JP2020100890A - 潤滑処理亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】潤滑処理亜鉛めっき鋼板のクロムフリー化。【解決手段】基材上に基材側から防食層、潤滑層の順にクロムフリーの皮膜層が形成された亜鉛めっき鋼板であって、防食層厚み(μm)が、 0.05≦(防食層厚み)≦0.05+34/(めっき層のRSm) を満たし、かつ潤滑層厚みが (めっき層のRa)≦(潤滑層厚み)≦5+(めっき層のRa) を満足し、防食層および潤滑層にともにシリケートおよび樹脂が含有し、防食層および潤滑層に含有する樹脂がシリケート変性しており、潤滑層には潤滑剤粒子が分散していることを特徴とする潤滑処理亜鉛めっき鋼板。【選択図】図7

Description

本発明は、塑性加工後も好適な外観を維持できて、無塗装でも使用できる、特に外板用素材に適した潤滑処理亜鉛めっき鋼板に関する。
1995年のフロン規制を機に鋼材表面に自己潤滑性を付与することにより、無塗油でプレス成形可能であって、成形後の脱脂洗浄工程が省略可能である潤滑処理亜鉛めっき鋼板が鉄鋼各社から提案されている。
このような潤滑処理亜鉛めっき鋼板では、皮膜構成としては、めっきの上に防食層を設けるとともに、防食層の上に潤滑層を設けて、これらの2層に機能分担させる。ここで、防食層にはクロメート処理皮膜、潤滑層にはオレフィン系ワックス等の潤滑剤、ウレタン系樹脂等のバインダー樹脂、シリカ等の体質顔料が用いられている。
本発明者等は上記潤滑処理亜鉛めっき鋼板のクロムフリー化を検討した。
従来の下層クロメート処理を代替するクロムフリー防食処理として、以前に当発明者等が発明し、その後出願公開された特許文献1に開示されるリチウムシリケート系処理を採用した。即ち、ジンケートアニオンよりも強いブレンステッド塩基としてのシリケートアニオンを、ジンクカチオンよりも弱いブレンステッド酸としてのイミノカチオンで中和した塩を皮膜中に構成させることにより、金属亜鉛に対する沈殿皮膜形成型腐食インヒビターとしての防食機構を発現させた。
シリケート源としてリチウムシリケートを使用するのは、シリケートアニオン(電離状態/薬剤中での溶解・分散安定状態)→シラノール(酸としての遊離/電荷を失い薬剤中での不安定化)→シリカゾル(凝集、水素結合によるネットワーク形成/皮膜形成)のゾル・ゲル皮膜形成系において、リチウムカチオンがゾル・ゲルネットワーク中においてもそのイオン半径の小ささ故に非局在化する特性から、リチウムシリケートを出発原料とするゾル・ゲル法(=リチウムシリケート系処理)の方が、アルコキシド等を出発原料とするゾル・ゲル法よりも安価に均質で強固な皮膜が得られるためである。
一方、上層皮膜処理については、従来通りの樹脂エマルジョン系薬剤塗布による樹脂系皮膜形成を検討した。しかしながら、下層皮膜処理に上記リチウムシリケート系処理を行うと、上層皮膜の硬化反応が阻害される結果、皮膜としての耐水性が発現できないことから、本来の潤滑性能が発現しない場合があった。
すなわち、図1の(式1)に示すように、通常、樹脂エマルジョン薬剤中での樹脂末端官能基(カルボキシル基等)は、アンモニウムカチオン等の揮発性カウンターカチオンと対を成すアニオン状態であるが、塗布・乾燥によってカウンターカチオンが揮発すると、樹脂末端官能基は遊離して電荷を失い、不可逆的に凝集して硬化する。
一方、上記リチウムシリケート系処理によって下層を設けた場合は、図1の(式2)に示すように、下層にリチウムカチオンが存在するために、樹脂末端官能基の一部が下層より溶出してくる不揮発性のリチウムカチオンとの対となる結果、この部分は乾燥後再度の水侵入に対して可逆的に解離して、薬剤中でのアニオン状態に戻ってしまうことが判明した(式2)。
特開2006−16676号公報
本発明はクロムフリー皮膜処理を施した亜鉛めっき鋼板に関し、皮膜処理層にて発現させる無塗油プレス成形性及びプレス成形品の好適な外観によって、鋼板ユーザーでの無塗油プレス成形、プレス成形後の脱脂洗浄省略、及び、塗装省略を可能にする潤滑処理亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のようなリチウムシリケート系処理によって、防食層となる下層皮膜層を設けた場合に、潤滑層となる上層皮膜の硬化機構について、鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(1)樹脂末端官能基にシリケートを配置し、そのシリケートをシリケート変性して、シリケート同様のゾル・ゲル法による硬化反応によって樹脂を硬化させる。
(2)このとき、単独でゾル・ゲル法によって硬化反応し得るシリケート液を更に添加すると、シリケート変性された樹脂エマルジョンの安定性を確保することができる。
