以下、本発明に係る車両用灯具を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態における車両用灯具を示す図であり、車両用灯具の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。本実施形態の車両用灯具1は自動車用の前照灯とされる。自動車用の前照灯は、一般的に車両の前方の左右方向のそれぞれに備えられるものであり、左右の前照灯は左右方向に概ね対称の構成とされる。従って、本実施形態では、一方の前照灯について説明する。図1に示すように、本実施形態の車両用灯具1は、筐体10と、灯具ユニット20とを主な構成として備える。
筐体10は、ランプハウジング11、フロントカバー12及びバックカバー13を主な構成として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室Rであり、この灯室R内に灯具ユニット20が収容されている。
本実施形態の灯具ユニット20は、ヒートシンク30と、冷却ファン35と、カバー40と、光学系ユニット50とを主な構成として備え、不図示の構成により筐体10に固定されている。
ヒートシンク30は、概ね水平方向に延在する金属製のベース板31を有し、当該ベース板31の下方の面側には複数の放熱フィン32がベース板31と一体に設けられている。冷却ファン35は放熱フィン32と隙間を隔てて配置され、ヒートシンク30に固定されている。この冷却ファン35の回転による気流によりヒートシンク30は冷却される。また、ヒートシンク30におけるベース板31の上面にはカバー40が配置されている。
カバー40は、ヒートシンク30のベース板31上に固定されている。カバー40は概ね矩形の形状をしており、例えばアルミニウム等の金属から成る。カバー40の内側の空間には、光学系ユニット50が収容されている。カバー40の前部には光学系ユニット50から出射する光が透過可能な開口40Hが形成されている。なお、カバー40の内壁に光吸収性を持たせるために、これらの内壁に黒アルマイト加工等が施されることが好ましい。カバー40の内壁が光吸収性を持つことで、意図しない反射や屈折等によりこれらの内壁に光が照射された場合であっても、照射光が反射して開口40Hから意図しない方向に出射することが抑制され得る。
本実施形態の光学系ユニット50は、光源52と、光学素子としての位相変調素子集合体54とを主な構成として備える。本実施形態の光源52は、白色のレーザ光Lを出射するレーザ光源とされ、光源52には不図示の電源から電力が供給される。光源52から出射する白色のレーザ光Lは、所定の広がり角で伝搬するレーザ光とされる。つまり、光源52は、所定の広がり角を有する白色のレーザ光Lを出射する。本実施形態では、光源52は、光軸52Aが水平方向と概ね平行で前後方向に延在するように配置される。
本実施形態の位相変調素子集合体54は、光が入射する複数のブロックを有し、これら複数のブロックから出射する光によって所定の配光パターンを形成するようにされている。このような位相変調素子集合体54の光が入射する入射面54iは複数のブロックにおける光が入射する入射面によって構成され、位相変調素子集合体54の光が出射する出射面54oは複数のブロックにおける光が出射する出射面によって構成される。本実施形態では、位相変調素子集合体54は、光が入射する入射面54iが光源52側に位置し、光が出射する出射面54oがカバー40の開口40H側に位置するように配置される。より具体的には、位相変調素子集合体54は、光源52の光軸52Aが位相変調素子集合体54の入射面54iの概ね中心を通るとともに入射面54iが光軸52Aに対して概ね垂直となり、入射面54iの全体に光源52からのレーザ光Lが照射されるように配置される。このように配置される位相変調素子集合体54の入射面54iには、光源52から出射する所定の広がり角を有する白色のレーザ光Lが入射する。
図2は、図1に示す位相変調素子集合体を概略的に示す正面図であり、図3は位相変調素子集合体に入射する光の様子の一例を示す図である。なお、図2は光が入射する入射面54i側から見る位相変調素子集合体54の正面図であり、図3は光源52の光軸52Aを通る水平断面における位相変調素子集合体に入射する光の様子を示す図である。図2に示すように、本実施形態の位相変調素子集合体54は、複数のブロックB01〜B15を有し、正面視において概ね左右方向に長尺な長方形に形成されている。位相変調素子集合体54には、位相変調素子集合体54の側面の全周を覆う枠体80が取り付けられている。本実施形態では、複数のブロックB01〜B15は、左右方向に延びる3つの行と上下方向に延びる5つの列が形成されるように二次元配列される。これらブロックB01〜B15は、正面視において概ね同じ大きさの長方形に形成されている。
本実施形態では、それぞれのブロックB01〜B15は、入射する光を回折して当該ブロックにおける位相変調パターンに基づく配光パターンの光を出射する位相変調素子とされる。なお、位相変調パターンは、位相変調素子に入射する光の位相を変調するパターンである。上記のように、光源52は所定の広がり角を有する白色のレーザ光Lを出射する。このため、図3に示すように、それぞれのブロックB01〜B15には、光源52からのレーザ光Lの一部が入射するとともに、入射する光源52からのレーザ光Lの伝搬方向が互いに異なる。
本実施形態では、位相変調素子であるそれぞれのブロックB01〜B15は、出射面に微細な凹凸が形成され、この微細な凹凸に基づく配光パターンの光を出射する透過型の回折格子とされる。このような回折格子では、微細な凹凸に応じて入射する光の位相分布が変調される。位相が互いに異なる光は干渉し合って回折するため、このような回折格子は、微細な凹凸に応じて入射する光を回折し、この微細な凹凸に基づく配光パターンの光を出射する。このため、この微細な凹凸は、回折格子に入射する光の位相を変調するパターンであり、位相変調パターンであると理解できる。
