JP2020097049A - 手動溶接装置及びそれを用いた溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶接条件等と作業者識別情報とを関連付けて、溶接作業の工程管理を容易にする。【解決手段】手動溶接装置100は、溶接作業者が手に持って溶接を行う溶接トーチ10に接続された溶接用電源40と、溶接対象物Wの溶接条件及び溶接作業者を識別するための作業者識別情報を入力する入力部51を有し、溶接用電源40を制御する制御装置50と、を少なくとも備えている。【選択図】図2
Description
本発明は、手動溶接装置及びそれを用いた溶接方法に関する。
溶接作業者が溶接トーチを手に持って溶接対象物を溶接する手動溶接装置において、実際の溶接中に溶接パラメータをモニターし、最適な溶接条件を判断可能にする手法が、従来、提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
また、設定された溶接条件と実際にモニターされた溶接パラメータとを一括保存して管理する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
ところで、手動溶接では、溶接作業者の技能の違いにより、出来映え形状を含む溶接品質が大きく異なることが知られている。
しかし、溶接対象物が建設物や船舶等の大型構造物である場合、複数の溶接作業者が並行して手動溶接を行うため、誰がどの箇所を溶接したのかを把握することが難しかった。このため、溶接後の検査結果で溶接不良が発見されても、それが溶接作業者に起因しているものか、あるいはは、溶接条件や溶接装置自体に起因しているものか等の判別が困難であった。また、溶接対象物が大型構造物以外の場合にも同様の問題が生じるおそれがあった。
また、一旦、溶接条件が設定された場合でも、溶接対象物の状態や周囲環境等により、溶接条件が最適値からずれてしまう場合がある。熟練した溶接作業者は、これらの状態や環境の変化に応じて溶接条件を適切に調整できるため、所定以上の溶接品質を担保できるが、経験の浅い溶接作業者では、条件の調整がうまく行えず、溶接不良を発生させることがあった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、溶接条件等と溶接作業者を識別するための情報とを関連付けて管理することで、溶接作業の工程管理を容易に行える手動溶接装置及びそれを用いた溶接方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る手動溶接装置は、溶接作業者が溶接トーチを手に持って溶接を行う手動溶接装置であって、前記溶接トーチに接続された溶接用電源と、溶接対象物の溶接条件及び前記溶接作業者を識別するための作業者識別情報が入力される入力部を有し、前記溶接用電源を制御する制御装置と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
この構成によれば、溶接条件及び作業者識別情報に関連付けて溶接作業の履歴を管理することで、溶接作業の工程管理を容易に行うことができる。また、入力された情報に基づいて溶接作業の改善が図れる。
また、本発明に係る溶接方法は、前記手動溶接装置を用いた溶接方法であって、前記溶接条件及び前記作業者識別情報を前記制御装置に入力する条件入力ステップと、前記溶接作業者が前記溶接トーチを手に持って前記溶接対象物の所定の箇所を溶接する溶接ステップと、前記溶接ステップの終了後に、前記溶接対象物における溶接箇所の検査を行う検査ステップと、前記作業者識別情報と前記検査ステップでの検査結果とに基づいて、前記溶接作業者の溶接技能を判定する技能判定ステップと、を備えたことを特徴とする。
この方法によれば、溶接箇所の検査結果と作業者識別情報とに基づいて、溶接作業者の技能を容易に判定できる。
また、本発明に係る別の溶接方法は、前記手動溶接装置を用いた溶接方法であって、前記溶接条件及び前記作業者識別情報を前記制御装置に入力する条件入力ステップと、前記溶接作業者が前記溶接トーチを手に持って前記溶接対象物の所定の箇所を溶接する溶接ステップと、前記溶接ステップの実行期間中に、溶接パラメータをモニターするモニターステップと、前記溶接ステップの終了後に、前記溶接対象物における溶接箇所の検査を行う検査ステップと、前記作業者識別情報と前記モニターステップでのモニター結果と前記検査ステップでの検査結果とに基づいて、前記溶接条件の修正要否を判断する溶接条件修正要否判断ステップと、を備えたことを特徴とする。
