JPWO2005120600A1 - 白血球除去方法およびその方法に用いられるフィルター - Google Patents
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Abstract
Description
また、近年ではリウマチ、潰瘍性大腸炎等の疾患の治療に、血液の体外循環による白血球除去療法が行なわれるようになってきており、高い臨床効果が得られている。
上記の不織布等の繊維集合体や連続気孔を有する多孔構造体などのフィルター材による白血球除去の機構は、主としてフィルター材表面と接触した白血球が、フィルター材表面に粘着又は吸着されることによるとされている。従って、従来のフィルター材における白血球除去性能の向上の手段として、フィルター材と白血球との接触頻度を高めること、即ち不織布の繊維径や細孔径を小さくしたり、嵩密度を高めたりすることなどの検討が行われている(特許文献1参照)。しかしながら、白血球除去性能の向上にともなって、血液製剤を通過させる際の圧力損失が増大してしまい、期待する血液量を処理し終わる前に、処理速度が極端に低下するという問題があった。
従って、医療現場における良好な流れ性と高い白血球除去性能といった相反する要求を同時に満たす白血球除去方法、および十分な性能を有する白血球フィルターが望まれている。
(1)液体の入口と出口とを有する容器に多孔性フィルター材を充填した白血球除去フィルターを用いて白血球含有液から白血球を除去する方法において、該フィルターが濾過面に垂直な方向の浸透係数(kx)が0.5×10-12m2以上2.0×10-12m2以下であり、且つ濾過面と平行な方向の浸透係数(ky)とkxとの比(ky/kx)が0.5以上1.5以下である多孔性フィルター材を含むことを特徴とする白血球除去方法。
(2)多孔性フィルター材のkxが1.0×10-12m2以上2.0×10-12m2以下であり、且つkyが1.0×10-12m2以上3.0×10-12m2以下である(1)に記載の白血球除去方法。
(3)多孔性フィルター材が不織布である(1)又は(2)のいずれかに記載の白血球除去方法。
(4)液体の入口と出口とを有する容器に多孔性フィルター材が充填されてなる白血球含有液から白血球を除去するためのフィルターにおいて、該フィルターが濾過面に垂直な方向の浸透係数(kx)が0.5×10-12m2以上2.0×10-12m2以下であり、且つ濾過面と平行な方向の浸透係数(ky)とkxとの比(ky/kx)が0.5以上1.5以下である多孔性フィルター材を含むことを特徴とする白血球除去フィルター。
(5)多孔性フィルター材のkxが1.0×10-12m2以上2.0×10-12m2以下であり、且つkyが1.0×10-12m2以上3.0×10-12m2以下である(4)に記載の白血球除去フィルター。
(6)多孔性フィルター材が不織布である(4)又は(5)のいずれかに記載の白血球除去フィルター。
本発明でいう白血球含有液とは、白血球を含む体液や合成血液を総称するものであり、具体的には、全血、赤血球濃厚液、洗浄赤血球浮遊液、解凍赤血球濃厚液、合成血、乏血小板血漿 (PPP)、多血小板血漿(PRP)、血漿、凍結血漿、血小板濃厚液およびバフィーコート (BC)などの、全血及び全血から調製して得られる単一もしくは複数種類の血液成分からなる液体、またはそれらの液体に抗凝固剤や保存液などが添加された溶液、もしくは全血製剤、赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤などのことである。
k=(dt/dp)×μ×v (1)
ここで、kは浸透係数 (m2)、dpは圧損(Pa)、dtは厚さ(m)、μは粘度(Pa・s)、vは流速(m/s)を表す。
<濾過面に垂直な方向の浸透係数(以下、縦方向浸透係数という)>
