JP2020100755A - 微細繊維状セルロース分散体の製造方法 - Google Patents

微細繊維状セルロース分散体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020100755A
JP2020100755A JP2018240792A JP2018240792A JP2020100755A JP 2020100755 A JP2020100755 A JP 2020100755A JP 2018240792 A JP2018240792 A JP 2018240792A JP 2018240792 A JP2018240792 A JP 2018240792A JP 2020100755 A JP2020100755 A JP 2020100755A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dispersion
cellulose
fine fibrous
fibrous cellulose
speed
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018240792A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7157656B2 (ja
Inventor
啓吾 渡部
Keigo Watabe
啓吾 渡部
武史 中山
Takeshi Nakayama
武史 中山
喜威 山田
Yoshitake Yamada
喜威 山田
淳之 重見
Atsuyuki Shigemi
淳之 重見
正成 高橋
Masashige Takahashi
正成 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Paper Industries Co Ltd
Jujo Paper Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paper Industries Co Ltd
Jujo Paper Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Paper Industries Co Ltd, Jujo Paper Co Ltd filed Critical Nippon Paper Industries Co Ltd
Priority to JP2018240792A priority Critical patent/JP7157656B2/ja
Publication of JP2020100755A publication Critical patent/JP2020100755A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7157656B2 publication Critical patent/JP7157656B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Artificial Filaments (AREA)
  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Mixers Of The Rotary Stirring Type (AREA)

