JP2020096503A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気角が連続的に推定されている場合において、電気角の推定の誤差を修正することが可能なモータ制御装置を提供する。【解決手段】このモータ制御装置100では、電気角推定部12は、d軸に電圧を印加してq軸の漏れ電流がゼロになることに基づく第1の方法と、電圧方程式に基づく第3の方法とのうちの少なくとも一方によりモータ200の電気角が推定されている場合に、相電流の差分および線間電流の差分の少なくとも一方に基づく第2の方法により推定される電気角において、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方により推定された電気角を、第2の方法により推定された電気角に置き換えるように構成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、モータ制御装置に関し、特に、モータの電気角を推定する電気角推定部を備えるモータ制御装置に関する。
従来、モータの電気角を推定する電気角推定部を備えるモータ制御装置が知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
上記特許文献1では、モータに交番電圧を印加するとともに、交番電圧(交流電圧)が印加されることにより流れる電動機電流が検出される。また、検出された電動機電流は、印加されている交番電圧に対して平行な成分と直交する成分とに分離される。ここで、電動機に交番電圧を印加すると、交番電圧のベクトルと回転子磁極軸とが平行または直交している時以外は、交番電圧のベクトルに対して直交する方向にも電流が流れる。この電流を検出することにより、交番電圧のベクトルと磁束軸との間の相差角を検出することができる。そして、相差角がゼロになるように印加する交番電圧のベクトルの位相を調整することにより、磁極位置(電気角)が間接的に推定されている。
上記特許文献2では、適用オブザーバモデルと拡張誘起電圧オブザーバモデルとに基づいてモータの電気角が推定されている。なお、適用オブザーバモデルでは、交流モータの入力(インバータの電圧指令)に基づいて、交流モータの状態(磁束)と出力(電流)とを演算により推定し、推定された電流と電流センサにより検出された電流との偏差に基づいて、電気角の推定が行われる。また、拡張誘起電圧オブザーバモデルでは、回転子の位置情報を有する拡張誘起電圧という状態量を、抵抗およびインダクタンスのような事前に測定可能なモータパラメータと、電流および電圧のようなセンサなどによって検出可能な物理量とから、電気角の推定が行われる。
また、上記特許文献1および上記特許文献2に開示されている電気角の推定では、電気角が連続的に(比較的小さい角度間隔で)推定されていると考えられる。
ここで、上記特許文献1および上記特許文献2に開示されている電気角の推定では、電気角が連続的に(比較的小さい角度間隔で)推定されていると考えられる一方、電気角の推定に誤差が生じる場合があるという課題が見出された。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、電気角が連続的に推定されている場合において、電気角の推定の誤差を修正することが可能なモータ制御装置を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるモータ制御装置は、トルク指令に基づいて設定されたd軸電流指令およびq軸電流指令により、永久磁石が設けられるモータの駆動を制御するモータ制御装置であって、モータの角速度、pwm信号の変調率、および、磁束の変化が非線形である非線形領域であるか否かに応じて、d軸に電圧を印加してq軸の漏れ電流がゼロになることに基づいてモータの電気角を推定する第1の方法と、モータが回転されることにより発生する誘起電圧に起因して生じる相電流の差分および線間電流の差分の少なくとも一方がゼロになることに基づいてモータの電気角を推定する第2の方法と、電圧方程式に基づいて電気角を推定する第3の方法とのうちの少なくとも1つの方法によりモータの電気角を推定する電気角推定部を備え、電気角推定部は、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方によりモータの電気角が推定されている場合に、第2の方法により推定される電気角において、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方により推定された電気角を、第2の方法により推定された電気角に置き換えるように構成されている。
この発明の一の局面によるモータ制御装置では、上記のように、電気角推定部は、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方によりモータの電気角が推定されている場合に、第2の方法により推定される電気角において、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方により推定された電気角を、第2の方法により推定された電気角に置き換えるように構成されている。ここで、第2の方法では、相電流の差分および線間電流の差分の少なくとも一方がゼロになること(0クロスタイミング)を検出することにより、比較的正確に電気角を推定することができる。これにより、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方により、電気角が連続的に推定されている場合において、推定された電気角に誤差が生じる場合でも、0クロスタイミングにおいて、第2の方法により推定された電気角によって誤差を修正することができる。その結果、電気角が連続的に推定されている場合において、電気角の推定の誤差を修正することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、モータの角速度が小さい場合に、第1の方法と第2の方法とによって電気角を推定し、モータの角速度が大きい場合に、第2の方法と第3の方法とによって電気角を推定するように構成されている。
このように構成すれば、モータの角速度が小さい場合において電気角の推定の精度が比較的高い第1の方法が用いられ、モータの角速度が大きい場合に電気角の推定の精度が比較的高い第3の方法が用いられるので、モータの角速度が小さい場合および大きい場合の両方において、電気角の推定を精度よく行うことができる。その結果、モータの角速度が小さい場合および大きい場合の両方において、電気角の推定を精度よく行いながら、電気角の推定の誤差を修正することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、pwm信号の変調率が1以上である過変調の場合、および、磁束の変化が非線形である非線形領域において、第2の方法によって電気角を推定するように構成されている。
ここで、第1の方法および第3の方法では、pwm信号が過変調の場合および非線形領域において、電気角の推定を精度よく行うことができない。そこで、上記ように構成すれば、第2の方法によって0クロスタイミングを検出することにより、pwm信号が過変調の場合および非線形領域においても、比較的正確に電気角を推定することができる。
この場合、好ましくは、電気角推定部は、磁束の変化が非線形である非線形領域における第2の方法において、複数の所定の電気角を推定するとともに、所定の電気角の間の電気角を補間演算により推定するように構成されている。
このように構成すれば、第2の方法では、0クロスタイミングのみ(30度、60度、90度など)でしか電気角の推定が行えないので、補間演算を行うことによって、0クロスタイミング以外のタイミングの電気角を推定することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、第2の方法において、相電流の差分がゼロにならない時、および、線間電流の差分がゼロにならない時、下記の数式4および数式5に基づいて、相電流の差分がゼロになる電気角、および、線間電流の差分がゼロになる電気角を推定するように構成されている。
ここで、θ0t^およびθ01t^は、それぞれ、目標値(所定の電気角)であり、Δi*は、電流の差分、ΔΔ1i*は、Δi*の変化率である。また、*は、d軸またはq軸である。
このように構成すれば、第2の方法によって、0クロスタイミングの検出が行えなかったとき、数式4および数式5に基づいて、電気角を推定することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、第2の方法において、モータの機器定数に基づいて、第2の方法により推定された電気角の遅れ補償を行うように構成されている。
このように構成すれば、第2の方法は、電流(相電流、線間電流)に基づいて電気角を推定するため、電圧に対して位相が遅れる場合がある。そこで、上記のように構成することによって、電気角(位相)の遅れが補償されるので、電気角の推定の精度を向上させることができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、第2の方法は、相電流の差分に基づいた方法および線間電流の差分に基づいた方法に加えて、静止座標系の電流値に基づいた方法、および、2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法を含む。
このように構成すれば、相電流の差分に基づいた方法および線間電流の差分に基づいた方法によって、適切に電気角が推定できない場合でも、静止座標系の電流値に基づいた方法、および、2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法によって電気角を推定することができる。