(3)防食層、潤滑層の成分・状態だけでなく、防食層、潤滑層を合わせた皮膜層には大きな応力が残留することから所定の厚みが必要となる。その厚みは鋼板の状態およびその鋼板上のめっき層の状態に依存する。
即ち、不揮発性カチオン存在下で進行するシリケートのゾル・ゲル硬化反応を潤滑層の硬化に応用する。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下に記載する通りのものである。
(1)基材上に基材側から防食層、潤滑層の順にクロムフリーの皮膜層が形成された潤滑処理亜鉛めっき鋼板であって、
防食層厚み(μm)が、
0.05≦(防食層厚み)≦0.05+34/(めっき層のRSm)
を満たし、かつ潤滑層厚みが
(めっき層のRa)≦(潤滑層厚み)≦5+(めっき層のRa)
を満足し、
防食層および潤滑層にともにシリケートおよび樹脂を含有し、
防食層および潤滑層に含有する樹脂がシリケート変性しており、
潤滑層には潤滑剤粒子が分散していることを特徴とする潤滑処理亜鉛めっき鋼板。
(2)前記潤滑剤粒子が表面をシリケート変性したワックス粒子であることを特徴とする上記(1)に記載の潤滑処理亜鉛めっき鋼板。
本発明によれば、鋼板メーカーの製造現場のみならず、最終顧客である鋼板ユーザーにおいても、防食剤としての6価クロム化合物や、プレス成形後の脱脂剤としてのフロン系溶剤等の環境負荷物質を使用する必要がない。
また、成形品としての最終製品の外観が良好であることを活用して、鋼板ユーザーにおいては塗装を省略することができる。
Liイオンの存否によるクロムフリー皮膜上層の硬化反応機構の相違を示す対比図である。 SST暴露時間と発錆面積率の関係を示すグラフである。 角筒成形品におけるパウダリング評価部位を示す写真である。 脱落皮膜の確認方法を示す図である。 円筒成形品の外観に与える皮膜厚みtcと基材表面粗さRaの関係を示す説明図である。 ピンオンディスク法を示す概略図である。 ピンオンディスク法による動摩擦係数変化を示すグラフである。 静摩擦測定試験機の概略図である。 静摩擦測定における荷重−ストローク曲線のグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.皮膜の構成
1−1.亜鉛系めっき鋼板
本発明における亜鉛系めっき鋼板は、純亜鉛又は亜鉛合金系めっき鋼板である。合金系めっきの場合、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、鉄、シリコン等の合金元素を含有した場合においても、めっき皮膜中の金属亜鉛が50%程度以上を占める場合には、同等の効果が得られる。具体的には、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、5%アルミ−亜鉛合金溶融めっき鋼板、3〜12%アルミ−2〜4%マグネシウム−亜鉛合金溶融めっき鋼板、55%アルミ−亜鉛合金溶融めっき鋼板、10%ニッケル−亜鉛合金電気めっき鋼板等である。連続めっきラインで製造できる実用的な付着量は、片面あたりの付着量として、10〜300g・m−2程度であるが、本発明の効果発現についてはこの限りでない。本発明においては、これらの亜鉛系めっき鋼板を「基材」と称する場合がある。
1−2.防食層皮膜
金属亜鉛に対する沈殿皮膜形成型腐食インヒビターを防食機構として活用した本発明における防食層皮膜処理の作用については、特許文献1に詳細が記載されている。
一方、本発明の中で防食層処理としてリチウムシリケート系処理を採用する理由を以下に記述する。
シリケート溶液からのゾル皮膜形成について、好適なプロセスには、薬液の安定性と不可逆な皮膜形成機構とが必要である。薬液の安定性、即ち、シリケートアニオンの安定性は、弱酸カチオンとしてのリチウムカチオンの存在によって確保される。このような弱酸カチオンとしてはリチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、4級アミン等がある。一方、乾燥・造膜過程ではシリケートアニオンと上記弱酸カチオンとが共存すると、水への再溶解が起こり易く、不可逆的皮膜形成が困難である。上記弱酸カチオンの中でリチウムカチオンは最もイオン半径が小さく、形成されるシラノール同志の水素結合によるネットワーク(ゾル皮膜)中を自在に透過して非局在化し、不可逆的なゾル皮膜形成を阻害しない特徴を有する。
連続めっきラインのインライン処理にて2層処理を連続して行う場合、多かれ少なかれ潤滑層薬剤へ防食層薬剤が混入するが、混入する防食層薬剤のpHが潤滑層薬剤のpHよりも低い場合(防食層薬剤pH<潤滑層薬剤pH)には、混入によって潤滑層薬剤成分の凝集が生じるため、連続処理できないのである。