この方法によれば、溶接箇所の検査結果と溶接パラメータのモニター結果と作業者識別情報とに基づいて、溶接条件の修正要否を的確に判断できる。
本発明の手動溶接装置によれば、溶接作業の工程管理を容易に行うことができる。また、溶接作業の改善が図れる。また、本発明の溶接方法によれば、溶接作業者の技能を容易に判定できる。また、溶接条件の修正要否を的確に判断できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
(実施形態1)
[手動溶接装置の構成]
図1は、本実施形態に係る手動溶接装置の構成を示し、手動溶接装置100は、溶接トーチ10とワイヤ送給装置30と溶接用電源40と制御装置50とを有している。
[手動溶接装置の構成]
図1は、本実施形態に係る手動溶接装置の構成を示し、手動溶接装置100は、溶接トーチ10とワイヤ送給装置30と溶接用電源40と制御装置50とを有している。
溶接トーチ10は溶接作業者が手に持って操作するトーチであり、ワイヤ送給装置30から送給される溶接ワイヤ20が内部に保持されている。また、溶接ワイヤ20の先端は溶接トーチ10から所定の長さだけ外に延びるように溶接トーチ10に保持されている。また、図示しないガス供給設備からガス配管11を介してシールドガスが溶接トーチ10に供給されている。
ワイヤ送給装置30は、溶接トーチ10に保持された溶接ワイヤ20を溶接対象物Wに向けて所定の送給独度及び送給量で送給するように構成されている。ワイヤ送給装置30は、溶接用電源40及び制御装置50にそれぞれ接続されている。
溶接用電源40は、所定の溶接条件に従って、ワイヤ送給装置30に保持された溶接ワイヤ20に電力を供給するように構成されている。当該電力、具体的には、溶接ワイヤ20に流れる溶接電流と溶接ワイヤ20に加わる溶接電圧とは、制御装置50からの制御信号に基づいて設定される。
制御装置50は、所定の溶接条件に従って、溶接用電源40を制御し、溶接ワイヤ20に供給される電力を設定している。また、制御装置50は、所定の溶接条件に従って、ワイヤ送給装置30を制御し、溶接ワイヤ20の送給速度及び送給量を制御している。また、制御装置50は、溶接電流や溶接電圧を含む溶接中の各種出力(以下、単に溶接パラメータという)をモニターするように構成されている。制御装置50内部の機能構成については後で述べる。
[制御装置の構成]
図2は、制御装置の機能ブロック図を示し、制御装置50は、入力部51と溶接パラメータモニター部52と記憶部53と制御信号出力部54と判定部55と警告報知部56と表示部57とを機能ブロックとして有している。なお、制御装置50に含まれる機能ブロックは特にこれに限定されず、他の機能ブロックを含んでいてもよい。
図2は、制御装置の機能ブロック図を示し、制御装置50は、入力部51と溶接パラメータモニター部52と記憶部53と制御信号出力部54と判定部55と警告報知部56と表示部57とを機能ブロックとして有している。なお、制御装置50に含まれる機能ブロックは特にこれに限定されず、他の機能ブロックを含んでいてもよい。
入力部51には、溶接対象物Wの溶接条件と溶接作業者を識別するための作業者識別情報とが入力される。ここで、作業者識別情報は、溶接作業者の氏名や作業者としての登録番号等があるが、特にこれに限定されない。溶接作業者が具体的に識別できる情報であればよい。例えば、メールアドレス等でもよい。また、入力部51には、溶接作業終了後に当該溶接箇所を検査した検査結果が入力される。なお、入力部51は、キーボードやタッチパネル等であってもよいし、溶接条件等が保存された記憶媒体の挿入部であってもよい。また、外部サーバー等との通信インターフェース部として構成されていてもよい。なお、作業者識別情報を入力するにあたって、IDカードに入力された情報を、入力部51に設けられたカード読み取り部(図示せず)で読み取るようにしてもよい。
溶接パラメータモニター部52は、実際の溶接中の溶接パラメータを検出し、モニターするように構成されている。なお、説明の便宜上、図2には、溶接電圧を検出する溶接電圧検出部52aと溶接電流を検出する溶接電流検出部52bとのみを示しているが、実際には、例えば、シールドガスの流量や溶接ワイヤ20の送給速度等の他のパラメータも溶接パラメータモニター部52にモニターされている。また、溶接パラメータモニター部52は、モニターされた各溶接パラメータを記憶部53に保存するように構成されている。