この場合、好ましくは、静止座標系の電流値に基づいた方法において、3つの相のうち、電流値の絶対値または電流の変化量の絶対値が大きい2つの相の電流値に基づいて、モータの電気角を推定するように構成されている。
このように構成すれば、電流値の値および電流値の変化量に対する耐ノイズ性を向上させることができる。
上記第2の方法が静止座標系の電流値に基づいた方法および2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法を含むモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、静止座標系の電流値に基づいた方法において、d軸電流値およびq軸電流値に基づいて、ノイズを低減するように構成されている。
このように構成すれば、ノイズが低減されるので、電気角の推定の精度を高めることができる。
上記静止座標系の電流値に基づいた方法および2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法を含むモータ制御装置において、好ましくは、静止座標系の電流値に基づいた方法が適用されるモータの角速度は、2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法が適用されるモータの角速度よりも高い。
このように構成すれば、モータの角速度に応じで電気角の推定の精度の高い方法が選択されるので、電気角の推定の精度をより高めることができる。
上記静止座標系の電流値に基づいた方法および2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法を含むモータ制御装置において、好ましくは、モータに供給される電流を1つのシャント抵抗により検出する場合、電気角推定部は、第2の方法において、相電流の差分に基づいた方法および静止座標系の電流値に基づいた方法は用いずに、線間電流の差分に基づいた方法と2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法とのうちの少なくとも一方により電気角を推定するように構成されている。
このように構成すれば、線間電流の差分に基づいた方法と2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法とは、モータに供給される電流を1つのシャント抵抗により検出する場合(相毎に異なる時点に電流値が検出される場合)でも電気角を推定することができる。これにより、モータに供給される電流を1つのシャント抵抗により検出する場合でも、適切に、電気角を推定することができる。
上記静止座標系の電流値に基づいた方法および2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法を含むモータ制御装置において、好ましくは、第2の方法は、モータに供給される電流を1つのシャント抵抗により検出する場合において、オフベクトル状態における誘起電圧に基づいて電気角を推定する方法をさらに含む。なお、「オフベクトル状態」とは、複数のスイッチング素子(上アームおよび下アーム)から構成されるHブリッジ回路(電力変換回路)において、全てのスイッチング素子がオフとなっている状態を意味する。
このように構成すれば、オフベクトル状態における誘起電圧に基づいて電気角を推定する方法は、線間電流の差分に基づいた方法および2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法よりも比較的ロバスト性が高いので、電気角をより適切に推定することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、第2の方法において、モータの角速度が小さいほどサンプリング回数が増加するように、電気角を検出するためのサンプリングを複数回行うとともに、複数のサンプリングの結果について移動平均を行うことにより、電気角を推定するように構成されている。
このように構成すれば、電流(相電流、線間電流)にノイズが含まれる場合でも、ノイズの影響を低減することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、第1の方法において、q軸電流の変化率が大きい場合は、q軸電流の変化率が小さい場合に比べて、第1の方法により電気角を推定するためのサンプリングの間隔を小さくするように構成されている。
このように構成すれば、q軸電流の変化率が大きい場合でも、第1の方法によって適切に電気角を推定することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、第1の方法において、下記の数式6に基づいて、磁束が飽和している際において推定された電気角を補正するように構成されている。
ここで、ωは、角速度、Ktは逆起電力定数、Ldは、d軸インダクタンス、Lqは、q軸インダクタンス、idrefnはd軸電流指令値、iqrefnはq軸電流指令値である。また、添字indは、現在の値、ind0は、モータの磁束が飽和していない領域の値を意味している。また、pは、時間微分である。
このように構成すれば、磁束が飽和している場合でも、適切に電気角を推定することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方により推定された推定値を、第2の方法により推定された電気角に置き換える際に、置き換える前後の値が連続になるようにスムージング処理を行うように構成されている。
このように構成すれば、推定される電気角が急激に変化するのを抑制することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、モータが脱調した際において、モータの角速度がゼロ近傍である場合に、モータの永久磁石に電圧を印加することに基づいてモータの初期位置を推定し、モータの角速度がゼロ近傍よりも大きい場合、電気角の推定を継続し、モータの脱調が所定の期間内に所定の回数以上検出された場合、モータを停止させるように構成されている。
このように構成すれば、モータの角速度がゼロ近傍である場合に、モータの初期位置が推定されるので、その後の電気角の推定を精度よく行うことができる。また、モータの脱調が所定の期間内に所定の回数以上検出された場合、モータが停止されるので、モータが脱調した状態でモータの駆動が継続されるのを抑制することができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、電気角推定部は、推定された電気角を時間微分することにより角速度を算出するとともに、第3の方法により推定された電気角に基づいて算出された角速度を、第2の方法により推定された電気角に基づいて算出された角速度に置き換えるように構成されている。
このように構成すれば、比較的正確に電気角が推定可能な第2の方法により推定された電気角に基づいて角速度が置き換えられるので、電気角の推定の精度を向上させることができるとともに、電気角の推定のロバスト性を向上させることができる。
上記一の局面によるモータ制御装置において、好ましくは、第1の方法において、q軸インダクタンスとd軸インダクタンスとの差が所定の閾値よりも小さい場合、q軸インダクタンスを増加させることと、d軸インダクタンスを低下させることとのうちの少なくとも一方により、q軸インダクタンスとd軸インダクタンスとの差を大きくするように構成されている。
このように構成すれば、q軸インダクタンスとd軸インダクタンスとの差が比較的小さいことに起因して、第1の方法によって電気角の推定が困難な場合でも、上記のように構成することによって、容易に、電気角を推定することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(モータ制御装置の構造)
図1〜図13を参照して、第1実施形態によるモータ制御装置100の構成について説明する。なお、以下の説明において、「ref」は、指令を意味し、「idn」は、時間経過を示すものであり、非線形領域にも拡張されていることを意味している。
(モータ制御装置の構造)
図1〜図13を参照して、第1実施形態によるモータ制御装置100の構成について説明する。なお、以下の説明において、「ref」は、指令を意味し、「idn」は、時間経過を示すものであり、非線形領域にも拡張されていることを意味している。
(モータ制御装置の構成)
図1に示すように、モータ制御装置100は、トルク指令Trefに基づいて設定されたd軸電流指令idrefおよびq軸電流指令iqrefにより、永久磁石(図示せず)が設けられるモータ200の駆動を制御するように構成されている。以下、具体的に説明する。
図1に示すように、モータ制御装置100は、トルク指令Trefに基づいて設定されたd軸電流指令idrefおよびq軸電流指令iqrefにより、永久磁石(図示せず)が設けられるモータ200の駆動を制御するように構成されている。以下、具体的に説明する。
モータ200には、複数の永久磁石が設けられている。また、モータ200は、ロータ(図示せず)に永久磁石が埋め込まれたIPMモータ(Interior Permanent Magnet Motor)、または、ロータの表面に永久磁石が配置されたSPMモータ(Surface Permanent Magnet Motor)からなる。
モータ制御装置100は、トルク/電流変換部1を備えている。トルク/電流変換部1には、電力管理制御部2を介して、トルク指令Trefが入力される。また、トルク/電流変換部1には、後述する電気角推定部12によって推定されたモータ200の角速度ωs^が入力される。そして、トルク/電流変換部1は、トルク指令Trefおよびモータ200の角速度ωs^に基づいて、d軸電流指令idrefidnとq軸電流指令iqrefidnとを算出する。