この問題さえ起らなければ(防食層薬剤pH>潤滑層薬剤pHであれば)、潤滑層皮膜処理のバインダー樹脂原料について広範な汎用グレード品からの選択が可能となるため、選択肢が拡がることによる性能追求、環境負荷低減、薬剤原料コスト低減が可能になる。
シリケート系防食層はシリケート構造単独(シリケートは膜化するとシラノールに変形、シラノールに変形したものも含めシリケートと記す。)では皮膜層硬化過程で発生する残留応力により自己崩壊するため、応力緩和措置としての樹脂添加が有効である。後述する防食層厚みよりも粒径の小さい樹脂エマルジョン、ディスパージョンが利用でき、樹脂種は限定されない。アルカリ性液への添加が容易で安価なアニオン分散アクリル系エマルジョンが好適である。樹脂の添加は防食層中の体積比率が50%未満である必要があり、シリケート/樹脂粒分散構造としては、シリケートが分散媒、樹脂粒が分散質とならなければ(言い換えれば、樹脂粒をシリケートが覆い尽くさなければ)防食性が得られないのである。
更に、上述の樹脂添加による防食層の物性改善を有効化するためには、シリケート/樹脂粒−分散界面を接着する必要があり、樹脂粒を予めシリケート変成して添加することの有効性を見出した。シリケート変成の作用については、潤滑層と基本的に同一の方法が適用でき、詳細は後述する(1−3−(3))。
防食層単独での防食性の観点からは、先願によるとシリケート付着量として0.1mmol・m−2以上が必要であるが、上層に後述する潤滑層を設ける場合の防食性は、極薄の防食層で十分良好な防食性が得られる。防食層皮膜厚として0.05μmで充分である。この場合は、防食層と潤滑層とが相乗的に防食性に作用しており、潤滑層単独では防食性が得られない。
一方で、加工歪に追従する潤滑層の存在によって、成形後の防食層には防食層単独の場合よりも大きな応力が残留するため、潤滑層を含めた皮膜層全体の脱落を伴う、防食層の凝集破壊による応力緩和が発生する。この現象を抑制できる防食層厚みと基材のめっき層のRSm(粗さ曲線要素の平均長さ)との間に次式が成立することが必要である。なお、RSmはJIS B 0601-2001で規定されるRSmを意味する。
(防食層厚み)≦0.05+34/(めっき層のRSm)
基材のめっき層のRSmが防食層凝集破壊の伝播長を支配していると考えられ、凝集破壊が伝播する防食層厚みがクリティカルにRSmに支配されることが判明した。
上式はRSmが小さくなるほど、許容防食層厚みが無限に増加する形になっているが、上記の要因考察からは、許容防食層厚みが基材のめっき層Ra(中心線平均粗さ)を超えると無効であり、下式が成立すると考えられるが、目下の現実的めっき鋼板表面では想定できない事態である。
(防食層厚み)≦(基材のめっき層Ra)
1−3.潤滑層皮膜
潤滑層である上層皮膜は、大まかには従来技術同様、オレフィン系ワックス等の潤滑剤、ウレタン系樹脂等のバインダー樹脂、シリカ等の体質顔料から構成されるが、これらの各成分に、防食層である下層から溶出・混入するカチオンの存在下での上層皮膜の硬化阻害を克服する技術、従来の潤滑処理鋼板の問題点であった取扱い性を改善する技術を新規に発明した。
(1)バインダー樹脂
後述するシリケート変性が起こる末端官能基を有すればよく、また、薬剤として成立し、且つ下層シリケート皮膜上で硬化可能であればよい。樹脂末端官能基が後述するシリケート変性が可能なカルボキシル基である場合が多いことから、バインダー樹脂としては比較的広汎な原料を選ぶことができる。
樹脂物性については、従来技術でも指摘されているように、高El(母材塑性変形に追従)且つ高Ts(高面圧摺動にて皮膜切れを起さない)であるほど好ましい。
樹脂種については、上記物性バランスにおいてポリウレタン系樹脂が適しているが、これに限定されず、その他、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂等も使用できる。
樹脂成分は単一構成である必要は無く、高El、高Tsのバランスを高度化する目的で低Tg(高El)樹脂のマトリックスに高Tg(高Ts)樹脂を分散させた構造を採ってもよい。
樹脂分散液原料としては、上記樹脂種以外の留意点として、分散方法においても多様な形態が可能である。通常樹脂エマルジョンと呼ばれている原料は、疎水性の樹脂粒子を水中に分散させるために界面活性剤(ソープ)を利用している場合が多いが、これを皮膜化した場合には、皮膜中に残存する界面活性剤を通り道として水分が皮膜を通過する(ブリード現象と言われる)等の不具合がある。昨今はソープフリー分散技術について、多種の提案がなされており、大まかには、樹脂粒表面にカルボキシル基等の官能基を配置して、官能基の解離によるイオン性チャージの反発力を樹脂粒子間に働かせることによって、樹脂粒子の凝集を防いで分散状態を安定化している。ソープフリー樹脂エマルジョンから得られる樹脂皮膜は、樹脂官能基解離におけるカウンターイオンの性質にもよるが、ブリード現象抑制の観点から好ましく、特に樹脂末端官能基がカルボキシルアニオン、カウンターカチオンが揮発性アンモニウムカチオンの場合に、得られる皮膜の耐水性が良好で好ましい。
