以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る圃場作業機及び農作業支援システムについて説明する。
〔圃場作業機の説明〕
以下では、本実施形態における圃場作業機(以下、作業機100と記載する)として、図1に示す乗用田植機を例示して説明する。図2には、作業機100の操舵に係る構成要素を示している。
以下の説明では、図1,2に記載された符号Fが示す方向が機体前側である。図1,2に記載された符号Bが示す方向が機体後側である。図1に記載された符号Uで示す方向が機体上側である。また、符号Dで示す方向が機体下側である。図2に記載された符号Rが示す方向が機体右側である。また、符号Lが示す方向が機体左側である。
図1に示すように、作業機100は、乗用型で四輪駆動形式の走行機体(以下、機体1と記載する)を備えている。機体1は、機体1の後部に昇降揺動可能に連結された平行四連リンク形式のリンク機構2、リンク機構2を揺動駆動する油圧式の昇降シリンダ3、リンク機構2の後端部にローリング可能に連結される苗植付装置4(作業装置の一例)、及び、機体1の後端部から苗植付装置4にわたる施肥装置5(作業装置の他の一例)などを備えている。昇降シリンダ3は電気的に制御されるバルブユニット3Aにより圧油の給排が行われる。
機体1は、走行のための機構として車輪6、エンジン7、及び油圧式の無段変速装置8を備えている。車輪6は、操舵可能な左右の前輪6Aと、操舵不能な左右の後輪6Bとを有する。エンジン7及び無段変速装置8は、機体1の前部に搭載されている。エンジン7からの動力は、無段変速装置8などを介して前輪6A、後輪6Bなどに供給される。
苗植付装置4は、主たる農作業として苗の植え付けを行う。苗植付装置4は、一例として8条植え形式に構成されている。苗植付装置4は、整地フロート14、苗載せ台15、8条分の植付機構16などを備えている。
整地フロート14は、それらが接地した状態での機体1の走行に伴って、水田の泥面を滑走して、苗植え付け予定箇所などの泥面を整地する。
苗載せ台15は、8条分のマット状苗(車載物の一例、消費材の一例)を載置(搭載の一例)する台座である。苗載せ台15は、マット状苗の左右幅に対応する一定ストロークで左右方向に往復移動し、縦送り機構17は、苗載せ台15が左右のストローク端に達するごとに、苗載せ台15上の各マット状苗を苗載せ台15の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。8個の植付機構16は、ロータリ式で、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置されている。そして、各植付機構16は、機体1からの動力により、苗載せ台15に載置された各マット状苗の下端から一株分の苗を切り取って、整地後の泥土部に植え付ける。これにより、苗植付装置4の作動状態では、苗載せ台15に載置されたマット状苗から苗を取り出して水田の泥土部に植え付けることができる。
苗植付装置4には、植付機構16による苗取り量を調節する苗取り量調節機構18が備えられている。図4に示すように、植付機構16は、苗載せ台15の下端を摺動案内するガイドレール15aに形成された苗取り出し口を通過して一株分の苗を取り出して植え付ける。苗載せ台15及び苗載せ台15の下端を摺動案内するガイドレール15aを上下に位置変更することにより苗取り量を調節する。
説明を加えると、図4に示すように、苗取り量調節機構18は、苗載せ台15及びガイドレール15aを上下に位置変更するためのアクチェータである減速機構付きの苗取り量調節モータ19と、この苗取り量調節モータ19の出力軸に設けられたピニオンギアと噛み合っている扇形ギア20とを備えている。更に、苗取り量調節機構18は、ガイドレール15aの前部に挿入された支持アーム21と、この支持アーム21を揺動可能に支持する支持軸22とを備えている。支持アーム21と扇形ギア20とは、連結アーム23によってリンク結合している。扇形ギア20の回動軸24には、扇形ギア20の回動角度(苗取り量)を検出する苗取り量センサ25が設けられている。苗取り量調節モータ19の一方方向の駆動により、苗載せ台15及びガイドレール15aが上昇側に移動し、苗取り量調節モータ19の他方方向の駆動により、苗載せ台15及びガイドレール15aが下降側に移動する。苗載せ台15及びガイドレール15aの上下移動により苗取り量が変更される。