また、モータ制御装置100は、電流電圧変換部4を備えている。電流電圧変換部4には、トルク/電流変換部1により算出されたd軸電流指令idrefidnおよびq軸電流指令iqrefidnを、それぞれ、d軸電圧指令vdrefおよびq軸電圧指令vqrefに変換する。
具体的には、電流電圧変換部4には、3相/2相変換部13からのd軸電流idおよびq軸電流iqが入力される。そして、電流電圧変換部4では、d軸電流指令idrefとd軸電流idとの差分、q軸電流指令iqrefとq軸電流iqとの差分が、それぞれ、積分される。なお、d軸電流指令idrefとd軸電流idとの差分積分値、q軸電流指令iqrefとq軸電流iqとの差分積分値は、それぞれ、ゲイン(ki、kp)が乗算された状態で加算される。
また、モータ制御装置100は、制限部5を備えている。制限部5は、電流電圧変換部4から出力されるd軸電圧指令vdrefおよびq軸電圧指令vqrefの増大を制限するように構成されている。たとえば、d軸電圧指令vdref(q軸電圧指令vqref)が、所定のしきい値以下の場合には、d軸電圧指令vdref(q軸電圧指令vqref)は、そのままの値で制限部5から出力される。一方、d軸電圧指令vdref(q軸電圧指令vqref)が、リミッタvdlim(vqlim)よりも大きい場合には、d軸電圧指令vdref(q軸電圧指令vqref)は、リミッタvdlim(vqlim)の値(ある一定の値)に変換されて出力される。
また、モータ制御装置100は、2相/3相変換部6を備えている。2相/3相変換部6は、制限部5から出力されるd軸電圧指令vdref(q軸電圧指令vqref)を、逆パーク変換および逆クラーク変換することにより、3相の電圧値に応じた電圧vu、vvおよびvwを出力するように構成されている。
また、モータ制御装置100は、変調部7を備えている。変調部7は、2相/3相変換部6から入力される電圧vu、vvおよびvwに対して、包絡線中心シフト変調を行う。具体的には、変調部7は、電圧vu、vvおよびvwの値を互いに比較して、電圧vu、vvおよびvwの中間値の1/2を補正値とする。そして、変調部7は、電圧vu、vvおよびvwから、補正値を減算し、減算された値を出力するように構成されている。
また、モータ制御装置100は、PWM出力部8を備えている。PWM出力部8は、変調部7から出力された信号(電圧vu、vvおよびvwから補正値が減算された信号)に基づいて、駆動部9に含まれる互いにブリッジ接続された複数のスイッチング素子(図示せず)を駆動するためのPWM信号pwmu、pwmvおよびpwmwを出力する。
また、モータ制御装置100は、駆動部9を備えている。駆動部9は、PWM信号pwmu、pwmvおよびpwmwに基づいて、複数のスイッチング素子9a(図2参照)をオンオフすることにより、モータ200に3相の電圧vu、vvおよびvwを印加する。これにより、モータ200は、印加された電圧vu、vvおよびvwの周期に応じた速度により回転する。
また、モータ制御装置100は、電流制限部10を備えている。電流制限部10は、モータ200の制御(ベクトル制御)に用いられる電流を制限するように構成されている。すなわち、電流制限部10は、モータ200のベクトル制御において、電流制限(Iam、Iame)よりも大きな電流が流れないように電流を制限するように構成されている。
また、モータ制御装置100は、遅れ補償部11を備えている。遅れ補償部11は、モータ200の回転の遅れを補償するように構成されている。一般にモータ200の回転は、ソフトウェアの演算処理やモータ200の応答の遅れ等、複数の要因によって遅れる。そして、遅れ補償部11は、上記の複数の要因を考慮した遅れ時間と、電気角推定部12によって推定された角速度ωs^に基づいて、遅れ角(θc)を、2相/3相変換部6に入力する。なお、電気角推定部12の詳細な構成については、後述する。
遅れ補償部11は、後述する3相/2相変換部13に対して遅れ補償は行わずに、2相/3相変換部6に対して遅れ補償を行うように構成されている。すなわち、遅れ補償は、2相/3相変換部6のみで行い、弱め磁束制御の影響を含む電流が入力される3相/2相変換部13では行われない。
また、モータ制御装置100は、3相/2相変換部13を備えている。3相/2相変換部13は、モータ200の各相の励磁電流Iu、IvおよびIwを、クラーク変換およびパーク変換することにより、q軸電流iqおよびd軸電流idを算出する。
なお、図2に示すように、モータ200の各相の励磁電流Iu、IvおよびIwは、各相毎に単独に検出される。つまり、各相の励磁電流Iu、IvおよびIwは、は、3シャント方式により検出されている。具体的には、複数のスイッチング素子9aから構成されるHブリッジ回路の下流側に、各相毎に、シャント抵抗20が設けられている。そして、これらの3つのシャント抵抗20によって励磁電流Iu、IvおよびIwが検出される。
また、モータ制御装置100は、非干渉制御部14を備えている。非干渉制御部14は、角速度算出部3から入力される角速度ωs^と、3相/2相変換部13から出力されるq軸電流iqおよびd軸電流idに対して、所定の演算(iqとidとの干渉に関する演算)を行い、補正値vd1およびvq1を制限部5に出力する。
また、モータ制御装置100は、モータ200の駆動を制御するパラメータである、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、電機子抵抗Ra、および、電機子鎖交磁束ベクトルψa(トルク定数Kt)を決定(同定)する決定部15を備えている。
また、モータ制御装置100は、決定部15に決定された、電機子鎖交磁束ベクトルψa、d軸インダクタンスLd、および、q軸インダクタンスLqを、磁束の変化が非線形である非線形領域に拡張する非線形化処理部16を備えている。そして、トルク/電流変換部1は、非線形化処理部16により非線形領域まで拡張された、電機子鎖交磁束ベクトルψa、d軸インダクタンスLd、および、q軸インダクタンスLqに基づいて、d軸電流指令idrefidnおよびq軸電流指令iqrefidnを算出するように構成されている。なお、非線形領域への拡張の詳細については、後述する。
図3を参照して、線形領域および非線形領域について説明する。図3に示すように、q軸電流(横軸)の増加に伴って、トルク(縦軸)が増加する。ここで、q軸電流がiqsatよりも小さい場合、トルクは、q軸電流の増加に伴って略線形に(略直線状に)増加する。一方、q軸電流がiqsat以上の場合、トルクは、q軸電流の増加に伴って非線形に増加する。具体的には、トルクの増加量がq軸電流の増加に伴って徐々に小さくなる。すなわち、磁束の変化は、q軸電流の増加に伴って線形に増加した後、非線形に増加する。なお、この明細書では、q軸電流がiqsatよりも小さい領域を、線形領域と呼び、q軸電流がiqsat以上の領域を、非線形領域と呼ぶ。なお、図3では、q軸電流とトルクとの関係が示されているが、d軸電流とトルクとの関係も、図3と同様である。
(電気角推定部の詳細な構成)
次に、電気角推定部12の詳細な構成について説明する。
次に、電気角推定部12の詳細な構成について説明する。
ここで、第1実施形態では、下記の表1に示すように、電気角推定部12は、モータ200の角速度ω^、pwm信号の変調率、および、磁束の変化が非線形である非線形領域であるか否かに応じて、第1の方法と、第2の方法と、第3の方法とのうちの少なくとも1つの方法によりモータ200の電気角を推定するように構成されている。なお、第1の方法とは、d軸に電圧を印加してq軸の漏れ電流がゼロになることに基づいてモータ200の電気角(θvd^)を推定する方法である。また、第2の方法とは、モータ200が回転されることにより発生する誘起電圧に起因して生じる相電流の差分および線間電流の差分の少なくとも一方がゼロになることに基づいてモータ200の電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)を推定する方法である。また、第3の方法とは、電圧方程式に基づいて電気角(θo^)を推定する方法である。また、モータ200の角速度が略0の領域では、初期位置に対応する電気角(Δθp^)が推定されている。以下、具体的に説明する。
(初期位置推定)
初期位置推定では、永久磁石に電圧を印加するとともに、電圧が印加された際の電流のリップルを積分する。そして、この積分値(下記の表2のΣθpd^、Σθpq^)の極性によって、電気角の初期位置(Δθp^)が推定される。なお、Σθpd^、Σθpq^により、突極機および非突極機の初期位置を判別できる。また、初期位置推定は、モータ200の角速度が略0の時に1回のみ行われる。また、Δθp^は、後述する第1の方法(θvd^)の初期値とされる。
初期位置推定では、永久磁石に電圧を印加するとともに、電圧が印加された際の電流のリップルを積分する。そして、この積分値(下記の表2のΣθpd^、Σθpq^)の極性によって、電気角の初期位置(Δθp^)が推定される。なお、Σθpd^、Σθpq^により、突極機および非突極機の初期位置を判別できる。また、初期位置推定は、モータ200の角速度が略0の時に1回のみ行われる。また、Δθp^は、後述する第1の方法(θvd^)の初期値とされる。
(第1の方法)
第1の方法では、d軸に電圧を印加して、q軸に漏れる漏れ電流が0になるように、d軸に印加される電圧が調整される。これにより、電気角(θvd^)を間接的に推定することが可能になる。
第1の方法では、d軸に電圧を印加して、q軸に漏れる漏れ電流が0になるように、d軸に印加される電圧が調整される。これにより、電気角(θvd^)を間接的に推定することが可能になる。