(2)潤滑剤(ワックス)
潤滑処理鋼板は、プレス成形下の潤滑性が要求されながらも、連続製造ライン通板における搬送ロールの滑りによる表面擦り疵発生、コイルやシートパイル搬送下における材料−材料間の滑りによるコイル巻き緩み・パイルつぶれ等、プレス成形以外の材料取扱いにおいては、潤滑性の反作用によるデメリットもが多い。潤滑剤としてはポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系ワックス、黒鉛微粒子、二硫化モリブデン微粒子等、従来より提案されている固体潤滑剤の各種が使用可能である。
本発明における潤滑剤の種類は120℃以上の融点を有するオレフィン系ワックスが好ましい。バインダー樹脂の硬化に100℃前後の焼付け温度が必要である一方で、ワックス融点が100℃近傍であると潤滑特性が安定しないからである。
本発明におけるオレフィン系ワックス分散方法についても、ブリード現象抑制の観点からソープフリーが好ましい。
潤滑剤の添加量は従来技術と同様で、皮膜中に1%以上20%以下、中でも10%程度が好ましい。
(3)シリケート変性
本発明における上層処理液中バインダー樹脂粒子及び潤滑剤粒子の表面をシリケート変性する作用及び方法を記述する。
本発明におけるバインダー樹脂粒子表面はシリケート変性されている必要がある。シリケート変性されていない場合は、樹脂粒子表面のカルボキシル基が下層処理皮膜から混入するリチウムカチオン等の不揮発性カチオンとのイオン対を形成することによって不可逆的硬化しなくなるためである。シリケート変性された場合は、薬剤をめっき鋼板に塗布・乾燥する過程で樹脂粒子表面のシリケート基同士がゾル・ゲル反応/シリケート(解離)→シラノール(遊離)によって硬化(凝集)するため、強固な耐水性皮膜が得られる。
本発明における潤滑剤についても、シリケート変性されていることが好ましい。シリケート変性した潤滑剤は、水分の存在によって潤滑剤粒子が脱落しにくくなることと、シリケート変性されたバインダー樹脂と一体化することで、潤滑剤粒子が皮膜中に取りこまれる(バインダー樹脂に取り囲まれる)ため、材料摺動を伴わない摩擦(静止摩擦係数)が大きくなって、コイルやシートパイルの取扱い性が改善するためである。 シリケート変性しないオレフィン系ワックス粒は、バインダー樹脂やその他成分に比較して表面張力が小さいため、造膜過程(液膜が乾燥して固体皮膜になる)で起る対流に乗って皮膜表層に濃化する現象が指摘されており、静止摩擦係数が小さい表面が形成される。
本発明における樹脂粒子表面官能基及び潤滑剤粒子表面官能基は、シリケート変性を受けている必要がある。表面官能基の量は、樹脂原料の酸価として求めることができ、酸価と等価なシランカップリング剤により編成された場合を100%とすると、好ましくは50%変性以上、より好ましくは100%変性しているとよい。
本発明におけるシリケート変性の方法については、樹脂からシリケート基までの結合の全てがσ結合であれば、上記作用が発現すると考えられ、方法は不問であるが、簡易に低コストで実施できるシランカップリング剤を利用する方法を提案する。シランカップリング剤の種類は、カルボキシル基中の酸素に対して求電子的にσ結合を形成する有機官能基を有するものが利用可能である。具体的な有機官能基としてグリシジル基、メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤が汎用工業原料として挙げられる。シランカップリング剤としてはアミノ基(イオン結合性)、ビニル基(求核性)、アルキル基(不活性)等を有するものが工業原料として存在するが、これらの何れも効果はない。
シリケート変性の手順を記述する。先ず樹脂分散液、潤滑剤分散液にシリケート水溶液(若しくは分散液)を混合しておき、次いで上記シランカップリング剤を添加・混合する。
(4)シリケート成分
シリケート水溶液の種類はゾル・ゲル硬化反応によって造膜する種類を選択することができ、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムが挙げられる。珪酸ナトリウム、珪酸カリウムは耐水性良好な皮膜が得られず、好ましくない。シリケート水溶液を添加しない場合は薬剤のポットライフが短く、作業性が芳しくない。シリケート成分は造膜後には硬質なガラス状となるため、体質顔料的な機能を発現する。製造直後のコイル巻き取り温度は100℃前後であり、使用する樹脂によってはTgを超え、皮膜同士が融着する現象(ブロッキング)が起るが、シリケート添加はブロッキング対策として有効である。更に下層処理同様、シリケートアニオンは金属亜鉛に対する防食性を発揮するため、防食性改善の面でも有効である。