記憶部53は、入力部51から入力された溶接条件及び作業者識別情報と、溶接パラメータモニター部52から入力された溶接パラメータとを保存するように構成されている。また、記憶部53は、溶接条件と作業者識別情報と溶接パラメータとを互いに関連付けて保存するように構成されており、この情報はデータベース(DB)として管理される。また、記憶部53には、溶接箇所の検査結果も保存され、必要に応じて、溶接条件等に関連付けられてデータベースとして管理される。なお、記憶部53は、ハードディスクドライブ(HDD)や複数のフラッシュメモリ等で構成されるソリッド・ステート・ドライブ(SSD)等であってもよい。また、記憶部53から必要な情報を読み出すにあたっては、種々の方法を用いることができる。例えば、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)端子を介して情報を読み出してもよいし、別の有線または無線インターフェースを介して情報が読み出されるようにしてもよい。また、記憶部53から情報が読み出された後に、記憶部53に保存された情報の一部または全部が消去されるようにしてもよい。
制御信号出力部54は、入力部51から入力され、記憶部53に保存された溶接条件に従って、溶接用電源40やワイヤ送給装置30に制御信号を送るように構成されている。また、後で述べるように、制御信号出力部54は、判定部55での判定結果に応じて、手動溶接装置100の起動を禁止する、具体的には、溶接用電源40やワイヤ送給装置30の動作を禁止するように構成されている。
判定部55は、記憶部53に保存された溶接条件と作業者識別情報と溶接箇所の検査結果とに基づいて、検査された箇所を溶接した溶接作業者の技能を判定するように構成されている。なお、技能判定にあたって、所定の判定基準が記憶部53に予め保存されていてもよい。この判定基準も含めた上記の各情報を記憶部53から読み出して、判定部55で技能判定が行われる。なお、判定結果は、記憶部53に送られ、当該溶接条件及び作業者識別情報と互いに関連付けられて、記憶部53で保存される。
また、判定部55は、記憶部53に保存された溶接条件と作業者識別情報と溶接パラメータ、さらに溶接箇所の検査結果とに基づいて、検査された箇所の溶接条件の修正が必要か否かを判定するように構成されている。この点については後で詳述する。なお、記憶部53に形状検査の判定基準が予め保存されていれば、判定部55は、入力された溶接箇所の検査結果と当該判定基準とに基づいて検査結果の良否を判定するようにしてもよい。
警告報知部56は、判定部55での判定結果に基づいて、溶接技術者の技能が所定水準に満たない場合は、同じ溶接作業者が同様の箇所を次に溶接する際に警告を発するように構成されている。警告の報知方法は音声でも警告ランプでもアラームでも、表示部57に警告画面を表示する等でもよい。これらのうちの2つ以上を同時に使用してもよい。
表示部57は、入力部51から入力された溶接条件や作業者識別情報、また、溶接パラメータモニター部52でモニターされる溶接パラメータや判定部55での判定結果を表示するように構成されている。通常、表示部57は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイで構成されるが、特にこれらに限定されず、他の構造であってもよい。
[溶接対象物の溶接手順]
前述したように、制御装置50は、溶接作業者の技能を判定する判定部55と、判定部55での判定結果に基づいて溶接作業者に警告を報知する警告報知部56とを有している。この構成を利用して、未熟な溶接作業者が作業することで溶接不良が発生するのを防止できる。図3に示す溶接手順を用いてさらに説明する。
前述したように、制御装置50は、溶接作業者の技能を判定する判定部55と、判定部55での判定結果に基づいて溶接作業者に警告を報知する警告報知部56とを有している。この構成を利用して、未熟な溶接作業者が作業することで溶接不良が発生するのを防止できる。図3に示す溶接手順を用いてさらに説明する。