本発明における縦方向浸透係数とは、濾過面に垂直な方向から流体を流した時に得られる浸透係数のことである。ここで、濾過面に垂直な方向とは、例えば、図1に示すように白血球含有液を入口から出口へ流した場合の上下方向(縦方向)を意味し、また濾過面と平行な方向は、左右方向(横方向)を意味する。縦方向の通気圧損dpxは、開口直径1.3cmのカラムに厚さが約1.0mmとなるように調製したフィルター材を充填し、流量0.1L/minで空気を流したときの大気圧との圧力差を測定することにより求めた。尚、流体の流れを確保するため、カラム中のフィルター材の入口側と出口側にそれぞれ1mm以上の空間を設けた。得られた値とdtxとしてフィルター材の厚さ、μxとして空気の粘度、vxとして空気の流速をそれぞれ式(1)に代入して縦方向浸透係数kxを算出した。なお、フィルター材の厚さの測定は、フィルター材の中央部を厚み計(OZAKI MFG.CO.,LTD.、PEACOCK MODEL G)を用いて行った。
横方向の通気圧損dpyは、フィルター材を0.9cm×0.9cm×2cmの直方体状に調製し(濾過面の寸法は、0.9cm×2cmとする)、開口部が1.0cm×1.0cm、長さが4cmの直方体容器へ図2のように充填した。なお、フィルター材の厚みが0.9cmより薄い場合には積層して厚みが0.9cmとなるようにし、また厚みが0.9cmより厚い場合にはフィルター材を剥がすもしくは研磨して厚みが0.9cmとなるようにするとよい。そして、直方体容器に充填したフィルター材に流量0.1L/minで空気を流したときの大気圧との圧力差を測定することにより求めた。その際に、フィルター材へ浸透しない充填材をフィルター材と直方体容器との間に充填し、空気の漏れがないようにした。得られた値とdtyとして2cm、μyとして空気の粘度、vyとして空気の流速をそれぞれ式(1)に代入して横方向浸透係数kyを算出した。
より良好な流れ性と高い白血球除去性能とのバランスに優れたフィルター材を得るために、kyが0.5×10-12m2以上3.0×10-12m2以下であることが好ましい。より好ましくはkyが1.0×10-12m2以上3.0×10-12m2以下、更に好ましくはkyが1.2×10-12m2以上3.0×10-12m2以下、特に好ましくはkyが1.5×10-12m2以上3.0×10-12m2以下である。
実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例5の結果を図4と図5に示すが、これらの図から上記に述べた浸透係数値の範囲の意味は明らかである。これらの図より、縦方向浸透係数が2.0×10-12m2より大きい場合(比較例1、比較例3)では高い白血球除去性能が得られないことが分かる。また、高い白血球除去性能が得られていても、横方向浸透係数/縦方向浸透係数が0.5より小さい(比較例4)または1.5より大きい(比較例2)、もしくは縦方向浸透係数が0.5より小さい(比較例5)場合では血液濾過圧/厚さが高くなり、流れ性に優れないことが明らかである。よって、縦方向浸透係数を0.5×10-12m2以上2.0×10-12m2以下であり、且つ横方向浸透係数/縦方向浸透係数を0.5以上1.5以下とすることにより、高い白血球除去性能と流れ性に優れたフィルター材を得ることができる。
選択する因子、および浸透係数との関係は使用するフィルター材の種類によって異なるため言及することは困難であるが、フィルター材が不織布の場合の浸透係数のコントロールの仕方の一例を以下に示す。実験により、同じ繊維径で充填率を1.7倍にすることにより縦方向浸透係数は0.3倍、横方向浸透係数は0.5倍となることが確認できるので、充填率を制御することにより横方向浸透係数と縦方向浸透係数との比をコントロールすることができる。また、実験的に、同じ充填率で繊維径を2倍にすることにより縦方向浸透係数は1.6倍となるが横方向浸透係数は変わらないので、繊維径を制御することにより縦方向浸透係数のみをコントロールすることができる。更には、繊維の配向を厚み方向へ変化させることにより縦方向浸透係数は低くなり横方向浸透係数は高くなり、繊維分散性を向上させたりすることにより横方向浸透係数に比べ縦方向浸透係数の方がより低下することが確認できるので、横方向浸透係数と縦方向浸透係数との比をコントロールすることができる。しかし、多くの場合、一つの因子のみを制御しても本発明を満たすフィルター材を得ることは困難であり、総合的な因子の制御が必要となる。