潤滑皮膜中のシリケート添加量の下限は、シリケート成分シリケート基としてシランカップリング剤シリケート基の0.5倍以上である。0.5倍未満では薬剤の経時安定性が不充分である。好ましくは1倍以上である。
潤滑皮膜中のシリケート添加量の上限は、シリケートとしての体積比率が50%未満である。50%を超えると先述した防食皮膜とは逆に、分散構造の分散媒側がシリケートとなり、プレス加工に追従する皮膜の延びが極度に低下する。好ましくは10%から30%である。
(5)その他の成分
上記以外の皮膜成分としては、従来技術と同様に、架橋剤、防食剤、造膜助剤等を含んでよい。特に、ゾル・ゲル硬化系に対して架橋剤的に作用する多価カチオンは好ましい。一例を挙げると、チタニウムは4価のカチオンで架橋剤的に作用する。アルカリ性の潤滑処理薬液にチタンの添加が可能な形態としては、アンモニアで中和したフルオロ錯体、アミン錯体が挙げられる。
クロムフリー防食剤としては、下層処理技術に関する先願発明と同様に、シリケートを中和するカチオンとして適当なものを添加すると、沈殿型腐食インヒビターとして作用するので、バナジン酸(V)アニオン等の酸化型腐食インヒビターを添加してもよい。
(6)潤滑層厚み
本発明における潤滑層厚みは、めっき層の中心線平均粗さ(Ra)以上である必要がある。
即ち、(潤滑層厚み)≧(めっき層のRa)
潤滑層厚みがめっき層のRaを下回ると、プレス成形やロールフォーミングで工具との摺動跡がめっき層のRaを低下させ、このことに起因する光沢上昇が摺動跡を見る角度によって黒く浮き上がらせることで成形後ワークの外観を著しく悪くする。
逆に、潤滑層厚みがめっき層のRaよりも5μm以上大であると潤滑層皮膜の加工歪み追従性が劣化し、伸び歪が大きい部位での白化が顕在化して、やはり成形ワークの外観を損なう。
2.製造方法
2−1.製造設備
本発明における下層の防食層皮膜、上層の潤滑層皮膜を形成する方法として提案するのは、上記皮膜成分を含有する溶液や分散液等の液体を、基材であるめっき鋼板に塗布して乾燥させるウェットプロセスである。
鋼板コイルをペイオフしながら、連続で皮膜処理し、再びコイルに巻き取る連続コイル処理が、生産性が高く、好ましい。
皮膜処理は、薬液塗布と乾燥との2工程である。薬液塗布方法としてはロールコート法やスプレーコート法が挙げられる。乾燥方法としては、オーブンやドライヤでの乾燥が挙げられる。更に好ましくは、コータ設備、乾燥設備が連続めっきラインの出側に付随している形態であり、めっき、薬剤塗布、乾燥を連続処理することによって最も高い生産性が得られる。
2−2.好適な製造条件
防食層厚み([作用]1−2で詳述)と潤滑層厚み([作用]1−3(6)で詳述)を精度良くコントロールするためには、皮膜処理液の塗布方法としてはロールコーティング法が好ましい。また潤滑層の取扱い性確保([作用]1−3(2)で詳述)のためには、乾燥プロセスの最高到達温度をワックス融点未満とする必要がある。
(1).皮膜処理薬剤調合
(1−1).防食皮膜処理薬剤調合
以下に防食処理薬剤調合の実施例を表1に示す。
防食処理薬剤Aはシリコン化合物がシリケートであり、且つ、複合される樹脂粒表面にシリケート変性を施す本発明の要件を満たす実施例である。
防食処理薬剤Bは複合される樹脂粒表面にシリケート変性を施すが、シリコン化合物がシリカである点で本発明の要件を満さない比較例である。
防食処理薬剤Cはシリコン化合物がシリケートであるが、複合される樹脂粒表面にシリケート変性を施さない点で本発明の要件を満たさない比較例である。
以上A、B、Cの防食皮膜処理薬剤に使用した原料の詳細を表2に示す。
各潤滑皮膜処理薬剤の調整手法は以下のとおりである。
・防食皮膜処理薬剤A
攪拌下、アクリル樹脂エマルジョン61.7gにシランカップリング剤0.69gを滴下してシリケート変性アクリル樹脂エマルジョンを調製した。
攪拌下、シリケート水溶液349.4gにイオン交換水521.8gで希釈した7.0gのフルオロチタン酸水溶液を滴下してシリケート混合溶液を調製した。
ポリエリレンイミン2.3gをイオン交換水21.0gに溶解してでポリエチレンイミン水溶液を調製した。
攪拌下、シリケート変性アクリル樹脂エマルジョン62.4gにシリケート混合溶液878.2gを滴下混合、次にシランカップリング剤25.6gを滴下混合、更にポリエチレンイミン水溶液23.3gを滴下混合し、水溶性チタン化合物10.5gを滴下混合して、下層処理薬液1000gを調製した。