図1に示すように、施肥装置5は、横長のホッパ26、繰出機構27、電動式のブロワ28、複数の施肥ホース29、及び、各条毎に備えられた作溝器30を備えている。ホッパ26は、粒状または粉状の肥料(車載物の一例、消費材の一例)を貯留する。繰出機構27は、エンジン7から伝達される動力で作動し、ホッパ26から2条分の肥料を所定量ずつ繰り出す。
ブロワ28は、機体1に搭載されたバッテリ(図示せず)からの電力で作動し、各繰出機構27により繰り出された肥料を圃場の泥面に向けて搬送する搬送風を発生させる。施肥装置5は、ブロワ28などの断続操作により、ホッパ26に貯留した肥料を所定量ずつ圃場に供給する作動状態と、供給を停止する非作動状態とに切り換えることができる。
各施肥ホース29は、搬送風で搬送される肥料を各作溝器30に案内する。各作溝器30は、各整地フロート14に配備されている。そして、各作溝器30は、各整地フロート14と共に昇降し、各整地フロート14が接地する作業走行時に、水田の泥土部に施肥溝を形成して肥料を施肥溝内に案内する。
施肥装置5は、主たる農作業として施肥を行う。施肥装置5には、繰出機構27による肥料の繰り出し量を変更調整可能な繰出し量調節機構31が備えられている。図4に示すように、繰出し量調節機構31は、繰出機構27における繰出し量を調節するための調節体32を変位させるねじ軸33と、ギアを介してねじ軸33を正方向及び逆方向に回転させる肥料調節モータ34と、ねじ軸33の回転に基づく調節体32の変位位置を検出する位置検出センサ35等を有する。
図1に示すように、機体1は、その後部側に運転部40を備えている。運転部40は、前輪操舵用のステアリングホイール41、エンジン回転数の設定変更と無段変速装置8の変速操作とを可能にする主変速レバー42、副変速装置の変速操作を可能にする副変速レバー43、苗植付装置4の昇降操作と作動状態の切り換えなどを可能にする第一操作レバー45と第二操作レバー46、各種の情報を表示(報知)してオペレータに報知(出力)すると共に、各種の情報の入力を受け付けるタッチパネルを有する端末47(表示部の一例)、及び、オペレータ用の運転座席48などを備えている。
図3に示すように、端末47は、入力部47aを有する。入力部47aは、端末47のタッチパネル上の表示された入力インタフェースとして実現される。入力部47aは、作業車が農作業の対象とした圃場の選択入力を受け付ける。
なお、端末47は、機体1に据え付け(固定)された物でもよいし、機体1と無線通信などを行える携帯装置として構成されていてもよい。また、端末47の入力や出力機能は、例えばタッチパネルを備えたスマートフォンなど小型のコンピュータや、入力装置とモニタが接続されたパーソナルコンピュータにより実現してもよい。端末47は、機体1に据え付けられたものと、スマートフォンなどにより実現されたものの双方が併存してもよい。端末47を複数併存させる場合は、例えば機体1に据え付けられたものから入力された情報を優先する、などの優先度を設定してもよい。
図1に示すように、主変速レバー42は、ステアリングホイール41の左方に隣接配備されている。主変速レバー42は、前後方向と左右方向とに揺動可能な揺動操作式で、無段変速装置8の操作軸(図示せず)に連係されている。主変速レバー42は、デテントユニット(図示せず)の保持作用により、中立位置と、中立位置よりも車体前側の前進複数段の変速位置と、中立位置よりも車体後側の後進複数段の各変速位置とに構成されている。
第一操作レバー45は、植付、下降、中立、上昇、自動、の各操作位置に切り換え可能な揺動式で、運転座席48の右方に隣接配備されている。第二操作レバー46は、上下揺動式の中立復帰型で、ステアリングホイール41の右下方に隣接配備されている。第二操作レバー46は苗植付装置4の上昇及び下降を指令する。
