(本開示に至る経緯)
特許文献1の技術は、外観検査装置により、本溶接を行った後の溶接個所の形状良否判定を行うことが可能である。しかし、形状が良好で無かった場合に、再溶接(リペア溶接)によって修復を行い得るか否かを判定する可否判定や、修復の為の再溶接(リペア溶接)は、人間である溶接作業者が行っているのが現状である。
さらに、溶接の不良個所が判断できた場合のリペア溶接について、ワークのどこからどこまでをリペア溶接するのが適切であるのかの判断も、人間である溶接作業者が自ら行っていた。そのため、作業者の技能レベル差や誤判断により品質が安定しないという潜在的な課題があった。
そこで、本開示においては、本溶接が行われたワークの形状不良個所について、リペア溶接の適切な開始位置および終了位置を装置が決定し、リペア溶接を行う。これにより、溶接品質を向上・安定化させるリペア溶接を行うことができる。
上記のリペア溶接を行うために、溶接ビードの形状を検査装置を用いて検査することで、一定の画一的な検査結果が得られる。この外観検査により溶接ビードの不良個所が見つかった場合、元々の溶接線の軌跡に沿って再溶接を行うことが考えられる。
しかしながら、検査装置による外観検査によって発見された不良個所が、元々の溶接線からずれている場合、適切に補修できないことがある。
そこで、本開示においては、上述のような場合であっても適切なリペア溶接を行う、リペア溶接制御装置およびリペア溶接制御方法を提供する。本開示のリペア溶接制御装置およびリペア溶接制御方法によって、発見された不良個所に対してピンポイントにリペア溶接を行うことが可能となり、リペア溶接の品質が向上する。
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るリペア溶接制御装置およびリペア溶接制御方法の構成および動作を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
図1は、本開示に係るリペア溶接制御装置を含んだリペア溶接システム1000のユースケース例を示す概略図である。本開示に係るリペア溶接システム1000は、ユーザにより入力された情報あるいは予め設定された溶接に関する情報に基づいて、ワークWkに対して本溶接された溶接個所の検査と、溶接個所のうち不良と判定された不良個所の修復溶接(リペア溶接)とを行うシステムである。なお、当該システムは、前述の検査とリペア溶接に加えて、本溶接を行ってもよい。
リペア溶接システム1000は、大きく分けると、溶接や溶接結果の検査に用いるロボット(RB0)と、ロボットやロボットが備える検査機能を制御するコントローラと、コントローラに対する上位装置との3つを備えていてよい。
より具体的に列挙すると、リペア溶接システム1000は、本溶接を行う本溶接ロボットMC1と、本溶接後の溶接個所の外観検査を行う検査ロボットMC2と、本溶接後の溶接個所に不良個所が含まれていた場合のリペア溶接を行うリペア溶接ロボットMC3とを備えていてよい。また、溶接システムは、上述の各種のロボットやロボットが備える検査機能を制御するためのコントローラとして、ロボット制御装置2aと、検査装置3と、ロボット制御装置2bを備えていてよい。このユースケース例においては、本開示に係るリペア溶接制御装置は、検査装置3に相当する。また、リペア溶接システム1000は、上述のコントローラに対する上位装置1を備えていてよい。上位装置1は、モニタMN1と、インターフェースUI1と、外部ストレージSTとに接続されていてよい。
なお、図示は省略したが、上位装置1、あるいはコントローラに含まれる各種の制御装置は、外部ネットワークとの通信を行う通信インターフェース(有線、あるいは無線)を備えていてよい。これらの装置は、外部ネットワークに接続されている場合、外部ネットワーク上に存在する他の機器(典型的にはサーバやPC、種々のセンサ装置等)と通信を行うことができる。
図1において、本溶接ロボットMC1は、リペア溶接ロボットMC3と別のロボットとして示されている。しかし、別のシステムを用いて本溶接を行うか、あるいは手作業で本溶接を行った上で、リペア溶接システム1000が検査とリペア溶接とを実行するような場合には、本溶接ロボットMC1は省略されてもよい。
さらに、本溶接ロボットMC1は、リペア溶接ロボットMC3あるいは検査ロボットMC2のそれぞれと一体であってもよい。例えば、リペア溶接ロボットMC3は、ワークWkを溶接する本溶接と、本溶接によって溶接された溶接個所のうち不良個所を修復するリペア溶接とを、同一のロボットで実行してもよい。また、例えば、検査ロボットMC2は、ワークWkを溶接する本溶接と、本溶接によって溶接された溶接個所のうち不良個所があるか否かの検査とを、同一のロボットで実行してもよい。
なお、検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3とを1つのロボットに統合してよく、本溶接ロボットMC1と、検査ロボットMC2と、リペア溶接ロボットMC3とを1つのロボットに統合してもよい。
図1に示すリペア溶接システム1000は、本溶接ロボットMC1、検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれの台数は、図1に示す数に限定されない。例えば、本溶接ロボットMC1、検査ロボットMC2およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれの台数は、複数台であってもよく、また同じ台数でなくてよい。例えば、リペア溶接システム1000は、本溶接ロボットMC1を1台、検査ロボットMC2を3台、リペア溶接ロボットMC3を2台含んで構成されてよい。これにより、リペア溶接システム1000は、各ロボットの処理範囲あるいは処理速度などに必要に応じて適応的に構成可能である。