・防食皮膜処理薬剤B
攪拌下、アクリル樹脂エマルジョン61.7gにシランカップリング剤0.69gを滴下してシリケート変性アクリル樹脂エマルジョンを調製した。
攪拌下、シリカディスパージョン349.4gにイオン交換水521.8gで希釈した7.0gのフルオロチタン酸水溶液を滴下してシリケート混合溶液を調製した。
ポリエリレンイミン2.3gをイオン交換水21.0gに溶解してでポリエチレンイミン水溶液を調製した。
攪拌下、シリケート変性アクリル樹脂エマルジョン62.4gにシリケート混合溶液87.82gを滴下混合、次にシランカップリング剤25.6gを滴下混合、更にポリエチレンイミン水溶液23.3gを滴下混合し、水溶性チタン化合物10.5gを滴下混合して、下層処理薬液1000gを調製した。
・防食皮膜処理薬剤C
攪拌下、シリケート水溶液349.4gにイオン交換水548.1gで希釈した7.0gのフルオロチタン酸水溶液を滴下して、シリケート混合溶液を調製した。
ポリエリレンイミン2.3gをイオン交換水21.0gに溶解してポリエチレンイミン水溶液を調製した。
攪拌下、アクリル樹脂エマルジョン61.7gにシリケート混合溶液904.5gを滴下混合、次にポリエチレンイミン水溶液23.3gを滴下混合し、最後に水溶性チタン化合物10.5gを滴下混合して、下層処理薬液1000gを調製した。
(1−2).潤滑皮膜処理薬剤調合
表3に潤滑処理薬剤調合の実施例を示す。
潤滑処理薬剤Aはシリコン化合物がシリケート構造であり、且つ、複合される樹脂粒表面にシリケート変性を施し、更に潤滑剤であるワックス粒子についても粒表面にシリケート変性を施す本発明の要件を満たす実施例である。
潤滑処理薬剤Bはシリコン化合物がシリケート構造であり、且つ、複合される樹脂粒子表面にシリケート変性を施すが、潤滑剤であるワックス粒子については粒表面にシリケート変性を施さない点で発明の要件を満たさない比較例である。
潤滑処理薬剤Cは複合される樹脂粒子表面がシリケート変性を施されているが、シリコン化合物がシリカである点で本発明の要件を満さない比較例である。
潤滑処理薬剤Dはシリコン化合物がシリケート構造であるが、複合される樹脂粒子表面がシリケート変性を施されていない点で本発明の要件を満たさない比較例である。
以上A〜Dの潤滑処理薬剤に使用した原料の詳細を表4に示す。
各防食皮膜処理薬剤の調整手法は以下のとおりである。
・潤滑皮膜処理薬液A
攪拌下、イオン交換水340.2gに低Tgウレタン樹脂エマルジョン198.3gを滴下混合、次いで高Tgウレタン樹脂エマルジョン304.1gを添加、更にシリケート水溶液69.4gを滴下混合、最後に17.2gのシランカップリング剤を17.2gのエタノールで希釈したシランカップリング剤エタノール溶液34.3gを滴下混合して、シリケート変性ウレタン樹脂エマルジョンを調製した。
攪拌下、低融点ワックスディスパージョン12.4gに高融点ワックスディスパージョン37.2gを混合し、次に2.1gのシランカップリング剤を2.1gのエタノールで希釈したシランカップリング剤エタノール溶液4.2gを滴下混合して、シリケート変性ワックスディスパージョンを調製した。
攪拌下、シリケート変性ウレタン樹脂エマルジョン946.2gにシリケート変性ワックスディスパージョン53.8gを滴下混合して、潤滑処理薬液1000gを調製した。
・潤滑皮膜処理薬液B
攪拌下、イオン交換水338.7gに低Tgウレタン樹脂エマルジョン200.0gを滴下混合、次いで高Tgウレタン樹脂エマルジョン306.7gを添加、更にシリケート水溶液70.0gを滴下混合、最後に17.3gのシランカップリング剤を17.3gのエタノールで希釈したシランカップリング剤エタノール溶液34.6gを滴下混合して、シリケート変性ウレタン樹脂エマルジョンを調製した。
攪拌下、低融点ワックスディスパージョン12.4gに高融点ワックスディスパージョン37.2gを混合して、混合ワックスディスパージョンを調製した。
攪拌下、シリケート変性ウレタン樹脂エマルジョン950gに混合ワックスディスパージョン50gを滴下混合して、潤滑処理薬液1000gを調製した。
・潤滑皮膜処理薬液C
攪拌下、イオン交換水340.2gに低Tgウレタン樹脂エマルジョン198.3gを滴下混合、次いで高Tgウレタン樹脂エマルジョン304.1gを添加、更にシリカディスパージョン69.4gを滴下混合、最後に17.2gのシランカップリング剤を17.2gのエタノールで希釈したシランカップリング剤エタノール溶液34.3gを滴下混合して、シリケート変性ウレタン樹脂エマルジョンを調製した。
攪拌下、低融点ワックスディスパージョン12.4gに高融点ワックスディスパージョン37.2gを混合し、次に2.1gのシランカップリング剤を2.1gのエタノールで希釈したシランカップリング剤エタノール溶液4.2gを滴下混合して、シリケート変性ワックスディスパージョンを調製した。