また、電気角推定部12は、第1の方法において、q軸電流の変化率(Δiqref)が大きい場合は、q軸電流が変化率より小さい場合に比べて、第1の方法により電気角を推定するためのサンプリングの間隔を小さくするように構成されている。具体的には、図4に示すように、低速でかつ高負荷時(ωiが大きいとき)には、q軸電流の変化率(Δiqref)が大きくなる。この場合、q軸電流の変化率(Δiqref)の大きさに応じて、サンプリングの間隔(Δt)が小さくされるとともに、pwm信号の幅も小さくされる。これにより、電気角(θvd^)の推定の誤差を低減することが可能になる。また、スイッチング損失を低減することが可能になる。
また、電気角推定部12は、第1の方法において、下記の数式7に基づいて、磁束が飽和している際において推定された電気角(θvd^)を補正するように構成されている。
ここで、ωは、角速度、Ktは逆起電力定数、Ldは、d軸インダクタンス、Lqは、q軸インダクタンス、idrefnはd軸電流指令値、iqrefnはq軸電流指令値である。また、添字indは、現在の値、ind0は、モータの磁束が飽和していない領域の値を意味している。また、pは、時間微分である。
ここで、モータ200の負荷が増大して電流量が増大すると、磁束が飽和する現象が発生する。これにより、局所的なインダクタンスの突極性が非線形的に減少するため、高負荷領域において突極性を利用した磁極位置検出の感度が悪化する。そこで、上記のように、磁束が飽和している際において推定された電気角(θvd^)が補正される。
ここで、第1実施形態では、第1の方法において、q軸インダクタンスLqとd軸インダクタンスLdとの差が所定の閾値よりも小さい場合、q軸インダクタンスLqを増加させることと、d軸インダクタンスLdを低下させることとのうちの少なくとも一方により、q軸インダクタンスLqとd軸インダクタンスLdとの差を大きくするように構成されている。ここで、第1の方法は、モータ200の角速度が小さい場合(低速の場合)に用いられる一方、突極差(LqとLdのと差)が比較的小さい場合、電気角θvd^を推定することが困難になる。そこで、上記のように、LqとLdのと差が大きくされる。
また、トルク低下等の制御制限や干渉が多いために、d軸を調整する。弱め磁束は、モータ200のトルクを低下させるとともに、減磁の要因となる。そして、突極性が比較的小さいモータ200では、d軸およびq軸の各々の磁気飽和点が近い。そして、モータ200を強め磁束の状態にすることにより、磁気飽和領域においてLdを低下させる。これにより、突極差(LqとLdのと差)が大きくされる。その結果、容易に、電気角θvd^を推定することが可能になる。また、モータ200が強め磁束の状態にされることにより、低速の領域において、モータ200のトルクが増大する。つまり、モータ200を起動するトルクが増大するという利点がある。なお、中速および高速の領域では、上記の処理(Ldを低下させること)は行われないので、上記の処理は、中速および高速の領域におけるモータ200の性能に影響を与えない。
なお、コイルのインダクタンスLは、下記の数式8によって表される。
ここで、μは、透磁率、Nは、コイルの巻き数、Sは、コイルの断面積、lは、コイル長である。そして、強め磁束(磁石の磁束方向に電流を増加させること)の状態では、磁気飽和が生じる。これにより、透磁率μが低下する。その結果、Lが低下する。Ldが低下し、Lqが変化しないとすると、突極差(実際には、逆突極差)が増大する。なお、モータ200は、LqがLdよりも大きい(Lq>Ld)、逆突極差を有する。
具体的には、図5に示すように、以下のような処理が行われる。まず、ステップS1において、決定部15により、LqおよびLdが決定(パラメータ同定)される。
次に、ステップS2において、Lq−Ldが、0よりも大きく、かつ、所定の閾値(kΔθ)以下であるか否かが判定される。ステップS2において、yesの場合、ステップS3において、Iinjdcフラグがオン状態にされる。これにより、図6に示すように、モータ200が強め磁束状態となるように、電圧ΔVd(第1の方法において、d軸に印加される電圧)に対して、強め磁束の方向に直流の飽和電圧vdsatが印加される。その結果、d軸の飽和電流(Iinjdc)が流される。
次に、ステップS4において、Lq−Ldが所定の閾値(kΔθ)よりも大きいか否かが判定される。ステップS4において、yesの場合、ステップS5に進んで、電気角θvd^が推定される。
なお、ステップS2において、noの場合、ステップS6に進む。ステップS6では、Lq−Ldが所定の閾値(kΔθ)よりも大きいか否かが判断される。ステップS6において、yesの場合、ステップS5に進んで、電気角θvd^が推定される。また、ステップS6において、noの場合(つまり、Lq−Ldが0よりも小さい場合)、ステップS7に進む。つまり、電気角θvd^の推定が行われない(電気角θvd^の推定ができない)。
また、ステップS4において、noの場合、ステップS8に進んで、Iinjdcフラグがオフ状態にされる。その後、ステップS7に進む。
(第2の方法)
第2の方法は、相電流の差分に基づいた方法(θ0^)、線間電流の差分に基づいた方法(θ01^)、静止座標系の電流値に基づいた方法(θ0e^)、および、2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法(θ01e^)を含む。
第2の方法は、相電流の差分に基づいた方法(θ0^)、線間電流の差分に基づいた方法(θ01^)、静止座標系の電流値に基づいた方法(θ0e^)、および、2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法(θ01e^)を含む。
相電流の差分に基づいた方法では、下記の数式9に基づいて、電気角θ0^が推定される。
ここで、Eは相誘起電圧、Lはリラクタンス、iは電流、Riは抵抗、*は、d軸またはq軸を意味する。0クロス(相電流の差分が0)の近傍では、Ri=0なので、下記の数式10が得られる。
上記の式により、相誘起電圧Eが、ゼロベクトル期間の相電流の時間変化によって表すことができる。これにより、電気角θ0^を推定することが可能にできる。
線間電流の差分に基づいた方法では、下記の数式11に基づいて、電気角θ01^が推定される。
ここで、EvおよびEwは線間誘起電圧、Lはリラクタンス、ivおよびiwは電流、Rは抵抗である。0クロス(線間電流の差分が0)の近傍では、R=0なので、下記の数式12が得られる。
上記の式により、線間誘起電圧Evwが、ゼロベクトル期間の線間電流の時間変化によって表すことができる。これにより、電気角θ01^を推定することが可能にできる。
静止座標系の電流値に基づいた方法では、下記の数式13に基づいて電気角(θ0e^)が推定される。
ここで、iαは、固定座標系であるα軸の電流、iβは、固定座標系であるβ軸の電流を表す。また、pは、時間微分である。つまり、固定座標系のβ軸電流およびα軸電流の時間変化率比から、θ0e^が近似的に求められる。なお、電気角θ0e^は、電気角θ0^が検出できない時のバックアップである。これにより、ゼロクロスの検出の安定性を向上させることが可能になる。また、電気角θ0e^の検出と電気角θ0^の検出とは、or検出である。
ここで、第1実施形態では、静止座標系の電流値に基づいた方法において、3つの相のうち、電流値の絶対値または電流の変化量の絶対値が大きい2つの相の電流値に基づいて、モータ200の電気角を推定するように構成されている。具体的には、たとえば、U相およびV相の電流値の絶対値または電流の変化量の絶対値が大きい(W相よりも大きい)場合、下記の数式14に基づいて、piαおよびpiβが求められる。
また、V相およびW相の電流値の絶対値または電流の変化量の絶対値が大きい(U相よりも大きい)場合、下記の数式15に基づいて、piαおよびpiβが求められる。
また、W相およびU相の電流値の絶対値または電流の変化量の絶対値が大きい(V相よりも大きい)場合、下記の数式16に基づいて、piαおよびpiβが求められる。
また、電気角推定部12は、静止座標系の電流値に基づいた方法において、d軸電流値およびq軸電流値に基づいて、ノイズを低減するように構成されている。具体的には、下記の数式17に基づいて、ノイズが低減される。
ここで、iqおよびidは、それぞれ、q軸電流およびd軸電流である。
また、2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法では、下記の数式18に基づいて電気角(θ01e^)が推定される。
ここで、iu、ivおよびiwは、それぞれ、u相の電流、v相の電流およびw相の電流である。また、Rは、抵抗である。なお、電気角θ01e^は、電気角θ01^が検出できない時のバックアップである。これにより、ゼロクロスの検出の安定性を向上させることが可能になる。また、電気角θ01e^の検出と電気角θ01^の検出とは、or検出である。
また、第1実施形態では、電気角推定部12は、第2の方法において、相電流の差分がゼロにならない時、および、線間電流の差分がゼロにならない時、下記の数式21および数式22に基づいて、相電流の差分がゼロになる電気角、および、線間電流の差分がゼロになる電気角を推定するように構成されている。
ここで、θ0t^およびθ01t^は、それぞれ、目標値(0度から60度毎の電気角、30度か60度毎の電気角)であり、Δi*は、電流の差分、ΔΔ1i*は、Δi*の変化率である。また、*は、d軸またはq軸である。
(第3の方法)
第3の方法は、下記の数式23に基づいて電気角(θo^)が推定される。なお、第3の方法は、適応オブザーバモデルと呼ばれる。
ここで、λは、電機子巻線の界磁磁束鎖交数であり、添え字αおよびβは、固定座標系(α軸、β軸)である。
第3の方法は、下記の数式23に基づいて電気角(θo^)が推定される。なお、第3の方法は、適応オブザーバモデルと呼ばれる。