上位装置1は、モニタMN1と、インターフェースUI1と、外部ストレージSTと、ロボット制御装置2aと、ロボット制御装置2bとの間で通信可能に接続される。また、図1示す上位装置1は、ロボット制御装置2bを介して検査装置3と接続されるが、ロボット制御装置2bを介さず、検査装置3と直接通信可能に接続されてもよい。
なお、上位装置1は、モニタMN1およびインターフェースUI1を含んで一体に構成される端末装置P1であってもよく、さらに外部ストレージSTを含んで一体に構成されてもよい。この場合、端末装置P1は、例えば溶接を実行するにあたってユーザ(作業者)によって使用されるPC(Personal Computer)である。なお、端末装置P1は、上述したPCに限らず、例えばスマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistat)などの通信機能を有するコンピュータであってよい。
上位装置1は、ユーザ(作業者)による入力操作あるいはユーザ(作業者)によって予め設定された情報に基づいて、ワークWkに対する本溶接、溶接個所の検査および不良個所のリペア溶接を実行するための制御信号のそれぞれを生成する。上位装置1は、生成されたワークWkに対する本溶接を実行するための制御信号および不良個所のリペア溶接を実行するための制御信号をロボット制御装置2aに送信する。また、上位装置1は、本溶接によって溶接された溶接個所の検査を実行するための制御信号をロボット制御装置2bに送信する。
上位装置1は、ロボット制御装置2bを介して検査装置3から受信された溶接個所の検査結果を収集してよい。上位装置1は、受信された検査結果を外部ストレージSTおよびモニタMN1に送信する。なお、図1に示す検査装置3は、ロボット制御装置2bを介して上位装置1と接続されるが、直接的に通信可能に接続されてもよい。
モニタMN1は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)などのディスプレイを用いて構成されてよい。モニタMN1は、検査装置3から受信された溶接個所の検査結果およびアラートを表示する。また、モニタMN1は、例えばスピーカ(不図示)を用いて構成されてよく、アラートを受信した際に音声によるアラートの通知を行ってもよい。すなわち、通知を行うための形態は、視覚情報による通知には限られない。
インターフェースUI1は、ユーザ(作業者)の入力操作を検出するユーザインターフェース(UI:User Interface)であり、マウス、キーボードまたはタッチパネルなどを用いて構成される。インターフェースUI1は、ユーザの入力操作に基づく入力操作を上位装置1に送信する。インターフェースUI1は、例えば溶接線の入力、溶接線に応じた検査基準の設定、リペア溶接システム1000の動作開始あるいは動作終了の操作などを受け付ける。
外部ストレージSTは、例えばハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)またはソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)を用いて構成される。外部ストレージSTは、上位装置1から受信された溶接個所の検査結果を記憶してよい。
ロボット制御装置2aは、上位装置1、本溶接ロボットMC1およびリペア溶接ロボットMC3との間で通信可能に接続される。ロボット制御装置2aは、上位装置1から受信された本溶接に関する制御情報を受信し、受信された制御情報に基づいて本溶接ロボットMC1を制御し、ワークWkに対する本溶接を実行させる。
また、ロボット制御装置2aは、上位装置1から受信されたリペア溶接に関する制御情報を受信し、受信された制御情報に基づいてリペア溶接ロボットMC3を制御し、溶接個所のうち検査装置3によって不良と判定された不良個所に対して、リペア溶接を実行させる。
なお、図1に示すロボット制御装置2aは、本溶接ロボットMC1およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれを制御する。しかし、実施の形態1に係るリペア溶接システム1000は、これに限らず、例えば本溶接ロボットMC1およびリペア溶接ロボットMC3のそれぞれを異なる制御装置を用いて制御してもよい。さらに、実施の形態1に係るリペア溶接システム1000は、1つの制御装置で本溶接ロボットMC1と、検査ロボットMC2と、リペア溶接ロボットMC3と、を制御してもよい。
ロボット制御装置2bは、上位装置1、検査装置3および検査ロボットMC2との間で通信可能に接続される。ロボット制御装置2bは、上位装置1から受信された溶接個所に関する情報(例えば、溶接個所の位置情報など)を受信する。なお、溶接個所は、ワークWkに対する溶接個所(つまり、本溶接により溶接された個所)とリペア溶接によって修復溶接された溶接個所とを含む。ロボット制御装置2bは、受信された溶接個所に関する情報に基づいて検査ロボットMC2を制御し、溶接個所の溶接ビードの形状を検出させる。また、ロボット制御装置2bは、受信された溶接個所に関する情報を溶接個所の形状を検査する検査装置3に送信する。ロボット制御装置2bは、検査装置3から受信された検査結果を上位装置1に送信する。
検査装置3は、ロボット制御装置2bおよび検査ロボットMC2との間で通信可能に接続される。検査装置3は、ロボット制御装置2bから受信された溶接個所に関する情報と、形状検出部500によって生成された溶接個所の溶接ビードの形状データとに基づいて、溶接個所に対する溶接不良の有無を検査(判定)する。検査装置3は、この検査(判定)によって得られた溶接個所のうち不良であると判定された不良個所に関する情報(例えば、不良個所の範囲、不良個所の位置情報、不良要因などを含み得る)を検査結果としてロボット制御装置2bに送信する。また、検査装置3は、不良個所がリペア溶接可能であると判定された場合に、修復の種別や、リペア溶接を行うためのパラメータ等の情報も、検査結果としてロボット制御装置2bに送信してよい。なお、検査装置3は、直接上位装置1と通信可能に接続されてもよい。この場合、検査装置3は、ロボット制御装置2bを介さず、上述の情報を上位装置1に送信可能でもよい。
