフィルターによれば、二次清澄濾過の濾過効率が顕著に向上することが見出された。珪藻土含有複合材は、珪藻土と、熱可塑性複合繊維とが一体化されてなるものであることが好ましく、融点の異なる少なくとも2種類の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性複合繊維と、珪藻土とが一体化されてなる複合材であることがより好ましい。
珪藻土含有複合材に含まれる熱可塑性複合繊維と珪藻土との混合比は、重量比で3:1〜1:8が利用でき、2:1〜1:7が好ましく、1:1〜1:6がさらに好ましい。つまり、珪藻土含有複合材中の珪藻土の重量割合は、25〜89%(w/w)とすることができ、33〜88%(w/w)が好ましく、50〜86%(w/w)がさらに好ましい。
珪藻土含有複合材は、1層からなるものでもよいし、複数の層からなるものとしてもよい。複数の層からなる場合、層の数は、目的の性能に応じて適宜選択すればよく特に制限されないが、例えば2〜7層とすることができ、2〜5層であればより好ましく、2〜3層であればよりいっそう好ましい。珪藻土含有複合材が複数の層からなる場合、各層において異なる粒径の珪藻土を含んでいてもよく、珪藻土の含有率についても、清澄化に有効な範囲にすることで、高い清澄度を達成することができる。また層の厚さは、各層が同じ厚さであってもよく、層ごとに厚さが異なっていてもよい。
珪藻土含有複合材が複数の層からなる場合、層の配列に特に制限はないが、傾斜構造を有するものとすることも好ましい。傾斜構造としては例えば、上流側から下流側の方向へ、段階的又は連続的に、珪藻土の含有率を増やす、珪藻土の粒径を小さくする、あるいは、珪藻土の含有率及び粒径を変化させる等が挙げられる。珪藻土含有複合材が複数の層からなる場合、各層が密に接触または接着していることが好ましい。層間の接着は、珪藻土含有複合材に含まれる熱可塑性複合繊維のうち低融点の樹脂のみが溶ける温度で加熱することで、層間の空隙構造を維持しつつ、接着することができる。層間の接着方法は、各層を積層する毎に端面を加熱してもよいし、各層を積層させてから全体を加熱してもよい。
また、各層において、珪藻土の粒径または含有量の異なる珪藻土含有複合材を組み合わせて用いることができる。その際は、粗い珪藻土を含む珪藻土含有複合材は上流側に、より細かい珪藻土を含む珪藻土含有複合材は下流側に配置することで、効果的に濾過が行われる。各層における、珪藻土含有複合材の厚みは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
珪藻土含有複合材に含まれる珪藻土は、淡水産または海水産の珪藻土が利用可能であり、酸洗浄されているものが好ましい。珪藻土としては、焼成品または融剤焼成品が利用可能である。珪藻土の粒度分布に特に制限はないが、分級されていることが好ましい。珪藻土の粒径は、約0.01μmから約1mmが利用でき、0.1〜100μmが好ましく、0.5〜50μmがより好ましく、1〜30μmが特に好ましい。前述のとおり、珪藻土含有複合材において、粒径の異なる複数種類の珪藻土を併用することも好ましい。具体的な珪藻土としては、市販品をそのまま、又は、適切な処理をした後に用いることができ、例えば、土田食品工業株式会社製の融剤焼成品である濾過一番1号、濾過一番C、濾過一番4号、濾過一番R、濾過一番白及び濾過一番白2号の各種グレードや、焼成品である濾過一番2号、濾過一番赤、濾過一番3号および濾過一番6号(商品名)が例示される。
珪藻土含有複合材には、融点の異なる少なくとも2種類の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性複合繊維が含まれることが好ましい。複合繊維の複合形態は特に制限されず、鞘芯型複合繊維、並列型複合繊維、海島型複合繊維等が例示できる。融点の異なる少なくとも2種類の熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、具体的に、ポリプロピレンとポリエステル、ポリプロピレンとポリエチレンの組み合わせが例示でき、特に、軽量性、耐薬品性および熱接着性に優れている点から、ポリプロピレンとポリエチレンの組み合わせが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが例示できる。