Abstract

【課題】高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体に対して、繊維長の短縮を引き起こさないように分散媒体との分散を行い、均一に分散された微細繊維状セルロース分散体を製造する。【解決手段】固形分濃度1wt%以上の微細繊維状セルロース分散体を、分散媒体とともに、自転しながら公転する高速ディスパ羽根とタンク壁を掻き取る低速羽根とを有するミキサーを用いて分散する分散工程を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、分散媒体に分散された微細繊維状セルロース分散体の製造方法に関する。
植物繊維を細かく解すことで得られる微細繊維状セルロースは、ミクロフィブリルセルロース(以下「MFC」という場合がある)及びセルロースナノファイバー(以下「CNF」という場合がある)を包含する。微細繊維状セルロースは、約1nm〜数10μm程度の繊維径の微細繊維であり、強度や剛性を高める機能を有するため、補強用途で用いられている。
微細繊維状セルロースは、通常、水に分散している状態で得られ、固形分濃度が非常に低い。そのため、微細繊維状セルロースの水分散体をそのまま輸送する際には、大量の水を運ぶこととなり輸送に掛かる費用が高いという問題がある。そのため、乾燥品とする技術が開発されているが、微細繊維状セルロースは、一旦乾燥させると、高回転数かつ長時間の撹拌により分散処理を行わない限りは、微細繊維状セルロースとして再分散させることが難しかった(特許文献1等)。また、乾燥品とするために熱を加えると、変色してしまうという問題もあった。そのため、乾燥品とせず、高固形分濃度化して輸送することが行われている。
しかし、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体は、粘度が高く固いゲル状であるため、そのままゴムラテックスなどの補強したい材料に対して、従来のアジテータ方式の撹拌装置を用いて添加・混合した場合には、当該材料に対して微細繊維状セルロースが均一に分散されず、混合して得られた組成物は、強度等の向上が十分ではなかった。また、高剪断力を付与することが可能なホモジナイザーを用いて、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体とゴムラテックスとを混合した場合には、ゴムラテックスがホモジナイザーの剪断力により凝集する場合があった。
さらに、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体を、補強したい材料に対して均一に分散させる目的で、分散体の粘度を下げて柔らかいゲル状とするために従来のアジテータ方式の撹拌装置を用いて希釈すると、均一に希釈ができずゲル粒が残ってしまう。したがって、この方法で希釈された微細繊維状セルロース分散体を、補強したい材料に対して添加・混合した場合には、当該材料に対して微細繊維状セルロースを均一に分散させることが困難であった。また、高剪断力を付与することが可能なホモジナイザーを用いて高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体を希釈する場合には、剪断力により微細繊維状セルロースの繊維長が短くなる問題があった。そのため、この方法で希釈された微細繊維状セルロース分散体は、強度や剛性を高める機能が損なわれ、補強効果に劣るものであった。また、ディスパ型の高速撹拌機やホモジナイザーを用いて、チキソ性の強い微細繊維状セルロース分散体を希釈する場合には、撹拌羽根の周辺のみにしか撹拌力が伝達されず、撹拌羽根から遠いエリアが流動しないため、均一な分散体を得ることが困難であった。
よって、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体に対して、繊維長の短縮を引き起こさないように分散媒体との分散を行い、均一に分散された微細繊維状セルロース分散体を製造する方法が求められていた。また、分散媒体がゴムラテックスである場合には、ゴムラテックスを凝集させることなく、ゴムラテックスと微細繊維状セルロース分散体が均一に分散された微細繊維状セルロース分散体を製造する方法が求められていた。
特開2015−134873号公報
そこで、本発明は、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体に対して、繊維長の短縮を引き起こさないように分散媒体との分散を行い、均一に分散された微細繊維状セルロース分散体を製造する方法を提供することを目的とする。さらには、分散媒体がゴムラテックスである場合には、ゴムラテックスを凝集させることなく、ゴムラテックスと微細繊維状セルロース分散体が均一に分散された微細繊維状セルロース分散体を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる目的を達成するため鋭意検討した結果、特定のミキサーを用いて分散することが極めて有効であることを見出し、本発明を完成した。
本発明は以下を提供する。
(1) 固形分濃度1wt%以上の微細繊維状セルロース分散体を、分散媒体とともに、自転しながら公転する高速ディスパ羽根とタンク壁を掻き取る低速羽根とを有するミキサーを用いて分散する分散工程を含む、前記分散媒体に分散された微細繊維状セルロース分散体の製造方法。
(2) 前記高速ディスパ羽根の回転数が500〜2000rpmであり、前記低速羽根の回転数が5〜10rpmである(1)に記載の微細繊維状セルロース分散体の製造方法。
(3) 前記分散媒体が水または/およびゴムラテックスである(1)または(2)に記載の微細繊維状セルロース分散体の製造方法。
本発明によれば、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体に対して、繊維長の短縮を引き起こさないように分散媒体との分散を行い、均一に分散された微細繊維状セルロース分散体を製造する方法を提供することができる。また、分散媒体がゴムラテックスである場合には、ゴムラテックスを凝集させることなく、ゴムラテックスと微細繊維状セルロース分散体が均一に分散された微細繊維状セルロース分散体を製造する方法を提供することができる。
本発明の製造方法に用いられるミキサーの概略を示す断面図である。
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。本発明において「〜」は端値を含む。すなわち「X〜Y」はその両端の値XおよびYを含む。
本発明は、分散媒体に分散された微細繊維状セルロース分散体の製造方法であって、固形分濃度1wt%以上の微細繊維状セルロース分散体を、分散媒体とともに、自転しながら公転する高速ディスパ羽根とタンク壁を掻き取る低速羽根とを有するミキサーを用いて分散する分散工程を含むものである。
(分散工程)
本発明の分散工程においては、固形分濃度1wt%以上の微細繊維状セルロース分散体を、分散媒体とともに、自転しながら公転する高速ディスパ羽根とタンク壁を掻き取る低速羽根とを有するミキサーを用いて分散する。
(微細繊維状セルロース)