なお、図1においてはロボット制御装置2bと検査装置3を別体として説明しているが、ロボット制御装置2bと検査装置3とを単一の装置へと統合してもよい。
本溶接ロボットMC1は、ロボット制御装置2aとの間で通信可能に接続され、溶接処理されていないワークに溶接(本溶接)を実行するロボットである。本溶接ロボットMC1は、ロボット制御装置2aから受信された制御信号に基づいて、ワークWkに対して本溶接を実行する。
検査ロボットMC2は、ロボット制御装置2bおよび検査装置3との間で通信可能に接続される。検査ロボットMC2は、ロボット制御装置2bから受信された制御信号に基づいて、溶接個所の溶接ビードの形状データを取得する。
リペア溶接ロボットMC3は、ロボット制御装置2aとの間で通信可能に接続される。リペア溶接ロボットMC3は、ロボット制御装置2aから受信された溶接個所の検査結果(つまり、不良個所に関する情報)に基づいて、不良個所に対してリペア溶接を実行する。
<実施の形態1>
図2は、実施の形態1に係るロボットMCの制御に関する、リペア溶接制御装置を含んだリペア溶接システム1000aの内部構成例を示す図である。なお、図2に示すロボットMCは、図1に示した本溶接ロボットMC1、検査ロボットMC2、およびリペア溶接ロボットMC3が一体となったロボットである。また、説明をわかりやすくするためにモニタMN1、インターフェースUI1、外部ストレージSTに関する構成を省略する。
(ロボットMCの構成例)
ロボットMCは、ロボット制御装置2から受信された制御信号に基づいて、ワークWkに対して本溶接を行う。ロボット制御装置2から受信された制御信号に基づいて、本溶接が行われた後のワークWkにおける溶接個所の検査を実行する。また、ロボットMCは、ロボット制御装置2から受信された制御信号に基づいて、ワークWkの前記溶接個所における、溶接不良個所について、リペア溶接を行う。
本例においては、ロボットMCはアーク溶接を行うロボットである。しかし、ロボットMCは、アーク溶接以外の、例えばレーザ溶接等を行うロボットであってもよい。この場合、図示は省略するが、溶接トーチ400に代わって、レーザヘッドを、光ファイバを介してレーザ発振器に接続してもよい。
本例においてはアーク溶接を行うロボットMCは、マニピュレータ200と、ワイヤ送給装置300と、溶接ワイヤ301と、溶接トーチ400と、形状検出部500と、を含んで構成される。
マニピュレータ200は多関節のアームを備え、ロボット制御装置2のロボット制御部26から受信された制御信号に基づいて、このアームが可動する。その結果、溶接トーチ400と形状検出部500の位置を制御することができる。なお、ワークWkに対する溶接トーチ400の角度も、上記アームの可動によって変更することができる。
ワイヤ送給装置300は、ロボット制御装置2から受信された制御信号に基づいて、溶接ワイヤ301の送給速度を制御する。なお、ワイヤ送給装置300は、溶接ワイヤ301の残量を検出可能なセンサを備えていてもよい。
溶接ワイヤ301は溶接トーチ400に保持されており、また、溶接トーチ400に溶接電源装置4から電力が供給されることで、溶接ワイヤ301の先端とワークWkとの間にアークが発生し、アーク溶接が行われる。なお、溶接トーチ400にシールドガスを供給するための構成等は、説明の便宜上、これらの図示及び説明を省略する。
ロボットMCが備える形状検出部500は、ロボット制御装置2から受信された制御信号に基づいて、溶接個所の溶接ビードの形状を検出し、検出結果に基づいて溶接ビードごとの形状データを取得する。ロボットMCは、取得された溶接ビードごとの形状データを検査装置3に送信する。
形状検出部500は、例えば3次元形状計測センサであり、ロボット制御装置2から受信された溶接個所の位置情報に基づいて、ワークWk上の溶接個所を走査可能に構成されたレーザ光源(不図示)と、溶接個所の周辺を含む撮像領域を撮像可能に配置され、溶接個所に照射されたレーザ光のうち反射されたレーザ光の反射軌跡(つまり、溶接個所の形状線)を撮像するカメラ(不図示)とによって構成される。形状検出部500は、カメラによって撮像されたレーザ光に基づく溶接個所の形状データ(画像データ)を検査装置3に送信する。
なお、上述したカメラ(不図示)は、少なくともレンズ(不図示)とイメージセンサ(不図示)とを有して構成される。イメージセンサは、例えばCCD(Charged-Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の固体撮像素子であり、撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。
(上位装置)
次に、上位装置1について説明する。上位装置1は、ユーザ(作業者)による入力操作あるいはユーザ(作業者)によって予め設定された情報に基づいて、リペア溶接を実行するための制御信号を生成し、生成された制御信号をロボット制御装置2に送信する。上位装置1は、通信部10と、プロセッサ11と、メモリ12と、を含んで構成される。
通信部10は、ロボット制御装置2との間で通信可能に接続される。通信部10は、リペア溶接を実行させるための制御信号をロボット制御装置2に送信する。なお、ここでいうリペア溶接を実行させるための制御信号は、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および溶接電源装置4のそれぞれを制御するための制御信号を含んでよい。