図2に示すように、ステアリングホイール41は、ステアリング軸49を介してステアリングホイール41と一体回動するステアリングギア50、ステアリングギア50と噛み合い連動するセクタギア51、セクタギア51と一体揺動する操舵部材52、及び、操舵部材52と左右の前輪6Aの操作アーム53とにわたる左右のタイロッド54、などを介して左右の前輪6Aに連動連結されている。
機体1は、ステアリングホイール41の操作に連動して左右のサイドクラッチ55を断続操作する機構を備えている。すなわち、操舵部材52と左右のサイドクラッチ55の操作アーム57とを連動可能に連結する左右の連係ロッド58を備えている。左右の連係ロッド58は、操作アーム57との連係箇所に、操舵部材52の操舵角度である操舵角θと左右のサイドクラッチ55の断続操作との関係を設定する長孔58aを備えている。
上記の構成により、左右の前輪6Aは、ステアリングホイール41の回動操作量に応じて直進位置から旋回方向に操舵される。操舵部材52が設定角度θaよりも小さい操舵角であれば、サイドクラッチ55は接続状態を維持し、操舵部材52が設定角度θaより大きくなると、左側のサイドクラッチ55は遮断状態に切り換わる。一方、右側のサイドクラッチ55は接続状態に維持される。これにより、旋回内側に位置する左側の後輪6Bへの伝動が遮断されて機体1の旋回半径が小さくなる左小旋回状態が得られる。操舵部材52の揺動操作は、手動によるステアリングホイール41の回動操作以外に、後述するようにステアリングモータ59によっても行われる。
図3に示すように、機体1には、ギア機構61(図2参照)を介してステアリング軸49すなわち、操舵部材52を回動操作可能なステアリングモータ59、及び、主変速レバー42の自動操作を可能にする電動式の変速モータ62が備えられている。また、運転モードの手動運転モードと後述する自動作業走行制御を実行する自動運転モードとの選択(以下、モード情報と記載する)を可能にする手動式の自動入切スイッチ64が備えられている。この自動入切スイッチ64は、主変速レバー42の握り部付近に指操作可能に設けられている。
機体1には、その他、図3に示すように、各種の制御を実行する制御部9、制御部9が使用する各種の情報が記憶された記憶部90、機体1の位置及び方位を測定する測位ユニット63(位置情報取得部の一例、機体センサ部の一例)、機体1の三軸の傾きや加速度を取得する慣性計測装置(inertial measurement unit)であるIMU68(機体センサ部の一例)、操舵部材52の揺動軸などに設けられ、ステアリングホイール41の回動操作量に対応する操舵角θなどの操舵情報を取得する操舵角センサ56、及びエンジン7や無段変速装置8のエンジン回転数(エンジン出力情報の一例)やギア比、エンジン回転数やギア比に基づいた出力基準の速度情報(走行速度)などの走行に係る機体状態情報を取得する走行センサ69(機体センサ部の一例)、無線通信のための通信用アンテナを有する通信回路65(図1参照)が備えられている。以下では、測位ユニット63、IMU68、操舵角センサ56、及び走行センサ69を包括して機体センサ部Dと称する場合がある。
測位ユニット63は、機体1の位置及び方位を測定し、機体1の位置情報を取得する装置である。測位ユニット63は、例えば衛星航法装置である。本実施形態において測位ユニット63は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用し、測位方法として、移動体の測位に適したRTK−GPS(Real Time Kinematic GPS)を採用している。