本発明で用いる、微細繊維状セルロースは、セルロースを原料とする微細繊維である。微細繊維状セルロースの平均繊維径は、特に限定されないが、1nm〜10μm程度である。微細繊維状セルロースの平均繊維径および平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維径および繊維長を平均することによって得ることができる。微細繊維状セルロースは、セルロースを解繊することによって製造することができる。
本発明に用いる微細繊維状セルロースの平均アスペクト比は、通常50以上である。上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。平均アスペクト比は、下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
セルロース原料は、セルロースを含んでいればよく、特に限定されないが、例えば、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、晒クラフトパルプ(BKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等が挙げられる。セルロース原料としては、これらのいずれかであってもよいし2種類以上の組み合わせであってもよいが、好ましくは植物又は微生物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)であり、より好ましくは植物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)である。
セルロース原料の数平均繊維径は特に制限されないが、一般的なパルプである針葉樹クラフトパルプの場合は30〜60μm程度、広葉樹クラフトパルプの場合は10〜30μm程度である。その他のパルプの場合、一般的な精製を経たものは50μm程度である。例えばチップ等の数cm大のものを精製したものである場合、リファイナー、ビーター等の離解機で機械的処理を行い、50μm程度に調整することが好ましい。
セルロースは、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性を行うことが可能である。本発明においては、解繊の進行を促進するという観点から、化学変性して得られたセルロース原料(化学変性セルロース)を解繊して製造された化学変性微細繊維状セルロースを用いることが好ましい。
化学変性としては、例えば、酸化(カルボキシル化)、カルボキシメチル化、カチオン化、エステル化等が挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)、カルボキシメチル化がより好ましい。
(化学変性)
(酸化)
本発明において、酸化(カルボキシル化)したセルロースを解繊して得られた酸化微細繊維状セルロースを用いる場合、酸化セルロース(カルボキシル化セルロースとも呼ぶ)は、上記のセルロース原料を公知の方法で酸化(カルボキシル化)することにより得ることができる。特に限定されるものではないが、酸化の際には、化学変性微細繊維状セルロースの絶乾重量に対して、カルボキシル基の量が0.6〜2.0mmol/gとなるように調整することが好ましく、1.0mmol/g〜2.0mmol/gになるように調整することがさらに好ましい。
酸化(カルボキシル化)方法の一例として、セルロース原料を、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物もしくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物との存在下で酸化剤を用いて水中で酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、表面にアルデヒド基と、カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート基(−COO)とを有するセルロース繊維を得ることができる。反応時のセルロースの濃度は特に限定されないが、5重量%以下が好ましい。
N−オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル(TEMPO)およびその誘導体(例えば4−ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
N−オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であればよく、特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01〜10mmolが好ましく、0.01〜1mmolがより好ましく、0.05〜0.5mmolがさらに好ましい。また、反応系に対し0.1〜4mmol/L程度が好ましい。
臭化物とは臭素を含む化合物であり、その例には、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が含まれる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、その例には、ヨウ化アルカリ金属が含まれる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。臭化物およびヨウ化物の合計量は、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.1〜100mmolが好ましく、0.1〜10mmolがより好ましく、0.5〜5mmolがさらに好ましい。
酸化剤としては、公知のものを使用でき、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などを使用できる。中でも、安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。酸化剤の使用量としては、例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.5〜500mmolが好ましく、0.5〜50mmolがより好ましく、1〜25mmolがさらに好ましく、3〜10mmolが最も好ましい。また、例えば、N−オキシル化合物1molに対して1〜40molが好ましい。
セルロースの酸化は、比較的温和な条件であっても反応を効率よく進行させられる。よって、反応温度は4〜40℃が好ましく、また15〜30℃程度の室温であってもよい。反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHの低下が認められる。酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを8〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが好ましい。反応媒体は、取扱容易性や、副反応が生じにくいこと等から、水が好ましい。
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5〜6時間、例えば、0.5〜4時間程度である。
また、酸化反応は、2段階に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一または異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