これら位相変調素子であるブロックB01〜B15における位相変調パターンとしての微細な凹凸は、互いに異なっており、これらブロックB01〜B15から出射する光の配光パターンは互いに異なっている。本実施形態では、ブロックB01〜B15のそれぞれにおける位相変調パターンとしての微細な凹凸は、これらブロックB01〜B15から出射する光によってハイビームの配光パターンが形成される凹凸とされる。この配光パターンには強度分布も含まれる。このため、本実施形態の位相変調素子集合体54は、光源52からのレーザ光Lが入射することによってハイビームの配光パターンの外形と概ね相似形になると共にハイビームの配光パターンの強度分布に基づいた強度分布となる光を出射する。なお、位相変調パターンとしての微細な凹凸は、それぞれのブロックB01〜B15における入射面に形成されてもよく、それぞれのブロックB01〜B15における入射面と出射面との両方に形成されてもよい。
図4は、ハイビームの配光パターンを示す図である。図4においてSは水平線を示し、配光パターンが太線で示され、この配光パターンは、車両から25m離れた鉛直面上に形成される配光パターンとされている。図4に示されるハイビームの配光パターンPHのうち、領域HA1は最も強度が高い領域であり、領域HA2、領域HA3、領域HA4の順に強度が低くなる。本実施形態では、上記の位相変調素子である複数のブロックB01〜B15は、ハイビームの配光パターンPHの互いに異なる一部を形成する光を出射し、これら光によってハイビームの配光パターンPHが形成される。
具体的には、ハイビームの配光パターンPHは複数のブロックB01〜B15の二次元配列に対応して左右方向に延びる3つの行と上下方向に延びる5つの列が形成されるように二次元配列される領域A01〜A15によって分割される。このような領域A01〜A15にブロックB01〜B15が1対1で対応している。本実施形態では、ブロックB01は領域A01に対応し、ブロックB02は領域A02に対応し、ブロックB03は領域A03に対応し、ブロックB04は領域A04に対応し、ブロックB05は領域A05に対応し、ブロックB06は領域A06に対応し、ブロックB07は領域A07に対応し、ブロックB08は領域A08に対応し、ブロックB09は領域A09に対応し、ブロックB10は領域A10に対応し、ブロックB11は領域A11に対応し、ブロックB12は領域A12に対応し、ブロックB13は領域A13に対応し、ブロックB14は領域A14に対応し、ブロックB15は領域A15に対応している。つまり、本実施形態では、それぞれのブロックB01〜B15は、ハイビームの配光パターンPHのうち、当該ブロックB01〜B15に入射する光源52からのレーザ光Lの伝搬方向に応じた方向に位置する領域A01〜A15に対応している。そして、ブロックB01〜B15のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち当該ブロックが対応する領域内のハイビームの配光パターンPHを形成する光を出射する。このため、複数のブロックB01〜B15は、光源52からのレーザ光Lの一部が入射しハイビームの配光パターンPHの一部を形成する光を出射する特定のブロックと、光源52からのレーザ光Lの他の一部が入射しハイビームの配光パターンPHの他の一部を形成する光を出射する他の特定のブロックとを含むと理解できる。
なお、それぞれのブロックに入射する光源52からのレーザ光Lの伝搬方向は、光源52の光軸52Aを基準とした傾く方向とこの傾きの大きさによって規定される方向である。例えば、伝搬方向が光軸52Aに対して右側に傾く方向である光が入射するブロックは、ハイビームの配光パターンPHの右側の一部を形成する光を出射する。また、伝搬方向が光軸52Aに対して左側に傾く方向である光が入射するブロックは、ハイビームの配光パターンPHの左側の一部を形成する光を出射し、伝搬方向が光軸52Aに対して上側に傾く方向である光が入射するブロックは、ハイビームの配光パターンPHの上側の一部を形成する光を出射し、伝搬方向が光軸52Aに対して下側に傾く方向である光が入射するブロックは、ハイビームの配光パターンPHの下側の一部を形成する光を出射する。また、伝搬方向の光軸52Aに対する傾きが大きい光が入射するブロックは、ハイビームの配光パターンPHの外縁側の一部を形成する光を出射し、伝搬方向の光軸52Aに対する傾きが小さい光が入射するブロックは、ハイビームの配光パターンPHの中心側の一部分を形成する光を出射する。つまり、それぞれのブロックB01〜B15における位相変調パターンとしての微細な凹凸は、このような光を出射する凹凸とされる。
なお、これらブロックB01〜B15から出射する光によってハイビームの配光パターンPHが形成されるとともに、ブロックB01〜B15における特定のブロックがハイビームの配光パターンPHの一部を形成する光を出射し、ブロックB01〜B15における他の特定のブロックがハイビームの配光パターンPHの他の一部を形成する光を出射する限りにおいて、これらブロックB01〜B15から出射する光の配光パターンは特に限定されない。例えば、ブロックから出射する光と他のブロックから出射する光とが互いに重なっていてもよい。また、複数のブロックB01〜B15は並列されていればよく、ブロックの数、形状、大きさ等は特に限定されるものではない。例えば、複数のブロックは左右方向に一列に並列されていてもよく、複数のブロックの大きさが互いに異なっていてもよい。
次に車両用灯具1による光の出射について説明する。