測位ユニット63は、GPS衛星(図示せず)から送信された電波と、既知位置に設置された基準局(図示せず)から送信された測位データとを受信する衛星航法用のアンテナユニット66を備えている。基準局は、GPS衛星からの電波を受信して得た測位データを測位ユニット63に送信する。測位ユニット63は、GPS衛星からの電波を受信して得た測位データと、基準局からの測位データとに基づいて、機体1の位置や方位を求める。また、測位ユニット63は、単位時間当たりの位置の変化量から測位基準の速度情報(走行速度)を機体状態情報として取得することもできる。測位ユニット63は、アンテナユニット66内に収容されている。アンテナユニット66は、GPS衛星からの電波の受信感度が高くなるように、予備苗フレーム67における上端の左右中央部に配備されている。本実施形態では、アンテナユニット66の内部には、測位ユニット63と共に、IMU68や通信回路65が収容されている。
IMU68は、3軸のジャイロスコープ(図示せず)と3方向の加速度センサ(図示せず)とを有し、機体1のヨー角、ピッチ角、ロール角、など三軸の角速度やその加速度(速度情報の一例)などの車体の姿勢情報を含む機体状態情報を取得する。
記憶部90には、農作業に必要な情報を格納したデータベースとして、圃場DB90a、及び走行計画DB90bが記憶されている。
圃場DB90aには、作業機100が農作業を行う圃場の形状や畔など位置の情報を含む地理情報、圃場の荒地の領域や走行に注意を要する程度の凹凸の有無とその位置などの地形情報(地形データの一例)などを含む圃場情報が記憶される。本実施形態では、農作業の対象とした圃場の圃場情報が農作業の開始前に予め記憶されている。圃場DB90aにおいて、位置にかかる情報は例えば緯度、経度、及び標高の情報として記憶される。
走行計画DB90bには、少なくとも農作業の対象とした圃場における作業機100の走行計画が格納される。本実施形態では、農作業の対象とした圃場における作業機100に推奨される走行経路(以下では推奨経路と記載する)を含む走行計画が予め記憶されている。以下では、走行計画DB90bにあらかじめ格納されている走行計画を初期走行計画と記載する。
制御部9はマイクロコンピュータを備え、記憶部90などに記憶されたソフトウェアなどにより、運転制御部91、管理部92、通信部93を実現している。
管理部92は、記憶部90に記憶された圃場情報などに基づいて走行計画を決定する。管理部92は、使用者が端末47により農作業の対象とした圃場を指定した場合、当該圃場に対応する圃場情報と初期走行計画とを参照して最適走行計画を求める(決定する)。本実施形態では、管理部92は推奨経路を走行計画における走行経路Q(図5参照)として決定する。なお、管理部92は、記憶部90に農作業の対象とした圃場の圃場情報や初期走行計画が記憶されていない場合は、走行計画の決定に先立ち、通信部93に圃場情報や初期走行計画を外部から取得させることができる。
管理部92は、領域R内に、機体1による走行に注意を要する領域(圃場の荒地の領域や走行に注意を要する程度の凹凸のある領域)である要注意領域E(図5参照)が存在する場合は、要注意領域Eと重複する走行経路Qの部分を、低速で機体1を走行すべき低速走行経路QE(図5参照)などとして決定し、走行計画を更新する。以下では、更新された走行計画を最適走行計画と記載する。
その他、管理部92は、記憶部90に記憶された圃場情報や走行計画を、通信部93により外部に送信させる機能を有する。
運転制御部91は、測位ユニット63により取得される機体1の位置情報、IMU68により取得される機体1の姿勢情報、走行センサ69により取得される出力情報、モード情報、及び走行計画などに基づいて、機体1の走行を管理する。運転制御部91は例えば、運転制御部91は、自動入切スイッチ64の切り替えによりモード情報において自動運転モードが選択されていれば、ステアリングモータ59、変速モータ62などを制御して自動運転(運転支援の一例)を実現する。
運転制御部91は、自動運転においては、低速で機体1を走行すべき低速走行経路QEなどを走行する場合は、走行速度を低下させる。運転制御部91が行う自動運転には、少なくとも機体1の操舵と走行速度の制御が含まれる。運転制御部91は、自動運転において実行する操舵や、走行速度の制御に関する走行制御情報(運転情報の一例)や、要注意領域Eの存在などを報知する注意喚起情報を端末47に表示させることができる。走行制御情報には、操舵や速度制御(エンジン回転数やギア比)の現状のパラメータや変更予定、枕地旋回を行う前や圃場における荒地へ侵入する前の注意喚起や警告が含まれる。走行制御情報や注意喚起情報の報知により、使用者は機体1の走行状態の変化に備えることができる。