攪拌下、シリケート変性ウレタン樹脂エマルジョン946.2gにシリケート変性ワックスディスパージョン53.8gを滴下混合して、潤滑処理薬液1000gを調製した。
・潤滑皮膜処理薬液D
攪拌下、イオン交換水327.8gに低Tgウレタン樹脂エマルジョン213.1gを滴下混合、次いで高Tgウレタン樹脂エマルジョン326.7gを添加、更にシリケート水溶液74.6を滴下混合して、シリケート添加ウレタン樹脂エマルジョンを調製した。
攪拌下、低融点ワックスディスパージョン13.3gに高融点ワックスディスパージョン40.0gを混合し、次に2.3gのシランカップリング剤を2.3gのエタノールで希釈したシランカップリング剤エタノール溶液4.6gを滴下混合して、シリケート変性ワックスディスパージョンを調製した。
攪拌下、シリケート添加ウレタン樹脂エマルジョン942.2gにシリケート変性ワックスディスパージョン57.8gを滴下混合して、潤滑処理薬液1000gを調製した。
(2).供試材作製
(2−1).表面処理基材
量産ラインで表5に示すめっき品種無処理材を採取、アルカリ脱脂による表面洗浄を行い、表面処理用のめっき鋼板基材とした。
(2−2).皮膜処理プロセス
基材に皮膜処理薬剤を塗布し、加熱乾燥することで皮膜処理鋼板サンプルを調製した。
塗布プロセスはバットに張った表面処理薬剤に基材をくぐらせ、次にスピンコーターで余分な薬剤を振り切るスピンコーティングを行った。皮膜量を皮膜形成前後の重量差から求め、狙いの皮膜量になるように薬剤の水希釈倍率とスピンコーター回転速度とを調整した。
加熱乾燥プロセスは熱風炉を用いた。炉温350℃、在炉5秒間で材温110±10℃に到達するように風量を調節した。熱風炉からの取出後はサンプル立てに鋼板を立て掛けた状態で放冷した。
(2−3).皮膜厚測定
鏡面アルミ板に防食層、潤滑層、夫々単層のスピンコーティングを行い、コーティング前後の秤量値の差を処理面積で除すことで皮膜量(mg・m−2)を求めた。次に、FIBにて試料断面薄片サンプルを作成し、電子顕微鏡で皮膜厚(μm)を測定した。皮膜比重値を(皮膜量mg・m−2)/(皮膜厚μm)により算出し、以後は皮膜量を直接測定し、皮膜比重値で除すことで皮膜厚値を算出した。
(2−4).供試材水準
表6に全実施例供試材の構成と本発明の特許要件とをまとめた。
(3).評価方法
(3−1).処理皮膜の耐水性評価方法
イオン交換水を染み込ませたガーゼでサンプル表面をラビングし、皮膜層の残存を目視確認した。2、4、8、16、32、64、128回のラビング回数の各タイミングでサンプルを一旦乾燥させ、残存皮膜の状態を確認した。
○(良好):128回のラビングで皮膜層が保たれている
×(効果不足):128回のラビングで艶退け等の皮膜層の変化が認められる
××(実用不可):128回のラビング以前に皮膜が払拭される
(3−2).防食性評価方法
150mm×70mmの鋼板サンプルの端面をポリエステルテープでマスクしたものをテストピースとした。
テストピースを塩水噴霧試験(SST)に曝し腐食促進した。
24時間毎に錆発生の占める面積比率を目視測定、錆面積率−時間に対して累乗式でフィッティングを行い、5%錆発生時間を内挿で求めた(図2)。5%錆発生までのSST暴露時間が240hr以上となるものを良好品とした。
○(良好) :錆発生時間≧240/hr
×(目標未達):錆発生時間<240/hr
(3−3).潤滑皮膜の加工追従性評価方法
サンプル鋼板を表7の条件で角筒成形し、図3に示す伸び、圧縮共に歪が大きいコーナーフランジ部パンチ面にポリエステルテープを貼付・剥離させて脱落する皮膜の存在を確認した。脱落皮膜の存在確認は図4に示すように脱落皮膜を捕捉したポリエステルテープを透明ポリエステルシートに貼付、色差測定用黒色基準板上で透明ポリエステルシートを通して明度の高い脱落皮膜を目視で確認した。
○(良好) :脱落皮膜が認められない
△(実用可能):脱落皮膜が認められるが軽微である
×(実用不可):脱落皮膜が認められる
(3−4).成形による表面光沢安定性の評価方法
プレス成形品表面光沢の安定性を、円筒成形品においてショックラインを起点とする光沢変化幅で評価した。評価条件の詳細を表8に、光沢変化の実例を図5に示した。
○(良好) :光沢変化幅≦2mm
×(外観不良):光沢変化幅>2mm
(3−5).潤滑皮膜の無塗油耐焼付き性評価方法