まず不図示の電源から電力が供給されることで、光源52から所定の広がり角を有する白色のレーザ光Lが出射する。このレーザ光Lは、位相変調素子集合体54に入射する。上記のように位相変調素子集合体54では複数のブロックB01〜B15は二次元配列されているため、複数のブロックB01〜B15のそれぞれには、光源52からのレーザ光Lのうち互いに異なる一部が入射する。それぞれのブロックB01〜B15は、入射する光源52からのレーザ光Lを回折し、対応する領域A01〜A15内のハイビームの配光パターンPHを形成する光を出射する。このようにそれぞれのブロックB01〜B15から出射する光はカバー40の開口40Hから出射し、カバー40の開口40Hから出射する光はフロントカバー12を介して車両用灯具1から出射する。上記のようにブロックB01〜B15から出射する光は、これら光によってハイビームの配光パターンPHが形成される光とされるため、車両用灯具1からハイビームの配光パターンPHの光が出射する。
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具1は、光源52と、光学素子としての位相変調素子集合体54と、を備える。位相変調素子集合体54は、並列され光源52からのレーザ光Lが入射する複数のブロックB01〜B15を有し、複数のブロックB01〜B15から出射する光によってハイビームの配光パターンPHが形成される。位相変調素子集合体54に入射する光は、所定の広がり角を有する白色のレーザ光Lである。複数のブロックB01〜B15は、光源52からのレーザ光Lの一部が入射しハイビームの配光パターンPHの一部を形成する光を出射する特定のブロックと、光源52からのレーザ光Lの他の一部が入射しハイビームの配光パターンPHの他の一部を形成する光を出射する他の特定のブロックとを含んでいる。
本実施形態の車両用灯具1では、位相変調素子集合体54は並列される複数のブロックB01〜B15を有し、この位相変調素子集合体54には所定の広がり角を有するレーザ光Lが入射する。このため、特定のブロックに入射する光の光軸は、他の特定のブロックに入射する光の光軸から離れるように延在する。例えば、図3に示すように、ブロックB10に入射する光の光軸OA10iはブロックB08に入射する光の光軸である光源52の光軸52Aから離れるように延在する。上記のように、一般的に、光が入射されることによって光を出射する光学素子では、光学素子から出射する光の伝搬方向は、光学素子に入射する光の伝搬方向の影響を大きく受ける傾向にある。このため、光学素子としての位相変調素子集合体54に平行光が入射する場合と比べて、特定のブロックから出射する光の光軸が他の特定のブロックから出射する光の光軸から離れるようにし得る。例えば、図3に示すように、ブロックB10から出射する光の光軸OA10oがブロックB08から出射する光の光軸OA08oからより離れるようにし得る。このため、光学素子としての位相変調素子集合体54に平行光が入射する場合と比べて、位相変調素子集合体54から出射する光の広がり角を大きくし得る。従って、本実施形態の車両用灯具1は、位相変調素子集合体54から出射する光の広がり角を大きくするためのレンズ等を備えなくても出射するハイビームの配光パターンPHの外形を適切な大きさにし得る。このようにして、本実施形態の車両用灯具1は、構成が複雑化することを抑制しつつ出射するハイビームの配光パターンPHの外形を適切な大きさにし得る。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図5、図6を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図5は、本発明の第2実施形態における位相変調素子集合体を概略的に示す正面図であり、図6は、図5に示す位相変調素子集合体に入射する光の様子の一例を図3と同様に示す図である。図5、図6に示すように、本実施形態の位相変調素子集合体54は、複数のブロックB01〜B15の上下方向に延びる列ごとに分割され、これら分割された部位が光源52側と反対側に凸となる弧状に並列される点において、第1実施形態の位相変調素子集合体54と主に異なる。隣接する分割された部位は、光源52からのレーザ光Lを非透過とする接続部材81によって互いに接続されている。上記のように分割された部位が並列されることによって、ブロックB01〜B05は左右方向において光源52側と反対側に凸となる弧状に並列し、ブロックB06〜B10は左右方向において光源52側と反対側に凸となる弧状に並列し、ブロックB11〜B15は左右方向において光源52側と反対側に凸となる弧状に並列する。また、ブロックB01,B06,B11、ブロックB02,B07,B12、ブロックB03,B08,B13、ブロックB04,B09,B14、及び、ブロックB05,B10,B15は、それぞれ上下方向に並列される。
本実施形態では、上記第1実施形態のブロックB01〜B15と同様に、それぞれのブロックB01〜B15は、ハイビームの配光パターンPHのうち、当該ブロックB01〜B15に入射する光源52からのレーザ光Lの伝搬方向に応じた方向に位置する領域A01〜A15に対応している。そして、ブロックB01〜B15のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち当該ブロックが対応する領域内のハイビームの配光パターンPHを形成する光を出射する。
上記のように、本実施形態では、ブロックB01〜B05は左右方向において光源52側と反対側に凸となる弧状に並列している。このため、複数のブロックB01〜B05が直線状に並列される場合と比べて、複数のブロックB01〜B05のそれぞれに入射する光源52からのレーザ光Lの入射角を小さくできる。また、ブロックB06〜B10は左右方向において光源52側と反対側に凸となる弧状に並列し、ブロックB11〜B15は左右方向において光源52側と反対側に凸となる弧状に並列している。このため、複数のブロックB06〜B10が直線状に並列される場合と比べて、複数のブロックB06〜B10のそれぞれに入射する光源52からのレーザ光Lの入射角を小さくでき、複数のブロックB11〜B15が直線状に並列される場合と比べて、複数のブロックB11〜B15のそれぞれに入射する光源52からのレーザ光Lの入射角を小さくできる。このため、それぞれのブロックB01〜B15における位相変調パターンとしての微細な凹凸の設計が複雑になることを抑制し得る。