運転制御部91は、自動入切スイッチ64の切り替えによりモード情報において手動運転モードが選択されていれば、自動運転を実現した場合に実行する操舵や、走行速度の制御(エンジン回転数やギア比)に関する情報を、使用者の運転をアシストするためのアシスト情報(運転情報の一例)として、端末47に表示させる(運転支援の一例)。運転制御部91は、低速で機体1を走行すべき低速走行経路QEなどを走行する場合は、走行速度を低下させる。アシスト情報には、最適な走行速度、加速、及び減速などの速度制御の指示や示唆、操舵の指示や示唆、及び上述の注意喚起情報や警告が含まれる。
その他、運転制御部91は、機体1の機体状態情報と、測位ユニット63から取得される機体1の位置情報とを一対一に紐付けして圃場情報として記憶部90に記憶し、圃場DB90aを更新する機能を有する。
通信部93は、走行制御情報やアシスト情報を通信回路65に外部装置に向けて送信させる。なお、外部装置とは、携帯電話の通信網などと接続されたインターネット網Nや、無線通信などを行える携帯装置として構成された端末47である端末47xである(図6参照)。これにより、使用者や、使用者の管理者ないし指示者や助言者は、機体1から離れた地点(機体1を視認できない程度以上はなれた遠隔地を含む)からでも、機体1の位置や作業地点、走行制御情報やアシスト情報を知ることができる。また、管理者ないし指示者は、必要に応じて使用者に指示や助言を行える。
また、通信部93は、使用者の端末47を介した指示などに基づいて、もしくは、記憶部90に農作業の対象とした圃場の圃場情報や初期走行計画が記憶されていない場合は管理部92の指令に基づいて、農作業の開始前に、外部サーバSから圃場情報を取得し、記憶部90に記憶する。
図6には、インターネット網Nに接続された外部サーバSが、通信部93(通信回路65)と通信可能である農作業支援システムを図示している。外部サーバSは、サーバ制御部S1、種々の圃場の圃場情報を記憶したサーバ記憶部S2、及びサーバ通信回路S3を備えている。サーバ制御部S1は、通信部93からインターネット網Nを介して特定の圃場情報やその圃場の初期走行計画の送出要請を受信すると、当該要請に応じ、特定された圃場情報や初期走行計画をサーバ記憶部S2から読み出して、サーバ通信回路S3を介して通信部93へ送信する。通信部93は、受信した圃場情報を、圃場DB90aに格納する。通信部93は、受信した初期走行計画を、走行計画DB90bに格納する。このようにすることで、複数の作業機100のいずれかが、複数の圃場の領域Rのいずれか(例えば、領域R1や領域R2)で農作業する場合等のように、作業機100の記憶部90に農作業の対象とした圃場の圃場情報や初期走行計画が記憶されていないような場合にも、必要に応じて当該農作業を行う作業機100が、農作業の対象とした圃場の圃場情報を活用できるため利便性が向上する。
その他、図3に示す制御部9は、図1に示す第一操作レバー45及び第二操作レバー46による指令に基づいて、苗植付装置4の昇降作動、並びに、苗植付装置4及び施肥装置5の作動状態を制御する。
〔圃場、圃場情報、及び農作業開始前の走行計画の説明〕
図5には、使用者が端末47により農作業の対象とした指定した圃場、圃場における領域R、要注意領域E、走行経路Qを示している。以下の説明では、単に走行と記載した場合は、圃場における機体1の走行を意味する。
圃場情報には、地理情報として以下の情報が含まれている。領域Rは、本実施形態では矩形である。領域Rの外周は、畔Gで囲われている。図5には、畔Gとして、第一畔G1、第二畔G2、第三畔G3、及び第四畔G4が反時計回りにこの順で配置される態様を示している。第一畔G1及び第三畔G3は圃場の短手方向に沿い配置されている。第二畔G2及び第四畔G4は、圃場の長手方向に沿い配置されている。