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成されて、メモリ12と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ11は、メモリ12に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、セル制御部13の機能を実現する。
セル制御部13は、インターフェースUI1を用いたユーザ(作業者)による入力操作と、ユーザ(作業者)によって予め設定され、外部ストレージSTに記憶された情報とに基づいて、リペア溶接を実行するための制御信号を生成する。セル制御部13によって生成された制御信号は、通信部10を介してロボット制御装置2に送信される。
メモリ12は、例えばプロセッサ11の各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)と、プロセッサ11の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROM(Read Only Memory)とを有する。RAMには、プロセッサ11により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、プロセッサ11の動作を規定するプログラムが書き込まれている。
また、メモリ12は、ワークWkに関する情報種別、ワークWkごとに予め付与されたワークS/N(Serial Number)、ユーザによって設定された溶接個所(溶接線)ごとに付与された溶接線IDなどを記憶する。
(ロボット制御装置2)
次に、ロボット制御装置2について説明する。ロボット制御装置2は、上位装置1から受信された制御信号に基づいてマニピュレータ200、ワイヤ送給装置300、および溶接電源装置4のそれぞれを制御する。ロボット制御装置2は、通信部20と、プロセッサ21と、メモリ22とを含んで構成される。プロセッサ21は、プログラム編集部23aと、プログラム呼出部23bと、プログラム記憶部23cと、演算部24と、検査装置制御部25と、ロボット制御部26と、溶接電源制御部27と、を含んで構成される。
通信部20は、上位装置1との間で通信可能に接続される。通信部20は、上位装置1から、本溶接や、リペア溶接や、検査装置3による外観検査を実行させるための制御信号を受信する。
プロセッサ21は、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成されて、メモリ22と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ21はメモリ22に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。各部は、プログラム編集部23a、プログラム呼出部23b、プログラム記憶部23c、演算部24、検査装置制御部25、ロボット制御部26および溶接電源制御部27である。各部の機能は、例えば、予め記憶されたリペア溶接を実行するためのリペア溶接プログラムを編集して呼び出す機能、呼び出されたリペア溶接プログラムに基づいて、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300および溶接電源装置4のそれぞれを制御するための制御信号を生成する機能などである。
メモリ22は、例えばプロセッサ21の各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ21の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ21により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、プロセッサ21の動作を規定するプログラムが書き込まれている。
プログラム編集部23aは、通信部20を介して検査装置3から受信された不良個所に関する情報(例えば、検査装置3による判定結果)に基づいて、リペア溶接を実行するためのプログラム(制御信号)を編集する。プログラム編集部23aは、プログラム記憶部23cに予め記憶されているリペア溶接を実行するためのリペア溶接基本プログラムを参照し、受信された不良個所の位置および不良要因、リペア溶接の為のパラメータ(修復パラメータ)等に応じてリペア溶接プログラムを編集する。編集後のリペア溶接プログラムは、プログラム記憶部23cに記憶してよく、また、メモリ22内のRAM等に記憶してもよい。
なお、ここでいうリペア溶接プログラムには、リペア溶接を実行するにあたって、溶接電源装置4、マニピュレータ200、ワイヤ送給装置300、溶接トーチ400、形状検出部500、などを制御するための、電流、電圧、オフセット量、速度、姿勢、方法等のパラメータが含まれていてよい。
プログラム呼出部23bは、メモリ22に含まれるROMや、プログラム記憶部23c等に記憶されている各種プログラムを呼び出す。なお、プログラム呼出部23bは、ロボットMC側にあるプログラムを呼び出してもよい。また、プログラム呼出部23bは、複数のプログラムから、検査装置3による検査結果(判定結果)に応じて、適切なプログラムを選択して呼び出すことができる。すなわち、プログラム呼出部23bは、検査装置3による検査結果(判定結果)に応じてプログラムを変更することができる。
プログラム記憶部23cは、ロボット制御装置2が使用する各種プログラムを記憶する。例えば、上述のリペア溶接基本プログラムや、プログラム編集部23aによって編集済のリペア溶接プログラム等がプログラム記憶部23cに記憶されてよい。