なお、本実施形態では、位相変調素子集合体54は、複数のブロックB01〜B15の上下方向に延びる列ごとに分割され、これら分割された部位が光源52側と反対側に凸となる弧状に並列されている。しかし、位相変調素子集合体54は、複数のブロックB01〜B15の左右方向に延びる行ごとに分割され、これら分割された部位が光源52側と反対側に凸となる弧状に並列されてもよい。また、位相変調素子集合体54は、複数のブロックB01〜B15ごとに分割されていてもよい。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図7を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図7は、本発明の第3実施形態における光学系ユニットを示す図であり、光学系ユニットの鉛直方向の断面を概略的に示す図である。図7に示すように本実施形態の光学系ユニット50は、光源52に替わって第1光源52R、第2光源52G、及び第3光源52Bを備える点、位相変調素子集合体54に替わって第1位相変調素子集合体54R、第2位相変調素子集合体54G、及び第3位相変調素子集合体54Bを備える点、合成光学系55を更に備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と主に異なる。
第1光源52R、第2光源52G、及び第3光源52Bは、それぞれ所定の波長帯域のレーザ光を出射するレーザ素子とされる。本実施形態では、第2光源52Gは、所定の広がり角を有しパワーのピーク波長が例えば638nmの赤色のレーザ光LRを出射する半導体レーザとされる。第2光源52Gは、所定の広がり角を有しパワーのピーク波長が例えば515nmの緑色のレーザ光LGを出射する半導体レーザとされる。第3光源52Bは、所定の広がり角を有しパワーのピーク波長が例えば445nmの青色のレーザ光LBを出射する半導体レーザとされる。このため、本実施形態では、3つの光源52R,52G,52Bは、所定の広がり角を有し互いに異なる所定の波長帯域のレーザ光LR,LG,LBを出射する。これらのレーザ光LR,LG,LBの強度は、当該レーザ光LR,LG,LBが合成された光が白色となる強度とされる。なお、光学系ユニット50は、不図示の回路基板を有しており、これら3つの光源52R,52G,52Bは、当該回路基板に実装されている。
第1位相変調素子集合体54R、第2位相変調素子集合体54G、及び第3位相変調素子集合体54Bのそれぞれは、第1実施形態の位相変調素子集合体54と同様に、透過型の回折格子とされる複数のブロックB01〜B15を有し、これら複数のブロックB01〜B15から出射する光によって所定の配光パターンを形成するようにされている。本実施形態では、第1位相変調素子集合体54Rには第1光源52Rからのレーザ光LRが入射し、第2位相変調素子集合体54Gには第2光源52Gからのレーザ光LGが入射し、第3位相変調素子集合体54Bには第3光源52Bからのレーザ光LBが入射する。これら位相変調素子集合体54R,54G,54Bは、光源52R,52G,52Bからのレーザ光LR,LG,LBが入射することによって位相変調素子集合体54R,54G,54Bのそれぞれから出射する光が後述する合成光学系55で合成された光がハイビームの配光パターンPHとなるような光をそれぞれ出射する。この配光パターンには強度分布も含まれる。このため、本実施形態では、第1位相変調素子集合体54Rから出射する光DLRは、ハイビームの配光パターンPHと重なると共にハイビームの配光パターンPHの強度分布に基づいた強度分布とされる。また、第2位相変調素子集合体54Gから出射する光DLGは、ハイビームの配光パターンPHと重なると共にハイビームの配光パターンPHの強度分布に基づいた強度分布とされる。また、第3位相変調素子集合体54Bから出射する光DLBは、ハイビームの配光パターンPHと重なると共にハイビームの配光パターンPHの強度分布に基づいた強度分布とされる。このため、第1位相変調素子集合体54Rから出射する光DLRはハイビームの配光パターンPHの赤色成分の光であり、第2位相変調素子集合体54Gから出射する光DLGはハイビームの配光パターンPHの緑色成分の光であり、第3位相変調素子集合体54Bから出射する光DLBはハイビームの配光パターンPHの青色成分の光である。なお、それぞれの光DLR,DLG,DLBの配光パターンの外形は、ハイビームの配光パターンPHの外形に概ね一致することが好ましい。
合成光学系55は、第1光学素子55fと第2光学素子55sとを有する。第1光学素子55fは、第1位相変調素子集合体54Rから出射する光DLRと、第2位相変調素子集合体54Gから出射する光DLGとを合成する光学素子である。本実施形態では、第1光学素子55fは、第1位相変調素子集合体54Rから出射する光DLRを透過すると共に第2位相変調素子集合体54Gから出射する光DLGを反射することで光DLRと光DLGとを合成する。また、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された光DLR及び光DLGと、第3位相変調素子集合体54Bから出射する光DLBとを合成する光学素子である。本実施形態では、第2光学素子55sは、第1光学素子55fで合成された光DLR及び光DLGを透過すると共に第3位相変調素子集合体54Bから出射する光DLBを反射することで光DLRと光DLGと光DLBとを合成する。このような第1光学素子55f、第2光学素子55sとして、例えば、ガラス基板上に酸化膜が積層された波長選択フィルタを挙げることができる。この酸化膜の種類や厚みをコントロールすることで、所定の波長よりも長い波長の光と透過し、この波長よりも短い波長の光を反射する構成とすることができる。