入力部51を介して溶接対象物Wの溶接条件と溶接作業者を識別するための作業者識別情報とを入力する(ステップS11;条件入力ステップ)。なお、溶接対象物Wの材質や重ね合わせ溶接やT字継手溶接等の溶接種類を入力すると、記憶部53に予め保存された推奨条件が設定されるようにしてもよい。
次に、溶接作業者が溶接トーチ10を手に持って溶接対象物Wの溶接を行う(ステップS12;溶接ステップ)とともに、溶接パラメータモニター部52で溶接中の溶接パラメータをモニターする(ステップS13;モニターステップ)。なお、ステップS12の実行中にステップS13が同時に実行されることは言うまでもない。また、前述したように、ステップS13でモニターされた溶接パラメータは、溶接条件や作業者識別情報と互いに関連付けられて記憶部53に保存される。
次に、溶接箇所の外観検査(ステップS14;検査ステップ)を行い、入力部51を介してその検査結果を記憶部53に保存する(ステップS15)とともに、検査結果に基づいて溶接作業者の技能が第1水準以上であるか否かを判定する(ステップS16)。ここで、記憶部53には、溶接対象物Wの材質や形状に応じて、外観検査結果に基づく複数の判定基準が保存されており、当該判定基準とステップS11で入力された溶接条件及び検査結果に基づいて判定部55で溶接作業者の技能が判定される。なお、判定基準は検査結果とともに入力部51を介して記憶部53または判定部55に入力されるようにしてもよい。また、本実施形態では、技術者の技能判定にあたって、検査された溶接箇所を溶接するのに十分な技能水準として第1水準を設定し、十分とは言えないが、注意して溶接を行えば不良の発生は抑制しうる程度の技能として第2水準を設定している。ただし、これらは、あくまで一例であり、判定基準の区分の仕方や水準数は、適宜変更されうる。
ステップS16での判定結果が肯定的である場合、当該溶接技術者は、対象となる溶接箇所を溶接するのに十分に高い技能を有していると判定され、引き続き、溶接対象物Wにおける同様の箇所の溶接を実行する。
一方、ステップS16での判定結果が否定的である場合、判定部55は、溶接作業者の技能が第2水準以上であるかをさらに判定する(ステップS17)。ステップS17での判定結果が肯定的である場合、次の箇所、この場合は、同様の材質を有する溶接対象物Wにおける同じ形状の溶接箇所を溶接する準備を行う(ステップS18)にあたって、ステップS11と同様に、溶接条件と作業者識別情報とを入力する(ステップS19)。ステップS19で入力された作業者識別情報に基づいて、判定部55は、今回の溶接作業者がステップS11で入力された溶接作業者と同じか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20での判定結果が否定的である場合、ステップS12に戻って、溶接対象物Wの溶接を行う。
ステップS20での判定結果が肯定的である場合、つまり、溶接作業者の技能がこの箇所を溶接するのに十分とは言えない場合、警告報知部56は警告を報知し(ステップS21)、溶接作業者に注意して溶接を行うことを促し、溶接作業者は溶接対象物Wの溶接を進める。
一方、ステップS17での判定結果が否定的である場合、この溶接作業者は、溶接対象物Wにおける当該溶接箇所を溶接する技能が不足していると判定される。次の箇所を溶接する準備を行う(ステップS22)にあたって、ステップS11と同様に、溶接条件と溶接作業者に関する作業者識別情報とを入力する(ステップS23)。ステップS23で入力された作業者識別情報に基づいて、判定部55は、今回の溶接作業者がステップS11で入力された溶接作業者と同じか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24での判定結果が否定的である場合、ステップS12に戻って、溶接対象物Wの溶接を行う。
一方、ステップS24での判定結果が肯定的である場合、つまり、前回の溶接作業者と今回の溶接作業者とが同じである場合、警告報知部56が警告を報知する(ステップS25)だけでなく、制御装置50は、手動溶接装置100の起動を禁止する(ステップS26)。この場合、溶接作業者を交代して、ステップS11に戻って溶接作業を継続する。
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る手動溶接装置100は、溶接作業者が溶接トーチ10を手に持って溶接を行う手動溶接装置100であって、溶接トーチ10に接続された溶接用電源40と、溶接対象物Wの溶接条件及び溶接作業者を識別するための作業者識別情報が入力される入力部51を有し、溶接用電源40を制御する制御装置50と、を少なくとも備えている。