ここで、第1実施形態では、上記の表1に示すように、電気角推定部12は、モータ200の角速度が小さい場合(低速)に、第1の方法(θvd^)と第2の方法(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)とによって電気角を推定する。なお、低速のうちの微低速の領域では、θ0e^の推定は行われない。また、モータ200の角速度が大きい場合(中速、高速)に、第2の方法(θ0^、θ01^、θ0e^)と第3の方法(θo^)とによって電気角を推定するように構成されている。なお、モータ200の角速度が中速の場合、第1の方法(θvd^)と第3の方法(θo^)との切り替え(混合演算)が行われる。また、電気角推定部12は、pwm信号の変調率が1以上である過変調の場合、および、磁束の変化が非線形である非線形領域において、第2の方法(θ0^、θ0e^)によって電気角を推定するように構成されている。
具体的には、電気角θ0^の推定は、0度から60度毎に行われる。詳細には、モータ200が時計回りに回転する場合では、0度、60度、120度、180度、240度および300度の電気角θ0^が推定される。また、モータ200が反時計回りに回転する場合では、0度、−60度、−120度、−180度、−240度および−300度の電気角θ0^が推定される。
また、電気角θ01^の推定は、30度から60度毎に行われる。詳細には、モータ200が時計回りに回転する場合では、30度、90度、150度、210度、270度および330度の電気角θ01^が推定される。また、モータ200が反時計回りに回転する場合では、−30度、−90度、−150度、−210度、−270度および−330度の電気角θ01^が推定される。
また、第1実施形態では、電気角推定部12は、磁束の変化が非線形である非線形領域における第2の方法において、複数の所定の電気角(θ0e^のみ、または、θ0^およびθ0e^の両方)を推定するとともに、所定の電気角の間の電気角を補間演算により推定するように構成されている。そして、下記の数式24に基づいて、所定の電気角(60度毎の電気角)の間の電気角θ0^tを補間演算により推定する。
ここで、θ0*^t1は、ある電気角(たとえば、0度)、t1は、あるゾーン(たとえば、0度から60度の間)に入った時間、dωは、電気角の加速度、ω0^は、モータ200の角速度の推定値、kjは、dωのマップ(図7参照)である。上記の式により、図8に示すように、補間演算により電気角θ0^tが推定される。
また、過変調である場合または非線形領域において、各相の電圧指令が比較的大きく、0クロス検知できるタイミングが無い場合(電流変化率0クロスが検出ができない場合)、強制的に0ベクトル(アクティブ0ベクトル)を印加する。具体的には、電気角θ0^が、0度から60度毎の近傍において、アクティブ0ベクトルが印加される。これにより、電気角θ0e^が推定される。
また、サーボモータの応答性が要求される場合では、比較的低速(表1の中速)から誘起電圧が発生する領域までの電気角の推定を行う必要があるので、0クロスに基づく電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)に加えて、電気角θo^が推定される。一方、サーボモータの応答性が要求されない場合では、0クロスに基づく電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)のみの推定が行われる。これにより、モータ制御装置100の負荷を軽減することが可能になる。
ここで、第1実施形態では、電気角推定部12は、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方によりモータの電気角が推定されている場合に、第2の方法により推定される電気角において、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方により推定された電気角を、第2の方法により推定された電気角に置き換える(オーバライドする)ように構成されている。具体的には、表1に示すように、角速度が低速の領域では、第1の方法により電気角θvd^が推定されている際に、所定の電気角(0度から60度毎の電気角、または、30度から60度毎の電気角)において、第1の方法により推定された電気角θvd^が、第2の方法により推定される電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^のいずれか)に置き換えられる(オーバライドされる)。また、角速度が中速の領域では、第1の方法により電気角θvd^または第3の方法により電気角θo^が推定されている際に、所定の電気角において、第1の方法により推定された電気角θvd^または第3の方法により推定された電気角θo^が、第2の方法により推定される電気角(θ0^、θ01^、θ0e^のいずれか)に置き換えられる。また、角速度が高速の領域では、第3の方法により電気角θo^が推定されている際に、所定の電気角において、第3の方法により推定された電気角θo^が、第2の方法により推定される電気角(θ0^、θ01^、θ0e^のいずれか)に置き換えられる。
なお、図9に示すように、角速度が中速の領域では、第1の方法による電気角θvd^の推定と、第3の方法による電気角θo^の推定とが切り替えられる。比較的角速度(|ω^|)が小さい場合、第1の方法によって電気角θvd^が推定され、比較的角速度が大きい場合、第3の方法によって電気角θo^が推定される。なお、角速度が中程度の場合、第1の方法と第3の方法との混合演算が行われる。
また、オーバライドは、相電流の差分または線間電流の差分がゼロになるタイミングで行われる。具体的には、相電流の差分がゼロ(ゼロクロス)になるタイミングは、0度から60度毎である。線間電流の差分がゼロになるタイミングは、30度から60度毎である。
また、上記のゼロクロスがしばらく検知できない場合、たとえば、0度から60度毎の電気角の近傍で、強制的にゼロベクトル(アクティブゼロベクトル)が印加される。これにより、第2の方法によって、電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)が検出される。
また、過変調の場合および非線形領域では、たとえば、0度から60度毎の電気角の近傍で、強制的にゼロベクトル(アクティブゼロベクトル)が印加される。これにより、第2の方法によって、電気角(θ0^、θ0e^)が検出される。
また、電気角の推定値は、電気角推定用の推定値と、制御用(速度制御、位置制御)の電気角の推定値とを含む。そして、電気角推定用の推定値は、上記第1〜第3の方法により推定された推定値そのもの(即値、ωs^、図10の太い実線参照)である。一方、図10に示すように、オーバライドが行われることによって、推定される電気角が離散値になる(急激に値が変化する)場合があるため、制御用の電気角の推定値では、スムージング(図10の太い点線参照)が行われる。具体的には、オーバライドされる前の最新の電気角の値に対して、角速度ωに比例するようにスムージングが行われる。また、角速度推定用の電気角は、スムージングが行われない。これにより、電気角(角速度)の推定の精度を維持しながら、制御性の向上を図ることが可能になる。
また、表1に示すように、角速度が比較的速い領域(高速)では、オーバライドは、電気角θ0e^を用いて行われる。変調率が高くなると正弦波駆動からのズレが大きくなり、電気角θ0^を推定する方法では誤差が大きくなるためである。なお、角速度が比較的速い領域(高速)では、電気角θ0e^のみによって精度よく電気角の推定が可能になる(下記の数式25参照)。
なお、表1の「(○)」は、電気角θ0^による推定も可能である一方、上記の理由により、電気角θ0^による推定を行わないことを意味している。これにより、モータ制御装置100の負荷が軽減されるとともに、電気角の推定の応答性を向上させることが可能になる。上記の数式13で表される電気角θ0e^は、境界条件がないので、角速度が比較的速い領域においてゼロクロスが検出できなくても、上記の数式13で表される電気角θ0e^によって、電気角を検出することが可能である。
また、静止座標系の電流値に基づいた方法(θ0e^)が適用されるモータの角速度は、2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法(θ01e^)が適用されるモータの角速度よりも高い。具体的には、下記の数式26に基づいて、電気角θe^が推定される。
ここで、kθ01eおよびkθ0eは、図11に示される特性を有する係数である。kθ01eは、角速度|ω^|が比較的小さい領域で1であり、角速度|ω^|が比較的大きい領域で0である。また、kθ01eは、角速度|ω^|が中程度の領域では、1から0に直線的に減少する。また、kθ0eは、角速度|ω^|が比較的小さい領域で0であり、角速度|ω^|が比較的大きい領域で1である。また、kθ0eは、角速度|ω^|が中程度の領域では、0から1に直線的に増加する。これにより、電気角の推定の精度を向上させることが可能になる。
また、電気角推定部12は、第2の方法において、電気角を検出するためのサンプリングを複数回行うとともに、複数のサンプリングの結果について移動平均を行うことにより、電気角を推定するように構成されている。たとえば、図12に示すように、電気角θ0^および電気角θ01^の推定において、0クロスする近傍の電気角において、複数回(たとえば、5度毎に10回)のサンプリングが行われる。そして、複数回のサンプリングの差分移動平均の符号が変化することに基づいて、0クロスが検出される。また、電気角θ0e^および電気角θ01e^の推定においても同様に、複数回のサンプリングが行われるとともに、サンプリングされた結果の移動平均に基づいて、電気角θ0e^および電気角θ01e^が推定される。なお、サンプリングの回数は、モータ200の角速度ω^が小さいほど増加する。たとえば、サンプリングの回数は、モータ200の角速度ω^が小さくなるに従って指数関数的に増加する。