こうして、合成光学系55からは、光DLRと光DLGと光DLBとが合成された光が出射する。なお、図7では、第1位相変調素子集合体54Rから出射する光DLRは実線で示され、第2位相変調素子集合体54Gから出射する光DLGは破線で示され、第3位相変調素子集合体54Bから出射する光DLBは一点鎖線で示され、これら光DLR,DLG,DLBはずらして示されている。
合成光学系55によってこれら光DLR,DLG,DLBが合成された光は、カバー40の開口40Hから出射し、この光はフロントカバー12を介して車両用灯具1から出射する。この光はハイビームの配光パターンPHを有しているため、車両用灯具1からハイビームが出射される。
ここで、本実施形態では、上記のように、位相変調素子集合体54R,54G,54Bにおける複数のブロックは、第1実施形態の位相変調素子集合体54と同様に、透過型の回折格子であるブロックB01〜B15とされる。このため、これら位相変調素子集合体54R,54G,54Bにおける複数のブロックは、左右方向に延びる3つの行と上下方向に延びる5つの列が形成されるように二次元配列されている。また、位相変調素子集合体54Rにおける複数のブロックB01〜B15は、ハイビームの配光パターンPHのうち、当該ブロックに入射する光源52Rからのレーザ光LRの伝搬方向に応じた方向に位置する領域A01〜A15に対応している。そして、位相変調素子集合体54RにおけるブロックB01〜B15のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち当該ブロックが対応する領域内のハイビームの配光パターンPHの赤色成分を形成する光を出射する。位相変調素子集合体54Gにおける複数のブロックB01〜B15は、位相変調素子集合体54Rと同様に、ハイビームの配光パターンPHのうち、当該ブロックに入射する光源52Gからのレーザ光LGの伝搬方向に応じた方向に位置する領域A01〜A15に対応している。そして、位相変調素子集合体54GにおけるブロックB01〜B15のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち当該ブロックが対応する領域内のハイビームの配光パターンPHの緑色成分を形成する光を出射する。位相変調素子集合体54Bにおける複数のブロックB01〜B15は、位相変調素子集合体54Rと同様に、ハイビームの配光パターンPHのうち、当該ブロックに入射する光源52Bからのレーザ光LBの伝搬方向に応じた方向に位置する領域A01〜A15に対応している。そして、位相変調素子集合体54BにおけるブロックB01〜B15のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち当該ブロックが対応する領域内のハイビームの配光パターンPHの青色成分を形成する光を出射する。
本実施形態の車両用灯具1では、第1実施形態の車両用灯具1と同様に、それぞれの位相変調素子集合体54R,54G,54Bは並列される複数のブロックB01〜B15を有する。また、第1位相変調素子集合体54Rには所定の広がり角を有するレーザ光LRが入射し、第2位相変調素子集合体54Gには所定の広がり角を有するレーザ光LGが入射し、第3位相変調素子集合体54Bには所定の広がり角を有するレーザ光LBが入射する。このため、光学素子としての位相変調素子集合体54R,54G,54Bに平行光が入射する場合と比べて、位相変調素子集合体54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBの広がり角を大きくし得る。従って、本実施形態の車両用灯具1は、第1実施形態の車両用灯具1と同様にして、構成が複雑化することを抑制しつつ出射するハイビームの配光パターンPHの外形を適切な大きさにし得る。なお、回折格子のように、入射する光を回折し、位相変調パターンに基づく配光パターンの光を出射する位相変調素子は波長依存性を有する。本実施形態の車両用灯具1では、波長帯域の異なるレーザ光LR,LG,LBを対応する位相変調素子集合体54R,54G,54Bにおけるブロックよって回折するため、ハイビームの配光パターンPHの縁近傍での色のにじみを抑制し得る。
また、本実施形態の車両用灯具1は、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する光源52R,52G,52Bを備える。このため、これら光源52R,52G,52Bから出射するこれらレーザ光の強度を調節することにより、出射する光の色を所望の色にすることができる。
なお、本実施形態の車両用灯具1では、光学系ユニット50は、位相変調素子集合体54R,54G,54Bから出射する光DLR,DLG,DLBを合成する合成光学系55を有している。しかし、光学系ユニット50は、これら光DLR,DLG,DLBを合成する合成光学系55を有していなくてもよい。このような場合、位相変調素子集合体54R,54G,54Bのそれぞれから出射する光DLR,DLG,DLBがカバー40の開口40Hから出射してフロントカバー12を介して車両用灯具1の外部に照射されるように、光源52R,52G,52B及び位相変調素子集合体54R,54G,54Bを配置する。このとき、これら光DLR,DLG,DLBは、車両から所定の距離離れた焦点位置において、それぞれの光DLR,DLG,DLBが照射される領域が互いに重なるように照射される。この焦点位置は、例えば車両から25m離れた位置とされる。なお、これら光DLR,DLG,DLBは、この焦点位置においてそれぞれの配光パターンの外形が概ね一致するように照射されることが好ましい。このような構成にすることで、合成光学系55を用いないため、簡易な構成とすることができる。