以上説明したように、本実施形態に係る手動溶接装置100は、溶接作業者が溶接トーチ10を手に持って溶接を行う手動溶接装置100であって、溶接トーチ10に接続された溶接用電源40と、溶接対象物Wの溶接条件及び溶接作業者を識別するための作業者識別情報が入力される入力部51を有し、溶接用電源40を制御する制御装置50と、を少なくとも備えている。
手動溶接装置100をこのように構成することで、溶接条件及び作業者識別情報に関連付けて溶接作業の履歴を管理することができる。このことにより、溶接作業の工程管理を容易に行うことができる。また、入力部51に入力された情報、つまり、溶接条件と作業者識別情報とに基づいて溶接作業の改善が図れる。例えば、入力部51に入力された情報と溶接箇所の外観検査結果とに基づいて、溶接条件の見直しや溶接箇所の形状等に応じた適切な溶接作業者の配置等を行うことができる。
また、本実施形態に係る溶接方法は、手動溶接装置100を用いた溶接方法であって、溶接条件及び作業者識別情報を制御装置50に入力する条件入力ステップ(ステップS11)と、溶接作業者が溶接トーチ10を手に持って溶接対象物Wの所定の箇所を溶接する溶接ステップ(ステップS12)と、溶接ステップの終了後に、溶接対象物Wにおける溶接箇所の検査を行う検査ステップ(S34)と、作業者識別情報と検査ステップでの検査結果とに基づいて溶接作業者の溶接技能を判定する技能判定ステップ(ステップS16,S17)と、を備えている。
この方法によれば、溶接箇所の外観検査結果とこれらの情報とに基づいて、溶接作業者の技能を容易に判定できる。このことにより、溶接不良の発生を防止し、溶接工程の歩留まりを向上できる。
技能判定ステップでの判定結果が所定の基準に満たない場合は、同じ溶接作業者が別の溶接対象物Wの同様の箇所を溶接するにあたって、警告を報知するか(ステップS21)、あるいは警告を報知する(ステップS25)とともに手動溶接装置100の起動を禁止する(ステップS26)警告報知ステップ(ステップS18〜S26)をさらに備えているのが好ましい。
このように警告報知ステップを設けることで、溶接不良の発生を確実に防止できる。また、警告を報知することで、溶接作業者が自らの技能を正しく認識できるとともに、技能向上への意識付けを行うことができる。
(実施形態2)
前述したように、制御装置50は、溶接対象物Wの溶接期間中に所定の溶接パラメータをモニターする溶接パラメータモニター部52と、溶接条件と作業者識別情報と溶接対象物Wの溶接期間中にモニターされた溶接パラメータとを互いに関連付けて保存する記憶部53と、を有している。
前述したように、制御装置50は、溶接対象物Wの溶接期間中に所定の溶接パラメータをモニターする溶接パラメータモニター部52と、溶接条件と作業者識別情報と溶接対象物Wの溶接期間中にモニターされた溶接パラメータとを互いに関連付けて保存する記憶部53と、を有している。
この構成を利用して、予め設定された溶接条件をより好適な条件に近づけることができる。図4に示す溶接手順を用いてさらに説明する。
図4は、本実施形態に係る溶接対象物の溶接手順を示し、ステップ31〜S35は、図3に示すステップS11〜S15とそれぞれ同様であるので、説明を省略する。
ステップS36において、溶接箇所の外観検査の結果のOK/NG、つまり、溶接箇所の外観が、所定の判定基準に照らしてであるか良好であるか否かを判定する。なお、ステップS36は、判定部55で実行されてもよいし、図示しない外観検査装置で実行されてもよい。
ステップS36での判定結果がNG、つまり、溶接箇所の形状が不良である場合には、手動溶接装置100か溶接対象物Wか、あるいはその両方に何らかの原因があると推定して、原因調査及び不要原因を取り除く対策を行う(ステップS40)。対策後、再び、溶接作業を行う。
一方、ステップS36での判定結果がOK、つまり、溶接箇所の形状が良好である場合には、作業者識別情報と、これに関連付けられた溶接作業者の技能とに基づいて、当該溶接作業者が熟練作業者であるか否かを判定する(ステップS37;熟練度判定ステップ)。ステップS37での判定結果が否定的、つまり、溶接作業者が熟練作業者ではない場合、必要に応じて、続けて溶接作業を行う。