酸化(カルボキシル化)方法の別の例として、オゾンを含む気体とセルロース原料とを接触させることにより酸化する方法を挙げることができる。この酸化反応により、グルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。オゾンを含む気体中のオゾン濃度は、50〜250g/mであることが好ましく、50〜220g/mであることがより好ましい。セルロース原料に対するオゾン添加量は、セルロース原料の固形分を100重量部とした際に、0.1〜30重量部であることが好ましく、5〜30重量部であることがより好ましい。オゾン処理温度は、0〜50℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。オゾン処理時間は、特に限定されないが、1〜360分程度であり、30〜360分程度が好ましい。オゾン処理の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度に酸化および分解されることを防ぐことができ、酸化セルロースの収率が良好となる。オゾン処理を施した後に、酸化剤を用いて、追酸化処理を行ってもよい。追酸化処理に用いる酸化剤は、特に限定されないが、二酸化塩素、亜塩素酸ナトリウム等の塩素系化合物や、酸素、過酸化水素、過硫酸、過酢酸などが挙げられる。例えば、これらの酸化剤を水またはアルコール等の極性有機溶媒中に溶解して酸化剤溶液を作成し、溶液中にセルロース原料を浸漬させることにより追酸化処理を行うことができる。
酸化セルロースのカルボキシル基の量は、上記した酸化剤の添加量、反応時間等の反応条件をコントロールすることで調整することができる。
(カルボキシメチル化)
本発明において、カルボキシメチル化したセルロースを解繊して得られたカルボキシメチル化微細繊維状セルロース用いる場合、カルボキシメチル化したセルロースは、上記のセルロース原料を公知の方法でカルボキシメチル化することにより得てもよいし、市販品を用いてもよい。いずれの場合も、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01〜0.50となるものが好ましい。そのようなカルボキシメチル化したセルロースを製造する方法の一例として次のような方法を挙げることができる。セルロースを発底原料にし、溶媒として3〜20重量倍の水及び/又は低級アルコール、具体的には水、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールを混合する場合の低級アルコールの混合割合は、60〜95重量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5〜20倍molの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0〜70℃、好ましくは10〜60℃、かつ反応時間15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05〜10.0倍mol添加し、反応温度30〜90℃、好ましくは40〜80℃、かつ反応時間30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化反応を行う。
なお、本明細書において、微細繊維状セルロースの調製に用いる化学変性セルロースの一種である「カルボキシメチル化したセルロース」は、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものをいう。したがって、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースとは区別される。「カルボキシメチル化したセルロース」の水分散液を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができる。一方、水溶性高分子の一種であるカルボキシメチルセルロースの水分散液を観察しても、繊維状の物質は観察されない。また、「カルボキシメチル化したセルロース」はX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるが、水溶性高分子のカルボキシメチルセルロースではセルロースI型結晶はみられない。
(カチオン化)
本発明において、前記カルボキシル化セルロースをさらにカチオン化したセルロースを解繊して得られたカチオン化微細繊維状セルロースを使用することができる。当該カチオン変性されたセルロースは、前記カルボキシル化セルロース原料に、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハライドまたはそのハロヒドリン型などのカチオン化剤と、触媒である水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を、水または炭素数1〜4のアルコールの存在下で反応させることによって得ることができる。
グルコース単位当たりのカチオン置換度は0.02〜0.50であることが好ましい。セルロースにカチオン置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、カチオン置換基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.02より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのカチオン置換度が0.50より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、ナノファイバーとして得られなくなる場合がある。解繊を効率よく行なうために、上記で得たカチオン変性されたセルロース原料は洗浄されることが好ましい。当該カチオン置換度は、反応させるカチオン化剤の添加量、水または炭素数1〜4のアルコールの組成比率によって調整できる。
(エステル化)
本発明において、エステル化したセルロースを解繊して得られたエステル化微細繊維状セルロースを使用することができる。当該エステル化セルロースは、前述のセルロース原料にリン酸系化合物Aの粉末や水溶液を混合する方法、セルロース原料のスラリーにリン酸系化合物Aの水溶液を添加する方法により得られる。
リン酸系化合物Aとしては、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらのエステルが挙げられる。これらは塩の形態であってもよい。これらの中でも、低コストであり、扱いやすく、またパルプ繊維のセルロースにリン酸基を導入して、解繊効率の向上が図れるなどの理由からリン酸基を有する化合物が好ましい。リン酸基を有する化合物としては、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、メタリン酸アンモニウム等が挙げられる。これらは1種、あるいは2種以上を併用できる。これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、下記解繊工程で解繊しやすく、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩がより好ましい。特にリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムが好ましい。また、反応の均一性が高まり、かつリン酸基導入の効率が高くなることから前記リン酸系化合物Aは水溶液として用いることが好ましい。リン酸系化合物Aの水溶液のpHは、リン酸基導入の効率が高くなることから7以下であることが好ましいが、パルプ繊維の加水分解を抑える観点からpH3〜7が好ましい。