また、本実施形態では、光学系ユニット50は、互いに異なる波長帯域のレーザ光を出射する3つの光源52R,52G,52Bと、これら光源52R,52G,52Bに対応する3つの位相変調素子集合体54R,54G,54Bとを備えていた。しかし、光源や光源に対応する位相変調素子集合体の数は特に限定されるものではない。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図8を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図8は、本発明の第4実施形態における光学系ユニットを図6と同様に示す図である。図8に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、位相変調素子集合体54に替わって、投影レンズ85を備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と異なる。
投影レンズ85は、光源52から出射するレーザ光Lの光路上に配置され、本実施形態では光軸52A上に配置される。本実施形態では、光源52からのレーザ光Lが入射する側の面である入射面85iは光源52側と反対側に膨らむ凸面状とされ、光源52からのレーザ光Lが出射する側の面である出射面85oは当該光の出射方向側に膨らむ凸面状とされる。この出射面85oには、複数のレンズ86を有するレンズ群86Gが形成されている。複数のレンズ86は、出射面85oにおける光源52からのレーザ光Lが出射する領域全体に、上下方向及び左右方向に並ぶように二次元配列されている。本実施形態では、複数のレンズ86間に隙間が形成されないように当該複数のレンズ86が配置される。また、複数のレンズ86のそれぞれの出射面の形状及び大きさは、これら複数のレンズ86から出射する光がハイビームの配光パターンPHの互いに異なる一部を形成するとともにこれら光によってハイビームの配光パターンPHが形成される形状及び大きさとされる。このため、レンズ群86Gは、光源52からのレーザ光Lが入射しハイビームの配光パターンPHの光を出射する光学素子と理解できる。また、レンズ86をブロックとすると、このレンズ群86Gは並列される複数のブロックを有し、投影レンズ85と複数のブロックとが一体に形成されて投影レンズ85の出射面85oを複数のブロックが兼ねていることになる。
このような複数のレンズ86は、第1実施形態におけるブロックB01〜B15と同様に、複数のレンズ86の二次元配列に対応して二次元配列されてハイビームの配光パターンPHを分割する複数の領域に1対1で対応している。そして、複数のレンズ86のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち、当該レンズ86に入射する光源52からのレーザ光Lの伝搬方向に応じた方向に位置する領域に対応している。そして、複数のレンズ86のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち当該レンズ86が対応する領域内のハイビームの配光パターンPHを形成する光を出射する。つまり、複数のレンズ86のそれぞれの出射面の形状及び大きさは、このような光を出射する形状及び大きさとされる。このため、複数のレンズ86は、光源52からのレーザ光Lの一部が入射しハイビームの配光パターンPHの一部を形成する光を出射する特定のレンズ86と、光源52からのレーザ光Lの他の一部が入射しハイビームの配光パターンPHの他の一部を形成する光を出射する他の特定のレンズ86とを含むと理解できる。なお、それぞれのブロックとしてのレンズ86に入射する光源52からのレーザ光Lの伝搬方向は、上述したように、光源52の光軸52Aを基準とした傾く方向とこの傾きの大きさによって規定される方向である。
なお、これら複数のブロックとしての複数のレンズ86から出射する光によってハイビームの配光パターンPHが形成されるとともに、これら複数のレンズ86における特定のレンズがハイビームの配光パターンPHの一部を形成する光を出射し、これら複数のレンズ86における他の特定のレンズがハイビームの配光パターンPHの他の一部を形成する光を出射する限りにおいて、これら複数のレンズ86から出射する光の配光パターンは特に限定されない。例えば、レンズから出射する光と他のレンズから出射する光とが互いに重なっていてもよい。また、複数のレンズ86は並列されていればよく、レンズの数、形状、大きさ等は特に限定されるものではない。
本実施形態の車両用灯具1では、第1実施形態の車両用灯具1と同様に、レンズ群86Gは並列される複数のブロックとしての複数のレンズ86を有する。また、レンズ群86Gには所定の広がり角を有するレーザ光Lが入射する。このため、光学素子としてのレンズ群86Gに平行光が入射する場合と比べて、レンズ群86Gから出射する光の広がり角を大きくし得る。従って、本実施形態の車両用灯具1は、第1実施形態の車両用灯具1と同様にして、構成が複雑化することを抑制しつつ出射するハイビームの配光パターンPHの外形を適切な大きさにし得る。
一般的に、光の回折を利用して配光パターンを形成する場合よりも、光の屈折を利用して配光パターンを形成する場合の方が、配光パターンの外形を大きくし得る傾向にある。本実施形態の車両用灯具1では、複数のブロックのそれぞれは、1つのレンズ86から成る。このため、上記第1実施形態のように複数のブロックのそれぞれが入射する光を回折して位相変調パターンに基づく配光パターンの光を出射する位相変調素子から成る場合と比べて、車両用灯具1から出射する光の配光パターンの外形をより大きくし得る。
また、本実施形態の車両用灯具1は、光源52から出射するレーザ光Lの光路上に配置される投影レンズ85を更に備え、投影レンズ85と複数のブロックとしての複数のレンズ86とが一体に形成されている。このため、投影レンズ85によって光の広がり角が大きくされた光を発光素子としてのレンズ群86Gに入射させ得る。従って、本実施形態の車両用灯具1は、投影レンズを備えない場合と比べて、出射する光の配光パターンの外形をより大きくし得る。