また、ポリプロピレンとしては、プロピレンを主体するエチレンまたはαオレフィンとプロピレンとの共重合体、プロピレンの単独重合体などが例示できる。また、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が例示できる。2種類の樹脂の融点の差は、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であればより好ましい。
熱可塑性複合繊維の繊度は、特に限定されないが、1.1〜110dtexの範囲が利用でき、1.65〜65dtexの範囲が好ましく、1.65〜40dtexの範囲がより好ましい。また、熱可塑性複合繊維は、長繊維であっても短繊維であってもよいが、繊維を0.1〜20mm程度の長さに裁断したものを用いることができ、0.5〜10mm程度であればより好ましい。この範囲の繊度ないし長さを有する短繊維を使用することで、珪藻土と複合化する際に、適切な大きさの空隙が形成され、濾過する液体と珪藻土とが充分に接触して珪藻土の吸着効果が発揮される。また、熱可塑性複合繊維がバインダの役割をすることによって珪藻土の脱落が防止される。
(本発明の濾材と珪藻土含有複合材との組み合わせ)
本発明の濾材と、珪藻土含有複合材との組み合わせにおいては、別々に用意した本発明濾材と珪藻土含有複合材とを用いてもよいし、本発明の濾材と珪藻土含有複合材とを一体的に成形したデプスフィルターも好ましい。一体的に成形する場合としては、例えば、それぞれ円筒形で径の異なる本発明の濾材と珪藻土含有複合材とを作製し、本発明の濾材の内側に珪藻土含有複合材を嵌め込んで一体化することができる。また、それぞれ平板状の本発明の濾材と珪藻土含有複合材とを作製し、重ね合わせて固定することで一体化することも可能である。
(カートリッジフィルター)
本発明はまた、前述の濾材を有してなるカートリッジフィルターに関する。カートリッジフィルターの形状は特に制限されないが、一つの例として、例えば長さ246〜254mmの円筒形カートリッジフィルターを挙げることができる。カートリッジフィルターの両端はシール剤を用いてエンドキャップが取り付けられていることが好ましい。シール剤及びエンドキャップとしては、公知の素材及び構成のものを適宜選択して用いればよい。例えば、エンドキャップとしてポリプロピレン製成形体を用いることができ、シール剤としてエポキシ系接着剤を用いることができる。また、カートリッジフィルターは、樹脂製または金属製のコア部材を備えていてもよい。また、細胞培養液の濾過についてスケールアップする際は、まず、小スケールの濾過実験にて、濾過面積あたりの細胞培養液の処理量を見積もる。例えば、円筒形カートリッジフィルターの長さを10mmとし、カートリッジフィルターの両端を、シール剤を用いてエンドキャッピングすることで、小スケールの濾過実験用のフィルターを作ることもできる。細胞培養液の処理量に応じた、カートリッジフィルターの長さを選択することが可能である。例えば、長さ252mmの円筒形濾材を電動カッターなどで切断し、それ以下の所望の濾材長さに調整することもできる。
もう一つの例として、平板状の層を積層した、平板型カートリッジフィルターも挙げることができる。本発明の平板型カートリッジフィルターの大きさは、特に制限されないが、例えば、濾過面積が1〜13000cmの範囲であれば好ましい。カートリッジフィルターは、公知の素材及び構成のものを適宜選択して用いればよいが、ポリオレフィン系であることが好ましい。カートリッジフィルターの接合部を加熱し、濾材の端部と咬合させることで、カートリッジと濾材とを一体化することができる。
本発明の円筒形または平板型カートリッジフィルターは、外側から内側に、或いは上方から下方に、細胞培養液を通過させることで使用される。カートリッジフィルターに流入した液体は、表層がある場合にはまず表層で粗大な夾雑物が取り除かれ、続いて、本発明の濾材において段階的に様々な大きさの細胞や夾雑物が捕捉された後、カートリッジフィルターから流出する。本発明のカートリッジフィルターは単独で使用されてもよいし、一連の生体分子精製システムの一部分として組み込まれて使用されてもよい。