なお、本発明者らが、従来の白血球除去フィルターに使用されているフィルター材の縦方向浸透係数、横方向浸透係数を上記の方法に従って測定したところ、本発明を満たす浸透係数のフィルター材を有する白血球除去フィルターは見出せなかった。(図3)
上記多孔質体の充填率は、0.05以上0.30以下であることが好ましく、より好ましくは0.07以上0.25以下、特に好ましくは0.07以上0.20以下である。充填率が0.30より大きいと多孔質体の流れ抵抗が増大して流れ性の面で好ましくなく、反対に、0.05より小さいと白血球が多孔質体に捕捉されずに通過してしまい、白血球除去性能が低くなる。また、多孔質体の機械的強度も低下するため好ましくない。
充填率={多孔質体の重量(g)÷(多孔質体の面積(cm2)×多孔質体の厚み(cm))}÷多孔質体を構成する材料の比重(g/cm3) (2)
ここでの平均繊維径とは、以下の手順に従って求められる値をいう。即ちフィルター材を構成する1枚または実質的に同質な複数枚の不織布から実質的に均一と認められるフィルター材の一部分を数箇所においてサンプリングし、走査型電子顕微鏡などを用いて写真に撮る。写真に撮られた繊維の合計測定本数が100本を超えるまで写真を撮り続け、このようにして得た写真について、写っている全ての繊維の直径を測定する。ここで直径とは、繊維軸に対して直角方向の繊維の幅をいう。測定した全ての繊維の直径の和を、繊維の数で割った値を平均繊維径とする。但し、複数の繊維が重なり合っており、他の繊維の陰になってその幅が測定できない場合、また複数の繊維が溶融するなどして、太い繊維になっている場合、更に著しく直径の異なる繊維が混在している場合、写真の焦点がずれて繊維の境界がはっきりしない、等々の場合には、これらのデータは削除する。また、上流側と下流側とで明らかに平均繊維径が異なる場合には、もはやこれを単一なフィルター材とは認めない。ここで「明らかに平均繊維径が異なる」とは統計的に有意差が認められる場合をいう。この場合は上流側と下流側とを異なるフィルター材としてとらえ、両者の境界面を見つけた後、両者の平均繊維径を別々に測定し直す。
本発明における不織布の製造方法として、メルトブロー法の一例を説明する。
押出機内で溶融された溶融ポリマー流は、適当なフィルターによって濾過された後、メルトブローダイの溶融ポリマー導入部へ導かれ、その後オリフィス状ノズルから吐出される。それと同時に加熱気体導入部に導入された加熱気体を、メルトブローダイとリップにより形成された加熱気体噴出スリットへ導き、ここから噴出させて、前記の吐出された溶融ポリマーを細化して極細繊維を形成し、積層させることにより不織布を得る。この際、樹脂粘度、溶融温度、単孔あたりの吐出量、加熱気体温度、加熱気体圧力、紡口と集積ネットの距離などの紡糸因子を樹脂の種類によって適時選択、制御することにより、所望の繊維径や目付の不織布が得られ、また繊維配向や繊維分散性を制御することができる。更に、熱プレス加工により、不織布の厚み、すなわち充填率の制御を行うことが可能である。
白血球の除去方法としては、白血球除去フィルターよりも高い位置に設置された白血球含有液の入った容器から、落差によって白血球含有液がチューブを経由して白血球除去フィルターに流れることによって行われてもよいし、あるいは、ポンプなどの手段を用いて白血球含有液を白血球除去フィルターの入口側から加圧および/または白血球除去フィルターの出口側から減圧して流すことによって行ってもよい。
このように、フィルターを用いた白血球除去血液製剤の調製方法ならば何れでもよく、特に限定する必要はない。