また、上記のオーバライドは、pwm信号の前半と後半とで行われる。一方、オーバライドを、pwm信号の周期毎(1周期毎、2周期毎)などによって行ってもよい。第2の方法(電流リップルを利用した電気角推定)では、モータ200の機器定数La/Ra(電気時定数)が大きい場合、0クロスが検出できない場合があるからである。
また、第1実施形態では、電気角推定部12は、第2の方法において、モータ200の機器定数に基づいて、第2の方法により推定された電気角の遅れ補償を行うように構成されている。具体的には、角速度|ω^|が比較的大きい場合、モータ200の機器定数La/Ra(電気時定数)の影響を無視することができなくなるので、第2の方法により推定された電気角の位相の補正が行われる。具体的には、図13に示すように、第2の方法によって推定された電気角θ0*^(θ0^、θ01^)に対して、図13のマップに示される電気角(deg)が差分されることにより、補正が行われる。なお、電気角θ0e^、θ01e^に関しても、必要に応じて同様に補正される。
また、第1実施形態では、電気角推定部12は、推定された電気角を時間微分することにより角速度ω^を算出する。たとえば、第1の方法により推定された電気角θvd^に基づいて、角速度ωvd^が算出される。また、第2の方法により推定された電気角θ0^、θ01^、θ0e^およびθ01e^に基づいて、角速度ω0^が算出される。また、第3の方法により推定された電気角θo^に基づいて、角速度ωo^が算出される。そして、第3の方法により推定された角速度ωo^は、第2の方法により角速度ω0^が推定された際に、第2の方法により推定された角速度ω0^に置き換えられる(オーバライドされる)。なお、角速度ω^は、最新の推定された電気角の時間微分に基づいて算出される。
なお、上記の電気角の推定と同様に、角速度においてもオーバライドが行われることによって、推定される角速度が離散値になる(急激に値が変化する)場合があるため、制御用の角速度の推定値では、スムージングが行われる。また、角速度推定用の角速度は、スムージングが行われない。
また、第1実施形態では、表1に示すように、電気角推定部12は、モータ200が脱調した際において、モータ200の角速度ω^がゼロ近傍である場合に、モータ200の永久磁石に電圧を印加することに基づいてモータ200の初期位置(Δθp^)を推定する。また、電気角推定部12は、モータ200の角速度ω^がゼロ近傍よりも大きい場合、第1の方法(θvd^)および第2の方法(θ0^のみ、または、θ0^およびθ0e^の両方)によって、電気角の推定を継続する。また、電気角推定部12は、モータ200の脱調が所定の期間内に所定の回数以上検出された場合、モータ200を停止させるように構成されている。推定された電気角と、0クロスのタイミングとのズレが大きい場合、結果として脱調が発生する。一方、第1実施形態では、0クロスのタイミングにおいてオーバライドが行われているので、論理的には脱調は発生しない。しかしながら、角速度ω^の急変時などにおいて脱調が発生する場合がある。そこで、上記のような処置が行われる。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、電気角推定部12は、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方によりモータ200の電気角(θvd^、θo^)が推定されている場合に、第2の方法により推定される電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)において、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方により推定された電気角(θvd^、θo^)を、第2の方法により推定された電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)に置き換えるように構成されている。ここで、第2の方法では、相電流の差分または線間電流の差分がゼロになること(0クロスタイミング)を検出することにより、比較的正確に電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)を推定することができる。これにより、第1の方法と第3の方法とのうちの少なくとも一方により、電気角(θvd^、θo^)が連続的に推定されている場合において、推定された電気角(θvd^、θo^)に誤差が生じる場合でも、0クロスタイミングにおいて、第2の方法により推定された電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)によって誤差を修正することができる。その結果、電気角が連続的に推定されている場合において、電気角の推定の誤差を修正することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、モータ200の角速度ω^が小さい場合において電気角θvd^の推定の精度が比較的高い第1の方法が用いられ、モータ200の角速度ω^が大きい場合に電気角θo^の推定の精度が比較的高い第3の方法が用いられるので、モータ200の角速度ω^が小さい場合および大きい場合の両方において、電気角の推定を精度よく行うことができる。その結果、モータ200の角速度ω^が小さい場合および大きい場合の両方において、電気角の推定を精度よく行いながら、電気角の推定の誤差を修正することができる。
また、第1の方法および第3の方法では、pwm信号が過変調の場合および非線形領域において、電気角の推定を精度よく行うことができない。そこで、第2の方法によって0クロスタイミングを検出することにより、pwm信号が過変調の場合および非線形領域においても、比較的正確に電気角を推定することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第2の方法では、0クロスタイミングのみ(30度、60度、90度など)でしか電気角の推定が行えないので、補間演算を行うことによって、0クロスタイミング以外のタイミングの電気角を推定することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第2の方法によって、0クロスタイミングの検出が行えなかったとき、数式21および数式22に基づいて、電気角を推定することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第2の方法は、電流(相電流、線間電流)に基づいて電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)を推定するため、電圧に対して位相が遅れる場合がある。そこで、上記のように構成することによって、電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)(位相)の遅れが補償されるので、電気角(θ0^、θ01^、θ0e^、θ01e^)の推定の精度を向上させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、相電流の差分に基づいた方法(θ0^)および線間電流の差分に基づいた方法(θ01^)によって、適切に電気角が推定できない場合でも、静止座標系の電流値に基づいた方法(θ0e^)、および、2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法(θ01e^)によって電気角を推定することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電流値の絶対値または電流の変化量の絶対値が大きい2つの相の電流値に基づいて、モータ200の電気角を推定することによって、電流値の値および電流値の変化量に対する耐ノイズ性を向上させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、d軸電流値およびq軸電流値に基づいてノイズが低減されるので、電気角(θ0e^)の推定の精度を高めることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、モータ200の角速度に応じで電気角の推定の精度の高い方法(θ0e^、θ01e^)が選択されるので、電気角の推定の精度をより高めることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電流(相電流、線間電流)にノイズが含まれる場合でも、ノイズの影響を低減することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、q軸電流の変化率が大きい場合でも、第1の方法によって適切に電気角(θvd^)を推定することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、磁束が飽和している場合でも、適切に電気角(θvd^)を推定することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、推定される電気角(θ0^、θ01^)が急激に変化するのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、モータ200の角速度ω^がゼロ近傍である場合に、モータ200の初期位置が推定されるので、その後の電気角の推定を精度よく行うことができる。また、モータ200の脱調が所定の期間内に所定の回数以上検出された場合、モータ200が停止されるので、モータ200が脱調した状態でモータ200の駆動が継続されるのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、比較的正確に電気角が推定可能な第2の方法により推定された電気角θ0^、θ01^、θ0e^およびθ01e^に基づいて角速度ω0^が置き換えられるので、電気角の推定の精度を向上させることができるとともに、電気角の推定のロバスト性を向上させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、q軸インダクタンスLqとd軸インダクタンスLdとの差が比較的小さいことに起因して、第1の方法によって電気角θvd^の推定が困難な場合でも、q軸インダクタンスLqとd軸インダクタンスLdとの差が大きくされることにより、容易に、電気角θvd^を推定することができる。