(カートリッジフィルターの製造方法)
本発明のカートリッジフィルターが円筒形カートリッジフィルターである場合、概略的には、予め、長さ方向に連続的に繊維径が変化する熱可塑性繊維からなる長尺の不織布を製造しておき、かかる不織布を加熱しながら金属製の芯棒に巻回することによって、円筒の径方向に熱可塑性繊維の繊維径が連続的に変化する濾材を得る。このとき、必要に応じて基材層や表層など、本発明の濾材からなる層以外の層を作製することもできる。このようにして得られる成形体を所望の長さにカットし、エンドキャップ部材をシール剤で接着させることで、カートリッジフィルターを製造することができる。
円筒形カートリッジフィルターの別の製造方法として、国際公開第98/013123の実施例1に記載の方法を参照して、不織布からなる円筒状成形体を作製し、所望の径となるように成形体をくり抜くことで本発明の濾材を得ることもできる。
カートリッジフィルターに前述の珪藻土含有複合材の層を含む場合、珪藻土含有複合材層の製造方法としては、概略的には、熱可塑性複合繊維と珪藻土とを所定の混合比で混合した混合物を所要形状の成形型内に充填し、熱可塑性複合繊維の表面が溶融する温度に加熱することによって珪藻土と熱可塑性複合繊維の表面とを熱接着させ、冷却後、成形型から取り出すことが挙げられる。成形型及び加熱装置としては公知のものを用いることができ、例えば、円筒状または平皿の金型を用いて、電気炉で加熱することができる。加熱の温度及び時間は、特に制限されないが、例えば140〜160℃で数分〜数時間加熱を行うことができる。熱可塑性複合繊維として、融点の異なる2種類の熱可塑性樹脂からなる繊維を用い、加熱温度として2種類の樹脂の融点の間の温度で加熱することによって、熱可塑性複合繊維が形成する立体網状構造の中に珪藻土粒子が保持される形態を保持しつつ、繊維と珪藻土とを接着することができる。このようにして製造した珪藻土含有複合材を必要に応じて所望の内径にくり抜き、あるいは所望の厚みにカットして、本発明の濾材と組み合わせて用いることができる。
なお、上記の製造方法は工程の概要を示しており、必要に応じて公知の各種の工程、すなわち、表面処理、洗浄、裁断、成形、滅菌、包装等の任意の工程を含むことができる。
下記の実施例は、例示を目的としたものに過ぎない。本発明の範囲は、本実施例に限定されない。
実施例中で用いた測定方法及び定義を以下に示す。
<熱可塑性繊維の平均繊維径>
電子顕微鏡で撮影した繊維の断面より、1本当たりの繊維の長さ方向と直角方向の長さ(直径)を100本計測し、算術平均値を平均繊維径とした。この計算は、Scion Corporation社の画像処理ソフト「Scion Image」(商品名)を使用して行った。
<非清澄化、非発現細胞培養液(CCF)の調製>
非発現チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株由来の細胞を1.4Lの動物細胞培養装置(バイオット社)を用いて、1.97〜3.12×10細胞/mLの密度まで増殖させ、70〜90%の生存度で収集した。清澄化されていない細胞培養液のpHは7.1であった。
・1次清澄濾過用の濾材の作製
[実施例1]
ノズル孔が2種類の樹脂を孔の交互の位置から押し出すように配置されたメルトブロー用混合繊維紡糸ノズルを用いて、エチレン−プロピレン共重合体(MFR:61、商品名SOWO279、日本ポリプロ社製)とポリプロピレン(プロピレン単独重合体、MFR:68、商品名SA08A、日本ポリプロ社製)を用いて、メルトブロー用紡糸ノズル(ホール径0.3mm、1.0mmピッチ、501ホール)より、紡糸温度250℃で押し出し、360℃の加熱空気を用いてメルトブロー紡糸した。メルトブローの捕集コンベアには、綾織のネットを使用し、フィルター表面に微細な凹凸構造を設けた。
加熱空気の圧力、吐出量、不織布搬出速度を調節することで、目付50g/mのメルトブロー不織布を作製した。この不織布は、18μmから2μmの熱可塑性繊維の繊維径勾配を有していた。