一方、ステップS37での判定結果が肯定的、つまり、溶接作業者が熟練作業者である場合、ステップ31で入力された溶接条件と、実際の溶接中にモニターされた溶接パラメータとの差分が所定値以上であるか否かをさらに判定し(ステップS38;差分判定ステップ)、ステップS38での判定結果が肯定的である場合、判定部55は、溶接条件の修正が必要であると判断し、モニターされた溶接パラメータの値に基づいて、溶接条件を修正する(ステップS39)。修正された溶接条件は、修正履歴とともに記憶部53に保存される。ステップS38での判定結果が否定的である場合、溶接条件の修正は行わず、必要に応じて、続けて溶接作業を行う。
以上説明したように、本実施形態に係る溶接方法は、溶接条件及び作業者識別情報を制御装置50に入力する条件入力ステップ(ステップS31)と、溶接作業者が溶接トーチ10を手に持って溶接対象物Wの所定の箇所を溶接する溶接ステップ(ステップS32)と、溶接ステップの実行期間中に、溶接パラメータをモニターするモニターステップ(ステップS33)と、溶接ステップの終了後に、溶接対象物Wにおける溶接箇所の検査を行う検査ステップ(ステップS34)と、を備えている。
また、本実施形態に係る溶接方法は、作業者識別情報とモニターステップでのモニター結果と検査ステップでの検査結果とに基づいて、溶接条件の修正要否を判断する溶接条件修正要否判断ステップ(ステップS36〜S38)と、を備えている。
溶接条件修正要否判断ステップは、検査ステップでの検査結果が良好である場合に、作業者識別情報に基づいて、溶接を行った溶接作業者が熟練作業者であるか否かを判定する熟練度判定ステップ(ステップS37)と、熟練度判定ステップで溶接作業者が熟練作業者であると判定された場合に、モニターステップでモニターされた溶接パラメータと溶接条件との差分が所定値以上であるか否かを判定する差分判定ステップ(ステップS38)、とを有し、差分判定ステップでの判定結果が肯定的である場合、溶接条件の修正が必要であると判断する(ステップS39)。
本実施形態によれば、溶接箇所の検査結果と溶接パラメータのモニター結果と作業者識別情報とに基づいて、溶接条件の修正要否を的確に判断できる。
特に、熟練作業者が行った実際の溶接パラメータと設定された条件との差分を評価し、これに基づいて溶接条件の修正要否及び実際の修正を行うことで、修正要否の判断精度及び修正条件の精度を高められ、溶接工程の歩留まり向上や溶接品質向上が図れる。
また、実際の溶接パラメータと設定条件との相違点を分析することで、溶接条件の設定に関する課題点が抽出でき、以降の工程にフィードバックできる。また、溶接条件の修正内容に基づいて、熟練作業者の技能を分析し、他の溶接作業者を教育する上での参考資料とすることができる。このことにより、溶接作業者全体の技能を高められる。
(その他の実施形態)
図1に示す手動溶接装置100において、溶接用電源40に制御装置50が組み込まれて一体化された構成となっていてもよい。
図1に示す手動溶接装置100において、溶接用電源40に制御装置50が組み込まれて一体化された構成となっていてもよい。
また、手動溶接装置100が非消耗電極式のアーク溶接装置である場合、図1において、ワイヤ送給装置30が省略されるのはいうまでもない。この場合、ワイヤ送給装置30に代えて溶加材供給装置(図示せず)を設けてもよい。
なお、図3,4に示すフローチャートはあくまで一例であり、溶接対象物Wを溶接するにあたって、常にこれらの手順を用いてなくてもよい。例えば、溶接作業者の技能を判定するにあたって、ステップS17〜S21を省略してもよい。この場合、溶接作業者の技能は1水準で判定され、この水準に満たない場合は、同じ溶接作業者が同様の箇所を溶接しようとしても、警告が報知され、かつ手動溶接装置100が起動せず、溶接は行えない。
また、図4に示す溶接手順において、溶接パラメータと設定条件との比が所定の範囲内か否かに基づいて溶接条件の修正要否を判断するようにしてもよい。
また、図3に示す溶接手順において、溶接箇所の外観検査結果に代えて、図4のステップS38に示すように、実際の溶接作業中にモニターされた溶接パラメータと設定条件との差分または比に基づいて、溶接作業者の技能が判定されるようにしてもよい。また、実際の溶接作業中に、溶接パラメータと設定条件との差分が所定値以上になった回数で、あるいは溶接パラメータと設定条件との比が所定の範囲から外れた回数で溶接作業者の技能が判定されるようにしてもよい。このようにすることで、溶接作業中に、溶接作業者に警告を発して注意を促せるとともに、必要な場合は溶接を中断させて、溶接不良の発生を防止できる。