演算部24は、各種の演算を行う機能ブロックである。例えば、リペア溶接プログラムに基づいて、ロボット制御部26によって制御されるマニピュレータ200およびワイヤ送給装置300を制御するための演算等を行う。その他、演算部24は、不良個所の位置に基づいて、不良個所に対するリペア溶接に必要なオフセット量を演算してもよい。
検査装置制御部25は、検査装置3を制御するための制御信号を生成する。この制御信号は通信部20を介して検査装置3へと送信される。反対に、検査装置制御部25は、検査装置3から各種情報を通信部20経由で受信し、当該情報に基づき、例えばリペア溶接プログラムの編集を行う(プログラム編集部23a)、通知を上位装置1に送信する、等の各種処理を行う。
ロボット制御部26は、プログラム呼出部23bによって呼び出された、あるいはプログラム記憶部23cに記憶されたリペア溶接プログラムや、演算部24からの演算結果に基づいて、マニピュレータ200およびワイヤ送給装置300のそれぞれを駆動させる。溶接電源制御部27は、プログラム呼出部23bによって呼び出された、あるいはプログラム記憶部23cに記憶されたリペア溶接プログラムや、演算部24からの演算結果に基づいて、溶接電源装置4を駆動させる。
なお、検査ロボットMC2とリペア溶接ロボットMC3を別体にする構成の場合、前記の不良個所に関する情報は、検査ロボットMC2と接続された検査装置3から、上位装置1を経由して、リペア溶接ロボットMC3と接続されたロボット制御装置2へと送信されてよい。リペア溶接ロボットMC3と接続されたロボット制御装置2のプログラム編集部23aは、通信部20を介して上位装置1から受信された不良個所に関する情報(例えば、後述の検査装置3による判定結果)に基づいて、リペア溶接を実行するためのプログラム(制御信号)を編集してよい。
また、上記の構成例においては、プログラム編集部23aやプログラム呼出部23bがロボット制御装置2側にある形態を説明した。しかし、プログラム編集部やプログラム呼出部を、検査装置3側に設けてもよい。この場合、上述のプログラムの呼出しや、リペア溶接プログラムの編集を検査装置3が行ってよい。プログラムの呼出し元は、検査装置3内に限られず、ロボット制御装置2、あるいはロボット制御装置2に接続されたロボットMC等からプログラムを呼び出してもよい。呼び出されたプログラムは、プログラム編集部で編集され、編集後のプログラムが、リペア溶接プログラムとして検査装置3からロボット制御装置2へと送信され、ロボット制御装置2はこのリペア溶接プログラムを用いて、リペア溶接を行うことができる。
(検査装置3)
次に、検査装置3について説明する。検査装置3は、形状検出部500によって取得された溶接個所ごとの溶接ビードの形状データに基づいて、ワークWkの溶接個所を検査(判定)する。
検査装置3は、通信部30と、プロセッサ31と、メモリ32と、形状検出制御部34と、データ処理部35と、判定閾値記憶部36と、判定部37と、を含んで構成される。
通信部30は、ロボット制御装置2との間で通信可能に接続される。なお、通信部30は、上位装置1との間を直接、通信可能に接続されてもよい。通信部30は、上位装置1またはロボット制御装置2から、溶接個所(溶接線)に関する情報を受信する。溶接個所に関する情報には、例えば、ワーク種別、ワークS/N、溶接線ID等が含まれていてよい。
また、検査装置3は、溶接個所の検査結果を、通信部30を介して、上位装置1またはロボット制御装置2に送信する。
プロセッサ31は、例えばCPUまたはFPGAを用いて構成されて、メモリ32と協働して、各種の処理および制御を行う。具体的には、プロセッサ31はメモリ32に保持されたプログラムおよびデータを参照し、そのプログラムを実行することにより、各部の機能を実現する。各部は、形状検出制御部34、データ処理部35、判定閾値記憶部36および判定部37を含む。各部の機能は、例えば、ロボット制御装置2から受信された溶接個所に応じた検査に関する制御信号に基づいて形状検出部500を制御する機能、形状検出部500から受信された溶接ビードの形状データに基づいて、画像データを生成する機能、および生成された画像データに基づいて、溶接個所に対する検査を実行する機能などである。
なお、機械学習を行う場合、プロセッサ31は、例えば、計算用のGPUを複数備える構成としてよい。この場合、プロセッサ31は、上述のCPU等と併用してもよい。
メモリ32は、例えばプロセッサ31の各処理を実行する際に用いられるワークメモリとしてのRAMと、プロセッサ31の動作を規定したプログラムおよびデータを格納するROMとを有する。RAMには、プロセッサ31により生成あるいは取得されたデータもしくは情報が一時的に保存される。ROMには、プロセッサ31の動作を規定するプログラムが書き込まれている。また、メモリ32には、例えばハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)やソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)等が含まれていてよい。
形状検出制御部34は、形状検出部500から受信された溶接個所における溶接ビードの形状データと、ロボット制御装置2から受信された溶接個所に応じた検査に関する制御信号とに基づいて、形状検出部500を制御させる。形状検出制御部34は、形状検出部500が溶接個所を撮像可能(形状検出可能)な位置に位置すると、レーザ光線を照射させて溶接個所における溶接ビードの形状データを取得させる。形状検出制御部34は、形状検出部500によって取得された形状データを受信すると、この形状データをデータ処理部35に出力する。