リン酸エステル化セルロースの製造方法の一例として以下の方法を挙げることができる。固形分濃度0.1〜10重量%のセルロース原料の分散液に、リン酸系化合物Aを撹拌しながら添加してセルロースにリン酸基を導入する。セルロース原料を100重量部とした際に、リン酸系化合物Aの添加量はリン元素量として、0.2〜500重量部であることが好ましく、1〜400重量部であることがより好ましい。リン酸系化合物Aの割合が前記下限値以上であれば、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。しかし、前記上限値を超えると収率向上の効果は頭打ちとなるのでコスト面から好ましくない。
この際、セルロース原料、リン酸系化合物Aの他に、これ以外の化合物Bの粉末や水溶液を混合してもよい。化合物Bは特に限定されないが、塩基性を示す窒素含有化合物が好ましい。ここでの「塩基性」は、フェノールフタレイン指示薬の存在下で水溶液が桃〜赤色を呈すること、または水溶液のpHが7より大きいことと定義される。本発明で用いる塩基性を示す窒素含有化合物は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、アミノ基を有する化合物が好ましい。例えば、尿素、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられるが、特に限定されない。この中でも低コストで扱いやすい尿素が好ましい。化合物Bの添加量はセルロース原料の固形分100重量部に対して、2〜1000重量部が好ましく、100〜700重量部がより好ましい。反応温度は0〜95℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。反応時間は特に限定されないが、1〜600分程度であり、30〜480分がより好ましい。エステル化反応の条件がこれらの範囲内であると、セルロースが過度にエステル化されて溶解しやすくなることを防ぐことができ、リン酸エステル化セルロースの収率が良好となる。得られたリン酸エステル化セルロース懸濁液を脱水した後、セルロースの加水分解を抑える観点から、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。さらに、加熱処理の際に水が含まれている間は130℃以下、好ましくは110℃以下で加熱し、水を除いた後、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。
リン酸エステル化されたセルロースのグルコース単位当たりのリン酸基置換度は0.001〜0.40であることが好ましい。セルロースにリン酸基置換基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発する。このため、リン酸基を導入したセルロースは容易にナノ解繊することができる。なお、グルコース単位当たりのリン酸基置換度が0.001より小さいと、十分にナノ解繊することができない。一方、グルコース単位当たりのリン酸基置換度が0.40より大きいと、膨潤あるいは溶解するため、微細繊維状セルロースとして得られなくなる場合がある。解繊を効率よく行なうために、上記で得たリン酸エステル化されたセルロース原料は煮沸した後、冷水で洗浄することで洗浄されることが好ましい。
(解繊)
本発明において、化学変性セルロースを解繊する装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いて上記の化学変性セルロースの水分散体に強力なせん断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記水分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力なせん断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。解繊装置での処理(パス)回数は、1回でもよいし2回以上でもよく、2回以上が好ましい。
分散処理においては通常、溶媒に化学変性セルロースを分散する。溶媒は、化学変性セルロースを分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等の親水性の有機溶媒)、それらの混合溶媒が挙げられる。セルロース原料が親水性であることから、溶媒は水であることが好ましい。
分散体中の化学変性セルロースの固形分濃度は、通常は0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。これにより、セルロース繊維原料の量に対する液量が適量となり効率的である。上限は、通常10重量%以下、好ましくは6重量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
解繊処理又は分散処理に先立ち、必要に応じて上記の化学変性セルロースに予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
解繊工程を経て得られた化学変性微細繊維状セルロースが塩型の場合は、そのまま用いても良いし、鉱酸を用いた酸処理や、陽イオン交換樹脂を用いた方法等により酸型として用いても良い。また、カチオン性添加剤を用いた方法により疎水性を付与して用いても良い。
(微細繊維状セルロース分散体)
本発明において、分散工程に供する、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体は、上記のようにして製造された微細繊維状セルロースの分散体を脱水・乾燥し、溶媒量を減少させることにより得てもよい。高固形分濃度の微細繊維状セルロースの分散体としては、市販品を用いてもよい。
本発明において、分散工程に供する高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体は、MFC/CNF固形分濃度が1wt%以上であり、2wt%〜20wt%が好ましく、3〜15wt%がさらに好ましい。
高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体を製造するための脱水・乾燥の方法は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、噴霧乾燥、圧搾、風乾、熱風乾燥、凍結乾燥、真空乾燥などが挙げられる。乾燥装置も特に制限されず、連続式のトンネル乾燥装置、バンド乾燥装置、縦型乾燥装置、垂直ターボ乾燥装置、多重段円板乾燥装置、通気乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、噴霧乾燥装置、円筒乾燥装置、ドラム乾燥装置、ベルト乾燥装置、スクリューコンベア乾燥装置、加熱管付回転乾燥装置、振動輸送乾燥装置、回分式の箱型乾燥装置、真空箱型乾燥装置、及び撹拌乾燥装置等を単独で又は2つ以上組み合わせて用いることができる。
(分散媒体)