まず、直径30mmの金属製中心に基材層となる太い繊維径のメルトブロー不織布を巻きつけ、基材層を形成した。次いで、前記で得られたメルトブロー不織布を150℃に加熱し、加熱溶融しながら、細い繊維から太い繊維へと繊維径勾配を形成するように巻き付け、外径68mm、内径30mm、長さ245mmの円筒状である濾材1を得た。
この円筒形状の濾材を長さ10mmに切断し、得られた筒状の成形体の上下の端面部分を低密度ポリエチレンフィルムで加熱接着し、次いで発泡ポリエチレンのガスケットを熱溶着することで、評価用の円筒形カートリッジフィルターの形状とした。本発明の円筒形カートリッジフィルターの1次側(外径側)の表面積は21cmであった。
[実施例2]
(材料)
・熱可塑性繊維A(珪藻土と複合化用):高密度ポリエチレンと結晶性ポリプロピレンとからなる並列型複合繊維(繊度33.33dtex(約30d/f)、カット長3mm)。
・熱可塑性繊維B(内層用及び/又は表層用):高密度ポリエチレンと結晶性ポリプロピレンとからなる並列型複合繊維(繊度22.22dtex(約20d/f)、カット長51mm)、カード機にて目付30g/mのウェブとした。
(作製方法)
1.表層(繊維径勾配層)の作製
実施例1と同様に、繊維径勾配層として、繊維径勾配のあるメルトブロー不織布(18μmから2μm)を製造した。この不織布を繊維径の細い側から金属製中心に巻き、得られた円筒状の濾材を長さ10mmに切断した。さらに、表層の濾材内径が60mmになるようにカッターナイフで切り抜き、表層を作製した。
2.濾過層の作製
熱可塑性繊維Aを用い、珪藻土として濾過一番4号;土田食品工業株式会社製を用い、熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番4号とを、重量比15:85で混合した。珪藻土の脱落防止のため、濾材の内径に接触する金型の円柱に、熱可塑性繊維Bを巻きつけ、そこに熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番4号の混合物を充填し、これを電気焼結炉にて焼結することで濾過層を製造した。濾過層の寸法は、外径60mm、内径28mmであった。加熱は150℃、2時間行った。加熱後、室温(20℃)で、30分の冷却を行った後、成形された濾過層を金型から取り出した。
その後、繊維径勾配層である表層に、得られた濾過層を嵌め込むことで、濾材2を得た。
さらに、得られた筒状の成形体の上下の端面部分を覆うように、樹脂成形品を接着し、円筒形のカートリッジフィルターの形状とした。本発明の円筒形カートリッジフィルターの1次側の表面積は21cmであった。
・2次清澄濾過用の濾材の作製
[参考例1]
表層に配置する濾材として、熱可塑性繊維Aを用い、珪藻土として濾過一番2号;土田食品工業株式会社製を用い、熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番3号とを、重量比60:40で混合した。得られた混合物を円の外径68mmから内径65mmに位置するように、治具を用いて金型に充填した。
次いで、中間層に配置する濾材として、熱可塑性繊維Aを用い、珪藻土として濾過一番3号;土田食品工業株式会社製を用い、熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番3号とを、重量比20:80で混合した。得られた混合物を円のおよそ外径65mmから内径へ30mmに位置するように、治具を用いて金型に充填した。
さらに、内層に配置する濾材として、熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番3号とを、重量比60:40で混合した。珪藻土の脱落防止のため、金型の円柱に熱可塑性繊維Bを巻きつけ、そこに得られた混合物を円のおよそ外径30mmから内径へ28mmに位置するように、治具を用いて金型に充填した。
これを電気焼結炉にて、150℃で加熱し、2時間焼結した。加熱後、室温(20℃)で、30分の冷却を行った後、成形体を金型から取り出した。