データ処理部35は、形状検出制御部34から入力された溶接個所における溶接ビードの形状データを画像データに変換する。形状データは、例えば、溶接ビードの表面に照射されたレーザ光線の反射軌跡からなる形状線の点群データである。データ処理部35は、入力された形状データに対して統計処理を実行し、溶接個所における溶接ビードの形状に関する画像データを生成する。なお、データ処理部35は、溶接ビードの位置および形状を強調するために、溶接ビードの周縁部分を強調したエッジ強調補正を行ってもよい。
判定閾値記憶部36は、溶接個所に応じて判定を実行するために、溶接個所に応じて設定された各閾値を記憶する。各閾値は、例えば溶接個所の位置ずれに関する許容範囲(閾値)、溶接ビードの高さに関する閾値、溶接ビードの幅に関する閾値などである。また、判定閾値記憶部36は、リペア溶接後の各閾値として、顧客から要求される品質を満たす程度の許容範囲(例えば、溶接ビードの高さに関する最小許容値、最大許容値など)を記憶する。
また、判定閾値記憶部36は、溶接個所ごとに検査回数の上限値を記憶してよい。これにより、検査装置3は、リペア溶接によって不良個所を修復する際に所定の回数を上回るものに関して、リペア溶接による不良個所の修復が困難あるいは不可能と判定して、リペア溶接システム1000aの稼働率の低下を抑制することができる。
判定部37は、判定閾値記憶部36に記憶された閾値を参照する等して、溶接個所における溶接ビードの形状データに基づいて、溶接個所についての判定を行う。
判定部37は、不良個所の位置(例えば、不良個所の開始位置と終了位置や、溶接ビードに生じた穴あきの位置や、アンダーカットの位置等)を計測し、不良内容を分析して不良要因を推定する。判定部37は、計測された不良個所の位置および推定された不良要因を溶接個所に対する検査結果(判定結果)として生成し、生成された検査結果を、ロボット制御装置2を介して、上位装置1に送信する。
なお、判定部37は、不良個所がないと判定した場合には、不良個所がないことを通知するアラートを生成し、生成されたアラートを、ロボット制御装置2を介して、上位装置1に送信する。上位装置1に送信されたアラートは、モニタMN1に送信されて表示される。
また、データ処理部35は、溶接個所ごとに検査回数をカウントし、検査回数が判定閾値記憶部36に記憶された回数を超えても溶接検査結果が良好にならない場合、リペア溶接による不良個所の修復が困難あるいは不可能と判定する。この場合、判定部37は、不良個所の位置および不良要因を含むアラートを生成し、生成されたアラートを、ロボット制御装置2を介して、上位装置1に送信する。上位装置1に送信されたアラートは、モニタMN1に送信されて表示される。
なお、検査装置3は、上記以外の内容のアラートを生成してもよい。このアラートもまた、ロボット制御装置2を介して、上位装置1に送信される。上位装置1に送信されたアラートは、モニタMN1に送信されて表示される。
(補修線決定処理)
図3は、実施の形態1に係るリペア溶接制御装置を含んだリペア溶接システム1000aによる、補修線(リペア溶接用溶接線)決定の動作手順例を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは、図2に示したシステム構成に基づいている。なお、リペア溶接制御装置は検査装置3であり、補修線決定処理の処理主体は、検査装置3のプロセッサ31であるという前提で説明する。しかし、リペア溶接制御装置はロボット制御装置2であってもよく、この場合、補修線決定処理の処理主体はプロセッサ21であってもよい。なお、リペア溶接制御装置はこれら以外の装置であっても、後述の補修線の決定処理を行い得ることがある。
図3に示したフローチャートは、本溶接が既に行われ、検査装置3による外観検査によって溶接の不良個所が判明したワークWkについて、補修線を決定する例を示している。
データ処理部35は、ワークWkの溶接個所における、本溶接の不良個所を示す不良個所情報を取得する(ステップSt1)。この不良個所情報については、図4に基づき後述する。また、検査装置3のデータ処理部35は、ワークWkの本溶接における溶接個所を示す情報を取得してよい。この溶接個所を示す情報は、上位装置1またはロボット制御装置2から取得してよい。
次にデータ処理部35は、取得済みの不良個所情報に基づいて、補修線を決定する(ステップSt2)。この補修線の決定について、図4を参照しつつ説明する。
図4は、リペア溶接を例示する平面図である。なお、理解を容易とするため、図4に示すように、x軸、y軸、z軸からなる直交座標系が規定される。x軸は、y軸およびz軸に対して垂直であり、直線状に延びた溶接ビード50の本溶接用溶接線53に沿って延びる。言い換えると、x軸は溶接ビード50の長さ方向に延びる。y軸は、x軸およびz軸に直交し、溶接ビード50の幅方向に延びる。y軸は、溶接ビード50が水平面上に形成されている場合には、水平方向に延びる。z軸は、x軸およびy軸に直交する。z軸は、溶接ビード50が水平面上に形成されている場合には、鉛直方向に延びる。
前記の直交座標系における、各軸の正の方向は、図4における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。ここで、x軸の正方向を「前側」と表現し、x軸の負方向を「後側」と表現し、y軸の正方向側を「左側」と表現し、y軸の負方向側を「右側」と表現し、z軸の正方向側を「上側」と表現し、z軸の負方向側を「下側」と表現することがある。
図4に示した溶接ビード50は、溶接開始点51から溶接終了点52までについて、本溶接用溶接線53に沿って本溶接が行われたことにより形成された溶接ビードである。検査装置3はこの溶接ビード50についての外観検査を行い、不良個所54を示す不良個所情報を取得(値の算出や導出を含む)する(ステップSt1)。なお、不良個所54は図4中の斜線で示されている。この外観検査は、ロボットMCが備える形状検出部500が取得した、溶接個所の溶接ビードの形状データに基づいて検査装置3が行ってよい。また、上述のように、形状検出部500は、例えば3次元形状計測センサである。従って、溶接ビード50の3次元形状を示す形状データを基に、上述の外観検査を行うことができる。