本発明において、分散媒体としては、水、水溶性有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒、もしくは、ゴムラテックスが挙げられる。分散媒体が、水、水溶性有機溶媒、あるいはこれらの混合溶媒である場合は、セルロース原料が親水性であるため、分散時に良好な分散状態を取りやすいという観点から水を用いることが好ましい。また、分散媒体としては、分散前の高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体の溶媒と同じものを用いてもよいし、異なるものを用いても良い。
水溶性有機溶媒とは、水に溶解する有機溶媒である。その例として、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、およびこれらの組合せが挙げられる。中でもメタノール、エタノール、2−プロパノール等の炭素数が1〜4の低級アルコールが好ましく、安全性および入手容易性の観点から、メタノール、エタノールがより好ましく、エタノールがさらに好ましい。
混合溶媒とする場合には、混合溶媒中の水溶性有機溶媒の量は、10重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。当該量の上限は限定されないが95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。また、発明の効果を損なわない程度で、当該水系溶媒は非水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
ゴムラテックスとは、ゴム成分を分散媒に分散させたラテックス(分散液)である。
ゴム成分とは、ゴムの原料であり、架橋してゴムとなるものをいう。ゴム成分としては、天然ゴム用のゴム成分と合成ゴム用のゴム成分が存在する。天然ゴム用のゴム成分としては、例えば、化学修飾を施さない狭義の天然ゴム(NR);塩素化天然ゴム、クロロスルホン化天然ゴム、エポキシ化天然ゴム等の化学修飾した天然ゴム;水素化天然ゴム;脱タンパク天然ゴムが挙げられる。合成ゴム用のゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらの中で、NBR、NR、SBR、クロロプレンゴム、BRが好ましい。ゴム成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
ゴムラテックスの分散媒としては、水、有機溶媒が挙げられ、これらを混合したものであっても良い。ラテックス中におけるゴム成分の含有割合は、好ましくは10〜80%、より好ましくは20〜70%である。
なお、分散前の高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体に対する分散媒体の添加量は、分散媒体に分散された微細繊維状セルロース分散体のMFC/CNF固形分濃度が0.01〜5wt%となる量であることが好ましく、0.1〜3wt%となる量であることがより好ましい。
(ミキサー)
本発明の分散工程においては、自転しながら公転する高速ディスパ羽根と、タンク内の側面や底面などのタンク壁を掻き取る低速羽根とを有するミキサーを用いる。
本発明に用いることができるミキサーの一例を、図1を用いて説明する。図1は、ミキサーの概略を示す断面図である。なお、本発明に用いることができるミキサーは、図1に示すものに限られるものではない。
図1に示すミキサー2は、内容物を収容するタンク4と、タンク4の内容物に対して高速回転することにより剪断力を付与する高速ディスパ羽根6と、高速ディスパ羽根6に動力を伝達する高速撹拌軸8と、低速でタンク壁10を掻き取る低速羽根12と、低速羽根12に動力を伝達する低速撹拌軸14を備えている。ここで、高速撹拌軸8は、低速撹拌軸14と第1アーム16で接続されており、低速羽根12は、低速撹拌軸14と第2アーム18で接続されている。なお、低速撹拌軸14及び高速撹拌軸8は、高速ディスパ羽根6を高速で自転させると供に低速で公転させ、低速羽根12を低速で回転させる駆動部20に接続されている。
ミキサー2を用いて分散を行う場合は、タンク4に高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体および分散媒体を投入し、タンク4に備えられた高速ディスパ羽根6及び低速ディスパ羽根12の動作を開始する。高速ディスパ羽根6は、高速で自転することによりタンク4内の内容物を激しく撹拌する。高速ディスパ羽根6は高速で自転するとともに低速で公転するため、高速ディスパ羽根6の撹拌力がタンク4内の広いエリアに伝達される。また、低速羽根12が低速でタンク4内の側面や底面などのタンク壁10を掻き取り、タンク壁10付近の内容物を流動させる。
高速ディスパ羽根6の自転の回転数は、均一分散の観点から、好ましくは500〜2000rpmであり、より好ましくは700〜1800rpmである。また、低速羽根12の回転数は、効率的な分散の観点から、好ましくは5〜10rpmであり、より好ましくは6〜8rpmである。なお、図1に示したミキサーにおいては、高速ディスパ羽根6の公転の回転数は、低速羽根12の回転数と一致するが、高速ディスパ羽根6と低速羽根12が接触しない限りにおいては、これらの回転数を異ならせるようにしたミキサーを用いてもよい。
本発明の製造方法によれば、チキソ性の強い内容物を撹拌した場合であっても、高速ディスパ羽根6が高速で自転しながら公転するため、タンク4内の広いエリアに撹拌力が伝達される。さらに、低速羽根12がタンク壁10を掻き取るため、低速羽根12がなければ高速ディスパ羽根6からの撹拌力が届きづらいエリアについても流動する。その結果、均一に分散を行うことができる。
本発明の製造方法によれば、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体に対して、繊維長の短縮を引き起こさないように分散媒体との分散を行い、均一に分散された微細繊維状セルロース分散体を製造することができる。さらに、このようにして得られた分散媒体に均一に分散された微細繊維状セルロース分散体は、低粘度で柔らかいため、ゴムラテックスなどの補強したい材料に対して、容易に均一分散することができる。
また、本発明の製造方法によれば、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体の固いゲルを分散するために高剪断力をかける必要がない。そのため、分散媒体としてゴムラテックスを用いた場合であっても、ゴムラテックスを凝集させることなく、高固形分濃度の微細繊維状セルロース分散体を直接ゴムラテックスに対して混合し、均一分散することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例における各数値の測定/算出方法が特に記載されていない場合には、明細書中に記載されている方法により測定/算出されたものである。
(平均繊維長の測定方法)
マイカ切片上に固定したセルロースナノファイバーの原子間力顕微鏡像(3000nm×3000nm)から、繊維長を測定し、数平均繊維長を算出した。繊維長測定は、画像解析ソフトWinROOF(三谷商事)を用い、長さ100nm〜2000nmの範囲で行った。
(分散度の測定方法)
実施例および比較例において得られた酸化CNFの分散体について、下記の通りCNF分散指数を算出し、下記基準に従って分散度の評価を行った。