血液体外循環療法における白血球除去フィルターを用いた白血球除去方法は以下の通りである。生理食塩水などで白血球除去フィルター内をプライミングした後に、少なくともヘパリン、メシル酸ナファモスタット、ACD−A、ACD−Bなどの抗凝固剤を含む溶液で置換する。体外へ導かれた血液へ抗凝固剤を加えながら、人に接続された回路から白血球除去フィルターの入口へ血液を流量10〜200mL/minで流し込み、白血球除去フィルターにて白血球を除去する。白血球除去開始期(処理量0〜0.5L)は10〜50mL/minの流量が好ましく、10〜40mL/minが更に好ましく、10〜30mL/minが特に好ましい。白血球除去開始期以降(処理量0.2〜12L)は流量20〜120mL/minで処理を行うのが好ましく、流量20〜100mL/minが更に好ましく、流量20〜60mL/minが特に好ましい。白血球除去後、生理食塩水などで白血球除去フィルター内を置換して返血すると、白血球除去フィルター内の血液が無駄にならないため好ましい。
次にフィルター材の白血球除去性能及び流れ性についての評価方法を記述する。評価に用いる血液は全血であり、採血直後の血液100mLに対して抗凝固剤であるCPD溶液を14mL加えて混和し、2時間静置したものである(以後、濾過前血という)。不織布8枚を有効濾過面積1.3cm2のカラムに充填し、濾過前血が充填されたシリンジとカラムの入口を内径3mm、外径4.2mmのポリ塩化ビニル製のチューブで接続した後に、シリンジポンプにて流速1.2mL/minでカラム内に流し、3mLを回収した(以後、濾過後血という)。白血球除去性能は、白血球残存率を求めることにより評価した。白血球残存率はフローサイトメトリー法(装置:BECTON DICKINSON社製 FACSCalibur)を用いて白血球数を測定し、次の式(3)に従い計算した。
白血球残存率= [白血球濃度(個/μL)(濾過後血)]
÷[白血球濃度(個/μL)(濾過前血)] (3)
なお、白血球数の測定は、各血液100μLをサンプリングし、ビーズ入りLeucocountキット(日本ベクトン・ディッキンソン社)を用いて行った。流れ性は血液濾過圧を測定することにより評価した。血液濾過圧は、カラム入口側の管に圧力計を接続して濾過終了時に測定を行った。結果、白血球残存率/厚さは3.3×10-5/mm、血液濾過圧/厚さは2.7kPa/mmとなり、濾過圧を増大させることなく、高い白血球除去性能を得ることができた。なお、実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例5の血液評価結果については図4及び図5にまとめて記載した。図4の破線は、kx=0.5×10-12m2及びkx=2.0×10-12m2を表す。また、図5の破線は、ky/kx=0.5及びky/kx=1.5を表す。
Claims (6)
- 液体の入口と出口とを有する容器に多孔性フィルター材を充填した白血球除去フィルターを用いて白血球含有液から白血球を除去する方法において、該フィルターが濾過面に垂直な方向の浸透係数(kx)が0.5×10-12m2以上2.0×10-12m2以下であり、且つ濾過面と平行な方向の浸透係数(ky)とkxとの比(ky/kx)が0.5以上1.5以下である多孔性フィルター材を含むことを特徴とする白血球除去方法。
- 多孔性フィルター材のkxが1.0×10-12m2以上2.0×10-12m2以下であり、且つkyが1.0×10-12m2以上3.0×10-12m2以下である請求項1に記載の白血球除去方法。
- 多孔性フィルター材が不織布である請求項1又は2のいずれかに記載の白血球除去方法。
- 液体の入口と出口とを有する容器に多孔性フィルター材が充填されてなる白血球含有液から白血球を除去するためのフィルターにおいて、該フィルターが濾過面に垂直な方向の浸透係数(kx)が0.5×10-12m2以上2.0×10-12m2以下であり、且つ濾過面と平行な方向の浸透係数(ky)とkxとの比(ky/kx)が0.5以上1.5以下である多孔性フィルター材を含むことを特徴とする白血球除去フィルター。
- 多孔性フィルター材のkxが1.0×10-12m2以上2.0×10-12m2以下であり、且つkyが1.0×10-12m2以上3.0×10-12m2以下である請求項4に記載の白血球除去フィルター。
- 多孔性フィルター材が不織布である請求項4又は5のいずれかに記載の白血球除去フィルター。
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