検査装置3が取得した不良個所情報には、不良個所54の位置情報や、不良個所54の不良種別情報などが含まれる。位置情報は、三次元の座標情報等であってよい。また、不良個所情報には、不良個所54の開始点を示す開始点情報と、不良個所54の終了点を示す終了点情報とが含まれていてよい。
図4に示した例において、検査装置3によって判定された、不良個所54の不良種別は「アンダーカット」である。不良種別情報は、不良種別「アンダーカット」に対応するコード情報等であってよい。なお、不良種別はアンダーカットの他にも、「穴あき」「ビード切れ」「ビードの長さ(のずれ)」「ビードの高さ(のずれ)」「溶接線ずれ」等、種々のものがある。
検査装置3のプロセッサ31は、取得した不良個所情報によって示される不良個所54を補修(リペア)するために、前記不良個所情報によって示される位置に応じたリペア溶接用溶接線55を決定する。
ここで、図4に示されているように、リペア溶接用溶接線55は、本溶接用溶接線53とは異なっていてよい。プロセッサ31は、本溶接用溶接線53から、本溶接用溶接線53の溶接線方向(x軸方向)とは異なる方向(図の例では直交方向であるy軸方向だが、厳密に直交方向でなくともよい)に、所定の距離Dだけオフセットさせた位置となるように、リペア溶接用溶接線55を決定してよい。リペア溶接用溶接線55をこのような位置に決定することにより、不良個所54に対してピンポイントにリペア溶接を行うことができるようになる。なお、リペア溶接用溶接線55に基づくリペア溶接は、ロボット制御装置2による制御の下、ロボットMCが実行してよい。
所定の距離Dは、プロセッサ31が、取得済みの不良個所情報に基づいて計算することが可能である。例えばプロセッサ31は、不良個所54の位置情報に基づいて、不良個所54の幅方向(y軸方向)における中点を計算し、本溶接用溶接線53からこの中点までの距離を、所定の距離Dと決定することができる。ただし、プロセッサ31は、これ以外の方法によって、所定の距離Dを算出してもよい。
なお、図4の例においては、リペア溶接用溶接線55と本溶接用溶接線53が平行となっていた。しかし、この2つの溶接線は必ずしも平行になるとは限らない。リペア溶接用溶接線55は、不良個所54(本例ではアンダーカット)を適切に補修するためのリペア溶接で用いられる溶接線である。従って、不良個所54の形状、向き等に応じて、リペア溶接用溶接線55を(位置だけでなく、向きも含めて)決定するのが好適である。そこでプロセッサ31は、不良個所54の開始点56と終了点57とを、前記不良個所54の位置情報から抽出、あるいは算出し、開始点56から終了点57までを結んだ線を、リペア溶接用溶接線55と決定してよい。このようにして決定されたリペア溶接用溶接線55は、本溶接用溶接線53とは平行でなくてもよい。また、開始点56から終了点57までを直線状に結んでもよく、曲線状に結んでも良い(例えば、不良個所が湾曲した形状であった場合、等)。この場合、前述の開始点56と終了点57の他に、リペア溶接用溶接線55が通るべき点(例えば、不良個所54の中心部付近の所定の点など)を特定してもよい。
なお、図4の例においては、リペア溶接用溶接線55と本溶接用溶接線53が重なりも交わりもしないようになっていた。しかし、この2つの溶接線は必ずしも重なりも交わりもしないようになるとは限らない。不良個所54が本溶接用溶接線53に近い場合もしくは重なる場合は、リペア溶接用溶接線55と本溶接用溶接線53が一部分において重なったり交わったりしてもよい。この時、リペア溶接用溶接線55と本溶接用溶接線53とは完全には一致しないものであってよい。
プロセッサ31が上述のようにしてリペア溶接用溶接線55を決定した後、ロボットMCが、ワークWkに対してリペア溶接を行う。リペア溶接用溶接線55を示す情報は、このリペア溶接を制御する為の溶接パラメータ(修正パラメータ)の一つとなる。例えば図2に示されたシステム構成の場合は、リペア溶接用溶接線55を示す情報を含んだ溶接パラメータが、検査装置3からロボット制御装置2へと、通信部30を介して送信される。この溶接パラメータを受信したロボット制御装置2は、ロボット制御部26、溶接電源制御部27による制御の下、ロボットMCを制御して、ワークWkに対するリペア溶接を行う。
なお、ロボット制御装置2のプログラム編集部23aが、上記の溶接パラメータに基づいて、上記のリペア溶接を行うためのプログラムを編集し、編集後のプログラムに基づいて、ロボットMCがリペア溶接を行ってよい。また、プログラム編集部23a、プログラム呼出部23b等を検査装置3が備えて、検査装置3がプログラム編集を実行してもよい。この場合、編集後のプログラムが検査装置3からロボット制御装置2へと送信され、編集後のプログラムを受信したロボット制御装置2の制御の下、上記のリペア溶接を行ってよい。
ここで、リペア溶接に用いられる上述の溶接パラメータ(修正パラメータ)には、種々の情報が含まれていてよい。例えば、図2に基づいて上述した電流、電圧、オフセット量、速度、姿勢、方法等を示す情報が、溶接パラメータ(修正パラメータ)の中に含まれていてよい。