なお、本実施形態では、複数のブロックとしての複数のレンズ86が投影レンズ85の出射面85oに形成されている。しかし、複数のレンズ86は、投影レンズ85の入射面85iに形成されても良い。この場合、発光素子としてのレンズ群86Gから出射する光の広がり角を投影レンズ85によって大きくし得、投影レンズを備えない場合と比べて、出射する光の配光パターンの外形をより大きくし得る。また、複数のブロックとしての複数のレンズ86に替わって、上記第1実施形態における複数のブロックとしての透過型の回折格子が投影レンズ85の出射面85oや入射面85iに形成されてもよい。
また、本実施形態では、投影レンズ85と複数のブロックとしての複数のレンズ86とが一体に形成されている。しかし、投影レンズ85と複数のブロックとしての複数のレンズ86とは別体に形成されてもよい。この場合、所定の広がり角を有する光源52からのレーザ光Lが光学素子としてのレンズ群86Gに入射すればよく、レンズ群86Gは、投影レンズ85よりも光源52側に配置されてもよく、投影レンズ85よりも光源52側と反対側に配置されてもよい。また、この場合、光学系ユニット50は、投影レンズ85を備えていなくてもよい。
なお、一般的に、光の屈折を利用して配光パターンを形成する場合よりも、光の回折を利用して配光パターンを形成する場合の方が、形成し得る配光パターンの自由度が高い傾向にある。このため、出射する光の配光パターンの自由度を高くする観点では、複数のブロックのそれぞれは、1つのレンズ86から成るよりも、上記第1実施形態におけるブロックのように、入射する光を回折して位相変調パターンに基づく配光パターンの光を出射する位相変調素子から成ることが好ましい。
また、本実施形態では、光学系ユニット50は、1つの光源52と、この光源52に対応する1つの投影レンズ85と、この投影レンズ85に対応する1つのレンズ群86Gとを備えている。しかし、光学系ユニット50は、上記第3実施形態の光学系ユニット50と同様に、複数の光源と、この複数の光源と1対1で対応する複数の投影レンズと、この複数の投影レンズと1対1で対応する複数のレンズ群と、この複数のレンズ群から出射する光を合成する合成光学系とを備えていてもよい。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図9、図10、図11を参照して詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
図9は、本発明の第5実施形態における光学系ユニットを図7と同様に示す図であり、図10は、図9に示す反射装置を概略的に示す正面図である。図9に示すように、本実施形態の光学系ユニット50は、位相変調素子集合体54に替わって、反射装置90と、光吸収板95を備える点において、第1実施形態の光学系ユニット50と異なる。
図9に示すように、反射装置90は、入射する光を反射することによりこの光を所定の配光パターンとする反射部91を有する。本実施形態の反射装置90は、反射部91の反射面91rが前方へ傾き、反射面91rの全体に光源52からのレーザ光Lが照射されるように配置される。図10に示すように、反射部91は、左右方向及び上下方向に二次元配列される複数の反射板92を有し、反射部91の反射面91rはこれら複数の反射板92の反射面によって構成されている。
図11は、図9に示す反射部の一部の厚さ方向の断面を概略的に示す図である。図11に示すように、複数の反射板92のそれぞれは、回転軸92aを中心として傾倒するように支持されており、一方の側に所定の角度傾倒した第1状態と他方の側に所定の角度傾倒した第2状態とに切り換え可能とされている。第1状態とされる反射板92によって反射された光源52からのレーザ光Lは、カバー40の開口40Hから出射する。第2状態とされる反射板92によって反射された光源52からのレーザ光Lは、光吸収性を有する光吸収板95に照射される。つまり、光吸収板95は、このような光が照射される位置に配置される。本実施形態では、これら複数の反射板92の反射面によって反射される光源52からのレーザ光Lのうち、開口40Hから出射する光によってハイビームの配光パターンPHが形成されるように、複数の反射板92のそれぞれの傾倒状態が制御される。このため、反射装置90の反射部91は、光源52からのレーザ光Lが入射しハイビームの配光パターンPHの光を出射する光学素子と理解できる。また、反射板92をブロックとすると、この反射部91は並列される複数のブロックを有していることになる。
このような複数の反射板92は、第1実施形態におけるブロックB01〜B15と同様に、複数の反射板92の二次元配列に対応して二次元配列されてハイビームの配光パターンPHを分割する複数の領域に1対1で対応している。そして、複数の反射板92のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち、当該反射板92に入射する光源52からのレーザ光Lの伝搬方向に応じた方向に位置する領域に対応している。そして、複数の反射板92のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち当該反射板92が対応する領域内のハイビームの配光パターンPHを形成する光を出射する。つまり、複数の反射板92のそれぞれはこのような光を出射するように、傾倒状態が制御される。例えば、所定の時間間隔で第1状態と第2状態とに繰り返し切り換えられる反射板92から開口40Hに向けて出射する光の単位時間当たりの光量は、常時第1状態とされる反射板92から開口40Hに向けて出射する光の単位時間当たりの光量よりも低くなる。このように反射板92の傾倒状態の経時的な違いによって、それぞれの反射板92から開口40Hに向けて出射する光の単位時間当たりの光量は変化する。このような反射板92の傾倒状態に応じた光量の違いにより、複数の反射板92のそれぞれは、ハイビームの配光パターンPHのうち当該反射板92が対応する領域内のハイビームの配光パターンPHを形成する光を出射する。このため、複数の反射板92は、光源52からのレーザ光Lの一部が入射しハイビームの配光パターンPHの一部を形成する光を出射する特定の反射板92と、光源52からのレーザ光Lの他の一部が入射しハイビームの配光パターンPHの他の一部を形成する光を出射する他の特定の反射板92とを含むと理解できる。なお、それぞれのブロックとしての反射板92に入射する光源52からのレーザ光Lの伝搬方向は、上述したように、光源52の光軸52Aを基準とした傾く方向とこの傾きの大きさによって規定される方向である。