圃場には、作業機100の領域Rへの侵入を許容する侵入路Qzが設けられている。侵入路Qzは、第一畔G1と第四畔G4との交点近傍において第四畔G4に沿う向きで配置されている。
地形情報には、要注意領域Eの情報として第一荒地E1及び第二荒地E2が存在する旨の情報とその位置情報が含まれている。なお、図5に示した圃場には、他の要注意領域Eとして、第三荒地E3が存在するが、初期の地形情報には第三荒地E3にかかる情報には含まれていない。一方、地形情報には第二荒地E2の情報が含まれるが、現実の圃場には第二荒地E2は存在しない。
なお、本実施形態における要注意領域Eの情報は、過去(例えば、昨年の農作業時)の走行中において、IMU68が機体1が揺さぶられるような加速度を検出したり、走行センサ69により取得したエンジン回転数が低下したり、走行センサ69により取得した出力基準の速度情報と測位ユニット63により取得した測位基準の速度情報とのかい離(いわゆるスリップ)が生じたり、ステアリングモータ59の負荷が大きくなったり(例えば、運転制御部91が制御目標値とした操舵角θと操舵角センサ56が取得した操舵角θとの差が大きくなったり)するなどの、機体状態情報の特異的な変化(以下、単に特異的変化と記載する)がこれら機体センサ部Dにより取得された領域として、地形情報に含まれている。
走行経路Qは、侵入路Qzを起点として第一畔G1に沿い走行する第一経路Q1、第一経路Q1の後、第一畔G1と第三畔G3との間を、第二畔G2もしくは第四畔G4に沿い直線状の往復走行しながら、順次第二畔G2の側から第四畔G4の側へ移動する第二経路Q2、及び、第二経路Q2の後、領域Rの外周(畔Gの内周)に沿い反時計回りに走行して侵入路Qzへ戻る第四経路Q4を含む。
第二経路Q2において、第一畔G1もしくは第三畔G3近傍での枕地旋回の経路は、第三経路Q3として図示している。第二地点P2は、第二経路Q2において、枕地旋回を開始する地点である。第一地点P1は、第一畔G1と第三畔G3との間の直線状の走行を開始する起点である。
管理部92は、本実施形態では第一荒地E1及び第二荒地E2が第二経路Q2と重複しているため、第二経路Q2における第一荒地E1及び第二荒地E2との重複する領域、及び第二経路Q2における、これら重複する領域の前後近傍の経路を、低速走行経路QEとして決定し、少なくとも農作業の開始時点の走行計画に含める。本実施形態では、第一荒地E1、第二荒地E2に対応する低速走行経路QEはそれぞれ、第一低速経路QE1、第二低速経路QE2として決定(計画)される。
本実施形態では、管理部92は、第三経路Q3の全てを低速で走行する経路として決定し、走行計画に含める。また、管理部92は、第三経路Q3(第二地点P2)に到達した時点で、第三経路Q3における走行速度に制御されるべき旨を走行計画に含める。
〔走行時の説明〕
以下の説明では、モード情報として自動運転モードが選択されている場合を例示して説明する。なお、自動運転モードに代えて手動運転モードが選択されている場合、自動運転モードにおいて運転制御部91が行う操舵や走行速度の制御を、使用者が自らステアリングホイール41や主変速レバー42などを操作して行う点で異なり、以下の説明におけるその他の説明内容は同じである。
使用者が端末47等により、農作業の開始を指示すると、運転制御部91は、走行計画に従って機体1を走行させる。本実施形態では、運転制御部91は、機体1を走行経路Qに沿って走行させる。運転制御部91は、機体1を所定の走行速度範囲で走行(以下、通常走行と記載する)させる。運転制御部91は、必要に応じて通常走行範囲よりも低速範囲で機体1を走行させる(以下、低速走行と記載する)。
走行中、運転制御部91は、IMU68、走行センサ69、及び測位ユニット63から取得される機体1の機体状態情報と、測位ユニット63から取得される機体1の位置情報とを一対一に紐付けして圃場情報として記憶部90に記憶し、圃場DB90aを更新する。
運転制御部91は、第二経路Q2を走行中、第一低速経路QE1や第二低速経路QE2上に到達すると、機体1を低速走行させる。これにより、機体1が第一荒地E1を走行する場合に、第二経路Q2へ適切に追従可能である。