図6に概念図を、表9に詳細条件を示すピンオンディスク摩擦試験法で潤滑皮膜の無塗油耐焼付き性を評価した。スライダーが供試材よりも硬質であり、且つ接触面が球面であるため、接触面圧は供試材塑性流動応力と釣り合っている。このことから同一摺動軌道での周回を繰り返す程に摺動の軌跡の轍は深まり、スライダーと轍とに介在する潤滑皮膜はスクィーズアウトされていき、図7に示すように、やがて焼付きが発生して、動摩擦係数が急上昇する。無潤滑下でのロールフォーミングや深絞り加工で要求される高度な耐焼付き性を、ピンオンディスク法における焼付き発生までの摺動繰返し数で評価した。
○(良好) :焼付き発生までの摺動繰返し数≧200回
×(耐焼付き性不足):焼付き発生までの摺動繰返し数<200回
(3−6).潤滑皮膜の取扱い性評価方法
表10に示す方法で静摩擦係数(μfs)を評価した。従来の潤滑処理鋼板(μfs <0.1)では、特にスリッターラインで加工される狭巾フープコイルの潰れが深刻であった。本発明者等の実験でμfs ≧0.125とすればフープコイルの潰れを皆無にできることが判明したため。μfs ≧0.125を基準として評価した。
○(安全に取扱い可能):0.125≦μfs
×(要注意):0.1≦μfs <0.125
××(危険):0.1>μfs
(4).評価結果
試験結果の一覧を表11に示す。
試験例No2は防食層にシリケート成分を添加しない例、No3は樹脂粒表面のシリケート変成を行わない例であり、試験例No1の実施例との対比から、シリケート添加と樹脂粒表面のシリケート変成が防食性発現の支配要因であることが判る。
試験例No4はワックス粒表面のシリケート変成を行わない例であり、ワックス粒が潤滑層表層濃化を抑制できないことから、滑りによる取扱い性が悪いことが判る。一方、ワックス粒表面のシリケート変成を行った試験例No1、2、3及びNo5、6はワックス粒が潤滑層中に分散することで、取扱い性が良好であることが判る。
試験例No7、及び11は防食層皮膜厚が下限値を下回ったことで防食性が良くなかった例である。試験例No17及び21について同様であり、前者と後者との違いはめっき基材がGIとGAとの違いである。これらのことから、めっき種の違いに依らず防食層皮膜厚の下限値が同等であると捉えることができる。
試験例10及び14はGI基材において、同No20及び24はGA基材において、防食層皮膜厚が上限値を超えた例であり、これらの場合においては、皮膜層が基材の加工歪に追従できずに脱離する加工性の悪化が認められた。防食層皮膜厚が上限値以下の試験例No7、8、9、11、12、13及び同No17、18、19、21、22、23では加工性良好であることが確認できる。
試験例No15はGI基材において、同No20及び25はGA基材において、潤滑層皮膜厚が下限値を下回ることで、成形品摺動部の光沢変化による外観不良となった例である。潤滑層皮膜厚が下限値以上である試験例No1〜14、16及びNo17〜24、26では成形しても光沢が安定していることを確認できる。
試験例No16はGI基材において、同No26及び25はGA基材において、潤滑層皮膜厚が上限値を超えることで、基材の加工歪みに追従できず脱離する加工性の悪化が認められた。この現象は基材Raを超える部分の潤滑層厚みが5μmを超えたあたりから発生することが判る。
試験例No27〜31では、他の様々なめっき材についても本発明の要件を満たせば良好な鋼板商品が得られることを確認できる。
上述の技術により、鋼板メーカーの製造現場、及び鋼板ユーザー等の最終顧客において、防食剤としての6価クロム化合物、及びプレス成形後脱脂剤としてのフロン系溶剤の環境負荷物質を拡散させないことの意義は大きい。
また、成形品としての最終製品の外観が良好であることを活用して鋼板ユーザーにおいては塗装を省略できる大きな生産性メリットを産む。

Claims (2)

  1. 基材上に基材側から防食層、潤滑層の順にクロムフリーの皮膜層が形成された潤滑処理亜鉛めっき鋼板であって、
    防食層厚み(μm)が、
    0.05≦(防食層厚み)≦0.05+34/(めっき層のRSm)
    を満たし、かつ潤滑層厚みが
    (めっき層のRa)≦(潤滑層厚み)≦5+(めっき層のRa)
    を満足し、
    防食層および潤滑層にともにシリケートおよび樹脂を含有し、
    防食層および潤滑層に含有する樹脂がシリケート変性しており、
    潤滑層には潤滑剤粒子が分散していることを特徴とする潤滑処理亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記潤滑剤粒子が表面をシリケート変性したワックス粒子であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑処理亜鉛めっき鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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