例えば、図4の例における不良個所54の幅(溶接線方向に直交する方向の寸法。図の例ではY軸方向の寸法)が大きい場合、この大きな幅をリペア溶接するために、溶接トーチ400の動かし方を変えて良い。例えば、溶接ビードに現れる軌跡がらせん状になるように溶接トーチ400を動かすことができる。また、ウィービングを行うことも可能である。そこで、プロセッサ31は、不良個所54の幅に応じて、リペア溶接用溶接線55に沿ったリペア溶接における、溶接ビード上の軌跡(らせん状、ウィービング形状、等)を決定してよい。より特定的には、不良個所54の幅が所定の値以上であるか、または所定の値を超える場合に、リペア溶接により形成される溶接ビード上の軌跡が、ウィービング後の形状またはらせん形状となるように、軌跡を決定してよい。プロセッサ31が決定した軌跡を示す情報は、上述の溶接パラメータ(修正パラメータ)に含まれてよい。
次に、図5について説明する。図5は、溶接トーチ400の姿勢の決定を示す概念図である。なお、図4と同様の直交座標系を図5においても図示している。
図5に示されたワークWk上には、本溶接によって溶接ビード50が形成されている。この溶接ビード50は、溶接方法(ウィービングの有無、軌跡、速度、電流、電圧等)によって形状が異なり得るものであるが、例えば図5に示したように凸状を呈することがある。
本溶接を行う際には、ワークWkを水平に配置し、溶接トーチ400を鉛直に配置した状態で、溶接を行う。一方、リペア溶接を行う際には、既に溶接ビード50が形成されているため、溶接トーチ400を鉛直に配置したままでは、リペア溶接を行いづらいことがある。このような場合の典型例を、図5に示している。
本例では不良種別がアンダーカットである不良個所54は、図示したように、溶接ビード50左側の根元付近に存在している。この位置にある不良個所54に対してリペア溶接を行う場合は、溶接トーチ400が不良個所54(リペア溶接個所)にアプローチしやすいように、溶接トーチ400の姿勢を変更するのが好適である。すなわち図5の例においては、溶接トーチ400をY軸方向に傾けるように、溶接トーチ400の角度を変更する。なお、溶接トーチ400を傾ける方向は、Y軸方向と完全に一致しなくともよい。
上記のように溶接トーチ400の姿勢を変更する為に、プロセッサ31は、上述の不良個所情報(特に、不良個所の位置情報)に基づいて、溶接トーチ400の姿勢(本例においては溶接トーチ400を傾ける角度)を決定する。プロセッサ31が決定した溶接トーチ400の姿勢についての情報は、上述の溶接パラメータ(修正パラメータ)に含まれてよい。
なお、溶接を行う装置は、典型的には、図2に示した、アーク溶接を行うロボットMCである。しかし上述のように、ロボットMCは、アーク溶接以外の溶接(レーザ溶接等)を行うロボットであってよい。溶接を行う装置がレーザ溶接を行うものである場合、プロセッサ31は、レーザヘッドの姿勢(レーザヘッドを傾ける角度等)を、溶接トーチ400の場合と同様にして決定してよい。アーク溶接やレーザ溶接以外の、種類の溶接を行う場合も、この溶接を行う装置の姿勢を、プロセッサ31が上記と同様に決定してよい。
また、図3から図5に基づいて行った説明は、不良種別がアンダーカットである不良個所54について行っている。しかし、アンダーカットとは異なる不良種別(穴あき、割れ、ピット等)に属する不良個所についても、本開示に係るリペア溶接制御装置およびリペア溶接制御方法は同様に機能する。
また、検査装置3のプロセッサ31が行った上述の各処理は、ロボット制御装置2のプロセッサ21等の、他の処理手段が行ってもよい。
以上により、プロセッサを備えたリペア溶接制御装置において、プロセッサは、第1の溶接線に沿って形成された溶接ビードの不良個所の少なくとも位置を示す、不良個所情報を取得し、不良個所情報によって示される位置に応じた、第2の溶接線を決定する。そして、第1の溶接線と第2の溶接線とは、重なりも交わりもしないものであってよい。これにより、第1の溶接線とは重なりも交わりもしない第2の溶接線を決定し、第2の溶接線を用いて溶接を行うことができる。
また、第1の溶接線と第2の溶接線とは、少なくとも一部分が重なるが、完全には一致しないものであってよい。これにより、第1の溶接線と少なくとも一部分が重なるが、完全には一致しない第2の溶接線を決定し、第2の溶接線を用いて溶接を行うことができる。
また、プロセッサは、第1の溶接線から、第1の溶接線の溶接線方向とは異なる方向に、所定の距離だけオフセットさせた位置となるように、第2の溶接線を決定する。これにより、不良個所に対してピンポイントにリペア溶接を行うことができる。
また、プロセッサは、不良個所の開始点と、不良個所の終了点とを結んだ線を、第2の溶接線と決定する。これにより、不良個所の形状に応じて、第2の溶接線を柔軟に決定することができる。
また、第2の溶接線は、直線状であってよい。これにより、直線状の第2の溶接線を決定し、第2の溶接線を用いて溶接を行うことができる。
また、プロセッサは、不良個所の幅に応じて、第2の溶接線に沿ったリペア溶接における、溶接ビード上の軌跡を決定する。これにより、不良個所の幅に応じて、適切にリペア溶接を行うことができる。
また、プロセッサは、不良個所の幅が所定の値以上であるか、または所定の値を超える場合に、リペア溶接により形成される溶接ビード上の軌跡が、ウィービング後の形状またはらせん形状となるように、軌跡を決定する。これにより、不良個所の幅が広い場合であっても、適切にリペア溶接を行うことができる。
また、プロセッサは、不良個所情報に基づいて、リペア溶接を行う溶接トーチまたはレーザヘッドの姿勢を決定する。これにより、不良個所の位置等に応じて、溶接トーチまたはレーザヘッドが不良個所にアプローチしやすいようにリペア溶接を制御できる。
また、プロセッサが決定する、溶接トーチまたはレーザヘッドの姿勢は、溶接トーチまたはレーザヘッドを傾ける角度であってよい。これにより、ワークの根元付近等に不良個所が存在していた場合も、溶接トーチまたはレーザヘッドが当該不良個所にアプローチしやすくなる。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。