[第2実施形態]
図14〜図18を参照して、第2実施形態によるモータ制御装置100の構成について説明する。第2実施形態では、3つのシャント抵抗20によって電流が検出される上記第1実施形態と異なり、1つのシャント抵抗20によって電流が検出(1シャント方式)される。
図14〜図18を参照して、第2実施形態によるモータ制御装置100の構成について説明する。第2実施形態では、3つのシャント抵抗20によって電流が検出される上記第1実施形態と異なり、1つのシャント抵抗20によって電流が検出(1シャント方式)される。
具体的には、図14に示すように、モータ制御装置100の駆動部109には、シャント抵抗20(電流検出部)が設けられている。たとえば、シャント抵抗20は、電源部210からの電力をモータ200に供給する3相交流の直流側(正側:P)を流れる電流を検出するように構成されている。なお、シャント抵抗20は、GND側を流れる電流を検出するように構成されていてもよい。また、スイッチング素子9aの下流側の相電流をiuL、ivL、および、iwLとする。
図15にPWM信号pwm*の1周期の例を示す。1周期の長さを期間Tとし、周期の始点を時点t0、および、U相のみに電源部210からの電圧を印加する期間をT100とする。なお、電源部210からの電圧を印加することを、「加圧する」とし、電圧を印加しないことを「非加圧」と記載して説明する。そして、U相加圧、V相加圧、および、W相非加圧の期間をT110とし、U相加圧、V相加圧、および、W相加圧の期間をT111とし、U相非加圧、V相非加圧、および、W相非加圧の期間をT000する。なお、「0ベクトル」とは、期間T000の状態を意味するものとする。
図15に示すように、一例として、期間T100では、検出電流irと、相電流iu、iv、および、iwと、相電流iuL、ivL、および、iwLとは、以下の数式27の関係がある。また、期間T110において、以下の数式28の関係がある。また、時点t0において、電流iut0(時点t0でのiu)、ivt0(時点t0でのiv)、および、iwt0(時点t0でのiw)は、以下の数式29の関係がある。
ここで、第2実施形態では、モータ200に供給される電流を1つのシャント抵抗20により検出する場合、電気角推定部12は、第2の方法において、相電流の差分に基づいた方法(電気角θ0^)および静止座標系の電流値に基づいた方法(電気角θ0e^)は用いない。1シャント方式では、0ベクトル状態(上アームまたは下アームの全てのスイッチング素子9aがオフ状態)における循環電流が検知できないためである。そして、電気角推定部12は、線間電流の差分に基づいた方法(電気角θ01^)と2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法(電気角θ01e^)とのうちの少なくとも一方(第2実施形態では、両方)により電気角を推定するように構成されている。
具体的には、以下のような処理が行われる。まず、図16に示すように、ステップS11において、モータ200が0クロス状態(相電流の差分が0)であるか否かが判定される。なお、0クロスのタイミング(電気角)は、30度、90度、150度、210度、270度および330度である。実際には、0クロスのタイミング(電気角)は、これらの角度±k0degの範囲内である。
ステップS11において、yesの場合、ステップS12において、pwmの周期が、偶数回か否かが判定される。
ステップS12において、yesの場合(pwmの周期が偶数回の場合)、ステップS13において、線間電流の差分に基づいた方法(電気角θ01^)と2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法(電気角θ01e^)とのうちの少なくとも一方により電気角が推定される。なお、ステップS12では、電気角推定パルスシフト処理が行なわれる。電気角推定パルスシフト処理とは、後述する1シャントパルスシフト処理によって、2相が短絡した状態が検知できない場合でも、2相が短絡した状態を検知するための最小の時間を確保するための処理である。具体的には、図17に示すように、2相が短絡した状態を検知するための最小の時間を確保するために、pwm信号のパルス幅が伸縮される。たとえば、電流を検出するタイミングで、pwm信号(pwmv)のパルス幅が伸長(図17の点線参照)される。なお、pwm信号のパルス幅が伸長されるのを補完するように、他のタイミングにおいて、pwm信号のパルス幅は短縮される。これにより、全体の電流の出力量は、変化しない。また、電気角推定パルスシフト処理によって検出された電流値は、電流制御のために使用される。
また、ステップS11においてnoの場合、および、ステップS12においてnoの場合(pwmの周期が奇数回の場合)、ステップS14に進む。ステップS14では、1シャントパルスシフト処理が行われる。図18に示すように、1シャントパルスシフト処理とは、検出電流を検出する時点に、pwm信号のパルスが生じるように、pwm信号のパルス幅を、三角波Cに対して移動(シフト)させる処理である。このように、電気角推定パルスシフト処理と1シャントパルスシフト処理とでは、処理の方法が異なる。そこで、上記のように、pwmの周期が偶数回か奇数回かによって、電気角推定パルスシフト処理と1シャントパルスシフト処理とを切り替えることにより、両方の処理が干渉するのを抑制することが可能になる。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記のように、線間電流の差分に基づいた方法(電気角θ01^)と2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法(電気角θ01e^)とは、モータ200に供給される電流を1つのシャント抵抗20により検出する場合(相毎に異なる時点に電流値が検出される場合)でも電気角を推定することができる。その結果、モータ200に供給される電流を1つのシャント抵抗20により検出する場合でも、適切に、電気角を推定することができる。
[第3実施形態]
第3実施形態によるモータ制御装置100の構成について説明する。第3実施形態では、電気角θ01^と電気角θ01e^とによって電気角を推定する上記第2実施形態と異なり、オフベクトル状態における誘起電圧に基づいて電気角θev^を推定する。
第3実施形態によるモータ制御装置100の構成について説明する。第3実施形態では、電気角θ01^と電気角θ01e^とによって電気角を推定する上記第2実施形態と異なり、オフベクトル状態における誘起電圧に基づいて電気角θev^を推定する。
第2の方法は、モータ200に供給される電流を1つのシャント抵抗20により検出する場合において、ゼロベクトル状態における誘起電圧に基づいて電気角を推定する方法をさらに含む。具体的には、モータ制御装置100では、下記の数式30に示すように、線間誘起電圧に基づいて、電気角θev^が推定される。
ここで、Euvは、U相とV相との間の線間誘起電圧であり、Evwは、V相とW相との間の線間誘起電圧である。また、Ewuは、W相とU相との間の線間誘起電圧である。
具体的には、線間誘起電圧は、下記の数式31によって表される。
ここで、keは、逆起電力定数であり、kvgainは、電圧読み取りゲインである。また、Eu、EvおよびEwは、それぞれ、U相、V相およびW相の端子誘起電圧である。また、ωは、電気角速度である。
また、電気角θev^は、モータ200の回転が、時計回り(cw)か、反時計回り(ccw)かで、切り替えられる。具体的には、モータ200の回転が、時計回り(cw)の時、電気角θev^は、θev^のままである(θev^=θev^)。一方、モータ200の回転が、反時計回り(ccw)の時、電気角θev^は、θev^−πとされる(θev^=θev^−π)。
また、相電圧に基づいて推定される電気角θev^も、上記のように、モータ200の回転が、時計回り(cw)か、反時計回り(ccw)かで、切り替えられる。
また、端子誘起電圧は、下記の数式33によって表される。
ここで、Eu、EvおよびEwは、それぞれ、U相、V相およびW相の端子誘起電圧である。また、中性点は、ハードウェアによって検出するか、または、ソフトウェアによって推定する必要がある。中性点の電圧E0^は、E0^=Eu+Ev+Ewの関係式によって算出される。
また、第3実施形態の電気角θev^を推定する方法において、上記の第2実施形態の電気角推定パルスシフト処理によって読み取られた電流値は、電流制御に使用されない。読み取られた電流値が、ゼロベクトル状態(オフベクトル状態)における電流値であるためである。
また、第3実施形態の電気角θev^を推定する方法において、オフベクトルを印加するタイミングは、0度、60度、120度、180度、240度、300度である。実際には、オフベクトルを印加するタイミングは、これらの角度±k0degの範囲内である。この場合、端子誘起電圧の差分は取られないので、オフベクトルは、1回の印加される。