実施例および比較例において得られた酸化CNF分散体1gに、墨滴(株式会社呉竹製、固形分10%)を2適垂らし、ボルテックスミキサー(IUCHI社製、機器名:Automatic Lab−mixer HM-10H)の回転数の目盛りを最大に設定して10秒間撹拌した。次に、墨滴を含有する上記混合物の膜厚が0.15mmになるように二枚のガラス板に挟み、光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープKH−8700(株式会社ハイロックス製))を用いて倍率100倍で観察した。
上記観察において、3mm×2.3mmの範囲に存在する凝集物の長径を測定し、観察された凝集物を、特大:150μm以上、大:100μm以上150μm未満、中:50μm以上100μm未満、小:20μm以上50μm未満に分類し、分類した凝集物の個数を数え、下式によりCNF分散指数を算出した。
CNF分散指数=(特大の個数×512+大の個数×64+中の個数×8+小の個数×1)÷2×CNF濃度係数
なお、CNF濃度係数を、表1に示した。
Figure 2020100755
(分散度の評価基準)
◎:CNF分散指数が1600未満
○:CNF分散指数が1600以上、3200未満
△:CNF分散指数が3200以上、6400未満
×:CNF分散指数が6400以上
(ラテックス凝集汚れの評価方法)
実施例2および比較例5については、実施例2および比較例5の条件で10回繰り返し分散した後に、分散装置内部を目視で確認し、ラテックスの凝集物による汚れ具合を調査した。
(製造例1)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5.00g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mg(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム514mg(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水で洗浄することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。これを水でCNF固形分濃度4.0wt%に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で3回処理して、酸化セルロースナノファイバー水分散体を得た。得られた酸化セルロースナノファイバーは、平均繊維径が3nm、平均繊維長が650nmであった。
(カルボキシル基量の測定方法)
カルボキシル化セルロースの0.5重量%スラリー(水分散体)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:
カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/カルボキシル化セルロース重量〔g〕
(実施例1)
上記製造例1で得られた固形分濃度が4.0wt%の酸化CNF水分散体を、分散媒体としての水とともに自転しながら公転する高速ディスパ羽根とタンク壁(底面、側面)を掻き取る低速羽根とを有するミキサー(浅田鉄工株式会社製、MHK−7.5)に投入し、高速ディスパ羽根の自転回転数1000rpm、低速羽根の回転数10rpmの条件で、10分間分散して、固形分濃度が0.5wt%の酸化CNF水分散体を得た。得られた酸化CNF水分散体について、分散度の評価および平均繊維長の測定を行った。結果を表2に示した。
(実施例2)
上記製造例1で得られた固形分濃度が4.0wt%の酸化CNF水分散体を、分散媒体としての天然ゴムラテックス(商品名:HAラテックス、レヂテックス社、固形分濃度61.5重量%)と水とともに、天然ゴムラテックスの絶乾固形分100重量部に対して、CNFが絶乾相当で20重量部となるように、自転しながら公転する高速ディスパ羽根とタンク壁(底面、側面)を掻き取る低速羽根とを有するミキサー(浅田鉄工株式会社製、MHK−7.5)に投入し、高速ディスパ羽根の自転回転数750rpm、低速羽根の回転数10rpmの条件で、15分間分散して、CNF固形分濃度が1.00wt%の酸化CNFと天然ゴムラテックスとの分散体を得た。得られた酸化CNFと天然ゴムラテックスとの分散体について、分散度の評価を行った。結果を表2に示した。
なお、上記分散を10回繰り返した後のミキサー内部は、ラテックスの凝集物による汚れは見られなかった。
(比較例1)
高速ディスパ羽根の自転回転数を250rpmに変更したこと、及び低速羽根の回転数を1rpmに変更したこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が0.5wt%の酸化CNF水分散体を得た。また、この酸化CNF水分散体について、分散度の評価および平均繊維長の測定を行った。結果を表2に示した。
(比較例2)
分散装置としてアジテータを用い、回転数500rpmの条件で30分間分散したこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が0.5wt%の酸化CNF水分散体を得た。得られた酸化CNF水分散体について、分散度の評価および平均繊維長の測定を行った。結果を表2に示した。
(比較例3)
分散装置としてホモジナイザー(株式会社エスエムテー製、製品名:ハイフレックスホモジナイザーHF93、カッター:4型)を用い、回転数8000rpmの条件で30分間分散したこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が0.5wt%の酸化CNF水分散体を得た。得られた酸化CNF水分散体について、分散度の評価および平均繊維長の測定を行った。結果を表2に示した。
(比較例4)
分散装置としてホモディスパー(プライミクス株式会社製、ホモディスパー2.5型)を用い、回転数3000rpmの条件で30分間分散したこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が0.5wt%の酸化CNF水分散体を得た。得られた酸化CNF水分散体について、分散度の評価および平均繊維長の測定を行った。結果を表2に示した。
(比較例5)
分散装置として比較例3と同じホモジナイザーを用い、回転数8000rpmの条件で30分間分散したこと以外は実施例2と同様にして、CNF固形分濃度が1.0wt%の酸化CNFと天然ゴムラテックスとの分散体を得た。得られた酸化CNFと天然ゴムラテックスとの分散体について、分散度の評価を行った。結果を表2に示した。
なお、上記分散を10回繰り返した後のホモジナイザー内部は、ラテックスの凝集物による汚れが見られた。
Figure 2020100755
表2からわかる通り、固形分濃度1wt%以上の微細繊維状セルロース分散体を、分散媒体とともに、自転しながら公転する高速ディスパ羽根とタンク壁を掻き取る低速羽根とを有するミキサーを用いて分散する分散工程を含む、分散媒体に分散された微細繊維状セルロース分散体の製造方法によれば、得られた分散体は、微細繊維状セルロースの分散度が高いものであった。また、分散媒体が水の場合は、上記の製造方法により得られた分散体は、繊維長の短縮が抑制されたものであることが確認できた。また、分散媒体がゴムラテックスの場合は、ミキサー内にラテックス凝集汚れがないことが目視で確認できた。
2…ミキサー、4…タンク、6…高速ディスパ羽根、8…高速撹拌軸、10…タンク壁、12…低速羽根、14…低速撹拌軸、16…第1アーム、18…第2アーム、20…駆動部