なお、これら複数のブロックとしての複数の反射板92から出射する光によってハイビームの配光パターンPHが形成されるとともに、これら複数の反射板92における特定の反射板がハイビームの配光パターンPHの一部を形成する光を出射し、これら複数の反射板92における他の特定の反射板がハイビームの配光パターンPHの他の一部を形成する光を出射する限りにおいて、これら複数の反射板92から出射する光の配光パターンは特に限定されない。例えば、反射板から出射する光と他の反射板から出射する光とが互いに重なっていてもよい。また、複数の反射板は並列されていればよく、反射板の数、形状、大きさ等は特に限定されるものではない。
本実施形態の車両用灯具1では、第1実施形態の車両用灯具1と同様に、反射部91は並列される複数の反射板92を有し、この反射部91には所定の広がり角を有するレーザ光Lが入射する。このため、光学素子としての反射部91に平行光が入射する場合と比べて、反射部91から出射する光の広がり角を大きくし得る。従って、本実施形態の車両用灯具1は、第1実施形態の車両用灯具1と同様にして、構成が複雑化することを抑制しつつ出射するハイビームの配光パターンPHの外形を適切な大きさにし得る。
また、本実施形態の車両用灯具1では、複数のブロックのそれぞれは、1つの反射板92から成る。このため、ブロックが光を透過する光学素子とされる場合と比べて、ブロックにおける光の減衰を抑制することができ、エネルギー効率を向上し得る。
なお、本実施形態では、光学系ユニット50は、1つの光源52と、この光源52に対応する1つの反射装置90とを備えている。しかし、光学系ユニット50は、上記第3実施形態の光学系ユニット50と同様に、複数の光源と、この複数の光源と1対1で対応する複数の反射装置と、この複数の反射装置から出射する光を合成する合成光学系とを備えていてもよい。
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、車両用灯具1はハイビームを照射するものとされたが、本発明は特に限定されない。例えば、車両用灯具1は、ロービームを出射するものとされてもよく、画像を構成する光を路面等の被照射体に照射するものとされても良い。また、車両用灯具が画像を構成する光を路面等の被照射体に照射するものとされる場合、車両用灯具が出射する光の方向や車両用灯具が車両に取り付けられる位置は特に限定されない。
また、上記実施形態では、光源52,52R,52G,52Bは、所定の広がり角を有するレーザ光を出射するものとされた。しかし、光源は所定の広がり角を有する光を出射するものであればよく、例えば、光源は発光ダイオードとされてもよい。
また、上記第1実施形態から第3実施形態では、複数のブロックのそれぞれは位相変調素子である透過型の回折格子とされた。しかし、複数のブロックは、入射する光を回折し位相変調パターンに基づく配光パターンの光を出射する他の位相変調素子とされてもよい。例えば、このような位相変調素子として、反射型の回折格子、反射型の液晶パネルであるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)、透過型の液晶パネルであるLCD(Liquid Crystal display)、シリコン基板上に複数の反射体が形成されたGLV(Grating Light Valve)等が挙げられる。
LCOSは、それぞれ独立して電位が制御される複数の電極が表面にマトリックス状に配置されたシリコン基板、透明電極、及び電極と透明電極とに挟まれる液晶層を備える。
LCOSでは、複数の電極の電位がそれぞれ独立して制御されることによって、それぞれの電極と透明電極とに挟まれる液晶層の屈折率が独立して変化する。このため、透明電極側から入射して電極で反射して透明電極側から出射する光は、電極の電位に応じる屈折率とされる液晶層を透過する。従って、LCOSに入射する光の位相は各電極に対応する部位ごとに調節され、位相分布が変調された光がLCOSから出射する。位相が互いに異なる光は干渉し合って回折するため、LCOSは、各電極に対応する液晶層の屈折率から成るパターンに応じて入射する光を回折し、この屈折率のパターンに基づく配光パターンの光を出射する。なお、この屈折率のパターンは、各電極における電位に応じたパターンとなるため、この屈折率のパターンや各電極における電位のパターンが位相変調パターンと理解できる。LCDでは、反射型の液晶パネルであるLCOSと同様に、LCOSに入射する光の位相が各電極に対応する部位ごとに調節される。このため、各電極に対応する液晶層の屈折率から成るパターンや各電極における電位のパターンが位相変調パターンであり、LCDは入射する光を回折しこの位相変調パターンに基づく配光パターンの光を出射する。なお、LCDでは各電極は透明電極とされる。GLVは、反射型の位相変調素子であり、それぞれの反射体のたわみを電気的に制御することによって、GLVに入射する光の位相を各反射体に対応する部位ごとに調節する。このため、各反射体のたわみ量から成るパターンや各反射体に印加される電圧のパターンが位相変調パターンであり、GLVは入射する光を回折しこの位相変調パターンに基づく配光パターンの光を出射する。