第一低速経路QE1を走行中、特異的変化が機体センサ部Dにより取得される。これらの特異的変化の情報は、位置情報と一対一に紐付けして圃場情報として記憶部90に記憶(圃場DB90aに格納)され、次回(例えば翌年の農作業時)の走行計画の最適化の際には、要注意領域Eの存在と位置を示す情報として用いられる。
なお、第二荒地E2は実際には存在しないので、第二低速経路QE2を走行中、特異的変化は取得されない。また、ステアリングモータ59の負荷も大きくならない。そのため、第二荒地E2は存在しないものとして圃場情報が更新される。
第二経路Q2を走行中、第三荒地E3に到達すると、特異的変化が取得される。そのため、管理部92は、第三荒地E3と重複する第二経路Q2を、新たな低速走行経路QE(以下、第三低速経路QE3)であると判断する。現実には、管理部92は機体1が第三荒地E3と重複する第二経路Q2に到達した時点で第三荒地E3の存在範囲を把握し得ないため、以後の走行経路Qの全てを第三低速経路QE3として決定し、走行計画を更新する。これにより運転制御部91は機体1を低速走行させるため、機体1が第三荒地E3を走行する場合に、第二経路Q2へ適切に追従可能である。
第二経路Q2を走行中、第三荒地E3を通過すると、特異的変化は取得されない。そのため、管理部92は、第三荒地E3を通過したと判断し、以後の走行経路Qは第三低速経路QE3ではないものとして走行計画を更新する。これにより、運転制御部91は、機体1を通常走行に戻して走行させる。
なお、第三荒地E3を走行中の機体状態情報の変化の情報は、位置情報と一対一に紐付けして圃場情報として記憶部90に記憶され、次回(例えば翌年の農作業時)の走行計画の最適化の際には、要注意領域E(第三荒地E3)の存在と位置を示す情報として用いられる。
本実施形態では、運転制御部91は、第二経路Q2を走行中、第三経路Q3(第二地点P2)に到達直前に機体1を低速走行させる。そして、第三経路Q3を通過するまで低速走行を継続させる。低速走行により、運転制御部91は枕地旋回中、特に旋回が大回りになる傾向にあるか、小回りになる傾向にあるかを判断しながら精度高く第三経路Q3に追従させることができる。具体的には、枕地旋回を低速走行で行うことで運転制御部91は、単位走行距離における測位ユニット63からの機体1の位置や方位の測定結果の取得や、ギア比の変速、ステアリングモータ59の制御を小まめに行うことができる。従って、枕地旋回を行う際の第三経路Q3への追従性が向上する(旋回動作の精度が向上する)。また、第三経路Q3(第二地点P2)に到達直前に機体1を低速走行させてそのまま低速で枕地旋回を行うことで、使用者が機体1に搭乗している場合には使用者の不安感を低減できる。なお、第三経路Q3(第一地点P1)を通過すると、速やかに加速して通常走行に戻す。
なお、自動運転モードで走行中は、逐次、走行制御情報が端末47に表示される。手動運転モードで走行中は、逐次、アシスト情報が端末47に表示される。
農作業が終了すると、管理部92は、圃場DB90aに格納されている圃場情報を、通信部93に指令して外部サーバSに送信させる。外部サーバSがサーバ通信回路S3を介して圃場情報を受信すると、サーバ制御部S1は、当該圃場情報をサーバ記憶部S2に記憶する。なお、サーバ制御部S1に同じ圃場の圃場情報が記憶されていた場合は、記憶されていた圃場情報を、新たに受信した圃場情報に更新する。
このように、あらかじめ定められた走行経路を最適化することができる圃場作業機の提供、及びこの圃場作業機による農作業を支援する農作業支援システムの提供を行える。
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、作業機100として、施肥や苗の植え付けを行う乗用田植機を例示して説明した。しかしながら、作業機100は乗用田植機に限られない。その他の作業機100としては、農作業として種を播く直播機、農作業として植立穀稈を収穫するトラクタ、その他、田の防除作業、粒剤散布、もしくは溝切り等の農作業を行う乗用管理機が挙げられる。