また、溶接を行うにあたって、溶接条件だけでなく作業者識別情報を入力させることで、溶接作業者の業務管理を行うことも可能である。例えば、溶接作業者が実際に溶接作業を行った時間や回数等を把握し、管理できる。
本発明の手動溶接装置は、溶接作業の工程管理を容易に行うことができ、特に大型構造物の溶接を行うにあたって有用である。
10 溶接トーチ
20 溶接ワイヤ
30 ワイヤ送給装置
40 溶接用電源
50 制御装置
51 入力部
52 溶接パラメータモニター部
52a 溶接電圧検出部
52b 溶接電流検出部
53 記憶部
54 制御信号出力部
55 判定部
56 警告報知部
57 表示部
100 手動溶接装置
W 溶接対象物
20 溶接ワイヤ
30 ワイヤ送給装置
40 溶接用電源
50 制御装置
51 入力部
52 溶接パラメータモニター部
52a 溶接電圧検出部
52b 溶接電流検出部
53 記憶部
54 制御信号出力部
55 判定部
56 警告報知部
57 表示部
100 手動溶接装置
W 溶接対象物
Claims (6)
- 溶接作業者が溶接トーチを手に持って溶接を行う手動溶接装置であって、
前記溶接トーチに接続された溶接用電源と、
溶接対象物の溶接条件及び前記溶接作業者を識別するための作業者識別情報が入力される入力部を有し、前記溶接用電源を制御する制御装置と、を少なくとも備えたことを特徴とする手動溶接装置。 - 請求項1に記載の手動溶接装置において、
前記制御装置は、
前記溶接対象物の溶接期間中に所定の溶接パラメータをモニターする溶接パラメータモニター部と、
前記溶接条件と前記作業者識別情報と前記溶接対象物の溶接期間中にモニターされた溶接パラメータとを互いに関連付けて保存する記憶部と、をさらに有することを特徴とする手動溶接装置。 - 請求項1または2に記載の手動溶接装置を用いた溶接方法であって、
前記溶接条件及び前記作業者識別情報を前記制御装置に入力する条件入力ステップと、
前記溶接作業者が前記溶接トーチを手に持って前記溶接対象物の所定の箇所を溶接する溶接ステップと、
前記溶接ステップの終了後に、前記溶接対象物における溶接箇所の検査を行う検査ステップと、
前記作業者識別情報と前記検査ステップでの検査結果とに基づいて、前記溶接作業者の溶接技能を判定する技能判定ステップと、を備えたことを特徴とする溶接方法。 - 請求項3に記載の溶接方法において、
前記技能判定ステップでの判定結果が所定の基準に満たない場合は、同じ溶接作業者が別の溶接対象物の前記所定の箇所を溶接するにあたって、警告を報知するか、あるいは警告を報知するとともに前記手動溶接装置の起動を禁止する警告報知ステップをさらに備えたことを特徴とする溶接方法。 - 請求項1または2に記載の手動溶接装置を用いた溶接方法であって、
前記溶接条件及び前記作業者識別情報を前記制御装置に入力する条件入力ステップと、
前記溶接作業者が前記溶接トーチを手に持って前記溶接対象物の所定の箇所を溶接する溶接ステップと、
前記溶接ステップの実行期間中に、溶接パラメータをモニターするモニターステップと、
前記溶接ステップの終了後に、前記溶接対象物における溶接箇所の検査を行う検査ステップと、
前記作業者識別情報と前記モニターステップでのモニター結果と前記検査ステップでの検査結果とに基づいて、前記溶接条件の修正要否を判断する溶接条件修正要否判断ステップと、を備えたことを特徴とする溶接方法。 - 請求項5に記載の溶接方法において、
前記溶接条件修正要否判断ステップは、
前記検査ステップでの検査結果が良好である場合に、前記作業者識別情報に基づいて、溶接を行った溶接作業者が熟練作業者であるか否かを判定する熟練度判定ステップと、
前記熟練度判定ステップで前記溶接作業者が熟練作業者であると判定された場合に、前記モニターステップでモニターされた溶接パラメータと前記溶接条件との差分が所定値以上であるか否かを判定する差分判定ステップ、とを有し、
前記差分判定ステップでの判定結果が肯定的である場合、前記溶接条件の修正が必要であると判断することを特徴とする溶接方法。
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