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1および第2実施形態と同様である。
(第3実施形態の効果)
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、上記のように、オフベクトル状態における誘起電圧に基づいて電気角を推定する方法は、線間電流の差分に基づいた方法および2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法よりも比較的ロバスト性が高いので、電気角をより適切に推定することができる。
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、表1に基づいて、第1の方法、第2の方法および第3の方法のいずれかが適用される例を示したが、本発明はこれに限られない。表1は、一例であり、表1に示される適用法(適用範囲)以外の適用法によって、第1の方法、第2の方法および第3の方法のいずれかを適用するようにしてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、第2の方法において、相電流の差分がゼロにならない時、および、線間電流の差分がゼロにならない時、上記の数式21および数式22に基づいて、電気角が推定される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、上記の数式21および数式22に基づいた電気角の推定を行わないようにしてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、モータが脱調した際にモータの初期位置を推定するなどの処理を行う例を示したが、本発明はこれに限られない。上記のように0クロスのタイミングにおいてオーバライドが行われており、論理的には脱調は発生しないので、モータが脱調した際の処理を行わないように構成してもよい。
また、上記第2実施形態では、pwmの周期(偶数回および奇数回)に対して、電気角推定パルスシフト処理と1シャントパルスシフト処理とが交互に行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数回の1シャントパルスシフト処理に対して、電気角推定パルスシフト処理を1回行うようにしてもよい。
12 電気角推定部
100 モータ制御装置
200 モータ
100 モータ制御装置
200 モータ
Claims (19)
- トルク指令に基づいて設定されたd軸電流指令およびq軸電流指令により、永久磁石が設けられるモータの駆動を制御するモータ制御装置であって、
前記モータの角速度、pwm信号の変調率、および、磁束の変化が非線形である非線形領域であるか否かに応じて、d軸に電圧を印加してq軸の漏れ電流がゼロになることに基づいて前記モータの電気角を推定する第1の方法と、前記モータが回転されることにより発生する誘起電圧に起因して生じる相電流の差分および線間電流の差分の少なくとも一方がゼロになることに基づいて前記モータの電気角を推定する第2の方法と、電圧方程式に基づいて電気角を推定する第3の方法とのうちの少なくとも1つの方法により前記モータの電気角を推定する電気角推定部を備え、
前記電気角推定部は、前記第1の方法と前記第3の方法とのうちの少なくとも一方により前記モータの電気角が推定されている場合に、前記第2の方法により推定される電気角において、前記第1の方法と前記第3の方法とのうちの少なくとも一方により推定された電気角を、前記第2の方法により推定された電気角に置き換えるように構成されている、モータ制御装置。 - 前記電気角推定部は、前記モータの角速度が小さい場合に、前記第1の方法と前記第2の方法とによって電気角を推定し、前記モータの角速度が大きい場合に、前記第2の方法と前記第3の方法とによって電気角を推定するように構成されている、請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、前記pwm信号の変調率が1以上である過変調の場合、および、磁束の変化が非線形である前記非線形領域において、前記第2の方法によって電気角を推定するように構成されている、請求項1または2に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、磁束の変化が非線形である前記非線形領域における前記第2の方法において、複数の所定の電気角を推定するとともに、前記所定の電気角の間の電気角を補間演算により推定するように構成されている、請求項3に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、前記第2の方法において、前記モータの機器定数に基づいて、前記第2の方法により推定された電気角の遅れ補償を行うように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記第2の方法は、前記相電流の差分に基づいた方法および前記線間電流の差分に基づいた方法に加えて、静止座標系の電流値に基づいた方法、および、2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、前記静止座標系の電流値に基づいた方法において、3つの相のうち、電流値の絶対値または電流の変化量の絶対値が大きい2つの相の電流値に基づいて、前記モータの電気角を推定するように構成されている、請求項7に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、前記静止座標系の電流値に基づいた方法において、d軸電流値およびq軸電流値に基づいて、ノイズを低減するように構成されている、請求項7または8に記載のモータ制御装置。
- 前記静止座標系の電流値に基づいた方法が適用される前記モータの角速度は、前記2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法が適用される前記モータの角速度よりも高い、請求項7〜9のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記モータに供給される電流を1つのシャント抵抗により検出する場合、前記電気角推定部は、前記第2の方法において、前記相電流の差分に基づいた方法および前記静止座標系の電流値に基づいた方法は用いずに、前記線間電流の差分に基づいた方法と前記2相が短絡した時の電流の差分に基づいた方法とのうちの少なくとも一方により電気角を推定するように構成されている、請求項7〜10のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記第2の方法は、前記モータに供給される電流を1つのシャント抵抗により検出する場合において、オフベクトル状態における誘起電圧に基づいて電気角を推定する方法をさらに含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、前記第2の方法において、前記モータの角速度が小さいほどサンプリング回数が増加するように、電気角を検出するためのサンプリングを複数回行うとともに、複数のサンプリングの結果について移動平均を行うことにより、電気角を推定するように構成されている、請求項1〜12のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、前記第1の方法において、q軸電流の変化率が大きい場合は、q軸電流の変化率が小さい場合に比べて、前記第1の方法により電気角を推定するためのサンプリングの間隔を小さくするように構成されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、前記第1の方法と前記第3の方法とのうちの少なくとも一方により推定された推定値を、前記第2の方法により推定された電気角に置き換える際に、置き換える前後の値が連続になるようにスムージング処理を行うように構成されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、前記モータが脱調した際において、前記モータの角速度がゼロ近傍である場合に、前記モータの前記永久磁石に電圧を印加することに基づいて前記モータの初期位置を推定し、前記モータの角速度がゼロ近傍よりも大きい場合、電気角の推定を継続し、前記モータの脱調が所定の期間内に所定の回数以上検出された場合、前記モータを停止させるように構成されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記電気角推定部は、推定された電気角を時間微分することにより角速度を算出するとともに、前記第3の方法により推定された電気角に基づいて算出された角速度を、前記第2の方法により推定された電気角に基づいて算出された角速度に置き換えるように構成されている、請求項1〜17のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
- 前記第1の方法において、前記q軸インダクタンスと前記d軸インダクタンスとの差が所定の閾値よりも小さい場合、前記q軸インダクタンスを増加させることと、前記d軸インダクタンスを低下させることとのうちの少なくとも一方により、前記q軸インダクタンスと前記d軸インダクタンスとの差を大きくするように構成されている、請求項1〜18のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
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