(2)上記実施形態では、圃場情報と初期走行計画とを参照して最適走行計画を求める場合、要注意領域Eと重複する走行経路Qの部分を、低速で機体1を走行すべき低速走行経路QE(図5参照)などとして決定し、走行計画を更新する場合を例示して説明した。しかしながら、最適走行計画は、要注意領域Eと重複する走行経路Qの部分を、低速で機体1を走行すべき低速走行経路QE(図5参照)などとして決定する場合に限られない。たとえば、機体1が走行する場合にスリップが生じている走行経路Qの部分を特定し、その部分のスリップ率に応じてエンジン回転数やギア比に基づいた出力基準の速度を上昇させて、測位基準の速度を一定にする速度調整領域を決定し、走行計画を更新してもよい。このように測位基準の速度を一定にすることで、圃場への施肥のバラつきを減少させたり、走行方向に沿う苗の植え付け間隔のバラつきを減少させることができる。
(3)上記実施形態では、農作業が終了すると、管理部92は、圃場DB90aに格納されている圃場情報を、通信部93に指令して外部サーバSに送信させ、サーバ制御部S1は、当該圃場情報をサーバ記憶部S2に記憶する場合を説明した。しかし、農作業が終了した際に外部サーバSに送信する情報は圃場情報に限られない。例えば、圃場情報に加えて、走行計画DB90bに格納されている走行計画を送信し、外部サーバSがこれをサーバ記憶部S2に記憶する場合もある。
(4)上記実施形態では、使用者等に走行制御情報やアシスト情報を報知する場合、端末47に表示させる場合を例示して説明したが、報知は表示に限られない。例えば、音(音声やアラーム音)や振動で報知してもよい。
(5)上記実施形態では、機体1には制御部9が使用する各種の情報が記憶された記憶部90が設けられている場合を説明した。しかし、記憶部90は機体1に設けられる場合に限られない。記憶部90を機体1に設ける場合に代えて、機体1と無線通信等により接続された他の装置等のみに記憶部を設ける場合もある。この場合、作業機100は、機体1と無線通信等により接続された他の装置等を包含する。
図6には、インターネット網Nに接続された外部サーバSが、通信部93(通信回路65)と通信可能である場合を図示している。外部サーバSは、サーバ制御部S1、種々の圃場の圃場情報を記憶したサーバ記憶部S2、及びサーバ通信回路S3を備えている。記憶部90に制御部9が使用する各種の情報を記憶する場合に代えて、このようなサーバ記憶部S2に制御部9が使用する各種の情報を記憶してもよい。この場合、制御部9は、通信部93、インターネット網N、及びサーバ通信回路S3を介してサーバ記憶部S2にアクセス可能である。
(6)上記実施形態では、機体1には各種の制御を実行する制御部9備えられており、制御部9は、マイクロコンピュータを備え、記憶部90などに記憶されたソフトウェアなどにより、運転制御部91、管理部92、通信部93を実現している場合を例示して説明した。そして、運転制御部91は走行計画などに基づいて機体1の走行を管理し、管理部92は圃場情報などに基づいて走行計画などを決定する場合を説明した。しかし、運転制御部91が走行計画などに基づいて機体1の走行を管理したり、管理部92は圃場情報などに基づいて走行計画などを決定する場合には限られない。
図6には、インターネット網Nに接続された外部サーバSが、通信部93(通信回路65)と通信可能である場合を図示している。外部サーバSは、サーバ制御部S1、種々の圃場の圃場情報を記憶したサーバ記憶部S2、及びサーバ通信回路S3を備えている。制御部9の運転制御部91や管理部92が、走行計画などに基づいて機体1の走行を管理したり、圃場情報などに基づいて走行計画を決定などしたりする場合に代えて、このようなサーバ制御部S1が運転制御部91や管理部92の機能を実現してもよい。この場合、サーバ制御部S1は、サーバ通信回路S3、インターネット網N、及び通信部93を介して制御部9にアクセスし、機体1の走行の管理や決定された走行計画について指示や指令を行う。そして、制御部9はこれら指示等に対応する機体1の各種の制御を実行する。
本発明は、圃場作業機及び圃場作業機の農作業支援システムに利用できる。