Claims (3)

  1. 固形分濃度1wt%以上の微細繊維状セルロース分散体を、分散媒体とともに、自転しながら公転する高速ディスパ羽根とタンク壁を掻き取る低速羽根とを有するミキサーを用いて分散する分散工程を含む、前記分散媒体に分散された微細繊維状セルロース分散体の製造方法。
  2. 前記高速ディスパ羽根の回転数が500〜2000rpmであり、前記低速羽根の回転数が5〜10rpmである請求項1に記載の微細繊維状セルロース分散体の製造方法。
  3. 前記分散媒体が水または/およびゴムラテックスである請求項1または2に記載の微細繊維状セルロース分散体の製造方法。
JP2018240792A 2018-12-25 2018-12-25 微細繊維状セルロース分散体の製造方法 Active JP7157656B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018240792A JP7157656B2 (ja) 2018-12-25 2018-12-25 微細繊維状セルロース分散体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018240792A JP7157656B2 (ja) 2018-12-25 2018-12-25 微細繊維状セルロース分散体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020100755A true JP2020100755A (ja) 2020-07-02
JP7157656B2 JP7157656B2 (ja) 2022-10-20

Family

ID=71141079

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018240792A Active JP7157656B2 (ja) 2018-12-25 2018-12-25 微細繊維状セルロース分散体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7157656B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113812836A (zh) * 2021-06-03 2021-12-21 添可智能科技有限公司 烹饪设备的自清洁方法和控制方法
WO2023280250A1 (zh) * 2021-07-07 2023-01-12 添可智能科技有限公司 烹饪设备的自清洁方法和控制方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003082097A (ja) * 2001-09-11 2003-03-19 Dainippon Ink & Chem Inc ポリアミドとガラスとの複合体から成るパルプと粒子の製造法
JP2017110085A (ja) * 2015-12-16 2017-06-22 第一工業製薬株式会社 粘性水系組成物およびその製造方法
JP2018119041A (ja) * 2017-01-24 2018-08-02 住友ゴム工業株式会社 マスターバッチの製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003082097A (ja) * 2001-09-11 2003-03-19 Dainippon Ink & Chem Inc ポリアミドとガラスとの複合体から成るパルプと粒子の製造法
JP2017110085A (ja) * 2015-12-16 2017-06-22 第一工業製薬株式会社 粘性水系組成物およびその製造方法
JP2018119041A (ja) * 2017-01-24 2018-08-02 住友ゴム工業株式会社 マスターバッチの製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113812836A (zh) * 2021-06-03 2021-12-21 添可智能科技有限公司 烹饪设备的自清洁方法和控制方法
WO2023280250A1 (zh) * 2021-07-07 2023-01-12 添可智能科技有限公司 烹饪设备的自清洁方法和控制方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP7157656B2 (ja) 2022-10-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6698644B2 (ja) アニオン変性セルロースナノファイバー分散液および組成物
JP6951978B2 (ja) アニオン変性セルロースナノファイバー分散液およびその製造方法
WO2018143149A1 (ja) 乾燥セルロースナノファイバーの製造方法
JP7170380B2 (ja) 化学変性パルプ乾燥固形物の製造方法
WO2018199191A1 (ja) マスターバッチ、ゴム組成物及びそれらの製造方法
JP7157656B2 (ja) 微細繊維状セルロース分散体の製造方法
JP2017066283A (ja) 気泡含有組成物用添加剤
JP6861972B2 (ja) 乾燥セルロースナノファイバーの製造方法
JPWO2018012507A1 (ja) マスターバッチの製造方法
WO2017082395A1 (ja) 化学変性パルプ分散液の脱水方法
JP6994345B2 (ja) ゴム組成物及び成形品
JP7162433B2 (ja) セルロースナノファイバー及びポリビニルアルコール系重合体を含む組成物の製造方法
JP7227068B2 (ja) 樹脂複合体の製造方法
JP7252975B2 (ja) 微細繊維状セルロース分散体の製造方法
JP7323549B2 (ja) 微細繊維状セルロースの乾燥固形物の再分散方法、および微細繊維状セルロースの再分散液の製造方法
WO2020218263A1 (ja) ラテックス浸漬液、ゴム組成物およびそれらの製造方法
JP6915170B2 (ja) ゴム組成物の製造方法
JP7203484B2 (ja) チーズ
JP7377397B1 (ja) 微細繊維状セルロースの製造方法およびセルロースの解繊方法
JP2023109342A (ja) 微細繊維状セルロースの乾燥固形物の再分散方法
WO2023234129A1 (ja) 微細繊維状セルロースの製造方法およびセルロースの解繊方法
JP7250455B2 (ja) アニオン変性セルロースナノファイバーを含有する組成物
JP7239294B2 (ja) アニオン変性セルロースナノファイバーの製造方法
JP7303015B2 (ja) 樹脂複合体の製造方法、及び変性セルロース繊維
JP7098467B2 (ja) セルロースナノファイバーの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210901

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220614

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220621

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220629

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221004

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221007

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7157656

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150