高融点成分として結晶性ポリプロピレン、低融点成分としてプロピレン/エチレン/ブテン−1三元系共重合体を、それぞれ紡糸温度290℃、混繊比50:50で紡糸し、380℃の加熱空気を圧力0.08MPaでブローした、目付40g/mの混繊メルトブロー不織布を製造し、得られた成形体の表面に巻きつけることで、濾材を得た。
さらに、得られた筒状の濾材の上下の端面部分を覆うように、低密度ポリエチレンフィルムで加熱接着し、次いで発泡ポリエチレンのガスケットを熱溶着することで、評価用の円筒形のカートリッジフィルターの形状とした。本発明の円筒形カートリッジフィルターの1次側の表面積は21cmであった。
寸法は、外径68mm、内径28mm、長さ1cmであった。
[比較例1、比較例2]
比較例として、メルクミリポア社製のMillistak+(登録商標)DOHC23CL(比較例1)およびAOHC23CL(比較例2)を用いた。
(1次清澄濾過能力の試験例1)
上記の実施例1及び比較例1の濾材を用いて、濾液の濁度(OD600)が3〜5の範囲に到達するまで、細胞培養液を濾過した(1次清澄濾過)。得られた濾液の量を濾材の面積で割り、濾材の面積あたりの処理効率(L/m)を算出した。また、得られた濾液全体の濁度(OD600)を測定した。結果を表1に示す。なお、評価に供した細胞培養液の濃度は、1.97×10cells/mL、細胞の生存率は90%であった。
Figure 2020104036
表1に示されるとおり、実施例1は、比較例1に対して濾材面積あたりの処理効率が高かった。これは、実施例1の濾材の方が、濾材の単位面積あたり、より多くの細胞培養液を処理したことを示している。また、得られた濾液の濁度(OD600)はほぼ同じであり、いずれも十分な1次清澄濾過が実施されたことを示している。
(1次清澄濾過能力の試験例2)
1次清澄濾過について、実施例2及び比較例1の濾材を用いて濾過圧力がおよそ140Kpaに到達するまで細胞培養液を濾過した。得られた濾液の量を濾材の面積で割り、濾材面積あたりの処理効率(L/m)を算出した。また、得られた濾液全体の濁度(OD600)を測定した。結果を表2に示す。なお、評価に供した細胞培養液の濃度は、3.12×10cells/mL、細胞の生存率は86%であった。
Figure 2020104036
表2に示されるとおり、実施例2は、比較例1に対して濾材面積あたりの処理効率が高かった。また、得られた濾液の濁度(OD600)は実施例2が顕著に低く、実施例2のフィルターはより高い清澄能を有していることが分かった。
(1次清澄濾過と2次清澄濾過の組み合わせ試験例1)
試験例1の実施例1で得られた1次清澄濾過濾液に対し、参考例1のフィルターで濾過(2次清澄濾過)を行った。
一方で、試験例1の比較例1で得られた1次清澄濾過濾液に対し、比較例2で濾過(2次清澄濾過)を行った。
それぞれ、2次清澄濾過後の濾液の濁度(OD600)を測定した。また、2次清澄濾過における濾材面積当たりの濾液通過量(処理効率)を算出した。結果を表3に示す。
Figure 2020104036
表3に示されるとおり、1次清澄濾過を実施例1のフィルターで行い、2次清澄濾過では参考例1のフィルターを用いると、比較例1と比較例2の濾材を組み合わせて濾過を実施するよりも、より多くの細胞培養液が処理可能であり、かつ清澄度の高い濾液が得られることがわかった。
そのため、本発明はバイオプロセスの分野において貢献できることが期待できる。
[比較例3]
1次清澄濾過工程において、濾材全体が珪藻土複合体からなるフィルターを作製し、濾過結果を比較することで、繊維径勾配層の有無による効果の違いを調べた。
熱可塑性繊維Aを用い、珪藻土として濾過一番4号;土田食品工業株式会社製を用い、熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番4号とを、重量比15:85で混合した。珪藻土の脱落防止のため、濾材の内径に接触する金型の円柱に、熱可塑性繊維Bを巻きつけ、そこに熱可塑性繊維Aと珪藻土濾過一番4号の混合物を充填し、これを電気焼結炉にて焼結することで濾過層を製造した。濾過層の寸法は、外径68mm、内径28mm、長さ1cmであった。加熱は150℃、2時間行った。加熱後、室温(20℃)で30分の冷却を行った後、成形された濾過層を金型から取り出した。さらに、得られた筒状の成形体の上下の端面部分を覆うように、樹脂成形品を接着し、円筒形のカートリッジフィルターの形状とし、濾材3を得た。本発明の円筒形カートリッジフィルターの1次側の表面積は21cmであった。
(1次清澄濾過能力の試験例3)
細胞培養液として、試験例1と同様に、細胞の濃度が1.97×10cells/mL、細胞の生存率が90%である細胞培養液を用いた。
上記の比較例3で作製した濾材を用いて、濾過圧力を行ったところ、得られた濾液の濁度は高い清澄度であったものの、濾過圧力が140kPaまで到達したため、その時点で送液を中止した。
その時点までで得られた濾液の量を濾材の面積で割り、濾材の面積あたりの処理効率(L/m)を算出した。また、得られた濾液全体の濁度(OD600)を測定した。結果を表4に示す。
Figure 2020104036
表4に示されるとおり、比較例3は、濾液の濁度(OD600)が相対的に低いにも関わらず、濾過圧力が上昇したため、濾過を終了することとなった。そのため、比較例3は濾材面積当たりの処理効率が低い(9.5L/m)。一方、実施例1は、濾液の濁度が上昇するまで濾過圧力の上昇が起こらず、濾材面積当たりの処理効率が非常に高い。
また、濾過実験終了後、カートリッジを分解し、濾材3の断面を観察したところ、濾材3の断面内側では着色は薄いものの、濾材の外側では着色が濃い様子が観察された。これは、繊維径勾配層を設けなかったことから、濾材の外側で細胞および夾雑物が目詰まりを起こしたからであると考えられた。
すなわち、濃厚な細胞培養液を濾過するにあたっては、本発明にあるような、繊維径勾配層を一次濾過層として設けることが、非常に有用であると結論づけられた。
本発明の濾材ないしフィルターは、高濃度の細胞培養液に対しても濾過容量が大きく、低濾過圧力かつ濾過速度が高く、濾過性能に優れる。また、珪藻土を含む濾過用複合材と組み合わせることも可能であるため、様々なコンディションの細胞培養液に対し、一次清澄化だけでなく二次清澄化をも行うことができる。本発明の濾材ないしフィルターは、細胞培養液の清澄化工程において特に好適に用いられる。

Claims (8)

  1. 熱可塑性繊維の集合体からなる濾材であって、
    前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径が、前記濾材の上流側から下流側に連続的に小さくなっていることを特徴とする、細胞培養液の清澄化用の濾材。
  2. 前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径は、最上流側の繊維径が10μmよりも大きく、最下流側の繊維径が7μm未満である、請求項1に記載の濾材。
  3. 前記濾材を構成する前記熱可塑性繊維の繊維径は、最上流側の繊維径が20〜10μmであり、最下流側の繊維径が3〜0.3μmである、請求項1又は2に記載の濾材。
  4. 前記熱可塑性繊維の集合体の目付けが、20〜100g/mである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の濾材。
  5. 前記熱可塑性繊維の集合体が、融点の異なる2種類以上の熱可塑性繊維を含む不織布である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の濾材。
  6. 前記熱可塑性繊維の集合体が、混繊メルトブローン繊維の集合体、及び/又は、熱可塑性複合繊維の集合体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の濾材。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の濾材と、珪藻土と熱可塑性複合繊維とが一体化された複合材である濾材とが組み合わされた、細胞培養液の清澄化用デプスフィルター。
  8. 円筒形カートリッジフィルター、又は、平板型フィルターである、請求項7に記載のデプスフィルター。
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